JP4646505B2 - 非水溶媒系二次電池の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、非水溶媒系二次電池に関し、更に詳しくは、製造時に箔切れが生じるのを減少させ、サイクル特性が良好で、過充電しても、また高温雰囲気下に放置しても、破裂することが少ない安全性に優れた非水溶媒系二次電池の製造方法に関する。
携帯型の電子機器の急速な普及に伴い、それに使用される電池への要求仕様は、年々厳しくなり、特に小型・薄型化、高容量でサイクル特性が優れ、性能の安定したものが要求されている。そして、二次電池分野では他の電池に比べて高エネルギー密度であるリチウム非水溶媒系二次電池が注目され、このリチウム非水溶媒系二次電池の占める割合は二次電池市場において大きな伸びを示している。
このリチウム非水溶媒系二次電池は、細長いシート状の銅箔等からなる負極芯体(集電体)の両面に負極用活物質合剤を被膜状に塗布した負極と、細長いシート状のアルミニウム箔等からなる正極芯体の両面に正極用活物質合剤を被膜状に塗布した正極との間に、微多孔性ポリプロピレンフィルム等からなるセパレータを配置し、負極及び正極をセパレータにより互いに絶縁した状態で円柱状又は楕円形状に巻回した後、角型電池の場合は更に巻回電極体を押し潰して偏平状に形成し、負極及び正極の各所定部分にそれぞれ負極リード及び正極リードを接続して所定形状の外装内に収納した構成を有している。
リチウム非水溶媒系二次電池は高エネルギー密度ではあるが、現状の電池性能は市場の要求に応えるにはまだまだ不十分であり、さらなる高エネルギー密度化が求められている。そのために電池外装内に充填する活物質合剤の量を増やすことが試みられ、活物質合剤塗布後の極板を加圧圧縮して活物質合剤を緻密にし、空隙を減らすことが行われている。
このような電池の極板の製造に際しては、通常、金属製芯体(集電体)の両面に正極用又は負極用の活物質合剤を塗布し、次いでローラープレスで合剤層を加圧圧縮した上で必要な寸法に切り出されているが、両面の合剤層の厚みは金属製芯体の厚みより大きく、合剤層の空隙率は加圧圧縮後で通常10%から30%程度に制御されている。
ところが、従来の細長いシート状のアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極用活物質合剤を被膜状に塗布し、次いでローラープレスでこの合剤層を加圧圧縮すると、アルミニウム箔からなる正極芯体が切断される不都合が発生しやすかった。このような現象は銅箔からなる負極芯体を使用している負極の製造の場合にはほとんどみられない現象である。加えて、アルミニウム箔からなる正極芯体を用いた非水溶媒系二次電池は、過充電をしたり、高温下に長時間放置するなど、電池を通常使用環境とは異なる状態にする試験で、発煙するような電池が発生した。
一方、下記特許文献1には、非水溶媒系二次電池において、充放電に伴う負極活物質合剤層の体積変化が大きい場合には、誤って過充電されたときに、負極の集電体に亀裂、切断などが生じ、その後のサイクル特性の劣化が大きくなるという問題点を解決するために、負極の集電体の破断伸び率が5%以上のもの、具体的には銅からなる集電体を使用し、負極集電体の濡れ性が接触角で40°未満のものを使用した非水溶媒系二次電池が開示されている。
しかしながら、下記特許文献1に開示されている発明は、非水溶媒系二次電池の負極に生起する問題点を解決するためには有効であるが、本発明が目的とする正極に適用することは、活物質材料及び集電体材料が正極及び負極で全く相違するために、不可能である。
特開平11−288722号公報(特許請求の範囲、段落[0004]〜[0012])
リチウムイオン電池に代表される非水溶媒系二次電池において、この正極合剤圧縮工程におけるアルミニウム箔からなる正極芯体部分の破断対策は製造上の急務である。本発明者等は上述のような問題点が生じる原因を種々調査した結果、アルミニウム箔からなる正極芯体上にN−メチルピロリドン(以下、「NMP」という。)を溶剤として使用している正極合剤を皮膜状に塗布すると、図1に示したように、塗布始点及び塗布終点の両塗布端部が盛り上がるが、この盛り上がりが大きいほどこの合剤層をローラープレスで加圧圧縮した際にアルミニウム箔からなる正極芯体が切断される不都合が多く生じること、及び、この盛り上がりは、従来のアルミニウム箔からなる正極芯体表面には圧延時の圧延油が残留しており、この圧延油とNMPとの間の濡れ性が悪いことに起因するものであって、この塗布端部の盛り上がりを押さえるためには、正極合剤製造時に溶剤として使用されているNMPとアルミニウム箔との間の濡れを良くすること、言い換えるとNMPとアルミニウム箔との間の接触角を小さくすればよいことを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、製造時に箔切れが生じるのを減少させ、サイクル特性が良好で、過充電しても、また高温雰囲気下に放置しても、安全性、信頼性に優れた非水溶媒系二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は以下の構成により達成し得る。すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、正極と負極と両者の間に介在させたセパレータとからなる電極体と、非水溶媒系電解質を備える非水溶媒系二次電池の製造方法において、前記正極の集電体として、圧延によるアルミニウム箔製造時に圧延油とN−メチルピロリドンとを体積比で1:1となるように試験管に入れて数分間激しく撹拌した後、静置してその分離状況を測定し、圧延油とNMPの合計の体積を10としたときに圧延油の比率が4.2以下である圧延油を用いて作成したアルミ箔を用いて、N−メチルピロリドンとの接触角が45°以下としたアルミニウム芯体を用い、前記アルミニウム芯体の表面にN−メチルピロリドンを含む正極合剤スラリーを塗布乾燥した後、圧縮して作成したものを用いたことを特徴とする。
また、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の非水溶媒系二次電池の製造方法において、前記アルミニウム芯体として、圧延によるアルミニウム箔製造後に、常温下、湿度50%で7日以上保存処理したものを用いたことを特徴とする。
本発明は、上述の構成を備えることにより以下のような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に記載の非水溶媒系二次電池の製造方法によれば、アルミニウム箔からなる芯体と正極合剤中に含まれている溶剤としてのNMPとの濡れ性がよいので、アルミニウム箔からなる芯体上に正極合剤を塗布しても塗布端部の盛り上りが従来のものよりも小さくなり、アルミニウム箔からなる芯体上に正極合剤を塗布したものをローラープレスで加圧圧縮してもアルミニウム箔からなる正極芯体が切断されることがなくなるために、製造効率が向上し、加えて、サイクル特性が良好で、過充電しても、また高温雰囲気下に放置しても、安全性、信頼性に優れた非水溶媒系二次電池を製造することができるようになる
また、請求項2に記載の非水溶媒系二次電池の製造方法によれば、容易にNMPとの接触角が45°以下のアルミニウムからなる正極芯体が得られるようになるので、容易に上記効果を奏する非水溶媒系二次電池を製造することができるようになる
アルミニウム芯体に正極合剤を塗布した際の塗布始点及び塗布終点での形状を説明する図である。 アルミニウム芯体のNMPとの接触角と正極合剤の盛り上がり量との関係を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を参考例及び比較例を用いて詳細に説明する。
[対NMP濡れ性改善各種アルミニウム箔の作製]
従来のアルミニウム箔を圧延する際に使用される圧延油及び特注のNMPとの濡れ性の良い圧延油の物質名は共に企業秘密として一般ユーザには不明であるが、アルミニウム箔メーカより提供されたデータは次のとおりである。まず、従来からアルミニウム箔製造時に普通に使用されている圧延油を圧延油Xとし、NMPとの濡れ性の良い圧延油を圧延油Yとし、それぞれの圧延油とNMPとを体積比で1:1となるように試験管に入れて数分間激しく撹拌した後、静置してその分離状況を測定したところ、次のような結果が得られた。
圧延油X:NMP=4.8:5.2
圧延油Y:NMP=4.2:5.8
このデータは、圧延油Yの方が圧延油Xの方よりもNMPに溶けやすいということを示すものであるから、この圧延油YのほうがNMPに対して濡れ性がよいことを示している。
次いで、以下の条件により試料A〜Fの6種のアルミニウム箔を用意した。
(試料A及びB)
前記圧延油Xを用いて圧延したアルミニウム箔を試料Aとし、前記圧延油Yを用いて圧延したアルミニウム箔を試料Bとする。
(試料C)
試料Bのアルミニウム箔を、そのまま相対湿度60%以下の常温下に1ケ月放置したアルミニウム箔を試料Cとする。
(試料D)
試料Aのアルミニウム箔を、アセトン溶剤で脱脂処理したアルミニウム箔を試料Dとする。
(試料E)
試料Aのアルミニウム箔を、そのまま箔の走行方向とは逆の回転をするロールと接触させ、アルミニウム箔表面に徹細な傷をつけたアルミニウム箔を試料Eとする。
(試料F)
試料Aのアルミニウム箔を、そのままプラズマ放電処理を行ったアルミニウム箔を試料Fとする。
以上の試料A〜Fのアルミニウム箔表面に1μLのNMPを滴下して、NMPとアルミニウム箔との接触状況を撮像し、その画像を画像解析により接触角を算出した。また試料A〜Fのアルミニウム箔を使用して、ダイコート方式にてコバルト酸リチウムとアセチレンブラックおよびNMPから成るスラリーを塗布乾燥して正極極板を作成した。そうすると、塗布極板の塗布始点及び塗布終点では図1に示したように盛り上るが、この盛り上がり量を、塗布境界付近の極大点の厚みをa、厚みが安定した部分の厚みをbとし、塗布始点及び塗布終点でa及びbの値をマイクロゲージにて測定し、a−bの値を平均値で求めた。さらに、所定長さごとに正極合剤が間欠的に両面に塗布された各正極極板を、圧縮線圧2000kg/cmの定圧圧縮装置にて、各1000m連続圧縮した場合の箔切れ発生数を測定した。結果をまとめて表1に示す。
Figure 0004646505
表1より、NMPとの接触角が45°以下の試料B〜Fは、塗布盛り上り量が小さく、この塗布盛り上り部分による圧縮時に過圧縮を起して箔切れしていたものが全く見られなくなった。それに対して、NMPとの接触角が47°と大きい試料Aは、塗布盛り上がり量も試料B〜Fのものに比すると非常に大きく、圧縮時の箔切れも2回生じた。
上記表1の結果から、NMPとの接触角が45°近傍で塗布盛り上がり量が大幅に変化していることが認められたので、更に、NMPとの接触角が45°近傍の範囲の複数のアルミニウム箔を用意し、前記試料A〜Fで使用されたものと同じ正極合剤を塗布し、接触角と盛り上がり量との関係を求めた。その結果を図2に示す。尚、図2には前記表1の試料A〜Fの接触角と盛り上がり量との関係も同時に示した。
図2より、接触角が40°〜45°までは正極合剤の盛り上がり量は徐々に増えているが、接触角が45°を超えると急に盛り上がり量が増えていることが分かる。したがって、接触角は45°以下が好ましい。接触角の下限は臨界的なものではないが、40°未満のものは製造し難いので、必然的に40°以上が好ましいものとなる。よって、接触角は40°以上45°以下が好ましいと言える。
[電池試料の作製]
[比較例1]
次に、NMPとの接触角が45.5°のアルミニウム芯体の両面に、コバルト酸リチウムとアセチレンブラック及びNMPから成るスラリーを塗布乾燥したのち、圧縮線圧2000kg/cmの定圧圧縮装置で圧縮して作成した正極と、銅箔上にグラファイトを塗布乾燥して作成した負極を、セパレータを介して対向させて巻き取ったものを、鉄を材料として作成した外装缶に挿入、封口して電池寸法φ18mm、高さ65mmの円筒形電池を作製し、試料a1〜a5の5個の比較例1の電池を作製した。なお、電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、LiPFを1モル/リットルの割合で溶解したものを使用した。
[参考例1]
正極芯体として、アセトンで表面の油分を除去してNMPとの接触角を44°としたアルミニウム芯体を用いて正極を作製したこと以外は前記比較例1の電池と同様にして試料b1〜b5の5個の参考例1の電池を作製した。
[電池サイクル特性測定]
上記のように作製した各試料について、室温において電池電圧が4.2Vになるまで充電した後に2.75Vまで2000mAの定電流で放電することを1サイクルとし、500サイクルに達するまで繰り返して、1サイクル目の容量(初期容量)に対する500サイクル後の容量の割合としてサイクル特性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004646505
表2より、NMPとの接触角が小さいアルミニウム芯体を用いた参考例1の電池b1〜b5は、接触角が大きいアルミニウム芯体を使用した比較例1の電池a1〜a5と比するとサイクル特性が向上していることがわかった。なお、測定後の電池を解体すると、塗布盛り上りの大きい1の電池a1〜a5では負極上の、正極盛り上がり部に対向している部分にリチウムの析出が偏在しているのが見られたのに対し、参考例1の電池b1〜b5ではその様な析出は見られなかった。
なお、この負極におけるリチウム析出の原因は、次のような理由によるものと推測される。すなわち、通常のリチウムイオン電池の極板は、正極のリチウム放出量よりも負極のリチウムイオン受入許容量が若干多くなるように設計されている。従って、正極での多少の盛り上がりにより供給されるリチウムイオンが多くなっていても、負極にはそれを受け入れる能力が残されているが、正極の盛り上がりがあまりにも大きくなると負極の余裕以上にリチウムイオンが供給されて、負極に受け入れられない分が析出することになる。この閾値が、前記の表1及び図2の記載から確認できるように、NMPとアルミニウム芯体との間の接触角において、「45°」にあるわけである。
[安全性試験](異常条件での安定性試験)
[比較例2]
比較例2として、比較例1と同様にして100個の電池を製造し、その内の50個について過充電試験を、残りの50個についてサーマル試験を行った。過充電試験は、1.5Itの一定電流で電池電圧が12Vとなるまで充電して電池の状態を観察した。また、サーマル試験は、1.5Itで電池電圧が4.3Vとなるまで充電した電池を150℃恒温槽内に1時間放置して電池の発煙状態を観察した。なお電池製造に際して、比較例と参考例の安全性の差を明確にすべく、製品として出荷する電池には取り付けている安全弁等の安全装置は付加しなかった。(以下の参考例も同様)その結果を表3に示す。
[参考例2]
参考例2として、参考例1と同様にして100個の電池を製造し、その内の50個について過充電試験を、残りの50個についてサーマル試験を行った。過充電試験及びサーマル試験条件は比較例2と同条件で行った。その結果を比較例2の結果とまとめて表3に示す。
Figure 0004646505
表3より、NMPとの接触角が45°を超えるアルミニウム芯体を使用した比較例2の電池では過充電試験及びサーマル試験の何れにおいても過半数の電池が発煙したが、NMPとの接触角が45°未満のアルミニウム芯体を使用した参考例2の電池では、今回の安全性試験で電池が発煙するものはなく、電池安全性が向上していることがわかった。
なお、上記NMPに対する濡れ性を改善した各種アルミニウム箔の作製においては、脱脂法としてアセトンによる脱脂法(試料D)を、また表面の粗面化方法として箔の走行方法とは逆の回転をするロールと接触させる方法(試料E)を示したが、脱脂法としてはアセトン以外に他の周知のNMPに対する溶剤を使用する方法や周知の電解脱脂法を用いることができ、また表面粗面化方法としては、サンドブラスト法やヤスリ掛け法も採用することができる。
また、本発明においては、アルミニウム箔表面に残留していた圧延油を除去してNMPとの接触角が45°以下となせば所定の効果を奏するから、低湿度条件下での保存処理によってアルミニウム箔表面に残留していた圧延油を揮発させる方法を採用することができる。この場合、低湿度条件下での保存処理は、その条件は臨界的なものではなく、具体的には、常温下、湿度50%で7日以上保存処理したものを使用すればよい。

Claims (2)

  1. 正極と負極と両者の間に介在させたセパレータとからなる電極体と、非水溶媒系電解質を備える非水溶媒系二次電池の製造方法において、前記正極の集電体として、圧延によるアルミニウム箔製造時に圧延油とN−メチルピロリドンとを体積比で1:1となるように試験管に入れて数分間激しく撹拌した後、静置してその分離状況を測定し、圧延油とNMPの合計の体積を10としたときに圧延油の比率が4.2以下である圧延油を用いて、N−メチルピロリドンとの接触角が45°以下としたアルミニウム芯体を用い、前記アルミニウム芯体の表面にN−メチルピロリドンを含む正極合剤スラリーを塗布乾燥した後、圧縮して作成したものを用いたことを特徴とする非水溶媒系二次電池の製造方法。
  2. 前記アルミニウム芯体として、圧延によるアルミニウム箔製造後に常温下、湿度50%で7日以上保存処理することにより圧延油成分が揮発されたものを用いたことを特徴とする請求項1記載の非水溶媒系二次電池の製造方法
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