JP4749534B2 - ジェット推進型滑走艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水流を後方に噴出してその反動で水上を航行する小型滑走艇( Personal Watercraft(パーソナルウォータークラフト); PWCとも呼ばれる) 等のジェット推進型の滑走艇に関し、特に該ジェット推進型滑走艇において、スロットルをOFF操作したときにも操舵機能が維持される、「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」をおこなう装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
所謂ジェット推進型の滑走艇は、レジャー用,スポーツ用としてあるいはレスキュー用として、近年多用されている。このジェット推進型の滑走艇では、一般的に艇の底面に設けられた吸水口から吸い込んだ水を、ウォータージェットポンプで加圧・加速して後方へ噴射することによって船体を推進させる。
【0003】
そして、このジェット推進型の滑走艇の場合、上記ウォータージェットポンプの噴射口の後方に配置したステアリングノズルを左右に揺動させることによって、後方への水の噴射方向を左右に変更することによって、艇を右側あるいは左側に操舵する。
【0004】
従って、このような構成のジェット推進型の滑走艇の場合、スロットルを全閉近くまで閉じてウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少すると、艇を転向させるために利用できる推力(操舵のために利用できる推力)も同時に減少し、スロットルが再び開くまでは、艇を操舵する能力が減少する。
【0005】
このような現況に鑑みて、本出願人は、スロットルを全閉近くまで閉じてウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少しても、メカニカル的に、操舵する能力を維持できる操舵用のステアリング部材を備えたジェット推進型の滑走艇を提供した(特願2000−6708号)。
【0006】
また、上記ジェット推進型滑走艇の場合、部品点数が多くなって、構造が複雑となり、重量が増加することに鑑みて、スロットルのOFF操作とステアリング操作手段の操舵とを検知して、一時的にエンジン回転数を上昇させて、水の噴射量を維持して操舵機能を維持するよう構成したジェット推進型滑走艇を提供した(特願2000−6708号、同142664号、同142639号)。
【0007】
本発明は、上記ジェット推進型滑走艇において、通常の航行中に、ステアリング操作手段の操舵を検知する信号線が断線したような場合に、「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」にならないようなジェット推進型滑走艇を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を、以下のような構成からなるジェット推進型滑走艇によって解決することができる。即ち、
本発明にかかるジェット推進型滑走艇は、ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進するよう構成されるとともに、ステアリング操作手段の操舵状態を検知するステアリング位置検知センサーと、このステアリング位置検知センサーからの操舵した旨の信号を受けて制御される操舵手段とを備えたジェット推進型の滑走艇において、
前記ステアリング操作手段が非操舵状態にあるときの、ステアリング位置検知センサーから得られる信号を、制御装置側からステアリング位置検知センサーへ付与している信号と同じにしたことを特徴とする。
【0009】
しかして、このように構成されたジェット推進型滑走艇によると、通常の航行中において、ステアリング位置検知センサーに接続されている信号線が断線したような場合に、ステアリング位置検知センサーからは非操舵状態の信号と同じ入力が得られた状態になることから、該断線したような場合には「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」にはならず、通常の航行を維持することができる。
【0010】
また、上記ジェット推進型滑走艇において、上記非操舵状態にあるときの、ステアリング位置検知センサーから得られる信号が、「HI」レベルの信号であり、上記制御装置側からステアリング位置検知センサーへ付与している信号が「HI」レベルの信号であると、ノイズ介在の余地がなくなることから、ノイズに強い構成となる。
【0011】
また、上記ジェット推進型滑走艇において、上記非操舵状態にあるときの、ステアリング位置検知センサーから得られる信号が、「LOW」レベルの信号であり、上記制御装置側からステアリング位置検知センサーへ付与している信号が「LOW」レベルの信号であるような構成とすることもできる。
【0012】
さらに、上記ジェット推進型滑走艇において、上記ステアリング位置検知センサーが近接スイッチによって構成され、この近接スイッチの近接センサーが、艇のステアリング操作手段の回転軸側の二箇所にそれぞれ配置されており、
上記近接センサーの一つの端子へ制御装置側から「HI」レベルの電圧が印加されるとともに、該近接センサーの他の端子がアース側に接続されており、
ステアリング操作手段が操作されると、操作された側に配置されている上記近接センサーが作動して、該近接センサーの両方の端子が短絡して、「HI」レベルから「LOW」レベルに変化するよう構成されていると、好ましい実施形態となる。
【0013】
また、上記ジェット推進型滑走艇において、上記ステアリング位置検知センサーが近接スイッチによって構成され、この近接スイッチの近接センサーが、艇のステアリング操作手段の回転軸側の二箇所にそれぞれ配置されており、
上記近接センサーの一つの端子が制御装置側においてアース側に接続されるとともに、該近接センサーの他の端子に「HI」レベルの電圧が印加されており、
ステアリング操作手段が操作されると、操作された側に配置されている上記近接センサーが作動して、該近接センサーの両方の端子が短絡して、「LOW」レベルから「HI」レベルに変化するよう構成されているような実施形態であってもよい。
【0014】
なお、本明細書において、スロットルがOFF操作された状態で、ステアリング位置検知センサーからステアリング操作手段が操作されている信号が得られたときに、一時的にエンジンの回転数を上昇させて、操舵機能を維持するような制御を、「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」という。また、本明細書において、スロットルの「OFF操作」とは、スロットルが「閉」側に所定量以上操作される動作をいう。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇について、小型滑走艇を例に挙げて、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇の制御関係の構成を示すブロック図、図2は図1のブロック図に示す構成要素の制御内容を示すフローチャート、図3はステアリング位置検知センサー部分の構成を示す模式図、図5は制御に利用されるテーブル、図6は本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の全体側面図、図7は図6の平面図、図8は図6のステアリング操作手段(ハンドル)近傍の部分拡大断面図、図9はステアリング操作手段近傍の分解斜視図、図10は図1のブロック図に示す構成を実際のエンジンとの関連で表した図である。
【0017】
図6,図7において、Aは船体で、この船体Aは、ハルHとその上方を覆うデッキDから構成され、これらハルHとデッキDを全周で接続する接続ラインはガンネルラインGと呼ばれ、この実施例では、このガンネルラインGは、この小型滑走艇の喫水線Lより上方に位置している。
【0018】
そして、上記デッキDの中央よりやや後部には、図7に図示するように、船体Aの上面に長手方向に延びる平面視において略長方形の開口部16が形成され、図6,図7に図示するように、この開口部16上方に騎乗用のシートSが配置されている。
【0019】
また、エンジンEは、上記シートS下方のハルHとデッキDに囲まれた横断面形状が「凸」状の空間20内に配置される。
このエンジンEは、多気筒(この実施例では3気筒)のエンジンEで、図6に図示するように、クランクシャフト10bが船体Aの長手方向に沿うような向きで搭載されており、このクランクシャフト10bの出力端は、プロペラ軸15を介して、インペラ21が取着されているウォータージェットポンプPのポンプ軸側に、一体的に回転可能に連結されている。そして、このインペラ21は、その外周方が、ポンプケーシング21Cで覆われ、小型滑走艇の底面に設けられた給水口17から取り入れた水を吸水通路を介して取り込んで、ウォータージェットポンプPで加圧・加速して、通水断面積が後方にゆくに従って小さくなったポンプノズル(噴出部)21Rを通って、後端の噴射口21Kから吐出して、推進力を得るよう構成されている。
【0020】
なお、図6において、21Vは整流するための静翼である。また、図6,図7おいて、10はステアリング操作手段である操舵用のバー型ハンドルで、このハンドル10を左右に操作することによって、上記ポンプノズル21R後方のステアリングノズル18を左右に揺動させて、ウォータージェットポンプPの稼働時に、艇を所望の方向に操舵できるよう構成されている。
【0021】
また、図6に図示するように、上記ステアリングノズル18の上後方には、水平に配置された揺動軸19aを中心に下方に揺動可能に、ボウル形状のリバース用のデフレクター19(図6参照)が配置され、このデフレクター19をステアリングノズル18後方の下方位置へ揺動動作させることによって、ステアリングノズル18から後方に吐出される水を前方に転向させて、後進できるよう構成されている。
【0022】
また、図6,図7において、12は後部デッキで、この後部デッキ12には、開閉式のハッチカバー29が設けられ、ハッチカバー29の下方に小容量の収納ボックス(図示せず)が形成されている。また、図6あるいは図7において、23は前部ハッチカバーで、このハッチカバー23の下方には備品等を収納するボックス(図示せず)が設けられている。また、この前部ハッチカバー23の上方には、別のハッチカバー25が配置されて、二層式のハッチカバーが形成され、上記ハッチカバー25には、後端面に設けられた開口(図示せず)からその内部にライフジャケット等を収納することができるようになっている。
【0023】
ところで、本発明の実施例にかかる小型滑走艇では、図8,図9に図示するように、上記ハンドル10の回転軸10A部分には、回転側と固定側に、近接スイッチで構成されるステアリング位置検知センサーSpが配置されている。この実施例では、ステアリング位置検知センサーSpは、回転側に円板状の部材の一部に永久磁石40を配設するとともに、固定側に二箇所、上記永久磁石40が近接するとONになり離間するとOFFになる近接センサー41を配置した構成のものによって形成されている。
そして、このステアリング位置検知センサーSpは、図3(a)に図示するように、近接センサー41の二つの端子のうちの一方の端子(Ec側端子)41aは、エンジンコントロールユニットEcと電気的に接続され、12Vが供給されている。また、近接センサー41の残りの一方の端子(アース側端子)41bは、電気的にアース側に接続されている。そして、近接センサー41に永久磁石40が近接すると、該近接センサー41がON(閉)になって、エンジンコントロールユニットEc側端子41aからアース側端子41b側に、つまり、エンジンコントロールユニットEc側からアース側に電流が流れ、その結果、エンジンコントロールユニットEcの近接センサー41側の端子は、電圧信号が「HI」レベルから「LOW」レベルに変化して、ハンドル10が操作されたことが検知されるよう構成されている。
しかし、この構成に代えて、図3(b)に図示するように、近接センサー41の二つの端子のうちの一方の端子(Ec側端子)41aは、エンジンコントロールユニットEcと電気的に接続され、また、近接センサー41の残りの一方の端子(アース側端子)41bは、電気的に電源Btを介してアース側に接続されているような構成であってもよい。そして、この構成では、近接センサー41に永久磁石40が近接すると、該近接センサー41がON(閉)になって、アース側端子41bからEc側端子41a側に、つまり、電源BtからエンジンコントロールユニットEc側へ電流が流れ、その結果、エンジンコントロールユニットEcの近接センサー41側の端子は、電圧信号が「LOW」レベルから「HI」レベルに変化して、ハンドル10が左右のいずれかに操作されたことが検知されることになる。
上記図3(a)の各部位におけるハンドル操作の各状態での信号レベル(この実施形態では電圧)をそれぞれ表すと図4(a)の表の如くなる。また、上記図3(b)の各部位におけるハンドルの操作各状態での信号レベル(この実施形態では電圧)をそれぞれ表すと図4(b)の表の如くなる。
【0024】
また、この実施形態では、図10に図示するように、エンジンEの吸気通路3に配置されているバタフライバルブ51に近接して、スロットル開度検知センサーSbが配置されている。
さらに、図10に図示するように、クランク軸Crの近傍には、エンジン回転数検知センサーSeが配置されている。
また、具体的位置は図示しないが、図10、図1に図示する、小型滑走艇の船速を検知する船速検知センサー(船速メータ)Ssが配置されている。
そして、図1に図示するように、上記ステアリング位置検知センサーSp,スロットル開度検知センサーSb,エンジン回転数検知センサーSeおよび船速検知センサーSsは、それぞれ、信号線(電線)によって、エンジンコントロールユニットEcに接続されており、これら各センサーで検知した信号を、このエンジンコントロールユニットEcに伝達するよう構成されている。
そして、このエンジンコントロールユニットEcは、信号線(電線)によって、エンジンEのシリンダヘッドHcに配置されている燃料噴射装置Feに接続されている。また、このエンジンコントロールユニットEcは、信号線(電線)によって、点火コイルIcに接続されている。
そして、点火コイルIcは、電線(高圧電気コード)によって、点火プラグIpに接続されている。なお、図10において、4は燃料タンク、5は燃料昇圧ポンプを示す。
【0025】
しかして、このように構成された本発明の実施例にかかるジェット推進型滑走艇は、以下のように、スロットルをOFF操作したときに、オフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこない、ステアリング機能を維持することができ、しかも、通常の航行中(例えば、滑走中)に、ステアリング位置検知センサーSpと接続され操舵状態を検知する信号線が断線したような場合にも、「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」にならないような構成となる。以下、その作用の内容とともに、上記エンジンコントロールユニットEcに内蔵されているコンピュータのメモリに記録されている制御プログラムの制御内容について図2のフローチャートを参照しながら説明する。
つまり、ジェット推進型滑走艇である小型滑走艇が滑走している状態において、ライダーが小型滑走艇のスロットルをOFF操作すると、上記スロットル開度検知センサーSbが、そのOFF操作を検知(ステップ1(S1))し、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
そして、このような状態において、ライダーが、上記ハンドル10を右あるいは左に所定角度(この実施例では、回転角度にして、左右にそれぞれ略20度程度)操作すると、上記ステアリング位置検知センサーSpが、その操舵動作を検知して(ステップ2(S2))、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
次に、エンジンコントロールユニットEcは、上記船速検知センサーSsから、そのときの船速を検知する(ステップ3(S3))。
次に、エンジンコントロールユニットEcは、図5に図示するテーブル(船速と、デイレイタイムおよび動作時間との関係を予め定めたテーブル)に従って、制御すべき時間的タイミングと、制御してエンジンEの回転数を一時的に高めた状態の継続時間、つまり時間的長さ(動作時間)を決定する(ステップ4(S4))。つまり、図5のテーブルに示すように、上記「ディレイタイム」は、船速の大きさ(速度)に比例して大きくなり、また、上記「動作時間t」は船速が速くなるに比例して長く、決定される。また、上記船速に代えて、エンジン回転数から船速に換算するようにしてもよい。しかし、この場合には、瞬時のエンジン回転数だけでは正しい船速は得られないことから、小型滑走艇の慣性を配慮して、継続的にエンジン回転数をデータとして得て、そのデータに基づいて船速に換算することが望ましい。
次に、上記制御すべきタイミングであるか否かチェックし(ステップ5(S5))、そのタイミングが来ると、オフ・スロットル・ステアリングモード制御を開始して、燃料噴射タイミングと点火タイミングを変更(この実施例では、例えば、タイミングを早くする。)して、エンジンEを一時的に所定の回転数まで上昇させる(ステップ6(S6))。なお、このとき、上記タイミングの変更とともに、燃料噴射量を変更(例えば「増加」)させるような制御をおこなってよい。また、上記所定の回転数は、小型滑走艇の特性(旋回特性あるいは船形に起因する特性)等に鑑み決定するが、この実施例では、3000rpmに設定している。この設定値は、適宜設定値(例えば,2500〜3500rpm)に決定されればよい。また、設定値は、固定値であってもよいし、又はそのときの船速等によって選択的に値が変るようなものであってもよい。
【0026】
そして、次に、上記演算で決定した動作時間tが経過したか否かチェックし(ステップ7(S7))、動作時間tが経過すると、上記燃料噴射タイミングと点火タイミングを元の状態(通常運転状態)に戻し(ステップ8(S8))、オフ・スロットル・ステアリングモード制御を終了する。従って、その結果、通常運転の状態に戻ることになる。
【0027】
上記一連のオフ・スロットル・ステアリングモード制御がおこなわれることによって、スロットルがOFF操作されたときにも、操舵機能が維持される。
【0028】
そして、上記ステアリング位置検知センサーSpへの信号線(電線)が断線した場合に、上述のように構成されていると、該断線したときのステアリング位置検知センサーSpからの信号レベルと、ハンドル10が左右に所定角度以上操舵されていないとき(中立位置のとき)の信号レベルとが一致する。従って、仮に断線したときには、エンジンコントロールユニットEcは、ハンドル10が中立位置にある(左右に操舵されていない)と判断することになる。この結果、操舵機能が必要でないときに上記断線等によって操舵機能が作用することがない。
【0029】
また、上記ジェット推進型滑走艇によれば、船速に対応して、つまり、低速のときは短いディレイタイムで、高速になる程長いディレイタイムになるよう制御しているため、図11に図示するように、いずれの場合にも、好ましい姿勢を維持しつつ旋回することができる。
【0030】
ところで、上記実施例では、エンジンEを所定回転数まで高めるのに、燃料噴射タイミングと点火タイミングの両方を変更するよう構成しているが、これらに加えて燃料噴射量を変更してもよく、あるいはこれらのうちのいずれか一つのみおこなわせるようにしてもよい。
【0031】
また、船速検知センサーによって、燃料噴射タイミングと点火タイミングを変更する制御を、そのときに船速に応じてタンミング的に遅らせて実行しているが、船速に係わりなく一定のタイミングでおこなうようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施例にかかる制御では、制御の過程においてディレイタイムを設けているが、これに代えて、制御内容をより簡単(単純)にする場合には、例えば、図12のフローチャートに図示し、以下に述べるように、上記制御を早めに、つまり、スロットルのOFF操作を検知すると、エンジンが低下傾向において未だ比較的高い回転数にあるときに制御を開始してもよい。つまり、
ライダーが小型滑走艇のスロットルをOFF操作すると、上記スロットル開度検知センサーSbが、そのOFF操作(OFF操作の結果生じるエンジン回転数とPS(馬力)の変化状態を表すと図13の降下線Zb を参照)を検知(ステップ1a(S1a))し、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
そして、このような状態において、ライダーが、上記ハンドル10を右あるいは左に所定角度(この実施例では、回転角度にして、左右にそれぞれ略20度程度)操作すると、上記ステアリング位置検知センサーSpが、その操舵動作を検知して(ステップ2a(S2a))、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
すると、エンジン回転数検知センサーSeが、そのときのエンジンの回転数を検知する(ステップ3a(S3a))。
次に、エンジンコントロールユニットEcは、この検知したエンジン回転数が所定の回転数以下であるか否か、例えば、5500rpm以下か否か、チェックする(ステップ4a(S4a))。
そして、エンジンの回転数が所定回転数以下、例えば5500rpm以下になっていると、オフ・スロットル・ステアリングモード制御を開始して、燃料噴射タイミングと点火タイミングを変更して、あるいは上記タンミングの変更とともに燃料噴射量を変更して(この実施例では増加させて)、そのままでは、極く短い時間でアイドリング状態まで降下しようとするエンジンEの回転数を、一時的に増加線Za における所定の回転数(例えば、3000rpm)に上昇させる(ステップ5a(S5a))。つまり、エンジンの回転数が、図13の降下線Zb における5500rpmであっても、その出力は非常に低く、従って、ウォータージェットポンプPを駆動することができない、言わば「エンジンブレーキ」が作用した状態で、極く短時間でアイドリング状態になろうとするが、上記オフ・スロットル・ステアリングモード制御によって、ウォータージェットポンプPを駆動するべく、図13の増加線Za におけるエンジンEの回転数を所定の回転数例えば3000rpmに上昇させる。なお、図13において、破線のラインUは、そのときのウォータージェットポンプPの推力を表し、このラインUと、上記増加線Za あるいは降下線Zb との、縦軸方向の差hが、加速あるいは減速を生じさせるPS(馬力)の大きさを表す。従って、降下線Zb の5500rpmに示す状態でオフ・スロットル・ステアリングモード制御を開始して、増加線Za の3000rpmに示す状態にするには、実質上、燃料噴射タイミングを変更する等して、エンジンEの回転数を上昇させるような動作が必要となる。また、図13において、増加線Za および降下線Zb の矢印は、エンジン回転数の増減の変化の方向を示す。
次に、燃料噴射タイミングと点火タイミングを元の状態(通常運転の状態)に戻し(ステップ6a(S6a))、オフ・スロットル・ステアリングモード制御を終了する。この際、例えば、上記元の状態に戻す条件として、例えば、所定時間(例えば15秒)経過するか、若しくはライダーが、上記ハンドル10の操作を戻したことを上記ステアリング位置検知センサーSpが検知すると、戻すようにしてもよい。
【0033】
このような制御にすれば、制御をより簡単にすることができる実施例となる。そして、もちろん、この実施例においても、上記実施例と同じ本発明を適用でき、同じ作用効果を得ることができることは言うまでもない。
【0034】
上記二つの実施例では、特に、前進又は後進を限定して述べていないが、いずれの場合にも、本発明は適用できる。
【0035】
なお、上記実施形態(実施例)では、操舵手段として、水を任意の方向に噴射するステアリングノズル18およびその前方の噴射口21Kへ水を供給するウォータージェットポンプPおよびウォータージェットポンプPを駆動するエンジンEが設けられているが、これに限定されるものではなく、操舵機能を有するものであれば、本発明を適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、通常の航行中に、ステアリング操作手段の操舵を検知する信号線が断線したような場合にも、「オフ・スロットル・ステアリングモード制御」にならないようなジェット推進型滑走艇を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇の制御関係の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1のブロック図に示す構成要素の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】 本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇のステアリング位置検知センサー部分の構成を示す模式図で、(a)は1の実施形態にかかる構成を示す模式図、(b)は(a)とは別の実施形態にかかる構成を示す模式図である。
【図4】 図3(a),(b)に示す実施形態にかかるステアリング位置検知センサー部分の電気的ロジックを示すテーブルである。
【図5】 図2の制御に利用されるテーブル。
【図6】 本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の全体側面図である。
【図7】 図6に示す小型滑走艇の全体平面図である。
【図8】 ステアリング位置検知センサーの配置位置と構成を示す、図6のステアリング操作手段近傍の部分拡大断面図である。
【図9】 図8に示すステアリング位置検知センサーの配置位置とその近傍の構成を示す、ステアリング操作手段近傍の分解斜視図である。
【図10】 図1に示す制御関係の構成を実際のエンジンとの関連で表した図である。
【図11】 本実施例にかかる小型滑走艇のスロットルをオフにした状態から旋回するまでの状態を、低速と中速と高速の場合に分けて表した模式図である。
【図12】 図2とは異なる制御内容からなる別の実施例にかかる制御内容を示すフローチャートである。
【図13】 縦軸にPS(馬力)あるいは負荷、横軸にエンジンの回転数(kは「1000」を表す)をとって、エンジンの回転数の増加と降下の状態と馬力との関係、およびウォータージェットポンプの推力の状態を表した図である。
【符号の説明】
10……ハンドル(ステアリング操作手段)
P……ウォータージェットポンプ
21K……噴射口
E……エンジン
Sp……ステアリング位置検知センサー
Claims (5)
- ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進するよう構成されるとともに、ステアリング操作手段の操舵状態を検知するステアリング位置検知センサーと、このステアリング位置検知センサーからの操舵した旨の信号を受けて制御される操舵手段とを備え、該ステアリング位置検知センサーは前記ステアリング操舵手段が操舵されて非操舵状態から操舵状態に変化すると信号が操舵した旨の信号に変化するよう構成されており、且つ、前記ウォータジェットポンプを駆動するエンジンのスロットルのOFF操作と前記ステアリング操作手段の操舵とを検出して、一時的にエンジン回転数を上昇させて水の噴射量を維持することによって操舵機能を維持するように構成されたオフ・スロットル・ステアリングモード制御を備えたジェット推進型滑走艇において、
前記ステアリング操作手段が非操舵状態にあるときの、ステアリング位置検知センサーから得られる信号を、制御装置側からステアリング位置検知センサーへ付与している信号と同じにしたことを特徴とするジェット推進型滑走艇。 - 前記非操舵状態にあるときの、ステアリング位置検知センサーから得られる信号が、「HI」レベルの信号であり、前記制御装置側からステアリング位置検知センサーへ付与している信号が「HI」レベルの信号であることを特徴とする請求項1記載のジェット推進型滑走艇。
- 前記非操舵状態にあるときの、ステアリング位置検知センサーから得られる信号が、「LOW」レベルの信号であり、前記制御装置側からステアリング位置検知センサーへ付与している信号が「LOW」レベルの信号であることを特徴とする請求項1記載のジェット推進型滑走艇。
- 前記ステアリング位置検知センサーが近接スイッチによって構成され、この近接スイッチの近接センサーが、艇のステアリング操作手段の固定側の二箇所にそれぞれ配置されており、
上記近接センサーの一つの端子へ制御装置側から「HI」レベルの電圧が印加されるとともに、該近接センサーの他の端子がアース側に接続されており、
ステアリング操作手段が操作されると、操作された側に配置されている上記近接センサーが作動して、該近接センサーの両方の端子が短絡して、「HI」レベルから「LOW」レベルに変化するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のジェット推進型滑走艇。 - 前記ステアリング位置検知センサーが近接スイッチによって構成され、この近接スイッチの近接センサーが、艇のステアリング操作手段の固定側の二箇所にそれぞれ配置されており、
上記近接センサーの一つの端子が制御装置側においてアース側に接続されるとともに、該近接センサーの他の端子に「HI」レベルの電圧が印加されており、
ステアリング操作手段が操作されると、操作された側に配置されている上記近接センサーが作動して、該近接センサーの両方の端子が短絡して、「LOW」レベルから「HI」レベルに変化するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のジェット推進型滑走艇。
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