JP5048294B2 - 潤滑剤組成物および焼付防止剤ならびにセンサ - Google Patents

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本発明は、潤滑剤組成物に関するものであり、特に500℃以上の高温にさらされる可能性のある部品の焼付を防止するための潤滑剤組成物及びこの組成を有する焼付防止剤並びにこの焼付防止剤を適用したセンサに関する。
金属製部品のネジ部分等の必要箇所には、しばしば焼付防止を目的として、潤滑剤を必要箇所に塗布した後に組み立てられる。この金属製部品としては、被測定ガス中の特定ガス成分を検出するために内燃機関の排気管等に取り付けられるガスセンサの主体金具や、被測定ガス中の温度を検出するために排気管等に取り付けられる温度センサの主体金具等が挙げられる。また、このような潤滑剤としては、固体潤滑剤を主成分とし、潤滑基油や潤滑基油を増ちょう剤で半固体化したグリースをキャリア成分とするペースト状潤滑剤であることが多い(例えば、非特許文献1参照)。
従来、500℃以上の高温にさらされる可能性のある金属製部品に適用されるペースト状潤滑剤には、銅、アルミニウム、ニッケル、鉛、亜鉛などの金属を主成分とし、必要に応じて、二硫化モリブデンやグラファイトを組み合わせた固体潤滑剤を用いることが多い(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらの金属は、二硫化モリブデンやグラファイトよりも硬く、潤滑性がやや劣るため、適用条件によっては十分な焼付防止効果が得られないという問題がある。
また、固体潤滑剤として窒化ほう素も用いられることがある(例えば、非特許文献2参照)。しかし、窒化ほう素は高価であるため、適用は極めて限定される。このため、銅、アルミニウム、ニッケル、鉛、亜鉛などの金属や窒化ほう素を含まず、かつ高温にさらされる部品に適用可能な、焼付防止用潤滑剤の開発が望まれている。
このような問題を解決すべく、セリサイト(雲母粘土鉱物)を潤滑油またはグリース基剤中に含有させた高温用ねじ焼付防止剤が公開されているものの(特許文献2参照)、含有するセリサイトが二硫化モリブデンやグラファイトよりも硬く、潤滑性が劣るという問題がある。
特に、高温で過酷な条件で使用されるセンサにふさわしい十分な焼付防止性能を有する焼付防止剤は、現在まで得られていない。
特公平8−19435号公報 特開2001−303085号公報 松永正久ほか、「固体潤滑ハンドブック」409〜416頁、株式会社幸書房、1978年 「ペースト状特殊潤滑剤カタログ」12頁、住鉱潤滑剤株式会社、2004年
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術で挙げた問題点を解決できる潤滑剤組成物および、焼付防止剤ならびにセンサを提供することにある。すなわち、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属や窒化ほう素を用いることなく、500℃以上の高温にさらされる可能性のある金属製部品に適用可能な潤滑材組成物及びこれを用いる焼付防止剤並びにこの焼付防止剤を適用するセンサを提供することを課題とする。
本発明は、以下の潤滑剤組成物を提供するものである。
本発明の潤滑剤組成物は、グラファイトからなる固体潤滑剤(A成分)が2.5質量%以上60質量%未満と、アンチモンの単体もしくは三酸化アンチモンからなる潤滑補助剤(B成分)が3.3質量%以上67.5質量%以下と、潤滑基油、もしくは潤滑基油及び増ちょう剤からなるキャリア成分(C成分)が20質量%以上90質量%以下とからなることを特徴とする。
前記潤滑剤組成物において、A成分とB成分の配合率が、式1を満たすことが好ましい。
式1: 1/3<B/(A+B)≦3/4
記した潤滑剤組成物は、焼付防止剤として用いることが有効である。
前記した焼付防止剤は、金属部品用として用いられることが好ましい。
特に被測定ガス中の状態を検出する検出素子と、該検出素子を保持する主体金具と、を有し、主体金具には、検出素子を被測定ガスに晒す際に排気管に取り付けるための取り付け部を有するセンサであって、少なくとも前記主体金具の前記取り付け部の外表面に前記した焼付防止剤が塗布されていることが好ましい。
本発明の潤滑剤組成物は、焼付防止効果、特に500℃以上の高温にさらされる可能性のある金属製部品、特にセンサの主体金具の取り付け部の焼付防止効果に優れている。
本発明の潤滑剤組成物は、固体潤滑剤と、潤滑補助剤と、キャリア成分とからなる。
本発明の潤滑剤組成物に使用する固体潤滑剤は、グラファイトからなる。グラファイトは市販されているもので、その平均粒径は100μm以下、好ましくは30μm以下である。本発明の潤滑剤組成物におけるグラファイトの配合率は、2.5質量%以上60質量%未満であり、好ましくは10質量%以上25質量%以下である。グラファイトの配合率が2.5質量%未満であると、焼付防止効果が得られない。一方、グラファイトの配合率が60質量%以上であると、潤滑剤組成物としての流動性が失われ、部品摺動面への導入性が低下するため、結果として焼付防止効果が得られない。
本発明の潤滑剤組成物に使用する潤滑補助剤は、アンチモンの単体もしくは三酸化アンチモンからなる。本発明における潤滑補助剤とは、固体潤滑剤と組み合わせて用いることにより、焼付防止効果を向上させる添加剤である。アンチモンの単体もしくは三酸化アンチモンは、市販されているものをそのまま利用できる。
本発明における潤滑補助剤の配合率は3.3質量%以上67.5質量%以下であり、好ましくは10質量%以上25質量%以下である。潤滑補助剤の配合率が3.3質量%未満であると、潤滑補助剤の効果が発現しないため、焼付防止効果が得られない。一方、潤滑補助剤の配合率が67.5質量%を超えると、潤滑剤組成物としての流動性が失われ、部品摺動面への導入性が低下するため、結果として焼付防止効果が得られない。
本発明の潤滑剤組成物における固体潤滑剤(A成分)と潤滑補助剤(B成分)との存在比は、それぞれの質量比をA、Bとした場合に、
1/3<B/(A+B)≦3/4
であることが好ましい。この値が1/3以下であると、固体潤滑剤と潤滑補助剤の組み合わせによる相乗的な焼付防止効果が発現されず、3/4よりも大きいと固体潤滑剤の持つ本来の焼付防止効果が発現されないため、上記式の範囲内に制御することが好ましい。
さらに、本発明の潤滑剤組成物には、潤滑基油、もしくは潤滑基油及び増ちょう剤からなるキャリア成分が含まれている。本発明におけるキャリア成分の配合率は20質量%以上90質量%以下である。キャリア成分の配合率が20質量%未満であると、潤滑剤組成物としての流動性が失われ、部品摺動面への導入性が低下するため、結果として焼付防止効果が得られない。一方、キャリア成分の配合率が90質量%を超えると、固体潤滑剤及び潤滑補助剤の効果が発現しないため、焼付防止効果が得られない。
まず、キャリア成分である潤滑基油、または潤滑基油及び増ちょう剤について説明する。本発明の潤滑剤組成物におけるキャリア成分に含まれる潤滑基油としては、鉱物油、合成炭化水素油、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、アルキル置換ジフェニルエーテル等およびそれらの混合油が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明の潤滑剤組成物におけるキャリア成分に含まれる増ちょう剤としては、グリースの増ちょう剤として利用可能な、カルシウムスルフォネート複合石けん、リチウム複合石けん、カルシウム複合石けん、リチウム石けん、カルシウム石けん、有機化ベントナイト、微粉末シリカ、脂肪族ジウレア、脂環族ジウレア、芳香族ジウレア、トリウレアおよびテトラウレア化合物が挙げられる。
本発明の潤滑剤組成物は、焼付防止剤として特開平11−190720に示されるようなガスセンサを排気管に取り付けるためのナット部材のネジ部に用いられたり、以下に説明するようなガスセンサ1に用いられる。なお、本実施形態のガスセンサ1は、一実施形態であり、これに限られるものではない。このガスセンサ1は、自動車の排気管に装着されて排気ガス中の酸素の濃度を検出するガスセンサ1(酸素センサ)である。図1は、ガスセンサ1の全体構成を示す断面図である。
図1に示すように、ガスセンサ1は、先端部が閉じた有底筒状をなすセンサ素子2、センサ素子2に挿入されるセラミックヒータ3と、センサ素子2を内側にて保持する主体金具4を備える。なお、図1に示すセンサ素子2の軸に沿う方向のうち、測定対象ガス(排気ガス)に晒される先端部に向かう側(閉じている側、図中の下側)を「先端側」とし、これと反対方向(図中上側)に向かう側を「後端側」として説明する。
このセンサ素子2は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体21と、その固体電解質体21の内面に、PtあるいはPt合金により形成された内部電極22と、固体電解質体21の外面に形成された外部電極23を有している。また、このセンサ素子2の軸線方向の略中間位置には、径方向外側に向かって突出するフランジ部24が設けられている。また、セラミックヒータ3は、棒状に形成されると共に、内部に発熱抵抗体を有する発熱部31を備えている。
主体金具4は、ガスセンサ1を排気管に取り付けるためのネジ部41(特許請求の範囲の取り付け部に相当する)と、排気管への取り付け時に取付工具をあてがう六角部42を有している。また、六角部42の先端側には、ガスケット5が配置されている。そして、このネジ部41の表面には、本発明の焼付防止剤が塗布されており、排気管に取り付けられ、主体金具4が高温にさらされたとしても、排気管との焼付きを防止している。
また、主体金具4には、先端側内周に径方向内側に向かって突出した金具側段部43が設けられており、この金具側段部43にパッキン6を介してアルミナ製の支持部材7が支持されている。なお、センサ素子2のフランジ部24が支持部材7上にパッキン8を介して支持される。また、支持部材7の後端側における主体金具4の内面とセンサ素子2の外面との間には、充填部材9が配設され、さらにこの充填部材9の後端側にスリーブ100および環状リング110が順次内挿されている。
また、主体金具5の先端側には、複数のガス取入れ孔121を有する二重の金属製のプロテクタ120が取り付けられている。
また、主体金具4の後端側内側には内筒部材130の先端側が挿入されている。この内筒部材130は、先端側を環状リング110に当接させた状態で、主体金具4の後端部44を内側先端方向に加締めることで、主体金具4に固定されている。なお、主体金具4の後端部44を加締めることで、充填部材9がスリーブ100を介して圧縮充填される構造になっており、これによりセンサ素子2が筒状の主体金具4の内側に気密状に保持されている。
内筒部材130の後端側には、周方向に沿って所定の間隔で複数の大気導入孔131が形成されている。そして、内筒部材12の大気導入孔131を覆うように筒状のフィルタ140が配置されている。さらに、フィルタ140を覆うように外筒部材150が配置されており、外筒部材150のうち、フィルタ140に対応する位置には周方向に沿って所定の間隔で複数の大気導入孔151が形成されている。
また、内筒部材14の内側にはセパレータ160が配置されている。このセパレータ160は、素子用リード線170、180と、ヒータ用リード線190、200とを挿通するためのセパレータリード線挿通孔161が先端側から後端側にかけて貫通するように形成されている。
また、各リード線170、180、190、200は、詳細は図示しないが、導線を樹脂からなる絶縁皮膜にて被覆した構造を有しており、導線の後端側がコネクタに設けられるコネクタ端子に接続される。そして、素子用リード線170の導線の先端側は、センサ素子2の外面に対して外嵌される端子金具210の後端部と加締められ、素子用リード線180の導線の先端側は、センサ素子2の内面に対して圧入される端子金具220の後端部と加締められる。これにより、素子用リード線170は、センサ素子2の外部電極23と電気的に接続され、素子用リード線180は、内部電極22と電気的に接続される。他方、ヒータ用リード線190、200の導線の先端部は、セラミックヒータ3の発熱抵抗体と接合された一対のヒータ用端子金具230と各々接続される。
そして、セパレータ160の後端側には、耐熱性に優れるフッ素ゴム等からなるシール材240が、外筒部材150を加締めることにより固定されている。このシール部材240には、軸線方向に貫くように4つのリード線挿通孔241が形成されている。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
(実施例1〜5および比較例1〜3)
表1に示す配合率で固体潤滑剤、潤滑補助剤およびキャリア成分を配合して試料を作製した。試料の作製方法は特に限定されないが、一般的には、固体潤滑剤、潤滑補助剤およびキャリア成分を混合・攪拌し、必要に応じて3本ロールミルやホモジナイザーを用いて分散処理を行うことによって、作製できる。
固体潤滑剤、潤滑補助剤およびキャリア成分はいずれも、市販されているものであって、工業製品として入手可能なものである。
*1 鱗状黒鉛
*2 住友金属鉱山株式会社製
*3 三共油化工業株式会社製SNH−46
*4 Krompton社製G−2000
*5 大日本インキ化学工業株式会社製EPICRON830S
*6 味の素ファインテクノ株式会社製アミキュアPN−23
*7 味の素ファインテクノ株式会社製アミキュアAH−154
*8 アルキレンモノグリシジルエーテルであって、25℃における粘度が6.5〜9.0mPa・sかつエポキシ当量が280〜320g/eqのもの
表1中の数値は、配合割合(質量%)を示す。表1中のグラファイトの平均粒径は、30μm以下である。
(焼付防止効果の評価)
本発明における潤滑剤組成物の焼付防止効果は、次のように評価した。
上記に述べたガスセンサ1に使用される主体金具4のネジ部41に約60mgの潤滑剤組成物を塗布し、試料用のナットに60N・mのトルクで締め付ける。なお、主体金具4は、SUS430製であり、試料用のナットは、SUS409L製である。さらに本評価は、ガスセンサ1に取り付ける前の主体金具4単体をナットに締め付けて行なった。その後、締結された主体金具4及びナットを500℃ないし700℃に保った電気炉で100時間加熱する。次いで室温まで冷却し、主体金具4をナットから緩める。これをそれぞれ10個ずつ行い、焼付が生じた主体金具4の個数の割合を百分率で表示し、焼付率(%)とした。なお、「焼付が生じた」とは、トルクレンチを使用して手で緩めた際に、ナットから主体金具4が外れない状況を指す。この場合に、さらに強い力で緩めると、主体金具4のネジ部41のねじ山がつぶれた状態となる。評価は、焼付率に基づいて、次のように行った。
◎:焼付率が0%
○:焼付率が0%を超え、10%以下
△:焼付率が10%を超え、30%以下
×:焼付率が30%を超える
実施例1〜5および比較例1〜5の評価結果を表2に示す。
(比較例4,5およびその焼付防止性評価)
なお、比較例4,5として、市販の焼付防止用潤滑剤についても上記と同様の焼付防止性評価を実施した。比較例4は、市販の焼付防止剤であって、固体潤滑剤としてグラファイト、銅およびアルミニウムを含み、かつ潤滑補助剤を含まないものである。比較例5は、市販の焼付防止剤であって、グラファイト、アルミニウムおよびニッケルを含み、かつ潤滑補助剤を含まないものである。
固体潤滑剤としてグラファイト、潤滑補助剤として三酸化アンチモン、キャリア成分として鉱物油をカルシウムスルフォネート複合石けんで増ちょうしたグリース、またはビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いた、本発明の実施例1〜5の潤滑剤組成物は、500℃、700℃共に良好な焼付防止性能を示した。これに対し、潤滑補助剤をまったく含まない比較例1〜2、固体潤滑剤をまったく含まない比較例3および、銅やアルミニウム等の金属が配合され潤滑補助剤を含まない市販の焼付防止剤の比較例4〜5はいずれも、500℃または700℃のいずれか一方が焼付防止性能に劣るものとなった。
本実施形態のガスセンサ1の断面図である。
符号の説明
1・・・・・ガスセンサ
2・・・・・センサ素子
3・・・・・ヒータ
4・・・・・主体金具
7・・・・・支持部材
9・・・・・充填部材
100・・・スリーブ
120・・・プロテクタ
130・・・内筒部材
140・・・フィルタ
150・・・外筒部材
160・・・セパレータ
240・・・シール部材

Claims (5)

  1. グラファイトからなる固体潤滑剤(A成分)が2.5質量%以上60質量%未満と、アンチモンの単体もしくは三酸化アンチモンからなる潤滑補助剤(B成分)が3.3質量%以上67.5質量%以下と、潤滑基油、もしくは潤滑基油及び増ちょう剤からなるキャリア成分(C成分)が20質量%以上90質量%以下とからなることを特徴とする潤滑剤組成物。
  2. 前記A成分と前記B成分との配合率が式1を満たすことを特徴とする請求項1記載の潤滑剤組成物。
    式1: 1/3<B/(A+B)≦3/4
  3. 請求項1又は2に記載の潤滑剤組成を有することを特徴とする焼付防止剤。
  4. 他部材に取部が係合される金属部品であって、請求項記載の焼付防止剤が少なくとも取部に塗布されていることを特徴とする金属部品。
  5. 被測定ガス中の状態を検出する検出素子と、
    該検出素子を保持する主体金具と、を有し、
    該主体金具には、前記検出素子を被測定ガスに晒す際に排気管に取り付けるための取り付け部を有するセンサであって、
    請求項記載の焼付防止剤が少なくとも前記主体金具の前記取り付け部の外表面に塗布されていることを特徴とするセンサ。
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