JP4644442B2 - 分岐状ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

分岐状ポリカーボネート樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は分岐状ポリカーボネート樹脂およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、生産性および成形性などが改善された分岐状ポリカーボネート樹脂およびその製造方法に関する。
一般に、ビスフェノールA等から製造されるポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械特性に優れることから、幅広い用途で使用されている。しかし、該ポリカーボネート樹脂については、ブロー成形、押出成形等の用途に用いた場合、溶融張力が低いため満足な成形品が得られず、また射出成形等において転写性等を向上させるため比較的分子量の低いポリカーボネート樹脂を用いた場合には、糸引き等により満足な成形品が得られないという欠点がある。
これを解決する方法として3個の官能基を有する分岐剤を添加して得た分岐状ポリカーボネート樹脂を用いる方法が知られている。(例えば特許文献1参照)
しかしながら、この方法によって得た分岐状ポリカーボネート樹脂は、確かに溶融張力や成形性が向上し、物性面では優れた特性を有するが、ポリマー製造におけるポリマー溶液の洗浄工程においてポリマーを含む有機相と副生物等を含む水相との分離性が悪く、生産性が低下するという課題がある。特に、水相に分岐剤を入れる方法や、有機溶媒に溶け難い分岐剤を用いると、半親水、半親油性のポリカーボネートオリゴマーが、水相と油相との間でクリーム状に溜まり、安定的な製造を阻害したり、分離時間に長時間を要したり、分離操作に多段階を必要とするなどの問題がある。
特開平3−182524号公報
本発明の目的は、溶融張力や成形性が高い上に、生産性に優れ、良好な成形品を効率良く生産することが可能な分岐状ポリカーボネート樹脂を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、分岐状ポリカーボネート樹脂を重合するにあたり、特定の構造を有するトリスフェノールシラン化合物を分岐剤として用いることにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、以下の分岐状ポリカーボネート樹脂およびその製造方法を提供する。
(1)二価フェノール、カーボネート前駆物質、分岐剤及び末端停止剤から得られ、分岐剤が下記一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物からなるものであることを特徴とする分岐状ポリカーボネート樹脂。
Figure 0004644442
(式中、Rは下記一般式(II)で表され、nは1〜100の整数であり、R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R''は炭素数2〜12のアルキレン基である。)
Figure 0004644442
(2)一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物からなる分岐剤を、二価フェノールに対して0.001〜4モル%用いて反応させて得られたものであり、粘度数が37〜132の範囲である(1)の分岐状ポリカーボネート樹脂。
(3)分岐剤が、一般式(I)のRが下記式(III) で表され、nが1であり、R’がメチル基からなる化合物である(1)又は(2)の分岐状ポリカーボネート樹脂。
Figure 0004644442
(4)二価フェノール及びホスゲンを界面重縮合させてポリカーボネートを製造するに当たり、分岐剤として下記一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物を用いることを特徴とする分岐状ポリカーボネートの製造方法。
Figure 0004644442
(式中、Rは下記一般式(II)で表され、nは1〜100の整数であり、R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R''は炭素数2〜12のアルキレン基である。)
Figure 0004644442
(5)二価フェノールと、一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物からなる分岐剤、及びホスゲンとを反応させてポリカーボネートオリゴマーを製造し、得られたポリカーボネートオリゴマーに、二価フェノール及び末端停止剤を反応させる(4)の分岐状ポリカーボネートの製造方法。
(6)分岐剤を有機溶媒に溶解された状態で用いる(4)または(5)の分岐状ポリカーボネートの製造方法。
本発明によれば、分岐状ポリカーボネート樹脂を重合するにあたり、特定の構造を有するトリスフェノール化合物を分岐剤として用いることにより、洗浄性が良く、成形時に溶融による垂れ(ブローダウン)や糸引きなどが少なく、溶融張力や成形性が高い上に、生産性に優れ、良好な成形品を効率良く生産することが可能な、分岐状ポリカーボネート樹脂が得ることができる。
本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール及びカーボネート前駆物質、分岐剤及び末端停止剤から製造される。
原料の二価フェノールとしては、ハイドロキノン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等やそれらのハロゲン誘導体があげられ、中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましく用いられる。これらの二価フェノールは単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。また、二価フェノール以外の2官能性化合物(例えば、デカンジカルボン酸のような二価カルボン酸等)を上記二価フェノールと一緒に用いてもよい。
カーボネート前駆物質としては、ホスゲン又は炭酸エステル化合物が用いられる。炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートがあげられる。これらの炭酸エステル化合物も単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
本発明は分岐剤として下記一般式(I)で表される化合物を使用するものである。
Figure 0004644442
(式中、Rは下記一般式(II)で表され、nは1〜100の整数であり、R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R''は炭素数2〜12のアルキレン基である。)
Figure 0004644442
R’の炭素数1〜10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、分岐状のものでも良い。
R''の炭素数2〜12のアルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基などが挙げられ、分岐状のものでも良い。nは好ましくは1〜50である。
一般式(I)で表される分岐剤の中で、特にR’がメチル基で、Rが下記一般式(III)で表され、nが1であるものが好適に用いられる。
Figure 0004644442
分岐剤の使用量は二価フェノールに対して、0.001〜4モル%が好ましく、更に好ましくは0.001〜3モル%である。分岐剤が0.001モル%以上とすることにより分岐剤による効果が得られ、溶融張力や成形性が十分となる。また、4モル%以下とすることによりポリカーボネートの溶解性が低下せず、生産上好ましい。
なお、一般式(I)で表される分岐剤は、有機溶媒に溶解された状態で用いることが好ましく、この有機溶媒としては、後述の界面重縮合反応に用いられる溶媒などが挙げられる。
末端停止剤としては一価フェノールであればどのような構造のものでもよく、特に制限はない。例えばp−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クレゾール、2,4,6−トリブロモフェノール、p−ブロモフェノール、4−ヒドロキシベンゾフェノン、フェノール、長鎖アルキルフェノール等が用いられる。これらの末端停止剤は単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂は、特に制限なく、上記の原料を用いて製造することができる。具体的には、例えば、二価フェノール及びホスゲンを界面重縮合させてポリカーボネートを製造するに当たり、分岐剤として一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物を用いる。この際、溶媒として、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、四塩化炭素などを用い、公知の方法により、二価フェノールとホスゲンとを反応させてポリカーボネートオリゴマーを製造し、得られたポリカーボネートオリゴマーに二価フェノール及び末端停止剤を反応させて得られる直鎖状ポリカーボネートの製造方法において、一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物からなる分岐剤は、二価フェノールとホスゲンとを反応させる工程、またはポリカーボネートオリゴマーに二価フェノールを反応させる工程の前に添加し反応させることが好ましく行われる。
このようにして得られる本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂は、粘度数(VN) が30〜150のものが好ましく、37〜132のものが更に好ましい。粘度数が30以上であると成形品の強度は良好であり、また150以下であると適度の溶融粘度および溶液粘度を有し、取扱いが良好である。
また、本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂の製造において、特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、離型剤、耐候剤、着色剤、核剤等の各種添加剤を配合してもよい。シート分野で建材用途として用いる場合は耐候剤を配合することが望ましく、また、発泡シートでは、核剤を配合することが望ましい。
本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂は、有機溶媒に可溶な特定の分岐剤を使用することで、溶融張力が高く、成形性が良好で、生産性に優れており、品質の良好な成形品を効率良く生産することができる。
以下に、本発明を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、ポリカーボネートの性状については、次のように測定、評価した。
(1)分岐剤量(mol%):フレークをアルカリ分解し、液体クロマトグラフィーにより求めた。
(2)粘度数(VN):ISO 1628−4に準拠して行なった。
(3)溶融張力:温度280℃、押出速度10mm/分、引取速度157mm/秒、オリフィスL/D=8/2.1で生じる張力(g)として測定した。
(4)分離時間:重合工程に用いた反応器(邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた1リットル槽型反応器)に、得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液(洗浄前)と、その溶液に対して15容量%の洗浄液(0.03mol/l・NaOH水溶液)を加え、回転数500回転で10分間の攪拌を行った後に静置し、水相と有機相(塩化メチレン相)が分離する時間を測定した。該分離時間が1時間以内の場合にはS(短い)、1時間を越えた場合にはL(長い)とする。
(5)糸引き:得られたポリカーボネートのフレーク5gを280℃に加温した10mm径のシリンダー内に充填した後、L/D=10/1mmのノズルから押出し、ストランドを作製した。押出し終了時に固化したストランド部分とノズルとの間に溶融したポリカーボネートによる糸引きが生じるか否かを評価した。ここで糸引きが見られると、射出成形の際にノズル先端から糸引きが生じ、成形不良を引起し易くなる。
実施例1
(オリゴマー合成工程)
5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液に、後に溶解するビスフェノールAに対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにビスフェノールA濃度が13.5重量%になるようにビスフェノールAを溶解し、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液40リットル/hrと塩化メチレン15リットル/hrおよびホスゲン4.0kg/hrを、内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40リットルのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入し、これに更にビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液2.8リットル/hr、25重量%水酸化ナトリウム水溶液0.07リットル/hr、水17リットル/hrおよび1重量%トリエチルアミン水溶液を0.64リットル/hrを添加して反応を行なった。
槽型反応器から溢れる反応液を連続的に抜出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度346g/l、クロロホーメート基濃度は0.73mol/lであった。
(重合工程)
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた1リットル槽型反応器に、上記オリゴマー溶液130ミリリットル、塩化メチレン95ミリリットル、トリエチルアミン53マイクロリットル、(HU−055B、構造式[(CH3)2(HOC6H4C3H6)SiO]3SiCH3 、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)230mgを仕込み、6.4重量%水酸化ナトリウム水溶液17.8gを攪拌下に添加し、20分間反応を行なった。この反応工程において反応温度が20℃以上にならないように冷却により制御した。
次いでp−tert−ブチルフェノール(末端停止剤、PTBP)889mgとビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:4.90gと亜二チオン酸ナトリウム16mgを水72ミリリットルに溶解した水溶液にビスフェノールA8.20gを溶解させたもの)を添加し、1時間重合反応を実施した。
希釈のため塩化メチレン600ミリリットルを加えた後、静置することでポリカーボネートを含む有機相と過剰のビスフェノールA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を、その溶液に対し順次15容量%の0.03mol/l・NaOH水溶液と0.2mol/l塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
各洗浄工程において、有機相と水相は1時間以内に分離が可能であった。
(フレーク化工程)
洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。ポリカーボネートの性状を第1表に示す。
比較例1
実施例1において分岐剤として1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)を105mg用いた他は実施例1と同様に行なった。但しTHPEは塩化メチレンへの溶解性が低いため、6.4重量%水酸化ナトリウム水溶液に溶解して添加した。得られたポリカーボネートの性状を第1表に示す。洗浄工程で水相と有機相の分離が遅く、また水相と有機相の間に泡状の相が形成され、1時間では分離しなかった。
参考例2
実施例1において分岐剤を用いなかった以外は実施例1と同様に行なった。得られたポリカーボネートの性状を第1表に示す。

実施例2〜5
実施例1において分岐剤および末端停止剤(PTBP)の添加量を変えて実施例1と同様に行なった。得られたポリカーボネートの性状を第1表に示す。
比較例3
実施例2においてHU−055Bに代えてTHPEを221mg用いた他は実施例2と同様に行なった。但しTHPEは塩化メチレンへの溶解性が低いため、6.4重量%水酸化ナトリウム水溶液に溶解して添加した。得られたポリカーボネートの性状を第1表に示す。洗浄工程で水相と有機相の分離が遅く、また水相と有機相の間に泡状の相が形成され、1時間では分離しなかった。
比較例4
実施例3においてHU−055Bに代えてTHPEを273mg用いた他は実施例3と同様に行なった。但しTHPEは塩化メチレンへの溶解性が低いため、6.4重量%水酸化ナトリウム水溶液に溶解して添加した。得られたポリカーボネートの性状を第1表に示す。洗浄工程で水相と有機相の分の分離が遅く、また水相と有機相の間に泡状の相が形成され、1時間では分離しなかった。
参考例5
実施例4において分岐剤を用いなかった以外は実施例4と同様に行なった。得られたポリカーボネートの性状を第1表に示す。

Figure 0004644442
Figure 0004644442

Claims (3)

  1. 二価フェノール及びホスゲンとを界面重縮合させてポリカーボネートを製造するに当たり、分岐剤として下記一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物を用いることを特徴とする分岐状ポリカーボネートの製造方法。
    Figure 0004644442
    (式中、Rは下記一般式(II)で表され、nは1〜100の整数であり、R’は炭素数1〜10のアルキル基、R’’は炭素数2〜12のアルキレン基である。)
    Figure 0004644442
  2. 二価フェノールと、一般式(I)で表されるトリスフェノール化合物からなる分岐剤、及びホスゲンとを反応させてポリカーボネートオリゴマーを製造し、得られたポリカーボネートオリゴマーに、二価フェノール及び末端停止剤を反応させる請求項1に記載の分岐状ポリカーボネートの製造方法。
  3. 分岐剤を有機溶媒に溶解された状態で用いる請求項1または2に記載の分岐状ポリカーボネートの製造方法。
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