JP4631637B2 - 車両のエンジン出力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両のエンジン出力制御装置に関するものである。
自動車等の車両においては、エンジンの出力軸と変速機の入力軸との間にクラッチを介装し、そのクラッチの解放・継合を通じて上記両軸間でのトルク伝達を断続するようにしている。
そして、例えば停止した状態の車両を発進させる際には、解放されているクラッチを継合させることにより、エンジンの出力軸から変速機の入力軸へのトルク伝達を行わせることとなる。なお、車両におけるエンジンから車輪までの回転駆動系には、回転方向についての捩れに起因した捩り振動が生じる。そして、上記クラッチの継合前と継合完了後とでは、車両における捩り振動系が図11の(a)に示される状態から(b)に示される状態へと変化する。同図において、(a)はクラッチの継合前の上記振動系のモデルを示しており、(b)はクラッチ継合完了後の上記振動系のモデルを示している。また、図中の「Ie」はエンジンの慣性モーメントを表し、「Id」は変速機から車輪までの駆動系の慣性モーメントを表し、「Ib」は車体の慣性モーメントを表し、「Kd」は上記駆動系の捩り剛性(捩りばね定数)を表している。
また、解放されているクラッチを継合させて車両を発進させる際には、そのクラッチの継合を徐々に行うことが車両をスムーズに発進させるうえで好ましい。このようにクラッチを徐々に継合させてゆく際、同クラッチにおける継合開始から継合完了までの間は、クラッチの入力側の回転速度が出力側の回転速度よりも高いスリップ状態、いわゆる半クラッチとされる。そして、クラッチが上記半クラッチの状態から継合完了した状態に移行するとき、同クラッチの入力側と出力側との回転速度が等しくなる。以上のように、車両発進時にクラッチを継合させるに当たり、半クラッチの期間を設け、エンジンの出力軸の回転及びエンジントルクが徐々に変速機の入力軸に伝達されるようにすれば、車両のスムーズな発進を図ることが可能になる。
ところで、車両を急発進させたい場合には、解放されているクラッチを継合完了させる際、クラッチの継合速度を速くすることにより半クラッチの期間を短くし、クラッチの継合開始から継合完了までを速めることが行われる。しかし、クラッチの継合速度を速めすぎると、車両における回転駆動系の捩り振動が大となり、それに起因して車両に不快な前後振動が発生する。
ここで、上記車両の前後振動が生じる理由について、図12のタイムチャートを参照して説明する。
車両発進時におけるクラッチの継合開始(タイミングT1)から継合完了(タイミングT2)までの間には、クラッチが半クラッチの状態とされて徐々に継合されてゆくことになる。こうした半クラッチの状態にあっては、エンジントルクがクラッチを介して変速機側に伝達されるとともに、エンジン回転速度がインプット回転速度よりも高いことからエンジン側の回転エネルギが変速機側に伝達される。これらエンジントルク及び回転エネルギの伝達により、クラッチの出力側の回転速度である変速機のインプット回転速度が図12(a)に破線で示されるように上昇してゆき、車輪に作用する車両駆動トルクも図12(b)に破線で示されるように上昇してゆく。そして、クラッチが継合完了状態に移行するとき、インプット回転速度が図12(a)に実線で示されるエンジン回転速度と等しくなる。このようにインプット回転速度とエンジン回転速度とが等しくなると、上記回転エネルギの伝達は行われなくなり、エンジントルクの伝達のみにより車両駆動トルクが発生させられる。
上記半クラッチの期間中、エンジン側では、変速機側の回転抵抗を受けてエンジン回転速度が落ち込もうとするため、それに対応してエンジントルクが図12(b)に実線(T1〜T2)で示されるように上昇させられ、上記エンジン回転速度の落ち込みが抑制される。このときには上記エンジントルクの上昇に合わせて、車両駆動トルクも図12(b)に破線(T1〜T2)で示されるように上昇する。
なお、上記エンジントルクの上昇については、エンジンがアイドル運転状態にあるときとアイドル運転状態にないときとでは、それぞれ別々の態様で実現されるようになる。すなわち、エンジンがアイドル運転状態にあるときには、エンジン回転速度を目標アイドル回転速度とすべくエンジントルクを制御するアイドル回転速度制御を通じて、上述したエンジントルクの上昇が実現される。また、エンジンがアイドル運転状態にないときには、上記エンジン回転速度の落ち込みを感じた運転者のアクセル操作によるエンジントルクの増加を通じて、上述したエンジントルクの上昇が実現される。
車両を急発進させるためにクラッチの継合速度が速められ、半クラッチの期間が短くなると、その期間中にエンジン側から変速機側への回転エネルギの伝達が十分に行われず、インプット回転速度がエンジン回転速度よりも大幅に低い値であるとき、クラッチの継合完了によりエンジン回転速度とインプット回転速度とが一致させられる。
この場合、クラッチの継合完了直前に変速機のインプット回転速度は急速に上昇するものの、その分だけエンジンにおける変速機側の回転抵抗が急速に大となる。このようにエンジンにおける変速機側の回転抵抗が急速に大になると、それに伴うエンジン回転速度の落ち込みを抑制するためのエンジントルクの上昇も急速なものとされ、更に当該エンジントルクに合わせて車両駆動トルクの上昇も急速なものとされる。その結果、クラッチの継合完了時点(タイミングT2)でのエンジントルク及び車両駆動トルクが大となる。
上述したように半クラッチの期間が短い状態でクラッチが継合完了すると、その時点(タイミングT2)で大となっている車両駆動トルクが図12(b)に破線で示されるように急速に低下し始める。これは、半クラッチの期間が短い状態では、クラッチ継合完了直前(T2の直前)にエンジン側から変速機側への回転エネルギの伝達が多くされるのに対し、クラッチ継合完了直後には当該回転エネルギの伝達が行われなくなることが関係している。すなわち、クラッチ継合完了直前にはエンジントルクの伝達と上記多大な回転エネルギの伝達との両方により車両駆動トルクが発生させられているのに対し、クラッチ継合完了直後は上記エンジントルクの伝達のみにより車両駆動トルクが発生させられる。こうしたクラッチ継合完了前後の大きな状態変化に起因して、クラッチ継合完了後には車両駆動トルクの急速かつ大きな低下が生じることとなる。
このように車両駆動トルクが急速かつ大きく低下するとき、エンジントルクがクラッチ継合完了時点の大きい値のままとなっており、車両駆動トルクがエンジントルクよりも大幅に小さい値になると、その反動で車両駆動トルクが最小値まで低下した後に急上昇してエンジントルクよりも大きくなる。更に、その反動で車両駆動トルクが最大値まで上昇した後に急低下することとなる。以上のように車両駆動トルクの急上昇・急低下が繰り返されるというとは、車両の回転駆動系の捩り振動が大となっていることを表しており、それに合わせて車両の加速度が図12(c)のタイミングT2以降の実線で示されるように増減し、車両の乗員が不快な前後振動を感じる。
こうした車両の前後振動の発生を抑制するため、特許文献1に示されるように、車両発進時には、実車速がアクセル操作量に応じて設定される設定車速に達するまでクラッチを強制的に半クラッチ状態に制御し、クラッチの継合速度が速くなり過ぎないようにすることが考えられる。
車両発進時における半クラッチの期間(図12のT1〜T2)が短くなり過ぎないよう比較的長い期間に設定されると、その期間中の終期までにエンジン側から変速機側への回転エネルギの伝達が十分に行われる。このため、当該回転エネルギの伝達等によりインプット回転速度がエンジン回転速度に近い値まで上昇してから、クラッチの継合完了によりエンジン回転速度とインプット回転速度とが一致させられる。
この場合、クラッチの継合完了前にエンジンが受ける変速機側の回転抵抗が小さい値に維持されるため、半クラッチの期間中におけるエンジン回転速度の落ち込みが小とされるとともに、その落ち込みを抑制するためのエンジントルクの上昇も小とされる。その結果、クラッチ継合完了時点(タイミングT2)でのエンジントルク及び車両駆動トルクが小となる。
また、半クラッチの期間が比較的長い状態では、クラッチ継合完了直前(T2の直前)にエンジン側から変速機側への回転エネルギの伝達が特別に多くされることはないことから、クラッチ継合完了前後での上述した状態変化が大となることもない。従って、その大きな状態変化に起因して、クラッチ継合完了後における車両駆動トルクの低下が急速かつ大きなものとなることは抑制される。
以上のように、特許文献1のクラッチ制御を行うことで、クラッチ継合完了直後に、エンジントルクが大となること、及び車両駆動トルクが急速かつ大きく低下することは抑制される。このため、クラッチ継合完了後に車両駆動トルクの急上昇・急低下が繰り返されること、言い換えれば車両の回転駆動系の捩り振動が増大することを抑制するとともに、それに起因して車両の加速度が増減し、乗員が不快な車両の前後振動を感じるのを抑制することができる。
特公平7−42997公報
特許文献1のクラッチ制御を行うことにより、クラッチ継合完了後に、乗員が不快な車両の前後振動を感じるのを抑制することができるようにはなる。しかしながら、当該クラッチ制御を採用すると、車両を急発進させようとしてクラッチの継合速度を速くする場合には、同クラッチ制御を通じて半クラッチの期間が長くされる分だけ車両の発進加速性能が悪くなり、車両を急発進させようとするときの発進加速性能の要求に対応しきれなくなる。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の発進加速性能を損なうことなく、クラッチ継合完了後の車両の前後振動を抑制することのできる車両のエンジン出力制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、エンジンの出力軸と変速機の入力軸との間に介装されてトルク伝達を断続するクラッチを備える車両のエンジン出力制御装置において、クラッチの継合完了時点での車両駆動トルクが車両の前後振動を招くほど大きい旨判断されたことを条件に、エンジントルクを下げるためのトルクダウン制御を実行するエンジントルク制御手段を備えた。
車両の発進時、解放されているクラッチを継合すると、エンジントルクがクラッチを介して変速機側に伝達され、車両の車輪に車両駆動トルクが発生することとなる。そして、車両を急発進させるべくクラッチの継合速度が大とされる場合、クラッチ継合完了時点でエンジントルク及び車両駆動トルクが大きい値となり、クラッチ継合完了後には車両駆動トルクが急速かつ大きく低下するという現象が生じる。このとき、仮にエンジントルクをクラッチ継合完了時点の大きい値のままにしていると、車両駆動トルクの急上昇と急低下との繰り返しが生じ、車両の乗員が不快な前後振動を感じる。上記構成によれば、エンジントルク制御手段により、クラッチの継合完了時点での車両駆動トルクが車両の前後振動を招くほど大きい旨判断されたことを条件に、エンジントルクを下げるためのトルクダウン制御が実行される。このようにエンジントルクを下げると、クラッチ継合完了後に低下する車両駆動トルクがエンジントルクよりも大幅に小さい値になることはなくなり、その反動で車両駆動トルクが最小値まで低下した後に急上昇するということもなくなる。以上により、クラッチの継合速度を制限して当該継合速度が速くなり過ぎないようにする等の処置を講じなくても、クラッチ継合完了後における車両駆動トルクの急上昇・急低下の繰り返しを抑制することができるようになる。従って、車両の発進加速性能を損なうことなく、クラッチ継合完了後における車両の前後振動を抑制することができる。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了後の車両駆動トルクに基づき、その車両駆動トルクが低下するほどエンジントルクが低下するよう同エンジントルクを制御するものとした。
上記構成によれば、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下に合わせて、的確にエンジントルクを低下させることができる。
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後の車両の捩り振動系の振動周期をTとすると、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点から、エンジントルクをそのときの要求値に向けて徐々に変化させるものとした。
クラッチの継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクが急低下し、その後に急上昇するような場合、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点で、急低下する車両駆動トルクが最小値になる。従って、クラッチ継合完了後にエンジントルクを低下させて車両駆動トルクの急上昇・急低下の繰り返しを抑制した場合、上記経過時間がT/2に達した後には、エンジントルクを車両駆動トルク低下に合わせて下げる必要はなくなる。上記構成によれば、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点から、エンジントルクがそのときの要求値に向けて変化させられるため、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下に合わせたエンジントルクの低下を的確に行いつつ、それが必要以上に続けられるのを回避することができる。また、上記エンジントルクの要求値への変化は徐々に行われるため、その変化の際にトルクショックが生じるのを抑制することもできる。
請求項4記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後のエンジントルクをTemax、クラッチ継合完了直後の車両駆動トルクをTdmax、クラッチ継合完了直後の車両の捩り振動系の振動周期をT、エンジンの慣性モーメントをIe、車両の駆動系の慣性モーメントをId、車体の慣性モーメントをIbとすると、エンジントルクを、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達するまではTemaxで一定とし、T/2に達した時点で「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」とするものとした。
クラッチの継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクが急低下し、その後に急上昇するような場合、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点で、急低下する車両駆動トルクが最小値になる。上記構成によれば、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点で、エンジントルクがTemaxから「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」という値に低下させられる。この値は、エンジントルクのうち車体に作用する分を、車両駆動トルクの上記最小値と一致させるのに必要なエンジントルクに相当する値である。従って、クラッチ継合完了後、車両駆動トルクの低下に合わせて、的確にエンジントルクを低下させることができる。
請求項5記載の発明では、請求項4記載の発明において、前記エンジントルク制御手段は、エンジントルクを、「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」とした時点から、そのときの要求値に向けて徐々に変化させるものとした。
クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点で、エンジントルクを「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」という値に低下させ、その後すぐにエンジントルクをそのときの要求値に戻したのでは、車両駆動トルクの急上昇・急低下の繰り返しを抑制するという効果が得られないおそれがある。しかし、上記構成によれば、エンジントルクを上記のように「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」という値まで低下させた時点から、同エンジントルクがそのときの要求値に向けて徐々に変化させられるため、上記のような問題が生じることはない。また、エンジントルクの要求値への変化を徐々に行うことで、当該変化の際にトルクショックが生じるのを抑制することもできる。
請求項6記載の発明では、請求項1記載において、クラッチ継合完了後のエンジントルクは、目標エンジン回転速度に基づき調整されるものであり、前記エンジントルク制御手段は、前記目標エンジン回転速度を、クラッチ継合から所定時間が経過した時点で通常時の値よりも低下させるものとした。
上記構成によれば、クラッチ継合完了後に車両駆動トルクが低下する際、目標エンジン回転速度が通常時の値よりも低下させられ、これによりエンジントルクが低下させられる。従って、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下に合わせて、的確にエンジントルクを低下させることができる。
請求項7記載の発明では、請求項6記載の発明では、前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後の実際のエンジン回転速度が低い値であるほど、前記通常時の値に対する前記目標エンジン回転速度の低下量が大となるよう、前記目標エンジン回転速度を通常時の値に対し低下させるものとした。
クラッチの継合速度が速くなるほど、その継合過程でエンジン回転速度が大きく低下しようとするため、それを抑制すべくエンジントルクが大とされ、車両駆動トルクも合わせて大とされるようになる。このことから、クラッチ継合完了直後のエンジン回転速度と車両駆動トルクとには、エンジン回転速度が低い値であるほど車両駆動トルクが大になるという相関があることが分かる。更に、クラッチ継合完了直後、エンジン回転速度が小であって車両駆動トルクが大であるときには、クラッチ継合完了後の車両駆動トルクの低下が急速かつ大きなものとなる。従って、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下の速さ及び大きさとクラッチ継合完了直後のエンジン回転速度の低さとの間にも相関があり、クラッチ継合完了直後のエンジン回転速度が低い値であるほど、クラッチ継合完了後の車両駆動トルクの低下が急速かつ大きなものになる。上記構成によれば、クラッチ継合完了直後の実際のエンジン回転速度が低い値になるほど、目標エンジン回転速度の通常時の値に対する低下量が大とされるため、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下に合わせてエンジントルクを下げる際のエンジントルク低下量を、より適切な値とすることができる。
請求項8記載の発明では、請求項6又は7記載の発明では、前記エンジントルク制御手段は、前記目標エンジン回転速度を、通常時の値よりも低下させた後、徐々に当該通常時の値に復帰させるものとした。
上記構成によれば、クラッチ継合完了後に目標エンジン回転速度を通常時の値よりも低下させ、それによってエンジントルクを低下させた後、目標エンジン回転速度が通常時の値に徐々に復帰させられるため、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下に合わせたエンジントルクの低下が無駄に続けられるのを回避することができる。また、上記目標エンジン回転速度の通常時の値への復帰は徐々に行われるため、その復帰が急に行われてトルクショックが生じるのを抑制することもできる。
請求項9記載の発明では、請求項8記載の発明において、前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後の車両の捩り振動系の振動周期をTとすると、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達するまでに前記目標エンジン回転速度の通常時の値に対する低下を実行し、前記経過時間がT/2に達した後に前記目標エンジン回転速度を前記通常時の値に徐々に復帰させるものとした。
クラッチの継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクが急低下し、その後に急上昇するような場合、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点で、急低下する車両駆動トルクが最小値になる。上記構成によれば、上記経過時間がT/2に達するまでに目標エンジン回転速度の通常時の値に対する低下が行われるため、車両駆動トルクが上記最小値まで低下するのに合わせて的確にエンジントルクを下げ、上記車両駆動トルクの急上昇・急低下の繰り返しを抑制することができる。また、上記経過時間がT/2に達した時点で、急低下する車両駆動トルクが上記最小値に達するため、それ以降ではエンジントルクを車両駆動トルク低下に合わせて下げる必要はなくなる。上記構成によれば、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した後、目標エンジン回転速度が通常時の値に復帰させられるため、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下に合わせたエンジントルクの低下を的確に行いつつ、それが必要以上に続けられるのを回避することができる。また、上記目標エンジン回転速度の通常時の値への復帰は徐々に行われるため、その復帰が急に行われてトルクショックが生じるのを抑制することもできる。
請求項10記載の発明では、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発明において、前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクが車両の前後振動を生じさせないと判断できるほど小さいとき、前記車両駆動トルク低下に合わせてエンジントルクを下げる制御を中止するものとした。
クラッチの継合速度が遅くなるほど、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクが小になるとともに、クラッチ継合完了後の車両駆動トルクの低下が緩やか且つ小さなものとなる。このように、クラッチ継合完了後の車両駆動トルク低下の速さ及び大きさとクラッチ継合完了時点の車両駆動トルクの大きさとの間には相関があり、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクが小となるほど、クラッチ継合完了後の車両駆動トルクの低下が緩やか且つ小さなものになる。このことは言い換えれば、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクが小となるほど、クラッチ継合完了後に車両の前後振動が生じる可能性が低いということを意味する。このため、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクの大きさに基づき、クラッチ継合完了後に車両の前後振動が生じるか否かを判断することが可能となる。そして、上記構成によれば、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクが車両の前後振動を生じさせないと判断できるほど小さいときには、車両駆動トルク低下に合わせてエンジントルクを下げる制御が中止され、これにより同制御が無駄に実行されるのを回避することができるようになる。
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車のエンジン出力制御装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、この自動車においては、エンジン1の出力軸2と変速機3の入力軸4との間にトルク伝達を断続するクラッチ5が設けられている。このクラッチ5は、運転者によるクラッチペダル6の踏み込み操作を通じて解放・継合され、解放時には上記両軸2,4間のトルク伝達を不能とし、継合時には当該トルク伝達を可能とする。
そして、例えば停止している自動車を発進させる際には、運転者がクラッチペダル6を操作して解放されているクラッチ5を継合させる。このようにクラッチ5が継合させられると、エンジントルクがクラッチ5を介して変速機3側に伝達され、自動車の車輪7に走行のための車両駆動トルクが発生することとなる。
自動車には、エンジン1の各種運転制御を実行する電子制御装置8が搭載されている。この電子制御装置8は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置8の入力ポートには、以下に示す各種センサが接続されている。
・エンジン1の出力軸2の回転速度であるエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサ9。
・変速機3の入力軸4の回転速度であるインプット回転速度を検出するインプット回転速度センサ10。
・車輪7に発生する車両駆動トルクを検出するトルク検出センサ11。
・運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル12の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ13。
・エンジン1の吸入空気量を検出するエアフローメータ14。
電子制御装置8の出力ポートには、エンジン1を運転するための各種機器の駆動回路、例えば燃料噴射弁15の駆動回路、点火プラグ16の駆動回路、及びスロットルバルブ17の駆動回路が接続され、その他にも吸気バルブのバルブ特性を可変とするバルブ特性可変機構の駆動回路などが接続されている。
電子制御装置8は、上記各センサから入力した検出信号に基づき把握される自動車の運転状態及びエンジン1の運転状態を検知し、上記出力ポートに接続された各種駆動回路の指令信号を出力する。こうしてエンジン1の燃料噴射量制御、燃料噴射時期制御、点火時期制御、スロットル開度制御、及び吸気バルブ特性制御等が電子制御装置8を通じて実施される。
次に、エンジン1において行われるエンジントルク調整の概要について説明する。
エンジン1に対するエンジントルクの要求値は、運転者によるアクセルペダル12の踏み込み量等によって表される。電子制御装置8は、アクセル踏込量に基づきスロットルバルブ17の開度を制御することでエンジン1の吸入空気量をアクセル踏込量に応じた値へと調整するとともに、同吸入空気量に対応した量の燃料噴射が行われるよう燃料噴射弁15を制御する。これにより、エンジン1の燃焼室に供給される燃料と空気とからなる混合気の量が調整され、エンジントルクが要求値となるよう調整される。
なお、アクセル踏込量が「0」とされているときには、スロットル開度が最小値となるようスロットルバルブ17が制御される。そして、アクセル踏込量が「0」となるエンジン1のアイドル運転時には、そのときのエンジン回転速度を目標アイドル回転速度となるようスロットル開度の最小値を変更するアイドル回転速度制御が実施される。このアイドル回転速度制御は、スロットル開度の最小値の変更に基づくアイドル運転時の吸入空気量の調整、言い換えればエンジントルクの調整を通じて、アイドル運転時のエンジン回転速度を目標アイドル回転速度に制御するものである。従って、アイドル回転速度制御が行われるアイドル運転時においては、目標アイドル回転速度がエンジン1に対するエンジントルクの要求値を表すものとなる。
ところで、停止している自動車をスムーズに発進させるためには、解放されているクラッチ5を継合させてエンジン1の回転及びエンジントルクを変速機3側に伝達する際、そのクラッチの継合を徐々に行って継合開始から継合完了までの半クラッチの期間を長くとり、上記エンジン1の回転及びエンジントルクの伝達を徐々に行うことが好ましい。
ただし、自動車を急発進させたい場合には、解放されているクラッチ5の継合完了させる際の継合速度を速くすることにより半クラッチの期間を短くし、クラッチ5の継合開始から継合完了までを速めることが行われる。このようにクラッチの継合速度を速くすることで、運転者の要求する自動車の発進加速性能を得ることはできるものの、クラッチ5の継合速度を速めすぎることに起因して、クラッチ5の継合完了後に自動車における回転駆動系の捩り振動が大となり、自動車に不快な前後振動が発生するおそれがある。
こうした問題に対処するため、[背景技術]の欄に記載したように、自動車の発進時に実車速がアクセル踏込量に応じた設定車速に達するまでは、クラッチ5を強制的に半クラッチ状態に制御し、クラッチの継合速度が速くなりすぎないようにすることも考えられる。しかし、この場合には、半クラッチの期間が長くなる分だけ自動車の発進加速性能が悪くなり、運転者の発進加速性能の要求に対応しきれなくなるという不具合が生じることは、[発明が解決しようとする課題]の欄に記載したとおりである。
この実施形態では、自動車の発進加速性能を損なうことなく、クラッチ5の急な継合に伴い当該継合完了後に発生する自動車の前後振動を抑制できるようにしている。具体的には、クラッチ5の継合速度が速いときの継合完了後に生じる車両駆動トルクの低下に合わせてエンジントルクを下げるトルクダウン制御を実行する。以下、このトルクダウン制御によりクラッチ5の継合完了後の自動車の前後振動を抑制できる理由について、図2のタイムチャートを参照して説明する。
図2の(a)〜(c)は、自動車の発進時、解放されているクラッチを継合させる際のエンジン回転速度、インプット回転速度、エンジントルク 、車両駆動トルクTd 、及び自動車の加速度の推移を示している。なお、同図において、クラッチ5の継合完了(タイミングT2)以前の部分は[背景技術]の欄にて説明した図12のタイムチャートと同じであるため、ここではタイミングT2以前の部分の説明は省略し、タイミングT2以降の部分についてのみ詳しく説明する。
運転者が自動車を急発進させようとして、クラッチ5の継合速度が大とされ、半クラッチの期間が短くなる場合、図2(b)に示されるようにクラッチ5の継合完了時点(タイミングT2)でエンジントルク及び車両駆動トルクTd が大きい値になり、クラッチ5の継合完了後には車両駆動トルクTd が急速かつ大きく低下するという現象が生じる。このとき、仮にエンジントルクをクラッチ5の継合完了時点の大きい値のままにしていると、車両駆動トルクTd の急上昇と急低下との繰り返しが生じ、自動車の乗員が不快な前後振動を感じる。
しかし、この実施形態では、上記のような自動車の前後振動を抑制すべく、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd の急速かつ大きな低下に合わせてエンジントルクを下げるトルクダウン制御が実行される。より詳しくは、以下の式(1)を用いて算出されるエンジントルクTe が得られるよう、エンジントルクの調整が行われる。
Te =α・Td +β …(1)
Te :エンジントルク
Td :車両駆動トルク
α :変換係数
β :オフセット量
この式(1)で用いられる車両駆動トルクTd は、当該式(1)によるエンジントルクTe の算出よりも所定時間前に、トルク検出センサ11からの検出信号に基づき求められた値である。また、変換係数αは車両駆動トルクTd というパラメータをエンジントルクというパラメータに変換するための係数であり、オフセット量βはエンジントルクを車両駆動トルクTd よりも若干大きくすべく式(1)の「α・Td 」という項に加算される値である。
そして、上記エンジントルクTe が得られるようエンジントルクを調整することで、クラッチ5の継合完了後に車両駆動トルクTd が図2(b)に実線で示されるように急速かつ大きく低下するのに対し、その車両駆動トルクTd の低下に合わせてエンジントルクが破線で示されるように低下させられる。上記式(1)を用いて算出されるエンジントルクTe が得られるようエンジントルクを調整するということは、クラッチ5の継合完了後における実際の車両駆動トルクTd をフィードバックしてエンジントルクを制御しているということである。なお、ここでのエンジントルクの調整は、エンジン1の燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火時期、スロットル開度、及び吸気バルブのバルブ特性といったパラメータのうちの少なくとも一つを変更することによって行われる。
上記のようにトルクダウン制御を通じてエンジントルクを低下させると、クラッチ5の継合完了後に低下する車両駆動トルクTd がエンジントルクよりも大幅に小さい値になることはなくなり、その反動で車両駆動トルクTd が例えば図12(b)におけるタイミングT2以降の破線で示されるように急上昇することもなくなる。以上により、[背景技術]の欄に記載したクラッチ制御等を通じて、クラッチ5の継合速度が速くなり過ぎるのを防止しなくても、クラッチ5の継合完了後における車両駆動トルクTd の急上昇・急低下の繰り返しを抑制すること、言い換えれば自動車の回転駆動系における捩り振動の増大を抑制することができるようになる。従って、上記クラッチ制御等によって自動車の発進加速性能を損なうことなく、クラッチ5の継合完了後における自動車の前後振動を抑制することができる。なお、このときの自動車の加速度は、例えば図2(c)に示されるような推移を示すこととなる。
また、クラッチ5の継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクTd が急低下し、その後に急上昇するような場合、クラッチの継合完了からの経過時間がその継合完了直後のにおける自動車の捩り振動系の周期Tを「2」で割った値「T/2」に達した時点で、急低下する車両駆動トルクTd が最小値になる。従って、クラッチ継合完了後、トルクダウン制御を通じてのエンジントルクの低下により、車両駆動トルクTd の急上昇・急低下の繰り返しを抑制した場合、上記経過時間が「T/2」に達した後には、エンジントルクを車両駆動トルクTd の低下に合わせて下げる必要はなくなる。このため、上記経過時間が「T/2」に達した後には、エンジントルクがそのときの要求値に向けて徐々に変化させられる。この要求値については、上記経過時間が「T/2」に達した後、アクセルペダル12が踏み込まれていればそのときのアクセル踏込量に対応した値となり、アクセルペダル12が踏み込まれておらずアイドル運転がなされていればアイドル回転速度制御で用いられる目標アイドル回転速度に対応した値となる。また、上記エンジントルクの要求値への変化は、その変化の際にトルクショックが生じないよう徐々に行われる。
次に、上述したトルクダウン制御の詳細な実行手順について、トルクダウン制御ルーチンを示す図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。このトルクダウン制御ルーチンは、電子制御装置8を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、上記トルクダウン制御中であるか否かを判断するのに用いられるフラグFが「0(トルクダウン制御中でない)」であることを条件に(図3のS101:YES)、トルクダウン制御を実行すべき状況であるか否かを判断するためのステップS102,S103の処理が実行される。
ステップS102の処理では、エンジン回転速度とインプット回転速度とが一致した時点であるか否かに応じてクラッチ5の継合完了時点であるか否かが判断される。
ここで否定判定であれば、トルクダウン制御中ではなく、且つトルクダウン制御を行うべき状況でもない旨判断され、通常どおりのエンジントルク調整が通常制御として実行される(S104)。すなわち、アクセル踏込量が「0」であればアイドル回転速度制御によるエンジン回転速度を目標アイドル回転速度とするためのエンジントルクの調整が行われ、アクセル踏込量が「0」よりも大であれば当該アクセル踏込量に対応する要求値に向けてのエンジントルクの調整が行われる。
一方、上記ステップS102で肯定判定がなされると、ステップS103の処理として、クラッチ5の継合完了時点での車両駆動トルクTd が自動車の前後振動を招くほど大であるか否かが判断される。
ここで、車両発進時のクラッチ5の継合速度が遅くなるほど、クラッチの継合完了時点の車両駆動トルクTd が小になるとともに、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd の低下が緩やか且つ小さなものとなる。このように、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd 低下の速さ及び大きさとクラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd の大きさとの間には相関があり、クラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd が小となるほど、クラッチ継合完了後の車両駆動トルクTd の低下が緩やか且つ小さなものになる。このことは言い換えれば、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクTd が小となるほど、クラッチ5の継合完了後に自動車の前後振動が生じる可能性が低いということである。このため、クラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd の大きさに基づき、クラッチ5の継合完了後に自動車の前後振動が生じるか否かを判断することが可能となる。
そして、ステップS103で肯定判定がなされるとき、すなわちクラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd がクラッチ5の継合完了後に自動車の前後振動を招くほど大きいときには、トルクダウン制御を実行すべき状況である旨判断され、当該トルクダウン制御としてステップS105(図4)以降の処理が実行される。また、ステップS103で否定判定がなされると、クラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd がクラッチ5の継合完了後に自動車の前後振動を生じさせないほど小さい旨判断され、ステップS105の処理として通常どおりのエンジントルク調整が行われる。従って、クラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd がクラッチ5の継合完了後に自動車の前後振動を生じさせないほど小さいときには、トルクダウン制御(図4のステップS105以降の処理)が中止され、これにより同制御が無駄に実行れることは回避される。
次に、トルクダウン制御を行うための上記ステップS105以降の処理について詳しく説明する。
この一連の処理では、まずエンジントルクTe が上記式(1)を用いて算出され、そのエンジントルクTe が得られるようエンジントルクの調整を行うことで、エンジン1でのトルクダウンが実施される(S105)。その後、フラグFが「1(トルクダウン制御中)」に設定され(S106)、以後フラグFが「1」である間はステップS101で否定判定がなされ、ステップS102,S103の処理をスキップしてステップS105以降の処理が実行される。
そして、トルクダウン制御中において、クラッチ5が継合完了してからの経過時間が「T/2」を経過した後は(S107:NO)、復帰制御としてエンジントルクをそのときの要求値に向けて徐々に変化させる処理が行われる(S108)。すなわち、アクセル踏込量が「0」となるアイドル運転中であればエンジントルクがエンジン回転速度を目標アイドル回転速度とするための要求値に向けて徐々に変化させられ、アクセル踏込量が「0」よりも大であればエンジントルクが当該アクセル踏込量に対応する要求値に向けて徐々に変化させられる。
その後、エンジントルクが上記要求値に達すると(S109:YES)、フラグFが「0(トルクダウン制御中でない)」に設定される(S110)。このようにフラグFが「0」に設定されることにより、ステップS101とステップS102で共に否定判定がなされ、通常とおりのエンジントルク調整が実行されるようになる(S104)。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)自動車を急発進させるべくクラッチ5の継合速度が大とされる場合、クラッチ5の継合完了時点でエンジントルク及び車両駆動トルクTd が大きい値となり、クラッチ5の継合完了後には車両駆動トルクTd が急速かつ大きく低下するという現象が生じる。このとき、仮にエンジントルクをクラッチ5の継合完了時点の大きい値のままにしていると、車両駆動トルクTd の急上昇と急低下との繰り返しが生じ、自動車の乗員が不快な前後振動を感じる。しかし、クラッチ5の継合完了後、車両駆動トルクTd の急速かつ大きな低下が生じるときには、トルクダウン制御を通じて当該車両駆動トルクTd の低下に合わせてエンジントルクが低下させられる。このようにエンジントルクを下げると、クラッチ5の継合完了後に低下する車両駆動トルクTd がエンジントルクよりも大幅に小さい値になることはなくなり、その反動で車両駆動トルクTd が急上昇するということもなくなる。以上により、クラッチ5の継合速度を制限して当該継合速度が速くなり過ぎないようにする等の処置を講じなくても、クラッチ5の継合完了後における車両駆動トルクTd の急上昇・急低下の繰り返しを抑制することができるようになる。従って、自動車の発進加速性能を損なうことなく、クラッチ5の継合完了後における自動車の前後振動を抑制することができる。
(2)上記トルクダウン制御では、式(1)を用いて算出されるエンジントルクTe が得られるようエンジントルクを調整することで、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd の低下に合わせてエンジントルクが低下させられる。このようにエンジントルクの調整を行うということは、クラッチ5の継合完了後における実際の車両駆動トルクTd をフィードバックしてエンジントルクを制御しているということであり、同制御を通じてエンジントルクをクラッチ5の継合完了後における車両駆動トルクTd の低下に合わせて的確に低下させることができるようになる。
(3)クラッチ5の継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクTd が急低下し、その後に急上昇するような場合、クラッチの継合完了からの経過時間が「T/2」に達した時点で、急低下する車両駆動トルクTd が最小値になる。従って、クラッチ継合完了後、トルクダウン制御を通じてのエンジントルクの低下により、車両駆動トルクTd の急上昇・急低下の繰り返しを抑制した場合、上記経過時間が「T/2」に達した後には、エンジントルクを車両駆動トルクTd の低下に合わせて下げる必要はなくなる。このため、上記経過時間が「T/2」に達した後、エンジントルクをそのときの要求値に向けて徐々に変化させることで、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd 低下に合わせたエンジントルクの低下を的確に行いつつ、それが必要以上に続けられるのを回避することができる。
(4)また、上記(3)でのエンジントルクの要求値への変化は徐々に行われるため、その変化の際にトルクショックが生じるのを抑制することができる。
(5)クラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd がクラッチ5の継合完了後に自動車の前後振動を生じさせないほど小さいときには、トルクダウン制御が中止されるため、同制御が無駄に実行されることが回避されるようになる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図5〜図7に基づき説明する。
図5の(a)〜(c)は、この実施形態において、自動車の発進時、解放されているクラッチを継合させる際のエンジン回転速度、インプット回転速度、エンジントルク 、車両駆動トルクTd 、及び自動車の加速度がどのように推移するかを示している。なお、同図において、クラッチ5の継合完了(タイミングT2)以前の部分は[背景技術]の欄にて説明した図12のタイムチャートと同じであるため、ここではタイミングT2以前の部分の説明は省略し、タイミングT2以降の部分についてのみ詳しく説明する。
この実施形態では、トルクダウン制御として、クラッチ5の継合完了(タイミングT2)からの経過時間が「T/2」を経過するまでの間は、図5(b)に示されるように、エンジントルクをクラッチ5の継合完了時点の値に保持する。更に、上記経過時間が「T/2」に達した時点で、エンジントルクのうち車体に作用する分が、そのときの車両駆動トルクTd と一致するまで、エンジントルクを低下させるようにしている。
なお、上記経過時間が「T/2」に達した時点とは、クラッチ5の継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクTd が急低下し、その後に急上昇するような場合、その急低下する車両駆動トルクTd が最小値になる時点である。このため、上記経過時間が「T/2」に達した時点では、エンジントルクのうち車体に作用する分が上記最小値と一致するよう、エンジントルクが低下させられることになる。
このようにトルクダウン制御を行うようにしても、クラッチ5の継合完了後、車両駆動トルクTd の低下に合わせて、的確にエンジントルクを低下させることができる。従って、クラッチ5の継合速度が速いとき、その継合完了後に車両駆動トルクTd が急上昇・急低下を繰り返すのを抑制することができ、当該繰り返しに起因する自動車の前後振動を抑制することができる。なお、このときの自動車の加速度は、例えば図5(c)に示されるような推移を示すこととなる。
次に、上記経過時間が「T/2」に達した時点で、エンジントルクのうち車体に作用する分が、そのときの車両駆動トルクTd (上記最小値)と一致するまで、エンジントルクを低下させる手順について説明する。
この実施形態のトルクダウン制御において、上記経過時間が「T/2」に達した時点でのエンジントルクは、以下の式(2)を用いて算出されるエンジントルクTe となるように調整され、これによりエンジントルクのうち車体に作用する分が車両駆動トルクTd (上記最小値)と一致するようになる。
Te =2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax …(2)
Te :エンジントルク
Temax:クラッチ継合完了直後のエンジントルク(最大値)
Tdmax:クラッチ継合完了直後の車両駆動トルク(最大値)
Ie :エンジンの慣性モーメント
Id :変速機等の駆動系の慣性モーメント
Ib :車体の慣性モーメント
ここで、上記式(2)を導き出す手順について、図6のタイムチャートを参照して説明する。なお、同図は、クラッチ5の継合完了前後における車両駆動トルクTd (実線)、エンジントルクTe (破線)、及び、エンジントルクのうち車体に作用する分Te1 (二点鎖線)の推移を示している。
クラッチ5の継合完了後において、エンジントルクのうち車体に作用する分Te1は、エンジントルクTe 、エンジン1の慣性モーメントIe 、自動車の駆動系の慣性モーメントId 、車体の慣性モーメントIb に基づき、以下の式(3)で表される。
Te1={Ib/(Ie +Id +Ib )}・Te …(3)
Te1 :エンジントルクのうち車体に作用する分
Te :エンジントルク
Ie :エンジンの慣性モーメント
Id :変速機等の駆動系の慣性モーメント
Ib :車体の慣性モーメント
クラッチ5の継合完了直後(継合完了時点)においては、エンジントルクTe が最大値Temaxとなる。このときのTe1を「Te2」とすると、当該「Te2」は、上記式(3)を変形して得られる以下の式(4)によって表される。
Te2={Ib/(Ie +Id +Ib )}・Temax …(4)
Te2 :クラッチ継合完了時点のTe1
Te :エンジントルク
Temax:クラッチ継合完了直後のエンジントルク(最大値)
Ie :エンジンの慣性モーメント
Id :変速機等の駆動系の慣性モーメント
Ib :車体の慣性モーメント
クラッチ5の継合完了直後(継合完了時点)の車両駆動トルクTd は最大値Tdmaxとなり、その最大値Tdmax、クラッチ5の継合完了時点のTe1であるTe2、及び両者の差T0 は次の式(5)の関係を有する。
T0 =Tdmax−Te2 …(5)
T0 :差
Tdmax:クラッチ継合完了直後の車両駆動トルク(最大値)
Te2 :クラッチ5の継合完了直後のTe1
この式(5)から分かるように、「Te2」は、最大値Tdmaxよりも差T0 だけ低下した値となる。
また、クラッチ5の継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクTd が急上昇・急低下を繰り返す場合、そのクラッチ5の継合完了後に急速に低下する車両駆動トルクTd の最小値Tdminは、上記「Te2」から更に差T0 だけ低下した値となる。このため、最小値Tdmin、「Te2」、及び差T0 は次の式(6)の関係を有する。
Tdmin=Te2−T0 …(6)
Tdmin:クラッチ継合完了後の車両駆動トルクTd の最小値
Te2 :クラッチ5の継合完了直後のTe1
T0 :差
そして、式(6)の差T0 に式(5)の右辺を代入すると、以下の式(7)が得られる。
Tdmin=Te2−(Tdmax−Te2)
=2Te2−Tdmax …(7)
Tdmin:クラッチ継合完了後の車両駆動トルクTd の最小値
Te2 :クラッチ5の継合完了直後のTe1
Tdmax:クラッチ継合完了直後の車両駆動トルク(最大値)
クラッチ5の継合完了後のエンジントルクTe は、エンジントルクのうち車体に作用する分Te1を用いて、上記式(3)を変形して得られる以下の式(8)により表すことができる。
Te ={(Ie +Id +Ib )/Ib}・Te1 …(8)
Te :エンジントルク
Ie :エンジンの慣性モーメント
Id :変速機等の駆動系の慣性モーメント
Ib :車体の慣性モーメント
Te1 :エンジントルクのうち車体に作用する分
ここで、クラッチ5の継合完了からの経過時間が「T/2」となった時点で、エンジントルクのうち車体に作用する分Te1を最小値Tdminと一致させるためのエンジントルクTe を求めるには、式(8)の右辺における「Te1」を最小値Tdminに置き換えた以下の式(9)を用いればよい。
Te ={(Ie +Id +Ib )/Ib}・Tdmin …(9)
Te :エンジントルク
Ie :エンジンの慣性モーメント
Id :変速機等の駆動系の慣性モーメント
Ib :車体の慣性モーメント
Tdmin:クラッチ継合完了後の車両駆動トルクTd の最小値
この式(9)で用いられる最小値Tdminは上記式(7)によって表されるため、式(9)の右辺における最小値Tdminに式(7)の右辺を代入し、その後に式(9)を以下の式(10)で示されるように変形する。
Te ={(Ie +Id +Ib )/Ib}・(2Te2−Tdmax)
=2・{(Ie +Id +Ib )/Ib}・Te2−
{(Ie +Id +Ib )/Ib}・Tdmax …(10)
Te :エンジントルク
Ie :エンジンの慣性モーメント
Id :変速機等の駆動系の慣性モーメント
Ib :車体の慣性モーメント
Te2 :クラッチ5の継合完了直後のTe1
Tdmax:クラッチ継合完了直後の車両駆動トルク(最大値)
更に、式(10)における「Te2」は上記式(4)によって表されるため、式(10)の右辺の「Te2」に式(4)の右辺を代入し、その後に式(10)を上記式(2)のように変形する。
このようにして導かれた式(2)に基づき、エンジントルクTe を算出し、クラッチ5の継合完了からの経過時間が「T/2」に達した時点で、上記エンジントルクTe が得られるようエンジントルクを調整することで、エンジントルクのうち車体に作用する分Te1が上述した車両駆動トルクTd の最小値Tdminと一致するようになる。
次に、上記トルクダウン制御の実行手順について図7を参照して説明する。この実施形態のトルクダウン制御ルーチンは、第1実施形態のトルクダウン制御ルーチン(図3及び図4)におけるトルクダウン制御に係る処理(図4のS105〜S110)を、図7に示される処理(S205〜S211)に代えたものとなっている。
この実施形態では、トルクダウン制御として、図7のステップS205〜S211の処理が実行される。この一連の処理では、クラッチ5が継合完了してからの経過時間が「T/2」となる前であることを条件に(S205:YES)、エンジントルクがそれまでの値、言い換えればクラッチ5の継合完了直後の値(最大値Tdmax)に保持される(S206)。また、上記経過時間が「T/2」に達した時点では(S207:YES)、エンジントルクが上記式(2)を用いて算出されるエンジントルクTe となるように調整され(S208)、これによりエンジントルクのトルクダウンが実施される。
上記経過時間が「T/2」に達した後は(S207:NO)、復帰制御としてエンジントルクをそのときの要求値に向けて徐々に変化させる処理が行われる(S209)。そして、エンジントルクが上記要求値に達すると(S210:YES)、フラグFが「0(トルクダウン制御中でない)」に設定される(S211)。
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)、(3)〜(5)と同等の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(6)クラッチ5の継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクTd が急低下し、その後に急上昇するような場合、クラッチ5の継合完了からの経過時間が「T/2」に達した時点で、急低下する車両駆動トルクTd が最小値Tdminになる。ここで、上記経過時間がT/2に達した時点では、エンジントルクが最大値Temaxから「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」という値に低下させられる。この値は、エンジントルクのうち車体に作用する分Te1を、車両駆動トルクTd の上記最小値Tdminと一致させるのに必要なエンジントルクに相当する値である。従って、クラッチ5の継合完了後、車両駆動トルクの低下に合わせて、的確にエンジントルクを低下させることができる。
(7)上記経過時間が「T/2」に達した時点で、エンジントルクを「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」という値に低下させ、その後すぐにエンジントルクをそのときの要求値に戻したのでは、車両駆動トルクTd の急上昇・急低下の繰り返しを抑制するという効果が十分に得られないおそれがある。しかし、エンジントルクを上記のように「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」という値まで低下させた後には、同エンジントルクがそのときの要求値に向けて徐々に変化させられるため、上記のような問題が生じることはない。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図8〜図10に基づき説明する。
図8の(a)〜(b)は、この実施形態において、自動車の発進時、解放されているクラッチを継合させる際のエンジン回転速度、インプット回転速度、エンジントルク 、車両駆動トルクTd 、及び自動車の加速度がどのように推移するかを示している。なお、同図において、クラッチ5の継合完了(タイミングT2)以前の部分は[背景技術]の欄にて説明した図12のタイムチャートと同じであるため、ここではタイミングT2以前の部分の説明は省略し、タイミングT2以降の部分についてのみ詳しく説明する。
この実施形態では、トルクダウン制御が行われるときにアクセル踏込量が「0」であってエンジン1がアイドル運転中であることを条件に、アイドル回転速度制御に用いられる目標アイドル回転速度(目標エンジン回転速度)を通常時の値よりも低下させ、上記トルクダウン制御でのエンジントルクの低下を実現するようにしている。
すなわち、例えば目標アイドル回転速度の通常時の値が図8(a)に二点鎖線L1であるとすると、クラッチ5の継合完了からの経過時間が「T/2」よりも短い所定時間に達した時点で、目標アイドル回転速度が二点鎖線L2で示されるように通常時の値(二点鎖線L1)よりも低下量ΔDだけ低下させられる。このように目標アイドル回転速度が低下させられると、アイドル回転速度制御によるスロットル開度の最小値の変更を通じて、エンジン回転速度が上記目標アイドル回転速度となるようエンジントルクの調整が行われ、これによりエンジントルクが図8(b)に示されるように低下するようになる。
このようにトルクダウン制御を行うようにしても、クラッチ5の継合完了後、車両駆動トルクTd の低下に合わせて、的確にエンジントルクを低下させることができる。従って、クラッチ5の継合速度が速いとき、その継合完了後に車両駆動トルクTd が急上昇・急低下を繰り返すのを抑制することができ、当該繰り返しに起因する自動車の前後振動を抑制することができる。なお、このときの自動車の加速度は、例えば図8(c)に示されるような推移を示すこととなる。
なお、この場合のトルクダウン制御におけるエンジントルクの低下量は、目標アイドル回転速度の通常時の値に対する低下量ΔDを大とすればするほど大となる。ちなみに、この実施形態の低下量ΔDについては、クラッチ5の継合完了直後のエンジン回転速度NEが低くなるほど大となるように可変とされる。これは、当該エンジン回転速度NEが低いほど、クラッチ5の継合完了後における車両駆動トルクTd 低下の速さ及び大きさが大となる傾向があり、その車両駆動トルクTd の低下に合わせてエンジントルクを低下させるうえで、上記のように低下量ΔDを可変とすることが好ましいためである。
ここで、エンジン回転速度NEが低くなるほど、クラッチ5の継合完了後における車両駆動トルクTd 低下の速さ及び大きさが大となる理由を説明する。
クラッチ5の継合速度が速くなるほど、その継合過程でエンジン回転速度が大きく低下しようとするため、それを抑制すべくエンジントルクが大とされ、車両駆動トルクTd の合わせて大とされるようになる。このことから、クラッチ5の継合完了直後でのエンジン回転速度NEと車両駆動トルクTd とには、当該エンジン回転速度NEが低い値であって車両駆動トルクTd が大になるという相関があることが分かる。更に、クラッチ5の継合完了直後、上記エンジン回転速度NEが低い値であって車両駆動トルクTd が大であるときには、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd の低下が急速かつ大きなものとなる。従って、上記エンジン回転速度NEとクラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd の低下態様との間には相関があり、上記エンジン回転速度NEが低いほど、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd 低下が急速かつ大きなものになる。
また、上述したように目標アイドル回転速度が通常時の値よりも低下させられ、トルクダウン制御によるエンジントルクの低下が行われた状態で、クラッチ5が継合完了してからの経過時間が「T/2」に達すると、その後に目標アイドル回転速度が図8(a)に二点鎖線L2で示されるように通常時の値(二点鎖線L1)に徐々に復帰させられる。これにより、上記トルクダウン制御によるエンジントルクの低下を的確に行いつつ、それが必要以上に続けられるのを回避することができる。また、目標アイドル回転速度を通常時の値に復帰させる際、それが急に行われてトルクショックが生じることもない。
ところで、トルクダウン制御が行われるときにアクセル踏込量が「0」でなくエンジン1がアイドル運転中でないと、上述した目標アイドル回転速度の低下によるエンジントルクの低下を行うことはできない。これは、アイドル運転中でないとアイドル回転速度制御が行われず、エンジン回転速度を目標アイドル回転速度とするためのエンジントルクの調整、言い換えればスロットル開度の最小値の変更が行われないためである。
このため、トルクダウン制御が行われるときにアイドル運転中でない場合、本実施形態では、目標アイドル回転速度の通常時の値に対する低下量ΔDをスロットル開度の閉じ量ΔTに変換し、当該スロットル開度を閉じ量ΔT分だけ閉じ側に変更することで、エンジン1の吸入空気量を減らしてエンジントルクを上記低下量ΔD分だけ低下させる。以上により、トルクダウン制御が行われるときにアイドル運転中でなくても、エンジントルクを低下させることができるようになる。
また、この場、クラッチ5の継合完了からの経過時間が「T/2」に達した後、目標アイドル回転速度が通常時の値に徐々に復帰させられると、上記低下量ΔDの減少に伴い閉じ量ΔTも減少してゆき、スロットル開度も徐々にもとの値へと復帰してゆくことになる。これにより、上記トルクダウン制御によるエンジントルクの低下が無駄を的確に行いつつ、それが必要以上に続けられるのを回避することができる。更に、目標アイドル回転速度を通常時の値に復帰させる際にトルクショックが生じるのを抑制することもできる。
次に、以上のようなトルクダウン制御の実行手順について図9及び図10を参照して説明する。この実施形態のトルクダウン制御ルーチンは、第1実施形態のトルクダウン制御ルーチン(図3及び図4)におけるトルクダウン制御に係る処理(図4のS105〜S110)を、図9及び図10に示される処理(S305〜S319)に代えたものとなっている。
この実施形態では、トルクダウン制御として、図9のステップS305〜S311の処理、及び、図10のS312〜S319の処理が実行される。この一連の処理では、まずアクセル踏込量が「0(アクセルオフ)」であるか否か、言い換えればアイドル運転中であるか否かが判断される(S305)。
ここで肯定判定であれば、アイドル運転中のトルクダウン制御として図9のステップS306〜S311の処理が実行される。詳しくは、クラッチ5が継合完了してからの経過時間が「T/2」よりも短い所定時間が経過した時点であるか否かが判断される(S306)。そして、ここでの肯定判定を条件に目標アイドル回転速度が通常時の値に対し、クラッチ5の継合完了直後のエンジン回転速度NEに対応した低下量ΔD分だけ低下させられ(S307)、これによりエンジントルクのトルクダウンが実施される。
上記経過時間が「T/2」に達した後には(S308:YES)、復帰制御として目標アイドル回転速度が徐々に通常時の値に復帰するよう、上記低下量ΔDを徐々に減少させる処理が行われる(S309)。その後、上記低下量ΔDが「0」となって目標アイドル回転速度が通常時の値に戻ると(S310:YES)、フラグFが「0(トルクダウン制御中でない)」に設定される(S311)。
一方、上記ステップS305で否定判定がなされると、アイドル運転中でないときのトルクダウン制御として、図10のステップS312〜S319の処理が実行される。詳しくは、クラッチ5が継合完了してからの経過時間が「T/2」よりも短い所定時間が経過した時点であるか否かが判断される(S312)。そして、ここでの肯定判定を条件に目標アイドル回転速度が通常時の値に対し、クラッチ5の継合完了直後のエンジン回転速度NEに対応した低下量ΔD分だけ低下させられる(S313)。続いて、上記低下量ΔDがスロットル開度の閉じ量ΔTに変換され(S314)、この閉じ量ΔT分だけスロットル開度が閉じ側に変更される(S315)。これによりエンジントルクのトルクダウンが実施されることとなる。
上記経過時間が「T/2」に達した後には(S316:YES)、復帰制御として目標アイドル回転速度が徐々に通常時の値に復帰するよう、上記低下量ΔDを徐々に減少させる処理が行われる(S317)。このように低下量ΔDを徐々に減少させると、それに合わせて閉じ量ΔTも徐々に減少させられ(S314)、スロットル開度が徐々にもとの値へと復帰してゆくことになる。その後、上記低下量ΔDが「0」、すなわち閉じ量ΔTが「0」となってスロットル開度がもとの値に戻ると(S318:YES)、フラグFが「0(トルクダウン制御中でない)」に設定される(S319)。
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)、(3)〜(5)と同等の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(8)クラッチ5の継合完了後に車両駆動トルクTd が低下する際、目標アイドル回転速度が通常時の値よりも低下量ΔD分だけ低下させられ、これによりエンジントルクが低下させられる。従って、クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルク低下に合わせて、的確にエンジントルクを低下させることができる。
(9)クラッチ5の継合完了後の車両駆動トルクTd の低下については、クラッチ5の継合完了直後の実際のエンジン回転速度NEが低い値であるほど、急速かつ大きなものになる。このことを考慮して、上記エンジン回転速度NEが低い値になるほど上述した低下量ΔDが大とされ、これによりエンジントルクの低下量が大とされる。従って、クラッチ5の継合完了後における車両駆動トルクTd の低下の速さ及び大きさに合わせて、トルクダウン制御の際のエンジントルク低下量を適切な値とすることができる。
(10)クラッチ5の継合速度が速くて継合完了後に車両駆動トルクTd が急低下し、その後に急上昇するような場合、クラッチの継合完了からの経過時間が「T/2」に達した時点で、急低下する車両駆動トルクTd が最小値になる。上記トルクダウン制御における目標アイドル回転速度の低下量ΔD分の低下は、上記経過時間が「T/2」よりも短い所定時間となった時点で行われるため、車両駆動トルクTd が上記最小値まで低下するのに合わせて的確にエンジントルクを下げ、上記車両駆動トルクTd の急上昇・急低下の繰り返しを抑制することができる。
(11)また、上記経過時間が「T/2」に達した後には、低下量ΔD分だけ低下させられている目標アイドル回転速度が通常時の値に徐々に復帰させられる。このため、上記トルクダウン制御によるエンジントルクの低下を的確に行いつつ、それが必要以上に続けられるのを回避することができる。また、目標アイドル回転速度を通常時の値に復帰させる際、それが急に行われてトルクショックが生じることもない。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1〜第3実施形態において、クラッチ5の継合完了時点の車両駆動トルクTd がクラッチ5の継合完了後に自動車の前後振動を生じさせないほど小さいときにはトルクダウン制御を中止したが、この中止のための処理については必ずしも実行する必要はない。
・第3実施形態において、低下量ΔD分だけ低下している目標アイドル回転速度の通常時の値への復帰開始については、クラッチ5の継合完了からの経過時間が「T/2」に達する前に行うことも、その経過時間と「T/2」との差が僅かであれば可能である。
・第3実施形態において、目標アイドル回転速度の低下量ΔD分の低下を、クラッチ5の継合完了からの経過時間が「T/2」に達した時点で行ってもよい。
・第3実施形態においては、低下量ΔDをクラッチ5の継合完了直後の実際のエンジン回転速度NEに応じて可変としたが、こうした低下量ΔDの可変設定を必ずしも行う必要はなく、同低下量ΔDを予め実験等によって求められた最適値で固定してもよい。
・第1及び第2実施形態において、クラッチ5が継合完了してからの経過時間が「T/2」となった直後に、エンジントルクをそのときの要求値に向けて変化させ始めるのではなく、上記経過時間が「T/2」に達した後にしばらくしてから、エンジントルクをそのときの要求値に向けて変化させ始めてもよい。
第1実施形態におけるエンジン出力装置が適用される自動車の駆動系を示す略図。 (a)〜(c)は、自動車の発進時におけるエンジン回転速度、インプット回転速度、エンジントルク、車両駆動トルク、及び自動車の加速度の推移を示すタイムチャート。 第1実施形態のトルクダウン制御の実行手順を示すフローチャート。 第1実施形態のトルクダウン制御の実行手順を示すフローチャート。 (a)〜(c)は、自動車の発進時におけるエンジン回転速度、インプット回転速度、エンジントルク、車両駆動トルク、及び自動車の加速度の推移を示すタイムチャート。 自動車の発進時におけるクラッチ継合完了前後の車両駆動トルク、エンジントルク、及び、エンジントルクのうち車体に作用する分の推移を示したタイムチャート。 第2実施形態のトルクダウン制御の実行手順を示すフローチャート。 (a)〜(c)は、自動車の発進時におけるエンジン回転速度、インプット回転速度、エンジントルク、車両駆動トルク、及び自動車の加速度の推移を示すタイムチャート。 第3実施形態のトルクダウン制御の実行手順を示すフローチャート。 第3実施形態のトルクダウン制御の実行手順を示すフローチャート。 (a)及び(b)は、クラッチの継合前とクラッチ継合完了後との車両の捩り振動系のモデル。 (a)〜(c)は、自動車の発進時におけるエンジン回転速度、インプット回転速度、エンジントルク、車両駆動トルク、及び自動車の加速度の推移の従来例を示すタイムチャート。
符号の説明
1…エンジン、2…出力軸、3…変速機、4…入力軸、5…クラッチ、6…クラッチペダル、7…車輪、8…電子制御装置(トルク制御手段)、9…エンジン回転速度センサ、10…インプット回転速度センサ、11…トルク検出センサ、12…アクセルペダル、13…アクセルポジションセンサ、14…エアフローメータ、15…燃料噴射弁(トルク制御手段)、16…点火プラグ(トルク制御手段)、17…スロットルバルブ(トルク制御手段)。

Claims (10)

  1. エンジンの出力軸と変速機の入力軸との間に介装されてトルク伝達を断続するクラッチを備える車両のエンジン出力制御装置において、
    クラッチの継合完了時点での車両駆動トルクが車両の前後振動を招くほど大きい旨判断されたことを条件に、エンジントルクを下げるためのトルクダウン制御を実行するエンジントルク制御手段を備える
    ことを特徴とする車両のエンジン出力制御装置。
  2. 前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了後の車両駆動トルクに基づき、その車両駆動トルクが低下するほどエンジントルクが低下するよう同エンジントルクを制御する
    請求項1記載の車両のエンジン出力制御装置。
  3. 前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後の車両の捩り振動系の振動周期をTとすると、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達した時点から、エンジントルクをそのときの要求値に向けて徐々に変化させる
    請求項2記載の車両のエンジン出力制御装置。
  4. 前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後のエンジントルクをTemax、クラッチ継合完了直後の車両駆動トルクをTdmax、クラッチ継合完了直後の車両の捩り振動系の振動周期をT、エンジンの慣性モーメントをIe、車両の駆動系の慣性モーメントをId、車体の慣性モーメントをIbとすると、エンジントルクを、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達するまではTemaxで一定とし、T/2に達した時点で「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」とする
    請求項1記載の車両のエンジン出力制御装置。
  5. 前記エンジントルク制御手段は、エンジントルクを、「2Temax−{(Ie+Id+Ib)/Ib}・Tdmax」とした時点から、そのときの要求値に向けて徐々に変化させる
    請求項4記載の車両のエンジン出力制御装置。
  6. クラッチ継合完了後のエンジントルクは、目標エンジン回転速度に基づき調整されるものであり、
    前記エンジントルク制御手段は、前記目標エンジン回転速度を、クラッチ継合から所定時間が経過した時点で通常時の値よりも低下させる
    請求項1記載の車両のエンジン出力制御装置。
  7. 前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後の実際のエンジン回転速度が低い値であるほど、前記通常時の値に対する前記目標エンジン回転速度の低下量が大となるよう、前記目標エンジン回転速度を通常時の値に対し低下させる
    請求項6記載の車両のエンジン出力制御装置。
  8. 前記エンジントルク制御手段は、前記目標エンジン回転速度を、通常時の値よりも低下させた後、徐々に当該通常時の値に復帰させる
    請求項6又は7記載の車両のエンジン出力制御装置。
  9. 前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了直後の車両の捩り振動系の振動周期をTとすると、クラッチ継合完了からの経過時間がT/2に達するまでに前記目標エンジン回転速度の通常時の値に対する低下を実行し、前記経過時間がT/2に達した後に前記目標エンジン回転速度を前記通常時の値に徐々に復帰させる
    請求項8記載の車両のエンジン出力制御装置。
  10. 前記エンジントルク制御手段は、クラッチ継合完了時点の車両駆動トルクが車両の前後振動を生じさせないと判断できるほど小さいとき、前記車両駆動トルク低下に合わせてエンジントルクを下げる制御を中止する
    請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両のエンジン出力制御装置。
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