JPH10331970A - ピストンおよびそのピストンリング溝表面改質方法 - Google Patents

ピストンおよびそのピストンリング溝表面改質方法

Info

Publication number
JPH10331970A
JPH10331970A JP14646397A JP14646397A JPH10331970A JP H10331970 A JPH10331970 A JP H10331970A JP 14646397 A JP14646397 A JP 14646397A JP 14646397 A JP14646397 A JP 14646397A JP H10331970 A JPH10331970 A JP H10331970A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piston
piston ring
ring groove
solid lubricant
primary crystal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP14646397A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Nakayama
山 健 次 中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP14646397A priority Critical patent/JPH10331970A/ja
Publication of JPH10331970A publication Critical patent/JPH10331970A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2201/00Metals
    • F05C2201/02Light metals
    • F05C2201/021Aluminium

Landscapes

  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストンのピストンリング溝およびこれと接
触するピストンリング表面での耐アルミニウム凝着性,
耐剥離性,耐摩耗性をより一層向上させることができ、
耐久性にさらに優れたピストンを提供する。 【解決手段】 Siを15〜24重量%含有するアルミ
ニウム合金鋳物からなり、ピストンリングと接触するピ
ストンリング溝2の対向面には好ましくは粒径20〜5
0μmの初晶Si粒子5が好ましくは4〜8μmの突出
高さhで突出し、且つ、初晶Si粒子5は固体潤滑剤を
含む樹脂焼成膜6で覆われているものとしたピストン
1。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ピストンリング溝
をそなえたアルミニウム合金鋳物製ピストンの改良に係
わり、とくに、ブローバイガス増加防止のためピストン
リング溝およびピストンリング表面での耐アルミニウム
凝着性,耐摩耗性を向上させたピストンおよびそのピス
トンリング溝表面改質方法に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】一般に、ピストンの素
材としてはアルミニウム合金鋳物(JIS AC8A)
からなるものが、また、ピストンリングの素材としては
弁ばね用シリコンクロム鋼オイルテンパー線(JIS
SWOSC−V)にりん酸塩処理を施したものが、標準
的な組合わせとして採用されていることが多い。
【0003】近年、エンジンの高速化が進み、特にピス
トンの使用環境も一段と厳しさを増し、荷重や温度も増
加してきている。そのため、ピストンのピストンリング
溝とピストンリングの各摺動面は摩耗し易く、いったん
摩耗が生ずるとピストンリング溝の素材であるアルミニ
ウムと、ピストンリングの素材である鉄との金属接触に
より、アルミニウムの凝着が起こり、摩耗が急速に進展
する状況にある。
【0004】したがって、この摩耗から生じるブローバ
イガスの増加を避けるため、耐アルミニウム凝着性およ
び耐摩耗性をより一層向上した摺動面の組合わせ材料を
用いるようになってきた。
【0005】この対策として、 ピストンリングのピストンリング溝との接触面にM
oS焼成被膜等の固体潤滑被覆を施す方法(ピストン
リング溝はアルミニウム合金のままとする)。
【0006】 高負荷時のためには、さらに、ピスト
ンリング溝の表面にアルマイト処理を施し、ピストンリ
ングの表面にりん酸塩処理を施して組み合わせる方法。
【0007】等が行われることがある。
【0008】しかしながら、このようなピストンおよび
ピストンリングの組み合わせにあっては、上記の場
合、ピストンリングのピストンリング溝との接触面にM
oS処理を施した焼成被膜自体の耐摩耗性は比較的短
命であり、摩耗後に露出した下地の鋼と、ピストンリン
グ溝のアルミニウム合金との金属接触によりアルミニウ
ムの凝着を生じ、摩耗が急速に進展してしまうという問
題点があった。
【0009】このピストンリングのピストンリング溝と
の接触面にMoS焼成被膜を形成する方法には一般的
に二つがあり、ひとつは下地を機械加工した鋼に直接被
膜を付ける方法であり、もうひとつは下地にりん酸Mn
処理を施してMoS焼成被膜を付けて密着性を向上さ
せる方法である。
【0010】ところが、いずれの場合も、MoS焼成
被膜は硬質層ではないため、高負荷エンジンでは、相手
材ピストンリング溝との馴染み性は向上するものの、耐
摩耗性の長寿命化は期待できず、比較的早期に下地の鋼
が露出してしまうという問題点があった。また、この処
理層と下地との剥離で摩耗が速まる場合もあるという問
題点があった。
【0011】さらに、上記のピストンリング溝の表面
にアルマイト処理を施し、ピストンリングの表面にりん
酸塩処理を施す方法では、処理コストが高いという問題
点があった。
【0012】したがって、これらの問題点を解決するこ
とが課題となっていた。
【0013】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであって、ピストンのピストンリン
グ溝およびこれと接触するピストンリング表面での耐ア
ルミニウム凝着性,耐剥離性,耐摩耗性をより一層向上
させることができ、耐久性にさらに優れたピストンを提
供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるピストン
は、請求項1に記載しているように、Siを15〜24
重量%含有するアルミニウム合金鋳物からなり、ピスト
ンリングと接触するピストンリング溝の対向面には初晶
Si粒子が突出し、且つ、初晶Si粒子は固体潤滑剤を
含む樹脂焼成膜で覆われている構成としたことを特徴と
している。
【0015】そして、本発明に係わるピストンの実施態
様においては、請求項2に記載しているように、アルミ
ニウム合金鋳物中には粒径20〜50μmの初晶Si粒
子が均一に分散しており、且つ、ピストンリングと接触
するピストンリング溝の対向面には初晶Si粒子が4〜
8μm突出しているものとすることができる。
【0016】同じく、本発明に係わるピストンの実施態
様においては、請求項3に記載しているように、固体潤
滑剤を含む樹脂焼成膜の厚さが6〜10μmであるもの
とすることができる。
【0017】同じく、本発明に係わるピストンの実施態
様においては、請求項4に記載しているように、固体潤
滑剤はMoS,WS,PTFE(ポリ四フッ化エチ
レン),Sbのうちから選ばれる1種以上からな
り、且つ、固体潤滑剤はポリアミドイミド,ポリイミド
のうちから選ばれる1種以上の樹脂焼成膜に含まれてい
るものとすることができる。
【0018】同じく、本発明に係わるピストンの実施態
様においては、請求項5に記載しているように、ピスト
ンリング溝に、硬さがHv450〜550の弁ばね素材
にりん酸マンガン被膜を3〜5μmの厚さで施したピス
トンリングを組み合わせているものとすることができ
る。
【0019】本発明に係わるピストンのピストンリング
溝表面改質方法は、請求項6に記載しているように、S
iを15〜24重量%含有するアルミニウム合金鋳物か
らなりかつピストンリング溝をそなえているピストンに
おいてピストンリング溝の表面改質を行うに際し、ピス
トンリング溝のピストンリングと接触する対向面を電解
処理することにより初晶Si粒子を突出させ、洗浄を行
った後、ピストンリング溝の対向面に固体潤滑剤を含む
樹脂処理液を塗布し、遠心飛散により塗膜厚さが6〜1
0μmとなるよう均一にした後、温度170〜230℃
にて時間10〜50分間焼成して、固体潤滑剤を含む樹
脂焼成膜をピストンリング溝の対向面に形成するように
したことを特徴としている。
【0020】
【発明の作用】エンジンの作動時における図1に示すご
ときピストン1のトップリング溝(ピストンリング溝)
2とピストンリング3との接触面における摩擦状況は、
250℃を超える高温や10MPa以上の高圧下の環境
で、ピストン1の首ふりによる滑りが生じるものとな
る。加えて、ピストン1の往復動によるピストンリング
3への叩き動作も発生する。このため、接触する両部材
には、ブローバイガスの増加を防ぐ必要があることから
耐アルミニウム凝着性および耐摩耗性に優れていること
が要求される。
【0021】本発明によるピストンのピストンリング溝
側における固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜の作用として、
まず、図2に示すようにマトリックス4中に初晶Si粒
子5が均一に分散していると共に表面に固体潤滑剤を含
む樹脂焼成膜6が厚さHで形成されている状態におい
て、厚さtの固体潤滑剤を含む樹脂焼成層6Fにより初
期馴染みの効果を有している。この樹脂焼成層6Fは相
手材であるピストンリング3との接触により初期段階で
消失し、次いで、比較的硬い初晶Si粒子(硬さHv約
1300)5と、その周囲に潤滑被膜6が取り囲む状態
となるため、高圧下の摩耗に対しては初晶Si粒子5が
支柱のような役割を果たして剥離が生じにくいものとな
る。
【0022】本発明のピストンにおいて、その素材とし
てSiを15〜24重量%含有するアルミニウム合金鋳
物からなるものとしているのは、このようなSi含有量
とすることによりマトリックス中に初晶Si粒子を適量
晶出分散させたものとすることができるためである。そ
して、アルミニウム合金中の初晶Si粒子の大きさが2
0〜50μmであるのが好ましいとしているのは、その
一つは、その範囲では初晶Si粒子間の間隔が近接して
分散することにあり、他の一つは、ピストンの製作が容
易であることにある。それは、アルミニウム合金の溶解
時に通常初晶Siの微細化に用いる燐処理で容易に得ら
れる範囲であり、微細な20μm未満に揃えるには溶製
が難しいこと、また、50μmより大きい場合は機械加
工性が悪いことが、20〜50μmの大きさにするのが
良いとした理由である。
【0023】また、初晶Si粒子の突出高さhが4〜8
μmの範囲であるのが好ましいとしているのは、初晶S
i粒子を含む樹脂焼成膜がエンジン寿命と同等の摩耗寿
命(耐剥離性、耐アルミニウム凝着性をも含む。)のあ
ることを考えたためであり、初晶Si粒子の突出高さh
が4μmよりも小さいと被膜の摩耗が多くなって寿命が
短くなり、8μmよりも大きいと突出した初晶Si粒子
が脱落し易くなって剥離・摩耗が進むという理由によ
る。
【0024】固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜の厚さは6〜
10μmであるものとすることがより好ましいが、この
ような範囲とするのが好ましいのは、使用初期の馴染み
を良くするための、硬い初晶Si粒子の無い2μm程の
軟質な固体潤滑馴染み層(樹脂焼成膜6F)を含め、6
〜10μmにした理由である。
【0025】固体潤滑剤はMoS,WS,PTFE
(ポリ四フッ化エチレン),Sb(酸化アンチモ
ン)のうちから選ばれる1種以上からなるものとするこ
とによって、ピストンリング溝の対向面での潤滑性能が
より一層優れたものになると共に、この固体潤滑剤はポ
リアミドイミド,ポリイミドのうちから選ばれる1種以
上の樹脂焼成膜に含まれているものとすることによっ
て、ピストンリング溝の対向面とピストンリングの表面
とにおける金属接触の際の耐アルミニウム凝着性および
耐摩耗性がより一層向上したものとなる。
【0026】ピストンリング溝には、硬さがHv450
〜550の弁ばね素材にりん酸マンガン被膜を3〜5μ
mの厚さで施したピストンリングを組み合わせているも
のとすることがより望ましく、ピストンリング溝の対向
面とピストンリングの表面とにおける金属接触の際の耐
アルミニウム凝着性および耐摩耗性がより一層向上した
ものとなる。
【0027】本発明によるピストンのピストンリング溝
表面改質方法において、ピストンリング溝のピストンリ
ングと接触する対向面に固体潤滑剤を含む樹脂処理液を
塗布して焼成する場合、塗膜厚さは6〜10μmとなる
ようするのがよいが、これは焼成後の樹脂焼成膜の厚さ
が前記したように6〜10μmとなるようにするのがよ
いためであり、その後、温度170〜230℃にて時間
10〜50分間焼成するのが良く、より好ましくは温度
210℃にて時間20分間焼成するのがよい。
【0028】ここで、その際の焼成温度を170〜23
0℃とするのが好ましいのは、加熱で膜の強度を上げる
のに可能なだけの高い温度が好ましく、逆に母材である
アルミニウム合金鋳物の軟化を避けるために200℃を
大きくは超えない範囲であることから170〜230℃
にした理由である。更に、焼成時間は10分未満である
と樹脂焼成不十分であり、50分を超えると高い焼成温
度の場合に母材アルミニウム合金鋳物の軟化が進むこと
が理由である。
【0029】そして、固体潤滑剤を含む樹脂処理液の塗
装方法は、ディッピング,刷毛塗り,スプレー塗装等、
ピストンリング溝のピストンリングと接触する対向面に
塗装可能な方法であれば容易に実施可能である。
【0030】
【発明の効果】本発明によるピストンでは、請求項1に
記載しているように、Siを15〜24重量%含有する
アルミニウム合金鋳物からなり、ピストンリングと接触
するピストンリング溝の対向面には初晶Si粒子が突出
し、且つ、初晶Si粒子は固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜
で覆われているものとしたから、ピストンリング溝とピ
ストンリングとの接触表面での耐アルミニウム凝着性お
よび耐摩耗性ならびに耐剥離性がより一層向上し、接触
表面での耐久性を延長することができると共に、摩耗に
よって生じるブローバイガスの増加を抑制することが可
能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0031】そして、請求項2に記載しているように、
アルミニウム合金鋳物中には粒径20〜50μmの初晶
Si粒子が均一に分散しており、且つ、ピストンリング
と接触するピストンリング溝の対向面には初晶Si粒子
が4〜8μm突出しているものとすることによって、初
晶Si粒子が均一に分散したピストンの製作を通常の燐
処理によって行うことにより容易なものにすることが可
能であると共に、初晶Si粒子の脱落を生じがたいもの
として耐摩耗性の良好なピストンとすることが可能であ
るという著しく優れた効果がもたらされる。
【0032】そしてまた、請求項3に記載しているよう
に、固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜の厚さが6〜10μm
であるものとすることによって、使用初期のピストンリ
ングとの馴染みを良好なものとすることが可能であると
いう著しく優れた効果がもたらされる。
【0033】さらにまた、請求項4に記載しているよう
に、固体潤滑剤はMoS,WS,PTFE,Sb
のうちから選ばれる1種以上からなり、且つ、固体
潤滑剤はポリアミドイミド,ポリイミドのうちから選ば
れる1種以上の樹脂焼成膜に含まれているものとするこ
とによって、ピストンのピストンリング溝の対向面とピ
ストンリングの表面との間における金属接触の際の耐ア
ルミニウム凝着性および耐摩耗性をより一層向上したも
のとすることが可能であるという著しく優れた効果がも
たらされる。
【0034】さらにまた、請求項5に記載しているよう
に、ピストンリング溝に、硬さがHv450〜550の
弁ばね素材にりん酸マンガン被膜を3〜5μmの厚さで
施したピストンリングを組み合わせているものとするこ
とによって、ピストンのピストンリング溝の対向面とピ
ストンリングの表面との間における金属接触の際の耐ア
ルミニウム凝着性,耐摩耗性,耐剥離性をより一層向上
させたものとすることが可能であるという著しく優れた
効果がもたらされる。
【0035】また、本発明によるピストンのピストンリ
ング溝表面改質方法は、請求項6に記載しているよう
に、Siを15〜24重量%含有するアルミニウム合金
鋳物からなりかつピストンリング溝をそなえているピス
トンにおいてピストンリング溝の表面改質を行うに際
し、ピストンリング溝のピストンリングと接触する対向
面を電解処理することにより初晶Si粒子を突出させ、
洗浄を行った後、ピストンリング溝の対向面に固体潤滑
剤を含む樹脂処理液を塗布し、遠心飛散により塗膜厚さ
が6〜10μmとなるよう均一にした後、温度170〜
230℃にて時間10〜50分間焼成して、固体潤滑剤
を含む樹脂焼成膜をピストンリング溝の対向面に形成す
るようにしたから、ピストンリング溝の対向面とピスト
ンリングの表面との間における金属接触の際の耐アルミ
ニウム凝着性,耐摩耗性,耐剥離性により一層優れたピ
ストンを得ることが可能であるという著大なる効果がも
たらされる。
【0036】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と共に更に詳
しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるも
のではない。
【0037】(実施例1)ピストンの素材としてSi含
有量が20重量%であるJIS AC9B材を用い、重
力金型鋳造によりピストンを作製した。この際、溶湯に
燐改良剤による組織改良を施すことによって、鋳造後に
初晶Si粒子の粒径を20〜50μmにコントロールし
た。その後、T6処理を施し、機械加工を行った後、H
PO:200g/l、HNO:2ml/lの混合
液を用い、電流密度:15A/dmにて電解処理を行
うことによって、図3に示すように、初晶Si粒子5を
ピストンリング溝2のピストンリング(3)との対向面
に突出させた。このとき、突出した初晶Si粒子5の突
出量hは4〜8μmであった。
【0038】次いで、十分に洗浄した後、固体潤滑剤の
被膜処理を行った。この被膜処理に際しては、まず、固
体潤滑剤としてMoS:20重量%、PTFE:5重
量%、Sb:10重量%の配合比で合計35重量
%と、樹脂バインダーとしてポリアミドイミド65重量
%とを添加混合し、溶剤としてn−メチル−2−ピロリ
ドンを加えてボールミルにて混合粉砕した。
【0039】このとき、溶剤量の増減により処理材の粘
度を100mPa・s程度に制御し、図4に示すよう
に、ピストン1を矢印A方向に回転させながらそしてま
た気泡の巻き込みに注意しながらスプレーガン7によっ
て鋭角射出することによりピストンリング溝2の対向面
に塗布した。そして、スプレー塗布後、直ちに、図5に
示すように、遠心分離機8によってピストン1を矢印B
方向に回転させることにより余分な塗布部分を飛散さ
せ、6〜10μmの被膜厚さにした。次いで、温度21
0℃にて時間20分間の焼成を行い、図2に示すよう
に、ピストンリング溝2の対向面において初晶Si粒子
5が突出し且つ初晶Si粒子5は固体潤滑剤を含む樹脂
焼成膜6で覆われている本発明実施例のピストン1を得
た。
【0040】他方、ピストンリング3として、弁ばね線
材である弁ばね用シリコンクロム鋼オイルテンパー線
(JIS SWOSC−V)で成形したピストンリング
基材に、厚さ5μmのりん酸Mn処理を施し、先に得た
ピストン1と図1に示すように組み合わせて両者の耐摩
耗性を評価した。
【0041】(比較例1)ピストンの素材としてSi含
有量が12重量%であるJIS AC8A材を用い、重
力金型鋳造によりピストンを作製した。他方、ピストン
リングの素材として弁ばね線材である弁ばね用シリコン
クロム鋼オイルテンパー線(JIS SWOSC−V)
を用い、この線材で成形したピストンリング基材に厚さ
5μmのりん酸Mn被膜を形成し、実施例1と同様に、
ピストンとピストンリングとを組み合わせて両者の耐摩
耗性を評価した。
【0042】(比較例2)ピストンの素材としてJIS
AC8Aを用いてピストンに成形し、これをT6処理
した後アルマイト処理することによってピストンを作製
した。他方、ピストンリングの素材として弁ばね線材
(SWOSC−V)を用い、これにりん酸Mn処理によ
る被膜を5μmの厚さで形成し、ここで得られたピスト
ンとピストンリングとを組み合わせて両者の耐摩耗性を
評価した。
【0043】(比較例3)ピストンの素材としてJIS
AC8Aを用いてピストンに成形し、ピストンリング
の素材として弁ばね線材(SWOSC−V)を用い、こ
れにMoSの被膜を5μmの厚さで被覆し、得られた
ピストンとピストンリングとを組み合わせて両者の耐摩
耗性を評価した。
【0044】<評価試験> (1)単体試験条件 ピストンとピストンリングとの単体部品の組み合わせに
よる図6に示す要領での叩き摩耗試験機を行った。図6
において、符号1はピストン(正確にはピストンの冠面
からの切り出し材)、3はピストンリング、9はヒータ
ーであり、また、符号Xは反転方向を示し、符号Yは叩
き方向を示す。そして、試験条件は、試験温度:270
℃、荷重:0〜70kg、叩き回数:500rpm、反
転動作:10rpmとし、潤滑油は試験初期に刷毛塗り
で行った。
【0045】(2)エンジン実機試験条件 この試験は四気筒の中型ガソリンエンジンで実施した。
そして、試験条件は、回転速度:5500rpm、耐久
時間:100時間、冷却水温度:105℃、潤滑油温
度:120℃で行った。
【0046】上記実施例および比較例でのピストンおよ
びピストンリングの評価結果を図7および図8に示す。
【0047】図7に示す叩き摩耗試験の結果より明らか
であるように、比較例1(AC8A材を素材としたピス
トンとSWOSC−V基材にりん酸Mn処理を施したピ
ストンリングとの組み合わせ)および比較例3(AC8
A材を素材としたピストンとSWOSC−V基材にMo
処理を施したピストンリングとの組み合わせ)に比
べ、本発明実施例ではピストン側およびピストンリング
側の両方共摩耗がかなり少ないものとなっている。そし
て、比較例3ではMoS焼成層の剥離もみられた。他
方、比較例2のアルマイト処理したピストンとりん酸M
n処理したピストンリングとの組み合わせでは、ピスト
ン側の摩耗量が少ない結果となっているが、このアルマ
イト処理したピストンはコストが高いものになるという
欠点がある。
【0048】図8に示すエンジン実機試験の結果より明
らかであるように、比較例3に比べ本発明実施例ではピ
ストンおよびピストンリングの両方共に摩耗量が少な
く、耐久試験後のブローバイガスのシールに充分の低摩
耗値であった。
【0049】これらの評価結果より裏付けられるよう
に、本発明では優れたピストン(リング溝)およびピス
トンリングの組み合わせを低コストで実現できることが
確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ピストンのピストンリング溝とピストンリン
グとの組み合わせ状態を示す断面説明図である。
【図2】 本発明によるピストンのピストンリング溝の
ピストンリングとの接触面において突出した初晶Si粒
子を固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜で覆った状態を示す断
面説明図である。
【図3】 本発明によるピストンの製造過程においてそ
のピストンリング溝のピストンリングとの接触面におい
て電解処理により初晶Si粒子を突出させた後の状態を
示す断面説明図である。
【図4】 本発明によるピストンの製造過程においてそ
のピストンリング溝のピストンリングとの接触面におい
て固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜材料を塗布する状態を示
す断面説明図である。
【図5】 本発明によるピストンの製造過程においてそ
のピストンリング溝のピストンリングとの接触面におい
て固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜材料を塗布した後遠心飛
散機により余剰部分を飛散させて所望の皮膜厚さにする
ようすを示す説明図である。
【図6】 本発明の評価に用いたピストンリング溝部と
ピストンリングとの間での叩き摩耗試験要領を示す説明
図である。
【図7】 本発明実施例1および比較例1〜3のピスト
ン(リング溝)とピストンリングとの組合わせとした場
合の叩き摩耗試験機結果を示すグラフである。
【図8】 本発明実施例1および比較例3のピストン
(リング溝)とピストンリングとの組合わせとした場合
のエンジン実機試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ピストン 2 ピストンの(トップ)ピストンリング溝 3 (トップ)ピストンリング 4 マトリックス 5 初晶Si粒子 6 樹脂焼成膜

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siを15〜24重量%含有するアルミ
    ニウム合金鋳物からなり、ピストンリングと接触するピ
    ストンリング溝の対向面には初晶Si粒子が突出し、且
    つ、初晶Si粒子は固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜で覆わ
    れていることを特徴とするピストン。
  2. 【請求項2】 アルミニウム合金鋳物中には粒径20〜
    50μmの初晶Si粒子が均一に分散しており、且つ、
    ピストンリングと接触するピストンリング溝の対向面に
    は初晶Si粒子が4〜8μm突出していることを特徴と
    する請求項1に記載のピストン。
  3. 【請求項3】 固体潤滑剤を含む樹脂焼成膜の厚さが6
    〜10μmであることを特徴とする請求項1または2に
    記載のピストン。
  4. 【請求項4】 固体潤滑剤はMoS,WS,PTF
    E,Sbのうちから選ばれる1種以上からなり、
    且つ、固体潤滑剤はポリアミドイミド,ポリイミドのう
    ちから選ばれる1種以上の樹脂焼成膜に含まれているこ
    とを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のピ
    ストン。
  5. 【請求項5】 ピストンリング溝に、硬さがHv450
    〜550の弁ばね素材にりん酸マンガン被膜を3〜5μ
    mの厚さで施したピストンリングを組み合わせているこ
    とを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のピ
    ストン。
  6. 【請求項6】 Siを15〜24重量%含有するアルミ
    ニウム合金鋳物からなりかつピストンリング溝をそなえ
    ているピストンにおいてピストンリング溝の表面改質を
    行うに際し、ピストンリング溝のピストンリングと接触
    する対向面を電解処理することにより初晶Si粒子を突
    出させ、洗浄を行った後、ピストンリング溝の対向面に
    固体潤滑剤を含む樹脂処理液を塗布し、遠心飛散により
    塗膜厚さが6〜10μmとなるよう均一にした後、温度
    170〜230℃にて時間10〜50分間焼成して、固
    体潤滑剤を含む樹脂焼成膜をピストンリング溝の対向面
    に形成することを特徴とするピストンのピストンリング
    溝表面改質方法。
JP14646397A 1997-06-04 1997-06-04 ピストンおよびそのピストンリング溝表面改質方法 Pending JPH10331970A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14646397A JPH10331970A (ja) 1997-06-04 1997-06-04 ピストンおよびそのピストンリング溝表面改質方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14646397A JPH10331970A (ja) 1997-06-04 1997-06-04 ピストンおよびそのピストンリング溝表面改質方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10331970A true JPH10331970A (ja) 1998-12-15

Family

ID=15408215

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP14646397A Pending JPH10331970A (ja) 1997-06-04 1997-06-04 ピストンおよびそのピストンリング溝表面改質方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10331970A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002219393A (ja) * 2001-01-30 2002-08-06 Nok Kuluver Kk 円柱状基材の表面に被膜を成膜する方法、および、被覆層成形機
JP2009068584A (ja) * 2007-09-12 2009-04-02 Toyota Motor Corp 摺動用被覆構造
JP2010059466A (ja) * 2008-09-03 2010-03-18 Sumitomo Electric Ind Ltd 金属材料及びその製造方法、並びに該金属材料を用いた電子機器用筐体
WO2023112125A1 (ja) * 2021-12-14 2023-06-22 ヤマハ発動機株式会社 内燃機関および輸送機器
WO2023112123A1 (ja) * 2021-12-14 2023-06-22 ヤマハ発動機株式会社 内燃機関および輸送機器

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002219393A (ja) * 2001-01-30 2002-08-06 Nok Kuluver Kk 円柱状基材の表面に被膜を成膜する方法、および、被覆層成形機
WO2002060599A1 (fr) * 2001-01-30 2002-08-08 Nok Kluber Co., Ltd. Procede de formation d'une couche mince sur une surface de materiau de base cylindrique et machine de formation d'une couche de couverture
US6841196B2 (en) 2001-01-30 2005-01-11 Nok Kluber Co., Ltd Method of formation of coating film on surface of cylindrical base material and coating layer forming apparatus
JP2009068584A (ja) * 2007-09-12 2009-04-02 Toyota Motor Corp 摺動用被覆構造
JP2010059466A (ja) * 2008-09-03 2010-03-18 Sumitomo Electric Ind Ltd 金属材料及びその製造方法、並びに該金属材料を用いた電子機器用筐体
WO2023112125A1 (ja) * 2021-12-14 2023-06-22 ヤマハ発動機株式会社 内燃機関および輸送機器
WO2023112123A1 (ja) * 2021-12-14 2023-06-22 ヤマハ発動機株式会社 内燃機関および輸送機器
EP4224004A4 (en) * 2021-12-14 2023-11-22 Yamaha Hatsudoki Kabushiki Kaisha COMBUSTION ENGINE AND TRANSPORT DEVICE
EP4219929A4 (en) * 2021-12-14 2024-01-10 Yamaha Motor Co Ltd COMBUSTION ENGINE AND TRANSPORT DEVICE

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5001646B2 (ja) 平軸受
JP3642077B2 (ja) 斜板式コンプレッサーの斜板
US20130174724A1 (en) Swash plate for swash plate compressor and swash plate compressor
JP2002061652A (ja) すべり軸受
JPH1113638A (ja) 斜板式コンプレッサー用斜板
JP3727385B2 (ja) 滑り軸受
JPH07189804A (ja) 内燃機関のピストンおよびその製造方法
JPH11106779A (ja) 固体潤滑被膜組成物及びそれを用いた滑り軸受材料
EP2224146A1 (en) Sliding member for thrust bearing
JP4485131B2 (ja) すべり軸受
JPH0797517A (ja) 摺動用樹脂組成物
JPH07238936A (ja) すべり軸受材料
JP2002053883A (ja) 摺動部材用組成物
JP3416049B2 (ja) 摺動部用被覆材およびピストンリング
WO2004011793A1 (ja) ピストンリング
JP3670598B2 (ja) 二硫化モリブデン投射用材料
JPH10331970A (ja) ピストンおよびそのピストンリング溝表面改質方法
US6337141B1 (en) Swash-plate of swash-plate type compressor
JPH11325077A (ja) 複層摺動材
JPH11106775A (ja) 固体潤滑被膜組成物及びそれを用いた滑り軸受材料
JP2018150528A (ja) 乾性潤滑被膜組成物、及びその乾性潤滑被膜組成物により摺動層を構成した摺動部材
JP3927358B2 (ja) 摺動部材用組成物
CN103797285B (zh) 活塞环
JP2002147459A (ja) オーバレイ層を改質したすべり軸受
JP2004068815A (ja) ピストンリング