JP4626596B2 - 可動構造体及びそれを備えた光学素子 - Google Patents

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本発明は、光学装置に搭載され外部から入射する光を走査する光学素子等に用いられる可動構造体に関する。
従来より、例えばバーコードリーダ等の光学機器には、ミラーが設けられた可動板を揺動させて、そのミラーに入射した光等をスキャン動作させる光学素子が搭載されている。このような光学素子としては、例えば特許文献1に示されているような、マイクロマシニング技術を用いて成形された小型の可動構造体を搭載したものが知られている。
図12及び図13を参照しつつ、従来の光学素子について説明する。光学素子81は、導電性を有するシリコン等により形成された略矩形形状の素子である。光学素子81の中央部には、光を反射するためのミラー膜82aが形成された可動板82が設けられており、可動板82は、周囲をフレーム部83により囲まれている。可動板82は、その両側部に配された捻りバネ84によりフレーム部83に支持されており、この捻りバネ84を捻りながら回動可能に構成されている。可動板82の側端部と、その側端部に対向するフレーム部83の部位には櫛歯電極85が設けられている。櫛歯電極85は、可動板82側に形成された櫛歯82cとフレーム部83側に形成された櫛歯83cとが互いに噛み合うようにして構成されている。櫛歯82c,83cは、それぞれ、可動板82、先端部までの長さDが等しくなるように構成されている。この光学素子81では、ミラー膜82aの大きさを大きくしつつ、可動板82の捻りバネ84まわりの慣性モーメントを小さくして可動板82を高速動作させるため、可動板82が、その可動板82の中央部側よりも捻りバネ84側の方の寸法が小さくなるように、例えば円形に構成されている。
図14を参照しつつ、光学素子81の動作について説明する。可動板82は、櫛歯電極85に外部から駆動電圧が印加されることにより駆動されて揺動する。定常揺動時において、可動板82の水平面に対する振れ角の推移は、図に実線で示すように略正弦波形状で示される。可動板82が振れ角0度の水平状態(時刻t0)から慣性力により回動し、振れ角が最大となると(時刻t1)、可動板82は、捻りバネ84の復元力(図に一点鎖線で示す)により可動板82がそれまでの方向とは反対の方向に回動する。このとき、時刻t1から可動板82が再び水平状態となる時刻t2までの間、櫛歯電極85に駆動電圧が印加され、可動板82は、捻りバネ84の復元力によるトルクと、櫛歯電極85が発生する静電力による静電トルク(図に破線で示す)とが加わることにより回動する。可動板82は、時刻t2の水平状態から慣性力により回動して時刻t3に振れ角が最大となると、櫛歯電極85に再び駆動電圧が印加され、捻りバネ84の復元力によるトルク及び櫛歯電極85による静電トルクにより、再び、それまでとは反対の方向に回動する。
ここで、可動板82に加えられる静電トルクは、図の2点鎖線で示すように略正弦波形状で変化することが望ましいが、櫛歯電極85による静電トルクは、図の点線で示すように、櫛歯電極85の櫛歯82c,83cが互いに近づき、互いに重なり合うときにのみ発生する。そして、可動板82の振れ角が大きくなると、櫛歯82c,83cが互いに重なる時間が小さくなり、可動板82にトルクが作用する時間が短くなる。例えば、円形の可動板82を有する光学素子81では、振れ角の増大に伴い、捻りバネ84から遠い位置にある、可動板82の中央部側の櫛歯82c,83cの重なり合う時間が短くなっていく。そのため、可動板82に作用するトルクが小さくなり、可動板82の振れ角が小さくなり、光学素子81の光の走査角が狭くなるという問題があった。
上記問題に対する解決策としては、例えば、櫛歯電極85の駆動電圧を高くしたり、櫛歯82c,83cの長さを長くして櫛歯82c,83c間の静電容量を大きくしたりし、より強いトルクが可動板82に加わるようにして可動板82の振れ角を大きくすることが考えられる。しかしながら、駆動電圧を高くすると、駆動電圧を印加するための電気回路等の構成が複雑となるため、光学素子81が取り扱いにくいものになる。また、櫛歯82c,83cの長さを長くすると、光学素子81の素子サイズが大きくなってしまうため、例えばシリコンウェハ等から複数個の光学素子81を製造する場合に、一度に製造可能な光学素子81の個数が減少し、製造コストが高コスト化してしまうという問題がある。なお、特許文献1にも、上記問題の解決策等は示されていない。
特開2005‐165333号公報
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、小さな素子サイズで可動板に大きなトルクを加えることができ、可動板の振れ角が大きい可動構造体と、それを備えた光学素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、可動板と、前記可動板を囲むように配置されたフレーム部と、前記可動板をその両側部で揺動自在に前記フレーム部に軸支する捻りバネと前記可動板の側端部及びそれに対向する前記フレーム部に互いに噛み合うように設けられた、複数の櫛歯を有する櫛歯電極とを備え、前記可動板側の櫛歯電極と前記フレーム部側の櫛歯電極との間に電圧が印加されることにより、前記可動板が揺動するように構成された可動構造体であって、前記可動板は、その可動板の前記捻りバネの長手方向に略直交する方向の寸法が、その可動板の中央部側よりも前記捻りバネ側の方が小さくなるように構成されており、前記可動板側の櫛歯電極の櫛歯の長さ及び前記フレーム部側の櫛歯電極の櫛歯の長さが、前記可動板の中央部側よりも前記捻りバネ側の方が長くなるように構成されているものである。
請求項2の発明は、請求項1の可動構造体において、前記可動板側の櫛歯電極の櫛歯の長さ及び前記フレーム部側の櫛歯電極の櫛歯の長さが、前記可動板の中央部側から前記捻りバネ側にかけて漸次、長くなるように構成されているものである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の可動構造体において、前記可動板の中央部側の櫛歯電極が互いに接触し得る、前記可動板の水平方向への変位時において、前記捻りバネ側の櫛歯電極が水平方向に互いに接触しない長さに、前記櫛歯電極の櫛歯の長さが設定されているものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項の可動構造体において、前記可動板は、前記捻りバネに近接する部位から前記捻りバネの長手方向に沿うように延設された延設部を有し、前記延設部と、それに対向する前記フレーム部とに互いに噛み合う補助の櫛歯電極を設け、前記補助の櫛歯電極の櫛歯の長さが、前記可動板の中央部側の櫛歯電極の櫛歯の長さよりも長くなるように構成されているものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項の可動構造体において、前記可動板の形状が円形、前記捻りバネの長手方向に略直交する方向の寸法における前記捻りバネ側寸法が中央部側よりも小さくなるような略矩形及び菱形から選択されたいずれか1つであるものである。
請求項の発明は、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の可動構造体を備え、前記可動板には、ミラー構造が設けられており、前記可動板が揺動することにより、前記ミラー構造に入射した光を走査させるものである。
請求項1の発明によれば、櫛歯電極の櫛歯の長さが、可動板の中央部側よりも、可動板の揺動軸に直交する寸法が小さい捻りバネ側において長いので、小さな素子サイズのままで、櫛歯電極の静電容量を大きくすることができる。従って、可動板に大きなトルクを加えることが可能になり、可動板の振れ角を大きくすることができる。
請求項2の発明によれば、櫛歯電極の櫛歯の長さが、可動板の中央部側から捻りバネ側にかけて次第に長くなるように構成されているので、小さな素子サイズのままで、櫛歯電極の静電容量をより効率的に大きくし、可動板の振れ角をより大きくすることができる。
請求項3の発明によれば、可動板が水平方向に変位したとき、可動板中央部側の櫛歯電極の櫛歯が互いに接触するまで、捻りバネ側の櫛歯が互いに接触しないので、捻りバネ側の櫛歯の長さを長くして櫛歯電極の静電容量を大きくした場合にも、櫛歯電極の櫛歯が互いに固着しにくい。従って、可動板が水平方向へ変位したときにも、可動板が動作不能になりにくい。
請求項4の発明によれば、可動板の中央部側の櫛歯電極の櫛歯の長さよりも長い櫛歯を有する補助の櫛歯電極が設けられているので、小さな素子サイズのままで、可動板の櫛歯電極と補助の櫛歯電極との静電容量を大きくすることができる。従って、可動板に大きなトルクを加えることが可能になり、可動板の振れ角をより大きくすることができる。
請求項5の発明によれば、可動板の形状が円形、前記捻りバネの長手方向に略直交する方向の寸法における前記捻りバネ側寸法が中央部側よりも小さくなるような略矩形又は菱形であるため、可動板の捻りバネまわりの慣性モーメントが小さくなる。従って、捻りバネのバネ定数が小さく、振れ角が大きく、且つ、高速動作可能な可動構造体を得ることができる。
請求項の発明によれば、ミラー構造が設けられた可動板に大きなトルクを加えることが可能であるので、可動板の振れ角が大きくなり、光を広角に走査することが可能になる。
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る光学素子の概略構成について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る光学素子の一例を示す。光学素子1は、例えば、導電性を有するシリコンと絶縁性を有する酸化膜等で構成されたシリコン基板(図示せず)をマイクロマシニング技術等を用いて成形することにより構成された小型の可動構造体により構成されている。この光学素子1は、例えば、バーコードリーダ、外部のスクリーン等に画像を投影するプロジェクタ装置、又は光スイッチ等の光学機器に搭載されるものであり、外部の光源等(図示せず)から入射する光等を走査する機能を有している。
光学素子1は、略矩形形状の素子であり、その中央部に円形の可動板2を有している。可動板2の周囲には、可動板2を囲むように配置されたフレーム部3が形成されている。可動板2は、その両側部に互いに同軸に並ぶように配された梁形状の捻りバネ4によりフレーム部3に軸支されている。フレーム部3と可動板2との間には、可動板2を駆動するための櫛歯電極5が形成されている。これらの各部材は、共に同一のシリコン基板上に形成されており、可動板2が駆動されていない静止状態にあるとき、可動板2、フレーム部3、及び捻りバネ4が略水平に並ぶように構成されている。
可動板2は、その両側部の2つの捻りバネ4が並ぶ軸付近にその重心が位置し、櫛歯電極5が駆動されて揺動するとき、捻りバネ4を回転軸として、図2の矢印Fで示すようにバランスを保ち揺動する。可動板2の上面には、例えば外部から入射される光等を反射するための円形のミラー膜(ミラー構造)2aが形成されている。このミラー膜2aは、光学素子1と共に用いられる光源の種類等に応じて選択された、例えばアルミニウムや金等の金属膜である。可動板2は、本実施形態においては円形とされ、捻りバネ4の長手方向すなわち揺動軸に略直交する方向の寸法が、可動板2の中央部側よりも捻りバネ4側において小さくなるように構成されている。そのため、可動板2の寸法が中央部側と捻りバネ4側とで等しい場合と比較して、可動板2の捻りバネ4まわりの慣性モーメントが小さく、可動板2と捻りバネ4とで構成される振動系の共振周波数が大きく、可動板2が高速動作可能になるように構成されている。
フレーム部3は、捻りバネ4を支持する支持部3aと、可動板2のうち、その揺動時に自由端となる2つの側端部をそれぞれ囲むように配された2つの固定電極部3bとを有している。支持部3aと固定電極部3bとは、互いの境界部のシリコンがエッチング等により除去されていることにより、互いに電気的に絶縁されている。支持部3aと2つの固定電極部3bとには、それぞれ、外部の電気回路に接続される電極パッド(図示せず)が形成されており、支持部3aと各固定電極部3bの電位を互いに独立して変更することができるように構成されている。この電極パッドは、例えば、ミラー膜2aと同一の金属膜により形成されている。
櫛歯電極5は、可動板2の側端部に形成された複数の櫛歯2cと、固定電極部3bのうち可動板2の側端部に対向する部位に形成された複数の櫛歯3cとを有している。櫛歯電極5は、この櫛歯2c,3cが、例えば数マイクロメートルの間隔を保ち互いに噛み合うように配置されて構成された、いわゆる垂直静電コムである。櫛歯電極5は、外部の電気回路等からフレーム部3上の電極パッドを介して可動板2側の櫛歯2cと固定電極部3b側の櫛歯3cとの間に電圧が印加されることにより駆動される。櫛歯電極5の各櫛歯2c,3c間に電圧が印加されると、各櫛歯2c,3cの間に、静電気力による互いに引き合う力が発生する。櫛歯電極5が駆動されて発生する力が、可動板2の側端部に、可動板2に対して略垂直に作用することにより、可動板2に静電トルクが加わり、可動板2が揺動駆動される。
次に、この光学素子1の製造工程の一例について説明する。先ず、シリコン基板に、可動板2、フレーム部3、捻りバネ4、櫛歯電極5等を成形して、複数の可動構造体を形成する。この可動構造体は、例えば、シリコン基板を、いわゆるバルクマイクロマシニング技術を用いて加工することにより形成される。その後、例えばスパッタリング等の方法を用いることによって、シリコン基板の上面に金属膜を形成する。そして、この金属膜をパターニングすることにより、可動板2の上面にミラー膜2aを形成し、フレーム部3の上面に電極パッドを形成する。ミラー膜2a及び電極パッドが形成された後、シリコン基板とそれを支えるガラス等の支持基板とを陽極接合等により接合する。そして、その後、シリコン基板上に形成された複数の素子を個々に切り分ける。このような一連の工程により、複数の光学素子1を同時に製造することにより、製造コストを低減させることが可能である。なお、光学素子1の製造工程はこれに限られるものではなく、例えば、レーザ加工や超音波加工等により1つずつ形成されてもよい。
以下に、上記のように構成された光学素子1の動作について説明する。光学素子1の可動板2は、櫛歯電極5が所定の駆動周波数で駆動力を発生して駆動される。櫛歯電極5は、例えば、支持部3aに配された電極パッドがグランド電位に接続され、可動板2の櫛歯2cが基準電位である状態で、固定電極部3bに配された電極パッドの電位を周期的に変化させて、櫛歯2c,3c間に所定の駆動周波数の電圧が印加されて駆動される。櫛歯電極5において、2つの櫛歯3cの電位が、同時に所定の駆動電位(例えば、数十ボルト)まで変化することにより、可動板2の両端部に設けられた2つの櫛歯2cが、同時に、それぞれと対向する櫛歯3cに、静電力により引き寄せられる。この光学素子1において、櫛歯電極5には、例えば矩形波形状の電圧が印加され、その駆動力が周期的に発生する。
上述のように形成された可動板2は、一般に多くの場合、その成型時に寸法誤差等が生じることにより、静止状態でも可動板2が水平姿勢ではなく、きわめて僅かであるが傾いている。そのため、静止状態からであっても、櫛歯電極5が駆動されると、可動板2にそれに略垂直な方向の駆動力が加わり、可動板2が捻りバネ4を回転軸として回動する。そして、櫛歯電極5の駆動力を、可動板2が櫛歯2c,3cが重なりあうような姿勢となったときに解除すると、可動板2は、その慣性力により、捻りバネ4をねじりながら回動を継続する。そして、可動板2の回動方向への慣性力と、捻りバネ4の復元力とが等しくなったとき、可動板2のその方向への回動が止まる。このとき、櫛歯電極5が再び駆動され、捻りバネ4の復元力と櫛歯電極5の駆動力とにより、可動板2がそれまでとは逆の方向への回動を開始する。可動板2は、このような櫛歯電極5の駆動力と捻りバネ4の復元力による回動を繰り返して揺動する。櫛歯電極5は、可動板2と捻りバネ4により構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数の電圧が印加されて駆動され、可動板2が共振現象を伴って駆動され、その揺動角が大きくなるように構成されている。なお、櫛歯電極5の電圧の印加態様や駆動周波数は、上述に限られるものではなく、例えば、駆動電圧が正弦波形で印加されるように構成されていても、また、櫛歯2c,3cの電位が共に変化することにより櫛歯電極5が駆動されるように構成されていてもよい。
ここで、この光学素子1の櫛歯電極5は、櫛歯2c,3cの、それぞれの設けられている可動板2の側端部や固定電極部3bの端部から先端部までの長さ(以下、櫛歯長と称する)が一様ではなく、可動板2の側端部の中央部側よりも、捻りバネ4に軸支された捻りバネ4側の方が、櫛歯電極5の櫛歯長が長くなるように構成されている。図3の寸法Dcは、可動板2の中央部側の櫛歯電極5の櫛歯長を示し、同図の寸法Dsは、捻りバネ4側の櫛歯長を示す。この光学素子1では、可動板2の中央部側から、バネ4に軸支された捻りバネ4側にかけて(図の矢印Sで示す方向)、櫛歯電極5の櫛歯長が、寸法Dcから寸法Dsまで、漸次、長くなるように構成されている。
ここで、図4に示すように、可動板2が、例えば図の矢印R方向に、捻りバネ4を撓ませながら変位し、可動板2の中心部を中心として水平面内において回動すると、可動板2の中央部側の櫛歯2cが、それと対向する櫛歯3cに接触する。このとき、捻りバネ4側の櫛歯電極5は、櫛歯2cがそれと対向する櫛歯3cに接触しないように、その櫛歯長が所定の長さよりも短くなるように構成されている。捻りバネ4側の櫛歯電極5の櫛歯長は、中央部側の櫛歯長に基づいて設定されている。
以下に、図5を参照しつつ、捻りバネ4側の櫛歯電極5の櫛歯長の設定について説明する。図5は、例えば、可動板2の直径が1300μmであり、櫛歯電極5の各櫛歯2c,3c間のギャップが5μmであり、可動板2の中央部の櫛歯電極5の櫛歯長が70μmであり、この中央部側の櫛歯電極5の櫛歯2cの先端部が5μm変位したときにおける、捻りバネ4側の櫛歯2cの先端部の水平方向変位量と捻りバネ4側の櫛歯2cの櫛歯長との関係を示す。なお、例えば、上記条件下において、可動板2が、その中心部を中心として約0.4度程度水平面内で回動した場合に、可動板2の中央部側の櫛歯電極5の櫛歯2cの先端部が、水平方向に5μm程度変位する。このとき、捻りバネ4側の櫛歯2cの先端部は、その櫛歯長が約700μmを超えたときに、水平方向に5μm変位するので、この場合、捻りバネ4側の櫛歯電極5は、その櫛歯長が例えば700μm以下になるように形成される。換言すると、捻りバネ4側の櫛歯電極5の櫛歯長は、可動板2の中央部側の櫛歯電極5が互いに接触し得る、可動板2の水平方向への変位時において、捻りバネ4側の櫛歯電極5が水平方向に互いに接触しない長さに設定されている。これにより、捻りバネ4側の櫛歯電極5の櫛歯長が中央部側の櫛歯電極より長くても、櫛歯電極5の櫛歯2c,3cが互いに接触しにくく、櫛歯2c,3cが互いに固着して可動板が動作不能になりにくいように構成されている。
図6は、可動板2の中央部側から捻りバネ4側にかけての櫛歯電極5の櫛歯2c,3c間の静電容量を示す。図において、各櫛歯2c,3cの位置は、中央部(0μm)から当該櫛歯2c,3cまでの距離で示す。櫛歯電極5の櫛歯長は、上記のように、可動板2の中央部側から捻りバネ4側にかけて、漸次、長くなっているので、図に実線で示すように、櫛歯電極5の櫛歯2c,3c間の静電容量が、その櫛歯2c,3cの設けられている位置が可動板2の中央部側から捻りバネ4側になるにつれ次第に大きくなる。従って、櫛歯電極5の全体での静電容量も、図に点線で示すような、櫛歯電極5の櫛歯長が全て等しい場合と比較して大きくなる。
図7は、この光学素子1の定常駆動時における、可動板2の水平面からの振れ角と、櫛歯電極5が発生する力により可動板2に加えられる静電トルクとの関係を示す。本実施形態においては、櫛歯電極5の静電容量が大きくなっているので、櫛歯電極5が駆動時に発生する力も大きくなる。従って、図に実線で示すように、可動板2に加えられる静電トルクは、図に点線で示すような櫛歯電極5の櫛歯長が全て等しい場合と比較して、可動板2の振れ角範囲の全域にて大きくなる。そのため、櫛歯電極5の櫛歯長が全て等しい場合と比較して、可動板2の振れ角を大きくすることができ、光学素子1は、光をより広角に走査することが可能である。また、可動板2の中央部側の櫛歯電極5の櫛歯長の長さを長くしなくても、可動板2の振れ角を大きくすることができるので、光学素子1の素子サイズを小さいままに保つことができ、製造コストを低コストに保つことができる。
なお、本実施形態において、可動板2は円形でなくてもよく、可動板2の中央部側よりも捻りバネ4側の寸法が小さくなるように構成されていればよい。図8及び図9は、本実施形態の変形例であって、それぞれ、略矩形形状の可動板を有する光学素子と、菱形形状の可動板を有する光学素子とを示す。以下に、各光学素子について上記光学素子1と相違する部分について説明する。
図8に示す光学素子11は、上面にミラー膜12aが形成され、捻りバネ4側の寸法が中央部側よりも小さくなるような略矩形形状に形成された可動板12を有している。可動板12の側端部とそれと対向する固定電極部3bとには、櫛歯電極15が形成されている。櫛歯電極15のうち、その捻りバネ4側の部位には、可動板2の中央部側の櫛歯電極15の櫛歯長よりも長く形成された側部電極15aが設けられており、この光学素子11においても、上記光学素子1と同様に、櫛歯電極15の櫛歯長が全て等しい場合と比較して、櫛歯電極15の静電容量が大きくなるように構成されている。
一方、図9に示す光学素子21は、上面にミラー膜22aが形成され、菱型形状に形成された可動板22を有している。可動板22は、その一方の対角線が回動軸となるように捻りバネ4により軸支されている。この光学素子21は、可動板22の各辺とそれと対向する固定電極部3bとの間にそれぞれ形成された櫛歯電極25を有している。各櫛歯電極25は、可動板22の中央部に位置し可動板22が回動するときに自由端となる頂点から、捻りバネ4側の頂点にかけて、櫛歯長が次第に長くなるように構成されている。そのため、櫛歯電極25の櫛歯長が全て等しい場合と比較して、櫛歯電極25の静電容量が大きくなるように構成されている。
上記のように、略矩形形状の可動板12を有する光学素子11や、菱形形状の可動板22を有する光学素子21においても、櫛歯電極15,25の櫛歯長が、可動板12,22の中央部側よりも捻りバネ4側の方が長くなるように構成することにより、櫛歯電極15,25の静電容量を大きくすることができる。そして、それにより、可動板12,22の振れ角を大きくし、光学素子11,21を、その素子サイズを小さく保ったままで、光をより広角に走査可能に構成することが可能になる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下には、第1の実施形態と同様の構成部材のものには同一の符号を付しつつ、第1の実施形態と相違する部分について説明する。図10は、第2の実施形態に係る光学素子を示す。この光学素子31は、上記光学素子1の可動板2に駆動力を与えるため、補助の櫛歯電極(以下、補助櫛歯電極と称する)6を有している。光学素子31の可動板2には、可動板の2のうち捻りバネ4に近接する部位から、捻りバネ4の長手方向に沿うように延設された延設部2dが形成されている。また、光学素子31のフレーム部33は、捻りバネ4を支える支持部33aと、可動板2を囲むように配置された固定電極部33bとを有しており、固定電極部33bは、延設部2dにも対向するように構成されている。補助櫛歯電極6は、延設部2dに形成された櫛歯2eと、固定電極部33bのうち延設部2dに対向する部位に櫛歯2eと噛み合うように形成された櫛歯33eとで構成されている。補助櫛歯電極6の櫛歯2e,33eの櫛歯長は、可動板2の中央部側の櫛歯電極5の櫛歯長よりも長くなるように構成されている。補助櫛歯電極6も、櫛歯電極5と同様に、例えば、固定電極部33bの電位が周期的に変更され、櫛歯2e,33eに電圧が印加されることにより駆動される。
この光学素子31では、可動板2の捻りバネ4側の櫛歯電極5の櫛歯長が可動板2の中央部側よりも長くなるように構成されていることに加えて、可動板2の中央部側の櫛歯電極5よりも櫛歯長が長い補助櫛歯電極6が設けられている。そのため、小さな素子サイズのままで、可動板2にトルクを与える櫛歯電極5と補助櫛歯電極6の静電容量を大きくすることができる。従って、可動板2により大きな静電トルクを与えることが可能になり、可動板2の振れ角をより大きくし、光をより広角に走査させることが可能になる。
ここで、第2の実施形態において、可動板の形状は円形に限られるものではなく、また、可動板と固定電極部との間に設けられた櫛歯電極の櫛歯長が一様であってもよい。図11は、例えば矩形形状の可動板42を有する光学素子41を示す。光学素子41の可動板42には、矩形形状のミラー膜42aが形成されている。可動板42の側端部とそれに対向する固定電極部33bの部位には、櫛歯電極45が形成されている。また、可動板42には、上記光学素子31と同様に、捻りバネ4に近接する部位に延設された延設部42dが形成されており、その延設部42dと、それと対向する固定電極部33bとの間に、櫛歯2e,33eで構成される補助櫛歯電極6が設けられている。
櫛歯電極45は、櫛歯長が櫛歯電極45全体で一様の長さになるように形成されている。そして、補助櫛歯電極6の櫛歯長は、櫛歯電極45の櫛歯長よりも長く設定されている。このように、光学素子41には、櫛歯電極45よりも櫛歯長が長い補助櫛歯電極6が設けられているので、上記光学素子31と同様に、小さな素子サイズのままで、可動板2に大きな静電トルクを与えることが可能になり、可動板2の振れ角を大きくし、光をより広角に走査させることが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で適宜に種々の変形が可能である。例えば、光学素子の可動構造体は、矩形形状に形成されていなくてもよい。また、本発明は、可動板にミラー膜を形成した光学素子のみに適用されるものではなく、櫛歯電極により揺動駆動される可動板を有する可動構造体に適用可能である。
本発明の第1の実施形態に係る光学素子の一例を示す平面図。 上記光学素子を示す斜視図。 上記光学素子の櫛歯電極が形成されている部位を示す平面図。 上記光学素子の櫛歯電極の櫛歯長を示す平面図。 上記光学素子の可動板が水平方向に変位したときにおける、捻りバネ側の櫛歯電極の櫛歯長とその櫛歯の水平方向の変位量との関係を示すグラフ。 上記櫛歯電極の櫛歯位置と櫛歯間の静電容量との関係を示すグラフ。 上記光学素子の動作時における可動板の振れ角とそのときの櫛歯電極により発生される静電トルクとの関係を示すグラフ。 略矩形の可動板を有する上記光学素子の一変形例を示す平面図。 略菱型の可動板を有する上記光学素子の別の変形例を示す平面図。 本発明の第2の実施形態に係る光学素子の一例を示す平面図。 略矩形の可動板を有する上記光学素子の一変形例を示す平面図。 従来の光学素子の一例を示す平面図。 上記光学素子の櫛歯電極が形成されている部位を示す平面図。 上記光学素子の動作の一例を示すタイムチャート。
符号の説明
1,11,21,31,41 光学素子(可動構造体)
2,12,22,42 可動板
2a,12a,22a,42a ミラー膜(ミラー構造)
2c,3c (櫛歯電極の)櫛歯
2e,33e (補助櫛歯電極の)櫛歯
3,33 フレーム部
4 捻りバネ
5,15,25,45 櫛歯電極
6 補助櫛歯電極(補助の櫛歯電極)

Claims (6)

  1. 可動板と、
    前記可動板を囲むように配置されたフレーム部と、
    前記可動板をその両側部で揺動自在に前記フレーム部に軸支する捻りバネと
    前記可動板の側端部及びそれに対向する前記フレーム部に互いに噛み合うように設けられた、複数の櫛歯を有する櫛歯電極とを備え、
    前記可動板側の櫛歯電極と前記フレーム部側の櫛歯電極との間に電圧が印加されることにより、前記可動板が揺動するように構成された可動構造体であって、
    前記可動板は、その可動板の前記捻りバネの長手方向に略直交する方向の寸法が、その可動板の中央部側よりも前記捻りバネ側の方が小さくなるように構成されており、
    前記可動板側の櫛歯電極の櫛歯の長さ及び前記フレーム部側の櫛歯電極の櫛歯の長さが、前記可動板の中央部側よりも前記捻りバネ側の方が長くなるように構成されていることを特徴とする可動構造体。
  2. 前記可動板側の櫛歯電極の櫛歯の長さ及び前記フレーム部側の櫛歯電極の櫛歯の長さが、前記可動板の中央部側から前記捻りバネ側にかけて漸次、長くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の可動構造体。
  3. 前記可動板の中央部側の櫛歯電極が互いに接触し得る、前記可動板の水平方向への変位時において、前記捻りバネ側の櫛歯電極が水平方向に互いに接触しない長さに、前記櫛歯電極の櫛歯の長さが設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可動構造体。
  4. 前記可動板は、前記捻りバネに近接する部位から前記捻りバネの長手方向に沿うように延設された延設部を有し、
    前記延設部と、それに対向する前記フレーム部とに互いに噛み合う補助の櫛歯電極を設け、
    前記補助の櫛歯電極の櫛歯の長さが、前記可動板の中央部側の櫛歯電極の櫛歯の長さよりも長くなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の可動構造体。
  5. 前記可動板の形状が円形、前記捻りバネの長手方向に略直交する方向の寸法における前記捻りバネ側寸法が中央部側よりも小さくなるような略矩形及び菱形から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の可動構造体。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の可動構造体を備え、
    前記可動板には、ミラー構造が設けられており、前記可動板が揺動することにより、前記ミラー構造に入射した光を走査させることを特徴とする光学素子。
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