JP4513591B2 - 運転姿勢制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の座席に着座した運転者の車両旋回時の姿勢を制御する運転姿勢制御装置に関する。
自動車等の車両の旋回運転において、運転者が、旋回半径が同じであっても、左旋回と右旋回とで運転感覚(例えば運転のしやすさ)が異なることを訴える場合が多く見られる。その結果、例えば、左右旋回のうちいずれか一方については、修正舵が多くなったり、転舵速度が遅くなったりするなど、実際の運転操作や車両挙動に差が生じる場合もある。
ここで、図30に示すように、運転者1は、旋回時には、慣性力に対抗しかつステアリング操作を行うため、旋回中心方向に向けて上体を傾けることになる。
ところが、発明者らが、旋回時における運転者1の上体の実際の挙動について調査したところ、運転者1の上体の傾動の傾動中心23は、図31に示すように、当該上体の中心線(体幹)CLから左右いずれか一方(この例では運転者1にとって左側;正面視では右側)にオフセットしていることが判明した。なお、傾動の傾動中心23は、旋回時における左肩の移動軌跡の中間点から当該移動方向に直交する方向に伸ばした直線と、右肩の移動軌跡の中間点から当該移動方向に直交する方向に伸ばした直線との交点として規定した。
ところで、乗員を保護するための装置としては、特許文献1や2に開示されるものが知られている。
特開2004− 75015号公報 特開2003−335215号公報
そして、上記旋回時における運転者の上体の傾動中心のオフセットについて発明者らが研究を重ねたところ、運転席が車両中心からオフセットしていること以外に、運転者が所謂三点式シートベルト等、左右非対称なシートベルトに拘束されていることが、大きな要因の一つであることが確認された。
そこで、本発明は、運転者が左右非対称なシートベルトによって座席に拘束されている場合に、旋回時における運転者の上体の傾動中心のオフセット量を小さくして、左旋回と右旋回とで運転感覚の差を減少させることを目的とする。
本発明にかかる運転姿勢制御装置にあっては、左右非対称なシートベルトによって座席に拘束された運転者の車両旋回時の姿勢を調整する運転姿勢制御装置であって、運転者上体の中心線に対してシートベルトの肩部または胸部との接触領域の左右反対側で運転者に接触する接触機構を備え、上記接触機構の運転者との接触領域での接触面圧をシートベルトの上記接触領域での接触面圧より高くしたことを最も主要な特徴とする。
本発明によれば、接触機構を、運転者に、シートベルトの肩部または胸部との接触領域の左右反対側で、シートベルトよりも高い接触面圧で接触させることで、運転者上体の傾動中心の当該運転者上体の中心線からのオフセット量を減らすことができ、もって、左旋回と右旋回とで運転感覚の差を減らすことができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)図1は、運転者がシートに着座した状態を示す正面図、図2は、本実施形態にかかる運転姿勢制御装置の斜視図、図3は、運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図2のA−A断面図)、図4は、運転姿勢制御装置の接触機構ならびにシートベルトによる接触領域および接触面圧を示す正面図、図5は、(a)従来方式と(b)本実施形態とで、旋回時における運転者の上体の傾動中心の分布を示す図、図6は、従来方式と本実施形態とで、旋回時における運転者の上体の傾動中心と運転者上体の中心線との距離の平均値を示すグラフである。
運転者1は、車室2内で車体3の床面4上に設置されたシート(座席;運転者席)5に着座しており、その状態でシートベルト6によって当該シート5に拘束されている。
シートベルト6は、運転者1の左右いずれか一方(本実施形態では運転者1にとって右側;正面視では左側)の肩部上方から他方側の腰部外側にかけて架け渡されるショルダベルト6aと、運転者1の腰部前方で横架されるラップベルト6bと、を備えた、正面視で左右非対称のベルトである。ショルダベルト6aは、ピラー7の上方に設けられたアンカ8と、車体3またはシート5に取り付けられたバックル9に差し込まれるタング10との間で架け渡され、ラップベルト6bは、タング10とその他方側の固定部11との間で架け渡されている。また、ショルダベルト6aは、アンカ8で折り返してその下方に設置されたベルト巻取機構12内に引き込まれている。
ここで、本実施形態では、運転者1の肩部または胸部に接触して触覚上の刺激を与える接触機構13を、シートベルト6に装備している。すなわち、接触機構13を、ショルダベルト6aを挿通させる貫通孔16が設けられた基体部14と、当該基体部14に取り付けられたパッド部15とを備えた構成としている。さらに、このパッド部15を、アーム部17と当該アーム部17の基体部14の反対側の先端部に設けられた突起状の接触部18とを有する構成とし、アーム部17を、基体部14から、運転者1の上体の中心線CLに対してショルダベルト6aの肩部または胸部との接触領域の左右反対側となる領域まで延伸させ、当該領域で接触部18を運転者1に接触させるようにしている。なお、パッド部15は、例えばウレタンスポンジのような弾性材料により成形するのが好適である。
また、本実施形態では、接触位置設定機構19を設け、接触部18が運転者1に接触する位置を設定できるようにしてある。具体的には、接触位置設定機構19として、アンカ8と共にピラー7に締結されるワッシャ20と、ワッシャ20と基体部14との間に架設されるワイヤ21とを設け、ワイヤ21の長さに応じてショルダベルト6aに沿った基体部14すなわち接触機構13の位置を設定できるようにしてある。なお、ワイヤ21をスパイラル状にするなど、その長さを可変設定できるようにし、接触機構13が運転者1に接触する接触領域を、運転者1の体格に合わせて適宜可変設定できるようにするのが好適である。また、基体部14に対するパッド部15(アーム部17)の取付角度を可変設定できるようにしてもよい。
以上の本実施形態によれば、運転者1の上体の傾動中心の当該運転者1の上体の中心線CLからのオフセット量を減らすことができ、もって、左旋回と右旋回とで運転感覚の差を減らすことができる。その原理について、図4〜図6を参照しながら説明する。
左右非対称なシートベルト6によって運転者1がシート5に拘束されている場合、運転者1の上体の運動自由度は左右で異なるものとなる。例えば、本実施形態の場合、運転者1の上体の右側(正面視で左側)はショルダベルト6aによって拘束されて動きにくい状況であるのに対し、運転者の上体の左側(正面視で右側)は比較的自由に動くことができる状況である。このような左右非対称な拘束状態が、図31で示した上体の傾動中心23の中心線CLからのオフセットの一因になっている。
発明者らは、鋭意研究を重ねる中で、運転者1の上体のうちシートベルト6によって拘束されていない側の肩部または胸部に触覚上の刺激を与えることで、傾動中心23の中心線CLからのオフセットが小さくなり、左旋回と右旋回とで運転感覚の差を減らすことができることを発見した。
この現象は、上述したような触覚上の刺激を与えることにより、運転者1に、シートベルト6との接触感覚のマスキング効果を生じさせたものであると言うことができる。マスキング効果とは、例えば身体の一部が強く圧迫されていた状況において、他の一部を圧迫すると、先に圧迫されていた部分の圧迫感が感覚的に薄まる(あるいは消滅する)ことを言う。本実施形態の場合は、図4に示すように、ショルダベルト6aは、運転者1の右側の肩部上方から左側の腰部外側にかけて架け渡されており、主として肩部および胸部の右側(中心線CLより右側;正面視では左側)の領域(接触領域A1)がショルダベルト6aに接触している。したがって、接触機構13の接触部18を、肩部または胸部の左側(中心線CLより左側;正面視では右側)の領域(接触領域A2)に当接させることで、上記マスキング効果を生じさせることができる。なお、ショルダベルトが運転者の左側の肩部上方から右側の腰部外側に架け渡される場合にも、接触機構を用いて運転者の右側の肩部または腰部に触覚上の刺激を与えれば、同様の効果を得ることができる。
また、上記現象は、運転者1に上述したような触覚上の刺激を与えることにより、シートベルト6との接触感覚と上記触覚上の刺激とについて接触感覚のファントムセンセーション効果を生じさせたものであると言うこともできる。ファントムセンセーション効果とは、離間した2点で触覚上の刺激を受けた場合に、あたかもその2点の中間部位で触覚上の刺激を受けたのように感じることを言う。本実施形態の場合は、上述したように、主として肩部および胸部の右側(中心線CLより右側;正面視では左側)の領域(接触領域A1)がショルダベルト6aに接触しているから、接触機構13の接触部18を、その反対側、すなわち、肩部または胸部の左側(中心線CLより左側;正面視では右側)の領域(接触領域A2)に当接させることで、上記ファントムセンセーション効果を生じさせることができる。なお、ショルダベルトが運転者の左側の肩部上方から右側の腰部外側に架け渡される場合にも、接触機構を用いて運転者の右側の肩部または腰部に触覚上の刺激を与えれば、同様の効果を得ることができる。
そして、以上の効果を得るためには、本実施形態のように、接触機構13による接触面圧がピークとなるピーク位置(図4のA2の中心)とシートベルト6による接触領域A1との間に、接触機構13から実質的に運転者1に押圧力が作用しない非接触領域を設けたり、あるいは、接触機構13から運転者1への押圧力が低い(すなわち接触面圧が低い)低面圧接触領域ができるように構成するのが好適であることが理解できよう。
図5および図6は、本実施形態にかかる接触機構13を用いて、運転者1の上体のうちシートベルト6によって拘束されていない側の肩部または胸部に触覚上の刺激を与えたことによる効果(実験結果)を示すものである。これら図5および図6から、接触機構13を設けた場合には、これを設けない場合に比べて、傾動中心23の中心線CLからの離間距離dが小さく、当該傾動中心23が中心線CL側に近づいていることが理解できよう。そして、こうすることで、左旋回と右旋回とで運転者1の感覚のずれが小さくなり、運転操作や車両挙動のずれが小さくなったことも検証できた。
さらに、発明者らの研究により、これらの現象は、特に、接触機構13の接触領域A2(面積S2)における接触面圧P2を、シートベルト6の接触領域A1(面積S1)における接触面圧P1より高くしておき、さらに、中心線CLから接触領域A1,A2の中心(分布荷重の重心)までの距離をL1,L2としたとき、P1×L2=P2×L1となるようにしておくと、より一層効果的なものとなることが判明した。こうすることで、運転者1に、シートベルト6による押圧と接触機構13による押圧とが左右で釣り合っているかのような感覚を与えるからである。また、接触位置の対称性という観点からは、接触機構13の接触領域A2を、中心線CLに対して、シートベルト6の接触領域A1の少なくとも一部の略対称となる位置に設定することでも、上記効果はより一層効果的なものとなる。なお、上述したようにP1<P2とした場合、接触機構13(の接触部18)をより小型に構成することができるという利点もある。
また、本実施形態によれば、接触機構13の運転者1との接触位置を設定する接触位置設定機構19を設けたため、運転者1の体格に応じて、接触位置をより適切に設定することができるようになる。
また、本実施形態によれば、突起状の接触部18を設けたため、上記接触機構13によって運転者1の肩部または胸部に触覚上の刺激を与える構成を比較的簡素に構成することができる上、突起の大きさや、数、先端の曲率等により、比較的容易に接触面圧を調整することができるようになる。
また、本実施形態によれば、接触機構13をシートベルト6に保持させたため、当該接触機構13を他の部位(例えばシート5等)に設けた場合に比べてより簡素に構成することができる。
(第2実施形態)図7は、運転者がシートに着座した状態を示す正面図、図8は、本実施形態にかかる運転姿勢制御装置を装備したシートベルトを含む車室内の斜視図、図9は、運転姿勢制御装置の斜視図、図10は、運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図9のB−B断面図)、図11は、接触機構の裏面側を示す平面図、図12は、アンカがより高い位置に設定された場合に運転者がシートに着座した状態を示す正面図、図13は、アンカがより低い位置に設定された場合に運転者がシートに着座した状態を示す正面図である。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の構成要素を含む。よって、それら構成要素については同じ符号を付与するとともに、以下では、重複する説明を省略する。
本実施形態にかかる接触機構13Aは、上記第1実施形態にかかる接触機構13に替えて用いることができるものである。
ただし、本実施形態では、接触機構13Aに、ショルダベルト6aを挿通させる貫通孔16が設けられた基体部14Aa,14Abを複数(本実施形態では二つ)設け、接触機構13Aがショルダベルト6aに、より安定的に支持されるようにしている。
また、本実施形態では、パッド部15Aのアーム部17Aの先端部を正面視で略L字状に折り曲げ、当該折り曲げた部分に複数(本実施形態では二つ)の接触部18Aa,18Abを設けている。これら接触部18Aa,18Abは、シートベルト6(ショルダベルト6a)に装着された状態で、アンカ8の上下動に伴うタング10を中心としたショルダベルト6aの傾動角度方向(図13中の円弧状矢印の方向)に沿って、相互にずれた位置となるように配置されている。こうすることで、図12および図13に示すように、アンカ8の固定位置(上下位置)によらず、二つの接触部18Aa,18Abのうちいずれか一方を、上記マスキング効果あるいはファントムセンセーション効果を得るのにより好適な領域に接触させることができるようになる。さらに、この場合、ショルダベルト6aの延伸方向BLに対する複数の接触部18Aa,18Abの配列方向の角度を適宜に調整し、アンカ8位置の可変範囲内で、接触部18Aa,18Abによる接触領域が高さ方向にもなるべく重複するようにしておくのが好適である。
また、本実施形態では、アーム部17Aを運転者1の上体表面から離間する方向(すなわち車両前方)に凸となるように湾曲させておき、このアーム部17Aの弾性力を利用して、接触部18Aaでより高い接触面圧が得られるようにしている。
また、本実施形態では、アーム部17Aの基体部14Aa,14Abと接触部18Aa,18Abとの間に、それらの間の他の部分に比べて剛性(特にショルダベルト6aの延伸軸周りのねじり剛性)が低い脆弱部24を設けている。かかる構成により、車両挙動等によって運転者1の上体がねじれた場合には、アーム部17Aがこの脆弱部24を支点として折曲し、これにより、基体部14Aa,14Abおよびショルダベルト6aがねじれるのを抑制して、シートベルト6による衝突安全性が損なわれるのを抑制する一方、接触部18Aa,18Abの接触面圧が高くなりすぎるのを抑制することができる。なお、この場合、脆弱部24は、接触部18Aa,18Abで所期の接触面圧より高い接触面圧が作用する状況で折れ曲がるように設定される。また、図11に示すように、パッド部15Aの先端部側に長手方向に沿って伸びるリブ25を設けてもよい。この場合、リブ25の有無によって剛性の差を生じさせ、リブ25が設定されない部分を脆弱部として用いてもよい。
(第3実施形態)図14は、運転姿勢制御装置の斜視図、図15は、運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図14のC−C断面図)、図16は、接触機構の裏面側を示す平面図である。なお、本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を含む。よって、それら構成要素については同じ符号を付与するとともに、以下では、重複する説明を省略する。
本実施形態にかかる接触機構13Bは、上記第1実施形態にかかる接触機構13に替えて用いることができるものであり、上記第2実施形態にかかる接触機構13Aと同様の二つの基体部14Aa,14Abおよび平面形状が類似するパッド部15Bを備えている。
ただし、本実施形態では、パッド部15B(アーム部17B)の裏面に多数の突起状の接触部26を設けるとともに、その接触部26の設置密度を、アーム部17Bの長手方向に沿って変化させ、その先端側ほど接触部26の密度を高く(密に)、基体部14Aa側ほど接触部26の密度を低く(粗く)している。かかる構成により、パッド部15Bの剛性がショルダベルト6a(基体部14Aa,14Ab)から離間するにつれて高くなり、上記第2実施形態で脆弱部24を設けたのと同様の効果を得ることができる。なお、接触部26の密度やパッド部15Bの剛性は、連続的に変化させるのではなく、段階的に変化させてもよい。
また、本実施形態では、ショルダベルト6a(基体部14Aa,14Ab)から離間するほど、接触部26のアーム部17Bの裏面からの高さを高くしている。かかる構成によれば、アーム部17Bの先端側ほど接触面圧が高くなって、接触面圧がピークとなるピーク位置(先端部付近)とシートベルト6による接触領域(基体部14Aa,14Ab)との間に接触面圧が低い低面圧接触領域が設定されることになるため、上記マスキング効果あるいはファントムセンセーション効果を得やすくなるという利点がある。また、接触部26の高さを徐々に高くすることで、運転者1の表面の凹凸や姿勢変化に対する追従性が向上するという利点もある。なお、接触面圧は、連続的に変化させるのではなく、段階的に変化させてもよい。
(第4実施形態)図17は、運転姿勢制御装置の接触機構の断面図である。なお、本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を含む。よって、それら構成要素については同じ符号を付与するとともに、以下では、重複する説明を省略する。
本実施形態にかかる接触機構13Cは、上記実施形態にかかる接触機構13に替えて用いることができるものであり、上記第2実施形態にかかる接触機構13Aと同様の二つの基体部14Aa,14Abおよび平面形状が類似するパッド部15Cを備えている。
ただし、本実施形態では、パッド部15B(アーム部17B)をより薄肉に形成するとともに、その内部に、形状記憶合金からなるワイヤ37を埋め込んである。このワイヤ37は、運転者1の上体表面から離間する方向に凸となるように湾曲されるとともに、その曲率半径がより小さい状態を記憶形状とし、さらに、図示しない通電加熱機構を設け、ワイヤ37が通電加熱された場合には、曲率半径が小さくなるようにしてある。なお、通電加熱機構は、ワイヤ37の両端に設けた電極からパッド部15Bの内部やシートベルト6の内部を配線を挿通させて車体側に引き出すことで構築することができる。
したがって、ステアリングの操舵角等によって車両の旋回が検出された場合に、図示しない制御機構(例えばECU等)によって通電加熱機構を制御し、ワイヤ37を加熱して湾曲させて接触面圧を高めることができる。すなわち、本実施形態は、車両の挙動に応じて接触機構13Cの運転者1との接触面圧を変化させる接触面圧可変機構を具現化したものである。なお、車両の旋回のみならず、運転者1の姿勢(上体の位置)やその変化等を適宜センサを用いて検出し、その検出結果に基づいて接触面圧を可変制御してもよい。
以上の本実施形態によれば、接触面圧可変機構を設けたため、必要なときにのみ上記マスキング効果やファントムセンセーション効果を得ることができるため、触覚上の刺激が不要な場合の違和感を低減することができるし、車両の旋回の有無のみならず、その旋回半径や、旋回速度、運転者1の体格、接触部18Aaの位置等の種々のパラメータに応じて、より適切な大きさの接触面圧を作用させ、上記効果をより一層効果的なものとすることができる。
(第5実施形態)図18は、運転者がシートに着座した状態を示す正面図、図19は、本実施形態にかかる運転姿勢制御装置を装備したシートベルトを含む車室内の斜視図、図20は、運転姿勢制御装置の斜視図、図21は、運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図20のD−D断面図)、図22は、接触機構の別の一例を示す断面図、図23は、図22の接触機構に含まれるパッド部の一部の拡大図である。なお、本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を含む。よって、それら構成要素については同じ符号を付与するとともに、以下では、重複する説明を省略する。
本実施形態にかかる接触機構13D,13Eは、上記第1実施形態にかかる接触機構13に替えて用いることができるものであり、上記第1実施形態にかかる接触機構13と同様の基体部14を備え、基体部から伸びる棒状のパッド部15D,15Eを備えるものである。
ただし、本実施形態では、パッド部15D(アーム部17D)を例えば硬質ゴムのような剛性の高い弾性部材で構成するともに、ショルダベルト6a(基体部14)から離間するほど太くして、剛性を高めてある。また、アーム部17Dを運転者1の上体表面から離間する方向に凸となるように湾曲させることで、このアーム部17Dの弾性力を利用して、その先端部を拡径してなる接触部18Dでより高い接触面圧が得られるようにしている。かかる構成によれば、接触機構13Dをより小型に構成することができ、接触機構13Dによる接触面圧を確保して、上記マスキング効果あるいはファントムセンセーション効果をより確実に得ることができる上、上記第2実施形態で脆弱部24を設けたのと同様の効果を得ることができる。
さらに、図22に示す接触機構13Eのように、基体部14や接触部18D等、運転者1と接触する部分の表面に例えばウレタン等の比較的軟質な材料のクッション28a,28bを設けてもよいし、パッド部15Eを、複数のアーム部17Ea,17Ebと、それらの間に介在する弾性体27(例えばコイルスプリング)とを含む構成とし、当該弾性体27によって、接触部18Dが設けられる側(先端側)のアーム部17Ebを運転者1側に押し付け、接触面圧を高めるようにしてもよい。この場合には、弾性体27を設けたことで、接触機構13Eによる接触面圧を確保して、上記マスキング効果あるいはファントムセンセーション効果をより確実に得ることができる。
(第6実施形態)図24は、運転者がシートに着座した状態を示す正面図、図25は、運転者がシートに着座した状態を示す側面図、図26は、本実施形態にかかる運転姿勢制御装置を装備したシートベルトを含む車室内の斜視図、図27は、運転姿勢制御装置の斜視図、図28は、運転姿勢制御装置の接触機構の一部拡大図、図29は、接触機構の角度調整機構の側面図である。なお、本実施形態では、上記実施形態と同様の構成要素を含む。よって、それら構成要素については同じ符号を付与するとともに、以下では、重複する説明を省略する。
上記第1〜第5実施形態にかかる運転姿勢制御装置は、いずれもシートベルトに装備されるものであったが、本実施形態にかかる運転姿勢制御装置は、シート(ヘッドレスト)に装備したものである。
すなわち、運転姿勢制御装置は、ヘッドレスト5aに回動自在に支持される基体部29と、基体部29から適宜折り曲げられつつ前方に伸びるアーム部31と、アーム部31の先端部(下端部)に設けられた接触部32とを有する接触機構13Fを備えている。
アーム部31は、前方に凸となるように湾曲しており、運転者1がシート5に着座した状態では、接触部32のみが運転者1に接触するように構成されている。また、アーム部31は、複数のアーム部31a,31bに分割されており、その間に介在する弾性体33により、それより先端側の接触部32を運転者1に押し付けるようにしてある。なお、弾性体33は、弾性体本体としてのコイルスプリング33aの周囲を蛇腹33bで被覆した構成とし、美観の向上を図っている。
また、基体部29は、ヘッドレスト5aに設けた軸受部30によって回動自在に支持するとともに、当該基体部29には、軸受部30との摺接面に回動方向に沿って複数設けた凹部29aと、弾性体(例えばコイルスプリング)35によって付勢されて当該凹部29a対して出入自在なボール34と、を含むラッチ機構が設けられており、これにより、基体部29が所定の回動角度で固定されるようにしてある。かかる構成によれば、不要な場合には接触機構13Fを上方(後方)に跳ね上げておき、必要な場合にのみ接触機構13Fを前方に倒して使用することができる。
以上の本実施形態によれば、接触機構13Fをヘッドレスト5aに設けたため、上記実施形態による効果に加えて、ヘッドレスト5aの高さ位置を調整することで、運転者1の体格によらず、接触部32をほぼ適切な位置に配置することができるようになる。なお、凹部29aをより多く設け、アーム部31の設置角度をより細かく設定できるようにしておけば、体格に応じてより適切な接触面圧を確保することができるようになる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、接触機構によって運転者に接触による触覚上の刺激を与える構成であったが、これに替えて、接触機構から電気的な刺激を与えることで、擬似的に触覚上の刺激を与えるようにしても、ほぼ同様の作用効果が期待できる。
本発明の第1実施形態にかかる運転姿勢制御装置が装備された車両のシートに運転者が着座した状態を示す正面図。 本発明の第1実施形態にかかる運転姿勢制御装置の斜視図。 本発明の第1実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図2のA−A断面図)。 本発明の第1実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構ならびにシートベルトによる接触領域および接触面圧を示す正面図。 (a)従来方式と(b)本発明とで、旋回時における運転者の上体の傾動中心の分布を示す図。 従来方式と本発明とで、旋回時における運転者の上体の傾動中心と運転者上体の中心線との距離の平均値を示すグラフ。 本発明の第2実施形態にかかる運転姿勢制御装置が装備された車両のシートに運転者が着座した状態を示す正面図。 本発明の第2実施形態にかかる運転姿勢制御装置を装備したシートベルトを含む車室内の斜視図。 本発明の第2実施形態にかかる運転姿勢制御装置の斜視図。 本発明の第2実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図9のB−B断面図)。 本発明の第2実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の裏面側を示す平面図。 アンカがより高い位置に設定された場合に、本発明の第2実施形態にかかる運転姿勢制御装置が装備された車両のシートに運転者が着座した状態を示す正面図。 アンカがより低い位置に設定された場合に、本発明の第2実施形態にかかる運転姿勢制御装置が装備された車両のシートに運転者が着座した状態を示す正面図。 本発明の第3実施形態にかかる運転姿勢制御装置の斜視図。 本発明の第3実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図14のC−C断面図)。 本発明の第3実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の裏面側を示す平面図。 本発明の第4実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の断面図。 本発明の第5実施形態にかかる運転姿勢制御装置が装備された車両のシートに運転者が着座した状態を示す正面図。 本発明の第5実施形態にかかる運転姿勢制御装置を装備したシートベルトを含む車室内の斜視図。 本発明の第5実施形態にかかる運転姿勢制御装置の斜視図。 本発明の第5実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の断面図(図20のD−D断面図)。 本発明の第5実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の別の一例を示す断面図。 図22の接触機構に含まれるパッド部の一部の拡大図。 本発明の第6実施形態にかかる運転姿勢制御装置が装備された車両のシートに運転者が着座した状態を示す正面図。 本発明の第6実施形態にかかる運転姿勢制御装置が装備された車両のシートに運転者が着座した状態を示す側面図。 本発明の第6実施形態にかかる運転姿勢制御装置を装備したシートベルトを含む車室内の斜視図。 本発明の第6実施形態にかかる運転姿勢制御装置の斜視図。 本発明の第6実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の一部拡大図。 本発明の第6実施形態にかかる運転姿勢制御装置の接触機構の角度調整機構の側面図。 旋回時における運転者の姿勢を示す図。 旋回時における運転者の状態の傾動中心を示す図。
符号の説明
CL 中心線
1 運転者
3 車体
5 シート(座席)
6 シートベルト
13,13A〜13F 接触機構
14,14Aa,14Ab,29 基体部
18,18Aa,18Ab,26 接触部(突起)
18D,32 接触部
19 接触位置設定機構
24 脆弱部
37 ワイヤ(接触面圧可変機構)

Claims (14)

  1. 左右非対称なシートベルトによって座席に拘束された運転者の車両旋回時の姿勢を調整する運転姿勢制御装置であって、
    運転者上体の中心線に対してシートベルトの肩部または胸部との接触領域の左右反対側で運転者に接触する接触機構を備え、
    前記接触機構の運転者との接触領域での接触面圧をシートベルトの前記接触領域での接触面圧より高くしたことを特徴とする運転姿勢制御装置。
  2. 前記接触機構の運転者との接触位置を設定する接触位置設定機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の運転姿勢制御装置。
  3. 前記接触機構は、運転者との接触部において少なくとも一つの突起を有することを特徴とする請求項1または2に記載の運転姿勢制御装置。
  4. 前記接触機構の運転者との接触領域を、前記運転者上体の中心線に対して、シートベルトの運転者との接触領域の少なくとも一部の略対称となる位置に設定したことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の運転姿勢制御装置。
  5. 前記接触機構の運転者との接触領域での接触面圧を変化させる接触面圧可変機構を備えることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の運転姿勢制御装置。
  6. 前記接触機構はシートベルトに保持される構造物であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載の運転姿勢制御装置。
  7. 前記接触機構の運転者との接触領域での接触面圧がシートベルトから離間するにつれて高くなるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の運転姿勢制御装置。
  8. 前記接触機構の剛性がシートベルトから離間するにつれて高くなるようにしたことを特徴とする請求項6または7に記載の運転姿勢制御装置。
  9. 前記接触機構は、シートベルトに保持される基体部と接触部との間に、脆弱部を有することを特徴とする請求項8に記載の運転姿勢制御装置。
  10. 前記接触機構は車体または座席に支持される構造物であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載の運転姿勢制御装置。
  11. 左右非対称なシートベルトによって座席に拘束された運転者の車両旋回時の姿勢を制御する運転姿勢制御装置であって、
    運転者に、触覚上の刺激を与え、前記シートベルトとの接触感覚のマスキング効果を生じさせることにより、車両旋回時の運転者上体の傾動中心を、当該刺激を与えない場合に比べて運転者上体の中心線側に移動させるようにしたことを特徴とする運転姿勢制御装置。
  12. 左右非対称なシートベルトによって座席に拘束された運転者の車両旋回時の姿勢を制御する運転姿勢制御装置であって、
    運転者に、触覚上の刺激を与え、シートベルトとの接触と当該刺激とについて接触感覚のファントムセンセーション効果を生じさせることにより、車両旋回時の運転者上体の傾動中心を、当該刺激を与えない場合に比べて運転者上体の中心線側に移動させるようにしたことを特徴とする運転姿勢制御装置。
  13. 前記刺激による接触面圧がピークとなるピーク位置とシートベルトによる接触領域との間に、当該ピーク位置に比べて接触面圧が低い低面圧接触領域を設けたことを特徴とする請求項11または12に記載の運転姿勢制御装置。
  14. 前記刺激による接触面圧がピークとなるピーク位置とシートベルトによる接触領域との間に、非接触領域を設けたことを特徴とする請求項11または12に記載の運転姿勢制御装置。

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