JP4644052B2 - 心押台制御装置 - Google Patents

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被加工物をサーボモータによって駆動制御する心押台に装着された心押しセンターを用いて被加工物を支持する心押台制御装置に関する。
数値制御旋盤の被加工物を支持する心押台の駆動は、従来油圧駆動によるものが多かったが、近年サーボモータによって駆動制御する電動心押台が採用されてきている。
電動心押台は、サーボモータの駆動トルクを制御することにより被加工物の支持推力を自在に制御できるため、多品種少量ワークでの段取り時の推力変更などの非稼働時間が削減できたり、油圧ユニットを無くして機械の消費エネルギーを節約したりできるなどの利点がある。このような利点から電動心押台の採用が増加している。
図5は、サーボモータにより駆動制御される電動心押台の機構図の一例であり、サーボモータ9が回転駆動されることにより、サーボモータ9に連結された送りねじ106を介して心押台102が駆動制御され、心押台102に取り付けられた心押しセンター101が被加工物100のセンター穴と嵌合することによって被加工物100を支持するものである。
このような電動心押台の中に特許文献1に示すものがある。この装置は、心押しセンター(テールストックのセンター)が被加工物の一端に接触した時のセンターの位置を検出し、その位置があらかじめ設定した許容誤差範囲から外れた場合に、アラームを発して工作機械を停止する。心押台に搬入(セット)した被加工物の長さ寸法に誤差があったり、チャッキングミスによる被加工物の傾きにより寸法の誤差が生じたりすることもあり、このような誤差があまりに大きいまま加工を行うと加工精度の低下や作業の無駄を生じさせてしまうが、この従来技術によれば、心押しによる被加工物の固定作業時に前もってそのような誤差が許容範囲内かどうかを確認するので、上述のような問題を回避できる。
特開平2−083144号公報
しかし、被加工物を電動心押台に搬入(セット)し心押しにより固定した時点では心押しセンターの位置が許容誤差範囲にあっても、その後加工を行い、その加工の終了後に一旦心押しを解除し、更に別の加工のためにその被加工物に対して再度心押しを行った時点では、心押しセンターの位置が許容誤差範囲から外れてしまう場合がある。これは、例えば加工により生ずる熱による被加工物の膨張など、加工の影響によるものであり、最初の心押し固定時点での心押しセンターの位置が許容誤差範囲の限界ぎりぎりである場合に生じやすい。この熱等の加工の影響が消えてしまえば被加工物は元の寸法に戻るため、最初の心押し時点で許容誤差範囲内であれば本来その被加工物の寸法やチャック状態は問題ないはずだが、影響が消える前に次の加工を始める場合(現実にはこのような場合の方が一般的である)、この時点で許容誤差範囲外と判定され、工作機械を停止してしまったり、その被加工物を不良品として排出してしまったりする場合がある。
本発明は、加工による影響を考慮して適切に心押台の位置の確認を行うことができるようにする。
本発明は、サーボモータによって駆動制御する心押台に装着された心押しセンターを被加工物のセンター穴に押し付けて被加工物を支持する心押台制御装置において、心押定寸位置に対する許容範囲を記憶する定寸位置記憶手段と、心押台が被加工物に当接したときの心押台の位置を検出し、該位置が前記心押定寸位置に対する許容範囲内にあるか否かを判定し、この判定の結果に応じて異なる制御を行う定寸制御手段と、を備え、定寸位置記憶手段は、同一心押定寸位置に対して許容範囲を複数記憶し、定寸制御手段は、定寸位置登録手段に登録された同一心押定寸位置に対する複数の許容範囲のうち、選択されたものを用いて前記判定を行う、ことを特徴とする心押台制御装置を提供する。
本発明では、前記定寸位置記憶手段に記憶された同一心押定寸位置に対する複数の許容範囲には、基準となる第1許容範囲と、加工の熱による変形を考慮した第2許容範囲とが含まれる。
本発明によれば、同一の心押定寸位置に対して複数の許容範囲を設定できるので、例えば1つを最初に被加工物を搬入した時の許容範囲、別の一つを加工による熱等の影響を考慮した緩めの許容範囲として設定できる。そして、それら複数の許容範囲を適宜使い分けることで、例えば加工の影響がある時点の心押定寸確認では加工の影響を考慮した緩めの許容範囲で判定を行うことができるため、加工の影響により許容範囲外と判定されてしまう従来のような問題を解消できる。
本発明の一実施例を、図1の機能ブロック図を用いて説明する。なお、電動心押台の機械的構造は図5に示した通りなので、図5も適宜参照しつつ説明する。
心押指令部1は、図示しない手動操作あるいは加工(数値制御)プログラムに応じて心押指令を発生させて、心押台制御部2を起動する。起動された心押台制御部2は、サーボ制御部3、電力増幅部4を介してサーボモータ5のトルクを制御し心押台を駆動制御する。位置検出器6は心押台102の位置を検出し、心押台制御部2へフィードバックする。駆動トルク検出部7は、サーボ制御部3から時々刻々と出力されるトルク指令を検出し、心押台制御部2へフィードバックする。心押台制御部2は、心押台位置及びトルク指令のフィードバック値に基づき、心押台の位置制御及びサーボモータ5の駆動トルク制御を行う。
このような構成により、心押台制御部2は、被加工物100の心押しを行う場合、心押台102を心押の定寸位置に向かって駆動するようサーボモータ5を駆動制御する。これにより心押台102が定寸位置に到達すると、心押台102に装着された心押しセンター101が被加工物100のセンター穴に嵌合する。このとき、サーボモータ5があらかじめ設定された駆動トルク上限値に制限された駆動トルクで心押台102を被加工物100に押し付けることによって、被加工物100は所定の支持推力で支持される。
本実施形態では、このような電動心押台において、被加工物100自体の寸法誤差やチャッキングミス等による定寸位置の誤差を検知し、誤差が許容範囲を超える場合に所定のエラー処理を行う。
パラメータ設定部8は、心押台の各種制御パラメータを設定するための機構である。設定する制御パラメータとしては、例えば図2及び図5に示すように、心押台102の退避位置P0、アプローチ位置P1、定寸位置P2がある。定寸位置P2は、被加工物100を心押しにより固定する際の心押台102の目標位置である。退避位置P0は、被加工物100の心押しを解除して待機状態にあるときの心押台102の位置である。アプローチ位置P1は、退避位置P0と定寸位置P2との間に設定される、心押台の送り速度の切替地点である。すなわち、心押し指令を受けた場合、心押台制御部2は、退避位置P0からアプローチ位置P1までは心押台102を大きい送り速度V1で送り、アプローチ位置P1から定寸位置P2まではそれより小さい送り速度V2で心押台2を送ることで精密な制御を行う。送り速度V2の区間では、常時トルクを監視しながらサーボモータを回転させて送りを行う、いわゆる「トルクスキップ送り」で心押台102を送り、位置決めを行ってもよい。なお、これら送り速度V1,V2についてパラメータ設定部8で設定できるようにしてもよい。
また、定寸位置P2については、許容誤差範囲としての定寸確認範囲をパラメータ設定部8により設定することができる。定寸確認範囲は、図3に示すように、定寸位置P2に対してプラス方向の定寸範囲1(+OK)とマイナス方向の定寸範囲2(−OK)との組で表現できる。本実施形態では、この定寸確認範囲を、2種類設定可能とする。1つは主として被加工物100に加工を行う前の段階で用いる定寸確認範囲であり、もう一つは加工の影響を考慮する場合に用いる定寸確認範囲である。
図4に、パラメータ設定部8が提供するパラメータ設定画面200の表示例を示す。この画面中のパラメータ設定テーブル210には、定寸位置P2ごとに、アプローチ位置P1及び退避位置P0と、「センタ穴測定」及び「定寸確認」の確認範囲とを設定することができる(単位は例えばmm)。定寸位置は、被加工物の寸法によって決まるものであり、被加工物の種類毎に設定される。そして、この定寸位置ごとにアプローチ位置等の各パラメータが設定可能となっているわけである。
ここで「センタ穴測定」及び「定寸確認」の確認範囲が前述した2種類の定寸確認範囲である。このうち「センタ穴測定」は前述した主として加工開始前段階に用いる定寸確認範囲であり、「定寸確認」は加工の影響を考慮する場合の定寸確認範囲である。両者とも定寸位置に対するプラス・マイナス各方向の許容範囲(+OK,−OK)が設定可能であり、後者の方が熱変形等を考慮するため前者よりも許容範囲が広くなっている。
この他、パラメータ設定画面200には、各設定位置P0〜P2や許容範囲の関係を説明する説明図220が表示される。
本実施形態では、「センタ穴測定」及び「定寸確認」という各確認範囲をそれぞれ加工(数値制御)プログラムの別々の指令に対応づけておく。例えばそれらをM指令の別々のコードに割り当てる。例えばセンタ穴測定指令をM848とし、定寸確認指令をM56とすると、加工プログラム中にM848を記述すれば、「センタ穴測定」の厳しい確認範囲で心押台の位置確認を行うことができ、M56を記述すれば「定寸確認」の緩めの確認範囲で心押台の位置確認を行うことができる。例えば、当該心押台を備える工作機械に被加工物100を搬入した際にはM848の寸法確認を指令し、加工途中で一旦心押台102を退避させた後再び加工を始める場合や、一旦加工を終えて搬出した被加工物100に追い加工を施すために再度工作機械内に搬入した場合などには、指令M56により定寸確認を行う。
例えば加工プログラムから又は手動操作により指令M848を受けた場合、心押台制御部2は、サーボ制御部3を制御することで、心押台102を現在位置(通常は退避位置P0)から定寸位置P2に向けて送る。このとき、位置検出器6が検出する心押台102の位置情報を監視し、退避位置P0からアプローチ位置P1までは送り速度がV1となるように制御し、アプローチ位置P1から定寸位置P2へと向かう区間では送り速度がV2となるように制御する。そして、速度V2での送り区間では、心押台制御部2は、駆動トルク検出部7が検出するトルク指令値を監視し、この指令値が所定値(これはあらかじめ設定されている)を超えた時に、その時点で位置検出器6が検出した心押台102の位置が、定寸位置P2に対して「センタ穴測定」の確認範囲内にあるかどうかを判定し、範囲内であればサーボモータにブレーキを掛け、サーボ制御をオフしてその指令M848に対する動作を完了する。一方、確認範囲から外れていれば、所定のエラー処理を行う。エラー処理としてはアラーム発報や機械停止といったものの他、ローダやロボットなど被加工物を自動搬送可能な自動搬入出機器を備える旋盤などでは、これら自動搬入出機器に被加工物搬出指令を発して被加工物を搬出し、新たな被加工物を搬入させることにより、機械の停止を防止し生産性を向上させるようにしても良い。
なお、厳密には、電動心押台の機械的機構には弾性によるたわみが存在するので、心押台制御部2は、トルク指令値が前述の所定値に達して一旦心押台の送りを止めたあと、更にその弾性による機械的機構のたわみが完了するまでの時間(「心押バネたわみ時間」とも呼ばれ、あらかじめ心押台制御部2に登録されている)の経過を待ってから、心押台102の現在位置が確認範囲内かどうかの判定を行う。
指令M56を受けた場合の心押台制御部2の動作は、定寸の確認範囲が指令M848と異なり「定寸確認」の確認範囲となる以外は、指令M848の場合と同様でよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、定寸位置の許容誤差範囲(定寸確認範囲)を複数設定可能とし、それら各範囲を適宜選択可能としたので、例えば加工の影響等を考慮する必要がある場合とない場合とで異なる範囲を用いてエラー判定を行うことができる。これにより、加工の影響が消える前に次の心押しを始める場合などに、本来不必要なエラー発報等の不具合の発生を抑止できる。
なお、以上の例では、電動心押台に設定する定寸確認位置は2種類であったが、これを3種類以上にしてよりきめ細かな制御を可能とすることも好適である。
本発明の心押台制御装置の一実施例を示すブロック図である。 心押台制御における位置パラメータを説明するための図である。 心押台制御における定寸確認範囲を説明するための図である。 心押台制御パラメータの設定画面例を示す図である。 電動心押台の機械的機構の一例を示す図である。
符号の説明
1 心押指令部、2 心押台制御部、3 サーボ制御部、4 電力増幅部、5 サーボモータ、6 位置検出器、7 駆動トルク検出部、8 パラメータ設定部。

Claims (3)

  1. サーボモータによって駆動制御する心押台に装着された心押しセンターを被加工物のセンター穴に押し付けて被加工物を支持する心押台制御装置において、
    心押定寸位置に対する許容範囲を記憶する定寸位置記憶手段と、
    心押台が被加工物に当接したときの心押台の位置を検出し、該位置が前記心押定寸位置に対する許容範囲内にあるか否かを判定し、この判定の結果に応じて異なる制御を行う定寸制御手段と、
    を備え、
    定寸位置記憶手段は、同一心押定寸位置に対して許容範囲を複数記憶し、
    定寸制御手段は、定寸位置登録手段に登録された同一心押定寸位置に対する複数の許容範囲のうち、選択されたものを用いて前記判定を行
    前記定寸位置記憶手段に記憶された同一心押定寸位置に対する複数の許容範囲には、基準となる第1許容範囲と、加工の熱による変形を考慮した第2許容範囲とが含まれる、
    ことを特徴とする心押台制御装置。
  2. 前記定寸制御手段は、同一心押定寸位置に対する複数の許容範囲のうち、数値制御プログラムから指示されたものを選択して前記判定を行うことを特徴とする請求項1記載の心押台制御装置。
  3. 前記定寸制御手段は、前記サーボモータのトルク値を監視し、該トルク値が所定値以上になった場合に前記心押台が被加工物に当接したと判定することを特徴とする請求項1記載の心押台制御装置。
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