JP4654714B2 - 燃料タンク用鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主に燃料タンク用鋼板、特にガソリン中に微量の水が含まれる場合や、ガソリンの劣化により蟻酸が生成する場合など、金属腐食性の高い有機酸を含む環境下で使用される燃料タンク用鋼板の製造方法に関する。
従来より、自動車や自動二輪車などのガソリンタンク用材料には、例えば特許文献1に開示されているような20mass%以下の鉛(Pb)を含む錫(Sn)−鉛(Pb)合金がめっきされた鋼板、またはニッケル(Ni)の電気めっき層の上にSn−Pb合金が溶融めっきされた多層めっき鋼板が主に使用されている。Sn−Pb合金めっき鋼板は、加工性に優れると同時にガソリンなどに対する耐薬品性も優れているが、めっき層は、軟らかく傷つき易い上に、電気化学的に鉄(Fe)より貴であるため、Feに対する犠牲防食作用は有していない。そのため、Sn−Pb合金めっき鋼板を用いたガソリンタンクを水分を含む環境で使用した場合、めっき層にピンホールやクラックなどの欠陥が存在すると、鋼板に孔食が生じてガソリンが漏れたり、腐食により生じた赤錆により燃焼フィルターが目詰まりするといった問題が起こる。
近年、石油事情の悪化を考慮して、自動車用燃料に、メチルアルコール、エチルアルコールあるいはメチルターシャリーブチルエーテルなどのアルコールや、これらのアルコールを混合したガソリンが用いられる場合がある。しかし、Sn−Pb合金めっき鋼板は、アルコールに含まれる水分、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルコール酸化物、蟻酸、あるいは酢酸等の不純物によって、腐食され易いため、こうした燃料タンク用材料としては不適当である。
また、Sn−Pb合金めっき鋼板をプレス加工すると、めっき層にはFeに対する犠牲防食作用がないため、たとえ外面塗装を施してもめっき剥離や型かじりにより局所的な耐食性の低下が生じることがある。さらに、Sn−Pb合金めっき鋼板では、塗膜とめっきとの界面の2次密着力が小さいため、例えば二輪車の走行時に燃料タンクに石が当った衝撃により塗膜が剥離して赤錆が発生したり、塗膜膨れを引き起こすことがある。
一方、昨今の環境問題から、Pbや6価クロム(Cr)などの有害物質の使用を控える動きがあり、特許文献2には、Pbを使用しない燃料タンク用鋼板として、6価Crの溶出を抑制したクロメート処理鋼板が提案されている。この鋼板は、亜鉛(Zn)系合金がめっきされた鋼板に、全Crに対する3価Crの質量比が0.4〜0.8で、5〜50g/リットルのCrが溶解しているCr水溶液に、全Crに対する質量比が、0.2〜1.5のリン酸、0.1〜1.0 のフッ酸、0.5〜20.0でpHが2〜5の液相シリカ、および0.05〜0.3の硫酸を混合した主溶液と、2〜10質量%のエポキシ系シランが添加され、pHが2〜3で、主溶液に対する質量比が0.05〜0.5である硬化剤水溶液とを含むクロメート処理液がコーティングされた鋼板である。
また、6価Crの溶出を抑制したクロメート処理鋼板として、特許文献3には、亜銘系合金めっき鋼板に、6価Crに対する3価Crの質量比が1/4〜1/1のクロム酸を2〜20質量%と、全Crに対する質量比で0.05〜2.0のリン酸、0.1〜1.0の酢酸、0.01〜0.1のフッ酸のうち選んだ少なくとも1種とを含有する水溶液を塗布後、150〜300℃で加熱して、全Crに対する6価Crの質量比が0.2以下でCr付着量が10〜150mg/mm2のクロメート処理皮膜を形成し、黒錆の発生を抑制した鋼板が提案されている。
さらに、特許文献4には、亜鉛系合金めっき鋼板に、全Crに対する3価Crの質量比が0.3〜0.5のクロム酸化合物と、全Crに対する質量比が1〜6の液相シリカ、0.3〜2のリン酸とを含有する水溶液に、全Crに対する質量比が0.1〜0.4の有機還元剤を添加して塗布し、80〜150℃で加熱して、Cr付着量が10〜100mg/mm2のクロメート皮膜を形成した鋼板が提案されている。
しかしながら、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されたクロメート処理鋼板を、上述したようなガソリン中に微量の水が含まれる場合や、ガソリンの劣化により蟻酸が生成する場合など、金属腐食性の高い有機酸を含む苛酷な環境下に置くと、十分な耐食性が得られなかった。特に、シリカの添加されたクロメート皮膜では、6価Crの還元が阻害され、6価Crの溶出を十分に抑制できなかった。
特公昭57−61833号公報 特許第3418177号公報 特開平5−33157号公報 特開平10−46353号公報
本発明の目的は、Pbを使用することなく、ガソリン、アルコールおよびアルコール混合ガソリンなどの燃料に対して長期にわたって優れた耐食性を有する燃料タンク用鋼板の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
)鋼板の少なくとも片面に、Niを5〜30mass%含む電気Zn−Ni合金めっき層を、片面当たり1〜40g/m2の付着量で形成した後、該合金めっき層上に、Tiコロイドを含む水溶液を塗布し、乾燥した後、質量比(3価クロム)/(全クロム)が0.5超のクロム酸、質量比(りん酸)/(全クロム)が0.1〜5.0のりん酸および有機還元剤を含有するクロメート処理液を塗布し、加熱することを特徴とする燃料タンク用鋼板の製造方法。
本発明によれば、ガソリン、アルコール単独あるいはアルコール混合ガソリンなどの燃料に対して長期間にわたって優れた耐食性を示し、かつ沸騰水浸漬によるクロムの溶出を抑制したクロメート皮膜を有する、燃料タンクに最適の鋼板を提供することができる。
従来から、Znめっき鋼板の防錆のために、めっき層上にクロメート処理によりクロメート皮膜を形成させることが広く行われている。本発明者等は、こうしたクロメート皮膜の形成されたZnめっき鋼板の燃料タンクへの適用性について検討したところ、以下に述べる知見を得た。
(A) Znめっき鋼板としては、電気Zn−Ni合金めっき鋼板が、ガソリン、アルコールおよびアルコール混合ガソリンなどの燃料に対してより優れた耐食性を有する。
(B) クロメート皮膜としては、沸騰水に30分間浸漬後のCr付着量の変化が2%以内の皮膜とすることにより、ガソリン中に微量の水が含まれる場合や、ガソリンの劣化により蟻酸が生成する場合など、金属腐食性の高い有機酸を含む環境下で使用されても、Crの溶出を確実に防止できる。
本発明は、上記の知見に基づき開発されたもので、以下にその詳細を述べる。
1)電気Zn−Ni合金めっき層
電気Zn−Ni合金めっき層は、従来のガソリンとは異なる燃料、すなわちアルコールやアルコール含有ガソリンなどの燃料に含まれる水分、ホルムアルデヒトやアセトアルデヒトなどのアルコール酸化物、蟻酸、あるいは酢酸などの不純物による腐食を効果的に抑制する。従って、この電気Zn−Ni合金めっき層は、少なくとも燃料と接触する鋼板面には形成する必要がある。
この時、めっき層中のNi量が5mass%未満では、皮膜欠陥部からの腐食を抑制できず、十分な耐食性が得られない。一方、Ni量が30mass%を超えるとめっき層が硬くなり、プレス加工時に割れが生じ、この割れを起点として腐食が進行し易くなる。従って、めっき層中のNi量は5〜30mass%とする必要がある。
また、めっき層の付着量が1g/m2未満では十分な耐食性が得られず、一方40g/m2を超えるとプレス加工性が劣化するため、めっき層の付着量は1〜40g/m2とする必要がある。
2)クロメート皮膜
上述したように、クロメート皮膜を沸騰水に30分間浸漬後のCr付着量の変化が2%以内の皮膜にすると、金属腐食性の高い有機酸を含む環境下で使用されても、Crの溶出を確実に防止できるので、ガソリンなどの燃料に対して優れた耐食性が得られる。
ここで、沸騰水に30分間浸漬後のCr付着量の変化は、JIS K 5400−1990の8.20に記載された耐沸騰水性の試験に基づき、沸騰水に30分間浸漬前後のCr付着量を蛍光X線法により測定して求めた。蛍光X線法では、Cr付着量が既知の標準試料を用いて予め作成したCrカウント数とCr付着量の検量線からCr付着量を決定した。
なお、6価Crの溶出に関しては、Volvo Leach Test(Volvo Standard News 1991.10)のような溶出させる液の種類、溶出温度、溶出時間を定め、液中に溶出したCr濃度で評価する方法や、特許文献4に記載されたアルカリ脱脂によるCr溶出量で評価 する方法があるが、本発明のように沸騰水に30分間浸漬によるCr付着量の変化で評価した理由は、沸騰水に30分間浸漬することによりCr溶出量が一定となり、かつその量が燃料タンクとして使用したときのクロメート皮膜残存量と良好な相関があるためである。
本発明のクロメート皮膜は、上述したような特殊なクロメー卜処理液を電気Zn−Ni合金めっき層上に塗布後、加熱することにより形成される。クロメート皮膜の付着量は、金属Cr換算で10〜50mg/m2であることが好ましい。これは、10mg/m2未満だと十分な耐食性が得られず、一方50mg/m2を超えるとコスト高になるためである。
3)製造方法
上述したように、本発明の燃料タンク用鋼板は、少なくとも片側の鋼板面に、5〜30mass%のNiを含む電気Zn−Ni合金めっき層を1〜40g/m2の付着量で形成する工程と、電気Zn−Ni合金めっき層上に、全Crに対する3価Crの質量比が0.5を超えるクロム酸、全Crに対する質量比が0.1〜5.0のリン酸、および有機還元剤を含有するクロメート処理液を塗布する工程と、クロメー卜処理液が塗布された鋼板を加熱する工程と、を有する燃料タンク用鋼板の製造方法により、好適に製造することができる。
電気Zn−Ni合金めっき層を形成するめっき条件は、めっき層に5〜30mass%のNiが含有され、めっき層の付着量が1〜40g/m2を満足すれば、特に限定されることはない。
電気Zn−Ni合金めっき層上には、沸騰水に30分間浸漬後のCr付着量の変化が2%以内となるクロメート皮膜を形成させるが、それには全Crに対する3価Crの質量比が0.5を超えるクロム酸、全Crに対する質量比が0.1〜5.0のリン酸、および有機還元剤を含有するクロメート処理液を、塗布後、加熱する必要がある。
クロメート処理液中の6価Crは、加熱時に有機還元剤と反応して3価Crに還元されるが、全Crに対する3価Crの質量比が0.5以下であると、6価Crの量が過剰になり、加熱後の クロメート皮膜中に6価Crが残存するようになる。それ故、クロメート被膜を沸騰水に浸漬するとこの6価Crが溶出するため、沸騰水に30分間浸漬後のCr付着量の変化が2%を超え、ガソリンなどの燃料に対して優れた耐食性が得られなくなる。
また、全Crに対するリン酸の質量が0.1未満だと、3価Crが高分子化してゲル状の沈殿 物となるため、クロメート処理液としての性状を維持できなくなる。一方、この比が5.0 を超えると、クロメート皮膜中にリン酸が残存し、湿潤環境下でこのリン酸が溶出し、孔食やめっきの黒変を引き起こす。
クロメート処理液に含有させる有機還元剤としては、ジオール類と糖類の中から選んだ少なくとも1種を用いるのが好ましい。ジオール類の中では、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、あるいは1,4−ブタンジオール等がとりわけ好適である。一方、糖類の中では、グリセリン、ポリエチレングリコール、サッカロース、ラクトース、しょ糖、ぶどう糖、あるいは果糖などが有利に適合する。
この有機還元剤は、全Crに対する質量比が0.1〜0.4となるようにクロメート処理液中に含有させることが好ましい。これは、0.1未満では十分な還元効果が得られず、一方0.4を超えるとクロメート処理液の安定性を維持できなくなるためである。なお、有機還元剤は、クロメート処理液を塗布する直前にクロメート処理液に添加することが、クロメート処理液の安定性を高める上で好ましい。
クロメート処理液には、耐食性を向上させる目的で、必要に応じて無機インヒビターを含有させることができる。かような無機インヒビターとしては、シリカ、ZrO2、TiO2、硫酸ジルコニウム、重リン酸アルミニウムなどの無機コロイドや、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸などのヘテロポリ酸などが例示される。しかしながら、これら無機インヒビターがクロメート処理液中に存在すると、6価Crと有機還元剤との反応を遅延させ、クロメート皮膜を沸騰水に浸漬したときに6価Crの溶出を促進させるため、その含有量は6価Crに対する質量比で0.05未満とすることが好ましい。無磯インヒビターが6価Crと有機還元剤との反応速度を遅延させる理由は明らかではないが、溶液中でイオン化する、あるいは分散した際に6価Crイオンと相互作用をすることが要因と考えられる。
また、クロメート処理液には、電気Zn−Ni合金めっき層との反応性を促進する目的で、フッ酸、硫酸、塩酸などの酸を含有させることができる。
さらに、クロメート処理液には、クロメート皮膜からのCr溶出を一層抑制するために、水溶性あるいは水分散性高分子化合物を含有させることもできる。水溶性あるいは水分散性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、エポキシエステル重合体、メラミンアルキド樹脂重合体、でんぷんやガゼインなどの天然高分子化合物、アルキノ珪酸エステルの部分加水分解物、アルキルリン酸エステルの部分加水分解物、シランカップリング剤やエポキシ系シランなどのシラン化合物が例示される。これらの水溶性あるいは水分散性高分子化合物は、クロメート皮膜からのCr溶出抑制効果と外部からの機械的衝撃に対する保護膜としての作用を有するが、末端官能基が6価Crイオンに対して還元剤として作用するため、処理液の安定性を確保するには、その含有量を6価Crに対する質量比で0.05未満とすることが好ましい。
クロメート処理液を塗布後、加熱する必要があるが、そのとき鋼板温度が120℃以上となるように加熱することが好ましい。120℃未満では、Crの還元反応が十分に進行せず、沸騰水に浸漬したときにクロメート皮膜からのCrの溶出量が増加する危険性がある。
さらに、クロメート処理液を塗布するに先立ち、Tiコロイドを含む水溶液を塗布し、乾燥することにより、クロメート皮膜からのCr溶出をさらに抑制することが可能である。これは、電気Zn−Ni合金めっき層上にTiコロイドを吸着させることにより、Tiコロイドが酸性のクロメート処理液との反応活性点として使用するため、加熱時に6価Crが不溶性の3価Crに還元される反応が促進するためと推察される。
Tiコロイドを含む水溶液の塗布は、濃度:1〜10 volppmのTiコロイドを含むpH:7.5〜10、温度:40〜60℃の水溶液を1〜30秒間塗布することが好ましい。
本発明の燃料タンク用鋼板に用いる鋼板としては、例えばmass%で、C:0.0007〜0.0050%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.015%以下、Al:0.01〜0.20%、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.08%およびB:0.001〜0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる深絞り性に優れた冷延鋼板が好適である。
以下、各成分の限定理由について説明する。
C:0.0007〜0.0050%
Cは、深絞り性に悪影響を及ぼすため、含有量は0.0050%以下とする必要がある。また、含有量を0.0007%未満としても深絞り性の向上が認められず、むしろ脱炭処理のコスト増を招く。従って、C量は0.0007〜0.0050%とすることが好ましい。
Si:0.5%以下
Siは、鋼の強度を増加させる作用を有するので、所望の強度に応じて添加することができる。しかし、その量が0.5%を超えると深絞り性が低下するので、Si量は0.5%以下とすることが好ましい。
Mn:2.0%以下
Mnは、Si同様、鋼の強度を増加させる作用を有するので、所望の強度に応じて添加することができる。しかし、その量が2.0%を超えると深絞り性が低下するので、Mn量は2.0%以下とすることが好ましい。
P:0.1%以下
Pは、粒界に偏析して粒界を強化し、溶接部の割れを抑制すると共に、鋼を強化する作用を有する。しかし、その量が0.1%を超えると深絞り性が劣化するので、P量は0.1%以下とすることが好ましい。なお、溶接部の割れをより確実に抑制するには、P量を0.01〜0.05%とすることがより好ましい。
S:0.015%以下
Sは、深絞り性に悪影響を及ぼすため、その量を0.015%以下とすることが好ましい。
Al:0.01〜0.20%
Alは、鋼の脱酸やTiなどの炭窒化物形成元素の歩留り向上のために添加される。しかし、その量が0.01%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.20%を超えるとその効果が飽和するので、Al量は0.01〜0.20%とすることが好ましい。
N:0.01%以下
Nは、深絞り性に悪影響を及ぼすため、その量を0.01%以下とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.08%
Tiは、鋼中のCやNと析出物を形成して固溶C,N減少させて深絞り性を向上させる効果を有する。しかし、その量が0.005%未満ではその効果が少なく、一方0.08%を超えるとその効果が飽和するので、Ti量は0.005〜0.08%とすることが好ましい。
B:0.001〜0.01%
Bは、P同様、溶接部の割れを抑制する作用を有する。しかし、その量が0.001%未満ではその効果が小さく、一方0.01%を超えると深絞り性が劣化する。したがって、B量は0.001〜0.01%、望ましくは0.001〜0.004%とすることが好ましい。
BやPが溶接部の割れを抑制する理由は、以下のように考えられる。
すなわち、溶接割れは、電極の主成分であるCuやめっき成分のZnが溶接時に液体になり鋼の粒界に侵入して粒界を脆化する液体金属脆性によるものと推察される。この点、BやPは粒界に偏析し易いため粒界を強化して、こうした溶接割れを抑制する。
残部はFeおよび不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物の量は通常の範囲内であればよく、例えばOは0.010%以下である。
なお、上記の成分に加え、さらにNbを0.0005〜0.0050%以上添加することは、深絞り性を向上させる上で好適である。
mass%で、C:0.0015%、Si:0.01%、Mn:0.08%、P:0.011%、S:0.008%、Al:0.05%、N:0.0019%、Ti:0.035%、Nb:0.003%およびB:0.004%を含有し、残部は Feおよび不可避的不純物の組成になる冷延鋼板を用い、表1に示す電気Zn−Ni合金めっき層a、b、cを片方の鋼板面に形成した電気Zn−Ni合金めっき鋼板を作製した。次いで、電気Zn−Ni合金めっき層上に、表2−1、表2−2に示すクロメート処理液をロールコーターによって塗布した後、表2−1、表2−2に示す加熱温度に加熱し、表2−1、表2−2に示すCr付着量のクロメート皮膜を形成した試料No.1〜27を作製した。ここで、加熱温度とは、鋼板が到着する 最高温度のことである。なお、試料No.7〜12に対しては、電気Zn−Ni合金めっき層を形 成後、クロメート処理液塗布前に、濃度:8volppmのTiコロイドを含むpH:8、温度:60℃の水溶液を5秒間スプレー塗布後、60℃の熱風で乾燥した。
かくして得られたクロメート処理鋼板のプレス加工性、耐ガソリン耐食性および耐Cr溶出性について調べた結果を、表3に示す。
なお、各特性の評価方法は次のとおりである。
i)プレス加工性
種々のブランク径の試料(鋼板)を用い、クロメート皮膜の形成された面に防錆油Z5(出光石油社製)を1g/m2の割合で塗布後、33mmφの平底円筒ポンチにより、クリアランス:1mm、しわ押さえ荷重:3t、絞り速度:60mm/sの条件で円筒絞り加工を行った。そして限界絞り比[絞り抜けた試料の(ブランク径/ポンチ径)の最大値]を求め、次の基準によりプレス加工性を評価した。
○:限界絞り比が2.1以上(本発明の目標)
△:限界絞り比が2.0以上、2.1未満
×:限界絞り比が2.0未満
ii)ガソリンに対する耐食性
加工前のサイズ20mm×100mmの試料と、上記i)で60mmのブランク径で加工した後の試料を、無鉛ガソリンと濃度:500volppmの蟻酸水溶液とを質量比1:1で混合した燃料中に、室温で1ヶ月浸漬後の赤錆発生面積率を測定した。なお、加工後の試料については、加工後のカップ内に上記燃料をカップ容積の約80%投入して1ケ月放置した。また、上記燃料は比重の違いにより下層に蟻酸水溶液、上層に無鉛ガソリンと分離するので、層別に赤錆発生面積率を測定した。そして、次の基準によりガソリンに対する耐食性を評価した。
○:赤錆発生面積率が50%未満(本発明の目標)
△:赤錆発生面積率が50%以上、80%未満
×:赤錆発生面積率が80%以上
iii)耐Cr溶出性
Volvo tandard testに従い、5.0 g/l(リットル)のNaCl、1.0 g/lのNH2CONH2、1.0g/lのD1−CH3CHOHCOOHからなるpH:6.5、温度:40℃の水溶液200mlに、表面積が50cm2の試料を20分間浸漬し、ジフェニルカルバジド法によりCrの溶出量を測定した。そして、次の基準によりCrの耐溶出性を評価した。
◎:Cr溶出量が0.1μg/cm2以下(本発明の目標)
○:Cr溶出量が0.1μg/cm2を超え、0.3μg/cm2以下
△:Cr溶出量が0.3μg/cm2を超え、0.5μg/cm2以下
×:Cr溶出量が0.5μg/cm2を超え
Figure 0004654714
Figure 0004654714
Figure 0004654714
Figure 0004654714
表3から明らかなように、発明例である試料No.12はいずれも、プレス加工性、ガソリンに対する耐食性および耐Cr溶出性のいずにも優れている。
これに対し、比較例である試料No.13〜15およびNo.21〜27は、上記のいずれかの特性に劣っている。

Claims (1)

  1. 鋼板の少なくとも片面に、Niを5〜30mass%含む電気Zn−Ni合金めっき層を、片面当たり1〜40g/m2の付着量で形成した後、該合金めっき層上に、Tiコロイドを含む水溶液を塗布し、乾燥した後、質量比(3価クロム)/(全クロム)が0.5超のクロム酸、質量比( りん酸)/(全クロム)が0.1〜5.0のりん酸および有機還元剤を含有するクロメート処理液を塗布し、加熱することを特徴とする燃料タンク用鋼板の製造方法。
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