JP4648518B2 - 4−ビフェニル酢酸含有貼付剤 - Google Patents

4−ビフェニル酢酸含有貼付剤 Download PDF

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Description

【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、基剤中にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、N−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコール、および4−ビフェニル酢酸を必須成分として含有し、治療に用いられる消炎鎮痛貼付剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
非ステロイド系消炎鎮痛剤である4−ビフェニル酢酸の投与方法としては、全身性の副作用を避けるため早くから、ゲル剤が開発され、臨床的に使用されている。しかしながらゲル剤にあっては、投与時に衣服を汚すこと、また投与を頻繁に行わなくてはならないこと、さらに投与量が一定でない等の短所があり、それを改善した4−ビフェニル酢酸の成形パップ剤(特開平03−193728)が開発され、市販されてきている。
【0003】
この成形パップ剤は、粘着力、薬効の持続性においてほぼ満足できる製剤となっているが、粘着力や薬効の持続性について更なる向上が望まれている。しかしながらパップ剤としては、その粘着力の限界等に問題があり、これらの問題を解決するために、油性テープを使用した貼付製剤の提案がなされている(特開平04−321624)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記で提案されているテープ剤処方においては、薬効成分の4−ビフェニル酢酸に対する溶解剤としてクロタミトンを使用しているが、クロタミトンに対する4−ビフェニル酢酸の溶解度は約7%程度であり、少量の溶解剤では未だ4−ビフェニル酢酸の溶解が不十分である。そのうえ、練合された基剤中に4−ビフェニル酢酸の結晶の析出が認められ、その結果、薬物の吸収性、持続性等に問題があった。一方、高濃度のクロタミトンを添加した場合には、凝集力が低下して肌に膏体が残る等の問題があり、またクロタミトンに由来する皮膚刺激が発現する等の問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点を解決すべく鋭意研究した結果、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、N−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコールを必須成分とする基剤に4−ビフェニル酢酸を必須成分とし配合することにより、上述したような問題を一挙に解決しうることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体5〜50重量%、N−メチル−2−ピロリドン0.05〜20重量%、ポリエチレングリコール0.1〜20重量%、および4−ビフェニル酢酸0.1〜20重量%を必須成分として含有する貼付剤を提供する。
【0007】
また本発明は、より具体的な態様としてそのなかでも、N−メチル−2−ピロリドンとポリエチレングリコールの配合重量比が1:0.1〜1:5である上記貼付剤を提供する。
【0008】
さらに本発明は、ポリエチレングリコールが常温で液状〜半固形状であるものを使用した上記貼付剤を提供する。
【0009】
すなわち本発明は、難溶性薬物である4−ビフェニル酢酸に対する溶解剤として、これまで何ら検討されていなかったN−メチル−2−ピロリドンおよびポリエチレングリコールの混合液を用いることにより、4−ビフェニル酢酸を完全に溶解し、且つ基剤としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いる点に特徴を有するものであり、かかる特徴点により、基剤中に含有される薬物を安定的に、かつ長時間放出することができるのである。
【0010】
特に、溶解剤としてN−メチル−2−ピロリドンを単独で使用した場合には、4−ビフェニル酢酸に対する溶解性は非常に優れているものの、投与直後に急激に薬物が放出されて、長時間放出が持続されない、いわゆるバーストの現象が起こる。一方、ポリエチレングリコールを溶解剤として単独に使用した場合には、その溶解性は充分でなく、基剤中に結晶の析出が認められ薬物の放出も充分ではない。
【0011】
しかしながら、溶解剤としてN−メチル−2−ピロリドンとポリエチレングリコールを組み合わせることにより、4−ビフェニル酢酸を完全に溶解し、且つ投与直後の薬物の急激な放出を抑制し得ることを見出した。
【0012】
さらに本発明に使用される溶解剤のN−メチル−2−ピロリドンおよびポリエチレングリコールの混合液は、皮膚刺激性が低く、その結果これらの構成成分より作製される貼付剤は皮膚刺激がきわめて低いことが判明した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の貼付剤に用いるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の配合量は5〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%である。5重量%より少ない場合には基剤の凝集力が充分でなく、肌に基剤が残るという問題が起き、また50重量%を超える場合には、凝集力が高すぎて粘着力の低下、あるいは練合作業性の低下を招く。
【0014】
一方、溶解補助剤としてのN−メチル−2−ピロリドンの配合量は0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。0.05重量%未満では溶解剤として意味がなく、また20重量%を超える量では基剤の凝集力の低下を招く。
【0015】
ポリエチレングリコールは常温で液状〜半固形のものが用いられる。具体的にはポリエチレングリコール200,ポリエチレングリコール400,ポリエチレングリコール1000,ポリエチレングリコール1500等が用いられる。
【0016】
ポリエチレングリコールの配合量は0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。0.1%未満では4−ビフェニル酢酸の持続的な放出は認められず、20重量%を超える量の配合は、基剤との相溶性が悪くなる。
【0017】
これらのN−メチル−2−ピロリドンとポリエチレングリコールの配合重量比は、1:0.1〜1:5であり、好ましくは1:0.5〜1:3である。N−メチル−2−ピロリドンに対するポリエチレングリコールの配合比が0.1未満であると、N−メチル−2−ピロリドンに対する4−ビフェニル酢酸の溶解性が高まりすぎ、薬物が急激に放出されて持続的な放出が不可能になる。また、N−メチル−2−ピロリドンに対するポリエチレングリコールの配合比が5を超える場合には、4−ビフェニル酢酸の放出を高めることが困難になる。
【0018】
4−ビフェニル酢酸の配合量は0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%の範囲で配合される。0.1重量%未満では充分な薬効が発現せず、また10重量%を超える量を配合しても、薬効の差は認められず、薬物の無駄使いとなる。
【0019】
本発明が提供する貼付剤にあっては、上記の成分のほかに、通常貼付剤を製造する際に使用される慣用の成分を適宜添加することができる。そのような成分としては、例えば流動パラフィン、ラノリン等の軟化剤、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコン;荒川化学)、テルペン樹脂(YSレジン;安原樹脂)、水素添加ロジングリセリンエステル(エステルガム;荒川化学)等の粘着付与剤、ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、酸化チタン、二酸化ケイ素等の充填剤、l−メントール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン等の刺激剤を挙げることができる。
【0020】
本発明の貼付剤に使用される支持体は、特に限定されるものではないが、軟化剤、溶解剤等の吸着がないものが好ましい。例えば、伸縮性あるいは伸縮性を有しない織布、不織布、合成樹脂フィルムが用いられる。
【0021】
本発明に使用される剥離ライナーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、紙等が用いられる。剥離ライナーには剥離力を至適にするために、必要に応じてシリコーン処理を施すことができる。
【0022】
本発明の貼付剤の調製は、例えば以下のようにして行われる。すなわち、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、軟化剤、粘着付与剤、抗酸化剤および充填剤等を攪拌機中で150〜200℃にて加熱溶解し、そこにN−メチル−2−ピロリドンおよびポリエチレングリコールに溶解した4−ビフェニル酢酸を添加し、更に均一になるまで攪拌し均一な膏体を得る。なお、4−ビフェニル酢酸の溶解液の添加に際しては、80〜120℃程度の温度範囲内で行う方がよい。
【0023】
かくして調製された膏体を、ライナー上に50〜300g/m2になるよう塗布し、支持体をラミネートする。このようにして調製した薬物保持層を有する支持体を、所望の大きさに裁断して本発明の貼付剤を得ることができる。
【0024】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、特にことわらない限り「重量部」である。
【0025】
上記した製造法に基づき、以下の実施例1〜実施例4の処方により、本発明の貼付剤を得た。
【0026】
Figure 0004648518
【0027】
Figure 0004648518
【0028】
Figure 0004648518
【0029】
Figure 0004648518
【0030】
Figure 0004648518
【0031】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、軟化剤および抗酸化剤を所定の割合で加え混合物となし、窒素気流下にて110〜200℃、60分間加熱攪拌して溶解物とする。次に、有効成分およびクロタミトンの混合物を前記溶解物に加え20分間混合して均一な混合物を得る。次に、塗工機でこの混合物を支持体上に任意の厚さで塗工する。その上にライナーを貼り合わせ、所望の大きさに切断し、比較例の貼付剤とした。
【0032】
Figure 0004648518
【0033】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、軟化剤、粘着付与剤および抗酸化剤を所定の割合で加え混合物となし、窒素気流下にて110〜200℃、60分間加熱攪拌して溶解物とする。次に、有効成分およびクロタミトンの混合物を前記溶解物に加え20分間混合して均一な混合物を得る。次に、塗工機でこの混合物を支持体上に任意の厚さで塗工する。その上にライナーを貼り合わせ、所望の大きさに切断し、比較例の貼付剤とした。
【0034】
Figure 0004648518
【0035】
上記の処方により、比較例2の製造法に従い作製し、比較例の貼付剤を得た。
【0036】
Figure 0004648518
【0037】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、軟化剤、粘着付与剤、抗酸化剤および充填剤等を攪拌機中で150〜200℃にて加熱溶解し、N−メチル−2−ピロリドンに混合した4−ビフェニル酢酸を添加し更に均一になるまで攪拌し均一な膏体を得る。なお、4−ビフェニル酢酸の溶解液を添加する時の温度は、80〜120℃の範囲で行った。次いで、この膏体を用い、定法により比較例の貼付剤を得た。
【0038】
Figure 0004648518
【0039】
上記の処方により、比較例4の製造法に従い膏体を作製し、比較例の貼付剤を得た。但し、溶解剤としてN−メチル−2−ピロリドンの代わりにポリエチレングリコールを用いた。
【0040】
上記で得られた本発明の貼付剤について、その皮膚刺激性、膏体中での4−ビフェニル酢酸の析出の有無、ラットを用いた薬物放出性試験を、比較例の貼付剤との比較により検討した。その試験の結果を以下に記載する。
【0041】
試験例1:ウサギ皮膚一次刺激性試験
日本白色雌性ウサギ9匹を一群として用い試験を行った。ウサギの背部被毛を除毛後、1匹当たり左右2ヶ所づつ、計4ヶ所を貼付部位とした。右側2ヶ所を健常部位とし、左2ヶ所を損傷部位とした。損傷部位は注射針で#型に損傷させた。2.5cm×2.5cmに切断した実施例1、実施例2、比較例2および比較例3の貼付剤を貼付し、絆創膏で固定し、更に保護衣を装着して貼付剤の移動を防止した。貼付24時間後に各貼付剤を取り除き、その後1時間、24時間、48時間および72時間目に皮膚反応を観察した。
【0042】
判定は、以下の表1に記載するDraizeの判定基準に従って行い、貼付剤除去後1時間目および48時間目の判定から、皮膚一次刺激指数(P.I.I.)を算出した。
また、各貼付剤の安全性は、表2に記載する安全性評価区分を用いて評価した。
その結果を表3に示した。
【0043】
【表1】
表1:Draizeの判定基準
Figure 0004648518
【0044】
【表2】
表2:安全性評価区分
Figure 0004648518
【0045】
【表3】
Figure 0004648518
【0046】
表3の結果から明らかなように、本発明による貼付剤については、問題となるような皮膚刺激は認められなかった。
【0047】
試験例2:4−ビフェニル酢酸の結晶観察試験
膏体中の4−ビフェニル酢酸の溶解状態を検討するために、膏体をプレパラートに薄く延ばし、偏光顕微鏡(Nikon OPTIPHOTO 02−POL)で結晶の有無を観察した。
その結果を表4に示した。
【0048】
【表4】
Figure 0004648518
【0049】
表4の結果から明らかなように、本発明による貼付剤は、基剤中に4−ビフェニル酢酸の結晶は全く認められなかった。
【0050】
試験例3:ラット血中濃度測定試験
5〜6週令ウイスター系雄性ラットの背部を除毛後、皮膚に異常のない5匹のラットを一群として試験に用いた。除毛された皮膚に、2×3cm2に切断した実施例2、比較例2、比較例4および比較例5の貼付剤を投与し、0、2、8、24時間目に0.5mlずつ採血し、高速液体クロマトグラフィーで血中の4−ビフェニル酢酸量を測定した。
その結果を図1に示した。
【0051】
図1の結果から明らかなように、本発明による貼付剤は薬物が高濃度に持続的かつ長時間にわたり吸収されていた。
【0052】
以上の各試験結果に示した通り、本発明が提供する貼付剤は、従来の貼付剤に比較して薬物の放出性、持続性が改善され、更に皮膚刺激が低減され安全性が高いことが判明する。
【0053】
【発明の効果】
本発明が提供する貼付剤は、4−ビフェニル酢酸の溶解剤にN−メチル−2−ピロリドンおよびポリエチレングリコールの混合液を用いることにより、従来の貼付剤に比較して薬物の放出性、持続性が改善されており、更に皮膚刺激が低減された安全性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例3に記載した、ラット血中濃度測定試験の結果を示すグラフである。

Claims (3)

  1. スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体5〜50重量%、N−メチル−2−ピロリドン0.05〜20重量%、ポリエチレングリコール0.1〜20重量%、および4−ビフェニル酢酸0.1〜20重量%を必須成分として含有する貼付剤。
  2. N−メチル−2−ピロリドンとポリエチレングリコールの配合重量比が1:0.1〜1:5である請求項1に記載の貼付剤。
  3. 該ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、およびポリエチレングリコール1500よりなる群より選択されるものである請求項1に記載の貼付剤。
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