JPH10122040A - 内燃機関のピストン - Google Patents

内燃機関のピストン

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JPH10122040A
JPH10122040A JP29752196A JP29752196A JPH10122040A JP H10122040 A JPH10122040 A JP H10122040A JP 29752196 A JP29752196 A JP 29752196A JP 29752196 A JP29752196 A JP 29752196A JP H10122040 A JPH10122040 A JP H10122040A
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JP
Japan
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piston
resin
coating layer
internal combustion
combustion engine
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Application number
JP29752196A
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English (en)
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Kiyoshi Arai
喜好 新井
Seiji Sato
誠二 佐藤
Mitsuru Tanaka
満 田中
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NTN Corp
Subaru Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
Fuji Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストンスラップ音が非常に小さく、かつ発
生するピストンスラップ音の聴感が金属的な音質でな
く、さらにこれらの効果が長期間持続できる。 【解決手段】 ピストンスカート3の外周面に被覆層4
を形成してなる内燃機関のピストンであって、その被覆
層が酸化鉄粉末を含む樹脂被覆層である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関に組み込
まれるピストンに関し、とくにピストンスカートの外周
面に被覆層を形成したピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関、とくにレシプロエンジンのピ
ストンは、ピストンピンを介してコンロッドに連結され
てクランク軸の回転に連係して往復動するために、ピス
トンの上昇時と下降時において作用する力の方向が異な
る。そのため、シリンダ内でピストンがピストンピンを
中心として揺動運動し、ピストンピンの方向と直交する
側圧を受ける部分でシリンダとピストンスカート部が衝
突して、いわゆるピストンスラップ音が発生してエンジ
ン騒音の一因になつている。このため、これらピストン
スラップ音を低減することが求められている。
【0003】ピストンスラップ音を低減するための対策
としては、ピストンクリアランスを縮小することが最も
有効である。しかし、製造精度、組立作業およびピスト
ン焼き付きの危険性等により、クリアランスを小さくす
ることで量産に対応することは困難である。また、温度
変化にともなうピストンの熱膨張変形により、シリンダ
との間のクリアランスは低温時には大きく高温時には小
さくなるので、ピストン焼き付きを防止するために、高
温時でも所定量を保持できるようにピストンクリアラン
スは大きく設定されている。さらに、とくに熱膨張係数
が高いアルミニウムピストンはピストンクリアランスを
大きく設定しなければならない。これらの理由のため、
ピストンクリアランスを縮小することのみでピストンス
ラップ音を低減することは困難である。
【0004】このため、従来、ピストンスカートの外周
面に樹脂被覆層を形成することによりピストンスラップ
音を低減する方法が多数提案されている。たとえば、エ
ポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、
ポリイミド系樹脂のうちいずれか 1種からなる耐熱性樹
脂 35 〜 75 重量%中に鱗片状アルミニウム 10 〜 40
重量%とフッ素樹脂粉末 15 〜 55 重量%とを分散させ
てなる被覆材を用いる例(特公平 1-31026号公報)、固
体潤滑剤 1〜5 重量%を含有するフッ素樹脂被膜を用い
る例(特開昭 54-162014号公報)、ポリテトラフルオロ
エチレン樹脂被膜を用いる例(実開昭 57-200649号公
報)、耐熱性、耐摩耗性樹脂と綿繊維、炭素繊維、石綿
繊維などとの複合材料を用いる例(特開昭 57-168042号
公報)、銅または銅合金粉状体 1〜 25 重量%と、二硫
化モリブデン粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末、
窒化ホウ素粉末、および黒鉛粉末よりなる群から選択さ
れたいずれか 1種の粉末とを添加、分散させた耐熱樹脂
被膜を用いる例(特開昭 63-125821号公報)などが知ら
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
樹脂被覆層にあっては、ピストンスラップ音の低減が必
ずしも十分ではなかった。また、単にピストンスラップ
音の低減のみだけでなく、近年、その音質についても問
題とされるようになってきた。たとえば、聴感が金属的
な音質となる領域でのピストンスラップ音は、たとえ小
さくても非常に耳障りなものであり、その音を低減する
ことが困難であるとの問題があった。
【0006】また、ピストンスラップ音の低減ととも
に、樹脂被膜の剥がれや早期の摩耗など、樹脂被覆層の
耐久性が十分でないとの問題があった。
【0007】本発明は、このような問題に対処するため
になされたもので、ピストンスラップ音が非常に小さ
く、かつ発生するピストンスラップ音の聴感が金属的な
音質でなく、さらにこれらの効果が長期間持続できる内
燃機関のピストンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る内燃機関の
ピストンは、ピストンスカートの外周面に被覆層を形成
してなる内燃機関のピストンであって、その被覆層が酸
化鉄粉末を含む樹脂被覆層であることを特徴とする。ま
た、被覆層がフッ素系樹脂とポリイミド系樹脂と酸化鉄
粉末とからなることを特徴とする。また、フッ素系樹脂
がポリテトラフルオロエチレン樹脂であることを特徴と
する。さらにポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂
であることを特徴とする。これら被覆層は、フッ素系樹
脂 100重量部とポリイミド系樹脂 100〜 150重量部およ
び酸化鉄粉末 5〜 20 重量部からなることを特徴とす
る。ピストンスカートの外周面に形成される被覆層は、
少なくともピストンピン挿通方向と直交する直径方向の
両側スカートの外周面に形成されてなることを特徴とす
る。
【0009】本発明に係る内燃機関のピストンは、ピス
トンスカートの外周面に被覆層を形成し、500Hz から 1
2 kHz のピストンスラップ音を低減してなることを特徴
とする。
【0010】本発明は、樹脂被覆層に酸化鉄粉末を配合
することにより、耐久性に優れた内燃機関のピストンが
得られること、および、小さな音であっても非常に耳障
りな、聴感が金属的な音質となる領域でのピストンスラ
ップ音を効果的に低減できることを見出だしたことに基
づきなされたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】ピストンスカートの外周面に被覆
層を形成した本発明に係る内燃機関のピストンを図1に
より説明する。図1(a)はピストンの平面図を、図1
(b)はピストンピン挿通孔方向からみた側面図をそれ
ぞれ示す。ピストン1のオイルリング溝2の下方の部分
となるピストンスカート3の外周面に被覆層4が形成さ
れている。なお、5はピストンピン挿通孔である。図1
においては、被覆層4は、ピストンピン挿通方向と直交
する直径方向の両側スカートの外周面に形成されてい
る。シリンダ内でピストンはピストンピンを中心として
揺動運動する。その結果、シリンダとピストンスカート
部の衝突し易い箇所に被覆層4を形成することによりピ
ストンスラップ音を効果的に抑えることができる。な
お、ピストンスカート部全周に被覆層4を形成してもよ
い。
【0012】ピストンは、激しく往復運動するため、そ
の慣性力はかなり大きなものとなる。そのため、ピスト
ンは、なるべくアルミニウム合金のような、たとえば比
重が1〜5 程度の軽量金属体であることが好ましい。ま
た、シリンダやピストンの材質としては、鋳鉄、アルミ
ニウム合金等があるが、本発明においては、とくに熱膨
張係数の差が大きい例えば鋳鉄製のシリンダと、例えば
アルミニウム合金製のピストンとの組み合わせにおい
て、クリアランスを大きくとらねばならないアルミニウ
ム合金製ピストンに好適である。また、これらアルミニ
ウム合金製ピストン表面に被覆層4形成の前処理とし
て、クロム酸塩と炭酸ナトリウムなどのアルカリとの混
合液を用いて処理するMBV法や、リン酸、クロム酸お
よびフッ化物の混合物を用いて処理するアロディン法な
どの化成処理を施してもよい。
【0013】ピストンスカートの外周面に形成される酸
化鉄粉末を含む樹脂被覆層について説明する。本発明に
使用することのできる酸化鉄粉末は、酸化鉄(II)、三
酸化二鉄、四酸化三鉄等があり、いずれも使用すること
ができる。これら酸化鉄の形状は、球状、鱗片状、針状
などあらゆる形状の粉末が使用できる。酸化鉄粉末の平
均粒径は、いかなる粒径であってもよいが、たとえば0.
1 μm 〜 10 μm 、具体的には、0.1 μm 〜1 μm が好
ましく、より好ましくは 0.2μm 〜0.5 μm である。平
均粒径がこの範囲にあると、耐摩耗性がとくに向上す
る。なお、酸化鉄粉末の平均粒径はBET法により測定
するが、とくにこの方法に限られるものでなくてもよ
い。
【0014】酸化鉄粉末を含む樹脂被覆層を形成する樹
脂は、内燃機関のピストン使用時に熱劣化することのな
い耐熱性と、潤滑性に優れた樹脂であれば使用すること
ができる。具体的には、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹
脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系
樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、とく
にフッ素系樹脂およびポリイミド系樹脂からなる樹脂組
成物に酸化鉄粉末とを組み合わせた樹脂被覆層が、500H
z から 12 kHz のピストンスラップ音を低減するのに好
適である。樹脂被覆層の形成は、具体的にはフッ素系樹
脂とポリイミド系樹脂と酸化鉄粉末とを含有する樹脂コ
ート液を塗布し、乾燥焼成することにより得られる。
【0015】本発明に使用することのできるフッ素系樹
脂とは、固体潤滑剤としてピストンスカート外周面の被
覆層に低摩擦特性を導入するものであって、被覆層に潤
滑特性を付与できるフッ素樹脂であれば使用することが
できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(以
下、 PTFE と略称する)、テトラフルオロエチレン−ヘ
キサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチ
レン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフ
ルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル−フ
ルオロオレフィン共重合体、ポリクロロトリフルオロエ
チレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン、ポリ
フッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどが挙げられ
る。これらは、それぞれ単独もしくは、 2種以上の共重
合体や 3元共重合体等であってもよい。
【0016】このうち PTFE は、−CF2 CF2 −の繰
り返し単位より構成され、融点が 327℃であり、約 340
〜 380℃で溶融粘度が約1010〜1011Pa・s と高く、融点
を越えても流動し難く、フッ素系樹脂の中では最も耐熱
性に優れており、内燃機関のピストンのように高温雰囲
気下にさらされるような本発明に好適である。PTFE の
市販品としては、フルオンL169、同170、同17
1(以上、英国アイ・シー・アイ社製商品名)、ポリフ
ロンM15、ルブロンL−2、同L−5、同LD−1
(以上、ダイキン工業社製商品名)、テフロン7J、同
TLP−10、同TLP−10F−1(以上、デュポン
社製商品名)、フルオンG163(旭硝子社製商品名)
等を挙げることができる。また、未成形の PTFE よりも
一度焼成した PTFE を粉砕した再生 PTFE を用いること
や、再生 PTFE に代え、もしくは再生 PTFE とともに、
未成形の PTFE にγ線照射処理をして低分子量化した P
TFE 粉末を使用することができる。γ線照射処理をした
市販の潤滑剤用 PTFE としては、喜多村社製商品名、K
T400Hを例示することができる。
【0017】PTFE の形態は、成形用の粉末であっても
よく、また、いわゆる固体潤滑剤の微粉末であってもよ
い。その平均粒径は 0.1〜20μm 、好ましくは 0.2〜10
μmの範囲である。平均粒径がこの範囲内にあると、コ
ート液中で凝集などを起こさず、また塗布乾燥焼成後の
被覆層の平滑性が維持される。
【0018】本発明に使用することのできるポリイミド
系樹脂とは、分子内に少なくともイミド結合を有する樹
脂であって、内燃機関のピストン使用時に熱劣化するこ
となく、フッ素系樹脂と酸化鉄粉末とを結着するととも
に、ピストン表面との接着性に優れた樹脂であれば使用
することができる。たとえばポリイミド樹脂、ポリアミ
ドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステル
アミドイミド樹脂等を挙げることができる。これらポリ
イミド系樹脂の中で、ポリイミド樹脂およびポリアミド
イミド樹脂が好適である。また、イミド結合またはアミ
ド結合とが芳香族基を介して結合している芳香族系ポリ
イミド樹脂または芳香族系ポリアミドイミド樹脂がとく
に好ましい。芳香族系樹脂であると、フッ素系樹脂と酸
化鉄粉末との結着性に優れ、かつ得られる被覆層の耐熱
性が優れる。ポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミン
とをN-メチル-2- ピロリドン(NMP)やジメチルアセ
トアミド(DMAC)等の非プロトン系極性溶媒中で開
環重付加反応により得られるポリイミド前駆体のポリア
ミドカルボン酸を加熱脱水閉環することなどにより得ら
れる。耐摩耗性・非粘着性コーティング剤における樹脂
成分としては、ポリアミドカルボン酸の状態であって
も、またポリイミドの状態であっても、さらにはこれら
が混在している状態であっても使用することができる。
ポリアミドイミド樹脂は、分子内にイミド結合とアミド
結合とを有する樹脂である。また、芳香族系ポリアミド
イミド樹脂のイミド結合は、ポリアミド酸などの前駆体
であっても、また閉環したイミド環であってもよく、さ
らにはそれらが混在している状態であってもよい。この
ような芳香族系ポリアミドイミド樹脂は、芳香族第一級
ジアミン、たとえばジフェニルメタンジアミンと芳香族
三塩基酸無水物、たとえばトリメリット酸無水物のモノ
またはジアシルハライド誘導体から製造されるポリアミ
ドイミド、芳香族三塩基酸無水物と芳香族ジイソシアネ
ート化合物、たとえばジフェニルメタンジイソシアネー
トとから製造されるポリアミドイミドなどがあり、さら
に、アミド結合に比べてイミド結合の比率を大きくした
ポリアミドイミドとして、芳香族、脂肪族または脂環族
ジイソシアネート化合物と芳香族四塩基酸二無水物およ
び芳香族三塩基酸無水物とから製造されるポリアミドイ
ミド等があり、いずれのポリアミドイミド樹脂であって
も使用することができる。
【0019】本発明に係る被覆層の各成分の配合割合
は、フッ素系樹脂 100重量部に対して、ポリイミド系樹
脂 100〜 150重量部および酸化鉄粉末 5〜 20 重量部で
ある。それぞれの成分をこの範囲に配合することによ
り、ポリイミド系樹脂を結着剤として、フッ素系樹脂を
耐摩耗性向上剤として、その機能を発揮させることがで
きる。また、酸化鉄粉末の作用とともに、聴感が金属的
な音質となる領域でのピストンスラップ音を効果的に低
減できる。酸化鉄粉末が 5重量部未満であると、耐摩耗
性の向上に影響がみられず、また 20 重量部を越える
と、ピストン表面に対する被覆層の密着力が低下し、ピ
ストンの耐久性が劣ることとなる。
【0020】上述の被覆層を形成するための樹脂コート
液は、フッ素系樹脂とポリイミド系樹脂と酸化鉄粉末と
を溶剤類に分散または溶解させることにより得られる。
溶剤類としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケ
トン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、トル
エン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルクロロホ
ルム、トリクロロエチレン、トリクロロトリフルオロエ
タン等の有機ハロゲン化化合物類、N-メチル-2- ピロリ
ドン(NMP)、メチルイソピロリドン(MIP)、ジ
メチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド
(DMAC)等の非プロトン系極性溶剤類などを使用す
ることができる。これらの溶剤類は、単独または混合物
として使用することができる。
【0021】樹脂コート液における配合割合は、溶剤 1
00重量部に対して、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂お
よび酸化鉄粉末の固形分が 5〜100 重量部(固形分濃度
として、4.76〜 50 重量%)であり、好ましくは固形分
が 25 〜 50 重量部(固形分濃度として、 20 〜 50 重
量%)である。固形分が 5重量部未満であると、ピスト
ン表面に十分な樹脂が付着しなくなる。また、過剰な溶
剤分の処理工程が増えるため工程上不利となる。固形分
が 100重量部を越えると、固形分量が多すぎることとな
り、スプレーガン等の霧化手段のノズルの液づまりの原
因となり易くなる。
【0022】上述の樹脂コート液をピストンスカートの
外周面に塗布する方法は、ディッピング法、スプレーコ
ート法、刷毛塗り法など種々の方法を採用することがで
きる。これらの方法の中でも、霧状のコート液をピスト
ンスカート外周面の一部に吹き付けることのできるスプ
レーコート法が本発明のピストン表面の被膜の厚みを精
度よく形成するために好ましい。
【0023】樹脂コート液を塗布されたピストンスカー
トは乾燥後焼成される。乾燥は、 5℃〜 100℃の範囲で
10 分〜 2時間保持させることが好ましい。これによ
り、塗膜の発泡などを抑えることができる。
【0024】被覆層の焼成温度は 180〜280 ℃が適当で
ある。 180℃未満であると結着性樹脂などの硬化反応が
進行せず、被覆層のピストンスカート表面に対する密着
性が期待できないことも推定される。 280℃を越え、と
くにフッ素系樹脂の融点を越えると、フッ素系樹脂の分
解が進み始めるので好ましくなく、アルミニウム合金等
のピストンスカート基材の耐熱性も考慮してフッ素系樹
脂の融点よりも約 30〜100 ℃以下、好ましくは約 50
〜100 ℃以下の温度で焼成することが好ましい。焼成
は、たとえば 80 ℃〜 130℃〜 180℃というように数段
階に分け、 30 分〜240 分の範囲内で 30 分〜120 分ご
とに徐々に昇温させることが好ましい。これにより、結
着性樹脂などの硬化反応が徐々に確実に進行し、均一な
密着強度を有する被覆層を形成することができる。ま
た、被覆層にちぢみ、しわ、わき、われ等の発生を防ぐ
こともできる。焼成時の最高温度の保持時間は、 15 〜
60 分、好ましくは 30 〜 45 分の範囲であればよい。
最高温度の保持時間が 15 分未満では結着性樹脂などの
硬化反応が不十分で、 60 分を越えるとアルミニウム合
金等の軽量鋳物金属系合金等でなるピストンスカート基
材への熱的影響(たとえば、ソリの発生等)が心配さ
れ、また電気炉の消費電力量も多くなる。さらに製造工
程の時間も長くなり、コストが高くなり好ましくない。
【0025】焼成工程後の冷却は、焼成工程時と逆の段
階を経て冷却してもよく、また 60〜180 分程度の時間
をかけて連続的に徐冷してもよい。このように徐冷する
ことにより被覆層とピストンスカート基材とが互いに均
一に精度よく収縮し、精度の高い内燃機関のピストンを
得ることができる。合計の焼成時間としては約 2〜 10
時間に調整すればよい。
【0026】このようにして得られた被覆層の層厚は 5
〜 40 μm が好ましい。さらに好ましくは 10 〜 30 μ
m である。被覆層の層厚が薄すぎるとピストンスラップ
音を十分に抑えることができず、厚すぎると被覆層の密
着性が劣るおそれがある。また、層厚を 5〜 40 μm と
することにより、被覆層の表面粗さ(Ra値)を 0.5〜
2 μm 、表面の硬度を鉛筆硬度(JIS K 689
4)でB〜3Hに調整することが容易となる。
【0027】上述のような被覆層を有する内燃機関のピ
ストンは、たとえばピストンとシリンダとのクリアラン
スが 10 μm 〜100 μm の内燃機関において、シリンダ
とピストンとのクリアランスが約 60 μm 以上であって
も騒音レベルを抑えることができ、また、500Hz 〜 12
kHz 、とくに約 1〜3.15kHz の周波数を有する音の発生
を抑えることができる。このように、本発明に係るピス
トンは、聴感が金属的な音質となる領域でのピストンス
ラップ音を抑えることができるので、自動車やオートバ
イはもとより芝刈り機、草刈り機、ウェルダー、小型発
電機等の小型の汎用内燃機関に使用することができる。
なかでも、冷却能力が水冷式よりも低い空冷式エンジン
ないしはオイルクーラーの省略されたエンジンなど潤滑
条件の厳しい汎用内燃機関に、本被覆層は耐焼き付き性
が高いことから好適である。
【0028】
【実施例】実施例および比較例における被覆層を形成す
るコート液に使用する材料を以下に示す。 (1)酸化鉄粉末:トダカラー160ED(平均粒径
0.27 μm )(戸田工業社製、商品名) (2)フッ素系樹脂:フルオンL169(アイ・シー・
アイ社製、商品名) (3)ポリイミド系樹脂:トーロンAI−10(テイジ
ンアモコエンジニアリングプラスチックス社製、商品
名) (4)二硫化モリブデン:モリコートZ(ダウコーニン
グ社製、商品名) (5)ブロンズ粉末:At−35(福田金属箔粉工業社
製、商品名) (6)黒鉛粉末:ロンザKS10(ロンザ社製、商品
名)
【0029】実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例6 内燃機関のピストンに形成される樹脂被覆層の特性を評
価するため、実機とほぼ同一の条件で樹脂被覆層を有す
るディスク状試験片を作製して耐摩耗性試験を行った。
まず、コート液を以下のように調製した。ポリイミド系
樹脂としてポリアミドイミド樹脂(トーロンAI−1
0)をN-メチル-2- ピロリドン(NMP)に溶解させ、
この樹脂溶液にフッ素系樹脂(フルオンL169)、酸
化鉄粉末(トダカラー160ED)を配合して均一な組
成物とし、固形分濃度が約 23 重量%となるように、N-
メチル-2- ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミ
ド(DMF)、キシレンおよび酢酸エチルの混合溶媒で
希釈してコート液を得た。コート液の組成を表1に示
す。なお、比較例4〜比較例6用として、酸化鉄粉末の
代わりに二硫化モリブデン、ブロンズ粉末または黒鉛粉
末を用いたコート液を調製した。
【0030】これらのコート液を用いて樹脂被覆層を有
するディスク状試験片を作製した。まず焼成後の樹脂被
覆層厚が約 20 μm となるようにスプレーコート法でコ
ート液をディスク状試験片表面に吹き付けた。このディ
スク状試験片を 80 ℃で 15分間乾燥させ、さらに 80
〜160 ℃に 30 分かけて昇温し、160 ℃で 30 分間保持
した。ついで、 160〜240 ℃まで 30 分かけて昇温し、
240 ℃で 60 分間保持した。その後、室温まで自然冷却
して樹脂被覆層を有するディスク状試験片を得た。
【0031】得られたディスク状試験片を用いて以下に
示す耐摩耗性試験を行った。結果を表1に示す。 耐摩耗性試験: 試験方法 ;ボールオンディスク試験 ボール(8インチ);FC250 ディスク ;AC8C+樹脂被覆層約 20 μm 試験条件 : 雰囲気温度;130 ℃ 潤滑 ;油潤滑(日産自動車製、モーターオイル10W
−30) 荷重 ; 1kgf/cm2 周速 ; 30m/min. 時間 ; 50h
【0032】
【表1】
【0033】表1に示すように、フッ素系樹脂 100重量
部に対して酸化鉄 5〜 20 重量部、ポリイミド系樹脂 1
00〜 150重量部を含有する実施例は比較例に比較して樹
脂被覆層の摩耗量が非常に少なかった。比較例3は、摩
耗量は少なかったがポリイミド系樹脂が 150重量部を越
えていたので摩擦係数が大きかった。また、従来例の一
つである比較例4はボールと接触していた部分の被覆層
が全て摩耗し、試験片の下地が露出していた。
【0034】実施例4〜実施例7、比較例7〜比較例8 アルミニウム合金(材質:AC8A)製のピストンを用
意し、そのスカート外周表面に実施例2の組成を有する
コート液を用いて実施例2と同様の条件で層厚を変化さ
せて被覆層を形成した。被覆層の層厚およびピストンク
リアランスを表2に示す。被覆層の形成箇所は、図1に
示すように、ピストンピン挿通方向と直交する直径方向
の両側スカートの外周面において、図1(a)に示す平
面図で中心角度にして約 90 °の範囲である。なお、比
較例8は樹脂被覆層がない場合の例である。
【0035】
【表2】
【0036】このピストンを、シリンダ材質が特殊鋳鉄
からなり、ボア 67 mm、ストローク49 mmの 4サイクル
ガソリンエンジンに組み込み、3600rpm で 1時間連続運
転した。このときの騒音レベルを測定した。結果を図2
に示す。図2に示すように、 5μm 以上の樹脂被覆層を
有する実施例4ないし実施例7は、優れた騒音レベルを
示し、とくに 10 μm 以上の樹脂被覆層を有する実施例
5ないし実施例7は、極めて優れた騒音レベルを示し
た。
【0037】実施例8および比較例9 アルミニウム合金(AC8C)製のピストンを用意し、
そのスカート外周表面に被覆層を形成した。被覆層の形
成箇所は、図1に示すように、ピストンピン挿通方向と
直交する直径方向の両側スカートの外周面において、図
1(a)に示す平面図で中心角度にして約 90 °の範囲
である。
【0038】コート液は、つぎのようにして調整した。
ポリイミド系樹脂としてポリアミドイミド樹脂(トーロ
ンAI−10) 125重量部をN-メチル-2- ピロリドン
(NMP)約 290重量部に溶解させ、この樹脂溶液にフ
ッ素系樹脂(フルオンL169) 100重量部、酸化鉄粉
末(トダカラー160ED) 13 重量部を配合して均一
な組成物とし、固形分濃度が 30 重量%となるように、
N-メチル-2- ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムア
ミド(DMF)、キシレンおよび酢酸エチルの混合溶媒
で希釈してコート液を得た。このコート液を用いてスプ
レーコーティングを行い、 100℃で 30 分間乾燥した
後、230 ℃で 60 分間焼成して被覆層厚さ 20 μm を有
するピストンを得た。
【0039】このピストンを、シリンダ材質が特殊鋳鉄
からなり、ボア 67 mm、ストローク49 mmの 4サイクル
ガソリンエンジンに組み込み、3600rpm で 1時間連続運
転した。まず、ピストンとシリンダとのクリアランスを
変化させたときの騒音レベルを測定した。比較例9とし
てスカート外周表面に被覆層を形成しないピストンを用
いて、実施例1と同一の条件で騒音レベルを測定した。
測定結果を図3に示す。図3に示すように、実施例8の
ピストンは、優れた騒音レベルを示した。とくに約 60
μm 以下のクリアランス、具体的には 10 μm 〜 60 μ
m の範囲のクリアランスでは、極めて優れた騒音レベル
を示した。
【0040】つぎに、1/3 オクターブ周波数分析を行っ
た。結果を図4に示す。図4に示すように、比較例9と
比較して、実施例8のピストンは 500 Hz から 12 kHz
での騒音レベルが低下することが示され、聴感が金属的
な音質となる高音領域でのピストンスラップ音の低減に
効果のあることがわかった。
【0041】
【発明の効果】本発明に係る内燃機関のピストンは、ピ
ストンスカートの外周面にフッ素系樹脂とポリイミド系
樹脂と酸化鉄粉末とからなる被覆層を形成したので、耐
摩耗性および耐久性に優れている。また、ピストンスラ
ップ音を極めて低く抑えることができる。さらに、ピス
トンスラップ音の中で金属的な音質の音をとくに低く抑
えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関のピストンを示す図である。
【図2】被覆層厚さを変化させたときの騒音レベルを示
す図である。
【図3】ピストンとシリンダ間とのクリアランスを変化
させたときの騒音レベルを示す図である。
【図4】1/3 オクターブ周波数分析結果を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 ピストン 2 オイルリング溝 3 ピストンスカート 4 被覆層 5 ピストンピン挿通孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 満 愛知県海部郡蟹江町蟹江本町丸之内5通り 22

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピストンスカートの外周面に被覆層を形
    成してなる内燃機関のピストンであって、 前記被覆層は、酸化鉄粉末を含む樹脂被覆層であること
    を特徴とする内燃機関のピストン。
  2. 【請求項2】 前記被覆層は、フッ素系樹脂とポリイミ
    ド系樹脂と酸化鉄粉末とからなることを特徴とする請求
    項1記載の内燃機関のピストン。
  3. 【請求項3】 前記フッ素系樹脂がポリテトラフルオロ
    エチレン樹脂であることを特徴とする請求項2記載の内
    燃機関のピストン。
  4. 【請求項4】 前記ポリイミド系樹脂がポリアミドイミ
    ド樹脂であることを特徴とする請求項2または請求項3
    記載の内燃機関のピストン。
  5. 【請求項5】 前記被覆層は、前記フッ素系樹脂 100重
    量部と前記ポリイミド系樹脂 100〜 150重量部および酸
    化鉄粉末 5〜 20 重量部からなることを特徴とする請求
    項1ないし請求項4のいずれか1項記載の内燃機関のピ
    ストン。
  6. 【請求項6】 前記被覆層は、少なくともピストンピン
    挿通方向と直交する直径方向の両側スカートの外周面に
    形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項
    5のいずれか1項記載の内燃機関のピストン。
  7. 【請求項7】 ピストンスカートの外周面に被覆層を形
    成し、ピストンスラップ音を低減してなる内燃機関のピ
    ストンであって、 前記ピストンスラップ音は、500Hz から 12 kHz のピス
    トンスラップ音であることを特徴とする内燃機関のピス
    トン。
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