JP3863415B2 - 感光性平版印刷版の刷版製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版を自動現像機を用いて現像処理する刷版製造方法に関し、特に、レーザー光により直接画像を形成し刷版を製造するに好適なポジ型感光性平版印刷版の刷版製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光により直接画像を形成するCTP(Computer to Plate)システムが注目されている。特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザー等を用いるCTPシステムは、製版工程の短縮化、作業時の環境光、及び製版コスト等の面から、その実用化が急速に進みつつある。
【0003】
これに伴い、CTPシステム用の平版印刷版として、近年、赤外レーザー光を用い、主として化学変化以外の変化により露光部の現像液に対する溶解性を増大させることによってポジ画像を形成する感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版が提案されている(例えば、特開平10−268512号、特開平11−84657号、特開平11−174681号、特開平11−194504号、特開平11−223936号等各公報、WO97/39894号、WO98/42507号等各明細書等参照。)。
【0004】
これらのポジ型感光性平版印刷版は、従来のポジ型感光性平版印刷版が、典型的にはo−キノンジアジド化合物の光分解という化学的変化により露光部の現像液に対する溶解性を増大させることによってポジ画像を形成していたのに対して、赤外吸収色素等の赤外光を吸収して熱に変換する物質とノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂とを主な感光性成分とし、赤外レーザー光の露光で発生する熱による樹脂の構造転移等の物理的変化により露光部の現像液に対する溶解性を増大させるものであり、o−キノンジアジド化合物のような白色光に感光する物質を含有させる必要がないことから、感光性平版印刷版を白色灯下でも取り扱えるという利点を有する一方、概して現像ラチチュード(現像時に露光部が完全に除去されるまでの時間と、非露光部の残膜率が充分に確保される時間との差)が狭く、又、そのためもあって、現像液の組成変化や温度変化等の現像状態の変動にも敏感であるという現像上の弱点も有しているものであった。
【0005】
これに対して、これらのポジ型感光性平版印刷版において、露光部と非露光部とのコントラストを向上させること等を目的として、現像液に界面活性剤を添加する方法(例えば、特開平11−327163号公報等参照。)が有効であることが知られている。
【0006】
一方、これらのポジ型感光性平版印刷版においては、画像露光した後、通常、自動現像機を用いてアルカリ現像液を入れた現像槽に連続的に導入し、現像液に浸漬することにより連続的に現像処理し刷版されるが、その際、現像処理時間の経過に伴って露光部からの溶解物の蓄積等により現像液中のアルカリ成分や界面活性剤成分が劣化する(この劣化を「処理疲労」と言う。)ことが知られ、更に、この現像処理による処理疲労とは独立に経時により、空気中の二酸化炭素が現像液中に溶け込んで現像液中のアルカリ成分が劣化する(この劣化を「経時疲労」と言う。)ことが知られており、これらの処理疲労及び経時疲労により有効成分の濃度が低下し、安定した現像が行えなくなるという傾向がある。
【0007】
そして、これらの処理疲労及び経時疲労に対して、従来より、アルカリ成分や界面活性剤成分を含有する現像補充液を補充する方法が採られており、例えば、特開平9−319096号公報には、界面活性剤濃度を現像液の1.1〜5倍とした現像補充液を補充する方法が、又、例えば、特開平10−123720号公報には、液晶用基板や半導体基板の感光性樹脂の現像において、濃厚アルカリ水溶液を連続的又は断続的に補充すると共に、現像液の一部を、アルカリ濃度が現像液のアルカリ濃度以下であり、界面活性剤濃度が現像液と等濃度の界面活性剤水溶液と連続的又は断続的に液交換する方法が開示されているが、従来のこれらの現像液補充方法においては、必ずしも安定した現像処理が実施できている訳ではなかった。
【0008】
即ち、現像液中のアルカリ成分や界面活性剤成分の不足等に伴う現像補充液の補充等においては、現像液の変動を適確に把握、評価し、その結果に基づき補充時期や補充量等を決定し現像条件を調整することが重要であり、そのために、例えば、現像液の変動を現像液の導電率で管理する方法等が知られているが、これら従来の方法は、様々な現像雰囲気の変化や使用状況等を基に適切な電導率を予測計算する必要があり、現像液の変動を適確に把握することは容易ではなかった。
【0009】
一方、特開2001−117215号公報には、汎用のポジ型感光性平版印刷版をグレースケール露光したものを用いる方法が開示されているが、デジタル環境下で汎用のポジ型感光性平版印刷を準備する必要がある等の煩雑さがあり、又、段階的に版面エネルギーを変えて複数の条件で露光を行ったCTP版を評価版に用いる方法等も知られているが、これらの方法は、グレースケールの作製において露光量を変化させる必要があることから露光に時間を要するという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版に、目的の画像を画像露光した後、自動現像機を用いてアルカリ現像液によって現像処理するにおいて、現像環境の変動を適確に把握することができると共に、その調整の必要性を早期且つ簡便に検知することができ、よって、長期にわたって安定した現像処理を実施することができる、感光性平版印刷版の刷版製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体表面に画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を有する感光性平版印刷版に、レーザー光により所定のスクリーン線数で目的の画像を画像露光した後、自動現像機を用いてアルカリ現像液によって現像処理する感光性平版印刷版の刷版製造方法において、前記感光性平版印刷版の余白部或いは独立の版に、前記目的の画像の画像露光でのスクリーン線数以上で画像濃度を段階的に変化させた複数の画像からなる評価用画像群(A)と、該評価用画像群(A)におけるスクリーン線数の周期の21/2 倍以上の周期の画線による評価用画像(B)とをレーザー光による画像露光によって形成し目的の画像と共に現像処理して、現像処理後の評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度を対比して評価用画像(B)の評価用画像群(A)における相当濃度を基準濃度として検知し、しかる後の現像環境の変動による同対比結果における評価用画像(B)の該基準濃度からの変化に応じて、現像環境の変動を調整しつつ目的の画像を現像処理する感光性平版印刷版の刷版製造方法、を要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性平版印刷版の刷版製造方法において、感光性平版印刷版のポジ型感光性組成物層を構成するポジ型感光性組成物に含有される光熱変換物質としては、画像露光光源のレーザー光を吸収して熱に変換し得る化合物であれば特に限定されないが、波長域650〜1,300nmの範囲の一部又は全部に吸収帯を有する光吸収色素が特に有効である。これらの光吸収色素は、前記波長域の光を効率よく吸収する一方、紫外線領域の光は殆ど吸収しないか、吸収しても実質的に感応せず、白色灯に含まれるような弱い紫外線によっては感光性組成物を変成させる作用のない化合物である。
【0013】
本発明におけるこれらの光吸収色素としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等の複素原子がポリメチン(−CH=)n 鎖で結合された構造のものであり、代表的には、その複素原子が複素環を形成し、ポリメチン鎖を介して複素環が結合された構造の所謂、広義のシアニン系色素、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、狭義のシアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、オキサゾール系(所謂、オキサシアニン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等、及び、ポリメチン鎖を介して非環式複素原子が結合された構造の所謂、ポリメチン系色素等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、ピリリウム系、チアピリリウム系等のシアニン系色素、及びポリメチン系色素が好ましい。
【0014】
又、その他に、アミニウム系色素、イミニウム系色素、ジイミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素等も代表的なものとして挙げられ、中で、アミニウム系色素、イミニウム系色素が好ましい。
【0015】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記光熱変換物質の含有割合は、1〜70重量%であるのが好ましく、2〜60重量%であるのが更に好ましく、3〜50重量%であるのが特に好ましい。
【0016】
又、本発明の感光性平版印刷版の刷版製造方法において、感光性平版印刷版のポジ型感光性組成物層を構成するポジ型感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体等が挙げられ、中で、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、又はポリビニルフェノール樹脂が好ましく、特に、ノボラック樹脂が好ましい。
【0017】
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール等のフェノール類の少なくとも1種を、酸触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(尚、ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい。)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂であって、中で、本発明においては、フェノール類としてのフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0018】
特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましく、又、後述する如く本発明における感光性組成物は溶解抑止剤を含有していてもよく、その場合、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0019】
前記ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(MW )が、1,000〜15,000のものが好ましく、1,500〜10,000のものが更に好ましい。
【0020】
又、レゾール樹脂は、ノボラック樹脂の重縮合における酸触媒に代えてアルカリ触媒を用いる以外は同様にして重縮合させた樹脂であって、本発明においては、前記ノボラック樹脂におけると同様の、フェノール類及びその混合組成、及び、アルデヒド類又はケトン類が好ましく、又、同様の重量平均分子量(MW )のものが好ましい。
【0021】
又、ポリビニルフェノール樹脂は、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレン等のヒドロキシスチレン類(尚、これらは、ベンゼン環に塩素、臭素、沃素、弗素等のハロゲン原子、或いは炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよい。)の単独又は2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂であって、中で、本発明においては、ベンゼン環に炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよいヒドロキシスチレン類の重合体が好ましく、特に、無置換のベンゼン環のヒドロキシスチレン類の重合体が好ましい。又、重量平均分子量(MW )が、1,000〜100,000のものが好ましく、1,500〜50,000のものが更に好ましい。
【0022】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、50〜99重量%であるのが好ましく、60〜98重量%であるのが更に好ましく、70〜97重量%であるのが特に好ましい。
【0023】
又、本発明において、前記光熱変換物質と前記アルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物には、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の差を増大させる目的で、赤外領域の光で分解されない溶解抑止剤が含有されていてもよい。
【0024】
その溶解抑止剤としては、例えば、特開平10−268512号及び特開平11−288089号各公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル類、燐酸エステル類、芳香族カルボン酸エステル類、芳香族ジスルホン類、カルボン酸無水物類、芳香族ケトン類、芳香族アルデヒド類、芳香族アミン類、芳香族エーテル類等、特開平11−190903号公報に詳細に記載されている、ラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有する酸発色性色素、特開平11−143076号公報に詳細に記載されている、ラクトン骨格、チオラクトン骨格、スルホラクトン骨格を有する塩基発色性色素等を挙げることができる。
【0025】
更に、溶解抑止剤として、例えば、ポリエチレングリコール類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー類、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコールアルキルアミン類、ポリエチレングリコールアルキルアミノエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ソルビット脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ペンタエリスリット脂肪酸エステル及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0026】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記溶解抑止剤の含有割合は、50重量%以下であるのが好ましく、0.01〜30重量%であるのが更に好ましく、0.1〜20重量%であるのが特に好ましい。
【0027】
又、本発明において、前記光熱変換物質と前記アルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物には、アンダー現像性の付与等、現像性の改良を目的として、好ましくはpKaが2以上の有機酸及びその有機酸の無水物が含有されていてもよい。
【0028】
その有機酸及びその無水物としては、例えば、特開昭60−88942号、特開昭63−276048号、特開平2−96754号各公報等に記載されたものが用いられ、具体的には、グリセリン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、プロピルマロン酸、コハク酸、リンゴ酸、メソ酒石酸、グルタル酸、β−メチルグルタル酸、β,β−ジメチルグルタル酸、β−エチルグルタル酸、β,β−ジエチルグルタル酸、β−プロピルグルタル酸、β,β−メチルプロピルグルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和カルボン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,1−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素環式飽和カルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ安息香酸、p−トルイル酸、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、2−ヒドロキシ−m−トルイル酸、2−ヒドロキシ−o−トルイル酸、マンデル酸、没食子酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の炭素環式不飽和カルボン酸、及び、メルドラム酸、アスコルビン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水フタル酸等の無水物を挙げることができる。
【0029】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記有機酸及びその無水物の含有割合は、30重量%以下であるのが好ましく、0.01〜20重量%であるのが更に好ましく、0.1〜10重量%であるのが特に好ましい。
【0030】
又、本発明において、前記光熱変換物質と前記アルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物には、露光及び現像後の後加熱により前記アルカリ可溶性樹脂を架橋させてポジ画像に耐薬品性、耐刷性等を付与することを目的として、前記アルカリ可溶性樹脂を架橋させる作用を有する架橋剤が含有されていてもよい。
【0031】
その架橋剤としては、代表的には、官能基としてメチロール基、それをアルコール縮合変性したアルコキシメチル基、その他、アセトキシメチル基等を少なくとも2個有するアミノ化合物が挙げられ、具体的には、メラミン誘導体、例えば、メトキシメチル化メラミン〔三井サイテック社製、サイメル300シリーズ(1)等〕、ベンゾグアナミン誘導体〔メチル/エチル混合アルコキシ化ベンゾグアナミン樹脂(三井サイテック社製、サイメル1100シリーズ(2)等〕、グリコールウリル誘導体〔テトラメチロールグリコールウリル樹脂(三井サイテック社製、サイメル1100シリーズ(3)等〕や、尿素樹脂誘導体、レゾール樹脂等が挙げられる。
【0032】
これらの中で、複素環構造、特に含窒素複素環構造を有するメラミン誘導体が好ましく、得られる平版印刷版の保存性やインキ着肉性等の面から、メラミン誘導体中のメチロール基とアルコキシメチル基の合計数に対するアルコキシメチル基数の割合が70%以上、特には90%以上であるメラミン誘導体が好ましい。かかるメラミン誘導体は、メラミン誘導体に特定量のホルムアルデヒド及びアルコールを酸性条件下で反応させる公知の方法により得ることができる。
【0033】
本発明において、ポジ型感光性組成物における前記架橋剤の含有割合は、20重量%以下であるのが好ましく、10重量%以下であるのが更に好ましく、5重量%以下であるのが特に好ましい。
【0034】
更に、本発明において、ポジ型感光性組成物には、前記成分以外に、例えば、染料、顔料、塗布性改良剤、密着性改良剤、感度改良剤、感脂化剤、現像性改良剤等の感光性組成物に通常用いられる各種の添加剤が、20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で含有されていてもよい。
【0035】
本発明におけるポジ型感光性組成物は、通常、前記各成分を適当な溶剤に溶解或いは分散させた塗布液として支持体表面に塗布した後、加熱、乾燥させることにより、支持体表面にポジ型感光性組成物の層として形成され、感光性平版印刷版とされる。
【0036】
ここで、その支持体としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、紙、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等が挙げられる。中で、好ましいのはアルミニウム板であり、塩酸又は硝酸溶液中での電解エッチング又はブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶液中での陽極酸化処理、及び必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されたアルミニウム板がより好ましい。又、支持体表面の粗さとしては、JIS B0601に規定される平均粗さRaで、通常0.3〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.8μm程度である。
【0037】
又、その溶剤としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶剤、或いはこれらの混合溶剤、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。溶剤の使用割合は、感光性組成物の総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0038】
又、その塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布量は、乾燥膜厚として、通常、1〜3μm、好ましくは1〜2μm、乾燥重量として、通常、13〜30mg/dm2 、好ましくは16〜28mg/dm2 の範囲とする。尚、その際の乾燥温度としては、例えば、60〜170℃程度、好ましくは70〜150℃程度、乾燥時間としては、例えば、5秒〜10分間程度、好ましくは10秒〜5分間程度が採られる。
【0039】
本発明の感光性平版印刷版の刷版製造方法は、前記支持体表面に前記ポジ型感光性組成物の層が形成された感光性平版印刷版の該感光性組成物層に、レーザー光により所定のスクリーン線数で目的の画像を画像露光した後、自動現像機を用いてアルカリ現像液によって現像処理することからなる。
【0040】
ここで、感光性組成物層に画像を画像露光するレーザー光源としては、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等が挙げられるが、特に、波長域650〜1,300nmの範囲のレーザー光を発生する光源が好ましく、特に、小型で長寿命な半導体レーザーやYAGレーザー等の固体レーザーが好ましい。
【0041】
尚、レーザー光源は、通常、レンズにより集光された高強度の光線(ビーム)として感光性組成物層表面を走査するが、それに感応する本発明での感光性組成物層の感度特性(mJ/cm2 )は受光するレーザービームの光強度(mJ/s・cm2 )に依存することがある。ここで、レーザービームの光強度は、光パワーメーターにより測定したレーザービームの単位時間当たりのエネルギー量(mJ/s)を感光性組成物層表面におけるレーザービームのスポット面積(cm2 )で除することにより求めることができる。
【0042】
本発明において、光源の光強度としては、2.0×106 mJ/s・cm2 以上とすることが好ましく、1.0×107 mJ/s・cm2 以上とすることが特に好ましい。光強度が前記範囲であれば、本発明での感光性組成物層の感度特性を向上させ得、走査露光時間を短くすることができるので実用的に大きな利点となる。
【0043】
又、本発明において、レーザー光源による画像露光は、通常、1,200dpi以上、好ましくは2,400〜4,000dpiの解像度で、通常、130線以上、好ましくは150〜400線で形成された網点によりなされ、その露光方式としては、外面ドラム走査露光、内面ドラム走査露光、平面走査露光等の各露光方式を用いることができる。又、露光量は、通常、1mJ/cm2 以上、好ましくは5〜150mJ/cm2 の範囲とする。
【0044】
感光性組成物層に画像を画像露光した後、現像処理するに用いる現像液としては、露光部と非露光部との溶解性等の差で現像し得るアルカリ成分を含有するアルカリ現像液であればよいが、親水性の面から、アルカリ成分としてアルカリ金属の水酸化物とアルカリ金属の珪酸塩とを含有する水溶液であるのが好ましく、そのアルカリ金属の珪酸塩が、二酸化珪素としての含有量で0.5〜10重量%であり、且つ、アルカリ金属のモル濃度(〔M〕)に対する二酸化珪素のモル濃度(〔SiO2 〕)の比(〔SiO2 〕/〔M〕)が0.1〜2.0であるのが好ましく、二酸化珪素としての含有量で1〜8重量%であり、且つ、アルカリ金属のモル濃度に対する二酸化珪素のモル濃度の比が0.8〜2.0であるのが更に好ましい。又、非画像部の抜け性等の面から、そのpHは12.0〜14.0であるのが好ましく、12.8〜13.8であるのが更に好ましい。
【0045】
ここで、アルカリ成分としてのアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等が挙げられ、又、アルカリ金属の珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、及び珪酸リチウム等が挙げられる。
【0046】
又、本発明におけるアルカリ現像液は、現像条件の幅を安定して広げ得る等の点から、ノニオン性、アニオン性、或いは両性界面活性剤等の界面活性剤成分を含有するものであり、その含有量としては、0.001〜1重量%であるのが好ましく、0.005〜0.5重量%であるのが更に好ましい。
【0047】
ここで、ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等のポリエチレングリコール類、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールベヘニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールデシルテトラデシルエーテル等のポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類、及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、モノラウリン酸ソルビット、テトラステアリン酸ソルビット、ヘキサステアリン酸ソルビット、テトラオレイン酸ソルビット等のソルビット脂肪酸エステル類、及びそのポリエチレンオキサイド付加物類、ヒマシ油のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
【0048】
又、アニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等アルキル硫酸エステル塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
【0049】
又、両性界面活性剤としては、N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ステアリル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ラウリル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルアンモニウム、N−ラウリル−N,N,N−トリス(カルボキシメチル)アンモニウム等のベタイン型化合物類、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム塩類、イミダゾリン−N−ナトリウムエチルスルホネート、イミダゾリン−N−ナトリウムエチルスルフェート等のイミダゾリン類等を挙げることができる。
【0050】
以上の界面活性剤の中で、本発明においては、ノニオン性界面活性剤としての前記各種のポリエチレングリコール誘導体類、前記各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、アニオン性界面活性剤としてのアルキル燐酸エステル塩類、アルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、アルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、及び、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましく、ノニオン性界面活性剤とししての前記各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、アニオン性界面活性剤としてのアルキル燐酸エステル塩類、アルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類が特に好ましい。
【0051】
尚、本発明におけるアルカリ現像液には、前記アルカリ成分、前記界面活性剤成分の外に、必要に応じて、更に、硬水軟化剤、pH調整剤、消泡剤等の添加剤を、好ましくは0.001〜5重量%、更に好ましくは0.005〜3重量%の濃度で含有させることができる。
【0052】
そして、本発明の感光性平版印刷版の刷版製造方法は、前記感光性平版印刷版に、レーザー光により所定のスクリーン線数で目的の画像を画像露光した後、自動現像機を用いてアルカリ現像液によって現像処理するにおいて、前記感光性平版印刷版の余白部或いは独立の版に、前記目的の画像の画像露光でのスクリーン線数以上で画像濃度を段階的に変化させた複数の画像からなる評価用画像群(A)と、該評価用画像群(A)におけるスクリーン線数の周期の21/2 倍以上の周期の画線による評価用画像(B)とをレーザー光による画像露光によって形成し目的の画像と共に現像処理して、現像処理後の評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度を対比して評価用画像(B)の評価用画像群(A)における相当濃度を基準濃度として検知し、しかる後の現像環境の変動による同対比結果における評価用画像(B)の該基準濃度からの変化に応じて、現像環境の変動を調整しつつ目的の画像を現像処理することを必須とする。
【0053】
本発明においては、前記感光性平版印刷版の余白部或いは独立の版に、目的の画像の画像露光でのスクリーン線数以上で画像濃度を段階的に変化させた複数の画像からなる評価用画像群(A)と、該評価用画像群(A)におけるスクリーン線数の周期の21/2 倍以上の周期の画線による評価用画像(B)とをレーザー光による画像露光によって形成する。
【0054】
ここで、評価用画像群(A)は、目的の画像の画像露光でのスクリーン線数以上の、好ましくは目的の画像の画像露光でのスクリーン線数と同じ、スクリーン線数とした網点画像を、原画像としての画像濃度の設定値を、好ましくは5〜95%の範囲として、その範囲内で、好ましくは20%以内の刻みで、更に好ましくは10%以内の刻みで、特に中心濃度前後においては刻みを小さくして、複数の画像群として形成する。その際、例えば、スクリーン線数を175線とする場合、網点(ドット)の中心間距離は、25.4(mm)/175であり、この中心間距離でドットサイズを変化させることにより画像濃度を変化させる。尚、そのドット形状としては、例えば、スクエア、ラウンド、チェーン、ユークリディアン等が好適である。
【0055】
又、評価用画像(B)は、評価用画像群(A)におけるスクリーン線数の周期の21/2 倍以上の周期とした画線とする。例えば、評価用画像群(A)におけるスクリーン線数が175線の場合、周期は、175/25.4=6.89(mm-1)であり、その21/2 倍は9.74(mm-1)となるので、9.74(mm-1)以上の周期とする。評価用画像(B)の画線の周期としては、評価用画像群(A)のスクリーン線数の周期の2倍以上とするのが好ましい。評価用画像(B)の画線の周期を、評価用画像群(A)のスクリーン線数の周期の21/2 倍以上とすることにより、その現像後の画像は、評価用画像群(A)の画像よりも、現像環境の変動に敏感となってその変動による画像の変化が早期に顕れることから、現像環境の変動を早期に検知することができることとなる。
【0056】
その評価用画像(B)の画線としては、例えば、前記評価用画像群(A)におけると同様形状の網点の集合体の外、実線、点線等の直線若しくは曲線等の線の集合体、或いは、円、楕円、三角形、方形、菱形、台形等の他の図形の集合体等であってもよく、評価用画像群(A)のスクリーン線数の周期の21/2 倍以上の周期とする限り特に限定されるものではないが、例えば、線として図1(a)に示されるもの、他の図形として図1(b)に示されるもの等が例示できる。これらの例示の線及び他の図形は、図に示される集合体が所定の大きさまで広がりをもって集合体を形成したものでも、或いは、図に示される集合体を1単位としてその多数単位が集合体を形成したものであってもよい。
【0057】
尚、評価用画像(B)が前記線の集合体である場合の周期とは、各線幅の中央間の距離の逆数であり、前記他の図形の集合体である場合の周期とは、一つの図形と最短距離に位置するもう一つの図形との中心間距離の逆数である。
【0058】
又、評価用画像(B)における線及び他の図形は、スクリーン線数のグリッド間隔以下となるので、網点ではなくベタ又はクリアーであり、線や他の図形がベタの場合、背景がクリアーであり、線や他の図形がクリアーの場合、背景がベタである。
【0059】
又、本発明において、前記評価用画像群(A)及び評価用画像(B)における画像露光での露光エネルギーは、目的の画像の画像露光での露光エネルギーと同じとするのが好ましく、又、これらの評価用画像群(A)と評価用画像(B)は、目的の画像を形成する前記感光性平版印刷版の余白部に形成してもよく、或いは、独立の評価専用版に形成することとしてもよいが、いずれにおいても、両者間の画像濃度の対比を適確に行う面から、両者は少なくとも近接させて、好ましくは隣接させて形成する。
【0060】
本発明において、前記感光性平版印刷版の余白部或いは独立の版に形成した前記評価用画像群(A)と評価用画像(B)は、目的の画像と共に現像処理し、現像処理後の評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度を対比して評価用画像(B)の評価用画像群(A)における相当濃度を基準濃度として検知する。
【0061】
ここで、現像処理後の評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度の対比は、目視にて行うことも充分に可能であるが、反射濃度計により光学的反射濃度を測定することにより行うのが好ましく、その光学的反射濃度の測定のためには、前記評価用画像群(A)の各段階、及び評価用画像(B)は、好ましくは1mm2 以上、更に好ましくは5mm2 以上、の面積の中に、前記画像或いは画線を形成しているのが好ましい。
【0062】
本発明において、現像処理後の評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度を対比して評価用画像(B)の評価用画像群(A)における相当濃度を基準濃度として検知した後、引き続いて、現像処理後の評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度を対比して評価用画像(B)の該基準濃度からの変化を観察し、現像環境の変動による同対比結果における評価用画像(B)の該基準濃度からの変化が認められる場合、その変化濃度に応じて、現像環境の変動を調整する。
【0063】
尚、本発明において、現像環境の変動とは、画像に顕れる、例えば、現像液中のアルカリ成分や界面活性剤成分の不足或いは過剰、現像液温度の降下或いは上昇、現像時間の長短化等の現像条件の変動を言う。
【0064】
その現像環境の変動の調整は、通常の濃度の許容幅が±1.5%以内であることから、基準濃度からの濃度変化が±1.5%を越える場合には行うのが好ましく、例えば、現像補充液の補充、現像液の希釈、現像液温度の調節、現像時間の調節等の調整を行う。本発明においては、特に限定されるものではないが、評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度の対比結果において、評価用画像(B)の画像濃度が前記基準濃度から高濃度段階に変化しているときには、現像補充液を補充し、低濃度段階に変化しているときには、現像液を水により希釈することにより行うのが好ましい。その際の現像補充液の補充量、或いは現像液の希釈のための水量の決定は、濃度変化量に応じた必要量を予め把握、設定し、その値を自動現像機に記憶させておくことにより行うことができる。
【0065】
尚、本発明の感光性平版印刷版の刷版製造方法は、自動現像機を用いて行うものであるが、その自動現像機としては、現像液を加熱するためのヒーター及び温度調節装置等からなる温度調節機構、並びに、現像液を循環するためのポンプ及び液流路に設けられたフィルター等からなる液循環機構を備えた浸漬型の現像槽を有するものが好ましい。又、現像液の処理疲労及び経時疲労に対して現像補充液或いは水を補充するための自動補充機構を備えたものが好ましい。
【0066】
本発明における現像処理は、前述の如く画像露光した平版印刷版を自動現像機の現像槽に連続的或いは断続的に導入し、通常10〜60℃、好ましくは20〜40℃の範囲の温度に調節され、循環された前記現像液中に、通常5〜120秒、好ましくは10〜90秒の時間浸漬させることによりなされる。
【0067】
尚、本発明において、前記現像処理後のポジ画像に耐薬品性、耐刷性等を付与することを目的として、例えば、150〜300℃程度の温度、1〜10分程度の時間で後加熱処理を施すこともできる。
【0068】
本発明の刷版製造方法は、特に、レーザー光により直接画像を形成し刷版を製造するに好適であり、自動現像機の自動補充機構により現像液の前記処理疲労及び経時疲労に対する現像補充液を補充しつつ現像処理を行う上においても、自動補充機構ではカバーできない状態、或いは異常状態を早期に回復させることが可能となり、実用上の多大な効果をもたらすものである。
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1〜8、比較例1〜2
アルミニウムのウェブ(幅1030mm、長さ3000mm、厚さ0.24mm)を、連続的に、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間の滞留時間で脱脂処理を行った後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中で、温度28℃、電流密度60A/dm2 、滞留時間40秒の条件で電解エッチング処理を行った。次いで水洗後、4重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、滞留時間12秒間のデスマット処理を施し、水洗後、20重量%硫酸溶液中で、温度20℃、電流密度3.5A/dm2 、滞留時間1分の条件で陽極酸化処理を行った。更に、80℃の熱水で滞留時間20秒間で熱水封孔処理を行い、水洗、乾燥して平版印刷版支持体用のアルミニウムウェブを作製した。表面粗度計(小坂研究所社製「SE−3DH」)によるこの板表面の平均粗さRaは0.6μmであった。
【0071】
得られたアルミニウムウェブ表面に、光熱変換物質として、下記構造(a)のインドール系色素10重量部、アルカリ可溶性樹脂として、フェノール/m−クレゾール/p−クレゾール=20/50/30(モル比)の混合フェノールをホルムアルデヒドで重縮合したノボラック樹脂(MW 4,000)100重量部、溶解抑止剤として、ラクトン骨格を有する下記構造(b)の酸発色性色素10重量部、テトラオレイン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物(日光ケミカルズ社製「GO−4」)4重量部、有機酸として、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸6重量部、架橋剤として、メトキシメチル化メラミン(三井サイテック社製「サイメルC−300」)1重量部、及び、塗布性改良剤として、フッ素系界面活性剤(旭硝子社製「サーフロンS−381」)0.0025重量部とを、メチルセロソルブ735重量部、エチルセロソルブ184重量部に溶解した塗布液をロールコーターにより連続的に塗布し、90℃で滞留時間2分間で乾燥させた後、長さ800mm毎に裁断することにより、乾燥膜厚が2.0g/m2 のポジ型感光性組成物の層を有する、1,030mm×800mmの大きさのポジ型感光性平版印刷版を約6,000枚作製した。
【0072】
【化1】
【0073】
前記で得られたポジ型感光性平版印刷版に、波長830nmの半導体レーザーを光源とする外面ドラム式サーマルプレートセッター(大日本スクリーン製造社製「PTR−8000」)を用いて、スクリーン線数175線又は254線、解像度2400dpi、設定露光エネルギー85%、外面ドラム回転数1000rpmで、10段階(A1〜A10)の評価用画像群(A)と評価用画像(B)とを、作図ソフト(Adbe社製「Illustrater ver8」)を用いて図2の配置にデザインし、評価用画像群(A)におけるスクリーン線数、周期、及び各画像段階の濃度、並びに、評価用画像(B)における画線の種類(図1中のα、β、γ、φ、χ、ψ)、線幅或いは図形の一辺のサイズ、及び周期を、それぞれ表1に示す通りとし、更に、面付け用ソフト(三菱製紙社製「ファシリス」)を用いて、1,030mm×800mmの大きさの前記感光性平版印刷版にA4サイズの空白頁(クリアー)を8頁分と、その余白部に表1に示す実施例1〜8及び比較例1〜2を、図3に示すように面付けし、走査露光した。尚、この版の非画像部面積率は約61%である。
【0074】
【表1】
【0075】
次いで、容量42リットルの浸漬型の現像槽、水洗槽、ガム槽、及び乾燥炉からなり、各槽には循環ポンプによる液循環装置を備え、現像槽には加熱装置及び自動補充機構を備えた自動現像機(三菱化学社製「MD−1310II」)を用い、その現像槽に表2に示す組成の現像液約42リットルを仕込み、32℃の温度に設定し循環させつつ、表2に示す現像補充液を、処理疲労に対する補充として60ml/m2 、稼働時の経時疲労に対する補充として100ml/時、停止時の経時疲労に対する補充として100ml/時、更に、稼働時の水の蒸発を補填するために10ml/時、停止時の水の蒸発を補填するために5ml/時、の各量で自動補充機構により補充しながら浸漬し現像処理を施した。
【0076】
【表2】
【0077】
尚、表2において、「NIKKOL DLP10」は、日光ケミカルズ社製アニオン性界面活性剤のポリオキシエチレンラウリルエーテル燐酸ナトリウムの10重量%水溶液、「パイオニンA15」は、竹本油脂社製アニオン性界面活性剤のオレイン酸高度硫酸化油、「NIKKOL NP15」は、日光ケミカルズ社製ノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの10重量%溶液である。又、珪酸カリウムは、日本化学工業社製のA珪酸カリウム(SiO2 相当26.5重量%、K2 O相当13.5重量%)である。
【0078】
その際、現像時間を25秒を基準として±10秒増減させることにより強制的に現像液の変動を生じさせ、それに伴う各評価用画像群(A)と評価用画像(B)における画像濃度の対比を、反射濃度計(大日本スクリーン製造社製「DM620」)を用いて光学的反射濃度を測定することにより行い、その結果を表3に示した。尚、表3には、基準現像時間25秒のときの基準濃度を反射濃度の絶対値として示し、その±10秒の現像時間においてはそれとの差を示した。表3の結果から、各実施例においては、比較例におけるよりも、現像時間の変動による評価用画像(B)の画像濃度のフレ幅が大きく、画像濃度の変化が早期に顕れていることが分かる。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
又、前記現像処理結果から、各評価用画像群(A)と評価用画像(B)とを目視により対比することにより、評価用画像(B)の画像濃度が最も近似する評価用画像群(A)における画像濃度を読み取り、結果を表4に示した。この結果から、評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度の目視による対比は、前記表3における反射濃度計による対比結果とほぼ一致していることが明らかであり、又、比較例では、前記現像時間の変動による変化が小さく、その変動を早期に検知することができないことが分かる。
【0082】
【表5】
【0083】
更に、前記実施例1〜6について、現像時間を25秒として、1日当たり30枚の現像処理を5日間実施し、各現像日の開始時と終了時における画像濃度を、評価用画像群(A)と評価用画像(B)とを目視により対比することにより、評価用画像(B)の画像濃度が最も近似する評価用画像群(A)における画像濃度を読み取り、結果を表5に示した。この結果から、各実施例共、1日目の基準濃度からのフレが±1.5%以内に収まっていた。尚、その際、評価用画像群(A)における原画像の現像後の反射濃度を前記反射濃度計を用いて測定し、n=1.05としてユールニルセン式により濃度に換算した結果を併記したが、いずれの実施例においても、異常は認められなかった。
【0084】
【表6】
【0085】
次いで、前記の5日間の現像処理後、4日間稼働を停止し、その間の停止時の経時疲労に対する補充を止めることにより強制的に現像液の変動を生じさせた後、現像時間を25秒として現像処理したときの評価用画像(B)の濃度を表6の初期値の欄に示したが、いずれの実施例においても、基準濃度より高濃度段階に変化していると共に、版のクリアー部にはレーザーの主走査方向に細線(バンディング)が薄く無数に残っていた。引き続いて、現像補充液を6,000ml、更に2,000ml追加、更に2,000ml追加してマニュアルで補充し、現像時間を25秒として現像処理したときの評価用画像(B)の濃度を表6に示した。これらの補充により、クリアー部のバンディングは解消され、濃度も前記の5日目の状態に回復していることが分かる。
【0086】
【表7】
【0087】
次いで、停止時の経時疲労に対する補充を再開し、現像時間を25秒として、1日当たり30枚の現像処理を5日間実施してから、現像補充液10リットルをマニュアルで補充することにより強制的に現像液の変動を生じさせた後、現像時間を25秒として現像処理したときの評価用画像(B)の濃度を表7の初期値の欄に示したが、いずれの実施例においても、基準濃度より低濃度段階に変化していると共に、版のベタ部には若干のヤラレが生じていた。引き続いて、水1,000ml、更に1,000ml追加してマニュアルで補充し、現像時間を25秒として現像処理したときの評価用画像(B)の濃度を表7に示した。これらの補充により、ベタ部のヤラレは解消され、濃度も前記の5日目の状態に回復していることが分かる。又、その後、1日当たり30枚の現像処理を5日間実施したが、評価用画像(B)の濃度の変化は認められず安定して現像処理を行うことができた。
【0088】
【表8】
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を支持体表面に有する感光性平版印刷版に、目的の画像を画像露光した後、自動現像機を用いてアルカリ現像液によって現像処理するにおいて、現像環境の変動を適確に把握することができると共に、その調整の必要性を早期且つ簡便に検知することができ、よって、長期にわたって安定した現像処理を実施することができる、感光性平版印刷版の刷版製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における評価用画像(B)の画線の例示図である。
【図2】 本発明における評価用画像群(A)と評価用画像(B)の配置図である。
【図3】 本発明における感光性平版印刷版での評価用画像群(A)と評価用画像(B)の面付けを示す平面図である。
Claims (7)
- 支持体表面に画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物の層を有する感光性平版印刷版に、レーザー光により所定のスクリーン線数で目的の画像を画像露光した後、自動現像機を用いてアルカリ現像液によって現像処理する感光性平版印刷版の刷版製造方法において、前記感光性平版印刷版の余白部或いは独立の版に、前記目的の画像の画像露光でのスクリーン線数以上で画像濃度を段階的に変化させた複数の画像からなる評価用画像群(A)と、該評価用画像群(A)におけるスクリーン線数の周期の21/2 倍以上の周期の画線による評価用画像(B)とをレーザー光による画像露光によって形成し目的の画像と共に現像処理して、現像処理後の評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度を対比して評価用画像(B)の評価用画像群(A)における相当濃度を基準濃度として検知し、しかる後の現像環境の変動による同対比結果における評価用画像(B)の該基準濃度からの変化に応じて、現像環境の変動を調整しつつ目的の画像を現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版の刷版製造方法。
- 目的の画像の画像露光でのスクリーン線数を130線以上とする請求項1に記載の感光性平版印刷版の刷版製造方法。
- 評価用画像群(A)におけるスクリーン線数を、目的の画像の画像露光でのスクリーン線数と同じとする請求項1又は2に記載の感光性平版印刷版の刷版製造方法。
- 評価用画像群(A)及び評価用画像(B)における画像露光での露光量を、目的の画像の画像露光での露光量と同じとする請求項1乃至3のいずれかに記載の感光性平版印刷版の刷版製造方法。
- 評価用画像群(A)における画像濃度を5〜95%の範囲とする請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性平版印刷版の刷版製造方法。
- 評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度の対比を、光学的反射濃度を測定することにより行う請求項1乃至5のいずれかに記載の感光性平版印刷版の刷版製造方法。
- 評価用画像群(A)と評価用画像(B)との画像濃度の対比結果において、評価用画像(B)の画像濃度が前記基準濃度から高濃度段階に変化するときには、現像補充液を補充し、低濃度段階に変化するときには、現像液を希釈することにより現像環境の変動を調整する請求項1乃至6のいずれかに記載の感光性平版印刷版の刷版製造方法。
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