JP4641812B2 - 窒化ガリウム系化合物半導体積層物およびその製造方法 - Google Patents

窒化ガリウム系化合物半導体積層物およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、高出力の青色、緑色、あるいは紫外領域の光を発する発光素子の製造に有用な窒化ガリウム系化合物半導体積層物およびその製造方法に関する。
近年、短波長の光を発光する発光素子用の半導体材料として、窒化物半導体材料が注目を集めている。一般に窒化物半導体は、サファイア単結晶を始めとする種々の酸化物結晶、炭化珪素単結晶およびIII−V族化合物半導体単結晶等を基板として、その上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)あるいは水素化物気相エピタキシー法(HVPE法)等によって積層される。
現在、工業レベルで最も広く採用されている結晶成長方法は、基板としてサファイアやSiC、GaN、AlN等を用い、その上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)を用いて作製する方法で、前述の基板を設置した反応管内にIII族の有機金属化合物とV族の原料ガスを用い、温度700℃〜1200℃程度の領域でn型層、活性層およびp型層を成長させる。
各半導体層の成長後、基板もしくはn型層に負極を形成し、p型層に正極を形成することによって発光素子を得ることが出来る。
従来の活性層は、発光波長を調整するために組成を調整したInGaNを用い、これをInGaNよりバンドギャップの高い層で挟むダブルへテロ構造や、量子井戸効果を使う多重量子井戸構造が使われている。
多重量子井戸構造の活性層を有する窒化ガリウム系化合物半導体発光素子において、井戸層の膜厚を20−30Åとすると、良好な出力が得られる。しかし、駆動電圧が高いという問題点があった。反対に、井戸層の膜厚を20Å以下などとすると、駆動電圧は低下するが、良好な出力が得られない。
また、次のような活性層をドット状に形成した量子ドット構造が提案されている。
例えば、特開平10−79501号公報および特開平11−354839号公報等には、量子ドット構造の活性層を含む発光素子が開示され、量子ドット構造はアンチサーファクタント効果によって形成されている。しかし、ここで提案された量子ドット構造では、電流を流す面積に対して発光体(ドット)が覆う面積が小さすぎるため、一つ一つの発光体の発光効率が向上したとしても、全体としては流した電流に対しての発光出力は低下するという問題点がある。なお、これらの公報ではドットが覆う面積は規定されていないが、明細書中に記載されたドットのサイズと密度の好適値から計算すると、ドットで覆われる面積よりも隙間の面積の方がはるかに大きい。
さらに、量子ドット構造よりも発光体サイズの大きい量子箱構造も提案されている。
例えば特開2001−68733号公報は、Inを含む量子箱構造を開示し、一旦形成した量子井戸構造を、水素中でアニールすることにより井戸層の昇華を引き起こし、量子箱構造としている。各発光体のサイズは0.5nm≦高さ≦50nm、0.5nm≦幅≦200nmが好ましいとされ、実施例では高さ6nmx幅40nmで作製している。発光体の密度は規定されていないが、掲載された図面からは、発光体で覆われる面積は隙間の面積と同等か隙間の方が大きい。
要するにこれらの技術では、量子ドットあるいは量子箱の形成されていない領域では、ドットあるいは箱は全く形成されていない構造とされている。また、量子箱あるいはドットで覆われた面積は非常に小さく、その隙間領域の面積の方が広い。
このような、発光体であるドットあるいは箱の覆う面積が小さく、ドットあるいは箱の覆わない領域で発光体が形成されていないという構造では、駆動電圧低下の効果は見られるものの、同時に発光出力の低下を招くという問題点があり、実際には使用に耐えない。
さらに、特開2001−68733号公報では、通常の量子井戸構造を形成後、水素中でアニールして貫通転位上のInGaN結晶を分解させて量子箱構造を形成している。しかし、量子井戸構造を水素中でアニールすることは、残って量子箱構造となるべき部分でもIn抜けを誘発し、発光波長を短波長化させるという不具合を生じる。
また、米国特許出願公開US2003/0160229A1号明細書には、周期的に膜厚が異なる井戸層を持つ多重量子井戸構造が開示されている。
ここに示された構造は、井戸層の両側に膜厚の変化を生じている。このことは、井戸層の凹凸を埋め込んだ障壁層の平坦性が悪いことを意味しており、このような構造では、駆動電圧の低下と共に、発光強度の低下を招く。
特開平10−79501号公報 特開平11−354839号公報 特開2001−68733号公報 米国特許出願公開US2003/0160229A1号明細書
本発明の目的は、良好な発光出力を保ったまま駆動電圧を低下させた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造に有用な窒化ガリウム系化合物半導体積層物を提供することである。
また、本発明の別の目的は、発生する光の短波長化を誘発しないような活性層の形成方法を提供することである。
本発明は、以下の発明を提供する。
(1)基板上にn型層、活性層およびp型層が、活性層をn型層とp型層が挟むように配置され、活性層が厚膜部および薄膜部からなる窒化ガリウム系化合物半導体積層物において、活性層の下面(基板側)は平坦であり、上面の凹凸により厚膜部および薄膜部が構成されていることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(2)活性層がInを含むことを特徴とする上記1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(3)活性層の上面にInを含まない薄層が存在することを特徴とする上記2項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(4)厚膜部の厚さが15Å〜50Åであることを特徴とする上記1〜3項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(5)厚膜部の厚さが15Å〜30Åであることを特徴とする上記4項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(6)積層物断面の厚膜部の幅が10nm以上(数平均値)であることを特徴とする上記1〜5項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(7)積層物断面の厚膜部の幅が100nm以上であることを特徴とする上記6項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(8)薄膜部の厚さが15Å以下であることを特徴とする上記1〜7項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(9)積層物断面の薄膜部の幅が100nm以下(数平均値)であることを特徴とする上記1〜8項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(10)積層物断面の薄膜部の幅が50nm以下であることを特徴とする上記9項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(11)厚膜部と薄膜部の膜厚の差が10Å〜30Åであることを特徴とする上記1〜10項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(12)厚膜部の面積が活性層全体の30%以上であることを特徴とする上記1〜11項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(13)厚膜部の面積が活性層全体の50%以上であることを特徴とする上記12項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(14)活性層が多重量子井戸構造の井戸層のうちの少なくとも1つであることを特徴とする上記1〜13項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(15)多重量子井戸構造が3〜10回積層された構造であることを特徴とする上記14項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(16)多重量子井戸構造が3〜6回積層された構造であることを特徴とする上記15項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(17)多重量子井戸構造の障壁層がGaN、AlGaNおよび活性層を形成するInGaNよりもIn比率の小さいInGaNから選ばれた窒化ガリウム系化合物半導体であることを特徴とする上記14〜16項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(18)障壁層がGaNであることを特徴とする上記17項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(19)障壁層の膜厚が70Å〜500Åであることを特徴とする上記17または18項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(20)障壁層の膜厚が160Å以上であることを特徴とする上記19項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(21)上記1〜20項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物のn型層に負極を、p型層に正極をそれぞれ設けたことを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(22)素子構造がフリップチップタイプであることを特徴とする上記21項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(23)正極の構造が反射型であることを特徴とする上記22項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(24)基板上にn型層、活性層およびp型層が、活性層をn型層とp型層が挟むように配置された窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法において、活性層を形成する工程が、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる工程およびその窒化ガリウム系化合物半導体の一部を分解または昇華させる工程を含むことを特徴とする活性層が厚膜部と薄膜部からなる窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(25)活性層がInを含むことを特徴とする上記24項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(26)窒素源およびInならびにGaを含むIII族金属源を供給しつつ活性層を成長させた後、In金属源の供給を停止して活性層表面にInを含まない薄層を形成させることを特徴とする上記25項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(27)成長させる工程の基板温度T1および分解または昇華させる工程の基板温度T2がT1≦T2であることを特徴とする上記24〜26項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(28)T1が650〜900℃の範囲であることを特徴とする上記27項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(29)T2が700〜1000℃の範囲であることを特徴とする上記27または28項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(30)成長工程が窒素源およびIII族金属源を含む雰囲気下であり、分解または昇華工程が窒素源を含みかつIII族金属源を含まない雰囲気下であることを特徴とする上記24〜29項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(31)分解または昇華工程をT1からT2へ昇温させつつ行なうことを特徴とする上記30項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(32)T1からT2への昇温を、1℃/分〜100℃/分の昇温速度で行なうことを特徴とする上記31項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(33)昇温速度が5℃/分〜50℃/分であることを特徴とする上記32項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(34)T1からT2への昇温を30秒〜10分で行なうことを特徴とする上記31〜33項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(35)T1からT2への昇温を1分〜5分で行なうことを特徴とする上記34項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(36)活性層が多重量子井戸構造の井戸層のうちの少なくとも1つであって、該多重量子井戸構造の障壁層のうちの少なくとも1つを温度T2で成長させた後、T3に降温してさらに成長させることを特徴とする上記27〜35項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(37)T3がT1と同じ温度であることを特徴とする上記36項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
活性層の下面(基板側)を平坦にし、上面に凹凸を設けて、活性層を厚膜部および薄膜部から構成することを骨子とする本発明によれば、良好な出力を保ったまま駆動電圧を低下させた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が得られる。
また、活性層の薄膜部を窒素源の存在下で形成することにより、活性層から発生する光の短波長化を防止することができる。
窒化ガリウム系化合物半導体発光素子のn型層、活性層およびp型層を構成する窒化ガリウム系化合物半導体として、一般式AlxInyGa1-x-yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体が周知であり、本発明におけるn型層、活性層およびp型層を構成する窒化ガリウム系化合物半導体としても、一般式AlxInyGa1-x-yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体を何ら制限なく用いることができる。
基板には、サファイア、SiCなどを用いることができるほか、GaP、GaAs、Si、ZnO、GaNなど従来公知の基板を何ら制限なく用いることができる。
GaN基板を除いて、原理的には窒化ガリウム系化合物とは格子整合しないこれらの基板上に窒化ガリウム系化合物半導体を積層するために、特許第3026087号公報や特開平4−297023号公報に開示されている低温バッファ法や特開2003−243302号公報などに開示されているSP(Seeding Process)法と呼ばれる格子不整合結晶エピタキシャル成長技術を用いることができる。特に、GaN系結晶を作製することが可能な程度の高温でAlN結晶膜を作製するSP法は、生産性の向上などの観点で優れた格子不整合結晶エピタキシャル成長技術である。
低温バッファ法やSP法などの格子不整合結晶エピタキシャル成長技術を用いた場合、その上に積層する下地としての窒化ガリウム系化合物半導体は、アンドープかもしくは5×1017cm-3程度の低ドープのGaNであることが望ましい。下地層の膜厚は、1〜20μmであることが望ましく、5〜15μmであることが更に好適である。
本発明において活性層は厚膜部および薄膜部からなっている。本発明における「厚膜部」とは、その厚さが活性層の平均厚さ以上の部分を意味し、「薄膜部」とは活性層の平均厚さ未満の部分を意味する。「活性層の平均厚さ」とは、活性層の最大厚さと最小厚さを平均した厚さである。なお、薄膜部において活性層のない部分があったり、非常に薄い場合には、「厚膜部」とは、その厚さが活性層の最大厚さの1/2以上の部分を意味し、「薄膜部」とは活性層の最大厚さの1/2未満の部分を意味することになる。
厚膜部と薄膜部の判定および測定は、窒化ガリウム系化合物半導体の断面TEM写真によってできる。例えば、500,000倍から2,000,000倍の断面TEM写真で観察すると、薄膜部と厚膜部の幅と膜厚を測定することができる。実施例1によって作製した試料の2,000,000倍の断面TEM写真を図1に示す。図中、1が活性層(井戸層)で、A、BおよびCが薄膜部である。2は障壁層、3はn−クラッド層、および4はp−クラッド層である。倍率を考慮して厚膜部および薄膜部の幅と膜厚を算出することができる。また、図2は倍率500,000倍の断面TEM写真であり、図中、1が活性層(井戸層)で、D、E、FおよびGが薄膜部である。2は障壁層、3はn−クラッド層、および4はp−クラッド層である。倍率を考慮してその幅と膜厚を算出することができる。
厚膜部あるいは薄膜部の厚さ、幅の測定は、断面TEM写真の複数箇所、例えば隣り合わせから10μmの間隔で10箇所観察し、数平均した値である。
活性層は、下面(基板側)がほぼ平坦であり、上面が凹凸になって厚膜部と薄膜部を生じている構造である。このような構造とした場合に、発光強度の低下が起こりにくく、また、エージングによる劣化の抑制の効果もある。
ここで言う平坦とは、例えば、上記断面TEMでの観察でその凹凸が1nm以下であるような場合を示す。更に望ましくは、0.5nm以下であり、凹凸が殆ど見えないことが特に望ましい。
また、上面の凹凸の大きさに比較して、下面の凹凸の大きさが1/5以下である場合に、活性層の基板側にある層(例えば多重量子構造の場合は障壁層)の結晶性は充分高いと言え、特性向上に効果がある。中でも、1/10以下であることが更に望ましく、下面には凹凸が見えないことが最も望ましい。
厚膜部の厚みは、15Åから50Å程度であることが望ましい。厚膜部を、この範囲以外の厚みとすると、発光出力の低下を招く。更に望ましくは、15Åから30Åの領域が好適である。また、厚膜部の幅は10〜5000nmであることが望ましい。更に、100〜1000nmが好適である。
薄膜部は膜厚が0である領域、即ち活性層が全くない領域を含んでも良いが、発光出力低下の原因になるので、その領域は少ない方が良い。活性層全体の面積の30%以下が好ましく、20%以下がさらに好ましく、10%以下だと特に好ましい。
薄膜部の幅は、1〜100nmが好ましい。さらに好ましくは5〜50nmが好適である。
この厚膜部と薄膜部の膜厚の差は10〜30Å程度が好ましい。薄膜部の膜厚としては15Å以下が好ましい。
電流が流れる領域において、厚膜部で覆われた領域の面積の比率は活性層全体に対して30〜90%であることが好ましく、駆動電圧の低減と出力の維持の両方を実現できる。更に好ましくは、厚膜部で覆われた領域の方が薄膜部で覆われた領域よりも大きい、つまり、厚膜部の面積比率が全体に対して50%以上である。
活性層は単一の層からなる単一量子井戸構造でもよいが、活性層である井戸層と障壁層とを交互に複数層積層させた多重量子井戸構造が、発光出力が向上するので好ましい。積層の回数は3回から10回程度が好ましく、3回から6回程度がさらに好ましい。多重量子井戸構造の場合、全ての井戸層(活性層)が厚膜部と薄膜部を備えている必要はなく、また、厚膜部および薄膜部それぞれの寸法や面積比などを各層によって変化させても良い。なお、多重量子井戸構造の場合、井戸層(活性層)と障壁層を併わせた全体を本明細書では発光層と呼ぶ。
障壁層は井戸層の凹部(薄膜部)を埋めて、その上面が平坦になっていることが好ましい。そうすることによって、次の井戸層の下面が平坦になる。
障壁層の膜厚は、70Å以上であることが好ましく、さらに好ましくは140Å以上である。障壁層の膜厚が薄いと、障壁層上面の平坦化を阻害し、発光効率の低下やエージング特性の低下を引き起こす。また、膜厚が厚すぎることは、駆動電圧の上昇や発光の低下を引き起こす。このため、障壁層の膜厚は500Å以下であることが好ましい。
活性層はInを含む窒化ガリウム系化合物半導体であることが好ましい。Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体は、後述する方法によって厚膜部および薄膜部を有する構造となりやすい結晶系であるからである。また、Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体は、青色の波長領域の発光を強い強度で発光することができる。
活性層がInを含む窒化ガリウム系化合物半導体である場合、活性層の表面にInを含まない薄層を設けることが好ましい。活性層中のInの分解昇華を抑制し、発光波長の安定制御が可能となり、好適である。
活性層には、不純物をドープすることができる。ドーパントとしては、ドナーとして知られているSiやGeが発光強度を増進するのに好適である。ドープ量は1×1017cm-3〜1×1018cm-3程度が好適である。これ以上多いと発光強度の低下を引き起こす。
多重量子構造の場合、障壁層は、GaNやAlGaNのほか、井戸層(活性層)を構成するInGaNよりもIn比率の小さいInGaNで形成することができる。中でも、GaNが好適である。
n型層は通常1〜10μm、好ましくは2〜5μm程度の厚さで、負極を形成するためのnコンタクト層と活性層よりもバンドギャップが大きく活性層に接しているnクラッド層からなる。nコンタクト層とnクラッド層は兼ねてもよい。nコンタクト層としてはSiまたはGeを高濃度にドープすることが好ましい。これらのドーパントをドープして形成したn型層は、キャリア濃度が5×1018cm-3から2×1019cm-3程度に調整されていることが好適である。
nクラッド層は、AlGaN、GaN、InGaNなどで形成することが可能であるが、InGaNとする場合には活性層のInGaNのバンドギャップよりも大きい組成とすることが望ましいことは言うまでもない。nクラッド層のキャリア濃度は、nコンタクト層と同じでも良いし、大きくても小さくても良い。その上に形成される活性層の結晶性をよくするために、成長速度、成長温度、成長圧力、ドープ量などの成長条件を適宜調節して、平坦性の高い表面とすることが好ましい。
またnクラッド層は、組成や格子定数の異なる層を、交互に複数回積層して形成しても良い。その際、積層する層によって組成のほか、ドーパントの量や膜厚などを変化させても良い。
p型層は通常0.01〜1μmの厚さで、活性層に接しているpクラッド層と正極を形成するためのpコンタクト層からなる。pクラッド層とpコンタクト層は兼ねることができる。pクラッド層は、GaN、AlGaNなどを用いて形成し、pドーパントとしてMgをドープする。電子のオーバーフローを防ぐため、活性層の材料よりも大きなバンドギャップを有する材料で形成することが望ましい。また、効率的に活性層にキャリアを注入できるように、高キャリア濃度の層として形成することが望ましい。
pクラッド層に関しても、組成や格子定数の異なる層を、交互に複数回積層して形成しても良い。その際、積層する層によって組成のほか、ドーパントの量や膜厚などを変化させても良い。
pコンタクト層は、GaN、AlGaN、InGaNなどを用いることができ、不純物としてMgをドープする。Mgをドープした窒化ガリウム系化合物半導体は、通常反応炉から取り出したままでは高抵抗であるが、アニール処理、電子線照射処理、マイクロ波照射処理など、活性化の処理を施すことでp伝導性を示すとされている。
また、pコンタクト層としてp型不純物をドープした燐化ホウ素を用いることもできる。p型不純物をドープした燐化ホウ素は、上記のようなp型化のための処理を一切行わなくてもp導電性を示す。
これらのn型層、活性層およびp型層を構成する窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は特に限定されず、MBE、MOCVD、HVPEなどの周知の方法を周知の条件で用いることができる。中でも、MOCVD法が好ましい。
原料には、窒素源としてアンモニア、ヒドラジン、アジ化物などを用いることができる。また、III族有機金属としてトリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、トリメチルアルミニウム(TMAl)などを用いることができる。また、ドーパント源としてシラン、ジシラン、ゲルマン、有機ゲルマニウム原料、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)などを用いることができる。キャリアガスには窒素および水素を使用できる。
厚膜部および薄膜部からなる活性層は、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、その一部を分解または昇華させることによって形成することが好ましい。Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体は分解または昇華し易いので好ましい。
Inを含む活性層の成長は、基板温度を650〜900℃の範囲で行なうことが望ましい。それより低い温度では結晶性の良い活性層が得られないし、それより高い温度では活性層に取り込まれるInの量が少なくなり、意図する波長を発光する素子を作製することができないことがある。
前述した如く、Inを含む活性層の場合は活性層の表面にInを含まない薄層を設けることが好ましいが、その場合は、Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、同じ基板温度でIn源のみ供給を停止して、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させればよい。
Inを含むIII族金属源および窒素源を供給しつつ、Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体を所定の厚さまで成長させた後、III族金属源の供給を停止した状態で、基板温度をそのまま維持または昇温させることによって、その一部を分解または昇華させることができる。キャリアガスは窒素が好ましい。分解または昇華は、基板温度を上記成長温度から700〜1000℃の範囲に昇温してまたは昇温させつつ行なうことが好ましい。
活性層が多重量子井戸構造の場合、障壁層の成長は、井戸層(活性層)の成長よりも高い基板温度で行なうことが好ましい。その温度領域は、700〜1000℃程度が好適である。
井戸層を成長させる温度をT1、障壁層を成長する温度をT2とすると、T1≦T2であり、井戸層の成長後、T1からT2への昇温の過程で、窒素を含むキャリアガスと窒素源の供給は続けながら、III族原料の供給を停止する工程を含むことで、井戸層に厚膜部と薄膜部を効果的に形成することができる。この際、キャリアガスの変更などは必要ない。キャリアガスを水素に切り替えることは、発光の波長を短波長化させる。波長の変化の程度は安定的に制御することが難しいため、製品の生産性を低下させる。
T1からT2への昇温速度は、1〜100℃/分程度が望ましい。更に望ましくは、5〜50℃/分程度である。また、T1からT2への昇温に要する時間は30秒から10分程度が望ましい。更に望ましくは、1分から5分程度である。
障壁層の成長は、成長温度の異なる複数のステップで構成しても良い。つまり、厚膜部と薄膜部からなる井戸層上にT2の温度で障壁層を所定の膜厚で積層した後、成長温度をT3として更に障壁層を積層しても良い。T3がT2よりも低い温度であると、エージングによる特性の劣化などを抑える効果を付与することができて、より好適である。T3はT1と同じ温度であっても良い。
負極は、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限なく用いることができる。nコンタクト層と接する負極用のコンタクト材料としては、Al、Ti、Ni、Auなどのほか、Cr、W、Vなどを用いることができる。負極全体を多層構造としてボンディング性などを付与することができることは言うまでもない。
正極も、各種組成および構造の正極が周知であり、これら周知の正極を何ら制限なく用いることができる。
透光性の正極材料としては、Pt、Pd、Au、Cr、Ni、Cu、Coなどを含んでも良い。また、その一部が酸化されている構造とすることで、透光性が向上することが知られている。反射型の正極材料としては、上記の材料の他に、Rh、Ag,Alなどを用いることができる。
これらの正極は、スパッタリングや真空蒸着などの方法で形成することができる。特にスパッタリングを用いると、スパッタリングの条件を適切に制御することで、電極膜を形成した後にアニール処理を施さなくともオーミック接触を得ることができ、好適である。
発光素子の構造としては、反射型の正極を備えたフリップチップ型の素子としても良いし、透光性の正極や格子型、櫛型の正極を備えたフェイスアップ型の素子としても良い。
厚膜部と薄膜部を有する本発明の活性層では、厚膜部から薄膜部に変わる境界領域で、材料の異なる活性層とp型層との界面(多重量子井戸構造では活性層である井戸層と障壁層との界面)が基板面に対して斜めになるので、基板面に対して垂直方向への光の取出し量が増大し、特に、反射電極を備えたフリップチップ型の素子構造とすることにより、発光強度が一層増大する。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
図3は本実施例で作製した半導体発光素子用の窒化ガリウム系化合物半導体積層物である。図3に示すとおり、c面を有するサファイア基板上に、格子不整合結晶のエピタキシャル成長方法によってAlNからなるSP層を積層し、その上に基板側から順に、厚さ2μmのアンドープGaN下地層、1×1019cm-3の電子濃度を持つ厚さ2μmの高Siドープn−GaNコンタクト層、1×1018cm-3の電子濃度を持つ厚さ125Åのn−In0.1Ga0.9Nクラッド層、6層の厚さ160ÅのGaN障壁層と5層の厚さ25ÅのアンドープのIn0.2Ga0.8Nおよび0から5Åの膜厚を持つGaN層で構成される井戸層(活性層)とからなる多重量子井戸構造の発光層、厚さ100ÅのMgドープのp−Al0.07Ga0.93Nクラッド層、8×1017cm-3の正孔濃度を持つ厚さ0.1μmのMgドープp−GaNコンタクト層を順に積層した構造である。
上記の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の作製は、MOCVD法を用いて以下の手順で行った。
先ず、サファイア基板を、誘導加熱式ヒータでカーボン製のサセプタを加熱する形式の多数枚の基板を処理できるステンレス製の反応炉の中に導入した。サセプタは、それ自体が回転する機構を持ち、基板を自転させる機構を持つ。サファイア基板は、窒素ガス置換されたグローブボックスの中で、加熱用のカーボン製サセプタ上に載置した。基板を導入後、窒素ガスを流通して反応炉内をパージした。
窒素ガスを8分間に渡って流通した後、誘導加熱式ヒータを作動させ、10分をかけて基板温度を600℃に昇温し、同時に炉内の圧力を15kPa(150mbar)とした。基板温度を600℃に保ったまま、水素ガスと窒素ガスを流通させながら2分間放置して、基板表面のサーマルクリーニングを行なった。
サーマルクリーニングの終了後、窒素キャリアガスのバルブを閉とし、反応炉内へのガスの供給を水素のみとした。
キャリアガスの切り替え後、基板の温度を1180℃に昇温させた。1180℃で温度が安定したのを確認した後、TMAlの配管のバルブを切り替え、TMAlの蒸気を含む気体を反応炉内へ供給して、これを反応炉の内壁に着いた付着物の分解により生じるN原子と反応させて、サファイア基板上にAlNを付着させる処理を開始した。
8分30秒間の処理の後、TMAlの配管のバルブを切り替え、TMAlの蒸気を含む気体を反応炉内へ供給を停止した。そのままの状態で4分待機し、炉内に残ったTMAl蒸気が完全に排出されるのを待った。続いて、アンモニアガスの配管のバルブを切り替え、炉内にアンモニアガスの供給を開始した。
4分の後、アンモニアの流通を続けながら、サセプタの温度を1040℃に降温した。サセプタ温度の降温中、TMGaの配管の流量調整器の流量を調節した。
サセプタの温度が1040℃になったのを確認した後、温度の安定を待ち、その後TMGaのバルブを切り替えてTMGaの炉内への供給を開始し、アンドープのGaNの成長を開始し、約1時間に渡って上記のGaN層の成長を行った。
このようにして、2μmの膜厚を有するアンドープGaN下地層を形成した。
更に、このアンドープGaN下地層上に高Siドープのn型GaN層を成長した。アンドープGaN下地層の成長後、1分間に渡ってTMGaの炉内への供給を停止した。その間、SiH4の流通量を調節した。流通させる量は事前に検討してあり、高SiドープGaN層の電子濃度が1×1019cm-3となるように調整した。アンモニアはそのままの流量で炉内へ供給し続けた。また、1分間の停止の間に、サセプタの温度を1040℃から1060℃へ変化させた。
1分間の停止の後、TMGaとSiH4の供給を開始し、1時間に渡って成長を行った。この操作により、2μmの膜厚を有する高Siドープn−GaNコンタクト層を形成した。
高Siドープn−GaNコンタクト層を成長した後、TMGaとSiH4のバルブを切り替えて、これらの原料の炉内への供給を停止した。アンモニアはそのまま流通させながら、バルブを切り替えてキャリアガスを水素から窒素へ切り替えた。その後、基板の温度を1060℃から730℃へ低下させた。
炉内の温度の変更を待つ間に、SiH4の供給量を変更した。流通させる量は事前に検討してあり、Siドープn−InGaNクラッド層の電子濃度が1×1018cm-3となるように調整した。アンモニアはそのままの流量で炉内へ供給し続けた。
その後、炉内の状態が安定するのを待って、TMInとTEGaとSiH4のバルブを同時に切り替え、これらの原料の炉内への供給を開始した。所定の時間だけ供給を継続し、125Åの膜厚を有するSiドープn−In0.1Ga0.9Nクラッド層を形成した。その後、TMIn、TEGaおよびSiH4のバルブを切り替え、これらの原料の供給を停止した。
Siドープn−In0.1Ga0.9Nクラッド層の成長終了後、サセプタの温度を930℃に昇温した。温度が安定したのち、基板温度や炉内の圧力、アンモニアガスおよびキャリアガスの流量や種類はそのままで、TEGaのバルブを切り替えてTEGaの炉内への供給を行った。そのままサセプタ温度930℃にて、規定の時間の成長を行った。続いてサセプタ温度を調節し、730℃にてTEGaの供給を行って成長を行った後、再びバルブを切り替えてTEGaの供給を停止してGaN障壁層の成長を終了した。これにより、総膜厚が160Åの膜厚を成すGaN障壁層を形成した。
GaN障壁層の成長終了後、30秒間に渡ってIII族原料の供給を停止したのち、基板温度や炉内の圧力、アンモニアガスおよびキャリアガスの流量や種類はそのままで、TEGaとTMInのバルブを切り替えてTEGaとTMInの炉内への供給を行なった。あらかじめ決めた時間の間TEGaとTMInの供給を行なった後、再びバルブを切り替えてTMInの供給を停止してIn0.2Ga0.8N井戸層(活性層)の成長を終了した。この時点では、25Åの膜厚を成すIn0.2Ga0.8N層が形成された。
In0.2Ga0.8N層の成長終了後、所定の時間TEGaのみ炉内への供給を続け、InGaN層上にIn抜けを抑えるためのGaNからなる薄層(キャップ層)を形成し、TEGaの供給を停止した。
その後、NH3とキャリアガスであるN2はそのまま流通しておきながら、2分間をかけて、サセプタの温度を930℃まで昇温させた。この操作により、In0.2Ga0.8N層の一部が分解、昇華して、In0.2Ga0.8N層の消失や膜厚の減少を引き起こし、井戸層(活性層)中に膜厚の薄い薄膜部が形成された。
このような手順を5回繰り返し、5層のGaN障壁層と5層のIn0.2Ga0.8N井戸層を形成し、最後に再びGaN障壁層を形成して多重量子井戸構造の発光層とした。
このGaN障壁層で終了する発光層上に、Mgドープのp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層を形成した。
TEGaの供給を停止して、GaN障壁層の成長が終了した後、基板の温度を1020℃へ昇温し、キャリアガスの種類を水素に切り替え、炉内の圧力を15kPa(150mbar)に変更した。炉内の圧力が安定するのを待って、TMGaとTMAlとCp2Mgのバルブを切り替え、これらの原料の炉内への供給を開始した。その後、約3分間に渡って成長を行ったあと、TEGaとTMAlの供給を停止し、Mgドープのp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層の成長を停止した。これにより、100Åの膜厚を有するMgドープのp型Al0.07Ga0.93クラッド層を形成した。
このMgドープのp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層上に、Mgドープのp−GaNコンタクト層を形成した。
TMGaとTMAlとCp2Mgの供給を停止して、Mgドープのp−Al0.07Ga0.93Nクラッド層の成長が終了した後、炉内の圧力を20kPa(200mbar)に変更した。炉内の圧力が安定するのを待って、TMGaとCp2Mgのバルブを切り替え、これらの原料の炉内への供給を開始した。Cp2Mgを流通させる量は事前に検討してあり、Mgドープp−GaNコンタクト層の正孔濃度が8×1017cm-3となるように調整した。その後、約4分間に渡って成長を行ったあと、TMGaとCp2Mgの供給を停止し、MgドープのGaN層の成長を停止した。これにより、0.1μmの膜厚を成すMgドープp−GaNコンタクト層が形成された。
Mgドープp−GaNコンタクト層の成長を終了した後、誘導加熱式ヒータへの通電を停止して、基板の温度を室温まで20分をかけて降温した。降温中は、反応炉内の雰囲気を窒素のみから構成した。その後、基板温度が室温まで降温したのを確認して、作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物を大気中に取り出した。
以上のような手順により、半導体発光素子用の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。ここでMgドープGaN層は、p型キャリアを活性化するためのアニール処理を行なわなくてもp型を示した。
次いで、上記の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて半導体発光素子の一種である発光ダイオードを作製した。
作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物のp−GaNコンタクト層の表面上に、公知のフォトリソグラフィーによって、コンタクト層側から順にPt、RhおよびAuを積層した構造を持つ反射性の正極を作製した。
更にその後窒化ガリウム系化合物半導体積層物にドライエッチングを行ない、高Siドープのn−GaNコンタクト層の負極形成部分を露出させ、露出した部分にコンタクト層側から順にTiおよびAlを積層して負極を作製した。これらの作業により、図4に示すような形状を持つ電極を作製した。
このようにして正極および負極を形成した窒化ガリウム系化合物半導体積層物について、サファイア基板の裏面を研削、研磨してミラー状の面とした。その後、該窒化ガリウム系化合物半導体積層物を350μm角の正方形のチップに切断し、電極が下になるようにサブマウント上に配置してチップとした。更にそのチップをリードフレーム上に載置し、金線でリードフレームへ結線して発光素子とした。
上記のようにして作製した発光ダイオードの正極および負極間に順方向電流を流したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.0Vであった。また、発光波長は455nmであり、発光出力は10mWを示した。このような発光ダイオードの特性は、作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物のほぼ全面から作製された発光ダイオードについて、ばらつきなく得られた。
また、このようにして作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物を断面TEMにて観察した写真の一例が図1および図2であり、図1は倍率が2,000,000倍、図2は倍率が500,000倍である。
活性層である井戸層は厚膜部と薄膜部から構成されていることがわかる。
観察された厚膜部は、厚み25Å、幅が500Åなどであった。また同様に、観察された薄膜部は50Å程度の幅であり、その部分の膜厚が10Å以下などであった。場所によっては、井戸層が全くなくなっている部分もあった。
このようなTEM断面写真の観察結果から、活性層中の厚膜部面積比は、全面積に対して90%から60%であった。
障壁層は160Åの膜厚があった。障壁層は井戸層の薄膜部と厚膜部との膜厚の差を完全に埋めており、各井戸層の下面は平坦な面をなしていることが判る。厚膜部と薄膜部との膜厚の違いは、主に上面に生じた凹凸によって発生している。
(比較例1)
本比較例では、実施例1と発光層を除いて同じ構造の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。発光層は、膜厚の均一な井戸層(活性層)と障壁層を積層した構造である点だけが実施例1と異なる。
本比較例の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の作製手順については、次の点を除いて実施例1と同一である。即ち、実施例1においては、井戸層におけるキャップ層(GaN薄層)を形成した後、TEGaの供給を停止して730℃から930℃まで2分掛けて昇温し、その後障壁層の形成に移った。しかし、本比較例では、井戸層におけるGaN薄層(キャップ層)を形成した後、TEGaを供給したまま730℃から930℃まで2分掛けて昇温し、そのまま障壁層の形成を行なった。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.9Vであった。また、発光波長は455nmであり、発光出力は8.5mWを示した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を断面TEMにて観察した写真の一例を図5および図6に示す。図5は倍率が2,000,000倍であり、図6は倍率が500,000倍である。これらの図において、1は井戸層であり、2は障壁層であり、3はn−クラッド層であり、4はp−クラッド層である。これらの図から井戸層(活性層)の膜厚は25Å程度と一定で、位置による膜厚の変動はなかった。
(実施例2)
c面を有するサファイア基板上に、格子不整合結晶のエピタキシャル成長方法によってAlNからなるSP層を積層し、その上に基板側から順に、厚さ8μmのアンドープGaN下地層、高Geドープと低Geドープ層を交互に100回積層した厚さ4μmの平均して5×1018cm-3の電子濃度を持つn−GaNコンタクト層、1×1018cm-3の電子濃度を持つ厚さ180Åのn−In0.1Ga0.9Nクラッド層、6層の厚さ160ÅのGaN障壁層と5層の厚さ25ÅのノンドープのIn0.2Ga0.8Nおよび0から5Åの膜厚を持つGaN層で構成される井戸層(活性層)とからなる実施例1と同一構造の発光層、厚さ100ÅのMgドープのp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層、8×1017cm-3の正孔濃度を持つ厚さ0.1μmのMgドープp−Al0.02Ga0.98Nコンタクト層を順に積層した窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
上記の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の作製は、MOCVD法を用いて、基本的に実施例1と同様の手順で行った。
次いで、上記の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いた半導体発光素子の一種である発光ダイオードの作製を、以下の手順で実施した。
つまり、作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物のp−AlGaNコンタクト層の表面上に、公知のフォトリソグラフィーによって、コンタクト層側から順にPt、Auを積層した構造を持つ透光性の正極を作製し、その上に順にTi、Au、AlおよびAuを積層した構造のパッド電極を作製した。
更にその後窒化ガリウム系化合物半導体積層物にドライエッチングを行ない、高Geドープ層と低Geドープ層が交互に積層された構造を持つn−GaNコンタクト層の負極形成部分を露出させ、露出した部分にコンタクト層側から順にTiおよびAlを積層して負極を作製した。これらの作業により、図4に示すような形状を持つ電極を作製した。
このようにして正極および負極を形成した窒化ガリウム系化合物半導体積層物について、サファイア基板の裏面を研削、研磨してミラー状の面とした。その後、該窒化ガリウム系化合物半導体積層物を350μm角の正方形のチップに切断してリードフレーム上に載置し、金線でリードフレームへ結線して発光素子とした。
上記のようにして作製した発光ダイオードの正極および負極間に順方向電流を流したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.2Vであった。また、発光波長は470nmであり、発光出力は6mWを示した。このような発光ダイオードの特性は、作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物のほぼ全面から作製された発光ダイオードについて、ばらつきなく得られた。
(比較例2)
本比較例では、比較例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例2と同じ電極構造を有する発光ダイオードを作製した。
実施例2と同様に性能を評価したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.9Vであり、発光波長は455nmであり、発光出力は5mWを示した。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて得られる発光素子は、良好な発光出力を保ったまま、駆動電圧が低下するので、その産業上の利用価値は非常に大きい。
実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面を示した模式図である。 実施例1および実施例2で作製した発光ダイオードの電極構造を示した模式図である。 比較例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の一例である。 比較例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。
符号の説明
1 活性層(井戸層)
2 障壁層
3 nクラッド層
4 pクラッド層

Claims (1)

  1. InGaNからなる活性層とGaNからなる障壁層とを交互に複数層積層させた多重量子井戸構造の発光層を有する窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法において、活性層の成長終了後同じ基板温度T1で活性層表面にGaNからなる薄層を形成し、その後基板温度をT2に昇温させることによって活性層の一部を分解または昇華させ、上面が凹凸の厚膜部と薄膜部とが並んだ活性層を形成し、さらに基板温度T2でGaNを積層することにより障壁層を形成する際に、T1が650〜900℃の範囲であり、T2が700〜1000℃の範囲である窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
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