JPH09331116A - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

窒化物半導体発光素子

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JPH09331116A
JPH09331116A JP18157396A JP18157396A JPH09331116A JP H09331116 A JPH09331116 A JP H09331116A JP 18157396 A JP18157396 A JP 18157396A JP 18157396 A JP18157396 A JP 18157396A JP H09331116 A JPH09331116 A JP H09331116A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 窒化物半導体を用いた発光素子の出力をさら
に高める。 【構成】 量子構造の窒化物半導体よりなる活性層を発
光層として備える窒化物半導体発光素子において、活性
層表面に凹凸を設けることにより、活性層とクラッド層
との界面で縦横両方向にキャリアが閉じ込められ量子箱
効果が発生し、それにより発光素子の発光スペクトル中
に、複数の発光ピークが出現して、結果として発光出力
が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は窒化物半導体(InX
YGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなる発
光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)等
の発光素子に係り、特に発光出力に優れた発光素子に関
する。
【0002】
【従来の技術】紫外〜赤色の領域に発光する発光素子の
材料として窒化物半導体が知られており、現在この材料
で既に青色LED、緑色LEDが実用化されたばかりで
ある。現在、市販されている窒化物半導体よりなる青
色、青緑色LEDは、InGaNよりなる活性層が、n
型およびp型の窒化物で挟まれたダブルへテロ構造を有
しており、例えば、青色LEDで発光出力は、およそ4
mWとLEDとしては十分な出力が得られている。しか
しこのLEDは活性層の発光が、活性層に添加されたア
クセプター不純物とドナー不純物によるドナー−アクセ
プターのペア発光によって得られているため、発光スペ
クトルの半値幅が広い。半値幅が広いと、発光色が白っ
ぽく見えて、視感度がよいためLED自体の輝度は高い
が、色純度が悪い。
【0003】また、本出願人は、活性層に不純物をドー
プせず、InGaNのバンド間発光で青色〜緑色に発光
するLEDを発表した(例えば、Jpn.J.Appl.Phys. Vol
34 1995 pp.L1332-L1335)。このLEDはノンドープの
InGaNよりなる単一量子井戸構造の活性層を有する
ダブルへテロ構造を有しており、発光出力はピーク波長
450nmの青色LEDで5mW、520nmの緑色L
EDで3mW、しかも発光スペクトルの半値幅は20〜
30nmしかないので、色純度がよく、非常に高出力の
LEDが実現された。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように青色〜緑色
のLEDに関しては、ほぼ実用域の素子が完成されてい
るが、LDのような発光素子を実現するためには、さら
に発光素子の出力を高める必要がある。従って本発明は
このような事情を鑑みて成されたものであって、その目
的とするところは、窒化物半導体を用いた発光素子の出
力をさらに高めることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】我々は単一量子井戸構
造、多重量子井戸構造等の量子井戸構造を有する活性層
を用いた窒化物半導体積層構造について、数々の実験を
重ねた結果、特有の発光スペクトルを有する発光素子に
より発光出力が高くなることを新規に見出し、本発明を
成すに至った。即ち、本発明の窒化物半導体発光素子
は、主として二つの態様からなり、第1の態様は、少な
くともインジウムを含む量子井戸構造の窒化物半導体よ
りなる井戸層を有する活性層を備える窒化物半導体発光
素子において、その発光素子の発光スペクトル中には、
等間隔でない複数の発光ピークを有することを特徴とす
る。
【0006】さらに、前記複数の発光ピークの間隔は1
meV〜100meVの間隔であることを特徴とする。
なお本発明では、必ずしも隣り合った全ての発光ピーク
の間隔が前記範囲の間にあることを指すものではない。
【0007】また本発明の発光素子の第2の態様は、少
なくともインジウムを含む量子井戸構造の窒化物半導体
よりなる井戸層を有する活性層の上に、活性層よりもバ
ンドギャップが大きいクラッド層が成長されてなる窒化
物半導体発光素子であって、前記活性層とクラッド層と
の界面には凹凸を有することを特徴とする。さらに、活
性層と前記クラッド層とは格子不整合で接していること
が好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施例に係る発
光素子の一構造を示す模式的な断面図であり、具体的に
はレーザ素子の構造を示している。このレーザ素子は、
スピネルよりなる基板101の上に、GaNよりなるバ
ッファ層102と、n型GaNよりなるn型コンタクト
層103と、n型AlGaNよりなるn型光閉じ込め層
104、n型GaN、またはn型InGaNよりなる光
ガイド層105、InGaNよりなる井戸層と、井戸層
よりもバンドギャップが大きい障壁層とが積層されてな
る多重量子井戸構造の活性層106と、p型GaN、ま
たはp型InGaNよりなる光ガイド層107、p型A
lGaNよりなるp型光閉じ込め層108、p型GaN
よりなるp型コンタクト層109とが順に積層された構
造を有しており、p型コンタクト層109のほぼ全面に
はストライプ状の正電極20が、n型コンタクト層10
3には、正電極と平行な負電極21が設けられている。
【0009】このレーザ素子に各パルス電流を流した際
のスペクトルを図2に示す。図2において(a)は28
0mA(閾値直後)、(b)は295mA、(c)は3
20mA、(d)は340mAでの発光スペクトルを示
している。(b)、(c)、(d)は発振時のスペクト
ルを示している。
【0010】(a)は発振直後のスペクトルを示し、こ
の状態ではおよそ404.2nm付近にある主発光ピー
クの前後に小さな発光ピークが多数(ファブリペローモ
ード)出現してレーザ発振直後の状態であることが分か
る。これがいわゆる縦モードのスペクトルである。電流
値を上げると(b)に示すように、そのスペクトルがシ
ングルモードとなって404.2nm付近のレーザ発振
を示す。さらに電流を増加させると、(c)に示すよう
に、403.3nm(3.075eV)、403.6n
m(3.072eV)、403.9nm(3.070e
V)、404.2nm(3.068eV)、404.4
nm(3.066eV)というように、主発光ピークの
他に、強度の大きな発光ピークが1meV〜100me
Vの間隔で不規則に出現する。さらに(d)では前記ピ
ークの他に、また新たなピークがはっきりと出現してお
り。これらのスペクトル間隔は等間隔ではなく明らかに
縦モードのスペクトルと異なる。
【0011】一般に、半導体レーザの場合、レーザ発振
すると、レーザ光の縦モードによる小さな発光ピークが
主発光ピークの前後に出現する。この場合の発光スペク
トルは、ほぼ等間隔の発光ピークよりなっている。赤色
半導体レーザでは、その発光ピークの間隔はおよそ0.
2nmである。青色半導体レーザではおよそ0.05n
m(1meV)以下である(但し、青色半導体レーザの
縦モードは共振器長が600μmにおいて、本出願人に
より初めて計測された。)。つまり、図2(a)、
(b)の状態では通常のレーザ素子の挙動を示してい
る。しかし、(c)、(d)に示すように、明らかに従
来のレーザ素子の縦モードによる発光ピークとは異なっ
た等間隔でないピークが多数出現している。これは図2
の電流値による各スペクトルを比較しても分かる。本発
明の発光素子では、このような発光スペクトルが発生す
ることにより、出力が高くなる。
【0012】なぜ、このようなピークが発生すると発光
素子の出力が高くなるのかは定かではないが、例えば次
のようなことが推測される。なお、図3は図1の発光素
子において、n型光ガイド層105と、活性層106
と、p型光ガイド層107との界面を拡大して部分的に
示す模式断面図である。活性層が量子井戸構造の場合、
井戸層の膜厚は100オングストローム以下、好ましく
は70オングストローム以下、最も好ましくは50オン
グストローム以下に調整される。一方、障壁層も150
オングストローム以下、好ましくは100オングストロ
ーム以下に調整される。本発明の発光素子では、このよ
うな単一膜厚が数十オングストロームの薄膜を積層した
場合、井戸層、障壁層共、均一な膜厚で成長しておら
ず、凹凸のある層が幾重にも重なり合った状態となって
いる。図3に示すように、このような凹凸のある活性層
を、活性層よりもバンドギャップの大きいクラッド層で
挟むダブルヘテロ構造を実現すると、活性層に注入され
た電子とホールとが、凹部にも閉じ込められるようにな
って、クラッド層の縦方向と共に縦横の両方向に閉じ込
められる。このため、キャリアが約10〜70オングス
トローム凹凸差がある3次元のInGaNよりなる量子
箱、あるいは量子ディスクに閉じ込められたようになっ
て、従来の量子井戸構造とは違った量子効果が出現す
る。従って、多数の量子準位に基づく発光が室温でも観
測されるようになり、発光スペクトルの1meV〜10
0meVの間隔で等間隔でない多数の発光ピークが観測
される。また、他の理由としては、三次元のInGaN
よりなる小さな量子箱にキャリアが閉じ込められるの
で、エキシトン効果が顕著に現れてきて多数の発光ピー
クが観測される。
【0013】図4は、活性層成長直後の活性層の表面の
状態を部分的に示す斜視図であり、活性層の表面の結晶
の状態をAFM(Atomic Force Microscope)で測定し
たものである。図4に示すように活性層の表面には、1
0〜60オングストロームの高さで無数の凹凸が発生し
ており、活性層はこの状態でクラッド層と接している。
本発明の発光素子では、このように活性層の表面に凹凸
を設けることにより、前述したような小さな発光ピーク
が1meV〜100meVの間隔で現れやすくなる傾向
にあり、結果として、発光出力が向上する。量子井戸構
造の場合、好ましい凹凸差としては5オングストローム
以上、さらに好ましくは10オングストローム以上、最
も好ましくは15オングストローム以上あることが望ま
しい。下限は活性層の膜厚以下であれば特に限定しな
い。
【0014】このようにInGaNよりなる井戸層を有
する活性層に多数の凹凸が発生する理由の一つとして、
In組成の面内不均一が考えられる。即ち、単一井戸層
内において、In組成の大きい領域と、少ない領域とが
できるために、井戸層表面に多数の凹凸が発生するので
ある。InGaNは混晶を成長させにくい材料であり、
InNとGaNとが相分離する傾向にある。このためI
n組成の不均一な領域ができる。そして、このIn組成
の高い領域に電子と正孔とが局在して、エキシトン発
光、あるいはバイエキシトン発光して、LEDの出力が
向上し、多数のピークができる。また、レーザ素子で
は、このバイエキシトンレーザ発振することにより、多
数の量子ディスク、量子箱と同等になって多数のピーク
が出現し、この多数のピークによりレーザ素子の閾値が
下がり、出力が向上する。なお、エキシトンとは電子と
正孔とが弱いクーロン力でくっついてペアになったもの
である。
【0015】また、図1の発光素子ではInGaNより
なる井戸層を有する活性層は、活性層よりもバンドギャ
ップの大きいクラッド層で挟まれている。このように三
元混晶のInGaNを二元混晶あるいは三元混晶のAl
XGa1-XN(0≦X≦1)で挟んだ構造では、活性層と
クラッド層との界面を格子整合させることは理論的に不
可能である。従来では半導体結晶は格子整合で成長させ
るのが常識であった。しかし、本発明の発光素子では、
あえて活性層の界面を格子不整合の状態とすることによ
り、活性層にクラッド層との格子定数不整、熱膨張係数
差による歪みを与え、この歪みにより前記した量子箱の
効果が顕著に出現するようになるので、発光素子の出力
が向上する。
【0016】本発明のレーザ素子の活性層について述べ
たことを、図5のエネルギーバンド図でわかりやすく示
す。図5Aは多重量子井戸構造の活性層のエネルギーバ
ンドを示しており、図5Bは、図5Aの円で囲まれた単
一井戸層のエネルギーバンドを拡大して示すものであ
る。前記したように、井戸層においてIn組成の面内不
均一があるということは、Bに示すように単一のInG
aN井戸層幅にバンドギャップの異なるInGaN領域
が存在する。従って、伝導帯にある電子は一度、In組
成の大きいInGaN領域に落ちて、そこから価電子帯
にある正孔と再結合することによりhνのエネルギーを
放出する。このことは、電子と正孔とが井戸層幅のIn
組成の多い領域に局在化して、局在エキシトンを形成
し、レーザの閾値の低下を助ける。閾値が下がり、出力
が高くなるのはこの局在エキシトンの効果によるもので
ある。多数のピークが出現するのは、この局在エキシト
ンに加えて、三次元的に閉じ込められた量子箱の効果に
より多数の量子準位間の発光が出てくるからである。
【0017】
【実施例】次に、具体的な実施例により本発明の発光素
子を詳説する。図6は本発明の発光素子を得るために使
用したMOVPE装置の反応容器内を示す模式的な断面
図であり、この装置を用いて図1に示す発光素子を得る
方法を述べる。図6において、30は例えばステンレス
よりなる反応容器、反応容器30内には基板50および
トレイ34を載置するサセプター32と、サセプター3
2を回転するシャフト31と、基板50を加熱するヒー
タ33とが設置されている。さらに基板に向かって平行
ないし傾斜して原料ガスを供給するノズル35がサセプ
ター32に接近して設けられ、基板の上方には例えば石
英よりなるコニカルチューブ36が設置されている。窒
化物半導体は、まずチャンバー30内を真空ポンプ37
で真空にした後、サセプター32の上にトレイ34を介
して載置した基板50をヒータ33で高温に加熱し、同
時にノズル35から原料ガスをキャリアガスと共に供給
して、基板上で原料ガスを分解することによって成長さ
れる。原料ガス供給中は常時、コニカルチューブ36内
に上から窒素、水素等の不活性ガスよりなる押圧ガスが
基板に向かって垂直に流され、原料ガスが基板の熱対流
によって拡散されるのを防止している。なお本明細書に
おいて示すInXGa1-XN、AlYGa1-YN等の一般式
は、単に窒化物半導体の組成式を示しているに過ぎず、
異なる層が同一の式で示されていても、それらの層が同
一の組成を示すものではない。
【0018】洗浄したスピネル(MgAl24)よりな
る基板101をトレイ34にセットして、反応容器内に
移送し、反応容器内を水素で十分置換した後、水素を流
しながら、基板の温度を1050℃まで上昇させ、基板
のクリーニングを行う。基板にはスピネルの他にA面、
C面、R面等の面方位を有するサファイアが使用でき、
また、SiC、MgO、Si、ZnO、GaN等の単結
晶よりなる、公知の基板が用いられる。
【0019】次に、温度を500℃まで下げ、キャリア
ガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチ
ルガリウム)とを用いてノズル35より供給し、500
℃で基板101上にGaNよりなるバッファ層102を
300オングストローム成長させる。なお成長中はコニ
カルチューブ36より水素、窒素、アルゴンのような不
活性ガスを20リットル/分で供給している。バッファ
層102は基板と窒化物半導体との格子不整合を緩和す
るために設けられ、通常、GaN、AlN、AlGaN
等が1000オングストローム以下の膜厚で成長される
が、窒化物半導体と格子定数の近い基板、格子整合した
基板を用いる場合、また成長方法、成長条件等の要因に
よっては成長されないこともあるので、省略することも
できる。
【0020】バッファ層成長後、温度を1030℃まで
上昇させ、同じく原料ガスにTMGとアンモニアガス、
不純物ガスにSiH4(シラン)ガスを用いて、Siド
ープGaNよりなるn型コンタクト層103を4μmの
膜厚で成長させる。n型コンタクト層103はn型の窒
化物半導体であればどのような組成でもよいが、好まし
くは、AlYGa1-YN(0≦Y≦1)とする。特にn型
コンタクト層をAlGaNとすることにより、活性層と
の屈折率差が大きくでき、光閉じ込め層としてのクラッ
ド層、及び電流を注入するコンタクト層として作用させ
ることができる。さらに、このコンタクト層をAlGa
Nとすることにより、活性層の発光をn型コンタクト層
内で広がりにくくできるので、閾値が低下する。さらに
n型コンタクト層をAlYGa1-YNとする場合、基板側
のAl混晶比が小さく、活性層側のAl混晶比が大きい
構造、即ち組成傾斜構造とすることが望ましい。前記構
造とすることにより、結晶性の良いn型コンタクト層が
得られるので、結晶性の良いn型コンタクト層の上に積
層する窒化物半導体の結晶性も良くなるため、素子全体
の結晶性が良くなり、ひいては閾値の低下、素子の信頼
性が格段に向上する。また、活性層側のAl混晶比が大
きいために、活性層との屈折率差も大きくなり光閉じ込
め層として有効に作用する。一方、GaNとすると、n
電極とのオーミック特性については非常に優れている。
コンタクト層をGaNとすると、GaNコンタクト層
と、活性層との間にAlGaNよりなる光閉じ込め層を
設ける必要がある。n型コンタクト層103の膜厚は
0.1μm以上、5μm以下に調整することが望まし
い。
【0021】次に温度を750℃まで下げ、原料ガスに
TMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニ
ア、不純物ガスにシランガスを用い、SiドープIn0.
1Ga0.9Nよりなるクラック防止層(図示せず。)を5
00オングストロームの膜厚で成長させる。クラック防
止層はInを含むn型の窒化物半導体、好ましくはIn
GaNで成長させることにより、次に成長させるAlを
含む窒化物半導体よりなるn型光閉じこめ層104を厚
膜で成長させることが可能となる。LDの場合は、光閉
じ込め層となる層を、例えば0.1μm以上の膜厚で成
長させる必要がある。従来ではGaN、AlGaN層の
上に直接厚膜のAlGaNを成長させると、後から成長
させたAlGaNにクラックが入るので素子作製が困難
であったが、このクラック防止層が次に成長させる光閉
じこめ層104にクラックが入るのを防止することがで
きる。しかも次に成長させる光閉じこめ層103を厚膜
で成長させても膜質良く成長できる。なおクラック防止
層は100オングストローム以上、0.5μm以下の膜
厚で成長させることが好ましい。100オングストロー
ムよりも薄いと前記のようにクラック防止として作用し
にくく、0.5μmよりも厚いと、結晶自体が黒変する
傾向にある。なお、クラック防止層は成長方法、成長装
置によっては省略することもできるので図示していない
が、LDを製造する上では成長させる方が望ましい。
【0022】次に、温度を1050℃にして、原料ガス
にTEG、TMA(トリメチルアルミニウム)、アンモ
ニア、不純物ガスにシランガスを用いて、Siドープn
型Al0.3Ga0.7Nよりなるn型光閉じこめ層104を
0.6μmの膜厚で成長させる。光閉じ込め層104は
Alを含む窒化物半導体、特に好ましくはAlYGa1 -Y
N(0<Y<1)で構成することにより、結晶性の良い
ものが得られ、また活性層との屈折率差を大きくしてレ
ーザ光の縦方向の閉じ込めに有効である。この層は通常
0.1μm〜1μmの膜厚で成長させることが望まし
い。0.1μmよりも薄いと光閉じ込め層として作用し
にくく、1μmよりも厚いと、たとえクラック防止層の
上に成長させたAlGaNでも、結晶中にクラックが入
りやすくなり素子作成が困難となる傾向にある。
【0023】続いて、原料ガスにTMG、アンモニア、
不純物ガスにシランガスを用い、Siドープn型GaN
よりなるn型光ガイド層105を500オングストロー
ムの膜厚で成長させる。n型光ガイド層105は、In
を含むn型の窒化物半導体若しくはn型GaN、好まし
くは三元混晶若しくは二元混晶のInXGa1-XN(0≦
X≦1)とする。この層は通常100オングストローム
〜1μmの膜厚で成長させることが望ましく、特にIn
GaN、GaNとすることにより次の活性層106を量
子構造とすることが容易に可能になる。
【0024】次に原料ガスにTMG、TMI、アンモニ
アを用いて活性層106を成長させる。活性層は温度を
750℃に保持して、まずノンドープIn0.2Ga0.8N
よりなる井戸層を25オングストロームの膜厚で成長さ
せる。次にTMIのモル比を変化させるのみで同一温度
で、ノンドープIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を5
0オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を4
回繰り返し、最後に井戸層を成長させ、総膜厚325オ
ングストロームの膜厚の多重量子井戸構造よりなる活性
層106を成長させる。なお活性層成長後の表面の状態
を示す図が図4である。
【0025】活性層106成長後、温度を1050℃に
してTMG、TMA、アンモニア、アクセプター不純物
源としてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウ
ム)を用い、Mgドープp型Al0.2Ga0.8Nよりなる
p型キャップ層(図示せず。)を100オングストロー
ムの膜厚で成長させる。このp型キャップ層は1μm以
下、さらに好ましくは10オングストローム以上、0.
1μm以下の膜厚で成長させることにより、InGaN
よりなる活性層が分解するのを防止するキャップ層とし
ての作用があり、また活性層の上にAlを含むp型窒化
物半導体、好ましくはAlYGa1-YN(0<Y<1)よ
りなるp型キャップ層を成長させることにより、発光出
力が格段に向上する。このp型キャップ層の膜厚は1μ
mよりも厚いと、層自体にクラックが入りやすくなり素
子作製が困難となる傾向にある。なおこのp型キャップ
層も成長方法、成長装置等によっては省略可能であるた
め、特に図示していない。
【0026】次に温度を1050℃に保持しながら、T
MG、アンモニア、Cp2Mgを用いMgドープp型G
aNよりなるp型光ガイド層107を500オングスト
ロームの膜厚で成長させる。このp型光ガイド層107
は前記したように、InGaN、GaNとすることによ
り次のAlを含むp型光閉じこめ層108を結晶性良く
成長できる。
【0027】続いて、TMG、TMA、アンモニア、C
p2Mgを用いてMgドープAl0.3Ga0.7Nよりなる
p型光閉じ込め層108を0.5μmの膜厚で成長させ
る。p型光閉じ込め層はn型光閉じ込め層と同じく、
0.1μm〜1μmの膜厚で成長させることが望まし
く、AlGaNのようなAlを含むp型窒化物半導体と
することにより、活性層との屈折率差を大きくして、レ
ーザ光の縦方向の光閉じ込め層として有効に作用する。
【0028】最後に、TMG、アンモニア、Cp2Mg
を用い、Mgドープp型GaNよりなるp型コンタクト
層109を0.2μmの膜厚で成長させる。p型コンタ
クト層109は、特にAlYGa1-YN(0≦Y≦1)、
その中でもMgをドープしたp型GaNとすると、最も
キャリア濃度の高いp型層が得られて、正電極と良好な
オーミック接触が得られ、しきい値電流を低下させるこ
とができる。
【0029】以上のようにして窒化物半導体を積層した
ウェーハを反応容器から取り出し、図1に示すように、
最上層のp型コンタクト層109から選択エッチを行
い、負電極を形成すべきn型コンタクト層103の表面
を露出させる。さらに、p型コンタクト層側からエッチ
ングを行い、ストライプ状のリッジ形状のレーザ素子を
作製した後、リッジに平行な位置に正電極20と負電極
21とをストライプ状に形成してレーザ素子とする。
【0030】このレーザ素子を室温でパルス発振させた
ところ、各電流値において図2に示すようなスペクトル
を示し、発光出力は同様にMBE(分子線気相成長)装
置で成長した同一構造のレーザ素子に比較して閾値電流
が20%以上低下し、出力は2倍以上であった。なお、
MBE装置によると、窒化物半導体層は原子層レベルで
平坦な面が得やすい。
【0031】[実施例2]実施例1において、n型コン
タクト層103を成長させる際に、TMAの流量を段階
的に変化させ、バッファ層102側のAl混晶比(Y
値)が0でn型光閉じ込め層104側のAl混晶比が
0.2である組成傾斜した層を成長させる他は同様にし
てレーザ素子を得たところ、閾値電流は実施例1のもの
に比較して4%低下し、出力は10%向上した。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように本発明の発光素子で
は、量子構造の窒化物半導体よりなる活性層を発光層と
して備える窒化物半導体発光素子で、その発光素子の発
光スペクトル中に複数の発光ピークを有することにより
発光素子の出力が向上する。特にレーザ素子では、その
特有の発光スペクトルを用いることにより、単一モード
の発振を嫌う光磁気ディスクの光源として用いると非常
に都合がよい。レーザ素子において、このような現象が
出現することを発見したのは本発明が初めてであり、そ
の産業上の利用価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る発光素子の構造を示
す模式断面図。
【図2】 本発明の一実施例に係る発光素子の発光スペ
クトルを各電流値で比較して示す図。
【図3】 図1の発光素子の活性層の界面を拡大して部
分的に示す模式断面図。
【図4】 活性層成長直後の活性層の表面の状態を部分
的に示す斜視図。
【図5】 本発明の発光素子の井戸層のエネルギーバン
ド図。
【図6】 本発明の発光素子を得るために使用したMO
VPE装置の反応容器内の構造を示す模式的な断面図。
【符号の説明】
101・・・・基板 102・・・・バッファ層 103・・・・n型コンタクト層 104・・・・n型光閉じ込め層 105・・・・n型光ガイド層 106・・・・活性層 107・・・・p型光ガイド層 108・・・・p型光閉じ込め層 109・・・・p型コンタクト層 20・・・・正電極 21・・・・負電極

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともインジウムを含む量子井戸構
    造の窒化物半導体よりなる井戸層を有する活性層を備え
    る窒化物半導体発光素子において、その発光素子の発光
    スペクトル中には、等間隔でない複数の発光ピークを有
    することを特徴とする窒化物半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 前記発光ピークの間隔は1meV〜10
    0meVの間隔にあることを特徴とする請求項1に記載
    の窒化物半導体発光素子。
  3. 【請求項3】 少なくともインジウムを含む量子井戸構
    造の窒化物半導体よりなる井戸層を有する活性層の上
    に、活性層よりもバンドギャップが大きいクラッド層が
    成長されてなる窒化物半導体発光素子であって、前記活
    性層とクラッド層との界面には凹凸を有することを特徴
    とする窒化物半導体発光素子。
  4. 【請求項4】 前記活性層と前記クラッド層とは格子不
    整合の状態で接していることを特徴とする請求項3に記
    載の窒化物半導体発光素子。
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