以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を用いて、本発明の第1の実施の形態として示す運転支援装置1の構成について説明をする。
運転支援装置1は、運転者が把持するステアリングホイール10のリム11上の把持部位13に設けられた把持部位駆動装置21と、車両状態情報検出装置31と、周囲環境情報取得装置32と、信号処理装置40とを備える。
この図1に示す運転支援装置1は、車両状態情報検出装置31によって検出される車両状態情報、周囲環境情報取得装置32によって検出される周囲環境情報に基づき、把持部位駆動装置21を駆動制御し、運転者が車両運転中に把持しているステアリングホイール10の把持部位13の形状を変化させて運転者に機械的刺激を与えることで、必要以上の転舵量で車両を転舵させるようなステアリングホイール10の操舵を運転者に知覚させて運転支援をする。
高速走行時に限らずカーブ走行、レーンチェンジや追越時などの場面において、車速に応じて車両が適切に転舵するようなステアリング操作は、経験などに基づいた運転者の運転技能に大きく依存している。
一般的な運転者は、上述したような場面におけるステアリング操作において、転舵タイミングがずれてしまったり、転舵量を判断するのが遅れてしまったり、さらには適切に転舵量を判断できていなかったりした場合に、このような状況を回復させることの焦りから必要以上に急激なステアリング操作をしてしまう傾向にある。その結果、車両挙動を不安定にさせてしまうことになる。
また、急激なステアリング操作により、ステアリングホイールが速い転舵角速度で操作された場合、ステアリング操作に対する車両の応答が間に合わないため、運転者は、転舵量が少ないのだと錯覚してしまい必要以上の転舵量でステアリング操作してしまうこともある。その結果、修正操舵が要求されることになり、車両挙度が安定しないという状況になってしまう。
このように、運転者は、自身が感じた主観的な転舵量でステアリングホイールを転舵しているため、場合によっては冷静な判断が困難となり必要以上にステアリングホイールを転舵させてしまう傾向が高い。
ところで、本発明の発明者は、ステアリングホイールの把持部位の形状を変化させた場合に、ステアリングホイールを把持している運転者の掌とステアリングホイールの把持部位との接触部分にマイクロスリップが発生するため、ステアリングホイールを操作した運転者が主観的に感じる転舵量と比較して、運転者が実際にステアリングホイールを転舵させた転舵量が過渡的な減少を示すということを測定結果から見出した。
つまり、ステアリングホイールの把持部位の形状を変化させた場合、運転者が主観的にある程度の転舵量でステアリングホイールを転舵したと感じても、実際には、運転者が感じているほどの転舵量でステアリングホイールが転舵されないことになる。したがって、このようにステアリングホイールの把持部位の形状を変化させると、必要以上の転舵量でステアリングホイールを転舵することを抑制することができる。
ここで、本発明の第1の実施の形態として示す運転支援装置1の詳細な構成について説明する前に、ステアリングホイールの把持部位の形状を変化させることで、ステアリングホイールを転舵した運転者が主観的に感じる転舵量に対して、実際に転舵させた転舵量が減少することについて発明者が試行した測定結果に基づき説明をする。
まず、図2に示すように、実際の車両と同様のシート200とステアリングホイール201を用意し、さらにステアリングホイール201には、所望の負荷をかけることができる負荷付与装置202を設置した。そして、ステアリングホイール201に所定の負荷をかけた状態で、転舵量が一定となるように、被験者にステアリングホイール201を振らせ続け転舵量を計測した。この時、被験者が視覚的に転舵量を一定に合わせることがないように配慮した。また、負荷付与装置202でステアリングホイール201に付与する負荷を変えた計測も行う。
さらに、このように、被験者が一定の転舵量となるようにステアリングホイール201を転舵し続けている際に、被験者が把持しているステアリングホイール201のリム201aのグリップ径を約8%太くして、そのときの転舵量を計測した。
図3に、計測結果を示す。図3において、縦軸は、負荷付与装置202によって、被験者のステアリングホイール201の操作に抗するように与えられた実際の荷重が示され、横軸は、計測された転舵量から求められた被験者が主観的に感じる荷重が示されている。
図3に示すように、ステアリングホイール201のリム201aのグリップ径を太くする前後において、被験者の主観的荷重が同一であるにも関わらず、実荷重がグリップ径を太くした後では減少している。つまり、被験者は、ステアリングホイール201のリム201aのグリップ径を太くした前後において、主観的には同一の転舵量で操作していると感じているが、実際には、グリップ径を太くした後の転舵量が減少している。
逆に、グリップ径を細くした場合も同様の結果となり、グリップ径を細くした直後のステアリングホイール201の実際の転舵量は、被験者が感じる主観的な転舵量に対して減少することになる。
負荷付与装置202でステアリングホイール201に付与する負荷を変えて計測をしたところ、図3に示すように、実荷重が大きくなるにつれて、ステアリングホイール201を転舵した際に、被験者が主観的に感じる荷重との差が大きくなっているのが分かる。これにより、ステアリングホイール201のリム201aのグリップ径を約8%程度太くなるように変化させた場合において、被験者が主観的に感じるステアリングホイール201の転舵量に対して、実際の転舵量は最大で19%減少することが分かった。これは、グリップ径を細くした場合でも、同じ結果が得られた。
図4は、被験者が一定の転舵量でステアリングホイール201を転舵して振り続けている際に、ステアリングホイール201のリム201aのグリップ径を変化させた場合の実荷重の時間変化を示した図である。
図4に示すように、グリップ径を変化させる前までは、ほぼ一定の転舵量でステアリングホイール201が転舵されているが、グリップ径を変化させた直後の実荷重の減少から、上述したように、ステアリングホイール201の実際の転舵量が減少しているのが分かる。
また、図4に示すように、このグリップ径の変化によるステアリングホイール201の実際の転舵量の減少が所定の時間継続された後、グリップ径を変化させていないのにも関わらず、グリップ径を変化させる前のステアリングホイール201の転舵量へと時間経過と共に徐々に回復しているのが分かる。これは、ステアリングホイール201のリム201aのグリップ径を大きくした場合であっても、グリップ径を小さくした場合であっても、時間経過と共に徐々に、グリップ径を変化させる前の転舵量へと回復することになる。
このように、ステアリングホイール201のリム201aの把持部位におけるグリップ径を変化させると、被験者の掌と把持部位との接触部分に機械的刺激が与えられてマイクロスリップが発生し、被験者は、この接触部分の皮膚が変形したことを知覚する。
これに応じて、被験者は、無意識に把持力を強めるため、転舵操作時の慣性モーメントが大きくなり、リム201aのグリップ径の変化直後において、運転者が主観的に感じている転舵量に較べ、実際にステアリングホイール201を操作する転舵量が減少するということが起こる。
また、ヒトは、物体を把持する際、指と物体の接触部分にて皮膚変形初期の情報を検出し、この情報をフィードバックし、把持力を制御しているという知見もある(参考文献1:Vaughan G.macefield,Charlotte Hager-Ross,and Roland S. Johansson:“Control of grip force during restraint of an object held between finger and thumb: responses of cutaneous afferents from the digits”, Exp.Brain Res., vol.108, pp.155-171, 1996)、(参考文献2: Roland S. Johansson, Charlotte Hager, and Lars Backstrom:“Somatosensory control of precision grip during unpredictable pulling loads”, Exp.Brain Res., vol.89, pp.204-213, 1992 )。
したがって、このリム201aのグリップ径の変化によるステアリングホイール201の転舵量の減少は、被験者の反射的で無意識な反応の結果であるといえる。
また、上述したように、リム201aのグリップ径の変化によるステアリングホイール201の転舵量の減少は、被験者の反射的で無意識な反応の結果であるため、グリップ径の変化後の時間経過と共に、グリップ径を変化させる前の転舵量へと回復して被験者の主観的な転舵量に一致するようになる。
このように運転者の掌に対する機械的刺激の付与による転舵量の減少は、ステアリングホイールのグリップ径の変化に対して過渡的に現れる現象である。また、運転者による無意識の反応であるため、機械的刺激を付与したことによる運転者との操作干渉もないため、このような機能を車両に搭載した場合、良好に運転支援を行うことができる。
以上のような、測定結果及び知見に基づき、本発明の第1の実施の形態として示す運転支援装置1は、車両状態情報検出装置31によって検出される車両状態情報、周囲環境情報取得装置32によって検出される周囲環境情報に基づき、把持部位駆動装置21を駆動制御し、運転者が車両運転中に把持しているステアリングホイール10の把持部位13の形状を変化させて運転者に機械的刺激を与えることで、必要以上の転舵量で車両を転舵させるようなステアリングホイール10の転舵を運転者に知覚させ、無意識の反応として運転者が行う転舵量を減少させる方向のステアリング操作を起こさせることで運転支援をする。
再び、図1を用いて、本発明の第1の実施の形態として示す運転支援装置1の構成について説明をする。
ステアリングホイール10は、車両の進行方向を変えるために運転者が操作するパーツである。ステアリングホイール10を運転者が回転操作すると、回転力がステアリングシャフトを介して、ステアリングギヤに伝わり、タイヤの向きが変わる。
ステアリングホイール10のリム11の運転者が把持する把持部位13には、把持部位の形状を変化させる把持部位駆動装置21が備えられている。この把持部位駆動装置21の詳細な構成については、後で説明をする。
車両状態情報検出装置31は、走行している車両の現在の車両状態を示した車両状態情報を検出し、検出した車両状態情報を信号処理装置40の信号入力部41に出力する。
車両状態情報検出装置31は、例えば、車両速度を検出する車速センサ、ステアリングホイール10の転舵角速度を検出する転舵角速度センサ、ステアリングホイール10の転舵角加速度を検出する転舵角加速度センサ、ヨー角速度を検出するヨーレイトセンサ、ロール角を検出するロールレイトセンサ、ピッチング角を検出するピッチングレイトセンサといったセンサである。また、エンジン回転数センサ、シフトポジションセンサ、アクセルセンサ、ブレーキスイッチセンサ、方向指示センサなども備えている。なお、転舵角速度センサ、転舵角加速度センサは、いずれか一つが備えられていればよい。
車両状態情報検出装置31は、車両状態情報として、少なくとも転舵角速度センサによって検出されるステアリングホイール10の転舵角速度、若しくは転舵角加速度センサによって検出される転舵角加速度を信号処理装置40の信号入力部41に出力する。
周囲環境情報取得装置32は、主にナビゲーションシステムから構成され、ナビゲーションシステムで利用される情報を、信号処理装置40に送信することで、ステアリングホイール10の把持部位駆動装置21の制御処理に、自車両が走行している道路の道路環境情報を始めとする車両の周囲環境を特徴付ける各種情報を利用できるようにする。
また、周囲環境情報取得装置32は、路面センサ、車線検出センサ、車両前方の障害物を検出する前方障害物センサ、雨滴を検出するレインセンサなども備えている。
信号処理装置40は、車両状態情報検出装置31、周囲環境情報取得装置32からそれぞれ出力される車両状態情報と周囲環境情報とを入力し、制御部42に出力する入力インターフェースである信号入力部41と、制御部42と、記憶部43と、制御信号出力部44とを備える。
信号処理装置40は、車両状態情報検出装置31から出力される車両状態情報、周囲環境情報取得装置32から出力される周囲環境情報に基づき、制御信号生成して、ステアリングホイール10の把持部位駆動装置21を制御する。
制御部42は、信号処理装置40を統括的に制御する制御手段であり、記憶部43に格納された実行プログラムを実行して、信号入力部41を介して入力される車両状態情報、周囲環境情報に基づき把持部位駆動装置21を制御する制御信号を生成する。
記憶部43は、信号処理装置40による制御処理において、制御部42で実行される実行プログラムや、制御部42で読み込まれる各種パラメータを格納しているメモリである。また、記憶部43のメモリ領域は、制御部42での制御処理を実行する際の作業領域として使用される。
制御信号出力部44は、制御部42で生成された制御信号を把持部位駆動装置21に応じた電気信号に変換し、把持部位駆動装置21へと供給する出力インターフェースである。
このような構成の運転支援装置1は、車両状態情報検出装置31によって検出される車両状態情報、周囲環境情報取得装置32によって取得される周囲環境情報に基づき、ステアリングホイール10の把持部位13に設けられた把持部位駆動装置21を制御して、運転者の掌に機械的刺激を付与することで、運転者の過剰なステアリング操作を無意識に抑制させることができる。
(ステアリングホイールの一般的な構成)
続いて、把持部位駆動装置21を搭載したステアリングホイール10の詳細な構成について説明する前に、図5を用いて、把持部位駆動装置21を組み込む、一般的なステアリングホイール5の構造について説明をする。なお、図5に示すステアリングホイール5において、後述するステアリングホイール10と共通する部材などは説明のため同一符号を付す。
図5(a)は、一般的なステアリングホイール5の外観を示した概略図である。図5(a)に点線で示したリム11の把持部位13は、ステアリングホイール5を操作する際に運転者が主に把持する箇所である。
図5(b)は、この把持部位13を中心に拡大して示した図である。把持部位13を含め、ステアリングホイール5のリム11並びにスポーク12の一部は、柔らかい表皮14で覆われており、運転者がリム11を把持した際の触覚を良好に保つ。この表皮14は、図5(c)に一部分を示すような形状に裁断した合成皮革や本革などを、糸などでステアリングホイール5に縫合して取り付けることになる。
図5(d)に、図5(b)に示すAA断面でステアリングホイール5のリム11を切断した断面図を示す。図5(d)に示すように、ステアリングホイール5のリム11は、ステアリングホイール5に機械的強度を与える芯金15を中央に配し、その周りに、例えば、ウレタンなどからなる緩衝材16を配している。緩衝材16は、運転者がリム11を把持した際の圧力をステアリングホイール5に十分伝えると共に、長時間の把持でも運転者の疲労を軽減させるために用いられる。この緩衝材16の上に、上述した表皮14が被せられることになる。
ステアリングホイール10は、このようなステアリングホイール5に把持部位駆動装置21を搭載させることでなる。把持部位駆動装置21は、上述したように、把持部位13を運転者が把持した際に運転者の掌に対して機械的刺激を与えるように、把持部位13の形状を変形させる機構となっている。
したがって、把持部位駆動装置21は、把持部位13のリム11の寸法変化(グリップ径の変化)、リム11の表面形状の変化といった把持部位13の形状変化を実行できればどのような構成であってもよく、様々な構成が考えられるが、本発明の第1の実施の形態として示す運転支援装置1では、一例として、以下に、電気的に駆動される物理的な部材を利用して把持部位13の形状を変化させるタイプ、流体の圧力変化を利用して把持部位13の形状を変化させるタイプ、所定の条件で変形する金属を利用して把持部位13の形状を変化させるタイプといった3タイプの把持部位駆動装置21について説明をする。
「電気的に駆動される物理的な部材を利用して把持部位13の形状を変化させるタイプ」
まず、図6乃至図10を用いて、電気的に駆動される物理的な部材として、ステッピングモータで回転される回転子を用いた把持部位駆動装置21Aについて説明をする。
把持部位駆動装置21Aは、図5(a)に示すステアリングホイール5と同じ外観を有するステアリングホイール10の左右の把持部位13近傍のリム11、スポーク12内部に設けられている。図7は、図6に示す矢印B方向から、把持部位駆動装置21Aを備えたステアリングホイール10内部を透視した様子を示した図である。
図7に示すように把持部位駆動装置21Aは、スポーク12内部の芯金15に取り付けられたステッピングモータ51と、ステッピングモータ51のモータ軸に取り付けられた回転子52と、回転子52が回転することでステアリングホイール10内部からリム11のグリップ径を押し広げる作用を把持部位13全体に伝えるリテーナ53とを備えている。
図8(a)は、把持部位13近傍の表皮14を示した図であり、図8(b)は、図8(a)のCC断面で切断した様子を示した図である。図8(b)に示すように、リテーナ53は、把持部位13のリム11、スポーク12の形状に合わせてT字型をしており、把持部位13の表皮14の裏側に取り付けられる。図8(b)では、片側のみしか示していないが、リテーナ53は、緩衝材16が巻かれた芯金15を介して対向する表皮14の裏側にも配されることになる。
図9に、図6に示すDD断面でリム11を切断した様子を示す。図9に示すように、リテーナ53は、緩衝材16と表皮14との間に配されている。リテーナ53は、例えば、弾性を有する金属の薄肉板や樹脂成型品などを用いることができる。
また、図9に示すように、緩衝材16を覆ってリム11に表皮14を取り付ける際、例えば、縫合箇所においてゴム糸を編み込んだ繊維状の伸縮部材54を用いる。
図10(a)、図10(b)は、図7に示すEE断面でスポーク12を切断した様子を示した図である。図10(a)、図10(b)は、それぞれ、把持部位13の形状を変化させる前の断面、把持部位13の形状を変化させた後の断面である。
図10(a)、図10(b)に示すように、回転子52は、ステッピングモータ51に駆動され、当該回転子52の長手方向がリテーナ53と垂直となる方向に回転した場合に、伸縮部材54の弾性力に抗して、対向するように配置された2枚のリテーナ53を互いに引き離すように押し広げ把持部位13の形状を変化させる。
上述したように、リテーナ53は、ステアリングホイール10のリム11からスポーク12にかけて配されたT字型の形状をしているため、スポーク12の芯金15に取り付けられたステッピングモータ51により駆動される回転子52による作用を把持部位13全体に伝えることができる。
また、把持部位13の形状を変化させた状態から、ステッピングモータ51を逆回転させるなどして回転子52を初期状態に戻すと、伸縮部材54の弾性力によりリテーナ53、表皮14は、速やかに形状変化前の状態に戻ることになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13内部に設けられた把持部位駆動装置21Aは、ステッピングモータ51の駆動により回転子52が回転することで、把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、上述した説明では、図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態というように、ステアリングホイール10の把持部位13のグリップ径を大きくすることで、運転者の掌に対して機械的刺激を付与している。これとは逆に、図10(b)に示す状態を初期状態として、図10(a)に示す状態へとグリップ径が小さくなるように把持部位13を変化させることで、運転者の掌に機械的刺激を付与するようにしてもよい。
次に、図11乃至図14を用いて、電気的に駆動される物理的な部材として、ステッピングモータで回転される螺旋状の金属板を用いた把持部位駆動装置21Bについて説明をする。
把持部位駆動装置21Bは、図5(a)に示すステアリングホイール5と同じ外観を有するステアリングホイール10の左右の把持部位13近傍のリム11、スポーク12内部に設けられている。図12は、図11に示す矢印F方向から、把持部位駆動装置21Bを備えたステアリングホイール10内部を透視した様子を示した図である。
図12に示すように把持部位駆動装置21Bは、リム11の芯金15に取り付けられたステッピングモータ61と、リム11の芯金15に対して螺旋状に巻き付け、一端をステッピングモータ61のモータ軸に、他端を芯金15に固定させた弾性を有する金属薄肉板62とを備えている。
図13(a)、図14(a)は、図12に示すGG断面でリム11を切断した様子示した図である。図13(a)、図14(a)は、それぞれ、把持部位13の形状を変化させる前の断面、把持部位13の形状を変化させた後の断面である。
図13(a)に示すように、緩衝材16をリム11に表皮14を取り付ける際、例えば、縫合箇所においてゴム糸を編み込んだ繊維状の伸縮部材63を用いる。
図13(b)は、図13(a)に示すHH断面でリム11を切断した様子示した図である。図13(a)、(b)に示すように、通常状態において、金属薄肉板62は、弾性力に抗する方向で芯金15に、ステッピングモータ61によって螺旋状に巻き付けられている。
図14(b)は、図14(a)に示すII断面でリム11を切断した様子を示した図である。図14(a)、(b)に示すように、芯金15に螺旋状に巻き付けられている金属薄肉板62の巻き付けを緩める方向にステッピングモータ61を回転させると、金属薄肉板62の弾性力により、伸縮部材63の弾性力に抗して、緩衝材16、表皮14が押し広げられ把持部位13の形状を変化させることができる。
また、把持部位13の形状を変化させた状態から、ステッピングモータ61を逆回転させるなどして金属薄肉板62を芯金15に巻き付けて初期状態に戻すと、伸縮部材63の弾性力により緩衝材16、表皮14は速やかに形状変化前の状態に戻ることになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13内部に設けられた把持部位駆動装置21Bは、ステッピングモータ61の駆動により金属薄肉板62の芯金15に対する巻き付けを緩めることで、金属薄肉板62の弾性力により把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
なお、金属薄肉板62は、芯金15に螺旋状に巻き付けるようにしたが、緩衝材16に対して同様に螺旋状に巻き付けることもできる。この場合も、金属薄肉板62を芯金15に巻き付けた時と同様に、ステッピングモータ51の駆動により、金属薄肉板62が弾性力のある方向に緩められた場合に、把持部位13のグリップ径を大きくするように、把持部位13の形状を変化させることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、上述した説明では、図13(a)、(b)に示す状態から図14(a)、(b)に示す状態というように、ステアリングホイール10の把持部位13のグリップ径を大きくすることで、運転者の掌に対して機械的刺激を付与している。これとは逆に、図14(a)、(b)に示す状態を初期状態として、図13(a)、(b)に示す状態へとグリップ径が小さくなるように把持部位13を変化させることで、運転者の掌に機械的刺激を付与するようにしてもよい。
続いて、図15乃至図18を用いて、電気的に駆動される物理的な部材として、ステッピングモータで回転される回転子を用いた把持部位駆動装置21Cについて説明をする。
把持部位駆動装置21Cは、図5(a)に示すステアリングホイール5と同じ外観を有するステアリングホイール10の左右の把持部位13近傍のリム11、スポーク12内部に設けられている。図16は、図15に示す矢印J方向から、把持部位駆動装置21Cを備えたステアリングホイール10内部を透視した様子を示した図である。
図16に示すように把持部位駆動装置21Cは、リム11の芯金15の内部に取り付けられたステッピングモータ71と、ステッピングモータ71のモータ軸に取り付けられた回転子72とを備えている。
図17は、図16に示すKK断面でステアリングホイール10を切断した様子を示した図である。ステッピングモータ71は、リム11の略中央位置となるようにスポーク12の芯金15で固定保持されている。つまり、ステッピングモータ71のモータ軸は、リム11の略中央に位置することになる。このように配置されたステッピングモータ71のモータ軸には、リム11の円周方向を長手方向とする回転子72が取り付けられている。
図18(a)、図18(b)は、図15に示すLL断面でリム11を切断した様子示した図である。図18(a)、図18(b)は、それぞれ、把持部位13の形状を変化させる前の断面、把持部位13の形状を変化させた後の断面である。
図18(a)、図18(b)に示すように、把持部位駆動装置21Cをステアリングホイール10内に設けるにあたり、リム11内に設けられている芯金15、緩衝材16は、図5(d)で示した構成と若干異なっている。図18(a)に示すように、芯金15と緩衝材16とは、ステッピングモータ71に取り付けられ、リム11の円周方向を長手方向とする回転子72を包み込むように配置される。
つまり、芯金15と緩衝材16とを組み合わせることで形成された中空構造のステアリングホイール10の芯部材内部に、ステッピングモータ71のモータ軸に取り付けられた回転子72が配されることになる。
図18(a)、図18(b)に示すように、回転子72には、表面に複数の凸部が形成されており、緩衝材16には、把持部位13を変形させない通常状態において、この凸部と嵌合する凹部が形成されている。
図18(a)、図18(b)に示すように、リム11に表皮14を取り付ける際、例えば、縫合箇所においてゴム糸を編み込んだ繊維状の伸縮部材73を用いる。
図18(a)、図18(b)に示すように、回転子72は、ステッピングモータ71で駆動され、通常状態において嵌合されていた回転子72の凸部が緩衝材16の凹部から外れると、回転子72の凸部が緩衝材16を押し広げ、伸縮部材73の弾性力に抗して、把持部位13の形状を変化させる。
また、把持部位13の形状を変化させた状態から、ステッピングモータ71を逆回転させるなどして回転子72の凸部を緩衝材16の凹部に嵌合させて初期状態に戻すと、伸縮部材73の弾性力により押し広げられていた緩衝材16、表皮14は、速やかに形状変化前の状態に戻ることになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13に設けられた把持部位駆動装置21Cは、ステッピングモータ71の駆動により回転子72が回転することで、把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、上述した説明では、図18(a)に示す状態から図18(b)に示す状態というように、ステアリングホイール10の把持部位13のグリップ径を大きくすることで、運転者の掌に対して機械的刺激を付与している。これとは逆に、図18(b)に示す状態を初期状態として、図18(a)に示す状態へとグリップ径が小さくなるように把持部位13を変化させることで、運転者の掌に機械的刺激を付与するようにしてもよい。
このような把持部位駆動装置21A、21B、21Cは、信号処理装置40によって制御される。信号処理装置40の制御部42は、ステッピングモータ51、61、71の回転速度、回転量を制御して、把持部位13のグリップ径の変化速度、変化量を制御する。
「流体の圧力変化を利用して把持部位13の形状を変化させるタイプ」
まず、図19乃至図21を用いて、把持部位駆動装置21Dについて説明をする。把持部位駆動装置21Dは、図5(a)に示すステアリングホイール5と同じ外観を有するステアリングホイール10の左右の把持部位13近傍のリム11、スポーク12内部に設けられている。図20(a)は、図19に示すMM断面にて、把持部位駆動装置21Dを備えたステアリングホイール10のリム11を切断した様子を示した図である。図20(a)に示すように、リム11に表皮14を取り付ける際、例えば、縫合箇所においてゴム糸を編み込んだ繊維状の伸縮部材86を用いる。
また、図20(b)は、図20(a)に示すNN断面でリム11を切断した様子を示した図である。
把持部位駆動装置21Dは、図20(b)に示すように、リム11内部の芯金15と緩衝材16との間に設けられ、流体が封入された流体封入空間84と、流体封入空間84に封入された流体を圧縮する可動部82とを備えている。
可動部82には電磁石81が備えられており、流体封入空間84を介して電磁石81の磁力が及ぶ位置に別の電磁石83が備えられている。この電磁石81、83は、信号処理装置40から出力された電気信号に応じて同一極性の磁力、又は反対の極性の磁力を発することになる。
信号処理装置40が、互いに逆極性の磁力が発生するような電気信号を電磁石81、83出力した場合、電磁石81、83は引き合うため、可動部82が流体封入空間84を縮める方向へと可動し、流体封入空間84に封入された流体を圧縮する。流体封入空間84に封入された流体が圧縮されると、伸縮部材86の弾性力に抗して、当該流体封入空間84を形成している緩衝材16が表皮14と共に外側へと押し広げられるため把持部位13が変化することになる。
また、信号処理装置40が、同一極性の磁力が発生するような電気信号を電磁石81,83に出力した場合、電磁石81、83は反発するため、可動部82が流体封入空間84を広げる方向へと可動し、流体封入空間84に封入された流体の圧力を下げることになる。流体封入空間84の圧力が下がると、伸縮部材86の弾性力により、緩衝材16、表皮14は速やかに形状変化前の状態に戻ることになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13内部に設けられた把持部位駆動装置21Dは、電磁石81、83の磁力を制御することで可動する可動部82により、流体が封入された流体封入空間84を圧縮することで把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、把持部位駆動装置21Dは、図21(a)、(b)に示すように、電磁石83に代えて、流体封入空間84内に弾性体85を用いた構成とすることもできる。なお、図21(a)は、図19に示すMM断面にて、把持部位駆動装置21Dを備えたステアリングホイール10のリム11を切断した様子を示した図であり、図21(b)は、図21(a)に示すOO線でリム11を切断した様子を示した図である。
把持部位駆動装置21Dをこのように構成した場合、信号処理装置40が、電磁石81に対して電気信号を出力して磁力を発生させると、電磁石81が対向する位置にある芯金15と引き合い、弾性体85の弾性力に抗して可動部82が可動し流体封入空間84に封入された流体が圧縮される。流体封入空間84に封入された流体が圧縮されると、伸縮部材86の弾性力に抗して、当該流体封入空間84を形成している緩衝材16が表皮14と共に外側へと押し広げられるため把持部位13が変化することになる。
また、信号処理装置40は、電磁石81への電気信号の出力を停止すると、弾性体85の弾性力により可動部82が流体封入空間84を広げる方向へと可動し、流体封入空間84に封入された流体の圧力が下がることになる。流体封入空間の圧力が下がると、伸縮部材86の弾性力により、緩衝材16、表皮14は速やかに形状変化前の状態に戻ることになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13内部に設けられた把持部位駆動装置21Dは、電磁石81の磁力を制御することで可動する可動部82により、流体が封入された流体封入空間84を圧縮することで把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、上述した説明では、ステアリングホイール10の把持部位13のグリップ径を大きくすることで、運転者の掌に対して機械的刺激を付与している。これとは逆に、グリップ径が小さくなるように把持部位13を変化させることで、運転者の掌に機械的刺激を付与するようにしてもよい。
続いて、図22乃至図24を用いて、把持部位駆動装置21Eについて説明をする。
把持部位駆動装置21Eは、図5(a)に示すステアリングホイール5と同じ外観を有するステアリングホイール10の左右の把持部位13近傍のリム11、スポーク12内部に設けられている。図23は、図22に示すQQ断面にて、把持部位駆動装置21Eを備えたステアリングホイール10のリム11を切断した様子を示した図であり、また、図24は、図22に示すPP断面でステアリングホイール10を切断した様子を示した図である。
図23、図24に示すように把持部位駆動装置21Eは、流体を供給するスポーク12内の芯金に取り付けたポンプ91と、ポンプ91にて供給される流体をリム11内部の緩衝材16と表皮14との間に供給するチューブ92とを備えている。チューブ92には、把持部位13を変化させる前の通常状態において既に流体が注入されており、把持部位13を変化させる際には、ポンプ91からさらに流体を注入することになる。また、ポンプ91は、チューブ92に対する流体の供給に代えて、圧力をかけるようにしてもよい。
図24に示すように、リム11に表皮14を取り付ける際、例えば、縫合箇所においてゴム糸を編み込んだ繊維状の伸縮部材95を用いる。
信号処理装置40が、ポンプ91に対して流体の供給又は圧力をかけるよう指示をする制御信号を出力すると、ポンプ91は、チューブ92に対してさらなる流体の供給又は圧力をかける。これに応じて、チューブ92は、伸縮部材95の弾性力に抗して表皮14を外側へと押し広げるため把持部位13が変化することになる。
また、信号処理装置40が、ポンプ91に対して、チューブ92に注入した流体を抜く又は圧力を開放するよう制御することで、伸縮部材95の弾性力により、表皮14は速やかに形状変化前の状態に戻ることになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13内部に設けられた把持部位駆動装置21Eは、リム11内部に配されたチューブ92内の流体の量又は圧力制御をすることで、把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、上述した説明では、ステアリングホイール10の把持部位13のグリップ径を大きくすることで、運転者の掌に対して機械的刺激を付与している。これとは逆に、チューブ92に圧力がかかった状態を初期状態とし、減圧してグリップ径が小さくなるように把持部位13を変化させることで、運転者の掌に機械的刺激を付与するようにしてもよい。
次に、図25乃至図28を用いて、把持部位駆動装置21Fについて説明をする。
把持部位駆動装置21Fは、図5(a)に示すステアリングホイール5と同じ外観を有するステアリングホイール10の左右の把持部位13近傍のリム11、スポーク12内部に設けられている。図26は、図25に示すRR断面にて、把持部位駆動装置21Eを備えたステアリングホイール10のリム11を切断した様子を示した図であり、図27(a)は、図25に示すSS断面で、リム11を切断した様子を示した図である。また、図27(b)は、図27(a)のTT断面でリム11を切断した様子を示した図である。
図27(a)に示すように、リム11に表皮14を取り付ける際、例えば、縫合箇所においてゴム糸を編み込んだ繊維状の伸縮部材105を用いる。
把持部位駆動装置21Fでは、芯金15は、中空構造をなし流体が入れられている。この芯金15内部の流体が入れられた流体空間102には、スポーク12内部の芯金15に取り付けられたポンプ101から、チューブ103を介して流体又は圧力が供給されるようになっている。
図27(b)に示すように、緩衝材16は、断面形状が波状とされた形状をしており、表皮14とは、径が太くなる箇所である接合部AGのみが接着されている。つまり、隣あう接合部AGの間の、緩衝材16の径が細くなる箇所は、表皮14と接着されないため、表皮14と、緩衝材16との間にはリング状の空間RSが複数形成されることになる。
この複数の空間RSには、流体空間102から、芯金15、緩衝材16を通過して流体を供給できるように流体供給路104が形成されている。
信号処理装置40が、ポンプ101に対して流体の供給又は圧力をかけるよう指示をする制御信号を出力すると、ポンプ101は流体空間102に対してさらなる流体の供給又は圧力をかける。これに応じて、流体空間102は、伸縮部材105の弾性力に抗して、流体供給路104を介して表皮14を押し広げ、リング状の空間RSを膨張させるため、図28(b)に示すように、把持部位13が変化することになる。
また、信号処理装置40は、ポンプ101に対して、流体空間102に注入した流体を抜く又は圧力を開放するよう制御することで、伸縮部材105の弾性力により、表皮14は速やかに形状変化前の図27(b)に示すような状態に戻ることになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13内部に設けられた把持部位駆動装置21Fは、芯金15内に形成された流体空間102内の流体の量又は圧力制御をすることで、流体供給路104を介して流体空間102と接続されているリング状の空間RSを膨張させて把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、信号処理装置40は、ポンプ101に対して図27(b)の状態を初期状態として、流体を抜く又は圧力を減じることで、リング状の空間RSを収縮させて図28(a)に示すように、グリップ径を小さくして把持部位13を変化させることもできる。
さらに、図28(a)に示す収縮状態を初期状態として、図28(b)に示す膨張状態となるように制御することで把持部位13を変化させることもできるし、逆に、図28(b)に示す膨張状態を初期状態とし、図28(a)に示す収縮状態となるように制御することで把持部位13を変化させることもできる。
つまり、初期状態から流体の圧力変化によって、把持部位13の形状を変化させるように制御することで、運転者の掌に対して所望の機械的刺激を付与する。
このような把持部位駆動装置21D、21E、21Fは、信号処理装置40によって制御される。信号処理装置40の制御部42は、電磁石81、83の磁力を制御することで、可動部82の駆動量、駆動速度を調整し、把持部位13のグリップ径の変化速度、変化方向、変化量を制御する。
また、信号処理装置40の制御部42は、ポンプ91、101からの供給流量、供給圧力、供給速度などを制御することで、把持部位13のグリップ径の変化速度、変化方向、変化量を制御する。
「所定の条件で変形する金属を利用して把持部位13の形状を変化させるタイプ」
次に、図29乃至図30を用いて、把持部位駆動装置21Gについて説明をする。把持部位駆動装置21Gは、図5(a)に示すステアリングホイール5と同じ外観を有するステアリングホイール10の左右の把持部位13近傍のリム11、スポーク12内部に設けられている。図30は、図29に示す、UU断面で、把持部位駆動装置21Gを備えたステアリングホイール10のリム11を切断した様子を示した図である。
図30(a)に示すように、把持部位駆動装置21Gは、芯金15に対して端部111aで固定された金属片111と、金属片111に積層された圧電素子112とを備えている。
信号処理装置40が、圧電素子112に電圧を印加した場合、当該圧電素子112が金属片111の面内で伸び縮し歪むため金属片111もこれに伴い、図30(b)に示すように反り返るように変形する。
したがって、緩衝材16、表皮14は、反り返った金属片111により押し広げられるため、把持部位13が変化することになる。
このように、ステアリングホイール10の把持部位13内部に設けられた把持部位駆動装置21Gは、金属片111に積層した圧電素子112に印加する電圧を制御して、金属片111の形状を変化させることで、把持部位13のグリップ径を大きくすることができる。したがって、把持部位13を把持している運転者の掌に対して機械的刺激を付与することができる。
また、上述した説明では、図30(a)に示す状態から図30(b)に示す状態というように、ステアリングホイール10の把持部位13のグリップ径を大きくすることで、運転者の掌に対して機械的刺激を付与している。これとは逆に、図30(b)に示す状態を初期状態として、図30(a)に示す状態へとグリップ径が小さくなるように把持部位13を変化させることで、運転者の掌に機械的刺激を付与するようにしてもよい。
このような把持部位駆動装置21Eは、信号処理装置40によって制御される。信号処理装置40の制御部42は、圧電素子112に印加する電圧により、把持部位13のグリップ径の変位量、変化速度(周波数)を制御する。
また、圧電素子112を積層した金属片111の代わりに形状記憶合金と温度を与える熱発生装置を用いてもよい。ただし、運転者が温度の影響で把持部位13から手を離すことがないように、緩衝材16に断熱材を用い、形状記憶合金と熱発生装置は芯金15と緩衝材16との間に配置する。あるいは形状記憶合金の形状変化温度と把持部位13の常温の温度差を、形状変化が認められる範囲内で最少にする。
(運転支援装置1の処理動作)
続いて、図31に示すフローチャートを用いて、運転支援装置1の処理動作について説明をする。
ステップS1において、車両状態情報検出装置31の転舵角速度センサ又は転舵角加速度センサによって転舵角速度又は転舵角加速度を検出する。検出された転舵角速度又は転舵角加速度は、信号処理装置40の信号入力部41を介して制御部42に出力される。
ステップS2において、制御部42は、転舵角速度又は転舵角加速度とそれぞれに対応する所定の閾値とを比較し、所定の閾値を超えたかどうかを判断する。制御部42は、転舵角速度又は転舵角加速度が、所定の閾値を超えた場合には、ステップS3へと進め、超えなかった場合には、ステップS1へと戻る。
なお、この転舵角速度又は転舵角加速度との比較に用いられる所定の閾値は、常に一定デフォルト値を用いることもできるし、車両状態情報検出装置31によって検出される車両状態情報や、周囲環境情報取得装置32によって取得される周囲環境情報に応じて適宜変更するようにすることもできる。
例えば、車両速度に応じて異なる閾値をテーブルとして記憶部43に用意しておき、車両状態情報検出装置31の車速センサで車両速度が検出されたことに応じて、対応する閾値を選択して用いるようにしてもよい。
ステップS3において、制御部42は、車両状態情報検出装置31によって検出される転舵角速度又は転舵角加速度以外の車両状態情報を取得する。
ステップS4において、制御部42は、周囲環境情報取得装置32によって取得される周囲環境情報を取得する。
ステップS5において、制御部42は、取得された転舵角速度又は転舵角加速度、車両状態情報、周囲環境情報から、現在のステアリングホイール10の操作は、回避運転であるのかどうかを判断する。
例えば、制御部42は、車両状態情報検出装置31の前方障害物センサによって検出される情報より、車両の前方にある障害物が自車両へ相対的に接近していて、現在の障害物までの距離と接近する速度から算出される時間より、この障害物が自車両と衝突すると判断した場合には、今回のステアリングホイール10の操作は回避運転を示す操作であるとしてステップS1へと戻る。
また、走行中に、方向指示器を作動させずに車線を逸脱するような転舵が検出された場合にも、制御部42は、今回のステアリングホイール10の操作は回避運転を示す操作であるとしてステップS1へと戻る。
ステップS6において、制御部42は、把持部位駆動装置21を制御する制御信号を生成し、制御信号出力部44を介してステアリングホイール10の把持部位駆動装置21に出力する。
ステップS7において、把持部位駆動装置21は、制御信号出力部44から出力された制御信号に基づきステアリングホイール10の把持部位13の形状を変化させる。
ステップS8において、制御部42は、把持部位駆動装置21に制御信号を供給してから所定の時間経過したかどうかを判断し、経過した場合にはステップS9へと進み、経過していない場合には、機械的刺激を付与し続けながら待機状態を継続する。
ステップS9において、制御部42は、把持部位駆動装置21に制御信号を供給してから所定の時間経過したことに応じて、把持部位駆動装置21を制御して把持部位13を変化させる前の初期状態へと戻す。このとき、制御部42は、ステップS6において、把持部位13を変化させた速度よりも遅い速度で初期状態へと戻す。
これにより、把持部位13を変化させることで、運転者の掌に与えた機械的刺激により減少したステアリングホイール10の実際の転舵量を、意図的に運転者が感じる主観的な転舵量へと近づけてやることができる。これにより、転舵量の減少を過渡的な変化であるとすることができる。
また、機械的刺激を付与した後、その状態を所定の時間継続した場合でも、運転者が主観的に感じるステアリングホイール10の転舵量と、実際の転舵量との差は、実際の転舵量へと近づく方向で解消されるため、ステップS9、ステップS10を実行しないようにすることもできる。
この場合、次のルーチンにおけるステップS7での把持部位駆動装置21の動作を、変化状態が保たれたままの状態から初期状態へと戻すことで、把持部位13を変化させ、運転者の掌に機械的刺激を付与すればよい。
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態として示す運転支援装置2について説明をする。上述した第1の実施の形態として示した運転支援装置1では、運転者の掌に対してステアリングホイール10の把持部位13の形状変化により機械的刺激を付与することで、必要以上の転舵量で車両を転舵させるようなステアリングホイール10の操舵を運転者に知覚させ、無意識の反応として運転者が行う転舵量を減少させる方向のステアリング操作を起こさせることで運転支援をしていた。
ところで、電気刺激を行うことによって,運転者は把持部位が変形した場合と同じ触覚を知覚し、把持部位が変形した場合と同様の効果が得られる。また、人の皮膚の触覚受容器(機械受容器)の中で,接触すべりに敏感なマイスナー小体は100Hz以下の周波数で感度よく接触すべりを知覚することができる(参考文献3:R.S.J.et al.:“Tactile Afferent Signals in the Control of Precision Grip”,M.Jeanneod ed, Attention and Performance, vol.13, pp.677-713,1990)。
言い換えれば、第1の実施の形態として示した運転支援装置1で運転者の掌に与えた機械的刺激により得られる効果は、運転者の掌に所定の電気的刺激を付与することでも得られることが明示されている。
そこで、本発明の第2の実施の形態として示す運転支援装置2は、運転者の掌に対してステアリングホイール10の把持部位13の形状変化と同等の作用を電気的刺激により付与し、必要以上の転舵量で車両を転舵させるようなステアリングホイール10の操舵を運転者に知覚させ、無意識の反応として運転者が行う転舵量を減少させる方向のステアリング操作を起こさせることで運転支援を行う。
図32を用いて、本発明の第2の実施の形態として示す運転支援装置2の構成について説明をする。運転支援装置2は、第1の実施の形態として示す運転支援装置1において、ステアリングホイール10の把持部位13に設けた把持部位駆動装置21に代えて、運転者の掌に電気刺激を付与する複数の電極120を設けた構成となっている。
この時、電気的刺激を点の刺激としてではなく、把持部位13の接触面が変形した場合と同じ触覚として運転者に知覚させるため、把持部位13に電極120を複数、配列させる。
このように第2の実施の形態として示す運転支援装置2は、第1の実施の形態として示す運転支援装置1の把持部位駆動装置21に代えて、複数の電極120を設けた以外は全く同一の構成であるため、それ以外の機能部については同一符号を付して説明を省略する。
まず、ステアリングホイール10の把持部位13に設ける複数の電極120について説明をする。図34は、図33に示すステアリングホイール10の把持部位13をVV断面で切断した際の様子を示した図である。
図34に示すように、ステアリングホイール10の表皮14上には、複数の電極120が設けられている。
図35(a)、(b)に電極120の構成の一例を示す。図35(a)に示す電極120は、内部電極121と外部電極122とが絶縁体123を介して同心円状に配置された電極である。また、図35(b)は、図35(a)のWW断面で電極120を切断した様子を示した図である。
機械的刺激を受容する機械受容器のうちマイスナー小体は、皮膚の浅部である表皮に存在しており、電極120の形状を適切に制御することで、このマイスナー小体を選択的に刺激することができる。
信号処理装置40の制御部42は、車両状態情報検出装置31から出力される車両状態情報、周囲環境情報取得装置32から出力される周囲環境情報に基づき、運転者の掌に流す電流を生成して、制御信号出力部44を介してステアリングホイール10の把持部位13に形成された複数の電極120に供給する。
電極120に供給し、運転者の掌に電気的刺激として流す電流は、パルス周波数が100Hz以下で、運転者に痛みを与えない程度の微弱な電流である。例えば、交流パルスで振動感覚を与えるようにしたり、直流パルスで圧覚を与えるようにする。信号処理装置40の制御部42は、このような電流を所定の時間だけ制御信号出力部44を介して複数の電極120に供給する。
(運転支援装置2の処理動作)
続いて、図36に示すフローチャートを用いて、運転支援装置2の処理動作について説明をする。
図36に示すように、第2の実施の形態として示す運転支援装置2の処理動作は、図31を用いて説明した第1の実施の形態の運転支援装置1の処理動作において、ステップS6、ステップS7をステップS6a、ステップS7aに代え、ステップS8、ステップS9が省略されただけである。したがって、第2の実施の形態として示す運転支援装置2の処理動作の説明は、変更のあった箇所のみとする。
ステップS6aにおいて、制御部42は、ステアリングホイール10の把持部位13を把持している運転者の掌に流す電流を生成する。
ステップS7aにおいて、制御部42は、制御信号出力部44を介して生成した電流をステアリングホイール10の把持部位13に配列された複数の電極120に供給し、運転者の掌に機械的刺激の代替である電気的刺激を所定の時間だけ付与する。ステップS7aが終了すると、ステップS1へと戻りルーチンを繰り返す。
このように運転支援装置2は、車両状態情報検出装置31によって検出される車両状態情報、周囲環境情報取得装置32によって取得される周囲環境情報に基づき、パルス周波数が100Hz以下の微弱な電流をステアリングホイール10の把持部位13に設けられた複数の電極120から運転者の掌に流すことで電気的刺激を付与し、運転者の過剰なステアリング操作を無意識に抑制させることができる。
なお、上述した第1の実施の形態として示す運転支援装置1、第2の実施の形態として示す運転支援装置2では、車両を転舵させる操舵手段としてステアリングホイール10を用いているが、本発明は操舵手段としてステアリングホイール10を用いた場合に限定されるものではく、例えば、ジョイスティックなどでもよく、車両の転舵操作を実行できればどのような形状であってもよい。
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。