JP4633295B2 - 感光性平版印刷版の刷版方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版の刷版方法に関し、更に詳しくは、波長域650〜1,300nmの範囲の光、特に半導体レーザーやYAGレーザー等のレーザー光により直接画像を形成し刷版するに好適なポジ型感光性平版印刷版の刷版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光により直接画像を形成するCTP(Computer to Plate)システムが注目されている。特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザー等を用いるCTPシステムは、製版工程の短縮化、作業時の環境光、及び製版コスト等の面から、その実用化が急速に進みつつある。
【0003】
これに伴い、CTPシステム用の平版印刷版として、近年、赤外レーザー光を用い、主として化学変化以外の変化により露光部の現像液に対する溶解性を増大させることによってポジ画像を形成する感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版が提案されている(例えば、特開平10−268512号、特開平11−84657号、特開平11−174681号、特開平11−194504号、特開平11−223936号等各公報、WO97/39894号、WO98/42507号等各明細書等参照。)。
【0004】
これらのポジ型感光性平版印刷版は、従来のポジ型感光性平版印刷版が、典型的にはo−キノンジアジド化合物の光分解という化学的変化により露光部の現像液に対する溶解性を増大させることによってポジ画像を形成していたのに対して、赤外吸収色素等の赤外光を吸収して熱に変換する物質とノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂とを主な感光性成分とし、赤外レーザー光の露光で発生する熱による樹脂の構造転移等の物理的変化により露光部の現像液に対する溶解性を増大させるものであり、o−キノンジアジド化合物のような白色光に感光する物質を含有させる必要がないことから、感光性平版印刷版を白色灯下でも取り扱えるという利点を有する一方、概して現像ラチチュード(現像時に露光部が完全に除去されるまでの時間と、非露光部の残膜率が充分に確保される時間との差)が狭く、又、そのためもあって、現像液の組成変化にも敏感であるという現像上の弱点も有しているものであった。
【0005】
これに対して、これらのポジ型感光性平版印刷版において、露光部と非露光部とのコントラストを向上させること等を目的として、現像液に界面活性剤を添加する方法(例えば、特開平11−327163号公報等参照。)が有効であることが知られている。
【0006】
一方、これらのポジ型感光性平版印刷版においては、画像露光した後、通常、自動現像機によりアルカリ現像液を用いて現像処理し刷版されるが、その際、一定量の現像液で長時間にわたり現像するため、現像処理時間の経過に伴って現像液中の有効なアルカリ成分や界面活性剤成分が劣化(以下、この劣化を「処理疲労」と言うことがある。)し、更に、この現像処理による処理疲労とは独立に経時により、空気中の二酸化炭素が現像液中に溶け込んで現像液中の有効なアルカリ成分が劣化(以下、この劣化を「空気疲労」と言うことがある。)することにより、現像性が変化したり、画質が低下したりする等、安定した現像が行えなくなるという傾向がある。
【0007】
そして、これらの処理疲労及び空気疲労に対して、従来より、アルカリ成分や界面活性剤成分を含有させた現像補充液を補充する方法が採られており、本願出願人は、先に、現像液の設定濃度よりも高濃度のアルカリ成分と界面活性剤成分とを含有する現像補充液を用いて補充しながら現像処理する方法を提案した(特願2000−313369号参照。)。しかしながら、この方法では、定常的な現像処理量のもとでは安定した現像処理が行えるが、現像処理量が大きく変化するような場合、例えば、単位期間内の現像処理量が極端に少ないときに、空気疲労に対する補充用として前記現像補充液を用いると、本来空気疲労に対しては必要のない界面活性剤成分も補充され、現像処理時に現像性の変化や画質の低下が起こり、一方、この問題を回避するために、界面活性剤濃度を低減化した現像補充液を用いると、単位期間内の現像処理量が増加したときに、処理疲労に対する界面活性剤成分が不足し、現像処理時に現像性の変化が起こることとなるという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版を、画像露光した後、アルカリ成分と界面活性剤成分とを含有する現像液によって現像処理し刷版するにおいて、現像液の処理疲労と空気疲労のそれぞれに適切に対応した現像液の補充をなすことにより、結果として、安定した現像処理を長期間にわたって実施できる、感光性平版印刷版の刷版方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体表面に、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を有する感光性平版印刷版を、画像露光した後、設定濃度(Ad )のアルカリ成分と設定濃度(Sd )の界面活性剤成分とを含有する現像液によって現像処理し刷版するにおいて、現像液の処理疲労に対する補充用として、設定濃度(Ad )より高濃度のアルカリ成分を含有し、且つ、設定濃度(Sd )と同濃度以上の界面活性剤成分を含有する現像補充液(1)と、現像液の空気疲労に対する補充用として、設定濃度(Ad )より高濃度のアルカリ成分を含有し界面活性剤成分を実質的に含有しない現像補充液(2)とをそれぞれ用いて、現像液を補充しながら現像処理する感光性平版印刷版の刷版方法、を要旨とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポジ型感光性組成物に含有される光熱変換物質としては、画像露光光源の光を吸収して熱に変換し得る化合物であれば特に限定されないが、波長域650〜1,300nmの範囲の一部又は全部に吸収帯を有する光吸収色素が特に有効である。これらの光吸収色素は、前記波長域の光を効率よく吸収する一方、紫外線領域の光は殆ど吸収しないか、吸収しても実質的に感応せず、白色灯に含まれるような弱い紫外線によっては感光性組成物を変成させる作用のない化合物である。
【0011】
本発明におけるこれらの光吸収色素としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等の複素原子がポリメチン(−CH=)n 鎖で結合された構造のものであり、代表的には、その複素原子が複素環を形成し、ポリメチン鎖を介して複素環が結合された構造の所謂、広義のシアニン系色素、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、狭義のシアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、オキサゾール系(所謂、オキサシアニン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等、及び、ポリメチン鎖を介して非環式複素原子が結合された構造の所謂、ポリメチン系色素等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、ピリリウム系、チアピリリウム系等のシアニン系色素、及びポリメチン系色素が好ましい。
【0012】
又、その他に、アミニウム系色素、イミニウム系色素、ジイミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素等も代表的なものとして挙げられ、中で、アミニウム系色素、イミニウム系色素が好ましい。
【0013】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記光熱変換物質の含有割合は、1〜70重量%であるのが好ましく、2〜60重量%であるのが更に好ましく、3〜50重量%であるのが特に好ましい。
【0014】
又、本発明において、ポジ型感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体等が挙げられ、中で、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、又はポリビニルフェノール樹脂が好ましく、特に、ノボラック樹脂が好ましい。
【0015】
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール等のフェノール類の少なくとも1種を、酸触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(尚、ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい。)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂であって、中で、本発明においては、フェノール類としてのフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0016】
特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましく、又、後述する如く本発明における感光性組成物は溶解抑止剤を含有していてもよく、その場合、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0017】
前記ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(MW )が、1,000〜15,000のものが好ましく、1,500〜10,000のものが更に好ましい。
【0018】
又、レゾール樹脂は、ノボラック樹脂の重縮合における酸触媒に代えてアルカリ触媒を用いる以外は同様にして重縮合させた樹脂であって、本発明においては、前記ノボラック樹脂におけると同様の、フェノール類及びその混合組成、及び、アルデヒド類又はケトン類が好ましく、又、同様の重量平均分子量(MW )のものが好ましい。
【0019】
又、ポリビニルフェノール樹脂は、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレン等のヒドロキシスチレン類(尚、これらは、ベンゼン環に塩素、臭素、沃素、弗素等のハロゲン原子、或いは炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよい。)の単独又は2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂であって、中で、本発明においては、ベンゼン環に炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよいヒドロキシスチレン類の重合体が好ましく、特に、無置換のベンゼン環のヒドロキシスチレン類の重合体が好ましい。又、重量平均分子量(MW )が、1,000〜100,000のものが好ましく、1,500〜50,000のものが更に好ましい。
【0020】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、50〜99重量%であるのが好ましく、60〜98重量%であるのが更に好ましく、70〜97重量%であるのが特に好ましい。
【0021】
又、本発明において、前記光熱変換物質と前記アルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物には、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の差を増大させる目的で、赤外領域の光で分解されない溶解抑止剤が含有されていてもよい。
【0022】
その溶解抑止剤としては、例えば、特開平10−268512号及び特開平11−288089号各公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル類、燐酸エステル類、芳香族カルボン酸エステル類、芳香族ジスルホン類、カルボン酸無水物類、芳香族ケトン類、芳香族アルデヒド類、芳香族アミン類、芳香族エーテル類等、特開平11−190903号公報に詳細に記載されている、ラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有する酸発色性色素、特開平11−143076号公報に詳細に記載されている、ラクトン骨格、チオラクトン骨格、スルホラクトン骨格を有する塩基発色性色素等を挙げることができる。
【0023】
更に、溶解抑止剤として、例えば、ポリエチレングリコール類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー類、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコールアルキルアミン類、ポリエチレングリコールアルキルアミノエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ソルビット脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ペンタエリスリット脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0024】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記溶解抑止剤の含有割合は、50重量%以下であるのが好ましく、0.01〜30重量%であるのが更に好ましく、0.1〜20重量%であるのが特に好ましい。
【0025】
又、本発明において、前記光熱変換物質と前記アルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物には、アンダー現像性の付与等、現像性の改良を目的として、好ましくはpKaが2以上の有機酸及びその有機酸の無水物が含有されていてもよい。
【0026】
その有機酸及びその無水物としては、例えば、特開昭60−88942号、特開昭63−276048号、特開平2−96754号各公報等に記載されたものが用いられ、具体的には、グリセリン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、プロピルマロン酸、コハク酸、リンゴ酸、メソ酒石酸、グルタル酸、β−メチルグルタル酸、β,β−ジメチルグルタル酸、β−エチルグルタル酸、β,β−ジエチルグルタル酸、β−プロピルグルタル酸、β,β−メチルプロピルグルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和カルボン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,1−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素環式飽和カルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ安息香酸、p−トルイル酸、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、2−ヒドロキシ−m−トルイル酸、2−ヒドロキシ−o−トルイル酸、マンデル酸、没食子酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の炭素環式不飽和カルボン酸、及び、メルドラム酸、アスコルビン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水フタル酸等の無水物を挙げることができる。
【0027】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記有機酸及びその無水物の含有割合は、30重量%以下であるのが好ましく、0.01〜20重量%であるのが更に好ましく、0.1〜10重量%であるのが特に好ましい。
【0028】
又、本発明において、前記光熱変換物質と前記アルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物には、露光及び現像後の後加熱により前記アルカリ可溶性樹脂を架橋させてポジ画像に耐薬品性、耐刷性等を付与することを目的として、前記アルカリ可溶性樹脂を架橋させる作用を有する架橋剤が含有されていてもよい。
【0029】
その架橋剤としては、代表的には、官能基としてメチロール基、それをアルコール縮合変性したアルコキシメチル基、その他、アセトキシメチル基等を少なくとも2個有するアミノ化合物が挙げられ、具体的には、メラミン誘導体、例えば、メトキシメチル化メラミン〔三井サイテック社製、サイメル300シリーズ(1)等〕、ベンゾグアナミン誘導体〔メチル/エチル混合アルコキシ化ベンゾグアナミン樹脂(三井サイテック社製、サイメル1100シリーズ(2)等〕、グリコールウリル誘導体〔テトラメチロールグリコールウリル樹脂(三井サイテック社製、サイメル1100シリーズ(3)等〕や、尿素樹脂誘導体、レゾール樹脂等が挙げられる。
【0030】
これらの中で、複素環構造、特に含窒素複素環構造を有するメラミン誘導体が好ましく、得られる平版印刷版の保存性やインキ着肉性等の面から、メラミン誘導体中のメチロール基とアルコキシメチル基の合計数に対するアルコキシメチル基数の割合が70%以上、特には90%以上であるメラミン誘導体が好ましい。かかるメラミン誘導体は、メラミン誘導体に特定量のホルムアルデヒド及びアルコールを酸性条件下で反応させる公知の方法により得ることができる。
【0031】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記架橋剤の含有割合は、20重量%以下であるのが好ましく、10重量%以下であるのが更に好ましく、5重量%以下であるのが特に好ましい。
【0032】
更に、本発明において、ポジ型感光性組成物には、前記成分以外に、例えば、染料、顔料、塗布性改良剤、密着性改良剤、感度改良剤、感脂化剤、現像性改良剤等の感光性組成物に通常用いられる各種の添加剤が、20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で含有されていてもよい。
【0033】
本発明におけるポジ型感光性組成物は、通常、前記各成分を適当な溶剤に溶解或いは分散させた塗布液として支持体表面に塗布した後、加熱、乾燥させることにより、支持体表面にポジ型感光性組成物の層として形成され、感光性平版印刷版とされる。
【0034】
ここで、その支持体としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、紙、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等が挙げられる。中で、好ましいのはアルミニウム板であり、塩酸又は硝酸溶液中での電解エッチング又はブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶液中での陽極酸化処理、及び必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されたアルミニウム板がより好ましい。又、支持体表面の粗さとしては、JIS B0601に規定される平均粗さRaで、通常0.3〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.8μm程度である。
【0035】
又、その溶剤としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶剤、或いはこれらの混合溶剤、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。溶剤の使用割合は、感光性組成物の総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0036】
又、その塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布量は、乾燥膜厚として、通常、1〜3μm、好ましくは1〜2μm、乾燥重量として、通常、13〜30mg/dm2 、好ましくは16〜28mg/dm2 の範囲とする。尚、その際の乾燥温度としては、例えば、60〜170℃程度、好ましくは70〜150℃程度、乾燥時間としては、例えば、5秒〜10分間程度、好ましくは10秒〜5分間程度が採られる。
【0037】
本発明の感光性平版印刷版の刷版方法は、前記支持体表面に前記ポジ型感光性組成物の層が形成された感光性平版印刷版の該感光性組成物層を画像露光した後、設定濃度(Ad )のアルカリ成分と設定濃度(Sd )の界面活性剤成分とを含有する現像液によって現像処理することからなる。
【0038】
ここで、感光性組成物層を画像露光する光源としては、カーボンアーク、水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプや、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等のレーザー光源が挙げられるが、特に、波長域650〜1,300nmの範囲のレーザー光を発生する光源が好ましく、特に、小型で長寿命な半導体レーザーやYAGレーザー等の固体レーザーが好ましい。
【0039】
尚、レーザー光源は、通常、レンズにより集光された高強度の光線(ビーム)として感光性組成物層表面を走査するが、それに感応する本発明での感光性組成物層の感度特性(mJ/cm2 )は受光するレーザービームの光強度(mJ/s・cm2 )に依存することがある。ここで、レーザービームの光強度は、光パワーメーターにより測定したレーザービームの単位時間当たりのエネルギー量(mJ/s)を感光性組成物層表面におけるレーザービームのスポット面積(cm2 )で除することにより求めることができる。
【0040】
本発明において、光源の光強度としては、2.0×106 mJ/s・cm2 以上とすることが好ましく、1.0×107 mJ/s・cm2 以上とすることが特に好ましい。光強度が前記範囲であれば、本発明での感光性組成物層の感度特性を向上させ得、走査露光時間を短くすることができるので実用的に大きな利点となる。
【0041】
又、本発明において、レーザー光源により画像露光する場合、外面ドラム走査露光、内面ドラム走査露光、平面走査露光等の各露光方式を用いることができる。
【0042】
感光性組成物層を画像露光した後、現像処理に用いる現像液としては、露光部と非露光部との溶解性等の差で現像し得るアルカリ成分を含有する現像液であればよいが、親水性の面から、アルカリ成分としてアルカリ金属の水酸化物とアルカリ金属の珪酸塩とを含有する水溶液であるのが好ましく、そのアルカリ金属の珪酸塩が、二酸化珪素としての含有量で0.5〜10重量%であり、且つ、アルカリ金属のモル濃度(〔M〕)に対する二酸化珪素のモル濃度(〔SiO2 〕)の比(〔SiO2 〕/〔M〕)が0.1〜2.0であるのが好ましく、二酸化珪素としての含有量で1〜8重量%であり、且つ、アルカリ金属のモル濃度に対する二酸化珪素のモル濃度の比が0.8〜2.0であるのが更に好ましい。又、非画像部の抜け性等の面から、そのpHは12.0〜14.0であるのが好ましく、12.8〜13.8であるのが更に好ましい。
【0043】
ここで、アルカリ成分としてのアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、又、アルカリ金属の珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等が挙げられる。
【0044】
又、本発明における現像液は、現像条件の幅を安定して広げ得る等の点から、ノニオン性、アニオン性、或いは両性界面活性剤等の界面活性剤成分を含有するものであり、その含有量としては、0.001〜1重量%であるのが好ましく、0.005〜0.5重量%であるのが更に好ましい。
【0045】
ここで、ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等のポリエチレングリコール類、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールベヘニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールデシルテトラデシルエーテル等のポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類、及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、モノラウリン酸ソルビット、テトラステアリン酸ソルビット、ヘキサステアリン酸ソルビット、テトラオレイン酸ソルビット等のソルビット脂肪酸エステル類、及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ヒマシ油のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
【0046】
又、アニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等アルキル硫酸エステル塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
【0047】
又、両性界面活性剤としては、N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ステアリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ラウリル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ラウリル−N,N,N−トリス(カルボキシメチル)アンモニウム等のベタイン型化合物類、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム塩類、イミダゾリン−N−ナトリウムエチルスルホネート、イミダゾリン−N−ナトリウムエチルスルフェート等のイミダゾリン類等を挙げることができる。
【0048】
以上の界面活性剤の中で、本発明においては、ノニオン性界面活性剤としての前記各種のポリエチレングリコール誘導体類、前記各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、アニオン性界面活性剤としてのアルキル燐酸エステル塩類、アルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、アルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、及び、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましく、ノニオン性界面活性剤とししての前記各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、アニオン性界面活性剤としてのアルキル燐酸エステル塩類、アルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類が特に好ましい。
【0049】
尚、本発明における現像液には、前記アルカリ成分、前記界面活性剤成分の外に、必要に応じて、更に、硬水軟化剤、pH調整剤、消泡剤等の添加剤を、好ましくは0.001〜5重量%、更に好ましくは0.005〜3重量%の濃度で含有させることができる。
【0050】
そして、本発明の感光性平版印刷版の刷版方法は、設定濃度(Ad )の前記アルカリ成分と設定濃度(Sd )の前記界面活性剤成分とを含有する現像液によって現像処理するにおいて、現像液の処理疲労に対する補充用として、設定濃度(Ad )より高濃度のアルカリ成分を含有し、且つ、設定濃度(S0 )と同濃度以上の界面活性剤成分を含有する現像補充液(1)と、現像液の空気疲労に対する補充用として、設定濃度(Ad )より高濃度のアルカリ成分を含有し界面活性剤成分を実質的に含有しない現像補充液(2)とをそれぞれ用いて、現像液を補充しながら現像処理することを必須とする。
【0051】
本発明において、現像補充液(1)は、現像処理後の現像液中の有効なアルカリ成分濃度及び界面活性剤成分濃度を経時的に測定するとか、或いは、現像処理面積と現像液中の有効なアルカリ成分濃度及び界面活性剤成分濃度との関係を予め把握しておくとかの方法により、現像処理中或いは現像処理後の現像液中の有効なアルカリ成分濃度及び界面活性剤成分濃度に応じて現像液の処理疲労に対して補充するものであり、又、現像補充液(2)は、現像液仕込み後、現像処理しない状態での経過時間と現像液中の有効なアルカリ成分濃度との関係を予め把握しておく等の方法により、現像処理の実施有無とは無関係に、経過時間後の現像液中の有効なアルカリ成分濃度に応じて現像液の空気疲労に対して補充するものである。
【0052】
ここで、現像補充液(1)におけるアルカリ成分濃度[Ar1(重量%)]を、現像液のアルカリ成分の設定濃度[Ad (重量%)]に対して下記式(I) を満足する濃度とするのが好ましく、下記式(II)を満足する濃度とするのが更に好ましく、下記式(III) を満足する濃度とするのが特に好ましい。
【0053】
1.01Ad ≦Ar1≦5Ad (I)
1.01Ad ≦Ar1≦4Ad (II)
1.02Ad ≦Ar1≦3Ad (III)
【0054】
又、現像補充液(1)における界面活性剤成分濃度[Sr1(重量%)]を、現像液の界面活性剤成分の設定濃度[Sd (重量%)]に対して下記式(IV)を満足する濃度とするのが好ましく、下記式(V) を満足する濃度とするのが更に好ましく、下記式(VI)を満足する濃度とするのが特に好ましい。
【0055】
Sd ≦Sr1≦Sd +10 (IV)
Sd +0.005≦Sr1≦Sd +5 (V)
Sd +0.01≦Sr1≦Sd +3 (VI)
【0056】
又、現像補充液(2)におけるアルカリ成分濃度[Ar2(重量%)]を、現像液のアルカリ成分の設定濃度[Ad (重量%)]に対して下記式(VII) を満足する濃度とするのが好ましく、下記式(VIII)を満足する濃度とするのが更に好ましく、下記式(IX)を満足する濃度とするのが特に好ましい。
【0057】
1.01Ad ≦Ar2≦5Ad (VII)
1.01Ad ≦Ar2≦4Ad (VIII)
1.02Ad ≦Ar2≦3Ad (IX)
【0058】
又、現像補充液(2)は、界面活性剤成分を含有しないのが好ましいが、現像液中の界面活性剤成分の好ましい含有量の下限値0.001重量%未満の量で含有していることを許容するものであり、現像補充液(2)における前記「界面活性剤成分を実質的に含有しない」とは、このことを意味する。
【0059】
尚、本発明において、前記現像補充液の補充による現像処理後のポジ画像に耐薬品性、耐刷性等を付与することを目的として、例えば、150〜300℃程度の温度で後加熱処理を施すこともできる。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例に用いたポジ型感光性平版印刷版、その画像露光方法、並びに、その現像処理方法、それに用いた現像液及び現像補充液は以下の通りのものである。
【0061】
ポジ型感光性平版印刷版
アルミニウム板(厚さ0.24mm)を、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理を行った後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中で、温度28℃、電流密度60A/dm2 、処理時間40秒の条件で電解エッチング処理を行った。次いで水洗後、4重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、12秒間のデスマット処理を施し、水洗後、20重量%硫酸溶液中で、温度20℃、電流密度3.5A/dm2 、処理時間1分の条件で陽極酸化処理を行った。更に、80℃の熱水で20秒間熱水封孔処理を行い、水洗、乾燥して平版印刷版支持体用のアルミニウム板を作製した。表面粗度計(小坂研究所社製「SE−3DH」)によるこの板表面の平均粗さRaは0.6μmであった。
【0062】
得られたアルミニウム板支持体表面に、光熱変換物質として、下記構造(a)のインドール系色素6重量部、アルカリ可溶性樹脂として、フェノール/m−クレゾール/p−クレゾールの混合割合がモル比で50:30/20の混合フェノール類とホルムアルデヒドとの重縮合体からなるノボラック樹脂(MW 9,000)100重量部、溶解抑止剤として、ラクトン骨格を有する下記構造(b)の酸発色性色素10重量部、及び、ノボラック樹脂と5−ヒドロキシ−6−ジアセチルメチリデンヒドラジノ−ナフタレンスルホン酸とのエステル縮合物10重量部、並びに、テトラオレイン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物(日光ケミカルズ社製「GO−4」)4重量部、架橋剤として、メトキシメチル化メラミン(三井サイテック社製「サイメルC−300」)1重量部、及び、塗布性改良剤として、フッ素系界面活性剤(旭硝子社製「サーフロンS−381」)0.0025重量部を、メチルセロソルブ720重量部、エチルセロソルブ180重量部に加え、室温で10分間攪拌して調液した塗布液を、ワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で3分間乾燥させた後、60℃で24時間加熱処理することにより、乾燥膜厚が2.1g/m2 のポジ型感光性組成物の層を有するポジ型感光性平版印刷版を作製した。
【0063】
【化1】
【0064】
画像露光方法
前記で得られたポジ型感光性平版印刷版を、波長830nmの半導体レーザーを光源とするプレートセッター(クレオサイテックス社製、「Lotem 800V」)を用いて、ドラム回転数800rpm、レーザーインテンシティを60、70、84、100、120、140、170、200、及び250mWと段階的に振って100%露光したものと、ドラム回転数800rpm、レーザーインテンシティ250mW、解像度2540dpi、スクリーン線数1751piでサイテックスデジタルターゲットを露光したものを作製した。
【0065】
現像処理方法
前記露光後、自動現像機(三菱化学社製「MT−1350X」)を用い、その現像槽に下記の現像液約60リットルを仕込み、31℃の温度に設定し、下記の現像補充液を補充しながら現像処理を施した。
【0066】
現像液及び現像補充液
次表1の組成の現像液及び現像補充液を調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
尚、表1において、「NIKKOL DLP10」は、日光ケミカルズ社製アニオン性界面活性剤のポリオキシエチレンラウリルエーテル燐酸ナトリウム、「パイオニンA15」は、竹本油脂社製アニオン性界面活性剤のオレイン酸高度硫酸化油、「アモーゲンK」は、第一工業製薬社製両性界面活性剤のベタイン型化合物、「NIKKOL NP15」は、日光ケミカルズ社製ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである。又、珪酸カリウムは、日本化学工業社製のA珪酸カリウム(SiO2 相当26.5重量%、K2 O相当13.5重量%)であり、アルカリ成分濃度とは、そのSiO2 と水酸化カリウム(KOH)の重量として算出したものである。
【0069】
実施例1
前記現像液を仕込んだ後、次表2に示す日程で、現像補充液(1)及び(2)を補充し、前記画像露光後の平版印刷版を現像処理し、現像性を、アンダー、正常、オーバーの3段階で評価し、更に、得られた画像の50部の網点面積率をccDot(エス・ディ・ジー社製)で測定し、結果を表2に示した。尚、表2中の「空気疲労に対する補充」における「停止疲労」は自動現像機停止時における現像液の空気疲労」を、「稼働疲労」は自動現像機稼働時における空気疲労」を、それぞれ意味する。
【0070】
【表2】
【0071】
比較例1
前記現像液を仕込んだ後、次表3に示す日程で現像補充液として(1)のみを用いた外は、実施例1と同様にして、現像処理し、現像性を評価し、得られた画像の50%部の網点面積率を測定し、結果を表3に示した。
【0072】
【表3】
【0073】
実施例2
前記現像液を仕込んだ後、次表4に示す日程とした外は、実施例1と同様にして、現像処理し、現像性を評価し、得られた画像の50%部の網点面積率を測定し、結果を表4に示した。
【0074】
【表4】
【0075】
比較例2
前記現像液を仕込んだ後、次表5に示す日程で現像補充液として(3)のみを用いた外は、実施例1と同様にして、現像処理し、現像性を評価し、得られた画像の50%部の網点面積率を測定し、結果を表5に示した。
【0076】
【表5】
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版を、画像露光した後、アルカリ成分と界面活性剤成分とを含有する現像液によって現像処理し刷版するにおいて、現像液の処理疲労と空気疲労のそれぞれに適切に対応した現像液の補充をなすことにより、結果として、安定した現像処理を長期間にわたって実施できる、感光性平版印刷版の刷版方法を提供することができる。
Claims (6)
- 支持体表面に、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を有する感光性平版印刷版を、画像露光した後、設定濃度(Ad )のアルカリ成分と設定濃度(Sd )の界面活性剤成分とを含有する現像液によって現像処理し刷版するにおいて、現像液の処理疲労に対する補充用として、設定濃度(Ad )より高濃度のアルカリ成分を含有し、且つ、設定濃度(Sd )と同濃度以上の界面活性剤成分を含有する現像補充液(1)と、現像液の空気疲労に対する補充用として、設定濃度(Ad )より高濃度のアルカリ成分を含有し界面活性剤成分を実質的に含有しない現像補充液(2)とをそれぞれ用いて、現像液を補充しながら現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版の刷版方法。
- 現像補充液(1)におけるアルカリ成分濃度[Ar1(重量%)]を、現像液のアルカリ成分の設定濃度[Ad (重量%)]に対して下記式を満足する濃度とする請求項1に記載の感光性平版印刷版の刷版方法。
1.01Ad ≦Ar1≦5Ad - 現像補充液(1)における界面活性剤成分濃度[Sr1(重量%)]を、現像液の界面活性剤成分の設定濃度[Sd (重量%)]に対して下記式を満足する濃度とする請求項1又は2に記載の感光性平版印刷版の刷版方法。
Sd ≦Sr1≦S0 +10 - 現像補充液(2)におけるアルカリ成分濃度[Ar2(重量%)]を、現像液のアルカリ成分の設定濃度[A0 (重量%)]に対して下記式を満足する濃度とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感光性平版印刷版の刷版方法。
1.01Ad ≦Ar2≦5Ad - 光熱変換物質が赤外吸収色素を含み、アルカリ可溶性樹脂がノボラック樹脂を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性平版印刷版の刷版方法。
- 画像露光を、波長域650〜1,300nmの範囲のレーザー光により行う請求項1乃至5のいずれかに記載の感光性平版印刷版の刷版方法。
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