JP4657427B2 - ジェット推進型滑走艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水流を後方に噴出してその反動で水上を航行する小型滑走艇( Personal Watercraft(パーソナルウォータークラフト); PWCとも呼ばれる) 等のジェット推進型の滑走艇であって、特にスロットルをOFF操作したときにも、ステアリング機能を維持できるジェット推進型滑走艇、および、該ジェット推進型の滑走艇に最適な船速検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
所謂ジェット推進型の滑走艇は、レジャー用,スポーツ用としてあるいはレスキュー用として、近年多用されている。このジェット推進型の滑走艇では、一般的に艇の底面に設けられた吸水口から吸い込んだ水を、ウォータージェットポンプで加圧・加速して噴射口から後方へ噴射することによって船体を推進させる。
【0003】
そして、このジェット推進型の滑走艇の場合、上記ウォータージェットポンプの噴射口の後方に配置したステアリングノズルを左右に揺動させることによって、後方への水の噴射方向を左右に変更することによって、艇を右側あるいは左側に操舵する。
【0004】
また、後進させる場合には、上記ステアリングノズルの後方に昇降可能に配置したリバース用のデフレクターを降下させて、ステアリングノズルから後方に向けて噴射した水流の向きを前方に変更させて、その反動で後進させるよう構成されている。
【0005】
従って、このような構成のジェット推進型の滑走艇の場合、前進の場合および後進のときに、スロットルを全閉近くまで閉じてウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少すると、艇を転向させるために利用できる推力(操舵のために利用できる推力)も同時に減少し、スロットルが再び開くまでは、艇を操舵する能力が減少する。
【0006】
このような現況に鑑みて、本出願人は、スロットルを全閉近くまで閉じてウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少しても、メカニカル的に、操舵する能力を維持できる操舵用のステアリング部材を備えたジェット推進型の滑走艇を提供した(特願2000−6708号)。
【0007】
しかしながら、上記ジェット推進型滑走艇の場合、部品点数が多くなって、構造が複雑となり、従って、重量が増加する。
【0008】
本発明は、このような現況に鑑みておこなわれたもので、スロットルをOFF操作してウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少した場合でも、艇を操舵することが維持できるジェット推進型滑走艇おいて、重量を増加させることがなく且つ制御開始時の速度に合った好ましい操舵のための制御が可能なジェット推進型滑走艇、およびこのようなジェット推進型滑走艇に最適な船速検知装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本第1の発明は、上記課題を、以下のような構成からなるジェット推進型滑走艇によって解決することができる。即ち、
本第1の発明にかかるジェット推進型滑走艇は、ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進し、操舵とともに、スロットルをOFF操作したときに、スロットル開度検知センサーとステアリング位置検出センサーが、スロットルOFF操作とステアリングの操舵を検知して、一時的にエンジンの回転数を上昇させることによって、スロットルのOFF操作時に、操舵機能を維持できるよう構成されたジェット推進型の滑走艇において、
船速検知装置によって検知したそのときの船速によって、その船速に合わせて高速域から低速域にかけて段階的にオフ・スロットル・ステアリングモード制御を実行することを特徴とする。
なお、本明細書において、「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」とは、スロットルがOFF操作され、ステアリングが操作されたときに、それを検知して、一時的にエンジンの回転数を上昇させて、操舵機能を維持するような制御をいう。また、本明細書において、スロットルの「OFF操作」とは、スロットルが「閉」側に所定量以上操作される動作をいう。
【0010】
しかして、このように構成されたジェット推進型滑走艇によると、スロットルをOFF操作するとともに、ステアリングの操作をおこなうと、船速検知装置がそのときの船速を検知して、その検知した船速に合わせて高速域から低速域にかけて段階的にオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなうため、その船速に合ったスムーズな操舵ができることとなる。
【0011】
また、上記第1の発明にかかるジェット推進型滑走艇において、検知したそのときの船速を、最も船速の小さな第1船速領域と、第1船速領域より速い速度の第2船速領域と、最も船速の大きな第3船速領域の3段階の領域のいずれかの領域に分けて、
検知した船速が、第1船速領域のときには第2船速領域の場合より速やかなLモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を実行し、第2船速領域のときには、第1船速領域の場合よりも緩やかな操舵がおこなわれるようなMモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を経てLモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を実行し、第3船速領域のときには、第2船速領域の場合よりもさらに緩やかな操舵がおこなわれるようなHモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御、およびMモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を経て、Lモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を実行するよう構成されていると、実用上有用な構成となる。
【0012】
また、上記第1の発明にかかるジェット推進型滑走艇において、船速検知装置が、エンジンの回転数から船速を求める装置であると、船速計を具備しないジェット推進型滑走艇にも上記オフ・スロットル・ステアリングモード制御を適用できる構成となり、また従来の船速計の如くゴミ等の詰まりに影響されないで船速を計り得る構成となる。
【0013】
本第2の発明にかかるジェット推進型の滑走艇艇に用いられる船速検知装置は、ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射し、その反動によって推進するよう構成されたジェット推進型の滑走艇に用いられる船速検知装置において、
エンジン回転数検知センサーと、船速を演算によって検知する船速演算手段とを具備し、
上記船速演算手段が、エンジン回転数と船速との関係を予め求めた船速検出テーブルを記憶した第1記憶手段と、エンジン回転数の加速あるいは減速の程度から上記船速検出テーブルから求めた船速を補正する補正値を求めるための補正手段を具備していることを特徴とする。
【0014】
しかして、このように構成された船速検知装置によると、エンジン回転数検知センサーからエンジン回転数を連続的に得れば、その計測によって得たエンジン回転数と船速検出テーブルによって、基本船速値を得るとともに、エンジン回転数の加速あるいは減速の程度から、加速又は減速状態もしくは定常状態にあるか否かによって、補正手段で補正値を得て、この補正値によって上記基本船速値に補正を加えて、船速を得ることができる。
【0015】
また、上記本第2の発明にかかるジェット推進型の滑走艇の船速検知装置において、船速演算手段が、エンジン回転数検知センサーから一定時間毎にエンジン回転数に関するデータを得て、順次そのデータとその直前に得られた前のデータとの差分処理を所定時間にわたっておこない、これら(この差分処理によって)得られた所定時間内の複数の差分を積算処理して、エンジン回転数に関する加速の程度あるいは減速の程度を求めて、その加速の程度あるいは減速の程度から、補正値を得るとともに、
エンジン回転数検知センサーから得たエンジン回転数と、上記第1記憶手段に記憶されている船速検出テーブルとを用いて得た、基本船速値に、上記補正値を加えて、計算船速値を得るよう構成されていると、実用上好ましい実施形態となる。
【0016】
また、上記本第2の発明にかかるジェット推進型の滑走艇の船速検知装置において、補正手段を、エンジン回転数の加速あるいは減速の程度と補正値を予め求めた補正テーブルとを用いて、補正値を求めるよう構成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇およびそれに最適な船速検知装置について、小型滑走艇を例に挙げて、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇の制御関係の構成を示すブロック図、図2は図1のブロック図に示すエンジンコントロールユニットの構成を模示図的に表したブロック図、図3は図1のブロック図に示す構成要素のオフ・スロットル・ステアリングモード制御の制御内容を示すフローチャート、図4は図2に示す船速検知の検知プログラムの内容を示すフローチャート、図10は本発明の実施形態にかか小型滑走艇の全体側面図、図11は図10の平面図、図12は図10のステアリング近傍の部分拡大断面図、図13はステアリング部分の要部の分解斜視図、図14は図1のブロック図に示す構成を実際のエンジンとの関連で表した図である。
【0019】
図10,図11において、Aは船体で、この船体Aは、ハルHとその上方を覆うデッキDから構成され、これらハルHとデッキDを全周で接続する接続ラインはガンネルラインGと呼ばれ、この実施例では、このガンネルラインGは、この小型滑走艇の喫水線Lより上方に位置している。
【0020】
そして、上記デッキDの中央よりやや後部には、図11に図示するように、船体Aの上面に長手方向に延びる平面視において略長方形の開口部16が形成され、図10,図11に図示するように、この開口部16上方に騎乗用のシートSが配置されている。
【0021】
また、エンジンEは、上記シートS下方のハルHとデッキDに囲まれた横断面形状が「凸」状の空間20内に配置される。
このエンジンEは、多気筒(この実施例では3気筒)のエンジンEで、図10に図示するように、クランクシャフト10bが船体Aの長手方向に沿うような向きで搭載されており、このクランクシャフト10bの出力端は、プロペラ軸15を介して、インペラ21が取着されているウォータージェットポンプPのポンプ軸側に、一体的に回転可能に連結されている。そして、このインペラ21は、その外周方が、ポンプケーシング21Cで覆われ、小型滑走艇の底面に設けられた給水口17から取り入れた水を吸水通路を介して取り込んで、ウォータージェットポンプPで加圧・加速して、通水断面積が後方にゆくに従って小さくなったポンプノズル(噴出部)21Rを通って、後端の噴射口21Kから吐出して、推進力を得るよう構成されている。
【0022】
なお、図10において、21Vは整流するための静翼である。また、図10,図11おいて、10はステアリング操作手段である操舵用のハンドルで、このハンドル10を左右に操作することによって、上記ポンプノズル21R後方のステアリングノズル18を左右に揺動させて、ウォータージェットポンプPの稼働時に、艇を所望の方向に操舵できるよう構成されている。
【0023】
また、図10に図示するように、上記ステアリングノズル18の上後方には、水平に配置された揺動軸19aを中心に下方に揺動可能に、ボウル形状のリバース用のデフレクター19が配置され、このデフレクター19をステアリングノズル18後方の下方位置へ揺動動作させることによって、ステアリングノズル18から後方に吐出される水を前方に転向させて、後進できるよう構成されている。
【0024】
また、図10,図11において、12は後部デッキで、この後部デッキ12には、開閉式のハッチカバー29が設けられ、ハッチカバー29の下方に小容量の収納ボックス(図示せず)が形成されている。また、図10あるいは図11において、23は前部ハッチカバーで、このハッチカバー23の下方には備品等を収納するボックス(図示せず)が設けられている。また、この前部ハッチカバー23の上方には、別のハッチカバー25が配置されて、二層式のハッチカバーが形成され、上記ハッチカバー25には、後端面に設けられた開口(図示せず)からその内部にライフジャケット等を収納することができるようになっている。
【0025】
ところで、本発明の実施例にかかる小型滑走艇では、図12,図13に図示するように、上記ハンドル10の回転軸10A部分には、回転側と固定側に、近接スイッチで構成されるステアリング位置検知センサーSpが配置されている。この実施例では、ステアリング位置検知センサーSpは、回転側に円板状の部材の一部に永久磁石40を配設するとともに、固定側に二箇所、上記永久磁石40が近接するとONになるセンサー41を配置した構成のものによって形成されている。
また、図14に図示するように、エンジンEの吸気通路3に配置されているバタフライバルブ51に近接して、スロットル開度検知センサーSbが配置されている。
さらに、図14に図示するように、クランク軸Crの近傍には、エンジン回転数検知センサーSeが配置されている。
そして、図1に図示するように、上記ステアリング位置検知センサーSp,スロットル開度検知センサーSb,およびエンジン回転数検知センサーSeは、それぞれ、電線によって、エンジンコントロールユニットEcに接続されており、これら各センサーで検知した信号を、このエンジンコントロールユニットEcに伝達するよう構成されている。
そして、このエンジンコントロールユニットEcは、図14に図示するように、信号線(電線)によって、エンジンEのシリンダヘッドHcに配置されている燃料噴射装置Feに接続されている。また、このエンジンコントロールユニットEcは、信号線(電線)によって、点火コイルIcに接続されている。
そして、点火コイルIcは、電線(高圧電気コード)によって、点火プラグIpに接続されている。なお、図14において、4は燃料タンク、5は燃料昇圧ポンプを示す。
【0026】
ところで、上記エンジンコントロールユニットEcは、この実施例では、マイクロコンピュータによって構成されており、このエンジンコントロールユニットEcには、図2に模示図的に図示するように、プログラム(ソフトウエア)の形態で、船速検知装置Dsが形成されており、またこの船速検知装置Dsには、船速を演算によって検知する船速演算手段Dcを備え、さらに、エンジン回転数と船速との関係を予めテーブルの形態にした船速検出テーブルTsが該エンジンコントロールユニットEcのメモリの中に格納されている。さらに、エンジンコントロールユニットEcのメモリの中には、エンジン回転数の加速・減速と補正値との関係を予めテーブルの形態にした補正テーブルTcが格納されている。
また、上記エンジンコントロールユニットEcには、オフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなうためのプログラムが格納されている。
【0027】
しかして、このように構成された本発明の実施例にかかるジェット推進型滑走艇は、以下のように、エンジン回転数から船速を検知して、スロットルをOFF操作したときに、その船速に合わせて高速域から低速域にかけて段階的にオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこない、円滑なステアリング機能を維持することができる。以下、その作用の内容とともに、上記エンジンコントロールユニットEcに内蔵されているメモリに記録されているオフ・スロットル・ステアリングモード制御のプログラムの内容(制御の内容)について、図3,図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0028】
つまり、図4のフローチャートに図示するように、ジェット推進型滑走艇である小型滑走艇が滑走している状態において、そのときの船速をエンジン回転数から以下のように検知する。即ち、
図5に図示するように、得ようとする時点からそれ以前の所定期間(この場合Δ
t6 〜t1 )の一定時間Δt毎のエンジン回転数に関するデータを上記エンジン回転数検知センサーSeから検知する(ステップ1a(S1a))。つまり、常に現時点とそれ以前の上記所定期間(この場合Δt6 〜t1 )内のエンジン回転数を一定間隔Δt毎にエンジンコントロールユニットEcのメモリ内に記憶するよう構成されている。
【0029】
そして、これら検知したエンジン回転数に関するデータについて、順次そのデータとその直前に得られた前のデータ、例えばt1 とt2 のエンジン回転数に関する各データの差分ΔS1 を得る差分処理を所定時間(この実施例ではt1 〜t6 )にわたっておこなう(ステップ2a(S2a))。
【0030】
次に、その差分処理した時系列的なデータから、どの程度の加速あるいは減速がおこなわれているか、もしくは定常状態なのかのを判定するとともに、上記所定期間(この場合Δt6 〜t1 )における各差分ΔS1 〜ΔS5 を積算(ΣΔSn )する。(ステップ3a(S3a))。
【0031】
次に、上記判定結果に基づいて、図6(a)に図示する補正テーブルを兼備した船速検出テーブルから、基本船速値と補正値を求める(ステップ4a(S4a))。具体的には、例えば、図6(a)に概念的に示すように、得ようとする時点t6 のエンジン回転数R6 における基本船速値Ss6得る。そして、次に、上記各差分ΔS1 〜ΔS5 を積算(ΣΔSn )した積算値(補正値に該当)によって補正する。例えば、積算値Sscが「正」の値であると、図6(a)に図示するように、上記基本船速値Ss6から下方にその積算値Sscに対応する分だけ移動させた(減算した)位置の値(船速)が、得ようとする計算船速値SsRとなり、その移動させた量が、補正値となる。つまり、加速の程度が大きい程、基本船速値Ss6に比べて、計算船速値SsRが低い方向にずれることになる。また、上記差分の積算値が負の値の場合、図6(a)において、上記基本船速値Ss6から上方にその積算値分だけ移動させた(加算した)位置の値(船速)が、得ようとする計算船速値SsRとなる。つまり、減速の程度が大きい程、基本船速値Ss6に比べて、計算船速値SsRが高い方向にずれることになる。また、定常状態の場合には、上記積算値(補正値)はゼロとなり、この場合には、上記基本船速値Ss6と計算船速値SsRとが等しくなる。
従って、例えば所定期間においてエンジン回転数の加速が大きいときには、船体の慣性に起因して、エンジン回転数の加速の程度と実際の船速の増速との差は大きくなる。つまり、ゆっくり加速すると、エンジン回転数の加速程度と船速の増速程度は一致することから、その差は少なくなる。
また、上記補正テーブルを兼ねた船速検出テーブルは、各種の艇に固有のものとなることから、予め、船速,エンジン回転数等を計測する計測装置等を用いて、その艇で実走し、エンジン回転数と船速との関係を、複数の、程度の異なるエンジン回転数の加速状態と減速状態、およびエンジン回転数の変化に対して船速の変化に遅れ状態のない緩慢な加速状態(減速状態)を、求めることによって作成しておく。具体的には、例えば、図6(a)に図示するように、最大加速状態におけるときのエンジン回転数の変化と船速の変化を求め(図6(a)の線Ac MAX 参照)、且つ、最大減速状態におけるときのエンジン回転数の変化と船速の変化を求め(図6(a)の線Ad MAX 参照)、さらに、エンジン回転数の変化に対して船速の変化に遅れ状態のない緩慢な加速状態(減速状態)を求める(図6(a)の線Am 参照)。そして、上記補正値については、図6(b)の表に図示するように、縦軸に補正量を、横軸に上記差分を積算した積算値をとって、これら補正量と積算値との関係を求めておく。そして、このように求めた補正値は、図6(a)に図示する基本船速値に対して、その基本船速における線Ad MAX 又は線Ac MAX を用いて、最大加速あるいは最大減速と上記積算値との割合を求めて、上述したように、図6(a)における補正量を算出することができる。
なお、補正値は、上記実施例では図6(a),(b)に示すテーブルを用いて算出するよう構成されているが、これに代えて、エンジン回転数の加速あるいは減速の程度をパラメータとする方程式を用いて、求めるよう構成してもよい。
【0032】
従って、上述のように求めた計算船速値SsRは、実際の船速の変化の状況を反映したものである。
【0033】
そして、上述のようにエンジン回転数から船速(計算船速値SsR)を、適宜間隔(例えば、1秒あるいは0.5秒等の適宜間隔)で得て、例えば、艇のスピードメータに表示することができ、また後述するオフ・スロットル・ステアリングモード制御に利用する。
【0034】
従って、従来船速計を具備しない小型滑走艇にとって、エンジン回転数のみから船速を検知することができることになり、また、この検知した船速を用いて以下にのべる制御開始時の船速に合った円滑なオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなうことができる。つまり、
図3のフローチャートに図示するように、
例えば、ライダーが小型滑走艇のスロットルをOFF操作すると、上記スロットル開度検知センサーSbが、そのOFF操作を検知(ステップ1(S1))し、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
【0035】
そして、このような状態において、ライダーが、上記ハンドル10を右あるいは左に所定角度(この実施例では、回転角度にして、左右にそれぞれ略20度程度)操作すると、上記ステアリング位置検知センサーSpが、その操舵動作を検知して(ステップ2(S2))、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
【0036】
次に、エンジンコントロールユニットEcは、上述のように求めた船速(計測船速)をデータとして呼び出す(ステップ3(S3))。
【0037】
次に、エンジンコントロールユニットEcは、図7に図示するテーブル(この実施例では、船速と、エンジン回転数からオフ・スロットル・ステアリングモード制御のモードを決定するテーブル)に従って、そのときの船速(計測船速)とエンジン回転数から、Hモード,MモードあるいはLモードの各モードを用いて、どのようなオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなうかを決定する(ステップ4(S4))。つまり、図7のテーブルに示すように、船速(速度)の大きさによって、且つエンジン回転数の大きさによって、どのような形態(モードあるいはモードの組合せ)でオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなうかを決定する。具体的には、例えば、船速が後述する第2船速領域以下でエンジン回転数か所定の範囲以下であると判断すると、第1船速領域と判断し、後述するHモードおよびMモードよりは速やかなLモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなう旨、決定する。
また、船速が上記第1船速領域以上であって後述する所定値(第3船速領域)以下であり且つエンジン回転数が所定範囲内のときには、第2船速領域と判断し、上記Lモードよりは緩慢で且つHモードより速やかなMモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこない、船速とエンジン回転数が低下して、第1船速領域に入ってくると、上記Mモードよりは速やかなLモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなう決定する。また、船速が所定値(第3船速領域)以上であってエンジン回転数が所定以上のときには、第3船速領域と判断し、まず制御が上記Mモードよりさらに緩慢なHモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこない、船速とエンジン回転数が低下して、船速が第2船速領域に入ってくると、上記Hモードよりは速やかでLモードよりは緩慢なMモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこない、船速とエンジン回転数がさらに低下して、船速が第1船速領域に入ってくると、上記Mモードよりは速やかな上記Lモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなう決定する。なお、この実施例では、船速とともにエンジン回転数に基づいて、上記オフ・スロットル・ステアリングモード制御の各モードを決定しているが、より制御を簡単にしようとするときには、船速(船速領域)のみを判断要素としてもよい。
【0038】
次に、上記決定したモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなう(ステップ5(S5))。具体的には、図8に図示するように、各モードが連続して円滑に、あるいは単独でおこなわれる。このため、オフ・スロットル・ステアリングモード制御が、円滑におこなうことができる。小型滑走艇の実際のオフ・スロットル・ステアリングモード制御による操舵の状況を概念的に図示すると、図9のように、各船速に合った円滑な操舵状況を得ることができることになる。
【0039】
そして、次に、上記オフ・スロットル・ステアリングモード制御の制御が終了したか否かチェックし(ステップ6(S6))、終了すると、上記燃料噴射タイミングと点火タイミングを元の状態(通常運転状態)に戻す(ステップ7(S7))。従って、その結果、通常運転の状態に戻ることになる。
【0040】
ところで、上記オフ・スロットル・ステアリングモード制御の内容については、燃料噴射タイミングと点火タイミングを変更(この実施例では、例えば、タイミングを早くする。)して、エンジンEを一時的に所定の回転数まで上昇させることになる。なお、このとき、上記タイミングの変更とともに、燃料噴射量を変更(例えば「増加」)させるような制御をおこなってよい。また、エンジンEを所定回転数まで高めるのに、燃料噴射タイミングと点火タイミングの両方を変更するよう構成しているが、これらに加えて燃料噴射量を変更してもよく、あるいはこれらのうちのいずれか一つのみを変更させるようにしてもよい。
【0041】
また、上記所定の回転数は、小型滑走艇の特性(旋回特性あるいは船形に起因する特性)等に鑑み決定するが、この実施例では、3000rpmに設定している。この設定値は、適宜設定値(例えば,2500〜3500rpm)に決定されればよい。
【0042】
そして、この実施例では、上記Hモードのときには、Mモードに比べて、時間的に長い時間をかけて、さらにMモードのときには、Lモードに比べて、時間的に長い時間をかけて上記オフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこなうよう構成されている。しかし、これに代えて、上記上昇させるエンジン回転数の高さについても、上記時間的長さとともに、各モードによって変更するよう構成してもよい。
【0043】
上述のように一連のオフ・スロットル・ステアリングモード制御がおこなわれることによって、スロットルがOFF操作されたときにも、そのときの船速に合致して円滑な操舵機能を維持することができる。
【0044】
そして、このように構成された、本ジェット推進型滑走艇によると、上記スロットル開度検知センサーSb、エンジン回転数検知センサーSeおよびエンジンコントロールユニットEcを構成するマイクロコンピュータは、従来のジェット推進型滑走艇にも具備されていることから、単に近接スイッチからなるステアリング位置検知センサーSpのみ新たに設け、且つ上記エンジンコントロールユニットEcの制御プログラムのみを変更すればよいため、簡単に実現できることになる。
【0045】
さらに、上記一時的にエンジン回転数を上昇させる「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」を、エンジンがアイドリング領域(例えば、800〜2000rpm)のときには、実行させないよう構成してもよい。このように構成すると、余分な推進力が不要のときにエンジン回転数がアイドリング領域から上昇することがない点で、好ましい実施形態となる。
【0046】
なお、本明細書において、スロットル開度検知センサーからスロットルがOFF操作された旨の信号と、ステアリング位置検知センサーからステアリングが操作されている信号が得られたときに、一時的にエンジンの回転数を上昇させて、操舵機能を維持するような制御を、「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」という。また、本明細書において、スロットルの「OFF操作」とは、スロットルが「閉」側に所定量以上操作される動作をいう。
【0047】
【発明の効果】
本第1の発明によれば、重量を増加させることがなく且つ制御開始時の速度に合った好ましい操舵のためのオフ・スロットル・ステアリングモード制御が可能なジェット推進型滑走艇を提供することができる。
【0048】
また、本第2の発明によれば、上記ジェット推進型滑走艇に最適な船速検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇の制御関係の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1のブロック図に示すエンジンコントロールユニットの構成を模示図的に表したブロック図である。
【図3】 図1のブロック図に示す構成要素のオフ・スロットル・ステアリングモード制御の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】 図2に示す船速検知の検知プログラムの内容を示すフローチャートである。
【図5】 縦軸にエンジン回転数と横軸に時間をとってエンジン回転数の変化と各時間(Δt)毎の差分を表した図である。
【図6】 (a)は縦軸に船速と横軸にエンジン回転数をとって、エンジン回転数から基本船速値と補正値を求めるためのテーブル(補正テーブルを兼ねた船速検出テーブル)、(b)は縦軸に補正値と横軸に差分を積算した積算値をとって、補正値と積算値の関係を表した表である。
【図7】 縦軸に船速と横軸にエンジン回転数をとって、オフ・スロットル・ステアリングモード制御のモードを決定するためのテーブルである。
【図8】 縦軸に船速と横軸に時間をとって、船速が第1船速領域〜第3船速領域のときの各モードの組合せあるいはモードを表した概念図である。
【図9】 本実施例にかかる小型滑走艇のスロットルをオフにした状態から旋回するまでの状態を、低速と中速と高速の場合に分けて表した模式図である。
【図10】 本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の全体側面図である。
【図11】 図4に示す小型滑走艇の全体平面図である。
【図12】 ステアリング位置検知センサーの配置位置と構成を示す、図4のステアリング近傍の部分拡大断面図である。
【図13】 図6に示すステアリング位置検知センサーの配置位置とその近傍の構成を示す、ステアリング部分の要部の分解斜視図である。
【図14】 図1に示す制御関係の構成を実際のエンジンとの関連で表した図である。
【符号の説明】
P……ウォータージェットポンプ
21K……噴射口
E……エンジン
Sp……ステアリング位置検知センサー
Sb……スロットル開度検知センサー
Claims (6)
- ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進し、操舵とともに、スロットルをOFF操作したときに、スロットル開度検知センサーとステアリング位置検出センサーが、スロットルOFF操作とステアリングの操舵を検知して、一時的にエンジンの回転数を上昇させることによって、スロットルのOFF操作時に、操舵機能を維持できるよう構成されたジェット推進型の滑走艇において、
船速検知装置によって検知したそのときの船速によって、高速域から低速域にわたる複数の船速領域のうちのいずれの船速領域か判断して、低速域に比べてより船速の大きい船速領域の場合には、その船速に応じて、段階的に、緩やかな制御がなされるモードから次第に速やかな制御がなされるモードの複数のモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を順次実行することを特徴とするジェット推進型滑走艇。 - 前記検知したそのときの船速を、最も船速の小さな第1船速領域と、第1船速領域より速い速度の第2船速領域と、最も船速の大きな第3船速領域の3段階の領域のいずれかの領域に分けて、
検知した船速が、第1船速領域のときには第2船速領域の場合より速やかなLモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を実行し、第2船速領域のときには、第1船速領域の場合よりも緩やかな操舵がおこなわれるようなMモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を経てLモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を実行し、第3船速領域のときには、第2船速領域の場合よりもさらに緩やかな操舵がおこなわれるようなHモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御、およびMモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を経て、Lモードのオフ・スロットル・ステアリングモード制御を実行するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のジェット推進型滑走艇。 - 前記船速検知装置が、エンジンの回転数から船速を求める装置であることを特徴とする請求項1又は2記載のジェット推進型滑走艇。
- 前記船速検知装置が、エンジン回転数検知センサーと、船速を演算によって検知する船速演算手段とを具備し、
前記船速演算手段が、エンジン回転数と船速との関係を予め求めた船速検出テーブルを記憶した第1記憶手段と、エンジン回転数の加速あるいは減速の程度から上記船速検出テーブルから求めた船速を補正する補正値を求めるための補正手段を具備していることを特徴とする請求項1記載のジェット推進型滑走艇。 - 前記船速演算手段が、エンジン回転数検知センサーから一定時間毎にエンジン回転数に関するデータを得て、順次そのデータとその直前に得られた前のデータとの差分処理を所定時間にわたっておこない、これら得られた所定時間内の複数の差分を積算処理して、エンジン回転数に関する加速の程度あるいは減速の程度を求めて、その加速の程度あるいは減速の程度から、補正値を得るとともに、
エンジン回転数検知センサーから得たエンジン回転数と、前記第1記憶手段に記憶されている船速検出テーブルとを用いて得た、基本船速値に、前記補正値を加えて、計算船速値を得るよう構成されていることを特徴とする請求項4記載のジェット推進型滑走艇。 - 前記補正手段が、エンジン回転数の加速あるいは減速の程度と補正値を予め求めた補正テーブルとを用いて、補正値を求めるよう構成されていることを特徴とする請求項4記載のジェット推進型滑走艇。
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