JP2004307923A - 耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】めっき鋼板表面上にCr、Fを含有せず、かつ、Zrのリン酸塩、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種以上とSiの酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種以上、さらに、元素群A〔Mn,V,Mo,W,Mg,Ce,Li,Zn,Co〕のうち少なくとも1種以上を含有し、それらがリン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物,アンモニウム塩のいずれかであり、かつ、皮膜中において下式を満足する耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板。
0.001<〔元素群Aの合計付着量(mg/m2 )〕/〔ZrとSiの合計付着量(mg/m2 )〕<0.3
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロムやフッ素化合物を含まない、環境負荷を軽減した耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板であって、自動車の燃料タンク、家電用途、容器材料に使用できる。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ガソリンを燃料とする自動車の燃料タンク用材料には、溶接性ばかりでなく、外面側は一般の耐食性が、内面側はガソリンなどの燃料に対する耐燃料耐食性が要求される。これまで燃料タンク用材料には俗にターンめっきと呼ばれるPb−Sn系めっき鋼板が広範に使用されてきた。しかしながら近年の環境問題に対する意識の高まりを受け、Pbに対する規制が強まりつつある。また、近年環境問題を配慮した排ガス規制によりガソホールと呼ばれるガソリン/アルコール混合燃料(約15質量%のメタノールを含有するM15、約85質量%のメタノールを含有するM85などがある。)を代表例とするアルコール含有燃料の使用が一部の国々で推進されている。しかし、従来のターンシートは上述のようにアルコール含有燃料により腐食され易いため、アルコール含有燃料に対する耐燃料耐食性に優れた燃料タンク用材料の開発が急務となっている。この流れを受け、脱Pb自動車燃料タンク素材として、溶融アルミめっき鋼板、溶融Sn−Znめっき鋼板をはじめとして、多彩な製品が開発されつつある。
【0003】
特開昭58−45396号公報(特許文献1)には、Ni含有量5〜50質量%、厚さ0.5〜20μmのZn−Ni合金めっきの上にクロメート処理を施した燃料タンク用の表面処理鋼板が示されている。特開平5−106058号公報(特許文献2)には、Ni含有量8〜20質量%のZn−Ni合金めっきを10〜60g/m2 の付着量で設けた上に、6価クロムを含有するクロメート処理を施した燃料タンク用の表面処理鋼板が示されている。また、特開平10−168581号公報(特許文献3)や特開平11−217682号公報(特許文献4)には溶融アルミめっきにクロメート処理した素材が示されている。このように、ターンめっきに代替すべきこれらの製品はいずれも最表層に6価クロムを含有したクロメート処理を施したものが殆どであった。
【0004】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開昭58−45396号公報)
(2)特許文献2(特開平5−106058号公報)
(3)特許文献3(特開平10−168581号公報)
(4)特許文献4(特開平11−217682号公報)
(5)特許文献5(特公平2−18982号公報)
(6)特許文献6(特開2002−146552号公報)
(7)特許文献7(特開2002−146551号公報)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
周知のように、6価クロムは人体に対し発ガン性を示すなど有害であり、製品からの溶出の可能性、あるいは製造時の廃液処理の問題からも好ましくない物質である。電解クロメートのように3価クロムで処理した製品もあるが、この製品も製造時には6価クロムを使用し、廃液処理という点ではなんら変わりがない。ところがクロメートに代替する諸性能を有する適当な処理がないというのが現状である。
【0006】
6価クロムを使用しない表面処理剤の研究も当然数多くなされてきた。このような例として、特公平2−18982号公報(特許文献5)では下層にZnまたはZnを主成分とするめっき層に、Zn、Al、Mg、Ni、Sn10%以上のステンレスとフェノキシ樹脂とゴム変性エポキシ樹脂を主成分とする上層とからなる燃料タンク用表面処理鋼板が示されているが、特に燃料タンク用途に対しては、スポット、シーム溶接性などの抵抗溶接性が要求されることから、膜厚の厚い有機系の処理ではこれらの特性を満足しがたいという問題がある。
【0007】
さらに、クロムを使用しない表面処理剤に関しても最近報告がある。特開2002−146552号公報(特許文献6)においては、Ti,Mn,Zr等からなる化成処理皮膜を処理したアルミめっき鋼板が示されており、確かに耐食性は優れるが、200℃以上になる高温環境中ではMnが主成分の皮膜ではMnの酸化することに起因する変色が懸念される。また、特開2002−146551号公報(特許文献7)ではフッ化物が共存する化成処理皮膜を処理したアルミめっき鋼板が示されているが、フッ素化合物も製品からの溶出の可能性、あるいは製造時の廃液処理の問題から好ましくない物質である。
そこで、本発明者らは各種めっき鋼板に対して、クロム、フッ素を含有せず、良好な耐食性はもとより、耐熱性、加工性、溶接性に優れた皮膜を有する表面処理鋼板について鋭意検討を行った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術が抱える課題を解決するための手段について鋭意検討を重ねた結果、Zrのリン酸塩、酸化物、水酸化物(これらの錯体化合物も含む)のいずれかとSiの酸化物、水酸化物のいずれかとの混合皮膜はめっき表面のSn,Al部上に半導体のバリヤー皮膜を形成し、水、塩素イオン等の物質因子のめっき表面への侵入を妨げるとともに腐食のカソード反応を抑制する効果があり、元素群A〔Mn,V,Mo,W,Mg,Ce,Li,Zn,Co〕のリン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、アンモニウム塩(これらの錯体化合物も含む)は腐食環境下で徐々に溶解しバリヤー皮膜が損傷を受けた箇所や加工によって合金層、地鉄が露出した箇所に再皮膜形成により防食効果が得られることが判明した。
【0009】
また、Zr,Siの混成皮膜中において溶解しやすい元素群Aの割合が多いと長期防錆に不利であるし、少なすぎるとバリヤー皮膜が損傷を受けた箇所や加工によって合金層、地鉄が露出した箇所の耐食性が劣ることを明らかにした。よって、〔ZrとSiの合計付着量〕と〔元素群Aの合計付着量〕の割合を最適化することで有害なクロム化合物、フッ素化合物を含有せず、優れた耐食性、耐熱性、加工性、溶接性及び塗装性の皮膜を有する表面処理鋼板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明はめっき鋼板のめっき表面上にCr、Fを含有せず、かつ、Zrのリン酸塩、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種以上とSiの酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種以上、さらに、元素群A〔Mn,V,Mo,W,Mg,Ce,Li,Zn,Co〕のうち少なくとも1種以上を含有し、それらがリン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物,アンモニウム塩のいずれかであり、かつ、皮膜中において下式を満足することを特徴とする耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板に関するものである。
0.001<〔元素群Aの合計付着量(mg/m2 )〕/〔ZrとSiの合計付着量(mg/m2 )〕<0.3
【0011】
また、後処理皮膜中に水酸基、カルボニル基、アミン基及びカルボキシル基のうち少なくとも1つの官能基をもつ有機化合物を含有したり、追加成分として、ポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックスのうち少なくとも1種からなる潤滑性付与成分を含有することも好ましく、後処理皮膜の付着量はZr換算で2〜1200mg/m2 であることが望ましい。
さらに、めっき層組成としては、Sn:50〜98質量%、Zn:2〜50質量%であること、もしくは、Al:0.1〜95質量%、Si:0〜15質量%であることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の構成を詳細に説明する。
本発明の第一の特徴としてはSn系めっき鋼板上の後処理皮膜中にクロム化合物とともにフッ素化合物を含有しないことにある。クロム及びフッ素化合物は人体に対して悪影響をおよぼす恐れがあるため好ましくないからである。後処理皮膜にフッ素化合物を含有する場合、溶出するフッ素化合物のために塗装性が劣るため好ましくない。
【0013】
また、本発明はめっき上に不溶性化合物と比較的溶解性の化合物を最適な比率で構成させることが重要である。不溶性化合物としてはZrのリン酸塩、酸化物、水酸化物(これらの錯体化合物も含む)とSiの酸化物、水酸化物があり、耐食性は 良 Si化合物>Zr化合物 劣 であるが、加工性は 良 Zr化合物>Si化合物 劣 であるため、これらを組み合わせることで耐食性・加工性に優れるバリヤー皮膜を形成させることが可能である。ZrとSiとの混合比率については特に規定しないが付着量質量比で 0.5<Zr/Si<10の範囲であることが望ましい。
【0014】
比較的溶解性の化合物としてはMn,V,Mo,W,Mg,Ce,Li,Zn,Coのリン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物,アンモニウム塩(これらの錯体化合物も含む)が有効である。特にMo酸アンモニウムや硝酸Ce,硝酸Li等が好ましい。また、後処理皮膜中で比較的溶解性である元素群Aの比率が高いと腐食環境中で皮膜が早期に溶解してしまい耐食性が劣化し、塗装性が劣化する。さらに、低すぎるとバリヤー皮膜が損傷を受けた箇所や加工によって合金層、地鉄が露出した箇所の耐食性が劣るため、
0.001<〔元素群Aの合計付着量(mg/m2 )〕/〔ZrとSiの合計付着量(mg/m2 )〕<0.3
であることが良好な耐食性を得るためには必須である。また、後処理皮膜付着量が少なすぎるとめっきのSn、Zn、Al部表面を覆いきれず、多すぎても性能には影響しないが不経済であるため、付着量はZr換算で2〜1200mg/m2 が望ましい。
【0015】
また、本発明のめっき鋼板上の後処理皮膜中に腐食インヒビター効果を高めるために水酸基、カルボニル基、アミン基及びカルボキシル基のうち少なくとも1つの官能基をもつ有機化合物の添加が望ましい。この有機物として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジピバロイルメタン、3−メチルペンタンジオン等のカルボニル化合物、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、琥珀酸等の有機酸、グルコース、マンノース、ガラクトース等の単糖類、麦芽糖、ショ糖等のオリゴ糖類、デンプン、セルロース等の天然多糖類、タンニン酸、フミン酸、リグニンスルホン酸、ポリフェノール、グアニジンおよびその誘導体等の芳香族化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、水溶性ナイロン等の合成高分子等が挙げられる。この成分の皮膜中での割合が5質量%未満の場合は耐食性の向上効果が乏しく、30質量%を超える場合は耐食性及び塗装性の向上効果に乏しいため好ましくない。
【0016】
また、表面の摩擦係数を低減することにより潤滑性を付与し、かじり等を防止してプレス加工性、しごき加工性を向上させる目的で、前記後処理皮膜中に追加成分として潤滑性付与成分を配合することが望ましい。このような潤滑性付与剤としては得られる皮膜に潤滑性を付与できるものであればよいが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、パラフィン系のうち1種または2種以上からなるものが好ましい。この成分の皮膜中での割合は1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量%である。
【0017】
また、耐食性、耐指紋性、耐溶剤性及び表面潤滑性の向上を目的として、前記後処理皮膜中に追加成分として、水溶性高分子又は/及び水系エマルジョン樹脂、例えばポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子、水に分散した形態のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチラール樹脂等の水系エマルジョン樹脂を添加することができる。これらは各単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明の後処理皮膜中に、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、防菌防ばい剤、着色剤、安定化剤などを本発明の趣旨や皮膜性能を損なわない範囲で添加し得る。
後処理皮膜中にめっき成分(Al,Zn,Sn,Zn,Fe、添加金属等)が取り込まれる場合があるが、本発明の主旨を損なうものではなく、また、皮膜のめっき表面付近にめっき成分が濃化した場合も同じである。さらに、後処理皮膜がめっき表面上に不均一に形成されていても本発明の主旨を損なうものではない。さらに、後処理皮膜中に後処理薬剤調合時の不純物成分としてCr,Fが0.01mg/m2 以下の極微量で混入する場合があるが、本発明の主旨を損なうものではない。
【0019】
後処理皮膜中の化合物含有量の測定方法について特に限定はしないが、任意面積のサンプルを使用し、表面処理皮膜を酸(ふっ酸等)で溶解除去し溶解させた溶液をICPにより定量分析を実施する手法がある。この際、めっき成分も溶解しているので測定上の注意が必要である。その他、蛍光X線強度の検量線による定量法も可能である。有機化合物についてはIR等により存在の有無を確認することが可能である。各種化合物形態については皮膜表面を(薄膜)XRDやXPSにより分析することで検出が可能である。
【0020】
次に、めっき層について述べる。本発明の後処理皮膜はSn、Zn、Al上に形成し、腐食のカソード反応を抑制しているため、Sn系めっき鋼板の場合、めっき層組成がSn:50質量%未満では、十分な耐食性を発揮できない。よって、めっき層のSnの下限を50質量%とする。また、Zn:2〜50質量%であるものが好ましい。このZnの添加の目的は、犠牲防食能を発現させ、Sn系めっき鋼板の腐食で問題となる早期の赤錆発生を抑制するためである。Znが2%未満では犠牲防食能が十分発揮されないため耐食性が低下する。一方、Zn量が増大しすぎてもめっきの溶解量が増大するため逆に耐食性を低下させ、この点(50質量%)を上限値として定める。
【0021】
不純物元素として、微量のPb,Bi,Fe、Ni、Sb等がありうる。また必要に応じ、Mg,Sn,ミッシュメタル、Zn,Cr,W,V,Mo,等を添加しても構わない。また、鋼板とめっき層の界面にNi層、Ni−Zn層、Fe−Ni層、Zn−Cr層およびそれらのめっき成分、地鉄成分との合金層が連続層もしくは非連続層として存在しても本発明の趣旨を損なうものではない。
【0022】
また、アルミ系めっき層について述べる。本発明の後処理皮膜はAl上に形成し、腐食のアノード反応とカソード反応を抑制しているため、めっき層組成がAl:0.1質量%未満では、十分な耐食性を発揮できない。よって、めっき層のAlの下限を0.1質量%とする。さらに、Si:0〜15質量%であるものが好ましい。このSiの添加の目的は、アルミ系めっき鋼板で問題となる合金層の過大な成長を抑制するためである。しかしながら、Si量が増大しすぎても粗大なSiの初晶が晶出して耐食性を低下させる。Siが15%を越えると、白錆が発生しやすくなり、この点を上限値として定める。不純物元素として、微量のFe、Ni、Co等がありうる。また必要に応じ、Mg,Sn、ミッシュメタル、Sb,Zn,Cr,W,V,Mo等を添加しても構わない。
【0023】
上記めっき鋼板の製造法について特に制限はないが、溶融フラックスめっき、ゼンジマー法、オールラジアント法等による溶融めっき、電気めっき、蒸着めっきが望ましい。
本発明において、使用する母材の鋼成分については限定しないが、鋼種としては、例えばTi,Nb,B等を添加したIF鋼、Al−k鋼、Cr添加鋼、ステンレス鋼、ハイテン、電磁鋼板等が挙げられる。燃料タンク等の深絞り性や耐2次加工割れが必要な用途に対してはIF鋼やB添加材が、家電用途にはAl−k鋼が、電磁シールド用途には電磁鋼板の適用がそれぞれ望ましい。
【0024】
【実施例】
以下に、本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明する。尚、これらの実施例は本発明の説明のために記載するものであり、本発明を何ら限定するものではない。
(1)Sn、Zn,Al系めっき鋼板の作製
表1に示す成分の鋼を通常の転炉−真空脱ガス処理により溶製し、鋼片とした後、通常の条件で熱間圧延、冷間圧延を行い、0.8mmの鋼板を得た。この鋼板にNOF−RFタイプの溶融めっきラインで組成をふったSn−Znめっきを実施した。何れもめっき付着量を約40g/m2 に調整した。こうして製造しためっき鋼板をSn系めっき鋼板の供試材として使用した。
【0025】
(2)脱脂処理
上記の各供試材をシリケート系アルカリ脱脂剤のファインクリーナー4336(登録商標:日本パーカライジング(株)製)で脱脂処理(濃度20g/l、温度60℃、20秒間スプレー)した後、水道水で洗浄した。
(3)表面処理剤の塗布
調整した各表面処理剤をバーコーターにて上記各試験板上に塗布し、150℃の雰囲気温度で乾燥した。尚、皮膜量(g/m2 )の調整は表面処理剤の固形分濃度を適宜調整することにより実施した。
【0026】
〔性能評価項目及び評価方法〕
(1)加工性試験
加工性の評価にはドロービード試験を行った。このときの金型はビード部:4R,ダイス型:2Rであり、油圧により押付け力1000kgで圧下した。試験片の幅は30mmであり、引き抜いた後のビード通過部のめっき損傷状況を400倍の断面観察により調査した。観察長は20mmとし、めっき層のクラック発生を評価した。
〔評価基準〕
○:成形可能で、めっき層の欠陥無し
△:成形可能で、めっき層にクラックが発生
×:成形可能で、めっき層に局部剥離発生
【0027】
(2)耐食性試験
油圧成型試験機により、直径30mm、深さ20mmの平底円筒絞り加工した試料を、JASO(自動車技術会による自動車規格)M610−92自動車部品外観腐食試験法により評価した。
〔評価条件〕
試験期間:140サイクル(46日)
〔評価基準〕
◎:赤錆発生0.1%未満
○:赤錆発生0.1%以上1%未満または白錆発生有り
△:赤錆発生1%以上、5%未満または白錆目立つ
×:赤錆発生5%以上または白錆顕著
【0028】
(3)溶接性
下記に示す溶接条件でスポット溶接を行い、ナゲット系が4√tを切った時点までの連続打点数を評価した。片面塗装の際には、重ね合わせたときに樹脂面が片方の鋼板は内側、もう片方は外側になるようにして評価した。
〔溶接条件〕
溶接電流:10KA
加圧力 :240kg
溶接時間:12サイクル(60Hz)
電極 :ドーム型電極、先端径6mm
〔評価基準〕
◎:連続打点600点超
○:連続打点300〜600点
△:連続打点100〜300点
×:連続打点100点未満
【0029】
(4)塗装性
寸法70×150mmの試験片にスプレー塗装を行った。塗料は祐光社アクリーTKブラックを使用し、膜厚20μm、焼き付け時間140℃×20分とした。次に試料にクロスカットをいれ、55℃の5%NaCl水溶液中に10日間浸漬後、テーピングして塗料の剥離幅により塗料の2次密着性を評価した。
〔評価基準〕
○:剥離幅5mm以下
△:剥離幅5mm超、7mm以下
×:剥離幅7mm超
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の表面処理剤を塗布乾燥して形成された皮膜は、加工性、耐食性、溶接性及び塗装性とも優れており、かつ、人体および環境に有害なクロム、フッ素化合物を含まないことから、産業上の利用価値は非常に大きいことがわかる。また、ここでは燃料タンク材用途で説明したが、Al系めっき鋼板およびSn系めっき鋼板が使用される建材用途、自動車排気系材料用途、家電用途や容器用途でも使用可能であることも確認している。
Claims (6)
- めっき鋼板のめっき表面上にCr、Fを含有せず、かつ、Zrのリン酸塩、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種以上とSiの酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種以上、さらに、元素群A〔Mn,V,Mo,W,Mg,Ce,Li,Zn,Co〕のうち少なくとも1種以上を含有し、それらがリン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、アンモニウム塩のいずれかであり、かつ、皮膜中において下式を満足することを特徴とする耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板。
0.001<〔元素群Aの合計付着量(mg/m2 )〕/〔ZrとSiの合計付着量(mg/m2 )〕<0.3 - 後処理皮膜中に水酸基、カルボニル基、アミン基及びカルボキシル基のうち少なくとも1つの官能基をもつ有機化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板。
- 請求項1〜2記載の後処理皮膜において、追加成分として、ポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックスのうち少なくとも1種からなる潤滑性付与成分を含有することを特徴とする耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板。
- 後処理皮膜の付着量がZr換算で2〜1200mg/m2 であることを特徴とする請求項1〜3に記載の耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板。
- めっき層組成が、Sn:50〜98質量%、Zn:2〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜4に記載の耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板。
- めっき層組成が、Al:0.1〜95質量%、Si:0〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜4に記載の耐食性、塗装性及び加工性に優れる表面処理鋼板。
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