JP4653900B2 - シール組立体及び履帯連結構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、シール組立体及び履帯連結構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ブルドーザや油圧ショベル等の建設機械等の履帯型車両は、図6に示すように、無端状のリンクチェーン81を有し、このリンクチェーン81に地面接地用の複数の履板(図示省略)が取付けられている。そして、リンクチェーン81は、平行に配設される複数のリンク82a・・、82b・・と、相対向するリンク82a、82bを揺動可能に連結するための履帯連結構造84とを備える。すなわち、リンク82a、82bは、図示省略の履板が取付けられる中間部85と、この中間部85から突設される連結部86、87とを備え、連結部86にピン挿入孔88が設けられ、連結部87にブッシュ挿入孔89が設けられている。そして、リンク82a、82a及びリンク82b、82bはそれぞれ連結部86、87が重ね合わされた状態にて上記連結構造84を介して連結される。
【0003】
そして、連結構造84は、ピン90とこのピン90に外嵌されるブッシュ91とを備え、ピン90の端部がブッシュ91より軸心方向外方へ突出し、リンク82のピン挿入孔88に圧入され、ブッシュ91の端部がリンク82のブッシュ挿入孔89に圧入される。また、ピン挿入孔88は、そのブッシュ側の開口部が大径部92とされ、この大径部92と、ブッシュ91の外端面と、ピン90の外周面93とでもって空間部94が形成され、この空間部94にシール組立体95が嵌着されている。この場合、ピン90に対してブッシュ91が回転自在に外嵌され、ピン90と連結部86とが一体化され、ブッシュ91と連結部87とが一体化されることになり、連結されるリンク82、82の端部、つまり連結部86、87が揺動可能に連結されることになる。また、ピン90には、油注入孔96が設けられ、この油注入孔96の油が図示省略の通路からピン90の外周面93側へ流出して、ピン90とブッシュ91との潤滑油となる。
【0004】
そして、上記シール組立体95は、図7に示すように、リップ部97を有するシールリング98と、このシールリング98を支持する支持リング99と、シールリング98のリップ部97からの押圧力を受ける負荷リング100とを備え、上記潤滑油の外部への流出を防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の履帯連結構造では、リップ部97がその対応する壁面(図6では、ブッシュ91の端面)に圧接するためには、負荷リング100がその外周側から押圧力を受ける必要がある。そのため、従来では、シール組立体95を嵌入(挿入)するためのハウジング(空間部94)を形成する必要があって、全体の構造が複雑化して加工しにくいものとなっていた。しかも、この空間部94にシール組立体95を装着する必要があり、全体としての組立作業が面倒であり、生産性に劣っていた。
【0006】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その一の目的は、組付ける部位の構造が簡単であってしかも確実にシールすることが可能なシール組立体の提供することにあり、また、他の目的は、簡単にシール組立体を組付けることができる共に、潤滑油等の外部への流出を確実に防止することが可能な履帯連結構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び効果】
そこで請求項1のシール組立体は、リップ部23を有する一対のシールリング1、1と、軸心方向の圧縮にて軸心方向外方への反力を付与する負荷リング2と、負荷リング2の径方向外方への変位を規制する一対の外径規制体32、32とを備え、上記外径規制体32、32は上記シールリング1、1に付設され、また上記一対のシールリング1、1は各リップ部23、23が軸心方向に相反する方向へ突出するように配置されており、上記負荷リング2は、上記一対のシールリング1、1間において、上記外径規制体32、32の内径側に配置されるとともに、上記外径規制体32、32によって支持されており、上記負荷リング2を軸心方向に圧縮した時に生じる負荷リング2の径方向外方への変位を、上記外径規制体32、32によって規制することで、上記シールリング1、1を軸心方向外方へと付勢可能に構成したことを特徴としている。
【0008】
上記請求項1のシール組立体では、負荷リング2に軸心方向の圧縮力を作用させれば、この負荷リング2はシールリング1、1のリップ部23、23を軸心方向外方へ押圧することになる。このため、負荷リング2に軸心方向の圧縮力が作用するように、このシール組立体の自由状態での軸心方向長さより小さい隙間を形成する壁間に、このシール組立体を装着すれば、各リップ部23、23がその対応する壁に圧接し、リップ部23、23の内径側と外径側とを密封することができる。すなわち、このシール組立体を使用すれば、履帯連結構造等への組み込み作業を簡単に行うことができ、組立作業性の向上を図ることが可能となって、生産性の向上を図ることができる。また、外径規制体32にて負荷リング2の径方向外方への変位を規制することができ、リップ部23、23に対する負荷リング2の軸心方向外方への反力を確実に付与することができる。これにより、従来では必要としていた外周側の規制壁(上記図6に示す空間部94)を必要としないことになる。すなわち、このシール組立体Sを装着するための空間加工を必要とせず、加工作業が容易となると共に、高精度のシール力を発揮することが可能である。
【0011】
請求項2のシール組立体は、リップ部23を有する一対のシールリング1、1と、軸心方向の圧縮にて軸心方向外方への反力を付与する負荷リング2と、負荷リング2の径方向内方への変位を規制する一対の内径規制体33、33とを備え、上記内径規制体33、33は上記シールリング1、1に付設され、また上記一対のシールリング1、1は各リップ部23、23が軸心方向に相反する方向へ突出するように配置されており、上記負荷リング2は、上記一対のシールリング1、1間において、上記内径規制体33、33の外径側に配置されるとともに、上記内径規制体33、33によって支持されており、上記負荷リング2を軸心方向に圧縮した時に生じる負荷リング2の径方向内方への変位を、上記内径規制体33、33によって規制することで、上記シールリング1、1を軸心方向外方へと付勢可能に構成したことを特徴としている。
【0012】
上記請求項2のシール組立体では、内径規制体33にて負荷リング2の径方向内方への変位を規制することができ、リップ部23、23に対する負荷リング2の軸心方向外方への反力を確実に付与することができる。また、内径規制体33が、このシール組立体の内径側に配設されるスペーサとなって、このシール組立体の装着部位の確保が容易となる。
【0013】
請求項3のシール組立体は、リップ部23を有する一対のシールリング1、1と、軸心方向の圧縮にて軸心方向外方への反力を付与する負荷リング2と、負荷リング2の径方向内方への変位を規制する内径規制体33と、負荷リング2の径方向外方への変位を規制する外径規制体32とを備え、上記内径規制体33と上記外径規制体32とは上記シールリング1、1にそれぞれ付設され、また上記一対のシールリング1、1は各リップ部23、23が軸心方向に相反する方向へ突出するように配置されており、上記負荷リング2は、上記一対のシールリング1、1間において、一方側が上記内径規制体33の外径側に配置され、他方側が上記外径規制体32の内径側に配置されるとともに、上記内径規制体33と上記外径規制体32とによって支持されており、上記負荷リング2を軸心方向に圧縮した時に生じる負荷リング2の径方向内外方への変位を、上記内径規制体33と上記外径規制体32とによって規制することで、上記シールリング1、1を軸心方向外方へと付勢可能に構成したことを特徴としている。
【0014】
上記請求項3のシール組立体では、外径規制体32にて負荷リング2の径方向外方への変位を規制し、内径規制体33にて負荷リング2の径方向内方への変位を規制することができるので、負荷リング2によるリップ部23、23への軸心方向への反力の付与を確実に行うことができ、より高精度のシール力を発揮することが可能である。
【0015】
請求項4のシール組立体は、上記負荷リング2が、軸心方向の圧縮を許容する周方向溝27を有することを特徴としている。
【0016】
上記請求項4のシール組立体では、負荷リング2に軸心方向の圧縮力が作用すれば、周方向溝27を有することによって、軸心方向に圧縮され、リップ部23、23に軸心方向外方への反力を確実に付与することができ、安定したシール機能を発揮することができる。
【0017】
請求項5のシール組立体は、断面において、組立体中心を通る径方向線に関して対称となることを特徴としている。
【0018】
上記請求項5のシール組立体では、組立体中心を通る径方向線に関して対称となるので、このシール組立体の表裏がなくなって、このシール組立体を装着する際に作業し易い利点がある。しかも、一対のシールリング1、1等を形成する場合、一種類でよく、製造コストの低減を図ることが可能である。
【0019】
請求項6の履帯連結構造は、履帯のリンク5、5の重ね合わされる端部に挿通されるピン8を備え、一方のリンク5が上記ピン8に固定されると共に、他方のリンク5がこのピン8に対して回動可能に支持される履帯連結構造構造であって、上記ピン8に外嵌されてこのピン8の外周面側に供給される潤滑油の外部への流出を防止するシール組立体Sを有し、上記シール組立体Sは、軸方向に沿って相対面する径方向壁面W、W間に配置され、シールリング1、1のリップ部23、23が負荷リング2からの押圧力にて径方向壁面W、Wに圧接されることを特徴としている。
【0020】
上記請求項6の履帯連結構造では、このシール組立体Sを軸方向に沿って相対面する径方向壁面W、W間に装着すれば、各リップ部23、23がその対応する壁W、Wに圧接し、リップ部23、23の内径側と外径側とを密封することができる。すなわち、図6に示す従来の履帯連結構造のように空間部94を必要とせず、加工作業およびシール組立体Sの装着作業が容易であると共に、高精度のシール力を発揮することが可能である。
【0021】
請求項7の履帯連結構造は、上記他方のリンク5に内嵌固定されて上記ピン8に対して回動可能となるブッシュ12を備え、このブッシュ12の端面が上記一方の径方向壁面Wとなることを特徴としている。
【0022】
上記請求項7の履帯連結構造では、シール組立体Sを受ける一方の径方向壁面をブッシュ12の端面にて構成することができ、履帯連結構造全体として簡略化を図ることができる。
【0023】
請求項8の履帯連結構造は、上記他方のリンク5に内嵌固定されて上記ピン8に対して回動可能となるブッシュ12と、スプロケット18側のブッシュ13とを備え、ブッシュ12、13間にシール組立体Sを介設したことを特徴としている。
【0024】
上記請求項8の履帯連結構造では、シール組立体Sを受ける径方向壁面Wを、ブッシュ12にて構成することが可能であり、履帯連結構造全体として簡略化を図ることができると共に、組立作業も容易であり、生産性に優れる。
【0025】
請求項9の履帯連結構造は、上記負荷リング2の内径側に、この負荷リング2の径方向内方への変位を規制するリング体31を配置したことを特徴としている。
【0026】
上記請求項9の履帯連結構造では、リング体31にて負荷リング2の径方向内方への変位を規制することができ、リップ部23、23に対する負荷リング2の軸心方向外方への反力を確実に付与することができる。リング体31が、このシール組立体の内径側に配設されるスペーサとなって、このシール組立体の装着部位の確保が容易となる。
【0027】
請求項10の履帯連結構造は、上記シール組立体Sの外周側にダストシール用リング37を配置したことを特徴としている。
【0028】
上記請求項10の履帯連結構造では、ダストシール用リング37にて、外周側からのシール組立体Sへの土砂や泥水等のダストの浸入を防止することができ、これにより、シール組立体Sは安定したシール機能を発揮して、履帯の品質の向上を図ることができると共に、履帯として耐久性に優れたものとなる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、この発明のシール組立体の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1はこの発明のシール組立体の実施形態を示す要部断面図であり、このシール組立体Sは、例えば、履帯連結構造に使用され、一対のシールリング1、1と、このシールリング1、1間に介設される負荷リング2とを備え、各シールリング1、1が、断面L字状の支持リング3、3に支持されている。この場合、シール組立体Sは、断面において、組立体中心を通る径方向線に関して対称となっている。また、履帯連結構造とは、ブルドーザや油圧ショベル等の建設機械等の履帯型車両における走行用履帯の連結構造である。
【0030】
上記連結構造は、図2に示すように、リンク5、5を連結するものであって、一方のリンク5の端部の連結部6と、他方のリンク5の端部の連結部7とを重合わせた状態にて、連結する。すなわち、各リンク5・・は、一端側に連結部6を有し、他端側に連結部7を有し、連結すべき隣合うリンク5、5の連結部6と連結部7とがこの連結構造を介して連結される。なお、各リンク5においては、図6に示すように、連結部6と連結部7との間に図示省略の中間部が形成され、この中間部に履板が取付けられる。また、図2では省略しているが、ピン6の他方の端部においても、同様にリンク5、5が連結されている。
【0031】
そして、上記連結構造は、ピン8と、このピン8に外嵌される抜止めリング9とを備える。すなわち、リンク5の連結部6にピン挿入孔10を設けると共に、リンク5の連結部7にブッシュ挿入孔11を設け、ピン8の端部をピン挿入孔10に圧入すると共に、連結部7のブッシュ挿入孔11に、ピン8に対して回転自在に外嵌されるブッシュ12に圧入する。また、ピン8の両端部側に配設されて所定間隔をもって相対面するリンク5、5の連結部6(図例では、相対面している他方のリンク5は省略されている。)間には、ピン8に外嵌される他のブッシュ13、つまり後述するスプロケット18側のブッシュが介設されている。そして、このブッシュ12、13間にこの発明のシール組立体Sが介設され、一方のブッシュ12の端面と、他方のブッシュ12の端面とが上記リップ部23、23が圧接する径方向壁面W、Wとなる。なお、ブッシュ12と一方のリンク5の連結部6との間に従来のシール組立体Saが介設されている。
【0032】
ところで、ピン8の端部に周方向凹溝14が設けられると共に、ピン挿入孔10の開口周縁に軸方向内方に向かって縮径するテーパ面15が設けられ、このテーパ面15と周方向凹溝14とでもって環状空間16が形成される。そして、弾性的に拡径・縮径が可能とされた抜止めリング9が、この環状空間16に嵌着されることによって、リンク5とピン8とが固定される。そして、このように連結されたリンク5は、エンドレス状のリンクチェーンとなり、建設機械等の履帯型車両のスプロケット18(図2参照)に掛け回される。なお、ピン8には図示省略の油注入孔が設けられ、この油注入孔の油が外周面19側へ流出して、ピン8とブッシュ12等との潤滑油となる。
【0033】
そして、図1に示すように、シール組立体Sのシールリング1は、例えば、硬さHs95位のウレタン樹脂等からなり、外周側に配設される軸心方向に延びる第1部20と、この第1部20の軸心方向外端部から径方向内方へ延びる第2部21と、第1部20の軸心方向内端部に径方向内方へ延びる垂下周壁22とを備え、第2部21に、軸心方向外方へ突出する断面三角形状のリップ部23が突設されている。
【0034】
また、シールリング1の裏面側に、金属製の上記支持リング3が付設されている。すなわち、支持リング3は、第1部24と第2部25とを備え、第1部24が上記シールリング1の第1部20に当接係合し、第2部25がシールリング1の第2部21に当接係合し、シールリング1の垂下周壁22の内面と支持リング3の端面とが当接係合し、シールリング1と一体化している。
【0035】
次に、負荷リング2は、例えば、硬さHs60位のNBRからなり、外周面26に周方向溝27が設けられた断面略台形状のリング体からなる。すなわち、両端面28、28に切欠部29、29が設けられ、内周面30の軸心方向長さが外周面26の軸心方向長さより小とされている。このため、周方向溝27によって、負荷リング2に軸心方向の圧縮力が付与されれば、この負荷リング2は軸心方向長さ寸法が小となる。また、負荷リング2の外周面26は支持リング3の第1部24の内周面に当接し、負荷リング2の端面28は支持リング3の第2部25の内面に当接する。
【0036】
そして、図1(a)に示す自由状態では、シール組立体Sの軸心方向長さ寸法がブッシュ12、13間寸法より大きく設定されている。ところで、ブッシュ12、13間には、ピン8に外嵌されるリング体31が介装される。この場合、このリング体31の外径寸法を、上記負荷リング2の内径寸法と略同一に設定している。これによって、このリング体31は、負荷リング2の径方向内方への変位を規制すると共に、ブッシュ12、13間寸法の縮小を規制することになる。
【0037】
上記のように構成されたシール組立体Sは、自由状態では、ブッシュ12、13間寸法より大であるので、図1(b)に示すように、ブッシュ12、13間に装着すれば、軸心方向の圧縮力を受けることになる。軸心方向の圧縮力を受ければ、負荷リング2の軸心方向長さが縮小するが、この際、上記リング体31が負荷リング2の径方向内方への変位を規制する内径規制体33となると共に、支持リング2の第1部24が負荷リング2の径方向外方への変位を規制する外径規制体32となる。このため、負荷リング2からのリップ部23、23への軸心方向外方への反力を確実に付与することができる。
【0038】
このように、負荷リング2が軸心方向へ圧縮され、その反力によって第1のシールリング1(ブッシュ12側のシールリング1を第1のシールリング1と呼ぶ)のリップ部23がブッシュ12の端面(つまり径方向壁面W)に圧接し、第2のシールリング1(ブッシュ13側のシールリング1を第2のシールリング1と呼ぶ)のリップ部23がブッシュ32の端面に圧接(つまり径方向壁面W)に圧接することになって、リップ部23、23の内径側と外径側とを密封することができ、シール機能を発揮することができる。すなわち、このシール組立体Sを使用すれば、外周側を受ける壁面を設ける必要がなく、従来のように、シール組立体Sを嵌入するために図6に示すようなハウジング94を設ける必要がない。このため、履帯連結構造の簡素化を図ることが可能であると共に、シール組立体Sのハウジングへの挿入(嵌入)作業がなく、組立作業性の向上を図ることが可能である。さらに、このシール組立体Sは、断面において、組立体中心を通る径方向線に関して対称となっているので、このシール組立体Sの表裏がなくなって、このシール組立体Sを装着する際に作業し易い利点がある。しかも、一対のシールリング1、1や支持リング3、3を形成する場合、一種類でよく、製造コストの低減を図ることが可能である。さらに、負荷リング2も上記径方向線に関して対称となっているので、製造し易い利点もある。
【0039】
なお、この履帯連結構造では、図2に示すように、このリンク5、5の連結部6、7間に上記のように他のシール組立体Saが装着されているが、このシール組立体Saは、リップ部97を有するシールリング98と、このシールリング98を支持する支持リング99と、シールリング98のリップ部97からの押圧力を受ける負荷リング100とを備えている。すなわち、ピン挿入孔10は、そのブッシュ側の開口部が大径部35とされ、この大径部35と、ブッシュ12の端面と、ピン8の外周面19とでもって空間部(ハウジング)34が形成され、この空間部34にシール組立体Saが嵌着される。すなわち、このシール組立体Saによって、連結されるリンク5、5間において、ピン8の外周面19側からの潤滑油の外部への流出を防止することができる。また、負荷リング100の内径側には、ピン8に外嵌されるスペーサ36が配置されている。
【0040】
ところで、図2に示す履帯連結構造では、シール構造体Sの外周側が開放状であるので、この外周側からシール構造体S内に土砂や泥水等のダスト等が浸入するおそれがある。そのため、図3に示すように、ダストシール用リング37を配置するのが好ましい。すなわち、ダストシール用リング37は、両端面にリップ38、38を有する断面略扁平矩形状のリング体からなり、リンク5の連結部7とブッシュ13との間に介設される。これによって、外部からのダスト等の浸入を確実に防止することができ、さらには、シール構造体S内部からの潤滑油等の流出も防止することができる。
【0041】
次に、図4(a)(b)は他の実施の形態を示し、この場合、上記実施の形態と相違して、一対のシールリング1、1の形状を相違させている。すなわち、一方のシールリング1(イのシールリング1と呼ぶ)は、リップ部23を有する断面略台形状のリング体からなり、また、このイのシールリング1を支持するイの支持リング3は、内径側に配設されて軸心方向へ延びる第1部40と、この第1部40の軸心方向外端から径方向外方へ延びる第2部41とからなり、この第2部41が、イのシールリング1に埋設状となっている。他方のシールリング1(ロのシールリング1と呼ぶ)は、外径側に配設されて軸心方向へ延びる第1部42と、この第1部42の軸心方向外端から径方向内方へ延びる第2部43とを備え、第2部43にリップ部23が設けられる。また、このロのシールリング1を受けるロの支持リング3は、外径側に配設されて軸心方向へ延びる第1部44と、この第1部44の軸心方向外端から径方向内方へ延びる第2部45とからなり、第2部45が、ロのシールリング1の第2部43に埋設状となっている。
【0042】
また、負荷リング2は、外周面26のイのシールリング1側に切欠部46が形成されると共に、内周面30のロのシールリング1側に切欠部47が形成されている。そして、負荷リング2は、その外周面26がロの支持リング3の第1部44の内周面に当接し、その外端面48(ロのシールリング1に対応する面)がロのシールリング1の第2部43の内面に当接し、その内周面30がイの支持リング3の第1部40の外周面に当接し、その外端面49(イのシールリング1に対応する面)がイのシールリング1の内面に当接する。
【0043】
そして、この場合も、自由状態における軸心方向長さをブッシュ12、13間長さより大きく設定して、図4(b)に示すように、ブッシュ12、13間に装着する。この場合、上記切欠部46、47が負荷リング2の軸心方向の圧縮を許容する周方向溝27、27となって、このシール組立体Sの軸心方向長さが短くなる。そして、イの支持リング3の第1部40が負荷リング2を内径側から受け、ロの支持リング3の第1部44が負荷リング2を外径側から受けることになって、第1部40が、負荷リング2の内径側への変位を規制する内径規制体33となると共に、第1部44が、負荷リング2の外径側への変位を規制する外径規制体32となる。このため、負荷リング2の径方向の変位が規制され、各リップ部23、23は軸心方向外方への反力を付与され、各リップ部23、23がブッシュ12、13にそれぞれ密接して、高精度のシール機能を発揮する。
【0044】
さらに、図5(a)(b)は別の実施の形態を示し、この場合、シールリング1、1は、それぞれ断面が略台形状のリング体からなり、その軸心方向外側の外周側のコーナー部がリップ部23とされる。また、支持リング3、3は、内径側において軸心方向へ延びる第1部51と、この第1部51の外端部から径方向へ延びる第2部52とからなる。この場合の第2部52は、軸心方向外方に向かって拡開し、内径部52aと中間部52bと外径部52cとからなり、このシールリング1に埋設状となっている。すなわち、中間部52bと外径部52cは完全に埋設されているが、内径部52aはその内面が露出している。なお、内径部52aの拡開角度をθ1とし、中間部52bの拡開角度をθ2とし、外径部52cのθ3とした場合に、θ2<θ1<θ3となっているが、もちろんこれに限るものではない。
【0045】
この場合の負荷リング2は、断面略倒立Vの字状のリング体からなり、内周面30に周方向溝27が形成されている。そして、両端面は、内径側傾斜面53と、外径側傾斜面54とからなる。内径側傾斜面53は外径側に向かって拡開する傾斜面とされ、外径側傾斜面54は外径側に向かって縮径する傾斜面とされる。また、負荷リング2の内周面30が支持リング3の第1部51の外周面に当接し、内径側傾斜面53が支持リング3の内径部52a乃至シールリング1の内面に当接する。
【0046】
また、負荷リング2の外径側には、ダストシール用リング37が配置されている。この場合のダストシール用リング37は、断面が扁平矩形状のリング体からなる芯部材55が埋設されている。すなわち、このダストシール用リング37は、負荷リング2の外径側への変位を規制する外径規制体32を構成する。
【0047】
そして、この場合も、自由状態における軸心方向長さをブッシュ12、13間長さより大きく設定して、図5(b)に示すように、ブッシュ12、13間に装着する。この場合、周方向溝27を有することによって、負荷リング2の軸心方向の圧縮を許容し、このシール組立体Sの軸心方向長さが短くなる。そして、支持リング3の第1部51が負荷リング2の内径側への変位を規制する内径規制体33となり、ダストシール用リング37が負荷リング2の外径側への変位を規制する外径規制体32となって、負荷リング2の径方向の変位が規制され、各リップ部23、23は軸心方向外方への反力を付与され、各リップ部23、23がブッシュ12、13にそれぞれ密接して、高精度のシール機能を発揮する。しかも、外部からのダスト等の浸入を確実に防止することができる。
【0048】
以上にこの発明のシール組立体の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、図1に示すシール組立体において、周方向溝27の断面形状として、半円状に限らず、半楕円乃至半長円状、Vの字状、矩形状等の種々の形状のものも採用することができ、図5に示すシール組立体の周方向溝27の形状もこのような種々の形状を採用することができる。また、図4に示すシール組立体において、ブッシュ13側のシールリング1を大径とすると共に、ブッシュ12側のシールリング1を小径としているが、逆に、ブッシュ13側のシールリング1を小径とすると共に、ブッシュ12側のシールリング1を大径としてもよい。さらに、図2に示す履帯連結構造において、ハウジング34に装着されるシール組立体Saをシール組立体Sに変えて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のシール組立体の実施形態を示し、(a)は装着前の要部断面図であり、(b)は装着後の要部断面図である。
【図2】この発明の履帯連結構造の実施形態を示す断面図である。
【図3】ダストシール用リングの配置状態を示す要部断面図である。
【図4】この発明の他のシール組立体の実施形態を示し、(a)は装着前の要部断面図であり、(b)は装着後の要部断面図である。
【図5】この発明の別のシール組立体の実施形態を示し、(a)は装着前の要部断面図であり、(b)は装着後の要部断面図である。
【図6】従来の履帯連結構造を示す断面図である。
【図7】従来のシール組立体の断面図である。
【符号の説明】
1 シールリング
2 負荷リング
5 リンク
8 ピン
12 ブッシュ
13 ブッシュ
18 スプロケット
23 リップ部
31 リング体
32 外径規制体
33 内径規制体
37 ダストシール用リング
S シール組立体
W 径方向壁面
Claims (10)
- リップ部(23)を有する一対のシールリング(1)(1)と、軸心方向の圧縮にて軸心方向外方への反力を付与する負荷リング(2)と、負荷リング(2)の径方向外方への変位を規制する一対の外径規制体(32)(32)とを備え、上記外径規制体(32)(32)は上記シールリング(1)(1)に付設され、また上記一対のシールリング(1)(1)は各リップ部(23)(23)が軸心方向に相反する方向へ突出するように配置されており、上記負荷リング(2)は、上記一対のシールリング(1)(1)間において、上記外径規制体(32)(32)の内径側に配置されるとともに、上記外径規制体(32)(32)によって支持されており、上記負荷リング(2)を軸心方向に圧縮した時に生じる負荷リング(2)の径方向外方への変位を、上記外径規制体(32)(32)によって規制することで、上記シールリング(1)(1)を軸心方向外方へと付勢可能に構成したことを特徴とするシール組立体。
- リップ部(23)を有する一対のシールリング(1)(1)と、軸心方向の圧縮にて軸心方向外方への反力を付与する負荷リング(2)と、負荷リング(2)の径方向内方への変位を規制する一対の内径規制体(33)(33)とを備え、上記内径規制体(33)(33)は上記シールリング(1)(1)に付設され、また上記一対のシールリング(1)(1)は各リップ部(23)(23)が軸心方向に相反する方向へ突出するように配置されており、上記負荷リング(2)は、上記一対のシールリング(1)(1)間において、上記内径規制体(33)(33)の外径側に配置されるとともに、上記内径規制体(33)(33)によって支持されており、上記負荷リング(2)を軸心方向に圧縮した時に生じる負荷リング(2)の径方向内方への変位を、上記内径規制体(33)(33)によって規制することで、上記シールリング(1)(1)を軸心方向外方へと付勢可能に構成したことを特徴とするシール組立体。
- リップ部(23)を有する一対のシールリング(1)(1)と、軸心方向の圧縮にて軸心方向外方への反力を付与する負荷リング(2)と、負荷リング(2)の径方向内方への変位を規制する内径規制体(33)と、負荷リング(2)の径方向外方への変位を規制する外径規制体(32)とを備え、上記内径規制体(33)と上記外径規制体(32)とは上記シールリング(1)(1)にそれぞれ付設され、また上記一対のシールリング(1)(1)は各リップ部(23)(23)が軸心方向に相反する方向へ突出するように配置されており、上記負荷リング(2)は、上記一対のシールリング(1)(1)間において、一方側が上記内径規制体(33)の外径側に配置され、他方側が上記外径規制体(32)の内径側に配置されるとともに、上記内径規制体(33)と上記外径規制体(32)とによって支持されており、上記負荷リング(2)を軸心方向に圧縮した時に生じる負荷リング(2)の径方向内外方への変位を、上記内径規制体(33)と上記外径規制体(32)とによって規制することで、上記シールリング(1)(1)を軸心方向外方へと付勢可能に構成したことを特徴とするシール組立体。
- 上記負荷リング(2)が、軸心方向の圧縮を許容する周方向溝(27)を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかのシール組立体。
- 断面において、組立体中心を通る径方向線に関して対称となることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかのシール組立体。
- 履帯のリンク(5)(5)の重ね合わされる端部に挿通されるピン(8)を備え、一方のリンク(5)が上記ピン(8)に固定されると共に、他方のリンク(5)がこのピン(8)に対して回動可能に支持される履帯連結構造であって、上記ピン(8)に外嵌されてこのピン(8)の外周面側に供給される潤滑油の外部への流出を防止する請求項1〜請求項5のいずれかのシール組立体(S)を有し、上記シール組立体(S)は、軸方向に沿って相対面する径方向壁面(W)(W)間に配置され、シールリング(1)(1)のリップ部(23)(23)が負荷リング(2)からの押圧力にて径方向壁面(W)(W)に圧接されることを特徴とする履帯連結構造。
- 上記他方のリンク(5)に内嵌固定されて上記ピン(8)に対して回動可能となるブッシュ(12)を備え、このブッシュ(12)の端面が上記一方の径方向壁面(W)となることを特徴とする請求項6の履帯連結構造。
- 上記他方のリンク(5)に内嵌固定されて上記ピン(8)に対して回動可能となるブッシュ(12)と、スプロケット(18)側のブッシュ(13)とを備え、ブッシュ(12)(13)間にシール組立体(S)を介設したことを特徴とする請求項6の履帯連結構造。
- 上記負荷リング(2)の内径側に、この負荷リング(2)の径方向内方への変位を規制するリング体(31)を配置したことを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかの履帯連結構造。
- 上記シール組立体(S)の外周側にダストシール用リング(37)を配置したことを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかの履帯連結構造。
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