以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,図2には、本発明の第一の実施形態としての能動型制振器10が示されている。この能動型制振器10は、電気式リニアアクチュエータとしての電磁加振器12を備えており、電磁加振器12に備えられた固定子14に対して相対的に加振変位せしめられる可動子16の発生力によって、可動子16とマス金具18で構成されるマス部材が軸方向で加振駆動されるようになっている。そして、電磁加振器12の固定子14側に取り付けられた取付部材として取付金具20が車両ボデー等の図示しない制振対象部材に取り付けられることによって制振対象部材に対して加振力が及ぼされて、能動的乃至は相殺的な制振効果が発揮されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、駆動軸方向となる図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、電磁加振器12は、固定子14と可動子16を備えており、固定子14が取付金具20を介して制振対象部材に取り付けられていると共に、可動子16が固定子14に対して相対変位可能とされている。
固定子14は、ヨーク金具22と、ヨーク金具22に巻回されるコイル24,24と、ヨーク金具22に固着される四つの永久磁石26a,26b,26c,26dを含んで構成されている。ヨーク金具22は、図1,図2に示されているように、略厚肉の円板形状を呈していると共に、径方向中央部分には、略一定の矩形断面で軸方向に貫通するように延びる空所28が形成されている。また、ヨーク金具22には径方向内方の空所28に向かって突出する一対のコイル巻回部30,30が形成されており、それら一対のコイル巻回部30が径方向一方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
また、ヨーク金具22のコイル巻回部30には、コイル巻回部30の周方向(コイル巻回部30の軸回り方向)に巻回された矩形枠形状のコイル24が組み付けられている。なお、コイル24は、その内周面がヨーク金具22に重ね合わされている一方、他の面が電気絶縁性の絶縁カバー32によって覆われている。また、コイル24は、リード線34によって外部の図示しない電源に接続されている。
また、ヨーク金具22のコイル巻回部30の突出方向先端面には、永久磁石26が固着されている。永久磁石26は、一対のコイル巻回部30,30の突出先端面にそれぞれ固着されており、各コイル巻回部30の突出先端面において、上下(電磁加振器12の軸方向)に隣接するようにそれぞれ二つの永久磁石26a,26b(26c,26d)が固着されている。更に、永久磁石26は、コイル巻回部30の軸方向(コイル巻回部30の突出方向である軸直角方向)で各磁極が形成されるように配設されていると共に、上下方向で隣接して配設される永久磁石26a(26c)と永久磁石26b(26d)は、コイル巻回部30の突出先端側に位置する磁極が互いに異種となるように配設されている。更に、対向位置する一対のコイル巻回部30,30では、一対のコイル巻回部30,30の突出方向で対向する永久磁石26a,26bと永久磁石26c,26dの二組が、それぞれ突出先端側に向かって互いに異種の磁極が位置するように配設されている。これにより、永久磁石26によって形成される磁界において、一対のコイル巻回部30,30の対向面間での磁力線が、一対のコイル巻回部30,30が対向する軸直角方向一方向で延びており、且つ、上側の永久磁石26a,26cによって形成される磁界の磁力線と、下側の永久磁石26b,26dによって形成される磁界の磁力線が互いに反対の軸直角方向に向かって延びている。なお、本実施形態では、コイル巻回部30の突出先端面が凹形状の円形湾曲面とされていると共に、永久磁石26がコイル巻回部30の突出先端面の湾曲形状に沿って湾曲せしめられている。
また、ヨーク金具22の外周部分には、上固定金具36と下固定金具38が軸方向両側から挟み込むように重ね合わされている。上固定金具36は、円筒形状とされており、軸方向中間部分の内周側に形成される段差を挟んで軸方向上側の内径寸法が軸方向下側の内径寸法に比して大径とされている。また、下固定金具38は、円筒形状とされており、軸方向中間部分の内周側に形成される段差を挟んで軸方向下側の内径寸法が軸方向上側の内径寸法に比して大径とされている。
このような上固定金具36と下固定金具38は、ヨーク金具22の外周部分に対して軸方向で重ね合わされていると共に、それら重ね合わされた上下の固定金具36,38とヨーク金具22の周上の複数箇所には軸方向で貫通するボルト孔40が形成されており、ボルト孔40に挿通される固定ボルト42によってヨーク金具22に対して上固定金具36と下固定金具38が上側と下側からそれぞれ固定的に組み付けられている。
一方、可動子16は、内筒部材としての内筒金具44を備えている。内筒金具44は、軸方向で延びる小径の円筒形状を呈しており、その中央孔45が軸方向に直線的に延びて内筒金具44の軸方向両端に開口している。また、内筒金具44には、リング状の磁性金具46が外嵌固定されている。磁性金具46は、鉄等の強磁性材で形成されており、内筒金具44の軸方向略中央部分に外嵌されて、全周に亘って軸直角方向外方に突出している。
また、磁性金具46の軸方向両側には、上筒金具48と下筒金具50が配設されている。上筒金具48は、軸方向で所定の長さに亘って直線的に延びており、磁性金具46の軸方向上側において内筒金具44に外挿されている。また、下筒金具50は、軸方向で所定の長さに亘って直線的に延びており、磁性金具46の軸方向下側において内筒金具44に外挿されている。なお、本実施形態では、内筒金具44と上筒金具48、下筒金具50は、何れも非磁性材で形成されている。
そして、このような構造とされた固定子14と可動子16は、互いに同一中心軸上に配設されており、一対のコイル巻回部30,30の対向面間(永久磁石26a,26bと永久磁石26c,26dの軸直角方向での対向面間)に可動子16が所定距離を隔てて配設されている。また、固定子14に配設される永久磁石26と可動子16に配設される磁性金具46が軸直角方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
また、それら固定子14と可動子16は、上下一対の板ばね52,54によって相互に連結されている。上下一対の板ばね52,54は、薄肉の略円板形状とされており、中央部分には内筒金具44の外径寸法に応じた円形の中央孔が形成されている。また、本実施形態における板ばね52,54には、軸方向でのばね特性を調節するために、内周側から外周側に向かって渦巻状に延びる複数の図示しない貫通孔が厚さ方向で貫通して形成されている。なお、板ばね52,54に中央孔を形成することにより、板ばね52,54を挟んだ軸方向両側の領域が、該中央孔を通じて相互に連通されている。
そして、上下一対の板ばね52,54の外周縁部が、上下の固定金具36,38の段差に重ね合わされて固定ボルト42で固定子14側に固定されていると共に、板ばね52,54の内周縁部が、内筒金具44に外挿されると共に、上筒金具48の上端面と下筒金具50の下端面にそれぞれ重ね合わされて可動子16側に固定されている。これにより、固定子14と可動子16が上下一対の板ばね52,54によって連結されている。
このような本実施形態に従う構造とされた能動型制振器10では、コイル24への非通電状態下において、磁性金具46がヨーク金具22の軸方向中央部分に位置するようになっている。換言すれば、コイルへの非通電状態下において、磁性金具46の軸方向での中心が軸方向上下で隣り合う永久磁石26a,26b(26c,26d)の境界と軸直角方向で対向位置するようになっている。
また、コイル24に対してリード線34を通じて給電すると、電流の流れる方向に応じて電流の磁気作用による磁界が発生して、軸方向上下に配設された永久磁石26a,26bと永久磁石26c,26dの何れか一方によって形成される磁界を補強すると共に、何れか他方によって形成される磁界を打ち消す。これにより、可動子16に設けられた磁性金具46が磁界を補強された永久磁石26a,26c(26b,26d)によって引き寄せられて、その結果、可動子16が軸方向の何れか一方の側に駆動変位せしめられるようになっている。なお、このようなアクチュエータの駆動原理は、特開2005−328685号公報等の公知の文献に記載されているものと略同様である。
また、可動子16には、マス金具18が組み付けられている。マス金具18は、上下方向に延びる中心軸を備えた厚肉の円形ブロック形状とされている。このマス金具18の上端面には、上方に向かって開口する嵌着凹所56が形成されている。嵌着凹所56は、略一定の小径円形断面で軸方向に所定の深さで延びて形成された有底の円形穴であって、可動子16における内筒金具44の外径と略同一か僅かに小さい径寸法をもって形成されている。そして、嵌着凹所56に対して内筒金具44の下端部分が圧入されて組み付けられることにより、マス金具18が可動子16に対して固定的に組み付けられている。なお、本実施形態におけるマス部材は、可動子16とマス金具18を含んで構成されており、可動子16とマス金具18の質量の合計を利用して目的とする発生力が得られるようになっている。そして、後述する支持ゴム弾性体74を介して制振対象部材に対して弾性的に連結されるマス部材(可動子16およびマス金具18)を制振対象となる振動の周波数に応じて加振変位せしめることにより、制振対象部材における制振対象の振動を能動的乃至は相殺的に低減せしめることが出来るようになっている。
また、マス金具18の軸方向下端部には、軸直角方向外方に延び出すフランジ状のストッパ当接部58が一体形成されている。更に、マス金具18の下端面には、軸方向下方に向かって突出する小径円柱形状の嵌着突部60が一体形成されている。また、マス金具18の中心軸上には、軸方向に延びる連通孔62が形成されている。この連通孔62は、マス金具18を軸方向に貫通して形成される小径の円形孔であって、軸方向上側の開口が嵌着凹所56の底壁面に開口していると共に、下側の開口が嵌着突部60の突出先端面に開口している。
また、マス金具18の下方に突出する嵌着突部60には、可動子側インナ部材としてのインナ金具64が嵌着固定されている。インナ金具64は、軸方向上方に向かって開口する薄肉の略有底円筒形状を呈していると共に、その開口周縁部には、軸直角方向外方に広がる当接フランジ66が一体形成されている。また、インナ金具64の底壁部には、透孔68が形成されている。この透孔68は、インナ金具64の中心軸上に位置せしめられており、インナ金具64の底壁部を貫通して形成されている。そして、インナ金具64は、マス金具18の嵌着突部60に軸方向下方から外嵌固定されることにより、マス金具18に対して同一中心軸上で組み付けられている。また、インナ金具64の当接フランジ66がマス金具18の下端面に重ね合わされることによって、インナ金具64がマス金具18に対して軸方向で位置決めされている。なお、本実施形態では、インナ金具64がマス金具18に対して組み付けられた状態下において、マス金具18の下端面とインナ金具64の底壁部上面との軸方向対向面間には隙間が形成されている。また、マス金具18の下端面とインナ金具64の底壁部上面の間の隙間を介して、マス金具18の連通孔62とインナ金具64の透孔68が相互に接続されている。
また、インナ金具64に対して軸直角方向で所定距離を隔てて固定子側アウタ筒部材としてのアウタ筒金具70が配設されている。アウタ筒金具70は、全体として薄肉大径の略円筒形状を呈しており、軸方向上端が僅かに内周側に屈曲せしめられていると共に、軸方向下端が外周側に屈曲せしめられた固定部72とされている。このアウタ筒金具70はインナ金具64に比して大径とされており、同一中心軸上に配設されることによってインナ金具64に対して軸直角方向で所定距離を隔てている。なお、本実施形態では、アウタ筒金具70がインナ金具64よりも僅かに軸方向下方に偏倚して位置せしめられている。
また、インナ金具64とアウタ筒金具70の対向面間には、弾性連結ゴムとしての支持ゴム弾性体74が配設されている。支持ゴム弾性体74は、全体として略円環板形状とされており、特に本実施形態では、径方向で外周側に向かって次第に薄肉となっている。また、支持ゴム弾性体74の内周面がインナ金具64の外周面と当接フランジ66の下面に加硫接着されていると共に、外周面がアウタ筒金具70の内周面に加硫接着されている。これにより、軸直角方向で所定距離だけ離隔するインナ金具64(マス金具18及び可動子16)とアウタ筒金具70(固定子14)が支持ゴム弾性体74で相互に弾性連結されている。また、本実施形態では、支持ゴム弾性体74の内周縁部の下端には、筒状のバウンドストッパゴム76が一体形成されており、インナ金具64の底壁部の外周部分に加硫接着されて軸方向下方に向かって突出している。なお、インナ金具64の底壁部の中央部分は、筒状とされたバウンドストッパゴム76の中央孔を通じて軸方向下方に露出しており、インナ金具64の底壁部中央に形成された透孔68がバウンドストッパゴム76の中央孔を通じて下方に開口している。
また、アウタ筒金具70は、取付金具20に組み付けられている。この取付金具20は、筒状カバー金具78と底板金具80を含んで構成されている。筒状カバー金具78は、全体として略円筒形状とされており、複数の段差によって軸方向上方よりも軸方向下方が大径とされた段付き円筒形状を呈している。そして、筒状カバー金具78に対してアウタ筒金具70が下方から圧入されて固定されていると共に、筒状カバー金具78の段差の一つにアウタ筒金具70の固定部72が軸方向下方から重ね合わされてアウタ筒金具70が筒状カバー金具78に対して軸方向で位置決めされている。
また、筒状カバー金具78の軸方向上端部には、軸直角方向内方に向かって延び出す内フランジ状のストッパ支持部82が一体形成されており、マス金具18のストッパ当接部58に対して軸方向で所定距離を隔てて上方に対向位置せしめられている。このストッパ支持部82の上方から電磁加振器12の下固定金具38が重ね合わされており、固定子14が筒状カバー金具78(取付金具20)に載置されて配設されている。これにより、支持ゴム弾性体74の軸方向上方に電磁加振器12が配設されている。
さらに、筒状カバー金具78の上端部分には、略円環形状のストッパ部材84が内挿状態で圧入固定されている。このストッパ部材84は、固定金具86とリバウンドストッパゴム88を備えている。固定金具86は、略円筒形状の周壁部と、該周壁部の上端から軸直角方向内方に向かって延び出す内フランジ状のゴム固着部90を備えている。ゴム固着部90の下面には、略一定の矩形断面で周方向に連続して延びる円環形状のリバウンドストッパゴム88が固着されており、ゴム固着部90の下面から軸方向下方に向かって突出している。また、図1に示されているように、ストッパ部材84が筒状カバー金具78に対して組み付けられた状態下において、リバウンドストッパゴム88の下端面とマス金具18のストッパ当接部58との軸方向間には、所定の隙間が形成されている。そして、マス金具18(インナ金具64)が筒状カバー金具78(アウタ筒金具70)に対して軸方向で上方に向かって過大に相対変位せしめられると、ストッパ当接部58がリバウンドストッパゴム88を介してストッパ支持部82に当接せしめられる。これにより、インナ金具 (可動子16)のアウタ筒金具70(固定子14)に対するリバウンド方向(軸方向上)での相対変位量を制限するリバウンドストッパ機構が構成されている。
また、底板金具80は、軸方向の中間部分に段差を有する浅底の逆向き皿形状を呈している。また、本実施形態における底板金具80は、上底壁部の径方向中央部分に下方に向かって開口する凹所が形成されている。これにより、底板金具80の径方向中央部分における上底壁部が、軸方向上方に向かって突出せしめられている。
そして、底板金具80は、筒状カバー金具78の軸方向下側の開口から圧入されて筒状カバー金具78に固定されている。特に本実施形態では、底板金具80の周壁部に形成される段差と筒状カバー金具78の周壁部に形成される段差が軸方向で重ね合わされることにより、筒状カバー金具78と底板金具80が軸方向で相対的に位置決めされるようになっている。更に、相互に重ね合わされる筒状カバー金具78の段差と底板金具80の段差の軸方向間には、リング状のシールゴム92が配設されており、底板金具80と筒状カバー金具78の重ね合せ面間の隙間がシールゴム92によって流体密にシールされている。
また、底板金具80における上底壁部の外周部分には、アウタ筒金具70の下端に形成される固定部72が軸方向上方から重ね合わされており、筒状カバー金具78の段差と底板金具80の上底壁部の軸方向間にアウタ筒金具70の固定部72が挟み込まれて保持されている。
特に本実施形態では、上述の如き組付け状態下において、底板金具80の上底壁部の上方に離隔してインナ金具64が配置されており、インナ金具64の底壁部下面に固着されたバウンドストッパゴム76が底板金具80の上底壁部に対して軸方向上方に所定距離だけ離隔せしめられている。そして、インナ金具64が底板金具80(アウタ筒金具70)に対して軸方向下方に向かって過大に相対変位せしめられると、インナ金具64の底部がバウンドストッパゴム76を介して底板金具80の上底壁部に当接せしめられるようになっており、インナ金具64(可動子16)のアウタ筒金具70(固定子14)に対する相対的な変位量を制限するバウンドストッパ機構が構成されている。なお、特に本実施形態では、底板金具80の上底壁部の中央部分を上方に向かって凸となるように曲げて突出させることにより、バウンドストッパゴム76と底板金具80の上底壁部との離隔距離を適当に調節している。
さらに、底板金具80の下端開口縁部には、軸直角方向外方に広がるフランジ状の取付フランジ94が一体形成されている。この取付フランジ94には、図2に示されているように、周上の複数箇所にボルト孔96が形成されており、ボルト孔96に挿通される図示しない取付ボルトによって、図示しない車両ボデー等の制振対象部材に取り付けられるようになっている。これにより、筒状カバー金具78に組み付けられる固定子14が底板金具80を介して制振対象部材に固定的に組み付けられている。
また、筒状カバー金具78の上方には蓋金具100が配設されている。蓋金具100は、逆向きの略有底円筒形状を呈しており、電磁加振器12の軸方向上方と軸直角方向外方を略全面に亘って覆うように配設されている。また、蓋金具100の下側の開口部が筒状カバー金具78の上端部に外挿状態で圧入されると共に、蓋金具100の下端に形成された段差と筒状カバー金具78の上端部に形成された段差が軸方向で重ね合わされており、もって、軸方向で相対的に位置決めされた状態で蓋金具100が筒状カバー金具78に組み付けられている。また、本実施形態では、筒状カバー金具78の段差と蓋金具100の段差の軸方向間には、リング状のシールゴム102が挟み込まれており、かかるシールゴム102によって筒状カバー金具78と蓋金具100の重ね合せ面間が流体密にシールされている。なお、コイル24に接続されたリード線34は、蓋金具100の周壁部を貫通して形成される貫通孔を通じて外部に延び出している。この貫通孔は、リード線34が挿通せしめられた状態でシール材が充填されて密閉されている。
また、蓋金具100における上底壁部の外周縁部は、上固定金具36の外周部分に対して軸方向上方から重ね合わされている。そして、軸方向で重ね合わされた上固定金具36とヨーク金具22と下固定金具38が、筒状カバー金具78の上端に形成されるストッパ支持部82と蓋金具100の上底壁部の軸方向対向面間に挟み込まれて位置決め固定されている。これにより、電磁加振器12の固定子14が取付金具20に対して固定されており、固定子14が取付金具20を介して制振対象部材に対して取り付けられている。
このような本実施形態に従う構造とされた能動型制振器10では、略円筒形状とされた筒状カバー金具78の軸方向上側の開口が蓋金具100によって流体密に閉塞せしめられていると共に、軸方向下側の開口が底板金具80によって流体密に閉塞せしめられており、もって、蓋金具100と底板金具80の対向面間には、筒状カバー金具78と底板金具80と蓋金具100によって外部空間から密閉された密閉空気室104が形成されている。なお、このことからも明らかなように、筒状カバー金具78と、筒状カバー金具78に対して流体密に組み付けられた蓋金具100および底板金具80によって、本実施形態におけるカバー部材が構成されている。また、本実施形態では、底板金具80によって制振対象部材に取り付けられる取付部材が構成されており、取付部材とカバー部材が一体的に構成されている。
また、密閉空気室104には、電磁加振器12が収容配置されている。そして、マス金具18(可動子16)に組み付けられるインナ金具64と筒状カバー金具78(固定子14)に内嵌固定されるアウタ筒金具70が軸直角方向で広がる支持ゴム弾性体74で連結されていることにより、密閉空気室104が支持ゴム弾性体74を挟んで軸方向に二分されている。即ち、支持ゴム弾性体74を挟んで軸方向上側には、蓋金具100と支持ゴム弾性体74の軸方向対向面間に広がって、電磁加振器12及びマス金具18が収容配置された第一の空気室106が形成されていると共に、軸方向下側には、支持ゴム弾性体74と底板金具80の軸方向対向面間に広がる第二の空気室108が形成されている。
また、図1に示されているように、電磁加振器12の中心軸上を延びるように空気流路110が形成されている。この空気流路110は、支持ゴム弾性体74を挟んで軸方向両側に形成された第一の空気室106と第二の空気室108を相互に連通している。また、本実施形態では、内筒金具44の中央孔45と、マス金具18に貫通形成される連通孔62と、インナ金具64の底壁部に形成される透孔68が軸方向で接続されることにより、空気流路110が軸方向で直線的に延びて形成されている。そして、内筒金具44の中央孔45の一方の開口が第一の空気室106に連通せしめられることによって空気流路110の一方の側の開口が第一の空気室106に連通せしめられていると共に、透孔68が第二の空気室108に開口せしめられることによって空気流路110の他方の側の開口が第二の空気室108に連通せしめられている。なお、本実施形態では、支持ゴム弾性体74が略円環板形状とされていると共に、インナ金具64の底壁部の中央部分まで至らない範囲においてインナ金具64に対して固着されていることから、インナ金具64の底壁部に形成された透孔68が第二の空気室108に連通せしめられている。
このような本実施形態に従う構造の能動型制振器10においては、上述の如くコイル24に給電して電磁加振器12を作動せしめると、通電による熱が生じる。この通電による熱は、コイル24を含む電磁加振器12が収容されている第一の空気室106内で発生する。また、第一の空気室106は、上述の如く、外部空間に対して密閉されている。
したがって、第一の空気室106は、電磁加振器12の作動による発熱に起因して次第に室内温度が上昇することとなる。これにより、発熱体(電磁加振器12)を収容している第一の空気室106と発熱体を収容していない第二の空気室108との間で相対的な温度差が生じる。このような第一の空気室106と第二の空気室108の温度差は、第一の空気室106と第二の空気室108の内圧差を生ぜしめる。即ち、発熱体によって温度が上昇し易い第一の空気室106では、室内に密封された空気の膨張によって、室内の圧力が上昇し易く、第一の空気室106内の圧力が第二の空気室108の圧力に比して高くなり易い。
ここにおいて、能動型制振器10では、中心軸上を延びる空気流路110によって第一の空気室106と第二の空気室108の間での空気の流動が許容されている。それ故、支持ゴム弾性体74を挟んだ軸方向両側に形成される第一の空気室106と第二の空気室108の間で圧力差が生じると、室内の空気がそれら両室106,108間の圧力差に基づいて空気流路110を通じて流動せしめられる。これにより、第一の空気室106と第二の空気室108の間で生じる圧力差を速やかに解消することが出来て、それら両室106,108間での圧力差によって支持ゴム弾性体74が高圧側(第一の空気室106側)から低圧側(第二の空気室108側)に膨出するように弾性変形せしめられるのを防ぐことが出来る。従って、コイル24への非通電状態下における固定子14と可動子16の相対位置(非通電状態下における、固定子14と可動子16の軸直角方向での離隔距離や固定子14に対する可動子16の軸方向位置)を高精度に維持して、目的とする加振力を発生せしめ、有効な制振効果を有利に得ることが可能となるのである。また、支持ゴム弾性体74の弾性変形に起因する軸方向でのばね定数の変化を回避することも出来ることから、より高精度な発生力を実現することが出来て、所期の制振効果を安定して得ることが出来る。
しかも、外部空間から密閉された密閉空気室104内において、支持ゴム弾性体74の両側に位置する第一の空気室106と第二の空気室108を空気流路110を通じて相互に連通することによって両室106,108間での圧力差を解消している。それ故、外部空間から水や粉塵等の異物が侵入するのを完全に回避しつつ圧力差の解消を実現することが出来るのであって、電磁加振器12の耐久性の向上と、電磁加振器12の安定した出力による優れた制振効果を両立して実現可能となっている。特に電気式のリニアアクチュエータ(電磁加振器12)においては、加振力を効率良く得るために、固定子14と可動子16の間の隙間が非常に小さく設定される。それ故、外部からの埃等の異物がそれら固定子14と可動子16の微小な隙間に入り込むと可動子16のスムーズな加振駆動が妨げられるおそれがある。そこにおいて、本実施形態に係る能動型制振器10では、固定子14と可動子16の間の隙間に対する外部からの異物の侵入が完全に防がれていることから、固定子14と可動子16の隙間を充分に小さくすることによって、加振力を高効率で得ることが出来ると共に、固定子14に対する可動子16のスムーズな作動を確保して、出力の安定化を実現することが出来る。
また、空気流路110によって支持ゴム弾性体74の両側に形成された第一,第二の空気室106,108が相互に連通されていることにより、コイル24に給電されて可動子16が軸方向で変位する場合にも、駆動変位に伴う第一の空気室106と第二の空気室108の間で空気ばねが作用するのを防いで、より高精度な作動を実現することが出来る。
また、剛性材で形成された内筒金具44とマス金具18とインナ金具64によって空気流路110の壁部が構成されていることから、空気流路110の流路断面積を安定して得ることが出来て、第一の空気室106と第二の空気室108の間での空気の流動による圧力差の解消を容易に実現出来る。それ故、目的とする制振効果をより有効に得ることが出来る。
さらに、可動子16が固定子14の内周側に位置するタイプの電磁加振器12において、中心軸上を延びるように空気流路110を形成したことにより、外周部分に特別に空気流路を形成するよりもスペース効率良く空気流路110を形成することが出来る。それ故、能動型制振器10の小型化を有利に図ることが出来る。
次に、図3には、本発明の第二の実施形態としての能動型制振器112が示されている。この能動型制振器112は、電気式リニアアクチュエータとしての電磁加振器114を備えている。なお、以下の説明において、上下方向とは、駆動軸方向となる図3中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、電磁加振器114は、図示しない制振対象部材に固定的に組み付けられる固定子115と、固定子115に対して相対的な駆動変位を許容される可動子116を備えている。
固定子115は、コイル部材117を含んで構成されている。コイル部材117は、略有底円筒形状のボビン118に対してコイル120が巻回されて構成されている。ボビン118は、硬質の合成樹脂材等の非磁性材で形成されて、全体として略有底円筒形状を呈している。また、周壁部には、外周面に開口する凹溝が周方向で連続して延びるように形成されており、該凹溝に収容されるようにコイル120がボビン118に巻回されている。また、ボビン118の底壁部中央には、軸方向上下に突出する固定筒部122が一体形成されており、固定筒部122の中央孔がボビン118の底壁部を軸方向で貫通して形成されている。なお、コイル120は、リード線124によって外部電源126に接続されている。
また、ボビン118の固定筒部122には、固定軸部材としての軸金具128が挿通せしめられて固定されている。軸金具128は、軸方向上下に直線的に延びるロッド形状を呈しており、それぞれ非磁性材で形成された上下のロッド金具130,132を軸方向で連結することにより構成されている。
また、軸金具128の軸方向両端部は、カバー部材としてのケース金具134に固定されている。ケース金具134は、上下に組み合わされる底金具136と蓋金具138で構成されている。底金具136は、薄肉大径の略有底円筒形状とされており、開口周縁部には軸直角方向外方に広がるフランジ部140が一体形成されている。また、底金具136の径方向中央部分には、小径の円形凹所状に曲げられた下嵌着凹所142が形成されている。一方、蓋金具138は、薄肉大径とされた逆向きの略有底円筒形状とされており、底金具136と同一の直径とされている。また、蓋金具138の開口周縁部には、軸直角方向外方に広がるかしめ片144が一体形成されている。更に、蓋金具138における上底壁部の径方向中央部分が、小径の円形凹所状に曲げられており、かかる凹所が上嵌着凹所146とされている。
そして、底金具136の下嵌着凹所142と蓋金具138の上嵌着凹所146に軸金具128の軸方向両端部が圧入固定されると共に、底金具136と蓋金具138の各開口部同士が軸方向で重ね合わされて、底金具136のフランジ部140が蓋金具138のかしめ片144でかしめ固定されることにより、底金具136と蓋金具138が相互に組み付けられている。また、フランジ部140とかしめ片144の重ね合せ面間にはリング状のシールゴム148が圧縮された状態で配設されており、底金具136と蓋金具138の間が流体密にシールされている。これにより、底金具136と蓋金具138の内周側において、外部空間に対して密閉状態とされた密閉空気室104が形成されている。なお、本実施形態では、コイル120に接続されるリード線124が底金具136の底壁部を貫通して延びる貫通孔を通じて外部に延び出している。この貫通孔は、前記第一の実施形態における貫通孔と同様に、リード線124が挿通せしめられた状態でシール材が充填されて密閉されている。
また、底金具136には、取付部材としての取付脚部152が外嵌固定されている。取付脚部152は、全体として略円筒形状とされており、軸方向上部が底金具136に外挿状態で固着されていると共に、軸方向下部が底金具136よりも下方に延び出している。また、取付脚部152の軸方向下端部には、軸直角方向外方に向かって広がる取付フランジ154が形成されている。取付フランジ154には、周上の複数箇所にボルト孔156が貫設されており、ボルト孔156に挿通される図示しない取付ボルトによって取付フランジ154が制振対象部材に固定的に取り付けられるようになっている。このことから明らかなように、ケース金具134に固定される各部材(コイル部材117、軸金具128、後述するインナ金具158、後述するストッパ金具162等)によって、本実施形態における固定子115が構成されている。
また、軸金具128には、固定子側インナ部材としてのインナ金具158が組み付けられる。インナ金具158は、略円形ブロック形状とされており、径方向中央には軸方向で貫通する挿通孔160が形成されている。また、挿通孔160は、段付きの円形孔とされており、軸方向中間の一部よりも上側が下側に比して大径とされている。そして、インナ金具158の挿通孔160には、軸金具128が挿通されていると共に、大径部分にはボビン118における固定筒部122の下端部が挿入されており、インナ金具158が軸金具128およびボビン118に対して外嵌固定されている。
さらに、インナ金具158の下面に重ね合わされるようにして、ストッパ金具162が組み付けられている。ストッパ金具162は、高剛性の非磁性材料で形成されており、浅底の略皿形状を呈している。また、ストッパ金具162の開口周縁部には、軸直角方向内方に屈曲せしめられて延び出す当接部164が一体形成されている。更に、ストッパ金具162の底壁部の径方向中央部分には、軸方向で貫通する中央孔が形成されており、該中央孔に対して軸金具128が挿通されるようになっている。更にまた、ストッパ金具162の底壁部と底金具136の底壁部の対向面間には、スペーサ金具166が配設されている。このスペーサ金具166は、略円環板形状とされており、軸金具128に外挿状態で組み付けられていると共に、軸方向両面がストッパ金具162の底壁部下面と底金具136の底壁部上面に重ね合わされている。
一方、可動子116は、可動子側アウタ筒部材としてのアウタ筒金具168を含んで構成されている。アウタ筒金具168は、インナ金具158よりも大径で、且つストッパ金具162よりも小径とされた薄肉の略円筒形状を呈している。また、アウタ筒金具168は、インナ金具158及びストッパ金具162と同一中心軸上に配設されており、インナ金具158とストッパ金具162の周壁部の軸直角方向対向面間を延びるように、インナ金具158とストッパ金具162の何れからも離隔して配設されている。また、アウタ筒金具168の軸方向上端部と下端部には、それぞれ軸直角方向外方に向かって屈曲せしめられた固定フランジ170とストッパ当接部172が一体形成されている。なお、アウタ筒金具168のストッパ当接部172は、ストッパ金具162の底壁外周縁部と当接部164との軸方向対向面間に位置せしめられていると共に、それらストッパ金具162の底壁外周縁部と当接部164の何れからも軸方向で所定距離だけ離隔せしめられている。
また、インナ金具158とアウタ筒金具168の対向面間には、弾性連結ゴムとしての支持ゴム弾性体174が配設されている。支持ゴム弾性体174は、略円環板形状を呈しており、内周面がインナ金具158の外周面及び上面外周縁部に加硫接着されていると共に、外周面がアウタ筒金具168の内周面に加硫接着されている。また、本実施形態では、インナ金具158がアウタ筒金具168よりも僅かに軸方向下方に位置せしめられており、支持ゴム弾性体174が中央側に向かって緩やかに下方に傾斜する凹形状となっている。これにより、固定子115と可動子116が支持ゴム弾性体174で弾性的に連結されている。
さらに、本実施形態では、アウタ筒金具168の内周面と外周面を略全面に亘って覆う被覆ゴム層176が支持ゴム弾性体174と一体形成されており、該被覆ゴム層176によってアウタ筒金具168の周壁部が略全面に亘って覆われている。
また、アウタ筒金具168のストッパ当接部172の下面及び上面には、被覆ゴム層176に比して厚肉とされたバウンドストッパゴム178とリバウンドストッパゴム180が固着されている。これらバウンドストッパゴム178とリバウンドストッパゴム180は、何れも被覆ゴム層176、延いては支持ゴム弾性体174と一体形成されている。そして、アウタ筒金具168がインナ金具158に対して軸方向で過大に相対変位せしめられると、アウタ筒金具168のストッパ当接部172が、ストッパ金具162の底壁外周縁部又は当接部164に対して、バウンドストッパゴム178又はリバウンドストッパゴム180を介して軸方向で弾性的に当接せしめられる。これにより、インナ金具158に対するアウタ筒金具168の軸方向両側への相対変位量を制限するバウンドストッパ機構およびリバウンドストッパ機構が構成されている。
また、アウタ筒金具168は、筒状ハウジング182に組み付けられている。筒状ハウジング182は、アウタ筒金具168よりも僅かに大径の略円筒形状を呈している。また、筒状ハウジング182における軸直角方向中間部分の内周面には、厚肉円筒形状のマス金具184が固着せしめられている。マス金具184は強磁性材で形成されて、筒状ハウジング182と同一中心軸上に配設されている。
さらに、マス金具184の内周面には、永久磁石186が重ね合わされて固着されている。永久磁石186は、略円筒形状とされており、マス金具184の軸方向中間部分に固定されている。また、永久磁石186は、軸直角方向両面に磁極が形成されている。
また、永久磁石186の内周側には、所定距離を隔てて、ヨーク金具188が配設されている。ヨーク金具188は、全体として円形ブロック形状を呈している。また、ヨーク金具188の軸直角方向中央部分には、軸方向で延びる挿通孔190が貫通形成されている。この挿通孔190は、軸方向中間の一部よりも下側が下方に向かって次第に拡径すると共に、軸方向上部が上方に向かって次第に拡径する円形孔とされている。そして、挿通孔190には、軸金具128が遊挿状態で挿通せしめられている。更に、ヨーク金具188の上端部には、軸直角方向外方に向かって延び出す嵌着部192が一体形成されている。嵌着部192は、略円環板形状を呈しており、その外周面が筒状ハウジング182の内周面に重ね合わされていると共に、外周部分の下面が永久磁石186の上端面に重ね合わされている。
また、ヨーク金具188の上方には、板ばね194が配設されている。板ばね194は、薄肉の略円板形状を呈しており、径方向中央部分には中央孔が貫通形成されている。また、本実施形態における板ばね194には、前記第一の実施形態の板ばね52,54と同様に、軸方向でのばね特性を調節するために、内周側から外周側に向かって渦巻状に延びる複数の貫通孔が厚さ方向で貫通して形成されている。なお、板ばね194に該貫通孔を形成することにより、板ばね194を挟んだ両側の領域が、該貫通孔を通じて相互に連通されている。この板ばね194は、その外周縁部がヨーク金具188の嵌着部192の上面に重ね合わされると共に、内周縁部が軸金具128に固定されている。更に、板ばね194の外周縁部には、円環形状の当接金具198が重ね合わされており、板ばね194の外周縁部がヨーク金具188と当接金具198によって軸方向で挟み込まれている。なお、板ばね194の内周縁部は、軸金具128を構成する上ロッド金具130と下ロッド金具132の連結部分に挟み込まれていると共に、上ロッド金具130から突出する連結ボルトが、板ばね194の中央孔に挿通されて下ロッド金具132の上端面に形成されたボルト孔に螺着されることにより、軸金具128に固定されている。
さらに、筒状ハウジング182の軸方向上下端には、軸直角方向内方に向かって屈曲せしめられた内方突出部200とかしめ部202が形成されている。そして、これら内方突出部200とかしめ部202の軸方向対向面間に対して、軸方向で相互に重ね合わされたアウタ筒金具168のかしめ片144と、マス金具184と、ヨーク金具188の嵌着部192と、板ばね194と、当接金具198が挟圧保持されるようになっている。これにより、固定子115に対して相対変位可能とされた可動子116が、アウタ筒金具168と、ヨーク金具188と、永久磁石186と、ヨーク金具188とを含んで構成されている。また、本実施形態におけるマス部材は、マス金具184やヨーク金具188、永久磁石186を含んで可動子116と一体的に構成されており、所定の質量を有する可動子116が加振されることにより、目的とする発生力が得られるようになっている。なお、以上の説明からも明らかなように、インナ金具158が固定子115側に組み付けられていると共に、アウタ筒金具168が可動子116側に組み付けられており、それらインナ金具158とアウタ筒金具168が支持ゴム弾性体174で弾性的に連結されることにより、固定子115と可動子116が支持ゴム弾性体174で相互に弾性連結されている。
これら固定子115と可動子116が組み付けられて構成される電磁加振器114では、コイル120への非通電状態下において、固定子115のコイル120が可動子116のヨーク金具188と永久磁石186の軸直角方向対向面間に挿し入れられている。なお、コイル120は、ヨーク金具188と永久磁石186の何れからも離隔して配設されている。
また、コイル120に対して外部電源126から給電すると、永久磁石186によって形成される磁界内を電流が流れることによって力が発生する。そして、この発生力によって、可動子116が固定子115に対して軸方向一方の側に相対変位せしめられる。また、発生力の向きは、永久磁石186の磁極の向きとコイル120に流れる電流の向きに応じて決まることから、固定的に永久磁石186が配設された状態下において、コイル120に通電される電流の向きを正逆方向で交互に変化させる(コイル120に通電する電流を交流とする)ことにより可動子116を軸方向の両側に変位せしめることが出来る。従って、制振対象振動の周波数に応じて制御された交流電流のコイル120に対する給電や、コイル120への通電のON/OFF制御等によって、目的とする加振力を得ることが可能である。
そして、コイル120に対して制御された交流電流や脈動電流を通電し、或いはコイルへの通電のON/OFFを制御することでマス部材を一体的に備えた可動子116が軸方向で加振変位せしめられて、目的とする発生力が生ぜしめられる。これにより、目的とする加振力を制振対象部材に及ぼすことが出来て、制振対象部材の振動を能動的乃至は相殺的に低減することが出来るのである。
このような本実施形態に従う構造とされた能動型制振器112では、略有底円筒形状とされた底金具136と、逆向きの略有底円筒形状とされた蓋金具138が流体密に組み合わされていると共に、それら底金具136と蓋金具138の間にシールゴム148が介在せしめられていることにより、底金具136と蓋金具138の対向間には、外部空間に対して密閉された密閉空気室104が形成されている。
さらに、密閉空気室104は、インナ金具158とアウタ筒金具168が支持ゴム弾性体174で相互に連結されることにより、支持ゴム弾性体174を挟んで軸方向上側に位置して、コイル120を含む電磁加振器114が収容配置された第一の空気室106と、支持ゴム弾性体174を挟んで軸方向下側に位置する第二の空気室108に略二分されている。
ここにおいて、本実施形態に従う構造とされた能動型制振器112では、第一の空気室106と第二の空気室108が空気連通路としての空気流路208によって相互に連通されている。より詳細には、本実施形態における空気流路208は、ケース金具134と筒状ハウジング182(可動子116)の対向面間に形成された隙間210と、アウタ筒金具168(可動子116)とストッパ金具162の対向面間に形成された隙間212を利用して形成されており、それらの隙間210,212が相互に接続されることによって第一の空気室106と第二の空気室108を相互に連通する空気流路208が構成されている。
このような本実施形態に係る能動型制振器112においても、前記第一の実施形態と同様に、コイル120等の発熱体を収容する第一の空気室106と第二の空気室108の相対的な温度差に基づく圧力差が、空気流路208を通じての空気の流動によって可及的速やかに解消される。それ故、それら両室106,108間の圧力差に起因する支持ゴム弾性体174の変形等によって、所期の加振力が得られなくなること防ぎ、目的とする制振効果を有効に発揮せしめることが可能となる。
また、本実施形態では、アウタ筒金具168側が可動子116に連結されたタイプの電磁加振器114を採用していることから、ケース金具134と筒状ハウジング182の軸直角方向間には、可動子116の作動のための隙間210,212が形成される。そこにおいて、本実施形態では、可動子の作動を実現するために設けられる隙間210,212を巧く利用して空気流路208が形成されており、空気流路208を備えた能動型制振器112がスペース効率良く実現されている。それ故、空気流路208を設けることによる優れた制振効果を発揮する能動型制振器112をコンパクトに実現することが出来る。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、電気式リニアアクチュエータとしては、前記第一,第二の実施形態に示されている電磁加振器12,114と同じ構造の電気式リニアアクチュエータだけでなく、各種公知の電気式リニアアクチュエータを採用することが可能である。
また、前記第一,第二の実施形態に示された能動型制振器10,112では、空気連通路を一つだけ備えた構造を示したが、空気連通路は一つの能動型制振器に複数形成されていても良い。具体的には、例えば、インナ部材を貫通するように形成される内周側の空気連通路とアウタ筒部材とカバー部材の対向面間に形成される外周側の空気連通路を併せて備えていても良い。勿論、前記第一の実施形態に示されているようにインナ部材側が可動子とされた場合に、固定子とカバー部材の間を延びるように外周側に空気連通路を形成しても良い。更に、図4に示されているように、前記第二の実施形態と同様にアウタ筒金具168が可動子116側に組み付けられた電磁加振器114を採用する場合に、固定子115側(図4では、例えば、インナ金具158及び支持ゴム弾性体174)に透孔214を貫通形成して、透孔214を利用して電磁加振器114の内周側を延びる空気連通路を形成しても良い。
さらに、空気連通路は、必ずしもインナ部材に形成される透孔やアウタ筒部材とカバー部材の対向面間の隙間を利用して形成されていなくても良い。具体的には、例えば、空気連通路を弾性連結ゴムに形成することも可能である。即ち、円環形状でインナ部材に固着される内周ゴムと、内周ゴムよりも大径の円環形状で内周ゴムと同一中心軸上に配設される外周ゴムを、周方向で互いに離隔して径方向に延びる複数の連結部で相互に連結することによって、弾性連結ゴムを構成して、それら複数の連結部の周方向間の隙間を空気連通路として利用することも可能である。
また、前記第二の実施形態からも明らかなように、空気連通路の断面形状(孔形状)は、何等限定されるものではない。また、空気連通路は、必ずしも一定の断面形状で延びて形成されていなくても良い。更に、空気連通路は、好適には、金属等で形成された硬質の部材によって形成されるが、例えば、ゴムホース等の軟質の部材で形成することも可能である。
また、前記第一,第二の実施形態では、第一の空気室内に配設された発熱体(電気式リニアアクチュエータ)による温度差に基づいて生じる圧力差が空気連通路を通じての空気の流動によって解消されることが示されているが、例えば、外部環境の違い等による第一の空気室と第二の空気室の温度差等に基づいて生じる圧力差も有効に解消されることは言うまでもない。
また、固定子側に組み付けられるインナ部材およびアウタ部材の制振対象部材(カバー部材)への固定手段は、前記第一,第二の実施形態に示された具体的な構造によって何等限定的に解釈されるものではない。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:能動型制振器、12:電磁加振器、14:固定子、16:可動子、18:マス金具、20:取付金具、24:コイル、44:内筒金具、45:中央孔、62:連通孔、64:インナ金具、68:透孔、70:アウタ筒金具、74:支持ゴム弾性体、78:筒状カバー金具、80:底板金具、100:蓋金具、104:密閉空気室、106:第一の空気室、108:第二の空気室、110:空気流路、128:軸金具、214:透孔