JP4636877B2 - 免疫刺激複合体の調製及びその使用 - Google Patents

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Description

本発明は少なくとも二種の免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスの混合物を含む組成物であって、各複合体がキラヤ・サポナリア・モリナからの一種のサポニン画分を含むもの、及びワクチンを含む免疫感作のために使用される処方における免疫調節剤又はアジュバントとしてのこの組成物の使用に関する。特に、本発明は免疫刺激複合体及び免疫刺激複合体マトリックスアジュバント化ワクチンにおけるキラヤサポニンの精製された、半精製された又は規定された画分の使用に関する。本発明によるサポニン調製物の使用は増大した耐性及び増大した免疫原性を有する製品を生ずる。調製物は免疫原性を調整して炎症、過敏感性及びアレルギー反応の増大した制御を与えるために用いられることができる。
キラヤサポニンの免疫刺激特性は古くから知られており(Ramon 1926)、キラヤサポニンは1950年代から商業的なワクチンにおいて遊離形態で、時にはAl(OH)と組合せて使用されてきた(Dalsgaard 1978,Maら1994,Espinet 1951)。従来の遊離形態と比べて実質的により有効なキラヤサポニンの使用はMoreinらによって1984年のISCOM(免疫刺激複合体)技術に(EP 0109942B1,EP 0242380B1及びEP 0180564B1)及び数年後にISCOMマトリックス技術に(Loevgren及びMorein 1988,EP 0436620B1)記載された。免疫刺激複合体技術を用いて、ワクチン抗原はキラヤサポニン、コレステロール及びリン脂質からなる40nmの複合体に組入れられる。ISCOMマトリックス技術はキラヤサポニン:コレステロール:リン脂質複合体を抗原と混合された(関連されていない)状態で用いる。両方の技術はキラヤサポニンの溶血活性(局所的な副作用をもたらし、キラヤサポニン調製物の総合的な毒性に加えられる特性)を減少させるか又は消去する(Bomfodら、1992)。
キラヤサポニン調製物は界面活性グリコシドの不均一な混合物であり、予期されかつ一貫性のあるアジュバント活性を持つ一群を見出す/規定することにおける深刻な問題は、キラヤ・サポナリア・モリナと表される「均一な」画分の単離及び特性決定に導いた(Dalsgaard、1974)。この画分は広範囲の関連構造を含むことが後になって示され、逆相HPLCによって画分/ピークへと更に精製された(Kensil 1988,1991,Kersten 1990 EP 0362279B2,EP 0555276B1)。この精製の動機は容易に特性決定され規定されるサポニンの均一な画分を生成させることのみならず、毒性の低い製品を規定することでもあった。急性毒性又は副作用は、ワクチン調製物におけるキラヤサポニンの獣医学的及び特にヒトに対する使用の両方についての主要な関心事であった。これらの目的は部分的にのみ達成された。即ち、精製された画分(例えばQA−21(EP 0362279B2))及び画分AとCの組合せ(WO 96/11711、Iscotec特許)は実際、キラヤ・サポナリア・モリナと比べて化学的に規定されたが、それらはなおいくらかの毒性及び副作用を生じた。画分Aが実質的に毒性を有さないという事実にもかかわらず、70%の画分Aと30%の画分Cからなる混合物はキラヤ・サポナリア・モリナの画分Cの100%と同程度の毒性を有していたか又はキラヤ・サポナリア・モリナの画分Cの100%よりほんの少し毒性が低いだけであった。
本発明を導くための研究において、異なるキラヤサポニン画分は毒性が異なるのみならず、免疫調節特性も異なることが示された(Johanssonら、EP 0362279B2)。これらの画分を組合せることによって異なる免疫調節能力が得られた。例えばTh1誘導又はTh2誘導能力が得られた。しかし、許容できる処方中で用いられるべき各画分の量を制限する副作用を減少させることが望ましい。
本発明は別個の存在(粒子)としての免疫刺激複合体及び免疫刺激複合体マトリックス中でのキラヤサポニンの少なくとも二種の精製されたピーク又は規定された画分の使用に関する。即ち、これらの画分は全く同一の免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックス粒子では組合されず、異なる負荷を持つ粒子が一緒に混合されて免疫感作のための処方を構成する。それぞれがキラヤ・サポナリア・モリナの異なる画分を含む免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスの混合物はこれらのキラヤ・サポナリア・モリナ画分が同一の免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックス粒子中に組入れられた場合より低い毒性を有することが驚くべきことに判明した。例えば画分Aマトリックスと画分Cマトリックスの混合物、又は画分Aマトリックスもしくは画分Cマトリックス単独の使用は同一の画分が同一の免疫刺激複合体マトリックス中に組入れられたときよりマウスにおいてかなり毒性が低かった(実施例4、表1)。さらに、免疫原性又は免疫調節特性はより調整しやすく、標的種及びワクチン抗原の必要性/要求の両方について最適化された改良されたワクチン処方を作る可能性がかなり増大する。
マウスはキラヤサポニンに対して特に敏感であり、過剰投与すると4日以内に、しばしば24時間以内に死亡する。それ故、マウスは本発明に従って調製された処方の毒性及び免疫原性の効果を監視するために用いられた。キラヤサポニンに対する感受性の種間変異は大きく、許容可能な処方を得るための種最適化の必要性を反映するが、ワクチン処方の最適の免疫原性を得るための調整の必要性も反映する。例えばウマは多量のキラヤサポニンを投与しても死亡しないが、ウマは遊離のキラヤ・サポナリア・モリナ、キラヤ・サポナリア・モリナから製造された免疫刺激複合体及び免疫刺激複合体マトリックス又はキラヤ・サポナリア・モリナの混合画分の注射後、発熱して局所的な副作用を示す傾向がある。
本発明は少なくとも二種の免疫刺激複合体の混合物を含む組成物であって、各複合体がキラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Sapinaria Molina)からの本質的に一種のサポニン画分を含む組成物に関する。免疫刺激複合体は免疫刺激複合体マトリックス又は免疫刺激複合体であることができる。
免疫刺激複合体は少なくとも一種のグリコシド、少なくとも一種の脂質及び少なくとも一種の抗原物質を含む。脂質は少なくともコレステロールの如きステロールであり、所望によりホスファチジルコリンであることができる。この複合体は一種以上の他の免疫調節(アジュバント活性)物質を含むこともでき、EP 0109942B1,EP 0242380B1及びEP 0180564B1に記載されたようにして製造することができる。
免疫刺激複合体マトリックスは少なくとも一種のグリコシド及び少なくとも一種の脂質を含む。脂質は少なくともコレステロールの如きステロールであり、所望によりホスファチジルコリンであることができる。この複合体は一種以上の他の免疫調節(アジュバント活性)物質(サポニンである必要はない)を含むこともでき、EP 0436620B1に記載されたようにして製造することができる。
本発明による組成物は免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスのみを含むか又は免疫刺激複合体と免疫刺激複合体マトリックスの混合物を含むことができる。異なる免疫刺激複合体及び/又は免疫刺激複合体マトリックスが混合されることができ、その場合キラヤ・サポナリア・モリナからの異なるサポニン画分が用いられる。
本発明は免疫調節剤の調製のための少なくとも二種の免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスの混合物の使用であって、各複合体がキラヤ・サポナリア・モリナからの一種のサポニン画分を含む使用も包含する。
本発明の他の側面はワクチンの調製のための少なくとも二種の免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスの混合物の使用であって、各複合体がキラヤ・サポナリア・モリナからの一種のサポニン画分及び少なくとも一種の抗原を含む使用である。
本発明のさらなる側面はアジュバントの調製のための少なくとも二種の免疫刺激複合体マトリックスの混合物の使用であって、各複合体がキラヤ・サポナリア・モリナからの一種のサポニン画分を含む使用である。
本発明に従って免疫刺激複合体マトリックス中に組入れられるか又は免疫刺激複合体マトリックスと関連される免疫原はヒト又は他の動物の如き(しかしこれらに限定されない)個体における免疫応答を誘導することができるいかなる化学物質であることができる。この免疫応答は細菌、ウイルス、マイコプラズマ又は他の微生物に対する体液性及び/又は細胞性免疫応答を含むがこれらに限定されない。特異的な免疫原はタンパク質又はペプチド、炭水化物、多糖、リポ多糖又はリポペプチド、又はこれらの組合せであることができる。
特に、特異的な免疫原は天然のタンパク質又はタンパク質断片、又は合成のタンパク質又はタンパク質断片又はペプチドを含むことができる。特異的な免疫原は糖タンパク質、糖ペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、核タンパク質、核ペプチドを含むことができる。特異的な免疫原はペプチド−ペプチドコンジュゲートを含むことができる。特異的な免疫原は組換え核酸発現生成物を含むことができる。
かかる免疫原の例はEP 0109942B1に列挙されており、ウイルス性又は細菌性肝炎、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、百日咳、はしか、おたふくかぜ、風疹、ポリオ、肺炎双球菌、ヘルペス、呼吸器のシンシチアル(syncytial)ウイルス、血友病インフルエンザ、クラミジア、水痘−帯状疱疹ウイルス、狂犬病、又はヒトの免疫不全ウイルスに対して免疫応答を誘発することができるものを含むがこれらに限定されない。
抗原は免疫刺激複合体中に組入れられるか又は免疫刺激複合体もしくは免疫刺激複合体マトリックス上に結合されるか又は免疫刺激複合体及び/又は免疫刺激複合体マトリックスと混合されることができる。かかる免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスのいかなる混合物も使用されることができる。一種以上の抗原が用いられることができ、移送及び乗客(passenger)抗原もEP 9600647−3(PCT/SE 97/00289)に記載のように用いられることができる。
用いられる脂質は特に出願人の特許EP 0109942B1(特に第3頁)に及び特許EP 0436620B1の第7頁第7行〜第24行に記載されているものである。特にコレステロールの如きステロール及びホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリンの如きリン脂質が用いられる。細胞結合成分に結合する脂質含有受容体(例えばコレラ毒受容体(ガングリオシドGM1)を含む糖脂質)及びフコース化血群抗原が用いられることができる。細胞結合成分は粘膜標的化分子として作用し、脂質含有物質を含む複合体と単に混合されるだけで脂質含有物質に結合されることができる。かかる受容体及びかかる受容体を含む免疫刺激複合体はWO 97/30728に記載されている。
用語「キラヤ・サポナリア・モリナからの一種のサポニン画分」は本明細書及び特許請求の範囲を通してキラヤ・サポナリアの半精製された又は規定されたサポニン画分又は実質的に精製された画分の総称として用いられる。この画分は、本質的に一種の画分を含む免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスの混合物が用いられたときに得られる良好な結果に負の影響を与えるいかなる他の画分も含まないということは重要である。サポニン調製物は所望により少量の、例えば40重量%までの、30重量%までの、25重量%までの、20重量%までの、15重量%までの、10重量%までの、7重量%までの、5重量%までの、2重量%までの、1重量%までの、0.5重量%までの、0.1重量%までの、他の化合物(他のサポニンや他のアジュバント材料の如き)を含むことができる。
本発明によるサポニン画分はWO 96/11711に記載のA,B及びC画分、EP 0436620に記載のB3,B4及びB4b画分、EP 0362279B2に記載の画分QA1−22,Q−VAC(Nor−Feed,AS Denmark)、又はキラヤ・サポナリア・モリナスピコシド(Isconova AB,Ultunaallen 2B,756 51 Uppsala,Sweden)であることができる。
EP 03632279B2の画分QA−1−2−3−4−5−6−7−8−9−10−11−12−13−14−15−16−17−18−19−20−21及び22、特にQA−7,17−18及び21が用いられることができる。これらはEP 0362279B2に、特に第6頁及び第8頁及び第9頁の実施例1に記載されている。
WO 96/11711に記載の画分A,B及びCは粗キラヤ・サポナリア・モリナ水性抽出物のクロマトグラフィー分離及び親油性画分を回収するための70%アセトニトリル水溶液を用いた溶離により得られた親油性画分から調製される。この親油性画分は次に25〜60%のアセトニトリル酸性水溶液の勾配を用いた溶離での半精製HPLCによって分離される。ここで「画分A」又は「QH−A」と称される画分は約39%のアセトニトリルで溶離される画分であるか又はこの画分に相当する。ここで「画分B」又は「QH−B」と称される画分は約47%のアセトニトリルで溶離される画分であるか又はこの画分に相当する。ここで「画分C」又は「QH−C」と称される画分は約49%のアセトニトリルで溶離される画分であるか又はこの画分に相当する。
キラヤ・サポナリア・モリナの異なる画分を含む免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスを組合せることにより、毒性の少ない調製物を製造することが可能である。組成物の効果は受容体によって媒介される、即ち複合体を認識する抗原呈示細胞(APC)上の受容体によるように思われることも判明している。従って、キラヤ・サポナリア・モリナの二種の異なる画分が同一の免疫刺激複合体中に組入れられた場合、この複合体は画分1に対して親和性を有する受容体及び画分2に対して親和性を有する受容体に、即ち二組の受容体に結合するであろう。一方、画分が別個の免疫刺激複合体粒子又は免疫刺激複合体マトリックス粒子中にある場合、各粒子は対応する受容体に結合し、この受容体はそれが親和性を有する受容体に限られるであろう。APC上の二組の受容体が同一の粒子によって刺激された場合、これは副作用をもたらす強い効果を生ずるかもしれない。さらに、複合体が受容体を介してそれらの作用を発揮する方法は異なる種において異なるかもしれない。従って、キラヤ・サポナリア・モリナの異なる画分のそれらの含有量に基づいていかなる組合せの免疫刺激複合体の重量%も用いられることができる。
本発明によるサポニン調製物の使用は増大した耐性及び増大した免疫原性を有する製品を生ずる。調製物は免疫原性を調整して炎症、過敏感性及びアレルギー反応の増大した制御を与えるために用いられることができる。この調整は種依存であることができ、毒性、耐性及び免疫原性に影響を与えることができる。
いかなる比率の亜画分のキラヤ・サポナリア・モリナサポニンも用いられることができる。また、いかなる組合せの亜画分のキラヤ・サポナリア・モリナも用いられることができる。従って、二種以上の亜画分は免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスにそれぞれ組入れられることができ、本発明による混合物中で用いられることができる。
好ましくは、画分キラヤ・サポナリア・モリナ及び画分Quil Cが異なる免疫刺激複合体又はマトリックス中に別個に組入れられた免疫刺激複合体及び/又はマトリックスの混合物が用いられる。上述の通り、キラヤ・サポナリア・モリナの画分A及びCのそれらの含有量に基づく異なる免疫刺激複合体の重量%のいかなる組合せも用いられることができる。混合物は免疫刺激複合体中のキラヤ・サポナリア・モリナの合計画分A及びCの含有量に基づいて計算して0.1〜99.9重量%の、5〜95重量%の、10〜90重量%の、15〜85重量%の、20〜80重量%の、25〜75重量%の、30〜70重量%の、35〜65重量%の、40〜60重量%の、45〜55重量%の、50〜50重量%の、55〜45重量%の、60〜40重量%の、65〜35重量%の、70〜30重量%の、75〜25重量%の、80〜20重量%の、85〜15重量%の、90〜10重量%の、又は95〜5重量%の免疫刺激複合体を含むことができ、この免疫刺激複合体はキラヤ・サポナリア・モリナの画分A(ここに規定される通り)を含み、各場合において残りの100%までの免疫刺激複合体はキラヤ・サポナリア・モリナの画分C(ここに規定される通り)を含む。
混合物は75〜99.5重量%の画分A及び0.5〜25重量%の画分Cを含むことができる。好ましくは、混合物は90〜99重量%の画分A及び1〜10重量%の画分Cを含む。特に好ましい調製物は約91〜98重量%の画分A及び約2〜9重量%の画分C、特に約92〜96重量%の画分A及び約4〜8重量%の画分Cを、免疫刺激複合体中のキラヤ・サポナリア・モリナの全画分A及びCの含有量に基づいて計算して含む。
上述の範囲は全て、いかなる種類のヒト又は動物種に投与するための処方においてキラヤ・サポナリア・モリナのいかなる画分のいかなる組合せのためにも用いられることができる。本発明による処方が投与されることができる動物種の例はネコ、イヌ、ウマ、トリ(例、オウム)の如きコンパニオンアニマル、家畜(例、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ)の如き経済的に重要な種である。好ましくは50重量%以上の画分Cがいかなる他の画分との組合せで、特に画分Aとの組合せで用いられる。従って、50.5〜99.5重量%の画分C及び0.5〜49.5重量%の画分Aが用いられることができる。
ここに記述されるように調製されたとき、キラヤ・サポナリア・モリナの画分A,B及びCは規定可能な特性を有する化学的に親密に関連した分子のグループ又はファミリーをそれぞれ表す。それらが得られるクロマトグラフィー条件は、溶離プロファイルの観点でのバッチ対バッチ再現性と生物学的活性が高度に一致するような条件である。
本発明はワクチン組成物にまでその範囲を広げる。このワクチン組成物はその活性成分としての(i)これまでの部分で幅広く記述された免疫原性の免疫刺激複合体、又は(ii)これまでの部分で幅広く記述された免疫刺激複合体マトリックス、並びに少なくとも一種の免疫原を、一種以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤と共に含む。
かかるワクチン組成物の処方はこの技術分野の当業者には周知である。好適な薬学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤はいかなるそして全ての従来の溶媒、分散媒体、充填剤、固形担体、水溶液、被覆、抗細菌及び抗真菌剤、等張性の及び吸収を遅延させる薬剤等を含む。薬学的に活性のある物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は当該技術分野では周知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版、Mack Publishing Company,Pennsylvania,USAに記述されている。いかなる従来の媒体又は薬剤が活性成分と非適合性である範囲を除いては、本発明の薬学的組成物におけるその使用は予想される。追加の活性成分も組成物中に組み入れられることができる。
それぞれキラヤ・サポナリア・モリナの本質的に一種の画分を含む本発明による免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスは混合物として、又は同一の投与部位において別個に、又は異なる投与部位において同一もしくは異なる時間で投与されることができる。キラヤ・サポナリア・モリナの異なる画分は異なる免疫刺激複合体及び免疫刺激複合体マトリックス中で、及び異なる組成物中で用いられることができる。
それ故、本発明は少なくとも二種の部分を含む部分のキットであって、各部分が一種の免疫刺激複合体又は一種の免疫刺激複合体マトリックスを含み、各複合体がキラヤ・サポナリア・モリナからの一種のサポニン画分を含むものにも関する。キラヤ・サポナリア・モリナの異なる画分は異なる部分の異なる組成物中の異なる免疫刺激複合体及び免疫刺激複合体マトリックスで用いられることができる。
本発明による組成物及び部分のキットはキラヤ・サポナリア・モリナからの画分以外の少なくとも一種の他のアジュバントを含むこともできる。これらのアジュバントは免疫刺激複合体及び/又は免疫刺激複合体マトリックスと混合されるか又はこれらの複合体中に組み入れられることができる。
免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックス中に組み入れられることができる他のアジュバントの例は所望の免疫調節効果を有する天然又は合成のいかなるアジュバントであり、例えばムラミルジペプチド(MDP)誘導体、脂肪酸、置換MDP,MDPのトレオニル類似体;DDA、硫酸デキストランの如きポリアニオン、サポニンの如きリポ多糖類(Quil A以外の)である(“Future prospects for vaccine adjuvants”,Warren,H.S.(1988)CRC Crit.Rev.Immunol.8:2,83−101;“Characterisation of a non−toxic monophosphoryl lipid A”(1987)Johnson,A.G.et al,Rev.Infect.Dis.9:5,5512−5516;“Developmental status of synthetic immunomodulators”,Berendt,M.J.et al(1985),Year Immunol.193−201;“Immunopotentiating conjugates”,Stewart−Tull,D.E.,Vaccine,85,3:1,40−44)。
投与の容易さ及び用量の均一性のためには組成物を用量単位形態で処方することが特に有利である。ここで用いられる用量単位形態は、治療されるヒト患者のための一体の用量として好適な物理的に区別される単位を意味する;各単位は要求される薬学的担体及び/又は希釈剤との関連で所望の治療効果を生ずるように計算された予め決められた量の活性成分を含む。
なお別の側面において、本発明は個体における免疫応答を誘発又は誘導する方法にまで範囲を広げる。この方法はこれまでの部分で幅広く記述されたようなワクチン組成物の免疫学的に有効な量を個体に投与することを含む。
既に述べた通り、個体はヒト又は他の動物であることができ、家畜(例えばヒツジ、ウシ又はウマ)、研究用試験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ又はモルモット)、コンパニオンアニマル(例えばイヌ又はネコ)又は野生動物を含むことができる。
「免疫学的に有効な量」は少なくとも部分的に所望の免疫応答を達成するために必要な量、又は治療される特定の症状の始まりを遅延させるために、進行を阻害するために、又は始まりもしくは進行を全体的に中止させるために必要な量を意味する。この量は治療される個体の健康状態及び物理的状態に依存して、治療される個体の分類群に依存して、抗体を合成する個体の免疫系の能力に依存して、ワクチンの所望の処方の保護の度合いに依存して、医療的状況の評価に依存して、及び他の関連性のある要因に依存して変化する。この量はルーチン試行を通して決定することができる比較的幅広い範囲内におさまることが予想される。
本明細書及び特許請求の範囲を通して、他に明示されない限り、用語「含む」は述べられた要素又は一群の要素の含有を意味すると理解されるべきであり、いかなる他の要素又は一群の要素も除外するものではない。
本発明は以下の図面によって例示されるであろう。図中:
図1はHPLCによる画分A,B及びCの調製を示す。
図2は本文中に記述された通りのインフルエンザウイルスのミセルに対する抗原特異的抗体応答がELISAで(対数力価)、IgG1サブクラス(A)で、及びIgG2aサブクラス(B)でテストされたことを示す。マウス(雌のNMRI)は0週目及び4週目に表2に記載のワクチン処方で、即ちグループ1〜8で免疫感作された。マウスは3週目及び6週目に採血された。抗体応答は6週目に採取された血液からテストされた。
図3は本文中に記述されたインフルエンザウイルスのミセルでインビトロで刺激された後に図2に記述された通り免疫感作の6週間後に採取された脾臓細胞によるサイトカインIL−5(A)及びIFN−γ(B)の生産として測定された細胞性免疫応答を示す。
図4はBalb/Cマウスでの抗体応答を増大させるためにOVAに補充された場合、マトリックス中の高用量(50μg)のQHCは毒性を有するが、免疫刺激複合体マトリックス中の高用量のQHAは毒性を有さないことを示す(本文参照)。両方の処方は、全IgG応答(A)及びIgG2aサブクラス(B)についてELISAによって2回目の免疫感作後に3週目に測定された通り、OVAに対する類似の特異的抗体応答を増大させる。
図5はBalb/Cマウスでの抗体応答を増大させるためにOVAに補充された場合のQHA及びQHCマトリックスの相乗効果を示す(本文参照)。QHA及びCマトリックスの用量は以下の範囲であった:グループ1ではA又はCはなし;グループ2ではAが0.3μg、Cはなし;グループ3ではAが0.3μg、Cが2μg;グループ4ではAが10μg、Cはなし;グループ5ではAが10μg、Cが2μg。OVAの用量は10μgであった。各グループについて8匹のマウスを用いた。これらのマウスはそれぞれの処方を用いて4週間空けて2回免疫感作された。抗体力価はELISAによって以下のものに対して測定された:
A − 1回目の免疫感作の3週間後に全IgGに対して;
B − 2回目の免疫感作の2週間後にIgG2aに対して;
C − 2回目の免疫感作の2週間後にIgG1に対して。
グループ4と5の間で極めて有意な差がある(P<0.0001)。
ここで言及するすべての文献は参照文献としてここに組み入れられる。本発明は以下の非限定的な実施例によって記述されるであろう。
キラヤ・サポナリア・モリナのサブフラグメントサポニンの調製
粗キラヤ・サポナリア・モリナ抽出物の画分A,B及びCへの精製
粗キラヤ樹皮抽出物の水溶液(0.5g/ml)0.5mlがsep−pakカラム(Waters Associates,MA)上で予備処理される。
予備処理は充填されたsep−pakカラムを10%アセトニトリル酸性水溶液で洗浄して親水性物質を除去することを含む。QH−A,QH−B及びQH−Cを含む親油性物質は次に70%アセトニトリル水溶液によって溶離される。
sep−pakカラムからの親油性画分は次に半調製HPLCカラム(CT−sil,C8,10×250mm,ChormTech,Sweden)によって分離される。サンプルは25〜60%のアセトニトリル酸性水溶液によってカラムを通して溶離される。三つの画分が分離中にHPLCカラムから収集される。これらの三つの画分の蒸発後の残余物質はQH−A,QH−B及びQH−Cを構成する。
QH−A,QH−B及びQH−Cと称される画分はそれぞれ約39,47及び49%のアセトニトリルで溶離された。抽出溶離プロファイル及び条件は図1に示される。
実施例2.免疫刺激複合体マトリックスの調製
材料
コレステロール(例えばSigma C 8503)
ホスファチジルコリン(卵由来のもの、例えばSigma P 3556)
MEGA−10(Bachem AG,Switzerland)
キラヤサポニン画分A及びC(特許WO 9611711)
0.22μmの滅菌フィルター(Acrodisc)
PBS(10mMのリン酸緩衝150mM生理食塩水、pH6.8〜7.4)
Slide−A―LyzerカセットMWカットオフ12〜14.000(Pierce)
MEGA−10(ストック溶液)
8mlの滅菌水を2.0gの乾燥固形MEGA−10に添加することによって20%(w/w)ストック溶液を作る。おだやかに加熱(30〜50℃)することによって溶解させる。0.22nmの滅菌フィルターを通して濾過し、少量ずつ小分けし、−20℃で貯蔵する。
脂質混合物(15mg/ml)
100mgの各コレステロール及びホスファチジルコリンを10mlの20%MEGA−10に溶解させる。脂質はゆっくりと撹拌されることにより30〜60℃でゆっくりと溶解する。0.22nmの滅菌フィルターを通して濾過し、少量ずつ小分けし、−20℃で貯蔵する。冷凍後、脂質混合物は明澄になるまで40℃まで加熱される必要がある。すべての溶液を24±1℃に保温する。
サポニンストック溶液(100mg/ml)
1.0gのキラヤ・サポナリア・モリナ画分(A又はCが滅菌水に溶解される。少量ずつ小分けし、−20℃で冷凍される。)。0.22nmの滅菌フィルターを通して濾過し、少量ずつ小分けし、−20℃で貯蔵する。
異なる免疫刺激複合体マトリックス調製物は表1に概略を示したようにして製造される。混合物を以下の手順で調製する。
2mlのPBSを50mlのファルコンチューブに加える。
1.脂質混合物を加え、完全に混合する。
2.サポニンを加え、完全に混合する。
3.PBSを加えて12.0mlの最終容積にし、完全に混合する。
4.30分間インキュベートする。
5.Slide−A−Lyzerに充填する。
6.2リットルのPBS(24±1℃)の4回の交替に対して透析する(48〜60時間)。
7.Slide−A−Lyzerから吸引し、0.22nmの滅菌フィルターを通して濾過する。
免疫刺激複合体マトリックスの処方は陰性染色電子顕微鏡で検証され、キラヤサポニンの生ずる濃度はHPLCで決定された。
Figure 0004636877
実施例3.PR−8タンパク質ミセルの調製
1.12mgのPR−8モノマー(1.5mg/ml)をPBSで希釈して1.0mg/mlの最終タンパク質濃度にする。
2.0.22nmの滅菌フィルターを通して濾過する。
3.Slide−A−Lyzerに充填する。
4.2リットルのPBS(24±1℃)の4回の交替に対して透析する(48〜60時間)。
5.Slide−A−Lyzerから吸引する。
実施例4.免疫感作の研究
この実施例は、比較研究において混合物マトリックス粒子からなる免疫刺激複合体マトリックスが最小の度合いの副作用を引き起こすということを示すために行われた。一組の粒子はQHAを唯一のサポニンとして含み、他の組の粒子はQHCを唯一のサポニンとして含み、実施例2に従って調製された。この処方は「粒子の混合物を有するマトリックス」と名付けられる。比較は特許WO 96/11711に記述された免疫刺激複合体マトリックス、即ち各粒子がQHAとQHCの両方を例えば70%のQHAと30%のQHCの比率で含む免疫刺激複合体マトリックスを用いて行われる。これは「すべてが一緒になった粒子を有するマトリックス」である。
Balb/Cマウスは免疫刺激複合体マトリックス処方「粒子の混合物を有するマトリックス」と混合された1μgのPR8ミセル(実施例3に記述のようにして調製された)で0日目及び42日目に免疫感作され、「すべてが一緒になった粒子を有する免疫刺激複合体マトリックス」又は100%のQHA又は100%のQHCを含む免疫刺激複合体マトリックスと比較され、表2に記述された。治療によって50%以上のマウスが死亡したか又は許容不可能な副作用を受けたグループは間引かれ、さらなる研究から除外された。
血清サンプルはブースター投与の2週間後の56日目にグループ1〜7ですべてのマウスから採取された。血清はIgG1(A)及びIgG2a(B)サブクラスの抗原特異的抗体についてスクリーニングされた。図中のグループ8はワクチン化されなかったマウスを表す。結果は図2に示される。
2回目の採血後、脾臓が1グループあたり2匹のマウスから採用された(グループ2,4,5,6及び7)。脾臓細胞はPR8ミセルを用いてインビトロで刺激され、IL-5(A)及びIFN−γ(B)の抗原特異的誘導が測定された。図中のグループ8はワクチン化されなかったマウスを表す。結果は図3に示される。
表2
Balb/Cマウスは0及び42日目に免疫刺激複合体マトリックス処方「粒子の混合物を有するマトリックス」(MIXグループ1,2及び3)で免疫感作され、「すべてが一緒になった粒子を有する免疫刺激複合体マトリックス」(CONVグループ7,8,9,10及び11)と、又は100%のQHAを含む免疫刺激複合体マトリックス(グループ4及び5)もしくは100%のQHCを含む免疫刺激複合体マトリックス(グループ6及び12)と比較された。
Figure 0004636877
結果
PR8ミセルで免疫感作され80%のQHA及び20%のQHC(即ち10μg)を含む高用量(50μg)の免疫刺激複合体マトリックスでアジュバント投与されたマウスは1又は2日以内に死亡した。同様に、50μgの処方100%QHCで免疫感作されたマウスも2日以内に死亡した。対照的に、50μgの処方100%QHAで免疫感作されたマウスはいかなる気付かれる副作用なしに生存した。即ち、低用量のQHCはQHAと同じマトリックス粒子中に組入れられた場合、マウスを殺すのに十分であった(表2のCONVグループ8)。4μg(8%)という低用量のQHCが46μg(92%)のQHAとCONVマトリックス中で組合せられた場合でも、8匹のマウスのうち6匹が死亡した(表2のグループ9)。また、2μg(4%)のQHCはCONVマトリックス中でQHAと組合わせられた場合、マウスを殺した(表2のグループ10)。グループ6(表2)のマウスは10μgのQHCをマトリックス中の100%として(即ちQHAを含まない)受取り、すべてのマウスが生存した。
従って、QHCが同じCONVマトリックス粒子中でQHAと組合わせられた場合、マウスはQHCに対して一層感受性であった(グループ8,9及び10)。
低用量のマトリックス、即ち70%のQHAと30%のQHCに分割された10μgの総サポニンを受取ったマウスはすべて生存した。この場合、マウスは3μgのQHCを受取った。
PR8ミセルで免疫感作され異なるマトリックス粒子を含む処方で、即ち一組のQHA及び一組のQHCを含む粒子の混合物(MIX)でアジュバント投与されたマウスは、CONV処方よりずっと高用量のこのマトリックス処方に耐えて生存した。92%のQHA(46μg)及び8%のQHC(4μg)を有する処方を注射されたマウス(表2のグループ2(92:8)又は2μgのQHCを含む96:4の処方を注射されたマウス(表2のグループ3)はすべて生存した。この結果は対応する量のQHA及びQHCをCONVマトリックス中に含むグループ(表2のグループ9及び10)が高い死亡率を生じたのとは対照的である。
従って、死亡率−毒性はQHCをQHAから物理的に分離してこれらを異なるマトリックス粒子中に分布させることによって回避することができる。
抗体応答の増大
結果は図2に示されている。抗原特異的応答はIgGサブクラスに分割された。マウス(雌のNMRI)は0及び4週目に表2に記載されるワクチン処方で免疫感作された。マウスは3週目及び6週目に採血された。6週目でのIgG1(10log Elisa 力価)応答はAで示され、対応するIgG2応答はBで示される。
この実験での重要な発見は、図2に示される通りQHA及びQHCが異なる組の粒子内に分離された場合、抗体応答によって測定されるように免疫増強能力が維持又は増大されるということである。
図2には、粒子の混合物(MIX)は、同一の比率の同一用量のQHA及びQHCが同一粒子に、即ちCONV粒子に組入れられた場合と同様、PR8ミセルに対する同一レベルのIgG1抗体(図2A)を増大されるということが示されている。しかし、高レベルのIgG2a抗体がMIX処方によって増大された。グループ2及び3(MIX)はグループ9及び10(CONV)QHA−QHCマトリックスと、及び100%の低用量QHCマトリックス(グループ6)と、及び100%のQHA高用量マトリックス(表2のグループ4)と比較される。グループ7のマウスは10μgという低用量(CONV 70:30)、即ちマウスが受け入れることができる用量を注射され、強いIgG1(図2A)応答を示したが、IgG2a応答は低かった(図2B)。
従って、マトリックス粒子の混合物を有するマトリックス処方を用いる本発明は高用量で投与されても副作用を回避することができ、免疫応答をCONVマトリックスより高レベルに増大させることができる。特に、IgG2a応答が増大される。IgG2a応答は例えばウイルスの如き細胞間寄生体に対する防御のために特に重要である。
細胞性免疫応答の増大
CONVマトリックス処方は許容される用量で細胞性免疫を増大させる能力がMIX処方より劣る(図3A及びB)。MIX処方(92:8、グループ2)はCONV(70:30、グループ7)、QHA−QHC処方、又は100%QHCマトリックス処方(グループ6)よりかなり高いIL−5レベルを増大させる。混合物処方(92:8、グループ9)もQHC100%マトリックス(グループ6)又はCONV(70:30、グループ7)処方よりIFN−γをかなり良好に増大させる。
QHAはIL−5及びIFN−γ生産によって測定される細胞性免疫応答を増大させる強い能力を有するが、抗体応答を増大させる能力は低いことに注意すべきである。
結局、本発明は、毒性及び副作用をかなり減少させ、免疫応答を増大させる能力を失うことなしにアジュバント活性分子の強い用量を可能にする免疫刺激複合体及び免疫刺激複合体マトリックス処方の概念を規定する。
さらに、低いが許容可能な用量のQHCマトリックス処方はIgG1応答を増大させる良好な能力を有するが、重要なIgG2a応答に関する能力は低い。細胞性免疫を誘導するQHCマトリックスの能力も本発明のそれよりかなり低い。
QHAマトリックスは細胞性免疫を強く増大させるが、抗体性免疫を増大させる能力において本発明のものより劣る。
混合されたマトリックス粒子を用いる本発明はIgG2a抗体応答によって測定されかつ細胞性応答によって測定される通り、同一粒子中にQHA及びQHCを含むマトリックス処方(COVN)より優れている。
本発明は完全な免疫応答を増大させ、それ故、以前に記述されているマトリックス処方より優れる。これはこの実施例4によって示されている。
実施例5
この実施例では、QHAが良く許容され、強い免疫増大能力及び免疫調節能力を有することが強調される。卵白アルブミン(OVA)は弱い抗原であり、Th1型の応答を誘導しないので用いられた。QHAはQHCと比較された。何故なら、QHCはヒトの臨床試験で評価されているからである。
材料及び方法
キラヤ・サポナリア・モリナサブフラグメントの調製は実施例1に記述されている。
免疫刺激複合体マトリックスの調製は実施例2に記述されている。
実験計画
グループは8匹のマウスからなり、10μgのOVA及びアジュバントとしての50μgのQHAで4週間の間隔を空けて2回、皮下注射により(s.c.)免疫感作された。グループ2は同数のマウスを有し、同様の手順で免疫感作されたがアジュバントが50μgのQHCである点が異なっていた。
示される免疫応答はブースター投与の2週間後に採取された血清からのものである。
抗体の決定
特異的OVA血清抗体応答は、テスト抗原としてELISAプレートを被覆するために1mlあたり10μgのOVAを用いる標準手順を用いて実施例4に記述されたようにして全IgG応答及びIgG2aサブクラス応答の両方についてELISAによって決定された。
結果
OVAで免疫感作されQHAマトリックスをアジュバントとして投与されたマウスはすべて生存し、不調のいかなる徴候も示さなかった。OVAで免疫感作されQHCマトリックスをアジュバントとして投与された8匹のマウスのうち4匹のマウスは死亡した。即ち、死亡率は50%であった。
総免疫応答に関してはグループ間で有意差はなかったが(図4A)、ELISA力価はグループ1のマウス、即ちQHAで免疫感作されたマウスの間で一層多くの変動があった。
ELISA力価がグループ2のマウス、即ちQHCで免疫感作されたマウスの間で一層多く変動していたことを除いては、グループ1と2の間でIgG2aサブクラスにおける平均力価に差はなかった(図4B)。
この実施例の第2の実験では、QHAマトリックスは他のアジュバントでの補足から利益を受けることができるかどうかが研究された。QHAマトリックス及びQHCマトリックスの用量は以下の範囲であった:グループ1ではA又はCはなし;グループ2ではAが0.3μg、Cはなし;グループ3ではAが0.3μg、Cが2μg;グループ4ではAが10μg、Cはなし;グループ5ではAが10μg、Cが2μg。OVAの用量は10μgであった。各グループについて8匹のマウスを用いた。これらのマウスはそれぞれの処方を用いて4週間空けて2回免疫感作された(図5A,B及びC)。
血清は最初の免疫感作の3週間後に、及びブースター投与の2週間後に採取された。
特異的OVA血清抗体応答は記述されたようにして(Johansson,M and Loevgren−Bengtsson(1999) Iscoms with different quillaja saponin components differ in their immunomodulating activities.Vaccine 19,2894−2900)全IgG応答及びIgG2a及びIgG1サブクラス応答についてELISAによって決定された。
結果
最初の免疫感作後、アジュバント投与されていないOVA又は2μgのQHCマトリックスを有するかもしくは有さない0.3μgのQHAマトリックスでアジュバント投与されたOVAを受取ったマウスでは抗体応答は記録されなかった(図5A)。
第2の免疫感作後、アジュバント投与されていないOVAで免疫感作された8匹のマウスのうち3匹からIgG1サブクラスにおいて低い応答が検出されたが、IgG2aサブクラスにおいては応答が記録されなかった。最低のアジュバント用量のQHAマトリックス、即ち2μgのQHCマトリックスを有するかもしくは有さない0.3μgのQHAマトリックスでも抗体応答は記録されなかった。2μgのQHCの低用量が10μgのQHAに加えられた場合、IgG2aサブクラスにおける抗体応答の明らかな増大があった(図5B)。
結論
QHAマトリックスは強いTH1型の応答を促進することによって示される通り、免疫刺激複合体マトリックス中に含まれる場合、極めて低い毒性を有しかつ強い調節効果を有する。これはアジュバント投与されていないOVA又は極めて低い用量のアジュバントを投与されたOVAとは対照的であり、これらはIgG1サブクラスにおける抗体応答しか誘発しなかった。QHAマトリックスは低用量のQHCマトリックスと相乗作用することも示される。これらの結果は重要である。何故なら、これは単純な方法でアジュバント効果を最適化しかつ副作用を最小化することを可能にするからである。このことは強いアジュバントを必要とするOVAの如き弱い抗原について示される通りである。
Figure 0004636877
Figure 0004636877
HPLCによる画分A,B及びCの調製を示す。 本文中に記述された通りのインフルエンザウイルスのミセルに対する抗原特異的抗体応答がELISAで(対数力価)、IgG1サブクラス(A)でテストされたことを示す。 本文中に記述された通りのインフルエンザウイルスのミセルに対する抗原特異的抗体応答がELISAで(対数力価)、IgG2aサブクラス(B)でテストされたことを示す。 本文中に記述されたインフルエンザウイルスのミセルでインビトロで刺激された後に図2に記述された通り免疫感作の6週間後に採取された脾臓細胞によるサイトカインIL−5(A)の生産として測定された細胞性免疫応答を示す。 本文中に記述されたインフルエンザウイルスのミセルでインビトロで刺激された後に図2に記述された通り免疫感作の6週間後に採取された脾臓細胞によるIFN−γ(B)の生産として測定された細胞性免疫応答を示す。 Balb/Cマウスでの抗体応答を増大させるためにOVAに補充された場合、マトリックス中の高用量(50μg)のQHCは毒性を有するが、免疫刺激複合体マトリックス中の高用量のQHAは毒性を有さないことを示す。 Balb/Cマウスでの抗体応答を増大させるためにOVAに補充された場合のQHA及びQHCマトリックスの相乗効果を示す。

Claims (7)

  1. 少なくとも二種の免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスの混合物を含む組成物であって、前記免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスが、それぞれキラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)からの一種の互いに異なるサポニン画分である画分A又は画分Cを含み、前記画分A及び画分Cが、粗キラヤ・サポナリア・モリナ水性抽出物をクロマトグラフィーによって分離し、70%アセトニトリル水溶液を用いた溶離により得られる親油性画分を回収し、次に、半精製HPLCによって25〜60%のアセトニトリル酸性水溶液の勾配を用いて分離して、それぞれ39%及び49%のアセトニトリルで溶離する画分であって、前記免疫刺激複合体又は免疫刺激複合体マトリックスの画分Aを含有するものと画分Cを含有するものとを、70:30から96:4の比で含む組成物。
  2. 前記複合体が免疫刺激複合体である請求項1記載の組成物。
  3. 前記複合体が免疫刺激複合体マトリックスである請求項1記載の組成物。
  4. 少なくとも一種の他のアジュバントをさらに含む請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
  5. 求項1〜4のいずれか一項記載の組成物を含有する免疫調節剤。
  6. 求項1〜4のいずれか一項記載の組成物及び少なくとも一種の抗原を含有するワクチン。
  7. 求項1〜4のいずれか一項記載の組成物を含有するアジュバント。
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