JP4637414B2 - 盗難防止装置付き自転車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は盗難防止装置付き自転車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
既に本出願人は、特開平11−59521号公報に開示されている盗難防止機能を付与した自転車を提案している。
【0003】
この盗難防止装置付き自転車は、図9〜図11に示すように、サドル1を、乗ることができる略水平の供用姿勢と、その座面が前側ほど下方となるように大きく傾斜する駐車姿勢とにわたって、シートポスト2に対して回動自在に支持させ、施錠装置としてのシリンダー錠9でサドル1を駐車姿勢に施錠することでこの駐車姿勢をロックするように構成している。このように、前輪や後輪に錠前を単に施錠するのではなく、サドル1自体を乗れない姿勢にロックすることで、盗難を行おうとする者に対して、乗れないことを視覚的にも認識させて盗難を防止するようになっている。
【0004】
図12(a),(b)に示すように、サドル1はシートポスト2の上端部に、サドル支持基台51とサドル取付部材52とを介して取り付けられている。サドル取付部材52の前端部には、サドル支持基台51の前端部に組み込まれたシリンダー錠9が、このシリンダー錠9のケース部分を回転中心として回動自在な姿勢で取り付けられている。また、サドル支持基台51とサドル取付部材52との間に引張ばね8が掛け渡され、この引張ばね8は、サドル取付部材52を介して、サドル1が駐車姿勢となるように付勢している。
【0005】
サドル支持基台51の後端部には、枢支軸12で支持されて図12(b)の実線位置と仮想線位置とにわたって揺動自在のサドルロックレバー13が設けられている。このサドルロックレバー13はつる巻きばね14によって実線位置側に付勢されており、供用姿勢ではサドルロックレバー13が、図12(a)に示すように、サドル取付部材52の後端上部に設けた係止軸53に係合してサドル1を供用姿勢に維持している。この状態から、人が乗車していない状態で、サドルロックレバー13を引いて係止軸53から離脱させると、引張ばね8の付勢力でサドル1が駐車姿勢側に移動し、図12(b)に示すように、シリンダー錠9の施錠レバー9aが突出してサドル取付部材52の規制部52aに横から当接可能な状態となり、サドル1が駐車姿勢にロックされる。
【0006】
また、図10、図11、図13、図14に示すように、この自転車においては、立てた状態と跳ね上げた状態とに回動自在に支持されたスタンド本体21を、前記立てた状態にロックする機能を備えたスタンド装置20が設けられている。そして、サドル1が駐車姿勢側に回動されると、連結部材として機能するワイヤ16のインナーケーブル16aを介して、前記回動動作に連動して、スタンド装置20がロック状態に維持されるようになっている。インナーケーブル16aは、その上端が、サドル取付部材52に設けられたハンガー部54に係合されて連結され、その下端が、スタンド装置20に設けられた連結レバー24の前端に連結されている。ワイヤ16は、シートポスト2の内側と自転車フレームの立てパイプ31およびハンガーラグ32の内側を通して連結されている。
【0007】
スタンド装置20は、チェーンステー19に取り付けられたスタンドブラケット22と、スタンドブラケット22に支持軸23で回動自在に取り付けられた前記スタンド本体21と、スタンドブラケット22に支持軸27で取り付けられた前記連結レバー24と、上端が連結軸25で連結レバー24に連結されているとともに、スタンドブラケット22に形成された円弧状溝カム22aにガイドされながら上下動するスタンドロック部材26と、支持軸27とスタンド本体21との間に掛け渡された引張ばね28と、スタンドブラケット22とスタンドロック部材26との間に掛け渡された引張ばね29とを備えている。
【0008】
そして、図11、図13(b)に示すように、サドル1を駐車姿勢にして、インナーケーブル16aを引き上げて連結レバー24の前端を上に引き上げた状態では、連結レバー24がスタンドロック部材26を押し下げて、押し下げられたスタンドロック部材26がスタンド本体21の基端部背面に当接し、スタンド本体21は跳ね上げる方向への回動ができない状態にロックされる。
【0009】
このような構成において、駐車しようとする際には、図9(a)、(b)に示すように、スタンド本体21を立てた状態で、利用者がサドルロックレバー13を引き上げて係止軸53から離脱させる。これにより、引張ばね8の付勢力でサドル1が駐車姿勢側に移動し、シリンダー錠9の施錠レバー9aが突出して、サドル1が駐車姿勢にロックされる。また、これと並行して、サドル取付部材52の回動によって前述のようにインナーケーブル16aが引き上げられるため、スタンド装置20のスタンド本体21が、スタンドロック部材26によるロック状態に自動的に切り換えられる。
【0010】
このように、この盗難防止装置付き自転車では、スタンド本体21を立てて、サドルロックレバー13を引き上げるだけの操作で、スタンド本体21のロックと、サドル1のロックとの2つの動作を能率よく行えるようになっている。
【0011】
なお、駐車姿勢から供用姿勢にする際には、図9の(c)に示すようにシリンダー錠9にキー9bを挿入して開錠し、サドル1を図9の(d)に示すように戻す。これによってスタンドロック部材26によるスタンド本体21のロックが解除され、この状態でスタンド本体21を図9の(e)に示すように上げることで供用姿勢とすることができる。また、図12における55は、サドル1が駐車姿勢となって、インナーケーブル16aがサドル支持基台51から上方まで引き上げられた際に、この引上部分が外部に露出して切断されることを防止するための防護カバーであり、サドル支持基台51に固着されている。
【0012】
また、図12に示すようなサドル回動支持機構に代えて、図15、図16に示すようなサドル回動支持機構を用いてもよい。
すなわち、シートポスト2の上端部に固着されるシートポストヘッド2aを上方ならびに前方に延設して、サドル1の支持基台となるサドル支持基台部61として構成するとともに、このサドル支持基台部61の前側寄り箇所に回転軸7を配設し、この回転軸7を中心として、サドル1が取り付けられるサドル取付部材62を回転自在に配設し、サドル取付部材62の前端部にシリンダー錠9を配設し、サドル1を駐車姿勢とした際にシリンダー錠9の施錠レバー9aが嵌合する凹部61aをサドル支持基台部61に形成する。また、サドル支持基台部61から前側上方に延びる係止部61bを形成し、この係止部61bにより、サドル取付部材62を介してサドル1を駐車姿勢側に付勢する引張ばね8の一端を係止する。また、サドル支持基台部61の中央下方に窪む窪み部61cから突出するインナーケーブル16aの上端部(上端部に固着されたケーブルエンド16c)を受ける逆L字形状のワイヤ受け金具63をサドル取付部材62に固着し、さらに、サドル支持基台部61に、インナーケーブル16aがサドル支持基台部61から上方に引き上げられた際に、この引き上げ部分が外部に露出して切断されることを防止するための防護カバー部61dを設け、サドル支持基台部61に揺動自在に取り付けたサドルロックレバー13が、サドル取付部材62の係止爪部62aに係合可能な構成とする。
【0013】
この構成においても、駐車しようとする際に、スタンド本体21を立てた状態で、図15において仮想線で示すように、利用者がサドルロックレバー13を引き上げて、係止爪部62aから離脱させることにより、図16に示すように、引張ばね8の付勢力でサドル1が駐車姿勢側に移動し、シリンダー錠9の施錠レバー9aが突出してサドル支持基台部61の凹部61aに嵌入し、サドル1が駐車姿勢にロックされる。また、これと並行して、サドル取付部材62の回動によってインナーケーブル16aが引き上げられるため、スタンド装置20のスタンド本体21が、スタンドロック部材26によるロック状態に自動的に切り換えられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図12や図15、図16に示すようなサドル回動支持機構では、サドル1をその前側が斜め下方に傾斜するように駐車姿勢とさせた際に、シリンダー錠9がサドル1の直下位置となって、シリンダー錠9にキー9bを挿入する際に、挿入口が見え難くなることがある。特に、多くの自転車が停められている駐輪場から自転車を引き出そうとする場合などには、自転車同士が近接して置かれているため、引き出そうとする自分の自転車に対して、斜め後方からしか近づけない場合があるが、このような状況下でキー9bを挿入しようとする際に、図17に示すように、シリンダー錠9のキー9bの挿入口が、傾斜したサドル1に隠れて見え難くなり、手探りでキー9bの挿入を行ったり、キー9bの挿入口が見える低い位置までかがまざるを得ないなど、手間がかかって操作性が低下していた。
【0015】
また、図15、図16に示すようなサドル回動支持機構では、シリンダー錠9を、サドル取付部材62やサドル1の回転中心である回転軸7よりも前方に配置しているため、前後方向に比較的大きなスペースが必要となるという課題があった。
【0016】
また、これらのサドル回動支持機構では、駐車姿勢時に、サドル取付部材62の回動によってインナーケーブル16aがサドル取付部材52、62から引き上げられるため、この引上部分が外部に露出しないように、防護カバーの部分(防護カバー55や防護カバー部61d)を別個に設ける必要があり、その分だけ、部品点数の増加や構造の複雑化を招いて製造コストが増加していた。
【0017】
本発明は上記課題を解決するもので、シリンダー錠などの施錠装置に対する開錠操作を斜め後方からでも良好に行うことができ、また、サドル下方の支持部分をコンパクト化することができて、前後方向に比較的小さなスペースでも配置でき、さらには、部品点数の増加や製造コストの増加を最小限に抑えることができる盗難防止装置付き自転車を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の盗難防止装置付き自転車は、シートポストに対して、供用姿勢と、サドル座面が前側ほど下方となるように傾斜する駐車姿勢とに、回動自在に支持されたサドルと、サドルを駐車姿勢に保持する施錠装置とを備え、前記施錠装置を、供用姿勢においてサドルの回動中心位置とシートポストの軸心位置との何れの位置よりも後方に位置するように組み込み、前記施錠装置を、サドル取付部における、供用姿勢において側面視してサドル取付部の略下方となる位置に配設し、サドル以外の箇所で自転車の走行を阻止する走行阻止手段と、サドルの回動を走行阻止手段に伝達する連結手段とを備え、サドルの駐車姿勢への回動動作が連結手段を介して伝達され、走行阻止手段による走行阻止が行われるように構成し、施錠装置を保持するホルダ部材により、駐車姿勢時における前記連結手段のシートポストからの引上部分を後方から覆うように構成したことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、シリンダー錠などの施錠装置に対する開錠操作を斜め後方からでも良好に行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1記載の盗難防止装置付き自転車は、シートポストに対して、供用姿勢と、サドル座面が前側ほど下方となるように傾斜する駐車姿勢とに、回動自在に支持されたサドルと、サドルを駐車姿勢に保持する施錠装置とを備え、前記施錠装置を、供用姿勢においてサドルの回動中心位置とシートポストの軸心位置との何れの位置よりも後方に位置するように組み込み、前記施錠装置を、サドル取付部における、供用姿勢において側面視してサドル取付部の略下方となる位置に配設し、サドル以外の箇所で自転車の走行を阻止する走行阻止手段と、サドルの回動を走行阻止手段に伝達する連結手段とを備え、サドルの駐車姿勢への回動動作が連結手段を介して伝達され、走行阻止手段による走行阻止が行われるように構成し、施錠装置を保持するホルダ部材により、駐車姿勢時における前記連結手段のシートポストからの引上部分を後方から覆うように構成したことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、施錠装置が、サドルの回動中心位置とシートポストの軸心位置との何れの位置よりも後方に組み込まれているので、サドルを前側ほど下方となるように傾斜する駐車姿勢とした場合でも、施錠装置に対する開錠操作を斜め後方から行う際に、施錠装置がサドルやシートポストで見え難い位置に隠れてしまうことがなく、開錠操作を容易に行うことができる。
【0023】
また、この構成によれば、施錠装置を、サドルの回動中心位置やシートポストの軸心位置よりも後方で、サドル取付部の略下方位置に配設したので、サドル下方の支持部分をコンパクト化することができて、前後方向に比較的小さなスペースでも配置できる。
【0025】
また、この構成によれば、サドルの駐車姿勢への回動に走行阻止手段を連動させることができ、手間をかけることなく防盗性を向上させることができる。また、この構成によれば、施錠装置を組み付ける部材により、駐車姿勢時における連結手段のシートポストからの引上部分が後方から覆われるので、連結手段の引上部分を覆うための部品を別途に設けなくても済む。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の盗難防止装置付き自転車において、走行阻止手段として、立てた状態と跳ね上げた状態とに回動自在に支持されたスタンド本体と、スタンド本体を立てた状態にロックするロック位置とスタンド本体を回動自在にする非ロック位置とに移動自在のスタンドロック部材とが設けられ、連結手段は、サドルが駐車姿勢に回動された際に、この回動動作をスタンドロック部材側に伝達して、スタンド本体を立てた状態にロックすることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、サドルの駐車姿勢への回動に連動して、スタンド本体が立った状態にロックされ、手間をかけることなく防盗性を向上させることができる。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の盗難防止装置付き自転車において、連結手段が、シートポストおよび立パイプ内を通されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、連結手段が、シートポストおよび立パイプ内を通されているので、連結手段が外部から切断されることを防止できる。
【0030】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の盗難防止装置付き自転車において、連結手段は、連結ワイヤであることを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。本実施の形態にかかる盗難防止装置付き自転車が、従来の盗難防止装置付き自転車と異なる点はサドル下方箇所のサドル回動支持機構であるため、このサドル回動支持機構を重点的に説明する。なお、従来の盗難防止装置付き自転車と同様な機能の構成要素には同符号を付す。
【0031】
図1〜図4における、1はサドル、2はシートポスト、2aはシートポストヘッドで、シートポストヘッド2aの下部がシートポスト2の上端部内に挿し込まれている。シートポストヘッド2aの下部はシートポスト2に対して接着剤で接着されているとともに、シートポスト2を貫通してシートポストヘッド2a内にスプリングピン4が側方から挿入され、シートポスト2からシートポストヘッド2aが容易には取り外せないようになっている。
【0032】
シートポストヘッド2aの上部には、サドル1を取り付けたサドル取付部材5を回転可能に支持するサドル支持基台部6が、シートポスト2内に挿入された基部から上方ならびに前方に延設された形状で一体形成されている。サドル支持基台部6の前側寄り箇所に回転軸7が配設され、この回転軸7を中心としてサドル取付部材5が回転自在に取り付けられている。そして、サドル取付部材5に固定されたサドル1が、図1に示すように、略水平となった供用姿勢と、図2に示すように、サドル座面が前側ほど下方となるように大きく傾斜する駐車姿勢とにわたって回動できるよう構成されている。
【0033】
図3、図4に示すように、シートポスト2には、その中央部を上下に貫通する上部貫通孔2cと下部貫通孔2dとが形成されており、これらの上部貫通孔2cおよび下部貫通孔2dを通して、スタンド装置20を連動させる連結手段としてのワイヤ16が挿通されている。ここで、下部貫通孔2dには、インナーケーブル16aだけでなく、アウターケーブル16bも通されているが、この下部貫通孔2dの上端部でアウターケーブル16bは上方への移動が規制され、上部貫通孔2cにはインナーケーブル16aのみが通されている。
【0034】
サドル取付部材5は、サドル支持基台部6を両側方から挟むように配置される一対の側面部5aと、これらの側面部5aの上辺をつなぐ上面部5bとを有している。そして、上面部5b後端より上方に延びる引掛用折曲片5cと、上面部5b前部の長孔5dを貫通して上方に突出するサドル支持基台部6の引掛用突起6aとにわたって、サドル1を駐車姿勢側に付勢する引張ばね8が掛け渡されている。また、サドル取付部材5の上面部5bにおける略中央箇所には、ワイヤ16のインナーケーブル16aの上端が係止されている。なお、16cは、インナーケーブル16aの上端に固着されている円柱形状のケーブルエンドであり、サドル取付部材5の上面部5bにおける前記ケーブルエンド16cを受ける箇所には、良好に受けるように円弧状凹部5eが形成されているとともに、この円弧状凹部5eには、インナーケーブル16aの上端を良好に通過させる挿通溝が形成されている。
【0035】
図6に示すように、サドル取付部材5の両側面部5aにおける後部上側箇所には、サドル1の固定用取付部1aが両側からサドル取付部材5を挟む状態で取り付けられているとともに、図3、図4に示すように、サドル取付部材5の両側面部5a間後部には、施錠装置としてのシリンダー錠9と、このシリンダー錠9を保持する施錠装置組付部材としてのシリンダーホルダ10とが、2本の固定ピン11を介して固定されている。シリンダー錠9は、サドル取付部材5の両側面部5aに設けられた取付用角孔や滑り止め部などを有するサドル取付部5gの略下方位置に配置されており、シリンダーホルダ10は、シリンダー錠9を保持するだけでなく、図6にも示すように、シリンダー錠9の保持部分から上方へ略円弧形状に延設されて、サドル取付部材5のサドル取付部5g間部分を埋めて所定寸法に保持するスペーサとしても機能する。
【0036】
サドル支持基台部6の後部左寄り箇所には、枢支軸12で支持されて図4(b)の実線位置と仮想線位置とにわたって揺動自在のサドルロックレバー13が設けられている。このサドルロックレバー13はつる巻ばね14によって実線位置に付勢されており、供用姿勢ではサドルロックレバー13が、図3(a)に示すようにシリンダーホルダ10の下部前面に設けた係止凹部10aに係合してサドル1を供用姿勢に維持している。
【0037】
図5にも示すように、シリンダーホルダ10には、サドル支持基台部6の背面に形成された円弧形状の摺動凸面6bに沿って摺動する同じく円弧形状の摺動凹面10bが形成されている。また、シリンダー錠9に設けられている施錠レバー9aは、サドル1が駐車姿勢となった際には、図4(b)に示すように、この摺動凹面10bから、サドル支持基台部6の上面背面寄りに設けられた上端規制面6c上に向けて突出し、サドル取付部材5が下方に回動することを阻止する。そして、このように、サドル1が駐車姿勢である際には、図6に示すように、サドル支持基台部6から引き出されて上方に露出するインナーケーブル16aの上端部が、両側方からサドル取付部材5の両側面部5aにより覆われ、後方からシリンダーホルダ10によって覆われる。
【0038】
なお、図3、図4における6fは、駐車姿勢時に、サドル取付部材5の前端部に設けられた規制円弧面5fが当接して、サドル取付部材5の最大回動角度を規制するための規制当接面、6eは供用時にシリンダーホルダ10が着座する着座面である。着座面6eには、シリンダーホルダ10を良好に着座させるための、例えば、ゴム板などからなる弾性板30が貼り付けられている。
【0039】
また、供用時におけるサドル取付部材5の回転軸7からインナーケーブル16aの上端部(ケーブルエンド16cの係止部)までの距離、すなわち、インナーケーブル16aの係止箇所での回転半径R1が、図12や、図15、図16に実線で示すようなものに比べて短くなるように構成する(図15、図16に仮想線で示すような回転半径rのものと略同等となるようにする)ことで、回転軸7およびサドル取付部材5を、シートポスト2の軸心位置に接近させ、サドル回動支持機構の前方への突出量を縮小して前後方向に対してコンパクト化している。
【0040】
また、サドル1を駐車姿勢とした際に、サドル支持基台部6から引き上げられたインナーケーブル16aの上端部を積極的に屈曲させるように斜め上方に膨出させてなる膨出部6dを設けて、サドル1を供用姿勢から駐車姿勢に回動させた際でも、サドル支持基台部6の膨出部6dにてインナーケーブル16aが屈曲し、この屈曲距離だけインナーケーブル16aの移動ストロークが大きくなって、スタンド装置20におけるスタンドロック部材26のロックを確実に行わせるようになっている。
【0041】
さらに、この膨出部6dを湾曲形状とすることで、サドル1が駐車姿勢である際に、膨出部6d全体でインナーケーブル16aの上端部をほぼ均等な力で受けて、インナーケーブル16aの一部の屈曲部に力が作用して損傷したり切断したりすることを防止している。
【0042】
上記構成において、駐車しようとする際に、図2に示すように、スタンド本体21を立てた状態で、利用者がサドルロックレバー13を引き上げることにより、引張ばね8の付勢力でサドル1が駐車姿勢側に回動し、シリンダー錠9の施錠レバー9aがサドル支持基台部6の上端規制面6c上に突出し、サドル1が駐車姿勢にロックされる。また、これと並行して、サドル取付部材5の回動によってインナーケーブル16aが引き上げられるため、スタンド装置20のスタンド本体21が、スタンドロック部材26によるロック状態に自動的に切り換えられる。
【0043】
また、駐車姿勢から供用姿勢にする際には、シリンダー錠9にキー(図示せず)を挿入して開錠し、サドル1を供用姿勢に戻すことによって、サドルロックレバー13がシリンダーホルダ10の係止凹部10aに係合し、サドル1が供用姿勢に保持されるとともに、スタンドロック部材26によるスタンド本体21のロックが解除される。この状態でスタンド本体21を上げることで供用姿勢とすることができる。
【0044】
ここで、上述したようにシリンダー錠9にキーを挿入するに際して、多くの自転車が停められている駐輪場から自転車を引き出そうとする場合などには、自転車同士が近接して置かれているため、引き出そうとする自分の自転車に対して、斜め後方からしか近づけない場合がある。しかし、この盗難装置付き自転車においては、施錠装置としてのシリンダー錠9が、サドル1の回動中心位置である回転軸7や、シートポスト2の軸心位置との何れの位置よりも後方に組み込まれているので、サドル1が前側ほど下方となるように傾斜した駐車姿勢の自転車に対して、シリンダー錠9に対する開錠操作を斜め後方から行う際に、図7に示すように、人の目の高さから通常の姿勢で見た場合でも、サドル1やシートポスト2によってシリンダー錠9のキーの挿入口が隠れたりすることがなく、斜め後方の高い位置からでもシリンダー錠9のキーの挿入口が良好に見え、この結果、開錠操作を容易かつ良好に行うことができる。
【0045】
また、サドル1を、その座面が前側ほど下方となるように大きく傾斜する駐車姿勢とした際には、インナーケーブル16aにおけるサドル支持基台部6から引き上げられて上方に突出した部分は、図4(b)、図6に示すように、サドル取付部材5により両側方ならびに上方から覆われるとともに、サドル取付部材5に伴って引き上げられたシリンダーホルダ10によって後方からも覆われるので、インナーケーブル16aの引上部分が外部に露出して、盗難を行おうとする者などによって切断されることを防止できて、防盗性が良好に保たれる。そして、シリンダー錠9を保持するシリンダーホルダ10が保護カバーとしても兼用されているため、従来のように別途に保護カバーを設ける場合と比べて、部品点数も削減できて製造コストの上昇が抑えられる。しかも、この実施の形態においては、シリンダーホルダ10が、サドル取付部材5のサドル取付部5g間の隙間を埋めるようなスペーサとしても機能しているため、これによっても、別途にスペーサを設けなくても済んで、さらに部品点数の削減を図れる。また、シリンダーホルダ10はシリンダー錠9の保持機能と、サドル取付部5g間の隙間を埋めるスペーサ機能とを有するために、剛性の高い金属などが採用されるが、これによって、インナーケーブル16aの引上部分に対する保護カバーとしても十分な剛性を有して良好な信頼性を得ることができる。
【0046】
また、上記構成によれば、シリンダー錠9を回転軸7よりも後方に組み込むことで、図12、図14、図15に示すような従来のサドル回動支持部構造のようにシリンダー錠9の配設箇所が前側に大きく突出するということが防止できるとともに、シリンダー錠9をサドル取付部5gの略下方位置に配置しているため、シリンダー錠9をサドル取付部5gよりも後方に配置した場合に比べて後側に大きく突出することもなくなり、この結果、サドル1下方の回動支持部分をコンパクト化することができて、前後方向に比較的小さなスペースでも配置できる。
【0047】
さらに、シリンダー錠9を回転軸7よりも後方に組み込むことで、サドル1下方の回動支持部分をコンパクト化することができながら、回転軸7の中心からシリンダー錠9による規制箇所(シリンダー錠9の施錠レバー9aがサドル支持基台部6の上端係止面6cに当接する部分)までの距離を、図12に示す構造のものや、図15、図16に示す構造のものに比べて大きくすることができるので、盗難を図ろうとする者によって強引にサドル1を供用姿勢に戻そうとする力がシリンダー錠9の施錠レバー9aに作用した場合でも、この施錠レバー9aに作用する負荷が比較的小さいものとなって、シリンダー錠9の破損を確実に防止でき、この結果、防盗に対する信頼性が向上する。
【0048】
また、上記実施の形態においては、サドル1の回動動作に連動してスタンド装置20のスタンド本体21がロックされる場合を述べたが、これに限るものではなく、例えば、図8に示すように、通常のブレーキ操作だけでなく、上記したサドル1の駐車姿勢への回動動作によるインナーケーブル16aの移動により、阻止手段としての後輪ブレーキ用アーム18を介して後輪17にブレーキが作用するようにしてもよく、さらには、前輪にブレーキが作用するよう構成したり、ハンドルを所定位置にロックして操舵できないようにしたりしてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態においては、サドル1の回動動作に連動して、スタンド装置20などの走行阻止手段が連動するように構成して、防盗性を高めながら、駐車時の手間を最小限に抑えることができる場合を述べたが、これに限るものではなく、スタンド装置20などの、サドル1の箇所とは別個の走行阻止手段を有しないものにも適用可能である。
【0050】
なお、上記実施の形態においては、一般の自転車に適用した場合について述べたが、電動自転車にも適用可能である。
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サドル座面が前側ほど下方となるように傾斜する駐車姿勢に回動自在に支持されたサドルと、サドルを駐車姿勢に保持する施錠装置とを備えた盗難防止装置付き自転車において、施錠装置を、供用姿勢においてサドルの回動中心位置とシートポストの軸心位置との何れの位置よりも後方に位置するように組み込むことで、駐輪場などで施錠装置に対する開錠操作を斜め後方から行う際でも、施錠装置のキー挿入口を良好に見ながら容易に開錠することができて、操作性が向上する。
【0052】
また、施錠装置を、サドル取付部における、供用姿勢において側面視してサドル取付部の略下方となる位置に配設することで、サドル下方の支持部分をコンパクト化することができて、前後方向に比較的小さなスペースでも配置できる。
【0053】
さらに、施錠装置を組み付ける部材により、駐車姿勢時における連結手段のシートポストからの引上部分を後方から覆うように構成することで、連結手段の引上部分を覆うための保護カバーを別途に設けなくても済み、部品点数を削減できて製造コストの上昇が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る盗難防止装置付き自転車の部分切欠側面図で、供用状態を示す。
【図2】同盗難防止装置付き自転車の部分切欠側面図で、駐車状態を示す。
【図3】(a)および(b)は同盗難防止装置付き自転車のサドル回動支持部の部分切欠側面図および側面断面図で、供用状態を示す。
【図4】(a)および(b)は同盗難防止装置付き自転車のサドル回動支持部の部分切欠側面図および側面断面図で、駐車状態を示す。
【図5】同盗難防止装置付き自転車におけるサドル回動支持部のシリンダーホルダの斜視図である。
【図6】同盗難防止装置付き自転車のサドル回動支持部の斜視図である。
【図7】同盗難防止装置付き自転車のサドル回動支持部の斜視図で、斜め後方より、人の目の高さから見た状態を示す。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る盗難防止装置付き自転車の部分切欠側面図である。
【図9】(a)〜(e)はそれぞれ盗難防止装置付き自転車の使用状態を説明するための概略側面図である。
【図10】従来の盗難防止装置付き自転車の部分切欠側面図で、供用状態を示す。
【図11】従来の盗難防止装置付き自転車の部分切欠側面図で、駐車状態を示す。
【図12】(a)および(b)は同従来の盗難防止装置付き自転車における供用状態および駐車状態のサドル回動支持部の側面断面図である。
【図13】(a)および(b)は盗難防止装置付き自転車におけるスタンド装置の供用状態および駐車状態の部分切欠要部側面図である。
【図14】盗難防止装置付き自転車におけるスタンド装置の要部斜視図である。
【図15】従来の盗難防止装置付き自転車のサドル回動支持部の斜視図で、供用状態を示す。
【図16】同従来の盗難防止装置付き自転車のサドル回動支持部の斜視図で、駐車状態を示す。
【図17】同盗難防止装置付き自転車のサドル回動支持部の斜視図で、斜め後方より、人の目の高さから見た状態を示す。
【符号の説明】
1 サドル
2 シートポスト
2a シートポストヘッド
5 サドル取付部材
6 サドル支持基台部
7 回転軸
9 シリンダー錠(施錠装置)
10 シリンダーホルダ(施錠装置組付部材)
13 サドルロックレバー
16 ワイヤ
16a インナーケーブル(連結手段)
20 スタンド装置
21 スタンド本体(走行阻止手段)
26 スタンドロック部材(走行阻止手段)
31 立てパイプ
Claims (4)
- シートポストに対して、供用姿勢と、サドル座面が前側ほど下方となるように傾斜する駐車姿勢とに、回動自在に支持されたサドルと、
サドルを駐車姿勢に保持する施錠装置とを備え、
前記施錠装置を、供用姿勢においてサドルの回動中心位置とシートポストの軸心位置との何れの位置よりも後方に位置するように組み込み、
前記施錠装置を、サドル取付部における、供用姿勢において側面視してサドル取付部の略下方となる位置に配設し、
サドル以外の箇所で自転車の走行を阻止する走行阻止手段と、サドルの回動を走行阻止手段に伝達する連結手段とを備え、サドルの駐車姿勢への回動動作が連結手段を介して伝達され、走行阻止手段による走行阻止が行われるように構成し、
施錠装置を保持するホルダ部材により、駐車姿勢時における前記連結手段のシートポストからの引上部分を後方から覆うように構成した
ことを特徴とする盗難防止装置付き自転車。 - 走行阻止手段として、立てた状態と跳ね上げた状態とに回動自在に支持されたスタンド本体と、スタンド本体を立てた状態にロックするロック位置とスタンド本体を回動自在にする非ロック位置とに移動自在のスタンドロック部材とが設けられ、
連結手段は、サドルが駐車姿勢に回動された際に、この回動動作をスタンドロック部材側に伝達して、スタンド本体を立てた状態にロックする
ことを特徴とする請求項1記載の盗難防止装置付き自転車。 - 連結手段が、シートポストおよび立パイプ内を通されていることを特徴とする請求項1または2に記載の盗難防止装置付き自転車。
- 連結手段は、連結ワイヤであることを特徴とする請求項1記載の盗難防止装置付き自転車。
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