JP4635571B2 - 脂肪族環式炭化水素類の酸化反応に用いる触媒及びそれを用いる酸化方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、非特許文献1や特許文献1、特許文献2記載の方法では反応速度が十分ではなく、生産性の点から必ずしも満足できるものではない。特に、非特許文献1の方法では反応中に触媒が酸化され、活性が失われていく。また、非特許文献2記載の方法では、純酸素を酸化ガスとして使用するため、安全性の観点から満足できるものではない。更に、特許文献3記載の方法では、使用するCo量が多く、また、反応中間体であるヒドロペルオキシド濃度も高い。ここで、対応するケトン類又はアルコール類を効率よく得るためには、ヒドロペルオキシド類を反応中にケトン類又はアルコール類に転換しておくことが望ましい。ヒドロペルオキシド類の濃度が低くなるシクロアルカンの酸化方法としては、近年、複数の金属種を併用する方法(特許文献4参照。)が開発され、改良が図られている。
すなわち、本発明は、脂肪族環式炭化水素類と分子状酸素とを反応させる際に、1種類以上の遷移金属を周期表第5族もしくは第13族元素の酸化物、又は第14族元素の炭化物に担持させた固体触媒と、1種類以上の遷移金属触媒の存在下、反応系内に酸素含有ガスを供給し、かつ排出させ反応を行うことを特徴とする対応するケトン類、アルコール類、および/またはヒドロペルオキシド類の製造方法;及びそれに用いる触媒を提供するものである。
本発明で原料として使用される脂肪族環式炭化水素類としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンのような飽和脂肪族脂肪族環式炭化水素類;シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセンのような不飽和脂肪族環式炭化水素類が挙げられるが、好ましくは上記飽和脂肪族環式炭化水素類が挙げられる。特に好ましくはシクロヘキサンが挙げられる。
例えば、シクロアルカンの酸化により、対応するケトン類として該シクロアルカンの有するメチレン基がカルボニル基となった化合物等を、対応するアルコール類として該炭化水素類の有するメチル基(例えば、メチルシクロヘキサンのメチル基)、メチレン基またはメチリジン基がそれぞれヒドロキシメチル基、ヒドロキシメチレン基またはヒドロキシメチリジン基となった化合物等を、対応するヒドロペルオキシド類として、該炭化水素類の有するメチル基、メチレン基またはメチリジン基がそれぞれヒドロペルオキシメチル基、ヒドロペルオキシメチレン基またはヒドロペルオキシメチリジン基となった化合物等を、対応するアルデヒド類として、該炭化水素の有するメチル基がホルミル基となった化合物等を、対応するカルボン酸類として、該炭化水素の有するメチル基がカルボキシル基となった化合物や、炭化水素類の炭素-炭素結合が開裂して両炭素がカルボキシル基となった化合物(ジカルボン酸)等を製造することができる。
酢酸コバルト・四水和物2.0gをイオン交換水30.0gに溶解した(溶液a)。イオン交換水100gに上記溶液a 1.28g及びα-Al2O3 4.0gを加え、攪拌しながら0.25 N NaOH水溶液を滴下してpHを11とした。室温において24時間攪拌し、洗浄・濾過後、90℃で減圧乾燥することで触媒A(Co 0.50wt.%担持α-Al2O3)を得た。
溶液a 0.26gとα-Al2O3 4.0gを使用した以外は、実施例1と同様にして調製を行い、触媒B(Co 0.1wt.%担持α-Al2O3)を得た。
1リットルのガラスオートクレーブにシクロヘキサン300g、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール各0.6g、触媒A 0.3g、更にシクロヘキサンに対してルテニウムが0.05ppmとなるようにオクチル酸ルテニウムを加え、窒素雰囲気下、圧力0.93Mpa、温度140℃に調整した。この中に該圧力および温度を維持しながら、攪拌下、酸素濃度7容量%の酸素含有ガスを300ml/分で吹き込んだ。酸素吸収が認められるようになった後、出口酸素濃度が5%を超えないように空気の比率を段階的に上昇させ、最終的に空気を300ml/分で150分間流通させた。反応系内を適宜分析し、転化率8%における各生成物の選択率を算出したところ、シクロヘキサノン39.3%、シクロヘキサノール40.1%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド3.8%であった(合計選択率83.2%)。また、アジピン酸の選択率は2.2%であった。
触媒Aの変わりに触媒Bを使用した以外は、実施例3と同様に反応と分析を行った。転化率8%における各生成物の選択率を算出したところ、シクロヘキサノン36.1%、シクロヘキサノール42.2%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド類4.7%であった(合計選択率83.0%)。また、アジピン酸の選択率は2.2%であった。
触媒Aの変わりにN. E. ケムキャット製Co 0.5wt.%担持SiC 0.3gを使用した以外は、実施例3と同様に反応と分析を行った。転化率8%における各生成物の選択率を算出したところ、シクロヘキサノン41.4%、シクロヘキサノール39.5%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド類2.6%であった(合計選択率83.5%)。また、アジピン酸の選択率は2.6%であった。
触媒として、シクロヘキサンに対してコバルトが0.14ppmとなるようにオクチル酸コバルトを加えた以外は実施例3と同様に反応と分析を行った。転化率8%における各生成物の選択率を算出したところ、シクロヘキサノン32.6%、シクロヘキサノール36.1%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド類12.7%であった(合計選択率81.4%)。また、アジピン酸選択率は3.3%であった。
触媒として、シクロヘキサンに対してコバルトが0.14ppmとなるようにオクチル酸コバルトを、ルテニウムが0.02ppmとなるようにオクチル酸ルテニウムをそれぞれ加えた以外は実施例3と同様に反応と分析を行った。転化率8%における各生成物の選択率を算出したところ、シクロヘキサノン37.5%、シクロヘキサノール39.6%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド類4.3%であった(合計選択率81.4%)。また、アジピン酸選択率は1.9%であった。
触媒として、シクロヘキサンに対してルテニウムが0.05ppmとなるようにオクチル酸ルテニウムを加えた以外は実施例3と同様に反応と分析を行った。転化率8%における各生成物の選択率を算出したところ、シクロヘキサノン43.5%、シクロヘキサノール34.0%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド類2.9%であった(合計選択率80.4%)。また、アジピン酸選択率は3.3%であった。
Claims (11)
- 脂肪族環式炭化水素類と分子状酸素とを反応させる際に、
1種類以上の周期表第9族元素を含む遷移金属化合物を周期表第5族もしくは第13族元素の酸化物、又は第14族元素の炭化物に担持させた固体触媒と、
1種類以上の周期表第8族元素を含み、反応系内に溶解された遷移金属触媒の存在下、反応系内に酸素含有ガスを供給し、かつ排出させ反応を行うことを特徴とする対応するケトン類、アルコール類、および/またはヒドロペルオキシド類の製造方法。 - 遷移金属化合物が、コバルト化合物である請求項1記載の製造方法。
- 遷移金属触媒が、ルテニウム化合物である請求項1記載の製造方法。
- 固体触媒の担体がTa, Nbもしくは Alの酸化物又は Siの炭化物である請求項1記載の製造方法。
- 脂肪族環式炭化水素類を分子状酸素で酸化反応させる際に用いる触媒であって、
1種類以上の周期表第9族元素を含む遷移金属化合物を周期表第5族もしくは第13族元素の酸化物、又は第14族元素の炭化物に担持させた固体触媒と、
1種類以上の周期表第8族元素を含み、反応系内に溶解された遷移金属触媒と
を含むことを特徴とする触媒。 - 遷移金属化合物がコバルト化合物であり、遷移金属触媒がルテニウム化合物である請求項5記載の触媒。
- 固体触媒の担体がTa, NbもしくはAlの酸化物又はSiの炭化物である請求項5記載の触媒。
- 遷移金属化合物が、酢酸コバルト(II)である請求項1記載の製造方法。
- 遷移金属化合物が、酢酸コバルト(II)である請求項5記載の触媒。
- 遷移金属触媒が、オクチル酸ルテニウムである請求項1記載の製造方法。
- 遷移金属触媒が、オクチル酸ルテニウムである請求項5記載の触媒。
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