JP4655156B2 - 輻射量低減装置 - Google Patents

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Description

本発明は、輻射量低減装置に関する。
近年、テレビ・コンピュータ・カメラ・携帯電話をはじめとする電子機器の進歩とともに、機器内部に使用されている例えばCPU・LSI・クロックIC・周辺半導体等の高密度化、高集積化及びプリント配線の高密度化が進んでいる。そして、これらの電子部品等で取り扱われる周波数の成分も高周波化されている。
これに伴い、電子部品から発生する輻射ノイズ(電磁波)及びプリント基板に形成されているラインパターンから発生する伝導ノイズ(電磁波)による、人体への影響・誤動作・機能不全・特性劣化などが問題となってきている。このためEMC(Electro−Magnetic Compatibility)・EMI(Electro−Magnetic Interference)・EMS(Electro−Magnetic Susceptibility)対策がさらに求められてきている。
特開平7−212079号公報 特開平11−3549669号公報 特開平9−312489号公報 特開2007−95971号公報
一般的に電子機器において不要電波を低減するための手段として、シールドケースによって、電子機器から輻射される不要電波や不要ノイズを抑制する機構が主流である。
これは、導電性を有する金属板をシールド板として用い、基板から発生した輻射ノイズを反射させて封じ込める方式である(上記特許文献1参照。)。この方式は、放射ノイズの漏洩に効果はあるが、多種のIC等の部品やパターンからの放射ノイズがシールドケースにより反射され、散乱した放射ノイズ同士の電磁波干渉を助長してしまう恐れがある。更に、放射ノイズ等の電磁波の輻射を低減させるために、このシールドケース構造は複雑化しており、結果製造コストの増加に繋がっているのが実情である(上記特許文献2参照。)。
このようなシールドケース等を使用した場合、筐体を構成しているカバーとシールドケースとの間の接合には、ネジ止め、板バネ、ガスケットなどが用いられている。
ネジ止めによる接合の場合は、煩雑なネジ止め作業が必要であり、シールド効果を高める為にカバーとシールドケースとの間のネジの設置箇所を増やす必要がある。よって、ネジ止め作業が増え、組み立て作業効率を著しく低下させてしまっている。
板バネを用いた場合は、板バネ自体の作成作業が相当かかり、取り付け工数の大きな増大となりコストの増加になってしまっている。
導電性金属粉を添加させたガスケット、絶縁性軟磁性体を有した物の場合は、ガスケット、シート自体が高価であるとともに、取り付け構造に制約を受け、使用箇所が大きく限定されてしまう。
また、上記特許文献3には、EMI対策のうち、ケーブル等からの放射ノイズを対象に対策を行う複合磁性体が開示されている。しかし、この方式では、プリント基板に形成されているラインパターンから発生する伝導ノイズを抑制することは難しい。よって、抑制しきれない導電ノイズが、スイッチング動作による電源電圧変動等により発生し、電子機器、回路等に影響を与えてしまう。
また、上記特許文献4には、電磁波を輻射する輻射部を覆う電磁波遮断シートが開示されている。しかし、このシートは、複雑な構成を有するため製造工程が増大するばかりか、高価であるため製品の製造コストを増加させる恐れがある。
このように輻射防止方法には、一長一短有り、適切に輻射ノイズや伝導ノイズを抑えることが可能で、用意かつ安価な方法の開発が望まれている。これに対して、上述のように高周波化等によりますますノイズの低減が望まれる電子回路は複雑化しているため、様々な位置及び周波数のノイズが発生している。このようなノイズは均一化されておらず、上記のようなシールドケース構造等による対策は複雑を極めてしまっており、かつ、シールドケースによるノイズ低減にも限界がある。よって、輻射低減を効果的に行え、用意かつ安価な輻射防止手段が希求されている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電子回路等の電磁波発生源から輻射されるノイズ(電磁波)を、より効果的に、用意かつ安価に抑制することが可能な、新規かつ改良された輻射量低減装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、電磁波を輻射する電磁波発生源の少なくとも一面全体を覆うことが可能な金属板と、
上記金属板の面内に設定され上記一面全体を覆うカバー領域と、
少なくとも上記カバー領域において帯状に形成され、相互に離隔した複数のスリットと、
を有し、
上記複数のスリットそれぞれは、
上記電磁波により上記カバー領域の中央を取囲む周方向に流れる周状電流を上記カバー領域中央方向に導くように、上記カバー領域の外周において上記電磁波により上記電磁波発生源との間に生じる電界が他の位置よりも強くなる強電界位置から、上記カバー領域の中央に向けて延長形成された引込スリットと、
上記引込スリットが導いた周状電流を上記カバー領域周方向一側で相隣接した他の上記スリットとの間へと導くように、上記引込スリットにおける上記カバー領域中央方向の端部から、該他のスリットと平行に並んで延長形成された結合スリットと、
を有する、輻射量低減装置が提供される。
また、上記スリットは、Nを正の整数として、上記金属板上に2本形成されてもよい。
また、上記複数のスリットは、相互に上記カバー領域中央を基準として点対称に配置されてもよい。
また、上記カバー領域は、上記金属板全域であり、
上記金属板は、中央から外周までの中心距離が不均一に形成され、
上記強電界位置は、上記中心距離が他の部位に比べて長いエッジ位置であってもよい。
また、上記金属板は、Mを2以上の正の整数として、外周にコーナを2個有する多角形に形成され、
上記強電界位置は、上記コーナであってもよい。
また、上記金属板は、正多角形であってもよい。
また、上記強電界位置は、上記電磁波発生源の一面におけるコーナに対応する、上記カバー領域外周上の位置であってもよい。
また、上記カバー領域は、上記金属板全域であり、
上記金属板は、中央から外周までの距離が均一である円状に形成されてもよい。
以上説明したように本発明によれば、電子回路等の電磁波発生源から輻射されるノイズ(電磁波)を、より効果的に、用意かつ安価に抑制することができる。
本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置の構成について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の構成について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の作用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の作用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の作用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の作用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の更なる変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る輻射量低減装置の更なる変更例について説明するための説明図である。 関連技術に係る輻射量低減装置について説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、本発明の各実施形態に係る輻射量低減装置は、様々な電磁波発生源に対して使用することが可能である。電磁波発生源としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)・LSI(Large Scale Integration)・クロックIC(Integrated Circuit)・周辺半導体・プリント基板・配線・コイル・抵抗・コンデンサなど様々な電子素子から、これらが組合わさって形成された電子機器まで多種多様である。この輻射量低減装置の適用先は、これら電磁波発生源の例に限定されず、電磁波を発する様々な部位に適用することができる。この際、輻射量低減装置は、電磁波発生源が輻射する電磁波を伝搬させたくない方向側の電磁波発生源に密着して配置されるかその近傍に配置される。もちろん、輻射量低減装置は、電磁波発生源の遠方に配置されても良いが、電磁波の遮蔽又は減衰効率や、装置全体の空間効率等を考慮すると、電磁波発生源の側に配置されることが望ましい。このような輻射量低減装置についての理解が容易になるように、以下では、次の順序で説明する。
1.関連技術に係る輻射量低減装置
2.第1実施形態に係る輻射量低減装置
2−1.輻射量低減装置の構成
2−2.輻射量低減装置の作用例
2−3.輻射量低減装置の実施例
2−4.輻射量低減装置の実装例
2−5.輻射量低減装置の変更例
2−5.輻射量低減装置の効果の例
<1.関連技術に係る輻射量低減装置>
まず、図10を参照しつつ、関連技術に係る輻射量低減装置について説明する。図10は、関連技術に係る輻射量低減装置について説明するための説明図である。
図10では、金属板90を、電磁波の遮蔽シールド、つまり関連技術に係る輻射量低減装置900として使用した場合の例を示している。図10に示す金属板90は、導電性を有し、電磁波発生源(以下「ノイズ発生源R」とも言う。)を覆うように配置される。なお、図示してはいないが、図10に示す金属板90の裏面(紙面奥側)には、金属板90の形成面における外形(xy面における外形)と同程度か、それよりも一回り程度小さいノイズ発生源Rが配置されているものとする。
ノイズ発生源Rから発せられた電磁波(ノイズ)は、関連技術に係る輻射量低減装置900において反射される。しかし、そのエネルギーは減衰せずに、関連技術に係る輻射量低減装置900の外周及び表面や、ノイズ発生源Rとの間から輻射されてしまう。このような現象をここでは「2次放射」ともいい、この2次放射された電磁波をここでは「ノイズN」ともいう。
様々な回路がノイズ発生源Rとして電磁波を発生させ、関連技術に係る輻射量低減装置900から2次放射のノイズNが発せられてしまう。この2次放射のうち強いノイズNは、大きく分けて2種類に分かれる。1種類目のノイズNは、主たるノイズであり、金属板90をパッチアンテナとした放射である。このノイズNは、主に金属板90の表面からノイズ発生源Rの反対側に発せられる。一方、2種類目のノイズNは、金属板90のエッジ(端部)とノイズ発生源Rが配置された基板内のGND(接地)面とにより形成される開口が、あたかも静電容量アンテナのように動作することで発せられる。
ここで本発明者らが鋭意研究を行った結果、明らかにした2次放射ノイズNの発生メカニズムについて簡単に説明する。
関連技術に係る輻射量低減装置900の金属板90のようにノイズ発生源Rを覆う金属板90が配置されると、その金属板90の下部、つまり金属板90とノイズ発生源Rとの間には、電界があたかも定在波のように発生する。この発生した電界の強い位置(「強電界位置」という。)を図10に示す。図10に示すように、強電界位置VA〜VDは、金属板90の四隅に発生し、かつ、強電界位置VOは、金属板90の中央に発生する。この強電界位置は、金属板90の形状、及び、ノイズ発生源Rの形状の少なくとも一方によって決定される。そして、強電界位置VA〜VD,VOに擬似的な定在波の電界の腹が生じ、相隣接する強電界位置同士の電界の符合は互いに反転している。よって、この電界により、周状電流I(ここでは外周電流ともいう。)が流れる。
この周状電流Iは、金属板90の中央部Oを取囲むように外周を流れ、中央部Oに向かうにつれて小さくなる。このような周状電流Iが流れることにより、金属板90の上部及び下部には、磁界が発生する。このうち、金属板90の下部に発生した磁界は、上記の電界の強電界位置と同様に、あたかも定在波のように発生する。この発生した磁界の強い位置(「強磁界位置」という。)を図10に示す。図10に示すように、強磁界位置BA〜BDは、金属板90の四辺の中央に発生する。換言すれば、強磁界位置BA〜BDは、強電界位置VA〜VDの中間に生じることになる。
そして、金属板90の下部に生じた電界及び磁界は、それぞれ基板内のGNDと金属板90との間で静電容量アンテナで発生する電界及び磁界と同様な動作をする。そして、この電界及び磁界は、基板内のGNDと金属板90と間の開口を介して、ノイズNを発生させる(2種類目のノイズN。厳密な2次放射でなくてもよい。)。一方、周状電流Iにより金属板90の上部に生じた磁界は、電界を連鎖的に発生して、ノイズNを発生させる(1種類目のノイズN。)。
従って、単に金属板90で形成された関連技術に係る輻射量低減装置900では、ノイズ発生源Rが輻射した電磁波を、単にxy平面方向に散らすか(2種類目のノイズN)、金属板90の表面から再度輻射してしまう(1種類目のノイズN)。
このような関連技術に係る輻射量低減装置900のノイズN等について鋭意研究を行った本発明の発明者は、上記のようなノイズNの発生メカニズムについて明らかにし、このノイズNを低減すべく更なる研究開発を行った結果、本発明を完成させた。以下、本発明の各実施形態について説明する。ただし、ここで説明したノイズNの発生メカニズムは、ノイズNを限定するものではなく、上記の2種類のノイズN以外のノイズの輻射量をも、本発明の各実施形態に係る輻射量低減装置は低減することができることは、言うまでもない。
<2.第1実施形態に係る輻射量低減装置>
まず、図1A及び図1Bを参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置の構成について説明する。図1A及び図1Bは、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置の構成について説明するための説明図である。
<2−1.輻射量低減装置の構成>
図1Aに示すように、本実施形態に係る輻射量低減装置100は、大きく分けて、金属板10と、スリットSA〜SDとを有する。
なお、本実施形態では、図1Bに示すように、説明の便宜上、輻射量低減装置100が、ノイズ発生源Rの上方に輻射される電磁波の輻射量を低減する場合について説明する。そのため、以下で説明する金属板10は、ノイズ発生源Rの上面を覆う形状に形成され、この輻射量低減装置100は、ノイズ発生源Rの上面側近傍に配置される。ただし、金属板10の形状及び輻射量低減装置100の配置位置等は、ノイズ発生源R及び輻射量を低減させたい方向等に応じて、適宜変更可能である。
金属板10は、導電性の材料で形成され、電磁波を輻射するノイズ発生源R(電磁波発生源の一例)の少なくとも上面(一面の一例)全体を覆うことが可能なカバー面を有する。図1Bに示すように、本実施形態に係る金属板10は、その全体が、カバー面として形成されている。しかしながら、この金属板10のカバー面は、金属板10の全域である必要はなく、金属板10の一部の領域であることも可能である。つまり、金属板10は、ノイズ発生源Rの上面全体に対応する面(カバー面)を有すれば、様々な形状に形成することが可能である。このカバー面となる金属板10の領域を「カバー領域Ar」とも言う。
つまり、本実施形態では、カバー領域Arが金属板10の全域に相当する。このようにカバー領域Arが金属板10の全域に相当する場合、金属板10の面積は、その金属板10が覆うノイズ発生源Rの上面の面積の1〜1.5倍、より好ましくは1.25〜1.5倍に形成されることが望ましい。しかしながら、金属板10は、ノイズ発生源Rの上面より更に大きく形成されてもよい。
なお、本実施形態では、金属板10が、ノイズ発生源Rの上面の形状に対応して正方形に形成されている場合を例示している。しかしながら、金属板10は、必ずしもノイズ発生源Rの上面の形状に対応する必要はなく、また、正方形である必要もない。ただし、輻射量低減装置100の輻射量低減効果等を向上させるためには、金属板10は、以下の順序で形成されることが望ましい。
正方形≧正多角形>多角形>楕円>円
しかしながら、この例に挙げた形状以外にも、金属板10は、例えば、中心距離が不均一な形状であってもよい。
カバー領域Arは、金属板10の面内に設定され、上記のノイズ発生源Rの上面全体を覆う領域である。なお、上述のように、本実施形態では、カバー領域Arが金属板10の全域に設定される。
スリットSA〜SDは、少なくともカバー領域Arにおいて帯状に形成される。このスリットSA〜SDは、例えば、金属板10の一部を帯状(溝ともいう。)に切り取ったり、金属板10自体をスリットSA〜SDを除いて形成することにより、形成可能である。なお、このスリットSA〜SDは、図1Aに示すように、中央部Oに向けて形成され、全体として十字のような形状に形成されているが、金属板10の周方向で隣接するスリット同士は、互いに連結しておらず離隔している。従って、スリットSA〜SDにより擬似的に区画された金属板片11〜12は、互いに中央部Oを介して連結されており、金属板10を形成している。
本実施形態では、このスリットSA〜SDは、図1Aに示すように、4本形成される。しかしながら、このスリットSA〜SDの本数は4本に限定されるものではなく、複数本であればよい。ただし、このスリットSA〜SDは、Nを正の整数として、金属板10上に2本形成されることが望ましい。
本実施形態に係るスリットSA〜SDは、図1Aに示すようにカバー領域Ar(つまり金属板10)の中央部Oを基準として、点対称に配置される。そして、各スリットSA〜SDは、同様な形状で形成される。そこで、まず、スリットSAを例に各スリットの形状について説明する。
図1Aに示すように、スリットSAは、大きく分けて、引込スリットS1Aと、結合スリットS2Aとを有する。
引込スリットS1Aは、カバー領域Arの外周における上記強電界位置VAから、カバー領域Arの中央部Oに向けて延長形成される。本実施形態では、カバー領域Arと金属板10の全体とが一致するため、引込スリットS1Aは、金属板10の端部から形成される。また、カバー領域Arの外周の強電界位置VAは、図10で示したようにカバー領域Arの四つのコーナ(角部、強電界位置)に生じるため、引込スリットS1Aは、このコーナから中央部Oに向けて帯状に延長形成される。
なお、本実施形態において、この引込スリットS1Aは、コーナから中央部Oに向けて帯状に一直線に形成されるが、この引込スリットS1Aは、湾曲していてよい。しかしながら、本実施形態のように引込スリットS1Aが一直線に形成される場合、引込スリットS1Aによる周状電流Iの引込効果が向上し、輻射量の低減効果を増すことが可能である。
結合スリットS2Aは、引込スリットS1Aにおけるカバー領域Arの中央部O方向の端部から、カバー領域Arの周方向一側の他のスリットSB(又はスリットSD)と平行に並んで延長形成される。より具体的には、本実施形態では、結合スリットS2Aは、他のスリットSBの引込スリットS1Bと平行に並んで延長形成される。
本実施形態では、この結合スリットS2Aが、カバー領域Arの周方向における引込スリットS1Aの右方(反時計回り)に延長形成された場合を示している。従って、他の引込スリットS1B〜S1Dも、中央部O方向の端部において右方(反時計回り)に、各結合スリットS2B〜S2Dが延長形成される。ただし、結合スリットS2A〜S2Dは、これとは逆に、カバー領域Arの周方向における各引込スリットの左方(時計回り)に延長形成されてもよい。
また、本実施形態に係る結合スリットS2Aは、隣接する他のスリットSBのうち、引込スリットS1Bと平行に形成され、かつ、この引込スリットS1Bとは所定の間隔をあけて形成される。そして、結合スリットS2Aは、並んだ引込スリットS1Bよりも短く形成され、カバー領域Arの端部までは形成されないことが望ましい。ただし、結合スリットS2Aは、上記引込スリットS1Aと同一又は近似する幅で帯状に形成されることが望ましい。
この結合スリットS2Aは、引込スリットS1Aが導いた周状電流Iを、並んだ引込スリットS1Bと略平行に導くことにより、その引込スリットS1Bが導いた周状電流Iと結合させる結合効果を発揮する。
ここで説明した引込スリットS1A及び結合スリットS2Aは、それぞれスリットSAに対応するが、他のスリットSB〜SDも同様に、引込スリットS1B〜S1Dと結合スリットS2B〜S2Dを1ずつ有する。換言すれば、各スリットSA〜SDは、それぞれ略L字状に形成され、そのL字状のスリットSA〜SDが金属板10の4つのコーナから延長形成される。結果として、スリットSA〜SDは、金属板10を、略十字状に4つの金属板片11〜14に区画する。ただし、略L字状のスリットSA〜SDは、相互に離隔しており、金属板10を形成する金属板片11〜14は、中央部Oで相互に連結されている。
(強電界位置について)
なお、このスリットSA〜SDは、上述のように、それぞれ強電界位置VA〜VDから中央部O方向に向けて形成される。この強電界位置VA〜VDについて説明する。
上述のように、強電界位置VA〜VDは、ノイズ発生源Rが発生する電磁波により、そのノイズ発生源Rとの間に電界が生じ、その電界が他の部位に比べて大きい個所である。このような強電界位置VA〜VDは、金属板10とノイズ発生源Rとの間の空間インピーダンスが低い個所に相当する。本実施形態に係る輻射量低減装置100では、金属板10がノイズ発生源Rと同程度かそれを覆う程度の多角形(正方形)で形成されているが、この場合、金属板10のコーナの空間インピーダンスが他の部位に比べて低くなる。よって、本実施形態に係る輻射量低減装置100では、金属板10の4つのコーナが強電界位置VA〜VDとなり、この4つのコーナからスリットSA〜SDをそれぞれ形成している。なお、この強電界位置VA〜VDは、上述の通り、金属板10の形状やノイズ発生源Rの形状等によって異なるため、スリットSA〜SDが形成される位置も、金属板10の形状やノイズ発生源Rの形状等によって変更されうる。強電界位置は、金属板10が中央部Oから外周までの中心距離が不均一に形成される場合、その中心距離が他の部位に比べて長いエッジ位置(端部)となる。より具体的には、強電界位置は、金属板10が多角形である場合には、そのコーナ(角部)となり、本実施形態のように金属板10が正方形である場合には、図1Aに示す4つのコーナとなる。一方、金属板10がこのようなコーナを有さない場合、及び、金属板10がカバー領域Arよりも大幅に大きい場合には、強電界位置VA〜VDは、ノイズ発生源Rの上面のコーナに対応する、カバー領域Arの外周上の位置になる。従って、このような場合には、スリットSA〜SBは、ノイズ発生源Rの上面のコーナに対応する強電界位置から形成される。
以上、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置100の構成について説明した。
次に、図2A〜図3Bを参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置の作用例について説明する。図2A〜図3Bは、本実施形態に係る輻射量低減装置の作用例について説明するための説明図である。
<2−2.輻射量低減装置の作用例>
(2−2−1.周状電流減衰作用)
まず、ノイズNの主要な発生源である周状電流Iの減衰作用について説明する。
周状電流Iは、図10で説明したように、ノイズ発生源Rが発生した電磁波により、金属板10とノイズ発生源Rとの間に定在波のような電界及び磁界が発生し、その電界及び磁界により、カバー領域Arの中央部Oを取囲むような周状に流れる。そして、この周状電流Iが2次放射等のノイズNの主要な発生原因となる。
一方、本実施形態に係る輻射量低減装置100は、上述の通り、強電界位置VA〜VDから形成された複数のスリットSA〜SDを有する。このスリットSA〜SDのうち、引込スリットS1A〜S1Dそれぞれは、強電界位置VA〜VDから形成されている。強電界位置VA〜VDは、電界が他の部位よりも強い位置であり、かつ、この強電界位置VA〜VDに引込スリットS1A〜S1Dが形成されることにより、引込スリットS1A〜S1Dの淵間には、図2Aに示すように電圧Eが生じる。換言すれば、ノイズ発生源Rが発生した電磁波の放射電界成分が、この引込スリットS1A〜S1Dに強電界位置VA〜VDで結合して、電圧Eを励振させる。そして、この電圧Eは、引込スリットS1A〜S1Dに結合された状態で、引込スリットS1A〜S1Dに沿ってカバー領域Arの中央部O側へと導かれる。一方、周状電流Iは、引込スリットS1A〜S1Dにより分断され、かつ、その発生源の1つである電圧Eが引込スリットS1A〜S1Dに結合することに伴い、図2Aに示すように、電圧Eと共に中央部O側へと導かれる。引込スリットS1A〜S1Dにより中央部O側に導かれた周状電流Iは、図2Bに示すように、結合スリットS2A〜S2Dにより、周方向一側で相隣接した他のスリットとの間に導かれる。従って、各スリットSA〜SDの淵部には、周状電流Iが流れる。
この各スリットSA〜SDの淵部に流れる周状電流Iは、図2Bに示すように、相隣接するスリットが導く周状電流Iと逆相となる。従って、2のスリットSA〜SDが平行となる領域A及び領域Bにおいて、逆相となった周状電流Iが互いに打ち消しあう。つまり、周状電流Iは、1のスリットを見れば、2の領域A,Bにおいて相殺されて、減衰される。その結果、本実施形態に係る輻射量低減装置100は、2次放射等のノイズNを低減することができる。
(2−2−2.放射電界成分減衰作用)
一方、各スリットSA〜SDに結合して電圧Eを発生させる放射電界成分は、上述の通り、強電界位置VA〜VDから各スリットSA〜SDに沿って導かれる。また、各スリットSA〜SDは、強電界位置VA〜VDからの放射電界成分だけでなく、他の個所でも放射電界成分を結合させ、電圧Eを生じさせる。各スリットSA〜SDに生じた電圧Eは、図3Aに示す平行位置PA〜PDにおいて、図3Bに示すように逆相となり、やはり互いに打ち消しあう。従って、このスリットSA〜SDそれぞれに生じる電圧Eによる2次放射のノイズNも、平行位置PA〜PD内で逆相となり打ち消しあい、ノイズNは更に低減される。
(2−2−3.残存2次放射成分減衰作用)
更に、上記周状電流減衰作用及び放射電界成分減衰作用によっても、なお残存する2次放射成分が生じうる。しかしながら、図3Aに示すように、各スリットSA〜SDは、本実施形態では点対称に形成されるため、対向するスリットSA〜SD(スリットSAとスリットSC、又は、スリットSBとスリットSD)が発生させるノイズN同士は、ほぼ同振幅で逆相となる。その結果、2次放射成分のノイズNは、仮に輻射されたとしても、互いに打ち消しあう。より具体的には、例えば、平行位置PAから輻射される2次放射成分は、平行位置PCから輻射される2次放射成分と逆相となって打ち消しあい、平行位置PBから輻射される2次放射成分は、平行位置PDから輻射される2次放射成分と逆相となって打ち消しあう。よって、ノイズNは更に低減される。
このように、本実施形態に係る輻射量低減装置100は、上記スリットSA〜SDを有することにより、周状電流減衰作用、放射電界成分減衰作用及び残存2次放射成分低減作用等を発揮することにより、ノイズNの輻射量を低減することが可能である。ただし、このような作用はあくまで例であり、輻射量低減装置100は、これらの作用に限定されるものではなく、ここに挙げなかった作用が存在し、それによりノイズNが低減される可能性を否定するものではない。
以上、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置100の作用例について説明した。
次に、図4〜図6Bを参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明する。図4〜図6Bは、本実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明するための説明図である。
<2−3.輻射量低減装置の実施例>
本実施形態に係る輻射量低減装置による輻射量低減効果を測定するにあたり、図4に示すようなプリント基板を模した測定装置を用意した。より具体的には、被測定対象Xの下面にビニール皮膜T2を配置し、そのビニール皮膜T2を、支持板T1の開口部を塞ぐように支持板T1上に配置した。そして、ノイズ発生源Rから周波数を変更しつつ電磁波を発生させ、被測定対象Xから放射されるノイズN(電界分布)を、被測定対象Xから50mm離れた受信プローブDにより測定した。
そして、図5Aに示すように、スリットを有さない関連技術に係る輻射量低減装置900と、本実施形態に係る輻射量低減装置101,102とを用意し、被測定対象Xの位置に配置して、上記測定装置によりノイズNの輻射量を測定した。
なお、本実施形態に係る輻射量低減装置101,102は、図5Aに示すようにスリットSA〜SDのサイズを変更して形成した。つまり、金属板10は、厚さ0.09mmの銅板を40mm×40mmの正方形に形成し、その金属板10にスリット幅0.8mmのスリットSA〜SDを形成した。ただし、金属板10の材質は、導電性を有していれば特に限定されるものではなく、他の材質であっても以下で説明するのと同様の結果が得られる。
この際、輻射量低減装置101の引込スリットS1A〜S1Dの長さは、25mmとし、結合スリットS2A〜S2Dの長さは、13mmとした。一方、輻射量低減装置102の引込スリットS1A〜S1Dの長さは、25mmとし、結合スリットS2A〜S2Dの長さは、15mmとした。そして、平行位置PA〜PDにおけるスリット間隔(つまり相隣接するスリット間の間隔)は、0.6mmとした。なお、各スリットSA〜SDにおける引込スリットS1A〜S1Dと結合スリットS2A〜S2Dとの間の角度は90°とした。そして、スリットSA〜SDは、相互にカバー領域Ar(つまり金属板10)の中央部Oを基準として90°回転させたような形状を有し(つまり90°の4回対称)、全体として略十字状に形成した。一方、関連技術に係る輻射量低減装置900は、上記金属板10と同様の金属板90を使用した。
図5Bに、本実施形態に係る輻射量低減装置101,102に対する測定信号I101,I102を、関連技術に係る輻射量低減装置900に対する測定信号I900を0dBとして規格化した測定結果を示す。一方、図5Cに、電磁界シミュレータを用いて、輻射量低減装置101,102に対するシミュレーション結果C101,C102を、関連技術に係る輻射量低減装置900に対するシミュレーション結果C900を0dBとして規格化した結果を示す。
一般には、金属板10にスリットSA〜SDが開口している分、そこから漏れた電磁波が2次放射成分に加算されるため、本実施形態に係る輻射量低減装置101,102は、関連技術に係る輻射量低減装置900に比べて、ノイズNの量が悪化すると考えられる。従って、一般的には、輻射量低減装置101,102による測定信号I101,I102は、関連技術に係る輻射量低減装置900に対する測定信号I900よりも高くなると予想される。
しかしながら、本実施形態に係る輻射量低減装置101,102は、図5Bだけでなく、図5Cからも見て取れるように、上記の予想に反して、広範囲な電磁波の周波数帯域において、2次放射成分(ノイズN)を大幅に低減することが可能である。これは、輻射量低減装置101,102が、スリットSA〜SD内に放射成分を取込み、しかも複数のスリットSA〜SDを用いて、相互干渉させて相殺することにより、2次放射分を大幅に低減させることができることに寄るものである。
また、図6Aに示すように、上記同様の金属板10においてスリットSA〜SDの寸法を適宜変更した、本実施形態に係る輻射量低減装置103〜107を用意して、上記同様の測定を行った。
この際、輻射量低減装置103は、スリット幅を1.0mmとし、引込スリットS1A〜S1Dの長さを25mmとし、結合スリットS2A〜S2Dの長さを15mmとし、平行位置PA〜PDにおけるスリット間隔を0.4mmとした。また、輻射量低減装置104は、スリット幅を1.2mmとし、引込スリットS1A〜S1Dの長さを25mmとし、結合スリットS2A〜S2Dの長さを13mmとし、平行位置PA〜PDにおけるスリット間隔を0.6mmとした。また、輻射量低減装置105は、スリット幅を0.8mmとし、引込スリットS1A〜S1Dの長さを25mmとし、結合スリットS2A〜S2Dの長さを11mmとし、平行位置PA〜PDにおけるスリット間隔を0.4mmとした。また、輻射量低減装置106は、スリット幅を1.0mmとし、引込スリットS1A〜S1Dの長さを25mmとし、結合スリットS2A〜S2Dの長さを13mmとし、平行位置PA〜PDにおけるスリット間隔を0.2mmとした。また、輻射量低減装置107は、スリット幅を1.4mmとし、引込スリットS1A〜S1Dの長さを25mmとし、結合スリットS2A〜S2Dの長さを15mmとし、平行位置PA〜PDにおけるスリット間隔を0.6mmとした。
図6Bに、この輻射量低減装置103〜107に対する測定信号I103〜I107を、関連技術に係る輻射量低減装置900に対する測定信号I900を0dBとして規格化した測定結果を示す。
図6Bの測定結果も、スリットSA〜SDの寸法が異なる場合でも、本実施形態に係る輻射量低減装置103〜107が、スリットSA〜SD同士が確実に放射成分を結合させて、2次放射(ノイズN)低減効果を発揮できることを示している。
以上、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置の実施例について説明した。
次に、図7A〜図7Fを参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明する。図7A〜図7Fは、本実施形態に係る輻射量低減装置の実装例について説明するための説明図である。
<2−4.輻射量低減装置の実装例>
本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置100は、上述の通り、金属板10にスリットSA〜SDが形成された非常に簡単な構成で形成可能である。特にこの際、輻射量低減装置100は、接地する必要すらないため、特に配置位置に制限はなく、かつ、ノイズ発生源Rの近傍に配置するだけでよいため、様々な実装が可能である。そこで、以下では、輻射量低減装置100の実装例の幾つかについて説明する。
(2−4−1.第1実装例)
図7Aに、本実施形態に係る輻射量低減装置100を、ノイズ発生源Rの上面に直接プリントした場合を示す。この際、ノイズ発生源Rの上面ではなく、ノイズ発生源Rの内部に輻射量低減装置100を埋め込むことも可能である。このようにノイズ発生源Rに直接プリントすることにより、輻射量低減装置100を容易に構成することができ、かつ、ノイズ発生源Rの一面側に対するノイズNの輻射量を大幅に低減することが可能である。なお、この際、ノイズ発生源Rと輻射量低減装置100との間には、例えば0.05mm程度の絶縁保護層が形成されることが望ましい。
(2−4−2.第2実装例)
図7Bに、上記第1実装例と同様にノイズ発生源Rと一体に形成する輻射量低減装置100の実装例として、接着剤31(接着剤付きシール等でもよい。)により、ノイズ発生源Rの上面に輻射量低減装置100を固定した場合を示す。この場合、接着剤31等に絶縁性の素材を使用することが望ましい。
(2−4−2.第3実装例)
図7Cに、本実施形態に係る輻射量低減装置100を、シールドケース23に固定する場合を示す。ノイズ発生源Rは、基板22上に配置され、かつ、シールドケース21,23によって覆われる。そして、上方のシールドケース23のノイズ発生源Rと対向する位置の内部に、接着剤やシール(図示せず)等により、輻射量低減装置100が固定される。もちろん、輻射量低減装置100は、シールドケース23の上方に固定されてもよい。このように輻射量低減装置100は、配置位置に制限がないため、ノイズ発生源Rの近傍に如何様にも配置することが可能である。また、接地等の必要もなく、固定手段も特に問わないため、輻射量低減装置100は、容易に配置することが可能である。
(2−4−2.第4実装例)
図7Dに、本実施形態に係る輻射量低減装置100を、シールドケース23の一部として形成する場合を示す。この場合、シールドケース23のノイズ発生源Rを覆う部位が、金属板10となり、その金属板10のノイズ発生源Rと対向する位置がカバー領域Arとなる。そして、このカバー領域Arに、スリットSA〜SDが形成されることになる。この場合、単にシールドケース23にスリットSA〜SDを形成するだけで、本実施形態に係る輻射量低減装置100を形成することができる。
(2−4−2.第5実装例)
図7Eに、上記第4実装例と同様に本実施形態に係る輻射量低減装置100がシールドケース23に直接形成され、かつ、ノイズ発生源Rを覆うカバー領域Arよりも金属板10が大幅に大きい場合を示す。この場合、上記第4実装例と同様に、カバー領域Arと金属板10が一致しないため、ノイズ発生源Rの上面のコーナに相当するカバー領域Arの外周(コーナ)が強電界位置VA〜VDとなり、スリットSA〜SDは、この強電界位置VA〜VDから形成される。
(2−4−2.第6実装例)
図7Fに、本実施形態に係る輻射量低減装置100が、シールドケース23に直接形成されるが、上記第5実装例とは異なり、ノイズ発生源Rを覆うカバー領域Arが金属板10とほぼ同程度である場合を示す。この場合、金属板10のコーナがカバー領域Arのコーナとなり、かつ、強電界位置VA〜VDともなる。よって、スリットSA〜SDは、この金属板10のコーナから形成される。この際、より効果的に周状電流Iを中央部Oに導くために、スリットSA〜SDは、図7Fに示すように、シールドケース23における金属板10と異なる側面の角部にまで延長形成されることが望ましい。なお、同様のことが第5実装例の場合にも言える。よって、第5実装例において、図7EのスリットSA〜SDが、カバー領域Arを越えて金属板10の端部又はその近傍にまで延長されることにより、周状電流Iをより効果的に中央部Oに導くことも可能である。
以上、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置100の実装例について説明した。ただし、ここで説明した実装例は、あくまで一例であり、この実装例に輻射量低減装置100の適用先が限定されるものではない。上述の通り、輻射量低減装置100は、非常に単純な構成で形成でき、かつ、配置位置に制限もないため、その他様々な実装が可能であることは言うまでもない。
<2−5.輻射量低減装置の変更例>
次に、図8A〜図8Eを参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置100の変更例について説明する。図8A〜図8Eは、本実施形態に係る輻射量低減装置の変更例について説明するための説明図である。
(2−5−1.スリット本数及び配置位置(点対称))
上述の通り、本実施形態に係る輻射量低減装置100は、複数のスリットSA〜SDを有することにより、周状電流減衰作用・放射電界成分減衰作用・残存2次放射成分減衰作用等を発揮することにより、ノイズNを低減することを可能にしている。一方、周状電流減衰作用及び放射電界成分減衰作用は、図2A、図2B及び図3Bで説明したように、相隣接するスリット同士が互いに逆相の周状電流I又は電圧Eを中央部O方向へと引き込むことにより、発揮される。この周状電流減衰作用及び放射電界成分減衰作用を発揮するためには、スリットは、2以上形成されればよい。
しかしながら、残存2次放射成分減衰作用は、図3Aで説明したように、各スリットSA〜SDから発生されるノイズN同士がほぼ同振幅で逆相となることにより、発揮される。このためには位相の関係上、スリットの本数は、Nを正の整数として2本形成されることが望ましい。また、逆相のノイズNの振幅を等しくして相殺効果を更に高めるためには、複数のスリットは、カバー領域Arの中央部Oを基準として、点対称に形成されることが望ましい。つまり、スリットの本数と配置位置を併せて説明すれば、スリットは、2本形成されカバー領域Arの中央部Oを基準として、2回対称に形成されることが望ましい。
なお、スリットの本数がN=2の場合と、Nが2超過の場合とでは、周状電流減衰作用・放射電界成分減衰作用・残存2次放射成分減衰作用等は、同程度発揮される。よって、スリットの本数が多くなれば、その分スリット形成工程が増え、かつ、輻射量低減装置100の機械的強度が減少することを考慮に入れれば、スリットの本数は、N=2、つまり4本が望ましい。また、各スリットが点対称で形成されることを考慮に入れれば、図8Aに示すように長方形の金属板10にスリットSA〜SDを形成することも可能である。しかし、相殺させる周状電流I同士の量、電圧E同士の振幅、逆相のノイズNの振幅等を等しくして、等方的に相殺効果を発揮するためには、図1Aに示す本実施形態のような4回対称のスリットSA〜SDを形成することが望ましい。
しかしながら、スリットが2本以外の複数本形成される場合であっても、上記周状電流減衰作用・放射電界成分減衰作用等を発揮することは可能である。そして、図8Bに示すように、仮に複数のスリットが点対称で形成されない場合であっても、周状電流減衰作用・放射電界成分減衰作用・残存2次放射成分減衰作用等を発揮することは可能であることを付言しておく。なお、この場合、カバー領域Arの中央部Oは、金属板10の各コーナの対角線の交点や金属板10の重心位置であってもよい。
(2−5−2.金属板の形状)
一方、スリットは上述の通りカバー領域Arの強電界位置から中央部Oに向けて形成される。この際、金属板10がカバー領域Arよりも大幅に大きければ(例えば1.5倍以上)、図7D及び図7Eに示したように、強電界位置は、ノイズ発生源Rの上面のコーナに対応する、カバー領域Arの外周上の位置となる。しかしながら、カバー領域Arが金属板10のほぼ全域の場合には、強電界位置は、金属板10のコーナに相当する。
一方、上述のように、残存2次放射成分減衰作用を十分に発揮させるためには、位相の関係上、スリットの本数は、Nを正の整数として2本形成されることが望ましい。従って、このスリットが形成される強電界位置も、同程度の数であることが望ましい。そのためには、金属板10は、Mを2以上の正の整数として外周にコーナを2個有する多角形に形成されることが望ましい。従って、残存2次放射成分減衰作用を十分に発揮するために、金属板10は、例えば、4・8・16・32角形等に形成されることが望ましい。また、逆相のノイズNの振幅を等しくして相殺効果を更に高めるために、スリットが点対称で形成されることが望ましいのと同様に、金属板も点対称で形成されることが望ましい。更に、等方的に相殺効果を発揮するために、スリットSA〜SDが4回対称で形成されるのが望ましいのと同様に、金属板10は、正多角形であることが望ましい。
この金属板10が正多角形で形成される場合の例を、図8C及び図8Dに示す。図8C及び図8Dでは、金属板10は正八角形に形成される。そして、図8Cでは、上記の関係を満たすように、スリットSA〜SHは、8回対称で8本形成される。しかしながら、スリットの本数は、金属板10の角数と一致する必要ない無いため、図8Dに示すように、4本のスリットSA〜SDを4回対称で形成することも可能である。
なお、図8Eに示す楕円等のように、金属板10が、コーナがないが、中央部Oから外周までの中心距離が不均一な形状に形成される場合、強電界位置VA,VCは、その中心距離が他の部位に比べて長いエッジ位置となる。従って、この場合、図8Eに示すように、このエッジ位置である強電界位置VA,VCから、複数のスリットSA,SCが形成される。
更に、図8Fに示す円等のように、金属板10が、このようなエッジ位置もなく形成される場合、強電界位置VA〜VDは、図7E等と同様に、ノイズ発生源Rの上面のコーナに対応するカバー領域Ar(つまり金属板10)の外周上の位置となる。従って、この場合、図8Fに示すように、この強電界位置VA〜VDから、複数のスリットSA〜SDが形成される。
<2−6.輻射量低減装置の効果の例>
以上、本発明の第1実施形態に係る輻射量低減装置100について説明した。
この輻射量低減装置100によれば、単にノイズ発生源Rの上面に装荷することにより、その部位の上部に発生した放射ノイズ成分を分割し相殺するように作用することができる。従って、ノイズ発生源Rから発生する電磁波を、2次放射等のノイズNの発生を低減しつつ、効果的に抑制することが可能である。なお、この際、相殺された電磁波エネルギーは、熱として吸収されることになる。
また、この輻射量低減装置100は、接着剤やシールなどにより簡単に配置することが可能であるため、螺子止め作業など、組み立て作業効率を低下させてしまうような作業をする必要がないため、容易に配置することが可能である。また、輻射量低減装置100は、簡単な構造で形成可能であるため、製造コストも大幅な減少が期待できる。
更に、上述の通り、輻射量低減装置100は、接地する必要すらないため、配置位置に制約を受けず自在に装荷することができる。従って、電磁波を低減させたい複数のノイズ発生源Rの近傍に適宜輻射量低減装置100を配置することが可能であり、ノイズ発生源が多種多様化した状態でも適切にノイズを低減することが可能である。なお、もちろんシールドケース等に接地して使用することも可能であることは言うまでもない。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、引込スリットS1A〜S1Dにより周状電流Iを中央部O側に引き込み、結合スリットS2A〜S2Dにより、相隣接するスリットSA〜SDを流れる周状電流I同士などを直接相殺させる場合について説明した。しかしながら、この周状電流Iを引込んで相殺させる効果を、図9Aに示すように、結合スリットS2A〜S2Dの代りに補助連結スリットS11〜S14を介して間接的に発揮させることも可能である。しかしながら、この場合、周状電流減衰作用だけでなく、放射電界成分減衰作用及び残存2次放射成分減衰作用等も、上記第1実施形態に比べれば低く抑えられるため、上記第1実施形態のように周状電流I同士などを直接相殺させる構成にすることが望ましい。
また、各スリットSA〜SD単体で周状電流I等の低減効果を発揮させるためには、図9Bに示すように、結合スリットS2A〜S2Dの代りに、引込スリットS1A〜S1Dの両脇に、補助スリットS3A〜S3D及び補助スリットS4A〜S4Dを設けることも可能である。この場合、周状電流Iは、引込スリットS1A〜S1Dにより中央部O側に導かれた後、補助スリットの周りを流れることになり、周状電流Iを減少させることが可能である。しかしながら、この場合、周状電流減衰作用及び放射電界成分減衰作用等を十分に発揮することは難しく、やはり、上記第1実施形態のように周状電流I同士などを相殺させる構成にすることが望ましい。
10,90 金属板
11,12,13,14 金属板片
15,16,17,18 金属板片
21,23 シールドケース
22 基板
31 接着剤
100,101,102,103,104,105 輻射量低減装置
106,107,108,109,110,111 輻射量低減装置
900 関連技術に係る輻射量低減装置
A,B 領域
Ar カバー領域
BA,BC,BB,BD 強磁界位置
D 受信プローブ
E 電圧
I,I1,I2,I3,I4 周状電流
R ノイズ発生源
N ノイズ
O 中央部
PA,PB,PC,PD 平行位置
SA,SB,SC,SD スリット
SE,SF,SG,SH スリット
S1A,S1B,S1C,S1D 引込スリット
S1E,S1F,S1G,S1H 引込スリット
S2A,S2B,S2C,S2D 結合スリット
S2E,S2F,S2G,S2H 結合スリット
S3A,S3B,S3C,S3D 補助スリット
S4A,S4B,S4C,S4D 補助スリット
S11,S12,S13,S14 補助連結スリット
T1 支持板
T2 ビニール皮膜
VA,VB,VC,VD,VO 強電界位置
X 被測定対象

Claims (8)

  1. 電磁波を輻射する電磁波発生源の少なくとも一面全体を覆うことが可能な金属板と、
    前記金属板の面内に設定され前記一面全体を覆うカバー領域と、
    少なくとも前記カバー領域において帯状に形成され、相互に離隔した複数のスリットと、
    を有し、
    前記複数のスリットそれぞれは、
    前記電磁波により前記カバー領域の中央を取囲む周方向に流れる周状電流を前記カバー領域中央方向に導くように、前記カバー領域の外周において前記電磁波により前記電磁波発生源との間に生じる電界が他の位置よりも強くなる強電界位置から、前記カバー領域の中央に向けて延長形成された引込スリットと、
    前記引込スリットが導いた周状電流を前記カバー領域周方向一側で相隣接した他の前記スリットとの間へと導くように、前記引込スリットにおける前記カバー領域中央方向の端部から、該他のスリットと平行に並んで延長形成された結合スリットと、
    を有する、輻射量低減装置。
  2. 前記スリットは、Nを正の整数として、前記金属板上に2本形成される、請求項1に記載の輻射量低減装置。
  3. 前記複数のスリットは、相互に前記カバー領域中央を基準として点対称に配置される、請求項2に記載の輻射量低減装置。
  4. 前記カバー領域は、前記金属板全域であり、
    前記金属板は、中央から外周までの中心距離が不均一に形成され、
    前記強電界位置は、前記中心距離が他の部位に比べて長いエッジ位置である、請求項1〜3のいずれかに記載の輻射量低減装置。
  5. 前記金属板は、Mを2以上の正の整数として、外周にコーナを2個有する多角形に形成され、
    前記強電界位置は、前記コーナである、請求項4に記載の輻射量低減装置。
  6. 前記金属板は、正多角形である、請求項5に記載の輻射量低減装置。
  7. 前記強電界位置は、前記電磁波発生源の一面におけるコーナに対応する、前記カバー領域外周上の位置である、請求項1〜3のいずれかに記載の輻射量低減装置。
  8. 前記カバー領域は、前記金属板全域であり、
    前記金属板は、中央から外周までの距離が均一である円状に形成される、請求項7に記載の輻射量低減装置。
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