以下、添付図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
[画像形成装置の全体構成]
図1は、本発明に係る一実施形態の画像形成装置の全体構成を示す概略ブロック図である。
図1において、本実施形態の画像形成装置10は、主として、インク吐出ヘッド50、温度センサ80、主制御部110、主メモリ112、画像データ入力部114、搬送制御部116、インクID入力部118、搬送部126、プリント制御部150、プリント制御用メモリ152、基本波形生成部154(波形生成部)、ヘッドドライバ156(駆動部)、を含んで構成されている。
インク吐出ヘッド50は、紙などの記録媒体に対してインクを吐出するものである。本実施形態の画像形成装置10は、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各色のインク吐出ヘッド50を備えている。このインク吐出ヘッド50の具体的な構造については、後に詳述する。
温度センサ80は、温度を検出するものである。具体的には、第1に、インク吐出ヘッド50の内部に配置されてそのインク吐出ヘッド50の内部の温度分布を検出する複数の温度センサ(内部温度検出センサ)と、第2に、インク吐出ヘッド50の外部の温度(周辺温度)を検出するひとつの温度センサ(周辺温度検出センサ)とによって構成されている。
内部温度検出センサは、インク吐出ヘッド50内のインクを温度調整するか否かの判定、及び、温度調整量の判定に用いられるとともに、加熱により目的の温度に達したか否か等の温度調整結果の確認に用いられる。内部温度検出センサの配置については、後に詳述する。
一方で、周辺温度検出センサは、ノズル51内のインク表面から溶媒が蒸発することに起因するインクの粘度上昇を防止するためにインクのメニスカスを揺らすか否かを判定する際に用いられる。
搬送部126は、紙などの記録媒体をインク吐出ヘッド50に対して相対的に移動させるものである。具体的には、搬送モータ、搬送ベルトなどによって構成されており、記録媒体を所定の搬送路上で搬送する。
画像データ入力部114は、ホストコンピュータ300から画像データが入力されるものである。本実施形態において、具体的には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネットなどの有線の通信インタフェース、又は、無線の通信インタフェースによって、ホストコンピュータ300から画像データを受信する。なお、本発明において、画像データの入力態様は、ホストコンピュータ300との通信により画像データが入力される場合に特に限定されるものではない。例えば、メモリカードや光ディスクなどのリムーバブルメディアから画像データを読み込むことにより画像データが入力されるようにしてもよい。
搬送制御部116は、搬送部126を制御するものである。具体的には、搬送部126を構成する搬送ベルトへの記録媒体の吸着や、その搬送ベルトの駆動などを行う。
インクID入力部118は、インクの種類を識別するインクID(インク識別情報)が入力されるものである。本実施形態において、具体的には、画像形成装置10に装着及び脱着が可能であって、インクを収納したインクカートリッジ(図示を省略)からインクIDを読み取るようになっている。例えば、バーコードとして付与されたインクIDを読み取る、ICタグから無線でインクIDを読み取る、などの入力態様がある。ホストコンピュータ300との通信により入力されるようにしてもよい。ユーザの操作により入力されるようにしてもよい。
プリント制御部150は、主メモリ112に記憶されている画像データに基づいて、インク吐出ヘッド50によってそのインク吐出ヘッド50から記録媒体に向けてインクを吐出する制御を行う。また、プリント制御部150は、温度センサ80によって検出されたインク吐出ヘッド50の内部の温度分布に基づいてインク吐出ヘッド50内のインクの温度調整を制御する。また、プリント制御部150は、インクID入力部118に入力されたインクIDと温度センサ80によって検出された周辺温度とに基づいてインクの粘度上昇を防止するためのメニスカス揺らしを制御する。プリント制御部150は、例えば、マイクロプロセッサ及びその周辺回路によって構成されている。
プリント制御用メモリ152は、プリント制御部150用のメモリであり、プリンタ制御部150が実行するプログラム、プリント制御部150が画像データに基づいて生成したプリント用データや、プリント制御部150がプリント制御を行うのに必要な各種情報を記憶する。
基本波形生成部154は、インク吐出ヘッド50の駆動に必要な電気信号(駆動波形)を含む基本波形を生成する。基本波形生成部154は、前述のプリント制御部150と一体に形成されていてもよい。なお、基本波形の具体的な形状については、後に詳述する。
ヘッドドライバ156は、基本波形生成部154から出力された基本波形と、プリント制御部152から出力された、駆動波形の選択を指示する電気信号(選択波形)とに基づいて、複数種類の駆動波形の中から必要な駆動波形を選択してインク吐出ヘッド50に与える。ヘッドドライバ156による駆動波形の選択については、後に詳述する。
主制御部110は、主メモリ112、画像データ入力部114、搬送制御部116、インクID入力部118、プリント制御部150などの各部を制御するものである。主制御部110は、具体的には、マイクロプロセッサ及びその周辺回路によって構成されている。
主メモリ112は、主制御部110が実行するプログラム、そのプログラムの実行に必要な各種の情報、ホストコンピュータ300から入力された画像データなどを記憶するものである。
[インク吐出ヘッドの構造]
図2は、インク吐出ヘッド50の全体の概略構造を示す平面透視図である。
図2において、インク吐出ヘッド50は、最大サイズの記録紙の少なくとも一辺を超える長さにわたって配列された多数のノズル51(吐出口)を有し、紙などの記録媒体に対して相対的に移動しながら、ノズル51から記録媒体に向けてインクを吐出する。
インク吐出ヘッド50は、インクを吐出する複数のノズル51、ノズル51と連通しておりノズル51からインクを吐出するときにインクに対して圧力を付与する圧力室52(個別液室)、及び、図2では図示を省略した後述の共通液室から圧力室52に対してインクを供給する個別インク供給口53をそれぞれ含んで構成される複数の圧力室ユニット54が、2次元マトリクス状に配列されて構成されている。
図2に示されたインク吐出ヘッド50の一部分を拡大して図3に示す。
図3において、複数のノズル51は、主走査方向に沿って配列されているとともに、主走査方向に対して所定の角度θをなす方向に沿って配列されてなる。すなわち、複数のノズル51は、いわゆる2次元マトリクス状で配列されている。
具体的には、例えば、符号51-11、51-21、51-31、…(あるいは符号51-16、51-26、51-36、…)のm個のノズルが主走査方向に沿って配列されている。また、例えば、符号51-11、51-12、51-13、51-14、51-15、51-16のn個(ここではn=6)のノズルが主走査方向に対して角度θをなす方向に沿って配列されている。
主走査方向に沿ったひとつの線(主走査線)に全てのノズル51を投影してなる仮想的なノズル配列(投影ノズル配列)は、主走査方向のドットピッチP(すなわちノズル51からインクが吐出されることにより記録媒体上に形成されるドット同士の主走査方向における間隔)と略同一の間隔でノズル51が配置されてなる。すなわち、投影ノズル配列は、ドットピッチPと略同一のピッチを有するノズル配列である。
実際上は、ノズル51の間隔(ノズルピッチ)は、主走査方向においてはドットピッチPのn倍(ここではn=6)であり、主走査方向に対して角度θをなす方向においては、図3に示されるd(=P×1/cosθ)である。
図4は、図2の4−4線に沿った断面図であり、ひとつの圧力室52及びその周辺を示している。なお、図4には、ノズル51、圧力室52、個別インク供給口53、個別電極57、圧電体58、及び、温度センサ80がそれぞれひとつずつ記載されているが、実際には、インク吐出ヘッド50は、ノズル51、圧力室52、個別インク供給口53、個別電極57、圧電体58、及び、温度センサ80をそれぞれ複数備えている。具体的には、圧力室52、個別インク供給口53、個別電極57、及び、圧電体58はノズル51と同数だけ2次元マトリクス状に設けられており、温度センサ80はノズル51の数(圧力室52の数)よりも少ない数だけノズル51や圧力室52等の配置パターンとは異なる配置パターンで配置されている。
振動板56は、圧力室52内の空間を挟んでノズル51が配置されている側とは反対側に配置されており、各圧力室52の振動面を構成している。振動板56は、複数の圧力室52に共通のものとし1枚のプレートで形成されている。
共通液室55は、振動板56を挟んで圧力室52が配置されている側とは反対側に配置されており、振動板56に形成されている個別インク供給口53を介して複数の圧力室52にインクを供給する。すなわち、圧力室52に対してノズル51を下として見たとき、共通液室55は、複数の圧力室52の直上において、これらの複数の圧力室52の全てを覆うように、ひとつの共通の空間をなす液室として形成されている。詳細には、共通液室55は、平面方向の広さとして、複数の個別インク供給口53が2次元マトリクス状に配置されてなる2次元パターン以上の広さを有する。このような共通液室55により、2次元マトリクス状に配列された各圧力室52に対して、インクがリフィル性良く供給されることになる。
圧電体58は、例えばピエゾからなり、振動板56を介して圧力室52の容積を変化させる。圧電体58の一方の電極は個別電極57によって構成されており、個別電極57を介して図1のヘッドドライバ156と接続されている。圧電体58の他方の電極は振動板56(共通電極)によって構成されており、接地されている。圧電体58を駆動する電気信号である駆動波形は、図1のヘッドドライバ156から圧電体58に与えられる。
ヘッドドライバ156から圧電体58に与えられる駆動波形には各種ある。第1に、ノズル51からインクを吐出させる吐出振動を圧電体58に発生させる駆動波形(「吐出駆動波形」と称する)がある。第2に、ノズル51からインクを吐出させることなく圧電体58を発熱させることによりインクの加熱を行う駆動波形(「加熱駆動波形」と称する)がある。第3に、吐出振動と並行して圧電体58に発熱をさせる駆動波形(「吐出・加熱駆動波形」と称する)がある。なお、吐出・加熱駆動波形は、前述の吐出駆動波形と加熱駆動波形とを含んでいる。第4に、ノズル51からインクを吐出させることなくインクの粘度上昇を抑えるようにノズル51内のメニスカスを微小な振幅で揺らす駆動波形(「メニスカス微振動波形」と称する)がある。第5に、吐出駆動波形、加熱駆動波形、及び、メニスカス微振動波形のいずれをも含まない、圧電体58を駆動しない無駆動波形がある。
本実施形態の圧電体58は、ノズル51からインクを吐出させるための圧力を発生する圧力発生手段を構成しているだけでなく、インクを加熱する加熱手段、及び、インクの粘度を調整する粘度調整手段をも構成している。
温度センサ80は、本実施形態では、共通液室55の天面に複数配置されている。また、本実施形態では、複数の温度センサ80は共通液室55内を流れるインクの流動が考慮された配置パターンで共通液室55内に配置されており、このような複数の温度センサ80の温度検出結果に基づいてプリント制御部150により共通液室55内の温度分布とともに各圧力室52内のインクの温度が特定される。
具体的には、温度センサ80は、共通液室55内でのインクの流動経路を示す複数の流線の中から予め選択された複数の代表流線に沿って配置されている。また、プリント制御用メモリ152には、温度センサ80によって検出された共通液室55内の代表流線に沿った温度分布情報を各圧力室52ごとのインクの温度情報に変換するための変換テーブル情報が記憶されている。プリント制御部150は、温度センサ80によって検出された共通液室55内の代表流線に沿った温度分布情報と、プリント制御用メモリ152に記憶されている変換テーブル情報とに基づいて、各圧力室52ごとの温度を特定する。
これらの温度センサ80及びプリント制御部150は本画像形成装置10の温度特定部を構成している。
このように共通液室55内の温度分布を検出して各圧力室52ごとのインクの温度を求めるようになっているので、温度センサ80の数を低減して各圧力室52ごとのインクの温度を検出することができるとともに、各圧力室52内に温度センサ80を配置した場合と比較して信号配線の混雑を緩和することができる。
次に、熱伝導の観点から好ましいインク吐出ヘッド50の構造について説明する。
前述のように圧電体58は振動板56に取り付けられており、振動板56は圧力室52のインクに接しているので、圧電体58を圧力室52内のインクを加熱する加熱手段として用いる場合、圧電体58の発熱を効率よく圧力室52内のインクに伝えるため、次のような(条件1)〜(条件5)を満たしていることが、好ましい。
(条件1)振動板56が薄い。
(条件2)振動板56の接液側の面積が大きい(例えば、凹凸がある)。
(条件3)振動板56の材料の熱伝導率が大きい(例えば、鉄、アルミニウム、銅、金、ダイアモンド薄膜などで形成されている)。
(条件4)圧電体58と振動板56との間の熱伝導率が高い(直接かつ密に接している、接着層が薄いなど)。
(条件5)圧電体58の面のうちで振動板56と接している面以外は熱伝導率が低い(断熱されている)。
一方で、圧電体58によって、その圧電体58を挟んで振動板56と反対側に配置されている共通液室55内のインクを加熱することも可能であり、共通液室55内のインクの加熱手段として圧電体58を用いる場合には、次のような(条件6)〜(条件9)を満たしていることが、好ましい。
(条件6)圧電体58の面のうちで振動板56に接している面以外は熱伝導率が高い。例えば、熱伝導率の高いオイルなどで覆われ、圧電体58を覆うアクチュエータカバー68(例えばアルミニウムなどの熱伝導率の高い材料)を介して共通液室55に面している。
(条件7)振動板56の熱伝導率が小さい。
(条件8)振動板56が厚い。
(条件9)圧電体58と振動板56との間の熱伝導率が低い(接着層が厚い)。
[圧電体の駆動波形]
圧電体58に対してヘッドドライバ156から与える駆動波形には、前述のように、主として、吐出駆動波形、加熱駆動波形、吐出・加熱駆動波形、メニスカス微振動波形、及び、無駆動波形がある。これらの駆動波形についてそれぞれ詳述する。
図5は、同一のノズル51からn滴(例えばn=2)のインクを連続して吐出させる場合の吐出駆動波形について、横軸を時間tとし、縦軸を圧電体58の印加電圧Vとして表している。図5において、Tjtは吐出周期(連続吐出なので最小吐出周期に等しい)であり、Ajtは吐出駆動波形の振幅である。図5に示すような凹凸形状(メニスカス面のプル及びプッシュを発生させる形状である)からなる吐出駆動波形が圧電体58に与えられると、この凹凸形状に従って圧電体58が振動を発生して圧力室52の容積を変化させることにより振幅Ajtに応じたストロークでノズル内のメニスカス面がプル及びプッシュされて、ノズル51から記録媒体に向けて滴状のインクが吐出周期Tjtで連続して吐出される。例えば、メニスカス面のプル及びプッシュが2回連続して行われると、ノズルから2滴のインクが吐出されて記録媒体に着弾する。
吐出振動において、最も効率良く吐出を行うためには、原理的には、メニスカスがその圧力室52の共振周波数f0(駆動波形の振幅を一定とした条件下で圧力室52の共振現象により圧力室52内のインクの振動が最大になる周波数である)でプル及びプッシュを繰り返すように最小吐出周期Tjtを設定する。実際には、吐出の安定性を考慮して、適宜、圧力室52の共振周波数f0から離れた周波数でメニスカスを振動させるように最小吐出周期Tjtを設定してもよい。
図6は、圧力室52内のインクを加熱させる加熱駆動波形について、横軸を時間tとし、縦軸を圧電体52の印加電圧Vとして表している。図6において、Thtは加熱駆動波形の周期であり、Ahtは加熱駆動波形の振幅である。
図7は、インク滴の吐出と並行して圧力室52内のインクの加熱を行う場合の吐出・加熱駆動波形について、横軸を時間tとし、縦軸を圧電体52の印加電圧Vとして表している。図7において、Tjtは吐出周期であり、Thtは加熱駆動波形の周期であり、Ajtは吐出駆動波形の振幅であり、Ahtは加熱駆動波形の振幅である。
なお、図7に示す吐出・加熱駆動波形は、図5に示す吐出駆動波形に対して図6に示す加熱駆動波形(ただし実線で示す形状)を重畳してなる形状を有している。このような吐出・加熱駆動波形の重畳形成を行わない場合には、図6において実線に点線で補足して示すように、加熱駆動波形については、全加熱期間にわたって一時停止することなく振動する波形としてもよい。
図6の加熱駆動波形において印加電圧Vのピーク値(最大値)は、図5に示す吐出駆動波形の印加電圧Vのピーク値(最大値)と同一(例えば24[V])にしてある。同様に、図7の吐出・加熱駆動波形中の加熱駆動波形の印加電圧Vのピーク値(最大値)は、その吐出・加熱駆動波形中の吐出駆動波形の印加電圧Vのピーク値(最大値)と同一(例えば24[V])にしてある。
好ましい加熱駆動波形について以下詳述する。
なお、数式を用いて理論的かつ簡略に説明するため、正弦波で圧電体を駆動したものとする。そうすると、圧電体の発熱量Pは、下記の数1で表される。
[数1]
P=V2×tanδ×2πf×C
ここで、Vは圧電体58の印加電圧(正弦波の振幅)、tanδは圧電体58の誘電率損、fは圧電体58の駆動周波数(正弦波の周波数)、Cは圧電体58の静電容量である。
例えば、数1において、V=24[V]、tanδ=2.0[%]、f=1[MHz]、C=300[pF]とした場合、圧電体58の発熱量Pは22[mW]となる。
数1に示されるように、圧電体59の発熱量Pは、圧電体58の駆動周波数f、圧電体58の静電容量C、及び、圧電体58の印加電圧Vの2乗、にそれぞれ比例して大きくなる。すなわち、駆動周波数f、静電容量C及び印加電圧Vを適切に設定することにより圧電体58の発熱効率を高めることができる。
まず、圧電体58の静電容量Cに着目して圧電体58の駆動周波数fと発熱量Pとの関係について説明する。
圧電体58は、その圧電体58自身の共振現象により、駆動周波数fが圧電体58の共振周波数frであるときに静電容量Cが最大になる性質を有する。したがって、圧電体58に与える加熱駆動波形の周波数fhtとして圧電体58の共振周波数fr又はその近傍の周波数を設定することにより、圧電体58の静電容量Cが大きくなって、前述の数1より、圧電体58の発熱量Pが大きくなる。
なお、圧電体58の共振周波数fr(複数存在する)は、一般に、fr>f0であり、吐出振動において安定した吐出を行うためには、好ましくはfr≧2×f0であり、更に好ましくはfr≧3×f0である。
次に、圧電体58の印加電圧Vに着目して駆動周波数fと発熱量Pとの関係について説明する。
前述の数1より、圧電体58の発熱量Pは圧電体58の印加電圧Vの2乗に比例して大きくなるが、印加電圧Vを大きくし過ぎると、ノズル51からインクが吐出してしまうことになって加熱振動としては不適切になるので、印加電圧Vは、ノズル51からインクが吐出しない範囲内で圧電体58の発熱量Pが大きくなる適切な値に設定する必要がある。
図8は、印加電圧Vが一定という条件下における圧電体の加振周波数f(駆動周波数)と圧力室内のインクの振動の大きさを示す振動ゲインgとの関係を示すグラフである。
図8に示されるように、圧力室52の共振周波数f0において、振動ゲインgが最大になる。
ここで、単にインクの不吐出を防止する目的であれば、振動ゲインgが高くても圧電体58の印加電圧Vを小さく設定すればよいかとも考えられるし、また、駆動周波数fを小さく(例えば50kHz程度に設定)して振動ゲインgを下げるようにしてもよいかとも考えられる。しかし、例えば駆動周波数fをf0近傍に設定した場合には、インクの吐出を防止するために圧電体58の印加電圧Vを極めて小さくせざるを得なくなり、数1より圧電体58の発熱量Pが小さくなってしまう。また、例えば駆動周波数fをf0から小さくしていくと、数1より圧電体58の発熱量Pが小さくなっていく。しかし、加熱振動では、単にインクの不吐出が防止されればよいというわけでなく、発熱効率がよいことが要求される。すなわち、圧電体58に大きな印加電圧Vを与えてもインクの振動が大きくなりにくい条件を選ぶ必要がある。
このようなインクの不吐出を防止するとともに大きな発熱量Pを得るという観点から、図8に示す加振周波数fと圧力室振動ゲインgとの関係及び前述の数1より、圧力室52の共振周波数f0(図8では285kHz)における圧力室52内のインクの振動ゲインg0に対して略1/2の振動ゲイン(g0/2)以下となるように、加熱駆動波形の周波数fthは2×f0(図8では570kHz)以上とするのが好ましい。
より詳細には、加熱駆動において吐出が発生しないという安定度(不吐出安定度)を 更に高めつつ発熱量Pを更に大きくするため、加熱駆動波形の周波数fhtを更に高くする。具体的には、図8より、加熱駆動波形の周波数fhtは、3×f0以上とするのが、より好ましい。
なお、図8において、駆動周波数fがf0から高くなるにつれて、振動ゲインgが所定の値(図8では0.6)に向けて収束していく。加熱駆動では、ノズル51からインクが吐出しない範囲内で振動ゲインgが充分に小さければ、あとは前述の数1のみに着目して圧電体58の発熱量Pをより大きくするように、加熱駆動波形の周波数fhtは高ければ高いほどよいかとも考えられる。しかし、実際には、加熱駆動波形の周波数fhtとしてはミスト吐出が発生しない適切な周波数を設定する必要がある。
ここで、ミスト吐出とは、圧電体58の駆動周波数fを高くしていくと、ノズル51内のインクのメニスカス面が激しく振動して、霧状の微細なインクがノズル51のメニスカス面から飛び出す現象である。
ミスト吐出が発生するメニスカス面振幅hと圧電体58の駆動周波数fとの関係は、下記の数2で表される。
[数2]
h≧2(μ/ρ)×(ρ/Tπf)1/3
ここで、μは粘度[Pa・s]、ρは液体の密度[kg/m3]、Tは表面張力[N/m]である。
例えば、水に2.5[MHz]の振動を加えたとき、メニスカス面振幅h≧0.24[μm]となり、一般に、ミスト吐出が発生する。
数2より、圧電体58の駆動周波数fが高くなると、f−1/3に比例して、メニスカス面振幅hの境界値(数2において等式が成立するhである)が小さくなる。そこで、ミスト吐出を起こさないようにするために、実際のメニスカス面振幅hがミスト吐出となる境界値を下回る範囲内で、かつ、前述の数1よりV2×fが最大となるように、f及びVの組み合わせを選択する。
例えば、加熱駆動波形の印加電圧を適用可能な最大値(例えばピーク値を吐出振動波形と同じ24V)に設定し、加熱駆動波形の周波数fthはミスト吐出が発生しない範囲内で最高値に設定すれば、最大の発熱量Pが得られることになる。
なお、ミスト吐出が発生するか否かは、液体(インク)の特性のほか、インク吐出ヘッド内の構造や形状にも因っても異なり、全てのインク吐出ヘッドに亘ってf及びVを一意に定めることはできないので、これらの液体の特性、インク吐出ヘッドの構造及び形状に応じて定める。実験によりf及びVを求めてもよい。
以上説明したヘッドドライバ156から圧電体58に与える好ましい加熱駆動波形の条件について整理すると以下の通りである。
(条件1)加熱駆動波形の周波数fhtは、圧力室の共振周波数f0の2倍(2×f0)以上とする。より好ましくは、3×f0以上とする。ここで、f0は、一定の振幅の振動波形を圧力室52に与えた場合に圧力室52の共振により圧力室52内のインクの振動が最大になる周波数である。
(条件2)加熱駆動波形の周波数fhtは、ミスト吐出が発生しない周波数を設定する。
(条件3)加熱駆動波形の周波数fhtは、(a)圧電体58の発熱量Pを可能な限り最大にするという観点からは、ミスト不吐出の範囲内において最大の周波数を設定する。あるいは、(b)ミスト不吐出の範囲内において、圧電体58の共振周波数fr又はその近傍の周波数を加熱駆動波形の周波数fhtとして設定するのが、好ましい。
上記(b)の場合には、例えば、fr=n×f0(nは整数)であるとき、fr=2×f0又はその近傍の周波数を加熱駆動波形の周波数fhtとして設定する。より好ましくはfr=3×f0又はその近傍の周波数を加熱駆動波形の周波数fhtとして設定する。なお、上記(b)の場合には、好ましい加熱駆動波形の周波数fhtと圧電体58の静電容量Chtとの関係は、次の通りである。圧電体58の共振周波数frでの圧電体58の静電容量をCr、圧電体58の共振周波数frより十分低い周波数(具体的には、frの1/10程度)での圧電体58の静電容量をC0としたとき、ΔC=|Cr−C0|として、実際に用いる加熱駆動波形の周波数fhtでの静電容量Chtについて、|Cht−C0|/ΔC≧0.3であることが好ましい。さらに好ましくは、|Cht−C0|/ΔC≧0.7となる周波数を加熱駆動波形の周波数fhtとする。
以上、本発明について理論的かつ簡略に説明するために、ヘッドドライバ156から圧電体58に与える駆動波形が正弦波形状である場合を例に説明したが、加熱駆動波形は正弦波形状である場合に特に限定されるものではなく、台形波形状や方形波形状等の他の形状としてもよいことは言うまでもない。
吐出駆動と加熱駆動とを対比すると、インクを吐出させる駆動波形を圧電体58に対して与える吐出駆動と、インクを吐出させない範囲内で発熱量が大きな駆動波形を圧電体58に対して与える加熱駆動とでは、駆動波形が異なる。
具体的には、吐出駆動波形は、メニスカス面をプル及びプッシュする形状(あるいは、プッシュのみする形状や、プル、プッシュ及びプルをする形状であってもよい)であるのに対して、加熱駆動波形は、吐出駆動波形の振幅Ajtよりも小さな振幅Ahtと最小吐出周期Tjtよりも小さな周期Tht(すなわち連続吐出する場合の吐出周波数=1/Tjtよりも大きな周波数)とを有する連続的な振動波形である。ここで、「連続的な振動波形」とは、加熱期間の全てにわたって連続的に振動する場合に限らず、図6に実線で示すように加熱期間の途中で振動が一時的に停止する場合を含む。
次に、メニスカス微振動波形について説明する。
メニスカス微振動は、ノズル51内のインクの表面から溶媒が蒸発することに因るインクの粘度上昇に対して、ノズル51付近のインクを攪拌するメニスカス揺らしによってインクの粘度上昇を抑える振動である。
このようなインクの粘度上昇を抑えるメニスカス微振動とインクの加熱を行う前述の加熱駆動とは期待する効果が全く異なるので、それぞれの効果を効率よく得られるように互いに異なる駆動波形を用いるとともに、互いに異なる制御を行う点に留意する。
圧電体58に与えるメニスカス微振動波形としては、エネルギの無駄なく効率良くメニスカス揺らしを行うように加熱駆動波形よりも高い振動ゲインgを得ることができ、かつ、加熱駆動波形よりも圧電体58の発熱量Pが小さくなるような波形を用いる。具体的には、圧力室52の共振周波数f0又はその近傍の周波数と、加熱駆動波形よりも小さな印加電圧とを有した微小振幅の波形を用いる。
また、ノズル51内のインクが接する外気の温度(周辺温度)が高くなると飽和蒸気圧が高くなるので、メニスカス微振動は温度が高いほど行うことになる。
また、メニスカス微振動は、揮発性の高いインクに対して行う一方で、揮発性の低いインクに対しては行わない。例えば、図1のインクID入力部118によってインクカートリッジからインクIDを読み取るとともに、温度センサ80によって温度を検出し、プリント制御部150によってメニスカス微振動を行うか否かを判定する。なお、メニスカス微振動が必要な揮発性の高いインクのインクIDと、各インクIDごとにメニスカス微振動を行うか否かを判定するための温度閾値をメモリ152に予め記憶している。プリント制御部150は、インクカートリッジから読み取られたインクIDがメモリ152に予め記憶されたインクIDに該当し、かつ、温度センサ80によって検出した温度がメモリ152に予め記憶された温度閾値を超えるときには、メニスカス微振動を行うと判定する。
メニスカス微振動と加熱駆動とを比較すると、加熱を目的とせず発熱量を抑える駆動波形を圧電体58に対して与えるメニスカス微振動と、加熱を目的としてメニスカス微振動よりも大きな発熱量が得られる駆動波形を圧電体58に対して与える加熱振動とでは、駆動波形が異なる。加熱駆動波形と比較してメニスカス微振動波形は、周波数が低く、印加電圧が小さい。
また、メニスカス微振動は、溶媒が揮発しやすいインクに対して行う一方で溶媒が揮発し難いインク(例えば油性インク)では行わないという制御を行うが、加熱振動は、インク溶媒の揮発性によって行うか否かを制御するのではなく温度を所定の温度に設定すべきときに行う。すなわち、インク溶媒の揮発性が高く且つ所定の温度閾値よりも温度が高いときに行うメニスカス微振動と、インク溶媒の揮発性に関わらずインク温度を高めるために所定の温度閾値よりも温度が低いときに行う加熱振動とは、定性的に、制御の方向が逆である。
なお、無駆動波形は、ノズル51からのインクの吐出、圧力室52内のインクの加熱、及び、メニスカス微振動のいずれをも発生しない無駆動の波形である。例えば、一定電圧(例えば24[V])を維持する波形である。
[駆動波形の選択]
駆動波形の選択(単に「スイッチング」とも呼ぶ)について説明する。
本実施形態の画像形成装置10では、基本波形生成部154によって、図9(a)に示すような、吐出駆動用の駆動波形91と加熱駆動用の駆動波形92とが重畳されてなる、時間軸上でひと続きの形状を有する基本波形901が生成される。また、プリント制御部150によって、図9(b)に示すような、時間軸上で基本波形901から選択すべき駆動波形を示す選択波形902が各圧電体58ごとに生成される。ヘッドドライバ156は、図9(a)に示す基本波形901から、図9(b)に示す選択波形902に従って、時間軸上で各圧電体58ごとに必要な駆動波形を選択する。図9(c)は、ヘッドドライバ156による選択結果の一例としての駆動波形903を示す。このようにしてヘッドドライバ156によって選択された駆動波形903が圧電体58に供給される。
以下、基本波形、選択波形、及び、選択された駆動波形についてそれぞれ詳述する。
図9(a)において、基本波形901の中の吐出駆動波形91は、吐出に必要な振幅Ajtを有した、メニスカスのプル及びプッシュを発生させる吐出用の凹凸波形である。この吐出駆動波形91は時間軸上において最小吐出周期Tjt(例えば50μsec)ごとに挿入されている。なお、本実施形態ではメニスカスのプル及びプッシュを発生させる凹凸形状を用いるが、吐出用の凹凸形状には、他に、メニスカスのプッシュのみを発生させる形状や、プル、プッシュ及びプルを発生させる形状などがある。基本波形901の中の加熱駆動波形92は、加熱駆動に必要な周期Tht及び振幅Aht有した連続的な振動波形であって、時間軸上において吐出駆動波形91と吐出駆動波形91との間に挿入されている。この加熱駆動波形92は、吐出駆動波形91よりも小さな振幅と最小吐出周期Tjtよりも小さな周期を有する。
図9(b)に示す選択波形902は、時間軸上の各サイクル(例えば50μsec)ごとに、吐出駆動波形の選択(ON)及び非選択(OFF)を示す。図9(b)において、具体的には、第1のサイクル(0〜50μsec)では、吐出駆動波形91の非選択(OFF)及び加熱駆動波形92の選択(ON)を示し、第2のサイクル(50〜100μsec)では、吐出駆動波形91の選択(ON)及び加熱駆動波形92の選択(ON)を示している。
図9(c)に示すヘッドドライバ156により選択された駆動波形903は、第1のサイクル(0〜50μsec)では、吐出駆動波形91が無く加熱駆動波形92を有し、第2のサイクル(50〜100μsec)では、吐出駆動波形91及び加熱駆動波形92を有する。すなわち、第1のサイクルでは加熱駆動波形91のみが圧電体58に与えられる。また、第2のサイクルでは吐出・加熱駆動波形91、92が圧電体58に与えられる。
なお、図9では、図面作成の便宜上、吐出駆動波形及び加熱駆動波形の両駆動波形が選択されている状態と、吐出駆動波形が非選択で加熱駆動波形のみが選択されている状態の2つの状態のみ示しているが、加熱駆動波形が非選択で吐出駆動波形のみが選択されている状態と、吐出駆動波形及び加熱駆動波形の両駆動波形が非選択の状態(無駆動の状態)がある。
すなわち、ヘッドドライバ156は、プリント制御部150から出力された選択波形に基づいて、吐出駆動波形91及び加熱駆動波形92の両駆動波形を圧電体58に並行して与える状態、両駆動波形91、92のうちでいずれか一方を圧電体58に与える状態、及び、両駆動波形91、92とも圧電体58に与えない状態の中から一の状態を選択して圧電体58を駆動するようになっている。
ここで、吐出駆動波形及び加熱駆動波形を圧電体58に「並行」して与える状態とは、ひとつのノズル51から複数回の打滴(吐出)を行っているうちに加熱駆動も行っている状態である。言い換えると、図9(c)の駆動波形の例からもわかるように、微視的には吐出駆動の合間に加熱駆動を行っているが、巨視的には吐出駆動と加熱駆動とをほぼ同時に行っている状態である。
また、プリント制御部150は、複数の圧力室52内の液体の温度をそれぞれ特定し、各圧力室52内のインクの温度が加熱されるべき温度であるか否かを判定する。そして、複数の圧電体58のうちでインクが加熱されるべき圧力室52に対応している圧電体58については、加熱駆動波形92の選択(ON)を指示する選択波形902をヘッドドライバ156に対して出力する。このような選択波形902に基づいて、ヘッドドライバ156により、複数の圧電体58のうちでインクが加熱されるべき圧力室52に対応している圧電体58には加熱駆動波形92が与えられ、加熱が不要な圧力室52に対応している圧電体58には加熱駆動波形92は与えられない。
なお、加熱駆動の場合、各圧力室52ごとに昇温させたい量に応じてスイッチング時間(選択波形で加熱駆動波形92をオンとしている期間)を切り換えるパルス変調を行っている。
最小スイッチング時間と最大スイッチング時間は、予め決められている。最小スイッチング時間は、加熱駆動波形の1波(又は1山)とする。これより短いと、圧電体58に不要な振動を生じさせるからである。最大スイッチング時間は、インクが加熱により発泡しない時間とする。発泡温度はインクと発熱面との接触状態により変動するので、マージンを見込んで発泡温度は10〜15℃低いものとして最大スイッチング時間を決めるのが、好ましい。
また、スイッチングタイミング(ON/OFFを切り換えるタイミングである)は、基本波形901が基準電圧(例えば24V)である間とする。基準電圧である間にスイッチングしないと、圧電体58に不要な振動を生じさせるからである。
なお、メニスカス微振動は、吐出駆動及び加熱駆動とは並行して行う必要がない。したがって、メニスカス微振動を行うときには、吐出駆動及び加熱駆動の選択を指示する選択波形とは別の選択波形がプリント制御部150からヘッドドライバ156に与えられる。
[温度センサの基本配置パターン]
共通液室55内の温度センサ80の各種の配置パターンについて、図10を用いながら説明する。
図10(a)は、第1の基本配置パターンを示す模式図である。
共通液室55は、共通液室55の外部から共通液室55にインクが供給される共通インク供給口551と、共通液室55から各圧力室52に個別にインクを供給する2次元配列された複数の個別インク供給口53(図10では図示を省略)と、共通液室55から複数の圧力室52に供給されなかった未使用のインクを共通液室55から共通液室55の外部に排出する共通インク排出口552を有している。
このような共通液室55には、図10(a)に示されるように、複数の温度センサ80が、共通液室55内のインクの温度分布を効率良く検出するように、圧力室52の数(個別インク供給口53の数に等しい)よりも少ない数だけ、図2に示されるような圧力室52の配置パターンとは異なる配置パターンで、配置されている。
図10(a)中で共通インク供給口551から共通インク排出口552へ達する矢印付きの線71、72、73は、共通液室55内の多数の流線の中から、予め選択された3本の代表的な流線(代表流線)である。このような3本の代表流線71、72、73のうちで、共通液室55の中央720よりも共通液室55の一方の側壁(図中では上側の壁)553に近い位置710を通る代表流線71を第1の代表流線と呼ぶことにし、共通液室55の中央720を通る代表流線72を第2の代表流線と呼ぶことにし、共通液室55の中央720よりも共通液室55の他方の側壁(図中では下側の壁)554に近い位置730を通る代表流線73を第3の代表流線と呼ぶことにする。
ここで、流線とは、共通液室55内でのインクの流動経路を示す。
本実施形態において、具体的には、共通液室55から複数の圧力室52に対して個別インク供給口53を介したインクの供給がない状態(すなわちノズル51からのインクの吐出が全くない状態)において、共通インク供給口551から共通インク排出口552へ至るまでインクが流動するその流動の軌跡を流線としている。
なお、図10(a)において、共通液室55は、説明の便宜上、共通インク供給口551の幅及び共通インク排出口552の幅を共通液室55の幅と略同一にして形成されている。また、3本の代表流線71、72、73におけるインクの流速は、全て等しいものとする。
すなわち、第1の基本配置パターンにおいて、第1〜第3の代表流線71、72、73は、共通インク供給口551から共通インク排出口552へ至る、互いに平行な直線形状であって一定流速の流線である。
そして、第1の基本配置パターンでは、各代表流線71、72、73に沿って、2つずつ温度センサ80が配置されている。
また、第1の基本配置パターンでは、代表流線に垂直な2本の垂線に沿って、それぞれ3つずつ温度センサ80が配置されている。なお、各垂線は、共通インク供給口551からのインクの到達時間(単に「インク到達時間」と称する)が等しい点同士を結んでなる線(単に「等時線」と称する)である。
具体的には、インク到達時間がt1である等時線に沿って、3つの温度センサ80が配置されている。また、インク到達時間がt2である等時線に沿って、3つの温度センサ80が配置されている。
図10(b)は、第2の基本配置パターンを示す模式図である。
図10(b)では、図10(a)とは異なり、共通インク供給口551の幅及び共通インク排出口552の幅を共通液室55の幅よりも小さくして形成してある。また、図10(b)では、図10(a)と同様に、共通液室55内の多数の流線の中から、予め選択された3本の代表流線71、72、73を矢印付きで示している。ただし、3本の代表流線71、72、73は、形状が互いに異なっているとともに、流速も互いに異なっている。
具体的には、第1の代表流線71は、共通インク供給口551を始点として、共通液室55の中央720から離れて共通液室55の一方の側壁(図中では上側の壁)553の近傍を通り、共通インク排出口552へ至る曲線形状の流線である。第2の代表流線72は、共通インク供給口551を始点として、共通液室55の中央720を通り、共通インク排出口552へ至る直線形状の流線である。第3の代表流線73は、共通インク供給口551を始点として、共通液室55の中央720から離れて共通液室55の他方の側壁(図中では下側の壁)554の近傍を通り、共通インク排出口552へ至る曲線形状の流線である。
流速については、共通液室55の中央720を通る第2の代表流線72の流速は、共通液室55の中央から離れて側壁553、554の近傍を通る第1の代表流線71及び第3の代表流線73の流速と比較して大きい。
このような複数の代表流線71、72、73のそれぞれに沿って、2つずつ温度センサ80が配置されている。
また、インク到達時間が等しい等時線に沿って、複数の温度センサ80が配置されている。具体的には、インク到達時間がt1である等時線に沿って、3つの温度センサ80が配置されている。また、インク到達時間がt2である等時線に沿って、3つの温度センサ80が配置されている。
図10(c)は、第3の基本配置パターンを示す模式図である。
図10(c)に示す共通液室55は、共通インク供給口551の幅及び共通インク排出口552の幅が共通液室55の幅と略同一にして形成されている。また、共通液室55内の多数の流線の中から、図10(a)に示す第1の基本配置パターンの代表流線と同一の3本の代表流線71、72、73が予め選択されており、これらの3本の代表流線71、72、73はインクの流速が等しいものとする。
第3の基本配置パターンでは、図10(a)に示す第1の基本配置パターンと比較して、1本の代表流線に配置される温度センサ80の数が少なくなるようにして、各代表流線71、72、73にそれぞれ温度センサ80が配置されている。
具体的には、共通インク供給口551から共通液室55内に同時に流入したインクがそれぞれの代表流線71、72、73に沿って流れ、共通液室55内の複数の温度センサ80に到達するとき、これらの温度センサ80に同時にインクが到達するように、代表流線71、72、73に対して垂直な一本の垂線に沿って3つの温度センサ80が配置されている。詳細には、インク到達時間が所定時間tである等時線に沿って、3つの温度センサ80が配置されている。
図10(d)は、第4の基本配置パターンを示す模式図である。
図10(d)では、図10(c)とは異なり、共通インク供給口551の幅及び共通インク排出口552の幅を共通液室55の幅よりも小さくして形成してある。また、図10(d)では、図10(c)と同様に、共通液室55内の多数の流線の中から、予め選択された3本の代表流線71、72、73を矢印付きで示している。ただし、3本の代表流線71、72、73は、形状が互いに異なっているとともに、流速が互いに異なっている。
なお、第4の基本配置パターンにおける3本の代表流線の形状は、図10(b)に示す第2の基本配置パターンにおける3本の代表流線の形状と同じである。
第4の基本配置パターンでは、図10(b)に示す第2の基本配置パターンと比較して、1本の代表流線に配置される温度センサ80の数が少なくなるようにして、温度センサ80が配置されている。
具体的には、共通インク供給口551から共通液室55内に同時に流入したインクがそれぞれの代表流線71、72、73に沿って流れ、共通液室55内の複数の温度センサ80に到達するとき、これらの温度センサ80に同時にインクが到達するように、インク到達時間が等しい点同士を結んでなる等時線に沿って温度センサ80が配置されている。詳細には、インク到達時間が所定時間tである等時線に沿って、3つの温度センサ80が配置されている。
図10(e)は、第5の基本配置パターンを示す模式図である。
図10(e)において、共通インク供給口551の幅及び共通インク排出口552の幅は共通液室55の幅と略同一にして形成されている。また、代表流線71、72、73は、図10(a)に示す第1の基本配置パターンと本数、位置、形状、及び、流速が同じである。
第5の基本配置パターンでは、図10(a)に示す第1の基本配置パターンと比較して、1本の代表流線71、72、73に配置される温度センサ80の数が少なくなるようにして、温度センサ80が配置されている。
具体的には、共通インク供給口551から共通液室55内に同時に流入したインクが、それぞれの代表流線71、72、73に沿って流れ、共通液室55内の複数の温度センサ80に到達するとき、略等間隔の時間差dtをもって、異なる時間に到達する位置に複数の温度センサ80が配置されている。
詳細には、第1の代表流線71にはインク到達時間が所定時間t0である位置に温度センサ80がひとつ配置され、第2の代表流線72にはインク到達時間がt0+dtである位置に温度センサ80がひとつ配置され、第3の代表流線73にはインク到達時間がt0+2×dtである位置に温度センサ80がひとつ配置されている。
このような第5の基本配置パターンでは、図10(a)に示す第1の基本配置パターンと比較して代表流線の1本ごとの情報量は減るが、共通液室55の全体について均等に温度情報を得ることができる。
[共通液室の具体的構造]
共通液室55の具体的な構造について、第1の態様から第3の態様までに分けて説明する。
図11は、第1の態様の共通液室55について構造を示す水平断面図である。
図11において、第1の代表流線71は、共通インク供給口551から、共通液室55の中央を離れて共通液室55の一方の側壁(図中では上側の壁)553の近傍を通り、共通インク排出口552へ至る曲線形状の流線である。第2の代表流線72は、共通インク供給口551から、共通液室の中央を通り、共通インク排出口552へ至る直線形状の流線である。第3の代表流線73は、共通インク供給口551から、共通液室55の中央を離れて共通液室55の他方の側壁(図中では下側の壁)554の近傍を通り、共通インク排出口552へ至る曲線形状の流線である。
また、共通インク室55の中央を通る第2の代表流線72の流速は、共通液室55の中央を離れて側壁の近傍を通る第1の代表流線71及び第3の代表流線73の流速と比較して大きい。
共通インク供給口551の近傍の温度センサ80―00を除いて、共通液室55の一方の側壁553寄りを通る第1の代表流線71には4つの温度センサ80―11、80−12、80−13、80−14が配置されており、共通液室55の中央を通る第2の代表流線72には3つの温度センサ80―21、80―22、80―23が配置されており、共通液室55の他方の側壁554寄りを通る第3の代表流線73には4つの温度センサ80−31、80−32、80−33、80−34が配置されている。
インクの到達時間がt1である線に沿っては、符号80−11、符号80−21及び符号80−31の3つの温度センサが配置されている。インクの到達時間がt2(>t1)である線に沿っては、符号80−12、符号80−22及び符号80−32の3つの温度センサが配置されている。インクの到達時間がt3(>t2)である線に沿っては、符号80−13、符号80−23及び符号80−33の3つの温度センサが配置されている。インクの到達時間がt4(>t3)である線に沿っては、符号80−14、及び符号800−34の2つの温度センサが配置されている。
なお、3本の代表流線71、72、73に沿った位置に加えて、他の位置に温度検出素子を追加してよく、本実施形態では、共通インク供給口551の周辺に2つの温度センサ80−01、80―02を補足的に配置している。
図12は、第2の態様の共通液室55の構造を示す水平断面図である。
図12において、共通インク室55の中央を通る代表流線(第2の代表流線72)、及び、共通インク室55の中央を離れて側壁553、554の近傍を通る代表流線(第1の代表流線71、第3の代表流線73)は、図10に示す第1の態様と同じである。
第2の態様では、第1の態様とは異なり、共通インク室55の中央を通る代表流線(第2の代表流線72)と共通インク室55の中央を離れて側壁の近傍を通る代表流線(第1の代表流線71、第3の代表流線73)との中間に、補足的に代表流線(第4の代表流線74、第5の代表流線75)を選択してある。
各代表流線71〜75の流速の大小関係については、中央の代表流線(第2の代表流線72)の流速>補足的な代表流線の流速(第4の代表流線74及び第5の代表流線75)の流速>側壁近傍の代表流線(第1の代表流線71及び第3の代表流線73)の流速、となっている。
また、各代表流線71〜75には、共通インク供給口551の近傍の温度センサ80−00を除くと、それぞれ2つずつ温度センサ80が配置されている。
インク到達時間と温度センサ80の配置パターンとの関係については、インク到達時間がt1である等時線に沿っては符号80―41及び符号80−51の温度検出素子が配置されており、インク到達時間がt2(>t1)である線に沿っては符号80−12、符号80−22及び符号80−32の温度検出素子が配置されており、インク到達時間がt3(>t2)である線に沿っては符号80−43、80−23及び符号80−53の温度検出素子が配置されており、インク到達時間がt4(>t3)である線に沿っては符号80−14及び符号80−34の温度検出素子が配置されている。
なお、第2の態様では、隣接している等時線同士では温度センサ80を配置する代表流線81〜85を異ならせている。
例えば、インク到達時間=t1である等時線には、補足した第4の代表流線74及び第5の代表流線75と交差する位置にそれぞれ温度センサ80−41、80―51を配置している。この等時線に隣接しているインク到達時間がt2の等時線には、中央を通る代表流線(第2の代表流線72)及び側壁近傍を通る代表流線(第1の代表流線71及び第3の代表流線73)と交差する位置にそれぞれ温度センサ80―22、80―12、80―32を配置している。この等時線に隣接しているインク到達時間がt3の等時線には補足した第4の代表流線74及び第5の代表流線75と交差する位置にそれぞれ温度センサ80−43、80−53を配置している。この等時線に隣接しているインク到達時間がt4の等時線には側壁近傍を通る代表流線(第1の代表流線71及び第3の代表流線73)と交差する位置にそれぞれ温度センサ80−14、80−34を配置している。
なお、3本の代表流線71、72、73に沿った位置に加えて、他の位置に温度検出素子を追加してよく、本実施形態では、共通インク供給口551の周辺に2つの温度センサ80−01、80−02を補足的に配置している。
図13は、第3の態様の共通液室55の構造を示す平面図である。
図13において、予め選択された代表流線71、72、73及び温度センサ80の配置パターンは、図10に示す第1の態様と同じである。
なお、第3の態様では、第1の態様および第2の態様とは異なり、圧電体58の加熱駆動によって加熱を行うだけではなく、共通液室55内に配置された加熱素子82によっても加熱を行う。
ところで、共通インク供給口551と共通インク排出口552を有する共通液室55は、全体的に見ると、共通インク供給口551から共通インク排出口552へ至る方向へインクが流動する。つまり、局部的には様々な方向へインクが流れているとしても、全体的には一様な方向にインクが流れている。すなわち、共通液室55内のある部分で温度変化が発生すると、その影響は、インクの流れの下流方向に及ぶことになる。このようなインクの流れを考慮した温度制御を行うことにより、圧力室52の数やノズル51の数よりも少ない数の加熱素子82により、2次元的な温度分布における加熱制御を効率よく且つ的確に行うことが可能となる。
図13において、複数の加熱素子82は、圧力室52の数よりも少ない数だけ(すなわちノズル51の数よりも少ない数だけ)、圧力室52の配置パターンとは異なる配置パターンで、共通液室55内に配置されている。
具体的には、加熱素子82は、温度センサ80の配置位置に対して、その温度センサ80が位置する流線の上流側に、その温度センサ80に近接させて配置されている。こうすることで、加熱素子82による加熱制御結果が、その加熱素子82の下流に近設した温度センサ80により直ちに検出されることになるので、適当な加熱制御を行うことができる。
なお、図13は、図示の便宜上、温度制御用の電気熱変換素子として、加熱素子82のみを共通液室55内に配置した場合を示しているが、共通液室55のインクを冷却する複数の冷却素子(図示を省略)を共通液室55内に配置してもよい。また、加熱素子及び冷却素子の両方を配置する代わりに、加熱及び冷却を行うペルチェ素子を配置してもよい。
具体的には、冷却素子を、温度センサ80の配置位置に対して、その温度センサ80が位置する流線の上流側に、その温度センサ80に近接させて配置してもよい。こうすることで、冷却素子による温度制御結果が、その冷却素子の下流に近設した温度センサ80により直ちに検出されることになるので、適当な冷却制御を行うことができる。
加熱素子82(又は冷却素子)は、温度センサ80の配置位置に対して、その温度センサ80が位置する流線の下流側に、その温度センサ80に近接させて配置してもよい。こうすることで、温度センサ80による温度検出結果に基づいて直ちに加熱素子82(又は冷却素子)により所望の温度制御を行うことができる。
また、加熱素子82(又は冷却素子)は、その加熱素子82(又は冷却素子)の周辺に位置する複数の温度センサ80から略均等に離れるように配置してもよい。こうすることで、加熱素子82(又は冷却素子)による温度制御結果が周辺のインクに伝わった状態を測定できることになるので、適当な温度制御を行うことができる。
図13に示すような第3の態様の共通液室55を備えた画像形成装置10では、圧電体58の加熱駆動による第1の温度調整と、共通液室55に配置した加熱素子82(又は冷却素子)による第2の温度調整とを、併用することができる。このような併用はプリント制御部150の制御によって実行される。併用する場合、バイアス的な基準の温度調整量(複数の圧力室52にわたって同じ温度調整量)の温調を共通液室55内の加熱素子82(又は冷却素子)により行い、制御残差(各圧力室52ごとに異なる基準の温度調整量との差分)の温調を圧電体58の加熱駆動により行う。そうすると、圧電体58の制御量が減らせるので、圧電体58に対する加熱駆動波形のインク吐出1周期に占める割合を減らすことができ、吐出周期を小さくすることができる。
なお、このような併用制御は、図9を用いて説明したような吐出駆動波形91と加熱駆動波形92とを有する基本波形901を用いてスイッチングを行う場合であっても、また、吐出駆動波形と加熱駆動波形とを別々に生成してこれらの駆動波形をスイッチングするようにした場合であっても、適用できる。いずれの場合であっても、加熱駆動時間を短くすることができ、吐出周期を小さくすることができる。
[柱状配線]
なお、図4に示したインク吐出ヘッド50は、圧電体58の個別電極57から共通液室50の底面に沿って駆動配線を配置しているが、このように共通液室50の底面に沿って圧電体58の駆動配線を配置する代わりに、図14及び図15に示すように、共通液室50を垂直に貫くようにして柱状の配線(柱状配線)60を配置してもよい。
図14は、柱状配線60を共通液室55内に設けたインク吐出ヘッド50を模式的に示す斜視透視図である。図15は、そのインク吐出ヘッド50の具体的な断面図である。図14及び図15において、図4に示す柱状配線のない場合と同じ構成要素には同じ符号を付してあり、詳細な説明を省略する。なお、図14は柱状の配線構造を簡略に示す模式図であるため、図15に示す温度センサ80等の一部の部品は省略している。
図14及び図15において、柱状配線60は、圧電体58の配置面に対して略垂直に共通液室内を立ち上がり、共通液室55を貫通して、共通液室55の天面に至っている。柱状配線60の圧電体58側の電極59は、圧電体58の個別電極57から延在して形成されている。柱状配線60の外部側(共通液室55の上壁62側)の電極60aは、図1のヘッドドライバ156に接続されている。柱状配線60の接液面には絶縁膜68が形成されている。
図15に示すように、温度センサ80及び加熱素子82は、柱状配線60を避けるようにして共通液室55の天面に取り付けられている。このような場合、代表流線は、図10〜図13に示した代表流線71、72、73とは一般に形状が異なることになる。このような場合にも、温度センサ80及び加熱素子82は、複数の流線の中から予め選ばれた代表流線上に配置され、本発明を適用した温度分布検出が行われる。
[インク温度に基づく吐出振動制御]
なお、温度センサ80によって検出したインク温度のばらつき結果に対し、インク温度に応じて駆動力を調整し、インク温度が低い圧力室52では、吐出力が大きくなるように制御する。吐出力は、吐出インク量、及び/又は、インク吐出速度を目標値に合わせるように決定される。
例えば、各圧力室52ごとに圧力室52内のインクの温度を特定する。このような各圧力室ごとのインク温度の特定は、図11〜図13に示したように共通液室55内に設けた温度センサ80の検出結果に基づいて各圧力室52ごとのインク温度を間接的に特定するようにしてもよく、また、実際に各圧力室52ごとに実際に温度センサを配置して各圧力室52ごとのインク温度を直接的に特定するようにしてもよい。そして、図16に示すように、特定した各圧力室52ごとのインク温度に基づいて、吐出駆動波形の振幅を各圧力室52ごとに切り換える。
圧力室52内のインク温度が所定の第1の温度閾値よりも大きいとき、その圧力室52に対応する圧電体58には、標準の振幅AjtMよりも小さな振幅AjtSを有する吐出駆動波形を与える。
圧力室52内のインク温度が第1の温度閾値以下であって所定の第2の温度閾値(<第1の温度閾値)より大きいとき、その圧力室52に対応する圧電体58には、標準の振幅AjtMを有する吐出駆動波形を与える。
圧力室52内のインク温度が第2の温度閾値(<第1の温度閾値)以下であるとき、その圧力室52に対応する圧電体58には、標準の振幅AjtMよりも大きな振幅AjtLを有する吐出駆動波形を与える。
[製造ばらつきと絡めた応用的制御]
製造誤差などにより、初期的に吐出力の弱いノズルに対しては、そのノズル付近のインク温度を高くすることでインク粘度を下げ(図17)、流体抵抗を減らしインク飛翔速度を高める。
また、吐出力が略同一であって、インクの飛翔速度が異なると、媒体への到着に要する時間が変わり、ドット位置ばらつき、線ではジッタとして現れるので吐出力が略同一であれば飛翔速度を揃えることが重要である。
例として、インク粘度20cpでノズルでのインク速度が、粘度1.5倍でどう変化するかについては、基準状態では27.5m/sec、粘度1.5倍では21.9m/secとなる。
製造誤差などにより、安定的にドットサイズが小さくなるノズルに対しては、そのノズル付近のインク温度を高くすることで、ドットサイズを大きめに制御し、ドットサイズを所望の大きさにする。
また、逆にドットサイズが大きくなるノズルに対しては、そのノズル付近のインク温度を低くすることで、ドットサイズを小さめに制御し、ドットサイズを所望の大きさにする。
なお、図2に示すようにノズルを2次元マトリクス状に配列したフルラインのインク吐出ヘッドを有した画像形成装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、このようなフルラインのインク吐出ヘッドを前提条件とするものではない。例えば、主走査方向にスキャンするシャトルスキャン方式のインク吐出ヘッドを有する画像形成装置に本発明を適用することが可能であることは言うまでもない。
[プリント制御部が行う制御の例示]
プリント制御部150が行う代表的な制御を例示する。
(制御1)画像データに基づいて、複数の圧電体58のうちでインクを吐出すべきノズル51に対応している圧電体58を特定する。
(制御2)複数の温度センサ80による共通液室55の内部の温度分布の検出結果とプリント制御用メモリ152に予め記憶されている変換テーブル情報とに基づいて、複数の圧力室52内のインクの温度をそれぞれ特定する。特定した複数の圧力室52内のインクの温度が加熱されるべき温度であるか否かを判定する。すなわち、複数の圧電体58のうちで液体が加熱されるべき圧力室52に対応している圧電体58を特定する。具体的には、特定された各圧力室52ごとのインク温度が、所定の目標温度の範囲内にあるか否かを判定する。例えば、各圧力室52のインク温度が、予め決められた温度閾値以下であるか否かを判定し、温度閾値以下であれば加熱すべきと判定する。
(制御3)使用するインクとノズル51の周辺温度とに基づいて、メニスカス微振動を行うか否かを判定する。
(制御4)制御1、制御2、及び、制御3の判定結果に基づいて、ヘッドドライバ156に与える選択波形を生成し、ヘッドドライバ156に選択波形を与える。
(制御5)なお、加熱駆動を行う場合、各圧力室52ごとのインク温度に基づいて、加熱駆動波形のスイッチング時間(加熱駆動波形をオンとしている期間)を切り換える。具体的には、インク温度が低い圧力室52ほど、対応する圧電体58に加熱駆動波形を長い時間与える制御を行う。
(制御6)加熱駆動時、複数の圧電体58に加熱駆動波形を供給する場合には、複数の圧電体58の駆動を同時に開始してしまうと複数の圧電体58に同時に電流が流れ始めてしまうので、圧電体58のスイッチングタイミング(加熱駆動波形をオフからオンに切り換える時機)を異ならせる。
また、インク吐出ヘッド50の温度パターン制御には以下の通り各種ある。
(温度パターン制御1)濃度シェーディングを打ち消すような温度パターン制御。
(温度パターン制御2)むら(筋むら)を打ち消すような温度パターン制御。
(温度パターン制御3)画像のパターンへの依存(インクを打つ場所の偏り等への依存)に因るインク供給能力のばらつきを補なうような温度パターン制御。具体的には、インク供給の能力が間に合わない部分の温度を高くし、インクを供給する流路部分の流路抵抗を低減して供給を早くする。
(温度パターン制御4)ノズル51、圧電体58等のインク吐出性能に影響する部分の製造ばらつきにより、インク吐出速度、インク吐出量がばらつく事を補正するような温度パターン制御。
(温度パターン制御5)不吐出検出結果に応じて、リカバリを行うような温度パターン制御。
その他、本発明は、実施形態において説明した例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってもよいのはもちろんである。
10…画像形成装置、50…インク吐出ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、53…個別インク供給口、55…共通液室、56…振動板、57…個別電極、58…圧電体、60…柱状配線、71、72、73…代表流線、80…温度センサ、82…共通液室内の加熱素子(又は冷却素子)、110…主制御部、112…主メモリ、114…画像データ入力部、116…搬送制御部、118…インクID入力部、126…搬送部、150…プリント制御部、152…プリント制御用メモリ、154…基本波形生成部、156…ヘッドドライバ、551…共通インク供給口、552…共通インク排出口、553、554…共通液室の側壁