JP4651237B2 - 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法及び試薬 - Google Patents

還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法及び試薬 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法及び当該方法を用いた物質の測定用試薬に関するものであり、特に臨床検査試薬に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
医療分野において、適切な治療を行うためには正確に生体試料中の物質を精度良く、迅速にかつ簡便に測定する必要があり、種々の試験法、試薬及び分析機器が開発されてきた。最近ではそれら試薬・分析機器を用いて多数の検体を短時間で処理し、自動的に測定結果を得ることが主流となっており、試薬・分析装置の両面で高性能なものが求められている。
【0003】
生体試料中の物質としては酵素(例:トランスアミナーゼ、乳酸脱水素酵素、コリンエステラーゼ、アミラーゼ)、脂質成分(例:コレステロール、中性脂肪)非タンパク性窒素(例:尿素窒素、クレアチニン、クレアチン)その他種々の物質を例示することが出来る。これら測定法の多くは、酵素反応により還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類から酸化型に変換されることにより特定波長の吸光度が減少する性質を用いることにより行われている。また、これら生体試料中の物質の測定には、好適には、NADH、NADPが用いられており、これらを用いた測定法は340nmの吸光度を測定することにより行われる。
例えばアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、乳酸脱水素酵素、尿素窒素などの測定はNADH若しくはNADPHの減少速度若しくは減少量を測定することにより行われる。
また、微量の物質の測定方法として二種類の補酵素の酸化型及び還元型の補酵素を用いて測定するいわゆるサイクリング反応(特開平8−70894)において、NADH若しくはNADPHなどの還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類が用いられている。
【0004】
しかし、NADH、NADPH等の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類は安定性が悪く、定量範囲が狭くなる、分解物が反応の阻害剤になるなどの問題がある。そこで、従来は他の試薬成分と一緒に凍結乾燥された状態で供給され、使用時に緩衝液等で溶解することにより用いられていた。しかし、溶液の状態にすると安定性が悪く溶解後早急に使用する必要があった。さらに、近年ではその調製の手間を省くため凍結乾燥の状態でなく、液状の状態で供給されることが多くなってきた(いわゆる液状試薬)。
還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法が種々検討され、ホウ酸を添加する方法(特開昭62−198697号)、アルカリ性域で保存する方法(特開2000−7696)が開示されているがいずれも十分なものではなく、効果的な安定化方法が望まれていた。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、物質の測定、特に生体試料中に含まれる物質を測定するいわゆる臨床検査試薬に用いられる還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法及び当該方法を用いた測定試薬を提供することに有る。
【0006】
【解決する手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化の為、ピロリン酸若しくはその塩を共存させることにより本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
1.ピロリン酸若しくはその塩と、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類とを共存させることを特徴とする、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法、
2.還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類がNADH若しくはNADPHであることを特徴とする前記1に記載の安定化方法、
3.還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類と、その安定化剤としてのピロリン酸若しくはその塩とを含む試薬、
4.前記試薬が臨床検査試薬であり、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類が、酵素反応を用いた生体試料に含まれる物質の測定方法に用いられる補酵素として含有され、前記測定方法は、前記酵素反応により前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類から酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類へ変換される際の特定波長の吸光度を測定することにより行われる前記3に記載の試薬、
からなる。
【0008】
【発明の実施の態様】
還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類とにしては、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドりん酸(NADPH)を例示することができ、これらは塩または誘導体若しくは修飾されていてもよく、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が例示でき、また、誘導体若しくは修飾の例としてはチオ体などが例示される。
【0009】
ポリりん酸は一般式Hn+23n+1(nは2以上)で表される。一般にはnが2〜6のものが好適に用いられる。又これらnが単独のものを使用しても良いし、また、種々の割合で混合したものを用いても良い。ポリりん酸の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が例示される。
さらに、添加量は0.1〜1000mM、好適には1〜100mMである。
【0010】
本発明のポリりん酸の他に更に他の方法を組合わせても良く例えば公知の方法であるpHをアルカリにする方法、ホウ酸を加える方法などを適宜、組合わせて用いても良い。
【0011】
また、生体試料としては、例えば血清、血漿、尿、リンパ液などを挙げることが出来る。
【0012】
【実施例】
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
【実施例】
尿素窒素測定用試薬を例に実施例を示す。尿素窒素の測定原理を図1に示す。以下に示す組成の試薬を調製し、第一試薬の緩衝液として50mMホウ酸、ポリりん酸、グリシン、CHES、ジエタノールアミン緩衝液を用いてpH8.5〜10.0に調整し、NADPHの30℃での安定性を検討した。なお、NADPHの測定は340nmでの吸光度によりを測定することにより行い、調製当日の吸光度を100%として、相対比率をもとめた。
【0014】
第一試薬
50mM 緩衝液(pH8.5から10.0)
0.3mM β-NADPH
10.0mM α−ケトグルタル酸
40U/mL グルタミン酸脱水素酵素
第二試薬
0.2M トリエタノールアミン塩酸緩衝液(pH7.5)
10.0mM α−ケトグルタル酸
1U/mL ウレア−ゼ
【0015】
表1に示すようにポリりん酸を用いることにより長期間のNADPHの安定化が可能になった。さらに、溶液のpHをアルカリにすることにより安定性が向上した。
【表1】
Figure 0004651237
【0016】
【発明の効果】
臨床検査試薬などに多く利用されている還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法であり、ピロリン酸若しくはその塩と、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類とを共存させることにより、安定化を達成することに成功した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 尿素窒素の測定原理を示す図である。

Claims (4)

  1. ピロリン酸若しくはその塩と、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類とを共存させることを特徴とする還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類の安定化方法。
  2. 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類が還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)若しくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドりん酸(NADPH)であることを特徴とする請求項1に記載の安定化方法。
  3. 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類と、その安定化剤としてのピロリン酸若しくはその塩とを含む試薬。
  4. 前記試薬が臨床検査試薬であり、前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類が、酵素反応を用いた生体試料に含まれる物質の測定方法に用いられる補酵素として含有され、前記測定方法は、前記酵素反応により前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類から酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類へ変換される際の特定波長の吸光度を測定することにより行われる請求項3に記載の試薬。
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