以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(図2から図4においても同じ)。図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11、主体金具30及び粉末40を備えている。
絶縁体11は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるアルミナ等により形成された略円筒状の部材である。絶縁体11は、軸線Oに沿って貫通する軸孔12が形成されている。絶縁体11は、第1部13の先端側に張出部15が隣接し、張出部15の先端側に第2部18が隣接している。
図2は絶縁体11の軸線Oを含む断面図である。図2では、絶縁体11の第1部13の後端側の図示、及び、第2部18の先端側の図示が省略されている。張出部15の外径D1(張出部15の外径の最大値)は、第1部13の外径よりも大きい。第1部13の外周面14は、張出部15の後端向き面16の後端側に隣接している。張出部15の後端向き面16は、先端側に向かうにつれて拡径している。
第2部18の外径は、張出部15の外径D1よりも小さい。第2部18は、先端側に形成された先端向き面21と、先端向き面21と張出部15との間に形成されたストレート部19と、を備えている。張出部15の先端向き面17は、ストレート部19の外周面20の後端側に隣接している。張出部15の先端向き面17は、先端側に向かうにつれて縮径している。ストレート部19の外周面20は、先端向き面21の後端側に隣接している。先端向き面21は、先端側に向かうにつれて縮径している。
本実施形態では、ストレート部19の外径は、ストレート部19の軸線方向の全長に亘って一定である。張出部15の先端向き面17を示す線を延長した第1仮想直線22とストレート部19の外周面20を示す線を延長した第2仮想直線23との交点24は、軸線Oを挟んで2箇所に形成される。本実施形態では、交点24間の距離D2は6.0mm以下であり、張出部15の外径D1と距離D2との差は5.6mm以上である。
図1に戻って説明する。中心電極25は、軸孔12の先端側に配置され絶縁体11に保持される棒状の電極である。中心電極25は、熱伝導性に優れる芯材が母材に埋設されている。母材はNiを主体とする合金またはNiからなる金属材料で形成されており、芯材は銅または銅を主成分とする合金で形成されている。芯材を省略することは可能である。
端子金具26は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具26は先端側が絶縁体11の軸孔12に挿入されている。端子金具26は、導電性を有するガラスからなる導電性シール等によって、軸孔12内で中心電極25と電気的に接続されている。
主体金具30は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成され、絶縁体11を外周側から保持する略円筒状の部材である。主体金具30は、絶縁体11の第2部18の周囲に配置される胴部31と、胴部31の後端側に隣接する座部35と、座部35の後端側に隣接する接続部36と、接続部36の後端側に隣接する工具係合部37と、工具係合部37の後端側に隣接する加締め部38と、を備えている。胴部31は、内燃機関(図示せず)のねじ穴に螺合するおねじ32が外周に形成されている。本実施形態では、おねじ32の呼び径は8mm以下に設定されている。
胴部31には、絶縁体11の先端向き面21の先端側に位置する円環状の棚部33が形成されている。棚部33は、先端側に向かうにつれて縮径する。棚部33と絶縁体11の先端向き面21との間にパッキン34が介在する。パッキン34は、主体金具30を構成する金属材料よりも軟質の軟鋼板等の金属材料で形成される円環状の板材である。
座部35は、内燃機関(図示せず)のねじ穴とおねじ32との隙間を塞ぐための部位であり、胴部31の外径よりも外径が大きく形成されている。接続部36は、加締め部38(後述する)を用いて主体金具30を絶縁体11に組み付けるときに、湾曲状に塑性変形した部位である。工具係合部37は、内燃機関のねじ穴におねじ32を締め付けるときに、レンチ等の工具を係合させる部位である。加締め部38は、主体金具30を絶縁体11に組み付けるときに塑性変形して、径方向の内側へ向けて屈曲した部位である。加締め部38は、絶縁体11の張出部15よりも後端側に位置する。
接地電極39は、主体金具30の胴部31に接合された棒状の金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。本実施形態では、接地電極39は先端側が屈曲している。接地電極39は、中心電極25との間に火花ギャップを形成する。絶縁体11の第1部13の外周面14と主体金具30との間であって、絶縁体11の張出部15と主体金具30の加締め部38との間には、粉末40が充填されている。張出部15と粉末40との間、加締め部38と粉末40との間に、それぞれリング状のパッキン41が配置されている。
スパークプラグ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、中心電極25を絶縁体11の軸孔12に挿入し、中心電極25の先端が絶縁体11の先端から突出するように配置する。中心電極25と端子金具26との導通を確保しながら、絶縁体11の軸孔12に端子金具26を挿入する。次に、予め接地電極39が接続された主体金具30に絶縁体11を挿入し、主体金具30の棚部33にパッキン34を介して絶縁体11の先端向き面21を置く。絶縁体11の第1部13の外周面14と張出部15の後端向き面16との境界部分にパッキン41を置き、絶縁体11の第1部13と主体金具30との間に粉末40を充填する。充填した粉末40の上にパッキン41を置き、主体金具30の加締め部38を屈曲して粉末40に荷重を加え、粉末40を介して張出部15を後端側から加締める。
これにより、主体金具30の棚部33から加締め部38までの部位は、パッキン34や粉末40を介して、絶縁体11のうちストレート部19から張出部15までの部位に軸線方向の圧縮荷重を加える。その結果、絶縁体11の外周に主体金具30が固定される。接地電極39を屈曲してスパークプラグ10を得る。
加締め部38が、張出部15を後端側から粉末40を介して加締めることにより、粉末40は圧縮される。これにより、絶縁体11の第1部13の外周面14と主体金具30との間の気密を確保できる。さらに、主体金具30の棚部33と絶縁体11の先端向き面21とにパッキン34が密着し、パッキン34が全周に亘って軸線方向に圧縮されるので、主体金具30の棚部33と絶縁体11の先端向き面21との間の気密を確保できる。
粉末40は、鉱物や人工の無機物などで作られている。粉末40は、滑石が含まれているものが好ましい。滑石は硬度が低く、加締め部38による加締めによって張出部15と加締め部38との間で押しつぶされて鱗片状に砕かれる。そのため、張出部15と加締め部38との間に充填された粉末40を稠密にできるからである。粉末40のうち滑石の含有率は50wt%以上が好ましく、80wt%以上がより好ましい。滑石の含有率がこの範囲内であると、滑石によって粉末40を稠密にし易いからである。
ここで、絶縁体11の張出部15と加締め部38との間に充填された粉末40の比表面積が小さいと、充填された粉末間の隙間が大きくなるので、その隙間をガスが通過し易くなる。一方、粉末40の比表面積が大きいと、加締め部38に近い位置の粉末の充填密度は高くできるが、加締め部38から離れた位置にある粉末に加締め部38による荷重が伝わり難くなるので、加締め部38から離れた位置の充填密度は低くなる。充填密度の低い部位の体積を小さくできないので、気密性が低下する。
これに対し、張出部15と加締め部38との間に介在する粉末40の比表面積が1.5~4.5m2/gであると、充填された粉末40間の隙間を小さくできると共に、粉末40のうち充填密度が高い部位の体積を大きくできる。これにより、粉末40の間を燃焼室内のガスが通過し難くなるので、粉末40による気密性を向上できる。
粉末40の比表面積は、1本のスパークプラグ10から採取した粉末40を用いて、その1本分ごとに測定される。粉末40は、加締め部38を切断し、2つのパッキン41のうち後端側のパッキン41を取り外したのち、外部から主体金具30に振動を与えることで採取される。採取された粉末40は、取り出したままの状態でJIS Z8830:2013(ISO9277:2010)に従って、例えば全自動比表面積測定装置(Macsorb HM-1208)を用いてBET法により比表面積が測定される。
比表面積の測定を行う前に、脱ガス処理を温度200℃、窒素ガス雰囲気で行い、粉末40の表面に物理吸着した物質を取り除く。比表面積の測定に用いる吸着ガスは窒素であり、吸着ガス量は静的容量法により測定する。測定温度は常温(15~25℃)である。パラメータは多点法により算出する。
粉末40は、吸湿率が5%以下に設定されるのが好ましい。粉末40の吸湿率が5%以下であると、気密性の経時的な低下を抑制できる。例えば適量の油の添加により粉末40の吸湿率を5%以下にできる。粉末40の吸湿率は、1本のスパークプラグ10から採取した粉末40を用いて、その1本分ごとに測定される。粉末40は、加締め部38を切断し、2つのパッキン41のうち後端側のパッキン41を取り外したのち、外部から主体金具30に振動を与えることで採取される。まず、1本のスパークプラグ10から採取された粉末40を、取り出したままの状態で70℃の乾燥器に入れて24時間乾燥した後、質量(以下「乾燥質量」と称す)をスパークプラグ10の1本分ごとに測定する。乾燥質量を測定した粉末を全て、温度30℃湿度100%に保った容器内で7日間放置した後、質量(以下「湿潤質量」と称す)をスパークプラグ10の1本分ごとに測定する。吸湿率(%)=(湿潤質量-乾燥質量)/乾燥質量・100である。
粉末40の比表面積が1.5~4.5m2/gであるときに、粉末40の充填密度は、主体金具30の加締め部38を用いて粉末40を介して張出部15を後端側から加締めるときの荷重に依存する。この荷重が大きくなると粉末40の充填密度を高くできるが、絶縁体11の交点24間の距離D2は6.0mm以下なので、加締め部38と棚部33とが絶縁体11及び粉末40に加える荷重が大きくなると、ストレート部53と張出部15との境界部分が曲げ破壊し易くなる。
しかし、粉末40の比表面積が1.5~4.5m2/gなので、加締め部38による荷重が小さくても、加締め部38と張出部15との間に介在する粉末40の充填密度を確保できる。よって、交点24間の距離D2が6.0mm以下のスパークプラグ10において、粉末40の充填密度を確保しつつ、ストレート部53と張出部15との境界部分を破壊し難くできる。
また、張出部15の外径D1の最大値と距離D2との差は5.6mm以上なので、加締め部38と棚部33とが絶縁体11及び粉末40に加える荷重により曲げモーメントが大きくなると、ストレート部53と張出部15との境界部分が曲げ破壊し易くなる。しかし、粉末40の比表面積が1.5~4.5m2/gなので、加締め部38による荷重が小さくても、加締め部38と張出部15との間に介在する粉末40の充填密度を確保できる。よって、交点24間の距離D2と張出部15の外径D1の最大値との差が5.6mm以上のスパークプラグ10において、粉末40の充填密度を確保しつつ、ストレート部53と張出部15との境界部分を破壊し難くできる。
図3は第2実施の形態におけるスパークプラグの絶縁体51の断面図である。絶縁体51は、第1実施形態におけるスパークプラグ10の絶縁体11に代えて配置される。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
絶縁体51は、張出部15の先端側に隣接する第2部52を備えている。第2部52の外径は、張出部15の外径D1よりも小さい。第2部52は、先端側に形成された先端向き面55と、先端向き面55と張出部15との間に形成されたストレート部53と、を備えている。ストレート部53の外周面54は、先端側に向かうにつれて縮径している。
張出部15の先端向き面17を示す線を延長した第1仮想直線22とストレート部53の外周面54を示す線を延長した第2仮想直線56との交点57は、軸線Oを挟んで2箇所に形成される。本実施形態においても、交点57間の距離D2は6.0mm以下であり、張出部15の外径D1と距離D2との差は5.6mm以上である。よって、第2実施の形態によれば、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
図4を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、主体金具30の棚部33と加締め部38との間で、絶縁体11,51の張出部15及び第2部18,52を保持する場合について説明した。これに対し第3実施形態では、主体金具80の座部84と加締め部87との間で、絶縁体61の張出部65を保持する場合について説明する。
図4は第3実施の形態におけるスパークプラグ60の軸線Oを境にした片側断面図である。スパークプラグ60は、絶縁体61、主体金具80及び粉末91を備えている。絶縁体61は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるアルミナ等により形成された略円筒状の部材であり、軸線Oに沿って貫通する軸孔62が形成されている。絶縁体61は、第1部63の先端側に張出部65が隣接し、張出部65の先端側に第2部68が隣接している。
張出部65の外径は、第1部63の外径よりも大きい。第1部63の外周面64は、張出部65の後端向き面66の後端側に隣接している。張出部65の後端向き面66は、先端側に向かうにつれて拡径している。張出部65の先端向き面67は、先端側に向かうにつれて縮径している。第2部68の外径は、張出部65の外径よりも小さい。第2部68の外周面には、第2部68の周方向に延びる溝69が形成されている。溝69にはリング状の伝熱部材70が配置されている。
中心電極71は、軸孔62の先端側に配置され絶縁体61に保持されている。端子金具72は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、先端側が絶縁体61の軸孔62に挿入されている。端子金具72は、導電性を有するガラスからなる導電性シール等によって、軸孔62内で中心電極71と電気的に接続されている。
主体金具80は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具80は、絶縁体61の第2部68の周囲に配置される胴部81と、胴部81の後端側に隣接する座部84と、座部84の後端側に隣接する接続部85と、接続部85の後端側に隣接する工具係合部86と、工具係合部86の後端側に隣接する加締め部87と、を備えている。胴部81は、内燃機関(図示せず)のねじ穴に螺合するおねじ82が外周に形成されている。伝熱部材70は、胴部81の内周面83に接触している。
加締め部87は、主体金具80を絶縁体61に組み付けるときに塑性変形して、径方向の内側へ向けて屈曲した部位である。加締め部87は、絶縁体61の張出部65よりも後端側に位置する。座部84の内周面88は後端側を向き、張出部65の先端向き面67と対向する。座部84の内周面88は、先端側に向かうにつれて縮径している。
座部84の内周面88と張出部65の先端向き面67との間にパッキン89が介在する。パッキン89は、主体金具80を構成する金属材料よりも軟質の軟鋼板等の金属材料で形成される円環状の板材である。接地電極90は、主体金具80の胴部81に接合された棒状の金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。接地電極90は、中心電極71との間に火花ギャップを形成する。絶縁体61の第1部63の外周面64と主体金具80との間であって、絶縁体61の張出部65と主体金具80の加締め部87との間には、粉末91が充填されている。張出部65と粉末91との間、加締め部87と粉末91との間に、それぞれリング状のパッキン92が配置されている。
スパークプラグ60は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、中心電極71を絶縁体61の軸孔62に挿入し、中心電極71の先端が絶縁体61の先端から突出するように配置する。中心電極71と端子金具72との導通を確保しながら、絶縁体61の軸孔62に端子金具72を挿入する。次に、予め接地電極90が接続された主体金具80に、伝熱部材70が溝69に配置された絶縁体61を挿入し、主体金具80の座部84にパッキン89を介して張出部56の先端向き面67を置く。絶縁体61の第1部63の外周面64と張出部65の後端向き面66との境界部分にパッキン92を置き、絶縁体61の第1部63と主体金具80との間に粉末91を充填する。充填した粉末91の上にパッキン92を置き、主体金具80の加締め部87を屈曲して、粉末91を介して張出部65を後端側から加締める。
これにより、主体金具80の座部84から加締め部87までの部位は、パッキン89や粉末91を介して、絶縁体61の張出部65に軸線方向の圧縮荷重を加える。その結果、絶縁体61の外周に主体金具80が固定される。接地電極90を屈曲してスパークプラグ60を得る。
加締め部87が、張出部65を後端側から粉末91を介して加締めることにより、粉末91は圧縮される。これにより、絶縁体61の第1部63の外周面64と主体金具80との間の気密を確保できる。さらに、主体金具80の座部84の内周面88と絶縁体61の張出部65の先端向き面67とにパッキン89が密着するので、主体金具80の座部84と絶縁体61の張出部65との間の気密を確保できる。
張出部65と加締め部87との間に介在する粉末91の比表面積が1.5~4.5m2/gであると、充填された粉末91間の隙間を小さくできると共に、粉末91のうち充填密度が高い部位の体積を大きくできる。これにより、粉末91の間を燃焼室内のガスが通過し難くなるので、粉末91による気密性を向上できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(試験1)
第1実施形態におけるスパークプラグ10を用いて、粉末40の比表面積と気密性との関係を調べる試験を行った。粉末40は滑石(純度95wt%以上)を用いた。粉末40の吸湿率(試験2において詳述する)は5%とした。試験に用いたサンプルは、以下のようにして製造した。まず、軸孔12内で中心電極25及び端子金具26が電気的に接続された絶縁体11を、接地電極39が接続された主体金具30に挿入し、主体金具30の棚部33にパッキン34を介して絶縁体11の先端向き面21を置いた。パッキン34は周方向に分割されているものを用いた。
絶縁体11の第1部13の外周面14と張出部15の後端向き面16との境界部分にパッキン41を置き、絶縁体11の第1部13と主体金具30との間に粉末40を充填した。充填した粉末40の上にパッキン41を置き、主体金具30の加締め部38に荷重を加えて、粉末40を介して張出部15を後端側から加締め、棚部33と加締め部38とにより絶縁体11及び粉末40を保持した。粒度の異なる粉末40を用いることにより、粉末40の比表面積が異なる種々のサンプルを得た。
試験は、サンプルを150℃の雰囲気に3時間保った後、200℃の雰囲気で主体金具30の先端部に1.5MPaの空気圧を加えて、加締め部38と絶縁体11との間からの空気の漏れを測定した。パッキン34が周方向に分割されているので、主体金具30の先端部の空気圧は粉末40に加わる。空気の漏洩量が1mL/分以下のものをA(気密性が優れる)、空気の漏洩量が2mL/分以下のものをB、空気の漏洩量が2mL/分よりも多いものをC(気密性が劣る)と評価した。
試験後、各サンプルから粉末を採取した。粉末は、加締め部38を切断し、2つのパッキン41のうち後端側のパッキン41を取り外したのち、外部から主体金具30に振動を与えることで採取される。採取した粉末は、取り出したままの状態で、脱ガス処理を窒素ガス雰囲気中で温度200℃、1時間行った。全自動比表面積測定装置(Macsorb HM-1208)を用い、20℃の測定温度において、BET法により比表面積を測定した。粉末の比表面積は、1本のスパークプラグ10から採取した粉末を用いて、そのスパークプラグ10の1本分ごとに測定される。なお、測定に用いた吸着ガスは窒素であり、吸着ガス量は静的容量法により測定した。パラメータは多点法により算出した。
粉末の比表面積と漏洩量の評価との関係を表1に示す。試験1によれば、表1に示すように粉末の比表面積が1.5~4.5m
2/gであると、空気の漏洩量を1mL/分以下にできることが明らかになった。
(試験2)
第1実施形態におけるスパークプラグ10を用いて、粉末40の吸湿率と気密性との関係を調べる試験を行った。粉末40は滑石(純度95wt%以上)を用いた。粉末に添加する油の量を変えて、吸湿率が異なる種々の粉末を得た。次いで、試験1と同様にサンプルを製造して、種々のサンプルを得た。
試験は、サンプルを温度30℃湿度100%の湿潤雰囲気に24時間保った後、サンプルを150℃の雰囲気に3時間保ち、次いで、200℃の雰囲気で主体金具30の先端部に1.5MPaの空気圧を加えて、加締め部38と絶縁体11との間からの空気の漏れを測定した。空気の漏洩量が1mL/分以下のものをA、空気の漏洩量が2mL/分以下のものをB、空気の漏洩量が2mL/分よりも多いものをCと評価した。
試験後、各サンプルから粉末を採取した。粉末は、加締め部38を切断し、2つのパッキン41のうち後端側のパッキン41を取り外したのち、外部から主体金具30に振動を与えることで採取される。以下のようにして粉末の吸湿率を測定した。まず、採取した粉末は、取り出したままの状態で、70℃の乾燥器に入れて24時間乾燥した後、質量(乾燥質量)をそのスパークプラグ10の1本分ごとに測定し、次に、その粉末を温度30℃湿度100%に保った容器内で7日間放置した後、質量(湿潤質量)をスパークプラグ10の1本分ごとに測定した。吸湿率(%)=(湿潤質量-乾燥質量)/乾燥質量・100である。試験2のサンプルから採取した粉末の比表面積を試験1と同様に測定して、比表面積は1.5~4.5m2/gであることを確認した。
粉末の吸湿率と漏洩量の評価との関係を表2に示す。試験2によれば、表2に示すように粉末の吸湿率が5%以下であると、湿潤雰囲気にスパークプラグが放置された後も、空気の漏洩量を1mL/分以下にできることが明らかになった。粉末の吸湿率が5%以下であると、粉末の気密性が、外部環境の影響を受け難くなることがわかった。
(試験3)
第1実施形態におけるスパークプラグ10を用いて、絶縁体11の交点24間の距離D2と耐衝撃性試験との関係を調べる試験を行った。絶縁体11の張出部15の外径D1の最大値と交点24間の距離D2との差は一定値(5.0mm)であって交点24間の距離D2が異なる種々の絶縁体11を用い、試験1と同様にして種々のサンプルを得た。パッキン34は円環状のもの(周方向に分割されていないもの)を用いた。サンプルを製造するときに加締め部38が粉末40に加える荷重は、加締め時に絶縁体11のストレート部19が破損しないように、距離D2が短いサンプルほど小さくした。
試験は、JIS B8031:2006に規定される耐衝撃性試験に示す試験装置にサンプルを取り付け、毎分400回の割合で20分間衝撃を加え、異状が生じた時間を測定した。試験後、加締め部38を切断し、各サンプルから粉末を採取し、試験1と同様に粉末の比表面積を測定した。採取した粉末の吸湿率を試験2と同様に測定して、吸湿率は5%以下であることを確認した。
粉末の比表面積、交点24間の距離D2、及び、耐衝撃性試験において異状が生じた時間を表3に示す。耐衝撃性試験において20分間衝撃を加えて異状が生じなかったものは表3に「>20(分)」と記した。
試験3によれば、表3に示すように粉末の比表面積が1.0m2/gであって距離D2が5.0-10.0mmのサンプル15-17は、耐衝撃試験において4分以内に異状が生じた。特に、距離D2が6.0mm以下のサンプル16,17は、2分間の耐衝撃試験において異状が生じた。
これに対し、粉末の比表面積が2.3m2/gであって距離D2が6.0mm以下のサンプル13,14、及び、粉末の比表面積が2.3m2/gであって距離D2が10.0mmのサンプル15は、20分間の耐衝撃試験においても異状が生じなかった。このことから、粉末の比表面積が2.3m2/gであると、距離D2が6.0mm以下であって加締め時に粉末に加える荷重を小さくしても、粉末の充填密度を確保できるので、耐衝撃試験において異状を生じ難くできると推察される。
(試験4)
第1実施形態におけるスパークプラグ10を用いて、絶縁体11の張出部15の外径D1から距離D2を減じた値と耐衝撃性試験との関係を調べる試験を行った。絶縁体11の距離D2は一定(7.0mm)であって張出部15の外径D1が異なる種々の絶縁体11を用い、試験1と同様にして種々のサンプルを得た。パッキン34は円環状のもの(周方向に分割されていないもの)を用いた。サンプルを製造するときに加締め部38が粉末40に加える荷重は、加締め時に絶縁体11のストレート部19が破損しないように、外径D1と距離D2との差が大きいサンプルほど小さくした。
試験は、JIS B8031:2006に規定される耐衝撃性試験に示す試験装置にサンプルを取り付け、毎分400回の割合で20分間衝撃を加え、異状が生じた時間を測定した。試験後、加締め部38を切断し、各サンプルから粉末を採取し、試験1と同様に粉末の比表面積を測定した。採取した粉末の吸湿率を試験2と同様に測定して、吸湿率は5%以下であることを確認した。
粉末の比表面積、外径D1と距離D2との差(D1-D2)、及び、耐衝撃性試験において異状が生じた時間を表4に示す。耐衝撃性試験において20分間衝撃を加えて異状が生じなかったものは表4に「>20(分)」と記した。
試験4によれば、表4に示すように粉末の比表面積が1.0m2/gであってD1-D2が4.6mmのサンプル21は、20分間の耐衝撃試験においても異状が生じなかった。しかし、粉末の比表面積が1.0m2/gであってD1-D2が5.6-8.5mmのサンプル22,23は、耐衝撃試験において5分以内に異状が生じた。
これに対し、粉末の比表面積が2.3m2/gであってD1-D2が5.6-8.5mmのサンプル19,20は、20分間の耐衝撃試験においても異状が生じなかった。このことから、粉末の比表面積が2.3m2/gであると、D1-D2が5.6mm以上であって加締め時に粉末に加える荷重を小さくしても、粉末の充填密度を確保できるので、耐衝撃試験において異状を生じ難くできると推察される。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
第1実施形態および第2実施形態では、主体金具30のおねじ32の呼び径が8mm以下のスパークプラグ10であって、外径D1と距離D2との差が5.6mm以上、且つ、距離D2が6.0mm以下のスパークプラグ10について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。スパークプラグのおねじの呼び径、外径D1と距離D2との差、距離D2は任意に設定できる。
第3実施形態では、第2部68の溝69に伝熱部材70が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えばろう材などを用いて、第2部68の外周面に伝熱部材70を接着することは当然可能である。
実施形態では、アーク放電を利用するスパークプラグ10,60について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。他のスパークプラグに本発明を適用することは当然可能である。他のスパークプラグとしては、例えばコロナ放電や誘電体バリア放電を利用するスパークプラグが挙げられる。
実施形態では、パッキン34,89を介して主体金具30,80に絶縁体11,61を係止する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。パッキン34,89を省略して、主体金具30,80に絶縁体11,61を係止することは当然可能である。