JP4659018B2 - 表面プラズモンセンサ - Google Patents

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この発明は表面プラズモンの効果を利用したセンサに関する。
金属中においては自由電子が集団的に振動してプラズマ波と呼ばれる粗密波が生じる。そして、金属表面に生じるこの粗密波を量子化したものは表面プラズモンと呼ばれている。従来より、この表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して試料中の物質を定量分析する表面プラズモンセンサが種々提案されている。そして、それらの中で特に良く知られているものとして、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
上記の系を用いる表面プラズモンセンサは基本的にプリズムと、プリズムの一面に形成されて試料に接触せしめられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、光ビームをプリズムに通し、プリズムと金属膜との界面に対して種々の入射角が得られるように入射させる光学系と、プリズムと金属膜との界面で全反射した光ビームの強度を種々の入射角毎に検出可能な光検出手段とを備えてなるものである。
なお、上述のように種々の入射角を得るためには、光ビームの照射系を回転させる、いわゆるゴニオメータが用いられたり(例えば、特許文献2参照)、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太いビームを上記プリズムと金属膜との界面で集束するように入射させる光学系が用いられる。前者の場合は光ビームの偏向に伴って反射角が変化する光ビームを、光ビームの偏向に同期移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方、後者の場合は種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
光ビームを金属膜に対して全反射角以上の入射角θで入射させると、反射面の金属膜中にエバネッセント波といわれる「にじみ波」が生じる。このエバネッセント波は金属膜に接している試料中に電界分布をもち、この金属膜と試料との界面に表面プラズモンが発生する。p偏光された光ビームが金属膜に対して入射されて生じたエバネッセント波の波数ベクトルが上述の表面プラズモンの波数ベクトルと等しく、波数整合が成立すると両者は共鳴状態となり、光のエネルギが表面プラズモンに移行してプラズモンが励起される。この時、光のエネルギの移行のために全反射した光の強度は著しく低下する。
それ故、表面プラズモンセンサにおいては種々の入射角θで金属膜に入射させた光ビームについて、金属膜により全反射された光ビームの強度の測定を行うことにより、反射強度が著しく低下する現象が生じる時の入射角θsp(全反射解消角)が得られ、この全反射解消角θspと入射光の波数ベクトルKから共鳴波数Kspが、
sp=Ksinθsp
の関係により導かれる。表面プラズモンの波数Kspが分かると、試料の誘電率が求められる。即ち、表面プラズモンの角周波数をω、真空中の光速をc、金属及び試料の誘電率をそれぞれε,εとすると、次式の関係がある。
sp(ω)=(ω/c)√(ε(ω)・ε/(ε(ω)+ε))
試料の誘電率εが分かれば、所定の較正曲線等に基づいて試料中の特定物質の濃度が分かるので、結局、反射光強度が低下する全反射解消角θspを知ることにより、試料中の特定物質を定量分析することができる。
一方、近年、金属薄膜に波長より小さい大きさの開口を周期的に設けると、開口を透過する光の透過率が開口率以上になるという現象が発見された(例えば、特許文献3参照)。開口の周期と透過率がピークとなる波長には相関があり、表面プラズモンと入射光との相互作用の結果、透過率が増強されたと考えられている。特許文献3では金属薄膜に周期的な円形開口を配列させた構造やスリットアレイ構造が提案されている。また、単一の開口の周囲に周期的なリング状の溝を設けることにより、開口を通る透過光を増幅させる方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、このような表面プラズモン増強効果を利用するものとして、周期的なリング状の溝を誘電体膜に形成し、その表面に金属膜を形成すると共に金属膜に開口を設けた構造を有する表面プラズモンセンサが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
特開平6−167443号公報 特開平6−50882号公報 特許第3008931号公報 特開2001−291265号公報 特開2005−308658号公報
従来の金属薄膜を用いる表面プラズモンセンサで主流となっているKretschmann配置と称される系を用いる場合、測定の精度は試料の回転角精度や分解能に依存するため、精密(高感度)な測定を行おうとすればするほど、ゴニオメータや光ビームの平行度など光学系が大掛りになるという問題があった。
これに対し、特許文献5に記載されている表面プラズモンセンサは大掛りな光学系は不要であって、小型化を図れるものとなっている。しかしながら、この特許文献5に記載されている表面プラズモンセンサは目的物質(検体)の付着による光(近接場光)の強度変化を検出することにより目的物質の定量分析を行うものであって、表面プラズモン共鳴を生起する金属膜の周期的な凹凸パターンへの目的物質の効率的な付着が要求される。
しかるに、特許文献5では周期的な凹凸パターンは同心円状の溝とされているため、このような同心円状の微小な溝に目的物質を含む流体(試料)を効果的に流すのは容易ではなく、つまり目的物質を効率良く付着させづらいものとなっており、その点で最適な構造とは言えないものとなっていた。
この発明の目的はこのような問題に鑑み、目的物質を効率的にとらえて付着させることができるようにし、さらに従来に比し、検出感度の向上を図ることができる表面プラズモンセンサを提供することにある。
請求項1の発明によれば、配列の周期Pを有する複数の周期的な開口が形成された金属薄膜を誘電体基板上に備えてなる表面プラズモン素子に目的物質を付着させ、その表面プラズモン素子に光を照射して開口を透過する透過光の、目的物質の付着に応じた変化を検出する表面プラズモンセンサにおいて、誘電体基板の前記開口と対応する各位置に、開口と連繋する貫通孔がそれぞれ設けられ、それら開口とそれに連繋する貫通孔とによって目的物質を含んだ流体が流れる複数の流路が構成され、金属薄膜の膜厚をLとした時のL’=L/Pと、金属薄膜の膜面の単位面積Aに含まれる前記開口の面積をSとした時のS’=S/Aとの比L’/S’が、L’/S’>1.6を満たすものとされる。
請求項2の発明によれば、配列の周期Pを有する複数の周期的な開口が形成された金属薄膜を誘電体上に備えてなる表面プラズモン素子に目的物質を付着させ、その表面プラズモン素子に光を照射して開口を透過する透過光の、目的物質の付着に応じた変化を検出する表面プラズモンセンサにおいて、誘電体が流体透過性の膜によって構成され、その流体透過性の膜及び前記複数の開口を通って目的物質を含んだ流体が流れる構成とされ、金属薄膜の膜厚をLとした時のL’=L/Pと、金属薄膜の膜面の単位面積Aに含まれる前記開口の面積をSとした時のS’=S/Aとの比L’/S’が、L’/S’>1.6を満たすものとされる。
請求項の発明では請求項1又は2の発明において、金属薄膜の上面及び前記開口の側壁面に分子認識層が設けられる。
この発明によれば、目的物質を含んだ流体が金属薄膜に形成された表面プラズモン増強効果を発揮する周期的な開口を通過することができる構造となっているため、開口の側壁面に目的物質を効率的に付着させることができ、よって高感度な表面プラズモンセンサを実現することができる。
まず、最初に、図1に示したように誘電体基板10上に金属薄膜20を形成し、金属薄膜20に光の波長以下の大きさの周期的な開口21を設けた場合の透過スペクトルをシミュレーションにより調べた結果について説明する。開口21はこの例ではスリットとし、即ちこの例では周期的な開口構造としてスリットアレイが金属薄膜20に形成されたものとなっている。シミュレーションには2次元のFDTD(Finite Difference Time Domain)法計算を用いた。なお、図1中、31は入射光を示し、32は透過光を示す。
すでに述べたように、金属薄膜に光の波長以下の大きさの周期的な開口を設けた場合、その周期と入射光の波長との間に強い相関があることが指摘されている。そこで、表面に物質が付着した場合の開口周期構造と入射波長との相互作用を明確にするため、シミュレーションでは金属の光学定数は波長によらず、一定(屈折率n=0.05,消衰係数k=5.0)として計算を行った。
開口(スリット)21の周期(配列周期)を1.0μmとし、開口21の開口幅を0.5μm、金属薄膜20の膜厚を0.3μmとした場合の透過スペクトルを図2に示す。波長よりも小さい開口の透過率は開口幅をd、波長をλとすると、(d/λ)に比例して小さくなることが知られている。この法則に従えば、例えばλ=1.0μmにおける透過率は10−2のオーダとなるが、計算結果によれば、透過率は約0.5と非常に大きい。これは前述の特許文献3で指摘されている表面プラズモンの効果であると考えられる。
金属薄膜中に開口がある場合には均一な金属薄膜を用いる従来の表面プラズモンセンサと異なり、金属薄膜上面(表面)と開口内側の側壁面と開口に位置する誘電体基板の上面(表面)が外部に露出している。どの部分に物質が付着した場合に高い感度が得られるのかを明らかにするため、金属薄膜上面のみに物質が付着した場合と、金属薄膜上面及び開口の側壁面に物質が付着した場合の透過スペクトルの変化を比較した。開口21の周期、開口幅及び金属薄膜20の膜厚は上記図2の条件と同一とした。結果をそれぞれ図3Aと図3Bに示す。また、図3A、図3Bの一部波長域を拡大したものをそれぞれ図4A、図4Bに示す。なお、これら図3A,B及び図4A,Bには物質の付着厚さが0nm(付着なし)、20nm,100nmの場合を示している。
開口21の側壁面に物質の付着がある場合の方が透過スペクトルの変化が、特に0.9μm以上の長波長側で大きくなっており、開口21の側壁面に物質を付着させるようにすることが高感度化において必要であることがわかった。
なお、上記計算はスリットアレイ構造で行ったが、円形開口などの周期的な配列構造であっても、表面プラズモンによる透過率の増大効果が観測されることから、周期的な開口構造として円形開口アレイが金属薄膜20に形成された表面プラズモン素子を用いるものであってもよく、この場合においても開口の側壁面への物質の付着が検出感度の向上に不可欠であると考えられる。
ところで、開口幅が波長以下の微小な開口においては、開口の深さ(=金属薄膜の膜厚)と開口幅との比(開口のアスペクト比)が大きくなると、溶液中やガス中に浸すだけでは開口の内部に溶液やガスが浸入しにくくなる。この発明では図5に示したように、誘電体基板10の、金属薄膜20の開口21と対応する各位置に、開口21と連繋する貫通孔11をそれぞれ設け、それら開口21とそれに連繋する貫通孔11とによって目的物質を含んだ流体が流れる複数の流路を構成する。これにより、開口21に流体を流れやすくすることができ、開口21の側壁面に目的物質が付着しやすくする。つまり、貫通孔11と連繋された開口21をフィルタのように用いることで、流体中の目的物質を効率的にとらえて付着させることができる。なお、図5中、12は誘電体基板10に形成されたダイアフラムを示し、この例ではこのダイアフラム12に貫通孔11が形成されている。また、図5中、41は目的物質を含んだ流体(液体)を示し、矢印42は流体41の流れを示す。
一方、図6はこの発明による他の構成を示したものであり、この例では金属薄膜20が形成される(金属薄膜20を保持する)誘電体が流体透過性の膜の一形態である気体透過性の膜50とされ、この気体透過性の膜50及び金属薄膜20の開口21を通って目的物質を含んだ気体が流れる構成とされる。
この例では目的物質を含んだ気体を開口21に流すと、気体は透過する一方、目的物質は開口21の内部に留まるため、開口21の側壁面に付着する確率が高まり、気体中の目的物質を効率良く付着させることができる。なお、図6中、51は気体透過性の膜50に形成されたダイアフラムを示し、金属薄膜20はこのダイアフラム51上に形成されている。また、図6中、60は基板を示し、矢印43は目的物質(固体)を含んだ気体の流れを示す。矢印44は気体透過性の膜50を透過した気体の流れを示す。
なお、ここに示す例における上記気体透過性の膜50を液体透過性の膜に置換し、目的物質を含んだ液体を透過させる実施形態も同様に可能である。
以下、具体的実施例について説明する。
[実施例1]
誘電体基板としてシリコン基板を用い、このシリコン基板上に開口サイズ1.8mm角のダイアフラムを形成した。ダイアフラムの形成は誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング装置を用い、シリコンを厚さ1μm残してエッチングすることによって形成した。
シリコン基板のエッチング面と反対側の面上に、接着層として薄いクロム膜を成膜後、金の薄膜をスパッタ法により成膜して金属薄膜を形成した。膜厚は1μmとした。収束イオンビームエッチング装置を用いてシリコン基板のダイアフラムが形成されている位置において、開口幅が0.5μmのスリットを周期1.0μmで金属薄膜に形成し、引き続き、その下の厚さ1μmのダイアフラムにスリットと連繋する貫通孔を形成した。これにより、図5に示したような構造体(表面プラズモン素子)が得られる。
この素子を4mm角の大きさとして切り出し、図7に示したように流路の中にフィルタのようにして設置した。図7中、70はケースを示し、71は流入口、72は流出口を示す。流路にはダイオキシンを微量に含む液体を圧力差を設けて矢印で示したように流した。
10分間流した後、上記4mm角の素子を取り出し、自記分光光度計で赤外域の透過スペクトルを測定したところ、液体を流す前の透過スペクトルと比較して、透過スペクトル形状が変化していた。
[実施例2]
シリコン基板上に実施例1と同じ素子を複数個作製した。
その表面に分子インプリンティング法を用いてダイオキシン分子と分子結合を形成可能なポリマー膜を形成した。分子インプリンティング法とはポリマーに対して認識させたい分子(標的分子)の形をインプリント(刻印)し、その結果生じた穴を用いて分子認識を行う技術である。まず、標的分子A(この場合、ダイオキシン)と、この分子と特異的に結合する部位及び重合可能な官能基を有する分子Bとを架橋剤と共に重合させ、その後、標的分子Aをポリマー内から遊離除去することによって、標的分子Aに対して相補的な結合部位をインプリントポリマー内に構築する。即ち、架橋剤由来のポリマーのマトリックス中に分子B由来の官能基が、標的分子Aの形に従い、標的分子Aの特徴的な官能基を認識するように配置される。この局在化した官能基周辺が標的分子Aに対して特異的に結合する部位(特異的結合部位)となり、特定の分子を認識して分子結合をする。この分子認識膜(分子認識層)の材料としてはピロールを用い、スプレーコーティングの方法を用いて金属薄膜の上面及び開口の側壁面に均一にポリマー膜を形成した。
この素子を2個切り出し、実施例1と同様、図7に示したように流路の中に設置して、それぞれダイオキシンを微量に含む液体及びトリハロメタンを微量に含む液体を流し、透過スペクトルの時間的変化を自記分光光度計で観測した。その結果、ダイオキシンを微量に含む液体では時間と共に透過スペクトルが変化する様子が観測されたが、トリハロメタンを含む液体の場合には透過スペクトルに変化が見られなかった。
[実施例3]
シリコン基板上に気体透過性の膜としてポリイミド膜を蒸着重合法により厚さ10μm形成した。ポリイミド膜面上に接着層として薄いクロム膜を成膜後、金の薄膜をスパッタ法により成膜して金属薄膜を形成した。膜厚は1μmとした。収束イオンビームエッチング装置を用いて金属薄膜に開口幅が0.5μmのスリットを周期1.0μmで形成した。その後、ポリイミド膜形成面と反対側のシリコン基板面にマスキングを行い、イオンミリング装置を用いてシリコン基板を部分的に除去し、さらにポリイミド膜を0.5μmの厚さを残すようにエッチングすることによって開口サイズ10〜100μm角のポリイミドダイアフラムを形成した。これにより、図6に示したような構造体(表面プラズモン素子)が得られる。
この素子を切り出し、実施例1と同様、図7のように流路の中に設置した。流路にはキャリアガスとして窒素ガスを用い、エタノールを微量に混合して圧力差を設けて流した。
10分間流した後、素子を取り出し、自記分光光度計で赤外域の透過スペクトルを測定したところ、ガスを流す前の透過スペクトルと比較して、透過スペクトル形状が変化していた。
[比較例]
シリコン基板にダイアフラム及び貫通孔が形成されていない点を除いて、実施例1と同様の方法を用いて4mm角の大きさの素子を作製した。
この素子を図7のように流路の中に設置し、ダイオキシンを微量に含む液体を圧力差を設けて流した。なお、この場合、ケース70と素子との間には液体が流れる所要の隙間を設けるものとする。
実施例1と同様の透過スペクトル形状の変化を得るためには、液体を流す時間として40分が必要であった。
以上説明したように、この発明によれば透過型の光学系での表面プラズモンセンサを実現することができ、目的物質を含んだ流体が開口を通過できる構造とすることにより、より効率的に、言い換えればより短時間で開口の内側の側壁面に目的物質を付着させることができ、その点で高感度な表面プラズモンセンサを得ることができる。なお、実施例2のように分子認識層を形成することにより、特定の分子の量を検出することができる。
次に、金属薄膜の膜厚と開口幅との関係について説明する。
図8Aは前述の図1に示した構造において、開口(スリット)21の周期Pを1.0μm、開口幅dを0.5μmとし、金属薄膜20の膜厚Lをそれぞれ0.1μm,0.3μm,0.6μm,0.9μm,1.2μmとした場合の透過スペクトルを示したものである。図8Aより、膜厚Lが大きくなると、言い換えれば膜厚Lと開口幅dとの比L/dが大きくなると、波長が1μm以上の領域で急激に透過光強度が小さくなっていることが明らかになった。即ち、L/d(アスペクト比)が0.2の場合(膜厚Lが0.1μmの場合)では、1.04μmの波長で透過光強度がピークを示した後も、より長波長領域でいくつかのピークを示すが、L/dが2.4の場合(膜厚Lが1.2μmの場合)では1.04μmのピーク以降は波長の増大と共に急激に透過光強度が減小している。
波長1.04μmのピークの急峻さと、膜厚Lと開口幅dとの比L/dとの関係を明らかにするため、L/dに対して波長が1.4μmの場合の透過光強度と1.04μmの場合の透過光強度の比の関係を図8Bに示したようにプロットした。L/dが1.6以上の領域で透過光強度比が急激に大きくなっていることがわかる。
この膜厚Lと開口幅dとの比L/dが1.6以上の領域で透過光強度比が急激に大きくなるメカニズムとしては、表面プラズモンが関与する最表面層の厚さに比べて膜厚Lが大きくなってくると、金属のバルクとしての性質が関与するようになり、波長が長い領域では表面プラズモンの効果による透過率増大効果が発揮されにくくなるためではないかと推測している。
図9は金属薄膜20の膜厚Lが1.2μmの場合に、金属薄膜20の上面及び開口21の側壁面に物質が付着した場合の透過スペクトルの変化を調べた結果を示したものであり、付着厚さが増大するに従って透過率が急峻に変化する領域(波長1.04〜1.2μm)の波長カーブがシフトすることがわかった。従って、この領域での特定の波長、例えば波長1.1μmで透過光強度をモニタするようにすれば、目的物質の付着と共に透過率が増大していく様子をモニタすることができる。
以上より、図5や図6に示したこの発明における構成において、金属薄膜20の膜厚Lと開口(スリット)21の開口幅dとの比L/dは、
L/d>1.6 …(1)
を満たすように設定するのが好ましいと言える。
なお、(1)式は開口21がスリット(細長い矩形の開口)の場合の条件を示したものであるが、開口は前述したようにスリットに限らず、円形開口としてもよく、このような場合には(1)式に替え、下記のような条件を満たすように設定するのが好ましい。
即ち、金属薄膜の膜厚をL、開口の周期をPとした時のL’=L/Pと、金属薄膜の膜面の単位面積Aに含まれる開口の面積をSとした時のS’=S/Aとの比L’/S’が、
L’/S’>1.6 …(2)
を満たすようにする。
この(2)式におけるL’/S’は開口のアスペクト比の拡大された一般的概念であり、開口が周期的なスリット(開口幅d)であれば、
L’/S’=(L/P)/(d/P)=L/d
となり、L’/S’は(1)式におけるL/dと等しくなる。
シミュレーションに用いた表面プラズモンセンサのモデルを説明するための図。 図1のモデルの透過スペクトルを示す図。 図1のモデルに物質が付着した場合の透過スペクトルを示す図(金属薄膜の膜厚=0.3μm)、Aは金属薄膜上面にのみ付着した場合、Bは金属薄膜上面及び開口の側壁面に付着した場合。 Aは図3Aの一部波長域を拡大した図、Bは図3Bの一部波長域を拡大した図。 この発明の一実施例の構成を説明するための図。 この発明の他の実施例の構成を説明するための図。 図5に示した構造体が流路中に設置された状態を示す図。 Aは図1のモデルにおいて金属薄膜の膜厚を変えた場合の透過スペクトルを示す図。Bは膜厚Lと開口幅dとの比L/dと、波長1.4μm,1.04μmの透過光強度比との関係を示すグラフ。 図1のモデルにおいて、金属薄膜上面及び開口の側壁面に物質が付着した場合の透過スペクトルを示す図(金属薄膜の膜厚=1.2μm)。

Claims (3)

  1. 配列の周期Pを有する複数の周期的な開口が形成された金属薄膜を誘電体基板上に備えてなる表面プラズモン素子に目的物質を付着させ、その表面プラズモン素子に光を照射して開口を透過する透過光の、目的物質の付着に応じた変化を検出する表面プラズモンセンサにおいて、
    前記誘電体基板の前記開口と対応する各位置に、開口と連繋する貫通孔がそれぞれ設けられ、それら開口とそれに連繋する貫通孔とによって前記目的物質を含んだ流体が流れる複数の流路が構成され
    前記金属薄膜の膜厚をLとした時のL’=L/Pと、前記金属薄膜の膜面の単位面積Aに含まれる前記開口の面積をSとした時のS’=S/Aとの比L’/S’が、
    L’/S’>1.6
    を満たすことを特徴とする表面プラズモンセンサ。
  2. 配列の周期Pを有する複数の周期的な開口が形成された金属薄膜を誘電体上に備えてなる表面プラズモン素子に目的物質を付着させ、その表面プラズモン素子に光を照射して開口を透過する透過光の、目的物質の付着に応じた変化を検出する表面プラズモンセンサにおいて、
    前記誘電体が流体透過性の膜によって構成され、その流体透過性の膜及び前記複数の開口を通って前記目的物質を含んだ流体が流れる構成とされ
    前記金属薄膜の膜厚をLとした時のL’=L/Pと、前記金属薄膜の膜面の単位面積Aに含まれる前記開口の面積をSとした時のS’=S/Aとの比L’/S’が、
    L’/S’>1.6
    を満たすことを特徴とする表面プラズモンセンサ。
  3. 請求項1又は2記載の表面プラズモンセンサにおいて、
    前記金属薄膜の上面及び前記開口の側壁面に分子認識層が設けられていることを特徴とする表面プラズモンセンサ。
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