JP4650912B2 - 難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物 - Google Patents

難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性の改良された難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物に関する。更に詳しくは、芳香族ポリカーボネート樹脂と液晶ポリエステルとを用いた難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物に関し、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物と、芳香族硫黄化合物の金属塩あるいはパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩と、あるいはこれらと繊維形成型の含フッ素ポリマーとを併用することにより、塩素、臭素化合物等のハロゲン系難燃剤ならびにりん系難燃剤を含有せずに、芳香族ポリカーボネート樹脂よりも高い流動性を示しながら高度な難燃性を有する難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は、その前述の特徴から難燃性を要求されるコンピュータ、周辺機器等の電子機器のハウジング、とりわけ薄肉のハウジング用途に好適に使用される。
【0003】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性などに優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、機械、自動車などの分野に広く用いられている。しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂はガラス転移温度が高く耐熱性が高いという特徴を有する反面、加工時に充分な流動性が得られない場合が多いという問題があった。一方、芳香族ポリカーボネート樹脂が有するこれらの優れた性能に加えて、電気・電子・OA分野では安全上の要求を満たすためより一層高い難燃性が求められている。そこで、芳香族ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上するために有機臭素化合物などのハロゲン系化合物を配合する方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機臭素化合物などのハロゲン系化合物を配合することから、燃焼時に当該ハロゲンを含むガスが発生する懸念もあり、環境面でも塩素、臭素等を含有しない難燃剤の使用が望まれている。
【0005】
これに対して、シリコーン化合物は耐熱性が高く、燃焼時に有害ガスを発生しにくく、それ自体の安全性も高いため、これを難燃剤として利用しようとする試みもなされてきた。難燃剤としてのシリコーン化合物は、以下に示す4つのシロキサン単位(M単位、D単位、T単位、Q単位)の少なくともいずれかが重合してなるポリマーである。
【0006】
▲1▼ M単位(ここで、Rは官能基を表わす。)
【化6】
Figure 0004650912
【0007】
▲2▼ D単位(ここで、Rは有機官能基を表わす。)
【化7】
Figure 0004650912
【0008】
▲3▼ T単位(ここで、Rは有機官能基を表わす。)
【化8】
Figure 0004650912
【0009】
▲4▼ Q単位
【化9】
Figure 0004650912
【0010】
この内、特にT単位および/またはQ単位を含有すると分岐状構造となる。
【0011】
シリコーン化合物を難燃剤として使用する方法としては、特開平11−158363号公報、特開平9−143369号公報等に記載される如き様々な有機官能基を持つシリコーン化合物が試されてきた。しかしながら、これらは単独の添加では大きな難燃効果を持つものは極めて少なく、電気電子機器関係の厳しい難燃基準を満たすには他の難燃剤を併用する必要があった。これについては、高分子シロキサンとホウ素およびリン含有物質並びに有機クレイ(特開平11−158363号公報)、ポリシロキサンと金属硫化物および元素態硫黄からなる群から選択される少なくとも一種と金属ホウ酸塩、金属ホウリン酸塩および金属リン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種(特開平9−143369号公報)等の併用が挙げられるが、ホウ素化合物は燃焼時に有害なホウ酸化合物が発生する懸念があり、さらにリン化合物も環境への影響といった懸念がある。
【0012】
これに対して、ホウ素化合物およびリン化合物を併用せずに、シリコーン化合物の難燃効果を向上させる試みとして、シリコーン化合物と金属塩を併用する方法も報告されている。これについては、ポリカーボネート樹脂に対して、ポリジメチルシリコーンと金属水酸化物と亜鉛化合物(特開平2−150436号公報)、ポリジメチルシリコーンと有機酸のIIa族金属塩(特開昭56−100853号公報)、シリコーンレジン特にM単位とQ単位で表されるものとシリコーンオイルおよび有機酸のIIa族金属塩(特公平3−48947号公報)等の併用が挙げられるが、いずれも難燃性の面で効果に劣り、添加量の大幅な削減も困難であるという根本的な問題があった。
【0013】
さらに、エポキシ基(γ−グリシドキシプロピル基)とフェニル基および/またはビニル基を持つオルガノポリシロキサンと有機スルホン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩等を併用させたもの(特開平8−176425号公報)も報告されているが、このシリコーン化合物の場合、反応性の高いエポキシ基やビニル基があるため、プラスチックス、特にポリカーボネート樹脂と混練中にシリコーン化合物同士の反応が起こり高分子化(ゲル化)してしまうので、ポリカーボネート樹脂と均一な混練ができにくく、また全体的な粘度も上昇してしまい、その結果、芳香族ポリカーボネート樹脂の成形性、特に成形体表面の剥離やヒケ、ムラが生じてしまうといった課題がある。さらに、このゲル化のため、シリコーン化合物の芳香族ポリカーボネート樹脂中での分散性が不十分となって、その結果、顕著な難燃効果を発現するのが困難であり、また成形体の衝撃強度等の強度特性も低下してしまう問題も生じる。
【0014】
これらに対し、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基中に芳香族基を持つシリコ−ン樹脂(特開平10−139964)が芳香族ポリカーボネート樹脂などの、芳香環を有する非シリコーン樹脂の難燃化に有効であると記載されているが、芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性を向上するまでには至っていない。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の問題点に鑑み鋭意研究した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に液晶ポリエステルを配合し、さらに特定のシリコ−ン化合物からなる難燃剤と特定の金属塩化合物とを併用し、さらに所望によってはこれらに繊維形成型の含フッ素ポリマーを使用することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂よりも高い流動性を有しながら、高度な難燃性を備えた薄肉ハウジング用途に適する難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
また、本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を含有しないことから、燃焼時に当該ハロゲン系難燃剤に起因するハロゲンを含むガスの発生の懸念もなく、環境保護の面においても優れた性能を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0019】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0020】
これらは、単独または2種類以上混合して使用されるが、ハロゲンで置換されていない方が燃焼時に懸念される当該ハロゲンを含むガスの環境への排出防止の面から好ましい。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0021】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0022】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000である。かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0023】
本発明にて使用される液晶ポリエステル(B)とは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルである。具体的には、(1)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸との組み合わせからなるもの、(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸の組み合わせからなるもの、(3)芳香族ジカルボン酸と核置換芳香族ジオールとの組み合わせからなるもの、(4)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるものなどが挙げられ、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。
【0024】
該液晶ポリエステルの繰返し構造単位としては下記のものを例示することができる。
【0025】
芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し構造単位:
【化10】
Figure 0004650912
【0026】
【化11】
Figure 0004650912
【0027】
芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位:
【化12】
Figure 0004650912
【0028】
【化13】
Figure 0004650912
【0029】
【化14】
Figure 0004650912
【0030】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位:
【化15】
Figure 0004650912
【0031】
耐熱性、機械的特性、加工性および難燃性のバランスから特に好ましい液晶ポリエステルは、下記一般式(1)からなる繰返し構造単位を好ましくは30モル%以上含むものである。
【0032】
一般式(1)
【化16】
Figure 0004650912
【0033】
具体的には繰返し構造単位の組み合わせが下記(I)〜(VI)のものである。
【0034】
(I)
【化17】
Figure 0004650912
【0035】
(II)
【化18】
Figure 0004650912
【0036】
(III)
【化19】
Figure 0004650912
【0037】
(IV)
【化20】
Figure 0004650912
【0038】
(V)
【化21】
Figure 0004650912
【0039】
(VI)
【化22】
Figure 0004650912
【0040】
該液晶ポリエステル(I)〜(VI)の製法については、例えば特公昭47−47870号公報、特公昭63−3888号公報、特公昭63−3891号公報、特公昭56−18016号公報、特平2−51523号公報などに記載されている。これらの中で好ましくは(I)、(II)、(IV)の組合せであり、さらに好ましくは(I)、(II)の組合せである。
【0041】
これらの液晶ポリエステルは、本難燃性ポリカーボネート系樹脂の流動性の改良に著しい効果がある。特に、液晶ポリエステル自体の流動性が高い、すなわち溶融時の粘度がより低い液晶ポリエステルの使用が一層効果的である。
【0042】
液晶ポリエステルの流動性は、一般に流動開始温度で示される。流動開始温度とは、WO97/15631号公報(第13頁)に示されているように、4℃/分の昇温速度で加熱された液晶ポリエステルを100kgf/cm2の荷重下で、内径1mm、長さ10mmのノズルから押出したときに、溶融粘度が48000ポイズを示す温度をいう。
【0043】
本難燃性ポリカーボネート系樹脂に使用する液晶ポリエステルの流動開始温度は、ポリカーボネート樹脂の一般的な加工温度の範囲以下であることが好ましい。液晶ポリエステルの流動開始温度が、ポリカーボネート樹脂の一般的な加工温度よりも高い場合、流動性改良の効果が不十分な場合があり、加えて機械的強度が低下したり、成形体表面に剥離やムラが発生しやすくなる場合がある。さらに、液晶ポリエステルの流動開始温度が、ポリカーボネート樹脂の一般的な加工温度よりも極端に低い場合、液晶ポリエステルの耐熱性が低下する場合があり、その結果、本発明の組成物の十分な耐熱性を発現しにくくなる場合がある。
【0044】
上記範囲の該液晶ポリエステルと本発明の特定のシリコーン化合物(C)とを併用した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、成形体表面に剥離やムラなどを発生せずに高い流動性と高い難燃性を併せて発揮することができる。
【0045】
本発明における芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物において、高い耐熱性が要求される分野には、液晶ポリエステル(B)が、下記の繰返し単位(a’)が30〜80モル%、繰返し単位(b’)が0〜10モル%、繰返し単位(c’)が10〜25モル%、繰返し単位(d’)が10〜35モル%からなる液晶ポリエステルが好ましく使用される。
【0046】
【化23】
Figure 0004650912
(式中、Arは、2価の芳香族基である。)
【0047】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)の使用割合は、(A)/(B)重量比で99/1〜50/50、好ましくは98/2〜60/40、さらに好ましくは95/5〜65/35である。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の使用割合が99重量%を超えると得られる組成物の成形流動性が不充分である場合が多く、50重量%未満であると優れた難燃性が得られない場合があり、好ましくない。
【0048】
本発明にて使用されるシリコーン化合物(C)としては、下記一般式(6)に示されるような、主鎖が分岐構造でかつ有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるものである。
【0049】
一般式(6)
【化24】
Figure 0004650912
【0050】
すなわち、分岐単位として T単位および/またはQ単位を持つことを特徴とする。これらは全体のシロキサン単位の20モル%以上含有することが好ましい。20モル%未満であると、シリコーン化合物(C)の耐熱性が低下してその難燃性の効果が下がり、またシリコーン化合物(C)自体の粘度が低すぎてポリカーボネート樹脂(A)および/または液晶ポリエステル(B)との混練性や成形性に悪影響を及ぼす場合がある。さらに好ましくは30〜95モル%である。30モル%以上だとシリコーン化合物(C)の耐熱性が一層上がり、これを含有した芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)の混合物からなる芳香族ポリカーボネート系樹脂の難燃性が大幅に向上する。しかし、95モル%を越えるとシリコーンの主鎖の自由度が減少して、燃焼時の芳香族基の縮合が生じにくくなる場合があり、顕著な難燃性を発現しにくくなる場合がある。
【0051】
また、シリコーン化合物(C)は、含有される有機官能基のうち芳香族基が20モル%以上であることが好ましい。この範囲以下であると、燃焼時に芳香族基同士の縮合が起こりにくくなり難燃効果が低下する場合がある。さらに好ましくは40〜95モル%である。40モル%以上だと燃焼時の芳香族基が一層効率的に縮合できると同時に、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)の混合物からなる芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物中でのシリコーン化合物(C)の分散性が大幅に改良され、極めて良好な難燃効果を発現できる。しかし95モル%を超えると芳香族基同士の立体障害により、これらの縮合が生じにくくなる場合があり、顕著な難燃効果を発現できにくくなる場合がある。
【0052】
この含有される芳香族基としては、フェニル、ビフェニル、ナフタレンまたはこれらの誘導体であるが、シリコーン化合物(C)の安全面からは特にフェニル基が好ましい。
【0053】
シリコーン化合物(C)中の有機官能基で、主鎖や分岐した側鎖に付いたもののうち芳香族基以外の有機基としては、炭素数4以下の炭化水素基が難燃化効果の点から好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0054】
さらに、末端基はメチル基、フェニル基、水酸基の内から選ばれた1種またはこれらの2種から3種までの混合物であることが好ましい。これらの末端基の場合、反応性が低いため芳香族ポリカーボネート樹脂(A)および液晶ポリエステル(B)とシリコーン化合物(C)の混練時に、シリコーン化合物(C)のゲル化(架橋化)が起こりにくいので、シリコーン化合物(C)が芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物中に均一に分散でき、その結果、一層良好な難燃効果を持つことができ、さらに成形性も向上する。特に好ましくは、メチル基である。これの場合、極端に反応性が低いので、分散性が極めて良好になり、難燃性をさらに向上することができる。
【0055】
シリコーン化合物(C)の平均分子量(重量平均)は、好ましくは3000〜50万である。3000未満だと難燃性の効果が低下し、さらに溶融粘度が低すぎて成形時に芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)の混合物からなる芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の成形体表面にシリコーン化合物が浸み出して成形性を低下させる場合があり、また50万を超えると溶融粘度が増加して芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物中での均一な分散が損なわれ難燃性の効果や成形性が低下する場合がある。特に好ましくは5000〜27万である。この範囲ではシリコーン化合物(C)の溶融粘度が最適となるため、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)の混合物からなる芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物中でシリコーン化合物(C)が極めて均一に分散でき、一層良好な難燃性と成形性を達成できる。
【0056】
シリコーン化合物(C)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)とからなる樹脂混合物100重量部あたり0.01〜8重量部が好ましい。配合量が0.01重量部未満では難燃効果が不十分な場合があり、また8重量部を超えると成形品表面に表層剥離が発生し外観に劣る場合がある。より好ましくは、0.1〜5重量部、更に好ましくは0.5〜2重量部の範囲である。この範囲では、難燃性と成形性、さらに衝撃強度のバランスが一層良好となる。
【0057】
本発明にて使用される芳香族硫黄化合物の金属塩(D)としては、下記一般式(7)または一般式(8)に示される芳香族スルホンアミドの金属塩または下記一般式(9)に示される芳香族スルホン酸の金属塩である。
【0058】
一般式(7)
【化25】
Figure 0004650912
(一般式(7)において、Arはフェニル基または置換フェニル基を、Mは金属陽イオンを表わす。)
【0059】
一般式(8)
【化26】
Figure 0004650912
(一般式(8)において、Arはフェニル基または置換フェニル基を、R'はスルホニルまたはカルボニルを含む有機基を、Mは金属陽イオンを表わす。ただし、ArとRとが結合しても良い。)
【0060】
一般式(9)
【化27】
Figure 0004650912
(一般式(9)において、R' およびR'' は炭素原子が1〜6個の脂肪族基あるいは1〜2個のフェニル基または置換フェニル基を、AはSO3M(Mは、金属陽イオン)基を表わす。)
【0061】
芳香族スルホンアミドの金属塩の好ましい例としては、サッカリンの金属塩、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドの金属塩、N−(N′−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドの金属塩およびN−(フェニルカルボキシル)−スルファニルイミドの金属塩が挙げられる。また、芳香族スルホン酸の金属塩としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸の金属塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸の金属塩およびジフェニルスルフォン−3,4′−ジスルホン酸の金属塩が挙げられる。これらは、一種もしくはそれ以上を併用して使用しても良い。
【0062】
好適な金属としては、ナトリウム、カリウム等のI族の金属(アルカリ金属)、またはII族の金属ならびに銅、アルミニウム等が挙げられ、特にアルカリ金属が好ましい。
【0063】
これらのうちでも特に、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドのカリウム塩、N−(N′−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドのカリウム塩またはジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩が好適に用いられ、さらに好ましくは、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドのカリウム塩、N−(N′−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドのカリウム塩である。
【0064】
芳香族硫黄化合物の金属塩(D)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)とからなる樹脂混合物100重量部に対し0.01〜5重量部好ましい。配合量が0.01重量部未満の場合には顕著な難燃効果を得るのが困難な場合があり、また5重量部を超えると射出成形時の熱安定性に劣る場合があるため、その結果、成形性および衝撃強度に悪影響を及ぼす場合がある。より好適には、0.01〜2重量部、更に好適には0.02〜0.4重量部の範囲である。この範囲では特に、難燃性、成形性および衝撃強度のバランスが一層良好となる。
【0065】
本発明にて使用される、繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)とからなる樹脂混合物中で繊維構造(フィブリル状構造)を形成するものがよく、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、等)、米国特許第4379910号に示される様な部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート等が挙げられる。
【0066】
これらは、本発明のシリコーン化合物(C)と芳香族硫黄化合物の金属塩(D)またはシリコーン化合物(C)とパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)の併用系に併せて使用した場合、従来のドリッピング防止効果だけでなく、特異的に燃焼時間の低減にも効果がある。
【0067】
繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)とからなる樹脂混合物中100重量部に対し、0.05〜5重量部である。配合量が0.05重量部未満では燃焼時のドリッピング防止効果に劣る場合があり、かつ5重量部を超えると造粒が困難となることから安定生産に支障をきたす場合がある。より好適には、0.05〜1重量部、更に好適には0.1〜0.5重量部の範囲である。この範囲では、難燃性、成形性および衝撃強度のバランスが一層良好となる。
【0068】
本発明にて使用されるパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)としては、下記一般式(10)に示されるパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩である。
【0069】
一般式(10)
【化28】
Figure 0004650912
(一般式(10)において、Mは金属陽イオン、nは1〜8の整数を表わす。)
【0070】
パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)の好ましい例としては、パーフルオロメタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロエタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロプロパンスルホン酸の金属塩、パーフルオロブタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロメチルブタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロヘキサンスルホン酸の金属塩、パーフルオロヘプタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸の金属塩が挙げられる。これらは、一種もしくはそれ以上を併用して使用しても良い。また、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)は、前述の芳香族硫黄化合物の金属塩(D)と併用して使用しても良い。
【0071】
パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)に用いられる好適な金属としては、ナトリウム、カリウム等のI族の金属(アルカリ金属)、またはII族の金属ならびに銅、アルミニウム等が挙げられ、特にアルカリ金属が好ましい。
【0072】
これらのうちでも特に、パーフルオロブタンスルホン酸のカリウム塩が好適に用いられる。
【0073】
パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)とからなる樹脂混合物中100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましい。配合量が0.01重量部未満の場合には顕著な難燃効果を得るのが困難な場合があり、また5重量部を超えると射出成形時の熱安定性に劣る場合があるため、その結果、成形性および衝撃強度に悪影響を及ぼす場合がある。より好適には、0.01〜2重量部、更に好適には0.02〜0.4重量部の範囲である。この範囲では特に、難燃性、成形性および衝撃強度のバランスが一層良好となる。
【0074】
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)とからなる樹脂混合物中に各種の熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、蛍光増白剤、充填材、分散助剤、離型剤、軟化材、帯電防止剤等の添加剤、衝撃性改良材、他のポリマーを配合しても良い。
【0075】
熱安定剤としては、例えば硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素リチウム等の硫酸水素金属塩および硫酸アルミニウム等の硫酸金属塩等が挙げられる。これらは、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と液晶ポリエステル(B)からなる樹脂混合物100重量部に対して、通常0〜0.5重量部の範囲で用いられる。
【0076】
充填材としては、例えばガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、タルク粉、クレイ粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、ワラストナイト粉、シリカ粉、アルミナ粉等が挙げられる。
【0077】
分散助剤としては、りん化合物、りん酸化合物、亜りん酸化合物、エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー、アイオノマーなど、ポリカーボネート樹脂中での液晶ポリエステルの分散性を向上できる公知の分散助剤が挙げられる。
【0078】
衝撃性改良材としては、例えばアクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、コアシェル型のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン系ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0079】
他のポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体とこれのアクリルゴム変成物、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリプロピレン、さらにポリカーボネートとアロイ化して通常使用されるポリマーが挙げられる。
【0080】
さらに必要に応じて、他の難燃剤、例えばりん化合物、金属水和物、窒素化合物等も添加できるが、これらの添加量は通常の使用よりも大幅に削減できる。
【0081】
本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物中の各種配合成分の混合方法には、特に制限はなく、公知の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー等による混合や押出機による溶融混練が挙げられる。
【0082】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に制限されるものではない。尚、「部」は重量基準に基づく。
【0083】
(実施例1〜10および比較例1〜10)
ビスフェノールAから製造された芳香族ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製カリバー200−20、粘度平均分子量19000、以下PCと略記)と、液晶ポリエステル(住友化学社製スミカスーパーLCP E7000、以下LCP1と略記)の樹脂混合物100部に対し、硫酸水素カリウム0.03部と各種配合物を表2〜3に示す配合量に基づき37mm径の二軸押出機(神戸製鋼所製KTX−37)を用いて、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、各種ペレットを得た。
【0084】
使用された配合成分の詳細は、それぞれ次のとおりである。
1.シリコーン化合物(C)
シリコーン化合物(C)は、一般的な製造方法に従って製造した。すなわち、シリコーン化合物成分の分子量およびシリコーン化合物を構成するM単位、D単位、T単位およびQ単位の割合に応じて、適量のジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシランおよびテトラクロロシラン、あるいはそれらの部分加水分解縮合物を有機溶剤中に溶解し、水を添加して加水分解して、部分的に縮合したシリコーン化合物を形成し、さらにトリオルガノクロロシランを添加して反応させることによって重合を終了させ、その後、溶媒を蒸留等で分離した。上記方法で合成された9種のシリコーン化合物の構造特性を表1に示す。
【0085】
【表1】
Figure 0004650912
*:フェニル基は、T単位を含むシリコーン中ではT単位にまず含まれ、残った場合がD単位に含まれる。D単位にフェニル基が付く場合、1個付くものが優先し、さらにフェニル基が残余する場合に2個付く。末端基を除き、有機官能基は、フェニル基以外は全てメチル基である。
**:重量平均分子量は、有効数字2桁。
【0086】
2.芳香族硫黄化合物の金属塩(D)
N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドのカリウム塩(以下、D−1と略記)
ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム(以下、D−2と略記)
【0087】
3.繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)
ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製ポリフロンFA−500)
(以下、PTFEと略記)
【0088】
4.パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)
パーフルオロブタンスルホン酸のカリウム塩(以下、Fと略記)
【0089】
得られた各種ペレットを125℃で4時間、乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼社製J100−E−C5)を用いて300℃、射出圧力1600Kg/cm2にて難燃性評価用の試験片(125x13x0.8mmおよび125x13x1.2mm)を成形した。
【0090】
該試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、以下のクラスに分けられる。
Figure 0004650912
上に示す残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片が有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
【0091】
また、成形品の外観についても、難燃性を評価する前に、試験片(125x13x0.8mm)を目視で判定し、表層剥離や表面のムラの有無を評価した。
【0092】
さらに、各種ペレットを125℃で4時間、乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼社製J100−E−C5)を用いて300℃、射出圧力1600Kg/cm2にて1mm厚みでのスパイラルフロー値を測定し、流動性を評価した。結果をそれぞれ表2〜3に示す。
【0093】
尚、表2〜3において、シリコーン、金属塩およびPTFEの数値は、PCとLCP1の混合物100部に対する添加部数を示す。成形性は、成形試験片の表層剥離や表面のムラ、ヒケの発生を評価した。(評価基準:◎は発生せず、○は5試料中1〜2試料で発生、×は5試料中3試料以上で発生。)
【0094】
【表2】
Figure 0004650912
【0095】
【表3】
Figure 0004650912
【0096】
実施例1〜10および比較例1〜10に示すように、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に、液晶ポリエステル(B)、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)および芳香族硫黄化合物の金属塩、またはパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩を添加してなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂組成物は、これらの添加剤の全てを含まない芳香族ポリカーボネート樹脂(比較例1)、液晶ポリエステルを含まない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(比較例2)、芳香族ポリカーボネート樹脂と液晶ポリエステルの混合物(比較例3)、シリコーン化合物と芳香族硫黄化合物の金属塩を併せ持たない芳香族ポリカーボネート樹脂と液晶ポリエステルの混合物(比較例4〜7)、および本発明以外の構造のシリコーン化合物を添加した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物(比較例8〜10)よりも極めて大きな難燃効果を発揮した。さらに、実施例2と比較例2に示すように、液晶ポリエステルの併用によって、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物の流動性を向上できた。
【0097】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物は、塩素、臭素化合物等からなるハロゲン系難燃剤を含まないことから燃焼時に当該難燃剤に起因するハロゲンを含むガスの発生の懸念もなく、環境保護の面においても優れた性能を持ち、高度な難燃性と高流動性を備えた薄肉ハウジング用の電気・電子部品用の素材として好適に用いることができる。

Claims (18)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜99重量%と液晶ポリエステル(B)50〜1重量%とからなる樹脂混合物100重量部に対し、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.01〜8重量部および芳香族硫黄化合物の金属塩(D)0.01〜5重量部を配合してなることを特徴とする難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  2. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜99重量%と液晶ポリエステル(B)50〜1重量%とからなる樹脂混合物100重量部に対し、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.01〜8重量部、芳香族硫黄化合物の金属塩(D)0.01〜5重量部および繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)0.05〜5重量部を配合してなることを特徴とする難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  3. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜99重量%と液晶ポリエステル(B)50〜1重量%とからなる樹脂混合物100重量部に対し、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.01〜8重量部およびパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)0.01〜5重量部を配合してなることを特徴とする難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  4. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜99重量%と液晶ポリエステル(B)50〜1重量%とからなる樹脂混合物100重量部に対し、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.01〜8重量部、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)0.01〜5重量部および繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)0.05〜5重量部を配合してなることを特徴とする難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  5. 液晶ポリエステル(B)が、下記一般式(1)に記載の繰返し構造単位を少なくとも全体の30モル%含むものであることを特徴とする請求項1〜4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
    一般式(1)
    Figure 0004650912
  6. 液晶ポリエステル(B)が、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1〜4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  7. 液晶ポリエステル(B)が、下記一般式(2)に記載の繰返し単位からなるものであることを特徴とする請求項1〜4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
    一般式(2)
    Figure 0004650912
  8. 液晶ポリエステル(B)が、下記一般式(3)記載の繰返し単位からなるものであることを特徴とする請求項1〜4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
    一般式(3)
    Figure 0004650912
  9. 液晶ポリエステル(B)が、下記一般式(4)記載の繰返し単位からなるものであることを特徴とする請求項1〜4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
    一般式(4)
    Figure 0004650912
  10. 液晶ポリエステル(B)が、下記一般式(5)に記載の繰返し単位からなるものであることを特徴とする請求項1〜4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
    一般式(5)
    Figure 0004650912
  11. 主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)が、式RSiO1.5の単位(T単位)および/または式SiO2.0の単位(Q単位)を全体のシロキサン単位(R3 0SiO2 0.5)に対して20モル%以上含有することを特徴とする請求項1〜4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。(Rは有機官能基を表わす。)
  12. 主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)が、含有される有機官能基のうち芳香族基が20モル%以上であることを特徴とする請求項1〜4または請求項11に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  13. 主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)が、含有される有機官能基のうち芳香族基がフェニル基であり、残りがメチル基であり、また末端基がメチル基、フェニル基、水酸基の内から選ばれた1種またはこれらの2種から3種までの混合物であることを特徴とする請求項1〜4、請求項11または請求項12に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  14. 芳香族硫黄化合物の金属塩(D)が、芳香族スルホンアミドの金属塩または芳香族スルホン酸の金属塩であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  15. 芳香族硫黄化合物の金属塩(D)が、サッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N′−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドおよびN−(フェニルカルボキシル)−スルファニルイミド、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸およびジフェニルスルホン−3,4′−ジスルホン酸から選択される1種もしくは2種以上の金属塩である請求項1、請求項2または請求項14に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  16. 芳香族硫黄化合物の金属塩(D)の金属が、アルカリ金属であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項14または請求項15に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  17. 繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)が、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項2または請求項4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  18. パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩(F)の金属が、アルカリ金属であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物。
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