JP3416049B2 - 摺動部用被覆材およびピストンリング - Google Patents

摺動部用被覆材およびピストンリング

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JP3416049B2 JP04804298A JP4804298A JP3416049B2 JP 3416049 B2 JP3416049 B2 JP 3416049B2 JP 04804298 A JP04804298 A JP 04804298A JP 4804298 A JP4804298 A JP 4804298A JP 3416049 B2 JP3416049 B2 JP 3416049B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摺動部用被覆材に
係わり、特に、内燃機関用ピストンリング等に被覆し
て、下地金属と相手材との直接接触および潤滑状態の悪
化による凝着,摩耗の発生を防止するために好適に利用
することができる摺動部用被覆材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の内燃機関の高性能化に伴って、そ
の運転環境は年々苛酷になってきている。
【0003】一般に、これら内燃機関のピストンには、
燃焼室の気密の確保およびシリンダー内の適切な潤滑油
コントロールのため、ピストンリングが装着されている
が、特に、高温,高負荷の状態においては、ピストン材
として用いられているアルミニウム合金がピストンリン
グの表面に凝着し、ピストン材が摩耗するという現象が
起こる場合があり、これにより、燃焼室の気密性の低
下、オイル消費量の増大などといった問題を生じること
がある。
【0004】そこで、これを防止するため、一部のエン
ジンにおいては、ピストンリング基材とピストンとの直
接接触の防止と共に、潤滑状態の改善を狙って、ピスト
ンリングの上下面に固体潤滑剤等を含有する被覆を施し
ている。
【0005】従来のこうした被覆のための摺動部用被覆
材としては、例えば、エポキシ樹脂やポリアミドイミド
樹脂等をバインダーとし、二硫化モリブデン(Mo
),グラファイト,ポリテトラフルオロエチレン
(PTFE)等の固体潤滑剤を適宜含有させた固体潤滑
被膜が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の固体潤滑被膜は、摩擦低減効果には優れてい
るものの、より高温・高負荷(高面圧)となるような厳
しい摺動条件に対しては、被膜自身の摩耗の進行が激し
くなって十分な耐久性が得られず、その結果、早期にピ
ストンリング基材とピストンとの間の凝着・摩耗が発生
してしまうことがあるという問題があった。
【0007】このため、アルミニウム合金製ピストンの
場合、こうした厳しい条件下では、ピストンリングとの
摺動面に陽極酸化処理を施す等、より高コストの対策を
採用せざるを得ないというのが実情であった。
【0008】
【発明の目的】本発明は、従来のこうした課題に着目し
てなされたもので、潤滑性だけでなく、高温・高負荷と
なるような厳しい摺動条件下においても、自身の耐摩耗
性を確保し、基材と相手材との間での直接接触による凝
着発生およびそれに伴う基材および/または相手材の著
しい摩耗を長期間阻止できる摺動部用被覆材を提供する
ことにより、これまでにない優れた耐凝着,耐摩耗性能
を複雑な機構を用いず低コストで実現することを目的と
している。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的の達成のため、
本発明者らはこのような樹脂結合被覆材を被覆した摺動
部材の摩擦,摩耗挙動を詳細に調査した結果、特に高温
・高負荷となるような厳しい摺動条件下では、こうした
樹脂結合被覆材の形成による凝着,摩耗防止性能のより
一層の向上のためには、被覆材単相で摺動している領域
での被覆材自身の耐摩耗性向上が特に重要であることを
見いだした。
【0010】これまでは、一般に、二硫化モリブデンを
含有する樹脂結合被膜の場合、摺動部の低摩擦化と共に
被膜中での分散性、さらには下地凹部への埋収効果によ
る下地一部露出時の潤滑性の持続を狙う観点から、1μ
m前後の比較的粒径の小さい二硫化モリブデン粒が多く
用いられてきた。
【0011】しかし、自身の粒内滑りで潤滑効果を発揮
する二硫化モリブデンの特性からも、このように潤滑性
を重視し微細二硫化モリブデン粒を用いた一般的な被覆
は、特に、高出力エンジンのピストンリング等、高温・
高負荷(高面圧)条件での使用においては、先にも述べ
たような耐摩耗性が不十分となる傾向があった。
【0012】本発明者らは、このような条件下ではある
程度大きい粒子の方が被膜自身の耐摩耗性には優れるこ
とを実験でも確認した。
【0013】さらに、過給機付きエンジン等、より一層
高面圧での叩き摺動となるような場合においては、こう
した粒径の大きい二硫化モリブデンを用いると共に、バ
インダーに硬化剤を加え、被膜をより強固なものとする
ことでさらに優れた効果を得られることがわかった。
【0014】すなわち、本発明に係わる摺動部用被覆材
は、請求項1に記載しているように、ベース材としての
ポリイミド系耐熱樹脂50〜90重量%と、添加成分と
して少なくとも硫化モリブデンおよび酸化アンチモンを
それぞれ5〜45重量%含有してなり、添加する硫化モ
リブデンは平均粒径3〜15μmのものを50重量%以
上用いると共に、ベース材となるポリイミド系耐熱樹脂
が硬化剤の配合により網状構造をなしているものとした
ことを特徴としている。
【0015】そして、本発明に係わる摺動部用被覆材の
実施態様においては、請求項2に記載しているように、
硬化剤がフェノール樹脂であるものとすることができ
る。
【0016】同じく、本発明に係わる摺動部用被覆材の
実施態様においては、請求項3に記載しているように、
平均粒径3〜15μmの硫化モリブデンと、平均粒径
0.5〜2μmの硫化モリブデンを1:1〜10:1の
割合で混合して用いるものとすることができる。
【0017】同じく本発明に係わる摺動部用被覆材の実
施態様においては、請求項4に記載しているように、潤
滑性向上成分としてグラファイト,硫化タングステン,
フッ素系樹脂のうちから選ばれる1種以上の固体潤滑剤
を含有するものとすることができる。
【0018】同じく本発明に係わる摺動部用被覆材の実
施態様においては、請求項5に記載しているように、ベ
ース材として用いるポリイミド系耐熱樹脂がポリアミド
イミドであるものとすることができる。
【0019】同じく本発明に係わる摺動部用被覆材の実
施態様においては、請求項6に記載しているように、下
地処理として基材に厚さ1〜10μm、表面粗さRma
x2〜10μmのリン酸塩処理が施されているものとす
ることができ、その場合に、請求項7に記載しているよ
うに、リン酸塩処理がリン酸マンガン処理であるものと
することができる。
【0020】本発明に係わる内燃機関用ピストンリング
は、請求項8に記載しているように、請求項1ないし7
のいずれかに記載の摺動部用被覆材がピストンの往復動
方向と直交する表裏面のうち少なくとも一方もしくは両
方の面に形成されてなるものとしたことを特徴としてい
る。
【0021】
【発明の作用】本発明の摺動部用被覆材は、ベース材と
してのポリイミド系耐熱樹脂50〜90重量%と、添加
成分として少なくとも硫化モリブデンおよび酸化アンチ
モンをそれぞれ5〜45重量%含有してなり、添加する
硫化モリブデンは平均粒径3〜15μmのものを50重
量%以上用いると共に、ベース材となるポリイミド系耐
熱樹脂が硬化剤の配合により網状構造をなしている構成
としたものであるが、このうち、ベース材として、耐熱
性に優れたポリイミド系樹脂を用いることで、高温の摺
動での使用に耐えうるものとなる。
【0022】しかし、被膜中での構成比が50重量%未
満では、被膜の結合性が低下して耐久性が不十分なもの
となる恐れがでてくる。また、90重量%超過では添加
成分である硫化モリブデンや酸化アンチモンの含有量が
少なくなって、これらのもつ作用を活かすことができな
くなるので好ましくない。
【0023】添加成分の硫化モリブデンは固体潤滑剤と
して有効なものであるが、添加量が5重量%未満では十
分な効果を得ることができず、また、45重量%を超え
ると被膜の結合性が低下して耐久性が不十分なものとな
るおそれがでてくる。また、硫化モリブデンの平均粒径
が3μm未満では潤滑性には有利な反面特に高温・高負
荷(高面圧)の摺動条件における被覆材自身の耐摩耗性
が不足し、逆に15μmを超えると潤滑性の低下が大き
くなることから摺動時の摩擦損失が増大し、それに伴う
摩擦発熱によりかえって被膜の耐久性が損なわれるだけ
でなく、このように必要以上に粗大な粒では被膜中での
分散が不均一になると共に、被膜の結合性低下により剥
離等が生じやすくなる。
【0024】従って、本発明の摺動部用被覆材において
は、添加する硫化モリブデンのうち平均粒径3〜15μ
mのものが50重量%以上を占めて主体をなすものとす
ることによって、必要かつ十分な潤滑性と優れた耐摩耗
性を併せ持つものとなる。
【0025】さらに、ベース材となるポリイミド系耐熱
樹脂が、硬化剤の配合により網状構造をなしているもの
とすることによって、特に、過給機付きエンジンのピス
トンリングのごとく、通常の樹脂バインダーでは粒径3
μmを超える硫化モリブデン粒子を十分に保持できなく
なるような高温下での激しい叩き摺動となる状況におい
ても、配合した硫化モリブデン粒子を強固に保持するこ
とができて、被膜の耐久性を著しく向上させる。なお、
この場合の硬化剤としては、例えば、水酸基を持つ樹脂
化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではな
い。
【0026】また、添加成分の酸化アンチモンは、被膜
の強化粒子として添加するものであるが、この酸化アン
チモンは一般的に樹脂複合材に使用されている炭素繊維
等に比べて硬度が高すぎず、粒子形状も球形に近くエッ
ジを持たないことから、相手摺動部材としてアルミニウ
ム等の比較的軟質な金属を組み合わせた場合でも、その
摩耗を促進してしまうようなことがない。しかし、その
添加量が5重量%未満では十分な被膜強化効果を発揮す
ることが難しくなり、、また、45重量%を超えると被
膜の結合性が低下して耐久性が不十分なものとなるおそ
れがでてくる。
【0027】本発明に係わる摺動部用被覆材は、平均粒
径3〜15μmの硫化モリブデンと、平均粒径0.5〜
2μmの硫化モリブデンを1:1〜10:1の割合で混
合して用いるものとすることができるが、このように、
平均粒径3〜15μmの硫化モリブデンに平均粒径0.
5〜2μmの硫化モリブデンを混合して用いることで、
特に、被膜の摩耗進行により部分的に下地が露出して相
手材との直接接触部が生じた場合においても、硫化モリ
ブデン粒子が下地凹部に十分な量残存することによって
潤滑性が維持され、より一層長期にわたって下地と相手
材との間での凝着・摩耗の発生を防止しうるものとな
る。
【0028】しかしながら、混合する硫化モリブデンの
平均粒径が0.5μm未満ではこうした効果が飽和する
ことに加え、粒子の粉砕に要する時間およびコストが増
加してしまうので好ましくない。逆に、混合する硫化モ
リブデンの平均粒径が2μmを超えると、十分な下地へ
の埋収効果を得ることが困難となる。
【0029】平均粒径0.5〜2μmの硫化モリブデン
の配合量については、先の説明で述べた理由から、平均
粒径3〜15μmの硫化モリブデンと同量以下とするの
が望ましいが、これに対し1/10未満となるような少
量の配合では下地凹部に埋収される硫化モリブデン粒子
の量が少なくなり過ぎ、部分的に下地が露出した場合の
潤滑効果を期待することが難しくなる。
【0030】さらに、本発明に係わる摺動部用被覆材
は、潤滑性向上成分として、グラファイト,硫化タング
ステン,フッ素系樹脂のうちから選ばれる1種以上の固
体潤滑剤を含有するものとすることができる。
【0031】特に、潤滑状態の厳しい環境、あるいは、
低フリクションが要求される部位に使用するような場合
には、これらの固体潤滑剤を適宜含有させることで被膜
の潤滑性はさらに向上したものとなる。ここで選択する
固体潤滑剤としては、摺動条件に応じて、耐熱性に特に
優れるグラファイト、広い温度域でバランスの良い潤滑
性を示す硫化タングステン、比較的低荷重での摩擦低減
効果の高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)な
どのフッ素系樹脂のうちから適宜選択し用いることで、
一段と効果的に潤滑性を付与しうるものとなる。
【0032】そしてまた、本発明に係わる摺動部用被覆
材は、ベース材として用いるポリイミド系耐熱樹脂がポ
リアミドイミドであるものとすることができるが、この
ポリアミドイミドは通常の芳香族ポリイミド等と異なり
溶剤に可溶であるため、溶剤との配合を調整することに
よってスプレー塗布、ローラー塗布等、目的に応じて任
意に被覆方法を選択することができ、より広範囲の摺動
部位に好適に利用できるだけでなく、ポリイミド系樹脂
のうちでも特に摺動特性と耐熱性のバランスに優れた材
料であることから、ポリアミドイミドをベース材として
用いることにより、高温の摺動部に特に適したものとな
る。
【0033】さらにまた、本発明に係わる摺動部用被覆
材は、下地処理として基材に厚さ1〜10μm、表面粗
さRmax2〜10μmのリン酸塩処理が施されている
ものとすることができ、その場合に、リン酸塩処理がリ
ン酸マンガン処理であるものとすることができる。
【0034】このように、下地処理としてリン酸塩処理
を施すことにより、基材との密着強度がより一層向上
し、一段と安定性に優れた摺動部用被覆材となる。ま
た、このリン酸塩処理として、緻密で強度が高く、耐熱
性にも優れた処理層が得られるリン酸マンガン処理を用
いることで、より有効な下地処理層が得られ、被覆材の
安定性がさらに高まる。
【0035】しかし、リン酸塩処理層の粗さがRmax
2μ未満では密着強度向上の作用が十分に得られない傾
向になると共に、処理層凹部への硫化モリブデン粒子の
埋収効果が低下する。逆に、10μmを超えるとこのリ
ン酸塩処理層を下地として被覆材を形成する時に均一な
被膜形成が難しくなり、被膜の早期剥離、脱落の原因と
なることがある。
【0036】さらに、リン酸塩処理層の厚さが1μm未
満では下地金属の面性状の影響が大きくなり安定した密
着強度向上の効果が得られなくなり、逆に、10μmを
超えると均一なリン酸塩処理層を得ることが困難とな
り、これを下地とした時の被覆材の安定性が損なわれる
傾向となる。
【0037】そして、上述のような優れた特性を有する
本願発明の摺動部用被覆材を適用するに際し、内燃機関
用ピストンリングの上下面(ピストンの往復動方向と直
交する表裏面)のうち少なくとも一方の面に形成して用
いることによって、高温・高負荷となるような厳しい条
件下においてもピストンリング基材とピストンとの凝着
・摩耗の発生が長期間にわたって防止されることとな
る。
【0038】
【発明の効果】本発明による摺動部用被覆材では、請求
項1に記載しているように、ベース材としてのポリイミ
ド系耐熱樹脂50〜90重量%と、添加成分として少な
くとも硫化モリブデンおよび酸化アンチモンをそれぞれ
5〜45重量%含有してなり、添加する硫化モリブデン
は平均粒径3〜15μmのものを50重量%以上用いる
と共に、ベース材となるポリイミド系耐熱樹脂が硬化剤
の配合により網状構造をなしている構成としたものであ
るから、十分な潤滑性を有するだけでなく、高温・高負
荷(高面圧)の摺動条件においても、相手材への攻撃性
を大きくすることなく優れた耐摩耗性を付与することが
可能となり、特に、過給機付きエンジンのピストンリン
グ等、高温下での激しい叩き摺動となるような厳しい状
況においても、長期にわたって基材金属と相手材との凝
着・摩耗を防止することが可能になるという著しく優れ
た効果がもたらされる。
【0039】そして、本発明による摺動部用被覆材で
は、請求項2に記載しているように、硬化剤がフェノー
ル樹脂であるものとすることによって、鎖状構造のポリ
アミドイミド系耐熱樹脂が互いに結びついて網状構造を
形成することによりさらに強化されたものになるという
顕著な効果がもたらされる。
【0040】また、本発明による摺動部用被覆材では、
請求項3に記載しているように、平均粒径3〜15μm
の硫化モリブデンと、平均粒径0.5〜2μmの硫化モ
リブデンを1:1〜10:1の割合で混合して用いるも
のとすることによって、被膜の摩耗進行により部分的に
下地が露出して相手材との直接接触部が生じた場合にお
いても、十分な潤滑性が維持され、より一層長期わたっ
て下地と相手材との間での凝着・摩耗の発生を防止する
ことが可能になるという顕著な効果がもたらされる。
【0041】さらに、本発明による摺動部用被覆材で
は、請求項4に記載しているように、潤滑性向上成分と
してグラファイト,硫化タングステン,フッ素系樹脂の
うちから選ばれる1種以上の固体潤滑剤を含有するもの
とすることによって、特に、潤滑状態の厳しい環境、あ
るいは、低フリクションが要求される部位に使用するよ
うな場合に、より優れた潤滑性を有効に付与することが
可能になるという顕著な効果がもたらされる。
【0042】さらにまた、本発明による摺動部用被覆材
では、請求項5に記載しているように、ベース材として
用いるポリイミド系耐熱樹脂がポリアミドイミドである
ものとすることによって、目的に応じた被覆方法を選択
でき、広範囲の摺動部位に適用できると共に、その優れ
た摺動特性と耐熱性によって、高温用摺動部材としてよ
り一層好適に使用することが可能になるという顕著な効
果がもたらされる。
【0043】さらにまた、本発明による摺動部用被覆材
では、請求項6に記載しているように、下地処理として
基材に厚さ1〜10μm、表面粗さRmax2〜10μ
mのリン酸塩処理が施されているものとすることによっ
て、基材金属との密着性をより一層高めることができ、
一段と安定性に優れた被覆材とすることが可能となり、
請求項7に記載しているように、リン酸塩処理がリン酸
マンガン処理であるものとすることによって、より緻密
で強度が高く、耐熱性にも優れた下地処理層を得ること
ができ、被覆材の安定性をさらに高めることが可能にな
るという著しく優れた効果がもたらされる。
【0044】そして、このような優れた特性を有する本
発明による摺動部用被覆材を適用するに際し、請求項8
に記載しているように、内燃機関用ピストンリングのピ
ストンの往復動方向と直交する表裏面のうち少なくとも
一方の面に形成して用いることによって、高出力エンジ
ン、特に、過給機付きエンジン等の高温・高負荷(高面
圧)となるような厳しい条件下においても、ピストンリ
ング基材とピストンとの間での凝着・摩耗の発生、およ
び、その進行を従来にない水準で長期にわたって防止す
ることが可能になるという著しく優れた効果がもたらさ
れる。
【0045】
【実施例】次に、実施例について比較例と共にさらに詳
細に説明する。
【0046】(実施例1〜4)まず、ベース材となるポ
リイミド系耐熱樹脂としてポリアミドイミド(PAI)
を用い、このポリアミドイミド(硬化剤としてフェノー
ル樹脂を20重量%添加)をn−メチル−2−ピロリド
ンおよびキシレンを溶剤として溶解し、これに表1の実
施例1〜4の各欄に示した組成となるように、平均粒径
7μmの二硫化モリブデン(MoS)と、平均粒径1
μmの二硫化モリブデン(MoS)と、酸化アンチモ
ン(Sb)と、グラファイトと、ポリテトラフル
オロエチレン(PTFE)と、二硫化タングステン(W
)を配合して、被覆材の溶液を調整した。
【0047】
【表1】
【0048】次に、ばね用鋼で作製したピストンリング
基材の上面に脱脂等の表面調整を施した後、表面粗さR
max約4μm、厚さ約4μmのリン酸マンガン処理を
施し、この上に、上記のごとく調整した溶液をスプレー
塗布して乾燥した後、約180〜220℃で加熱焼成し
て、図1に示すように、ピストンリング基材1bの上面
に約10μm厚さの摺動部用被覆材1cを被覆したピス
トンリング1のテストピースを作成した。
【0049】(比較例1〜8)前記実施例で用いたと同
じポリアミドイミド(PAI:ただし、比較例1〜4で
は硬化剤を添加せず)をn−メチル−2−ピロリドンお
よびキシレンを溶剤として溶解し、これに表1の比較例
1〜8の各欄に示した組成となるように、平均粒径7μ
mの二硫化モリブデン(MoS)と、平均粒径1μm
の二硫化モリブデン(MoS)と、酸化アンチモン
(Sb)と、グラファイトと、ポリテトラフルオ
ロエチレン(PTFE)と、二硫化タングステン(WS
)を配合して、被覆材の溶液を調整した。
【0050】次に、ばね用鋼で作製したピストンリング
基材の上面に脱脂等の表面調整を施した後、表面粗さR
max約4μm、厚さ約4μmのリン酸マンガン処理を
施し、この上に、上記のごとく調整した溶液をスプレー
塗布して乾燥した後、約180〜220℃で加熱焼成し
て、実施例と同様に、ピストンリング基材1bの上面に
約10μm厚さの摺動部用被覆材1cを被覆したピスト
ンリング1のテストピースを作成した。
【0051】(凝着摩耗試験)実施例1〜4,比較例1
〜8で作成した各ピストンリング1のテストピースを、
図2に示すように、実際のアルミニウム合金製ピストン
からの切り出し材2を相手材として、表2に示す条件
(試験温度は加熱ヒーター3により設定)で単体凝着摩
耗試験を行い、摺動面1sでの凝着発生までの時間を比
較した。その結果を表3に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】表3より明らかなように、本発明実施例1
〜4に係わるものは、ベース材のポリアミドイミドに硬
化剤の配合を行っていない比較例1〜4,平均粒径3〜
15μmの硫化モリブデンの配合比率が本発明範囲から
外れる比較例5,6、ベース材の構成比が本発明範囲か
ら外れる比較例7、さらには強化粒子である酸化アンチ
モンを添加していない比較例8に比べ、凝着発生までの
耐久時間が大きく向上しており、従来の樹脂結合被覆材
では得られない優れた性能を有していることがわかっ
た。
【0055】そして、これに関してさらに分析したとこ
ろ、本発明実施例で得られた摺動部用被覆材1cは、ポ
リイミド系耐熱樹脂としてポリアミドイミド(PAI)
を用い、硬化剤としてフェノール樹脂を用いているた
め、下記の化1に示すような反応が生じている。
【0056】
【化1】
【0057】このように、鎖状構造のポリアミドイミド
(PAI)が互いに結びにつき、網状構造を形成してい
てより一層強化されたものとなっていることが認められ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示すピストンリングの一部
拡大断面説明図である。
【図2】 単体凝着摩耗試験の概要を示す断面説明図で
ある。
【符号の説明】
1 ピストンリング 1b ピストンリング基材 1c 摺動部用被覆材 1s 摺動面 2 ピストンからの切り出し材(相手材) 3 加熱ヒーター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F16J 9/26 F16J 9/26 C // B05D 7/24 302 B05D 7/24 302X 303 303B C23C 22/07 C23C 22/07 (72)発明者 塩 田 正 彦 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (56)参考文献 特開 平6−200275(JP,A) 特開 平9−272884(JP,A) 特開 平6−240273(JP,A) 特開 平11−94084(JP,A) 特開 平10−311427(JP,A) 特開 平10−246150(JP,A) 特開 平8−109352(JP,A) 特開 平8−42393(JP,A) 特開 平1−307568(JP,A) 特開 昭55−144051(JP,A) 実公 昭61−55065(JP,Y1) 実公 昭60−82552(JP,Y1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02F 5/00 C09D 179/08 C10M 107/00 - 107/54 C10M 125/00 - 125/30 F16J 9/26 - 9/28

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ベース材としてのポリイミド系耐熱樹脂
    50〜90重量%と、添加成分として少なくとも硫化モ
    リブデンおよび酸化アンチモンをそれぞれ5〜45重量
    %含有してなり、添加する硫化モリブデンは平均粒径3
    〜15μmのものを50重量%以上用いると共に、ベー
    ス材となるポリイミド系耐熱樹脂が硬化剤の配合により
    網状構造をなしていることを特徴とする摺動部用被覆
    材。
  2. 【請求項2】 硬化剤がフェノール樹脂であることを特
    徴とする請求項1に記載の摺動部用被覆材。
  3. 【請求項3】 平均粒径3〜15μmの硫化モリブデン
    と、平均粒径0.5〜2μmの硫化モリブデンを1:1
    〜10:1の割合で混合して用いることを特徴とする請
    求項1または2に記載の摺動部用被覆材。
  4. 【請求項4】 潤滑性向上成分としてグラファイト,硫
    化タングステン,フッ素系樹脂のうちから選ばれる1種
    以上の固体潤滑剤を含有することを特徴とする請求項1
    ないし3のいずれかに記載の摺動部用被覆材。
  5. 【請求項5】 ベース材として用いるポリイミド系耐熱
    樹脂がポリアミドイミドであることを特徴とする請求項
    1ないし4のいずれかに記載の摺動部用被覆材。
  6. 【請求項6】 下地処理として基材に厚さ1〜10μ
    m、表面粗さRmax2〜10μmのリン酸塩処理が施
    されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれ
    かに記載の摺動部用被覆材。
  7. 【請求項7】 リン酸塩処理がリン酸マンガン処理であ
    ることを特徴とする請求項6に記載の摺動部用被覆材。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれかに記載の摺
    動部用被覆材がピストンの往復動方向と直交する表裏面
    のうち少なくとも一方の面に形成されてなることを特徴
    とする内燃機関用ピストンリング。
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