JP4123133B2 - アクチュエータ - Google Patents

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本発明は、アクチュエータに関するものである。
例えば、レーザープリンタ等に用いられるアクチュエータとしてポリゴンミラー(回転多面体)が知られている。
しかし、このようなポリゴンミラーにおいて、より高解像度で品質のよい印字と高速印刷を達成するには、ポリゴンミラーの回転をさらに高速にしなければならない。現在のポリゴンミラーには高速安定回転を維持するためにエアーベアリングが使用されているが、今以上の高速回転を得るのは困難となっている。また、高速にするためには、大型のモーターが必要であり、危機の小型化の面で不利であるという問題がある。このようなポリゴンミラーを用いると、構造が複雑となり、コストが高くなるといった問題も生じる。
また、図10に示すような、平行平板状に電極を配置した1自由度のねじり振動子は、その構造が簡単なことから、アクチュエータの研究初期から提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、前記ねじり振動子をカンチレバー方式とした1自由度静電駆動型振動子も提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
図10の1自由度静電駆動型ねじり振動子は、ガラス基板1000上の両端部にスぺーサ200を介してシリコンの単結晶板からなる可動電極板300の両端固定部300aを固定し、この可動電極板300の両端固定部300a間に、細巾のトーションバー300bを介して可動電極部300cを支持させ、また、その可動電極部300cに電極間隔を置いて対向させる固定電極400を、ガラス基板1000上において前記可動電極部300cに対し平行配置している。可動電極板300と固定電極400との間にはスイッチ600を介して電源500が接続される。
前記構成を有するねじり振動子は、可動電極部300cと固定電極400との間に電圧を印加すると、静電引力によりトーションバー300bを軸として可動電極部300cが回転するものである。しかるに、静電引力は電極間隔の二乗に反比例するため、この種の静電アクチュエータにおいては電極間隔を小さくすることが望まれる。しかし、上述した1自由度の構造では、可動電極部300cが電極と可動部を兼ねるため、電極間隔を狭くすると変位(回転角)に制約が生じ、また可動範囲を大きくとるためには電極間隔を大きくする必要がある。このため、低電圧駆動と大振幅の両立が困難であるという問題がある。
K.E.Petersen:"Silicon Torsional Scanning,Mirror,IBMJ.Res.Develop.,vol.24(1980)、P.631 河村他:"Siを用いたマイクロメカニクスの研究"、昭和61年度精密工学会秋季大会学術講演会論文集、P.753
本発明の目的は、低電圧駆動が可能で、かつ、振れ角(振幅)の大きいアクチュエータを提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエータは、2自由度振動系のアクチュエータであって、
第1の質量部と、
第2の質量部と、
支持部と、
前記第1の質量部と前記支持部とを、前記第1の質量部が前記支持部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第1の弾性連結部と、
前記第1の質量部と前記第2の質量部とを、前記第2の質量部が前記第1の質量部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第2の弾性連結部とを有し、
交流電圧を印加することによって、前記第1の質量部が駆動し、それに伴い前記第2の質量部が回動するものであり、
一方が他方に対して相対的に可動可能に設けられた1対の櫛歯状電極を少なくとも1組有し、対応する櫛歯状電極間に生じる静電気力により前記第1の質量部を駆動する駆動手段を備え、
前記駆動手段は、1対の櫛歯状電極を少なくとも2組有し、前記1対の第1の弾性連結部に対応して設けられた1対の基部を有し、前記2組のうちの一方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記一方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられており、前記2組のうちの他方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記他方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられていることを特徴とする。
これにより、低電圧で駆動が可能で、かつ、振れ角(振幅)の大きいアクチュエータを提供することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の質量部の慣性モーメントをJ、前記第2の質量部の慣性モーメントをJとしたとき、JとJとがJ≦Jの関係を満足することが好ましい。
これにより、第1の質量部の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記交流電圧の周波数が、前記第1の質量部と前記第2の質量部とが共振する2自由度振動系の共振周波数のうち低いものと略等しくなるように設定されたことが好ましい。
これにより、低電圧で高速動作が可能で、かつ、振れ角(振幅)の大きいアクチュエータを提供することができる。また、このような構成とすることにより、第1の質量部の振幅を抑制しつつ、第2の質量部の回転角度(振れ角)を大きくすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の質量部および第2の質量部に対応する位置に開口部が設けられている基板を有することが好ましい。
これにより、第2の質量部の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
本発明のアクチュエータは、2自由度振動系のアクチュエータであって、
1対の第1の質量部と、
第2の質量部と、
支持部と、
前記各第1の質量部と前記支持部とを、前記各第1の質量部が前記支持部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第1の弾性連結部と、
前記各第1の質量部と前記第2の質量部とを、前記第2の質量部が前記各第1の質量部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第2の弾性連結部とを有し、
前記1対の第1の質量部の一方は、前記第2の質量部を介して、前記第2の質量部の一端側に設けられ、他方は、前記第2の質量部の他端側に設けられ、
交流電圧を印加することによって、前記各第1の質量部が駆動し、それに伴い前記第2の質量部が回動するものであり、
少なくとも2対の櫛歯状電極を少なくとも2組有し、対応する櫛歯状電極間に生じる静電気力により前記第1の質量部を駆動する駆動手段を備え、
前記駆動手段は、前記1対の第1の弾性連結部に対応して設けられた1対の基部を有し、前記2組の櫛歯状電極のうちの前記一方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記一方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられており、前記2組の櫛歯状電極のうちの前記他方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記他方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられていることを特徴とする。
これにより、より低電圧で駆動が可能で、かつ、振れ角(振幅)の大きいアクチュエータを提供することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記1対の第1の質量部の慣性モーメントをJ、前記第2の質量部の慣性モーメントをJとしたとき、JとJとがJ≦Jの関係を満足することが好ましい。
これにより、第1の質量部の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記交流電圧の周波数が、前記1対の第1の質量部と前記第2の質量部とが共振する2自由度振動系の共振周波数のうち低いものと略等しくなるように設定されたことが好ましい。
これにより、低電圧で高速動作が可能で、かつ、振れ角(振幅)の大きいアクチュエータを提供することができる。また、このような構成とすることにより、第1の質量部の振幅を抑制しつつ、第2の質量部の回転角度(振れ角)を大きくすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記1対の第1の質量部および第2の質量部に対応する位置に開口部が設けられている基板を有することが好ましい。
これにより、第2の質量部の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第2の質量部は、光反射部を有することが好ましい。
これにより、例えば、光スキャナとして用いた場合、光の光路を容易に変更することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記第1の弾性連結部のばね定数をk、前記第2の弾性連結部のばね定数をkとしたとき、kとkとが、k>kの関係を満足することが好ましい。
これにより、第1の質量部の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記1対の第1の弾性連結部および前記1対の第2の弾性連結部のうち少なくとも1つが、その内部にピエゾ抵抗素子を備えていることが好ましい。
これにより、例えば、回転角度および回転周波数を検出したりすることができ、また、その検出結果を、第2の質量部の姿勢の制御に利用することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記一方の第1の質量部の回動中心軸と、該一方の第1の質量部の前記回動中心軸に対して略垂直な方向の端部との間の距離をL1、前記他方の第1の質量部の回動中心軸と、該他方の第1の質量部の前記回動中心軸に対して略垂直な方向の端部との間の距離をL2、前記第2の質量部の回動中心軸と、該第2の質量部の前記回動中心軸に対して略垂直な方向の端部との間の距離をL3としたとき、L1とL3とが、L1<L3の関係を満足し、かつL2とL3とが、L2<L3の関係を満足するのが好ましい。
これにより、より容易かつ確実に、低電圧で駆動が可能で、かつ、振れ角(振幅)の大きいアクチュエータを提供することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記距離L1と、前記距離L2とが略等しいのが好ましい。
これにより、容易に、アクチュエータを制御することができ、さらに容易かつ確実に、低電圧で駆動が可能で、かつ、振れ角(振幅)の大きいアクチュエータを提供することができる。
以下、本発明のアクチュエータの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明のアクチュエータの説明に先立ち、第1の参考例のアクチュエータについて説明する。
(第1の参考例)
図1は、アクチュエータの第1の参考例を示す平面図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図1中のB−B線断面図、図4は、印加した交流電圧の周波数と、第1の質量部および第2の質量部の共振曲線を示すグラフである。なお、以下では、説明の便宜上、図1中の右側を「右」、左側を「左」、上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示すアクチュエータ100は、1対の第1の質量部(駆動部)1、11と、第2の質量部(可動部)2と、1対の支持部3、3と、1対の第1の質量部1、11に対応して設けられた4つの基部73、74、75、76を有している。1対の第1の質量部1、11、第2の質量部2、1対の支持部3、3および4つの基部7は、それぞれ、例えば、シリコン等で構成されている。
このアクチュエータ100は、第2の質量部2が中心に位置し、第2の質量部2を介し、第1の質量部1が一端側(右側)に設けられ、第1の質量部11が他端側(左側)に設けられている。また、第1の質量部1の図中右側に一方の支持部3が配置され、第1の質量部11の図中左側に他方の支持部3が配置されている。また、基部73、74は、第1の質量部1を介して互いに対向する位置に設けられている。すなわち、基部73は、第1の質量部1の図1中上側に設けられ、基部74は、第1の質量部1の図1中下側に設けられている。同様に、基部75、76は、第1の質量部11を介して互いに対向する位置に設けられている。すなわち、基部75は、第1の質量部11の図1中上側に設けられ、基部76は、第1の質量部11の図1中下側に設けられている。
また、本参考例では、第1の質量部1および11は、略同一形状かつ略同一寸法で、第2の質量部を介して、略対称に設けられている。
本参考例の第2の質量部2の表面には、光反射部21が設けられている。
また、アクチュエータ100は、図1に示すように、第1の質量部1、11が対応する支持部3、3に対して回動可能となるように、第1の質量部1、11と支持部3、3とを連結する1対の第1の弾性連結部4、4を有している。また、第2の質量部2が、第1の質量部1、11に対して回動可能となるように、第1の質量部1、11と、第2の質量部2とを連結する1対の第2の弾性連結部5、5を有している。すなわち、第2の質量部2は第2の弾性連結部5、5を介して、第1の質量部1、11にそれぞれ接続され、第1の質量部1、11は、第1の弾性連結部4、4を介して支持部3、3にそれぞれ接続されている。また、第1の弾性連結部4と、第2の弾性連結部5とは同軸的に設けられており、これらが回動中心軸(回転軸)41となる。
支持部3は、図2に示すように、絶縁部8を介して、下基板9と接合している。絶縁部8は、例えば、シリコンの酸化物や窒化物等で構成され、下基板9は、例えば、シリコン等で構成されている。すなわち下基板9は導電性を有している。
下基板9は、図2に示すように、第1の質量部1、11および第2の質量部2に対応する位置に開口部61を有している。
基部73には、固定電極71が設けられ(固定され)、第1の質量部1には、固定電極71に対向する可動電極51が設けられている(固定されている)。すなわち、第1の質量部1の図1中上側に可動電極51が形成され、基部73の図1中下側に固定電極71が形成されている。残りの各基部74、75、76についても同様である。
固定電極71と、可動電極51とで、駆動手段の主要部が構成される。
各可動電極51および各固定電極71は、それぞれ、櫛歯状電極である。すなわち各可動電極51は、それぞれ、複数の電極指511が併設された櫛歯形状をなしており、各固定電極71は、それぞれ、複数の電極指711が併設された櫛歯形状をなしている。
固定電極71と可動電極51とは、電極指711と電極指511とが交互に位置するように、すなわち、互いに噛み合うようにして配置されている。
アクチュエータ100では、これらの電極指511および711の幅、間隔、厚さ等を調整することにより、特性を所望のものに設定することができる。
図3に示すように、本参考例では、第1の質量部1を構成する各部のうち、各可動電極51が、各固定電極71から図3中上方に浮いた状態、すなわち、図3中所定の距離L4だけ離間した状態となっている。第1の質量部11に関しても同様である。
前述したような構成の2自由度振動型アクチュエータにおいては、第1の質量部1と第1の弾性連結部4とからなる第1の振動系と、第2の質量部2と第2の弾性連結部5とからなる第2の振動系とを構成する。
次に、本参考例のアクチュエータ100の動作を説明する。
所定の固定電極71と、可動電極51との間に例えば、正弦波の交流電圧等を印加する。より詳細には、例えば、第1の質量部1および11をアースしておき、図1中上側の2つの固定電極71、71に図9(a)に示すような波形の電圧を印加し、下側の2つの電極71、71に図9(b)に示すような波形の電圧を印加すると、第1の質量部1および11と、固定電極71、71との間に静電気力(クーロン力)が生じる。前記静電気力により、第1の質量部1および11が、固定電極71、71へ引きつけられる力が正弦波の位相により変化し、回動中心軸11(第1の弾性連結部4)を軸に振動(図3中矢印の方向)する。この第1の質量部1および11の振動に伴って、第2の弾性連結部5を介して連結されている第2の質量部2は、回動中心軸11(第2の弾性連結部5)を軸に振動(回転)する。
ここで、第1の質量部1の回動中心軸41に対して略垂直な方向(長手方向)の端部12との間の距離(長さ)をL1、第1の質量部11の回動中心軸41に対して略垂直な方向(長手方向)の端部12との間の距離(長さ)をL2、第2の質量部の回動中心軸41に対して略垂直な方向の端部13との間の距離(長さ)をL3としたとき、第1の質量部1および11が、それぞれ独立して設けられているため、第1の質量部1および11と、第2の質量部2とが干渉せず、第2の質量部2の大きさにかかわらず、L1およびL2を小さくすることができる。これにより、第1の質量部1および11の回転角度を大きくすることができ、第2の質量部2の回転角度を大きくすることができる。
この場合、第2の質量部2の最大回転角度が、20°以上となるように構成されるのが好ましい。
本参考例では、下基板9の、第1の質量部1、11および第2の質量部2に対応する位置に開口部61を設けることができる。これにより、第1の質量部1および11の回転角度をより大きくすることができる。
これらによって、第1の質量部1および11の低電圧駆動と、第2の質量部2の大回転角度とを実現することができ、例えば、レーザープリンタや、走査型共焦点レーザー顕微鏡等の装置に用いられる光スキャナに適用した場合、より容易に装置を小型化することができる。
なお、前述したように、本参考例では、L1とL2とは略等しく設定されているが、L1とL2とが異なっていてもよいことは言うまでもない。
ところで、このような2自由度振動型アクチュエータでは、第1の質量部1および第2の質量部2の振幅(振れ角)と、印加する交流電圧の周波数との間に、図4に示すような周波数特性が存在している。
すなわち、第1の質量部1および11と第1の弾性連結部4、4と、第2の質量部2と第2の弾性連結部5、5とからなる2自由度振動系は、第1の質量部1および11と、第2の質量部2の振幅とが大きくなる2つの共振周波数fm[kHz]、fm[kHz](ただし、fm<fm)と、第1の質量部1の振幅がほぼ0となる、1つの反共振周波数fm[kHz]とを有している。
このアクチュエータ100では、第1の質量部1および11と電極7との間に印加する交流電圧の周波数Fが、2つの共振周波数のうち低いもの、すなわち、fmとほぼ等しくなるように設定するのが好ましい。
すなわち、印加する交流電圧の周波数F[kHz]をfm[kHz]とほぼ等しいものに設定することにより、第1の質量部1および11の振幅を抑制しつつ、第2の質量部2の振れ角(回転角度)を大きくすることができる。なお、本明細書中では、F[kHz]とfm[kHz]とがほぼ等しいとは、(fm−1)≦F≦(fm+1)の条件を満足することを意味する。
第1の質量部1および11の平均厚さは、1〜1500μmであるのが好ましく、10〜300μmであるのがより好ましい。
第2の質量部2の平均厚さは、1〜1500μmであるのが好ましく、10〜300μmであるのがより好ましい。
第1の弾性連結部4のばね定数kは、1×10−4〜1×10Nm/radであるのが好ましく、1×10−2〜1×10Nm/radであるのがより好ましく、1×10−1〜1×10Nm/radであるのがさらに好ましい。これにより、第2の質量部2の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
また、第2の弾性連結部5のばね定数kは、1×10−4〜1×10Nm/radであるのが好ましく、1×10−2〜1×10Nm/radであるのがより好ましく、1×10−1〜1×10Nm/radであるのがさらに好ましい。これにより、第1の質量部1および11の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部2の振れ角をより大きくすることができる。
第1の弾性連結部4のばね定数をk、第2の弾性連結部5のばね定数をkとしたとき、kとkとが、k>kの関係を満足するのが好ましい。これにより、第1の質量部1および11の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部2の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
また、第1の質量部1の慣性モーメントをJ、前記第2の質量部2の慣性モーメントをJとしたとき、JとJとが、J≦Jの関係を満足することが好ましく、J<Jの関係を満足することがより好ましい。これにより、第1の質量部1および11の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部2の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
ところで、第1の振動系の固有振動数ωは、第1の質量部1の慣性モーメントをJ、第1の弾性連結部4のばね定数をkとしたとき、ω=(k/J1/2によって与えられ、第2の振動系の固有振動数ωは、第2の質量部2の慣性モーメントをJ、第2の弾性連結部5のばね定数をkとしたとき、ω=(k/J1/2によって与えられる。
前記のようにして求められる第1の振動系の固有振動数ωと第2の振動系の固有振動数ωとは、ω>ωの関係を満足するのが好ましい。これにより、第1の質量部1および11の振れ角を抑制しつつ、第2の質量部2の回転角度(振れ角)をより大きくすることができる。
なお、本参考例のアクチュエータ100は、1対の第1の弾性連結部4および1対の第2の弾性連結部5のうち少なくとも1つが、その内部にピエゾ抵抗素子を備えたものであるのが好ましい。これにより、例えば、回転角度および回転周波数を検出したりすることができ、また、その検出結果を、第2の質量部2の姿勢の制御に利用することができる。
本参考例では、第1の質量部1の図1中上側に可動電極51が形成され、基部73の図1中下側に固定電極71が形成されており、第1の質量部11の図1中上側に可動電極51が形成され、基部73の図1中下側に固定電極71が形成されているが、これに限らず、例えば、図1中下側の2つの基部7および下側の可動電極51、51を省略した構成としてもよいし、図1中上側の2つの基部7および上側の可動電極51、51を省略した構成としてもよい。この場合、可動電極と固定電極の間に、例えば、オフセット電圧を加えた、最小電位がグランド電位である正弦波(交流電圧)等を印加するのが好ましい。
次に、図1および図2に示すようなアクチュエータ100の製造方法の一例について添付図面を参照しつつ説明する。
図5は、アクチュエータの製造方法の一例を示す工程図である。
本参考例では、一例として、以下に示す工程とにより、アクチュエータ100を製造する場合について説明する。また、図5中左側の図は、図1のA−A線断面図、図5中右側の図は、図1中のB−B線断面図に対応している。
まず、図5(a)に示すように、第1のSi層40と、SiO層8’と、第2のSi層9’とで構成されたSOI基板50を用意する。
次に、図5(b)に示すように、第1のSi層40に、例えばエッチング等を施すことにより、第1の質量部1、11、第2の質量部2、支持部3、第1の弾性連結部4、第2の弾性連結部5、可動電極51を形成する。
次に、図5(c)に示すように、第2のSi層9’に、例えば2段階に分けてエッチング等を施すことにより、下基板9および固定電極71を形成する。
次に、図5(d)に示すように、SiO層8’の、支持部3と下基板9とに挟まれた部分を除いた部分を、エッチング等により除去し、絶縁部8を形成する。
次に、図5(e)に示すように、第2の質量部2上に、光反射部21を、例えば、真空蒸着法等により成膜し、上基板60が得られる。
以上のようにして、アクチュエータ100が製造される。
(第2の参考例)
次に、アクチュエータの第2の参考例について説明する。
図6は、アクチュエータの第2の参考例を示す平面図である。以下、図6に示すアクチュエータ100について、前記第1の参考例との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本参考例のアクチュエータ100は、図6に示すように、第1の質量部1、11が支持部3、3に対して回動可能となるように、第1の質量部1、11と支持部3、3とを連結する2対の第1の弾性連結部4’を有している。また、第2の質量部2が第1の質量部1、11に対して回動可能となるように、第1の質量部1、11と第2の質量部2とを連結する2対の第2の弾性連結部5’を有している。
このような構成とすることにより、より確実に第2の質量部2の振幅(回転)を制御することができる。
なお、本参考例のように2対の第1の弾性連結部4’と2対の第2の弾性連結部5’を有する場合、前記参考例で説明したばね定数k、kは、ほぼ同じ位置で連結している2つの弾性連結部を一体的なものとみなして求められるものである。
(第3の参考例)
次に、アクチュエータの第3の参考例について説明する。
図7は、アクチュエータの第3の参考例を示す平面図である。以下、図7に示すアクチュエータ100について、前記第1の参考例との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本参考例のアクチュエータ100は、第1の質量部111が第2の質量部2の周りに、空隙部112を介して環状に形成されている。
このような構成とすることにより、アクチュエータ100をより安定した構造とすることができる。
また、本参考例では、図7中下側の基部7および下側の可動電極51を省略した構成としてもよいし、図7中上側の基部7および上側の可動電極51を省略した構成としてもよい。
(本発明の実施形態)
次に、本発明のアクチュエータの実施形態について説明する。
図8は、本発明のアクチュエータの実施形態を示す平面図である。以下、図8に示すアクチュエータ100について、前記第3の参考例との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のアクチュエータ100では、基部73、74は、図8中右側の第1の弾性連結部4を介して互いに対向する位置に設けられている。すなわち、基部73は、図8中右側の第1の弾性連結部4の上側に設けられ、基部74は、右側の第1の弾性連結部4の下側に設けられている。同様に、基部75、76は、図8中左側の第1の弾性連結部4を介して互いに対向する位置に設けられている。すなわち、基部75は、図8中左側の第1の弾性連結部4の上側に設けられ、基部76は、左側の第1の弾性連結部4の下側に設けられている。また、基部73には、固定電極71が設けられ(固定され)、第1の弾性連結部4には、固定電極71に対向する可動電極51が設けられている(固定されている)。すなわち、第1の弾性連結部4の図8中上側に可動電極51が形成され、基部73の図1中下側に固定電極71が形成されている。残りの各基部74、75、76についても同様である。
このように構成することで、第2の質量部2の回転角度をさらに大きくすることができる。
また、本実施形態では、図8中下側の2つの基部74、76および下側の可動電極51、51を省略した構成としてもよいし、図8中上側の2つの基部73、75および上側の可動電極51、51を省略した構成としてもよい
また、実施形態の構成を第1の参考例に適用してもよい。すなわち、固定電極71を有する基部を第1の弾性連結部4に対応する位置に設け、弾性連結部4に可動電極51を設けてもよい。
以上説明したようなアクチュエータは、例えば、レーザープリンタ、バーコードリーダー、走査型共焦点レーザー顕微鏡等の光スキャナ、イメージング用ディスプレイ等に好適に適用することができる。
以上、本発明のアクチュエータについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のアクチュエータでは、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、第1の弾性連結部4を1対または2対有するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、3対以上であってもよい。
また、前述した実施形態では、第2の弾性連結部5を1対または2対有するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、3対以上であってもよい。
また、前述した実施形態では、光反射部21が第2の質量部2の下基板9が設けられている側とは反対の面側に設けられている構成について説明したが、例えば、その逆の面に設けられている構成であってもよいし、両方の面に設けられている構成であってもよい。 また、前述した実施形態では、第1の弾性連結部および第2の弾性連結部の形状として図示の構成のものについて説明したが、これに限定されず、例えば、その形状が、クランク形状等であってもよいし、分岐した構造を有するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、上基板60を一体的に製造するものとして説明したが、一体的に製造しなくてもよい。例えば、第1の質量部1と第2の質量部2と支持部3と第1の弾性連結部4と第2の弾性連結部5とを一体的に形成した基板と、下基板9とを、例えば、ガラス等で構成されたスペーサを介して、接合するものであってもよいし、各部を別々に作製して接合するものであってもよい。
アクチュエータの第1の参考例を示す平面図である。 図1中のA−A線断面図である。 図1中のB−B線断面図である。 印加した交流電圧の周波数と、第1の質量部および第2の質量部の共振曲線を示すグラフである。 アクチュエータの製造方法の一例を示す工程図である。 アクチュエータの第2の参考例を示す平面図である。 アクチュエータの第3の参考例を示す平面図である。 本発明のアクチュエータの実施形態を示す平面図である。 本発明のアクチュエータに印加する交流電圧の一例を示す図である。 従来のアクチュエータを説明するための図である。
符号の説明
1、11、111……第1の質量部 2……第2の質量部 21……光反射部 3……支持部 4、4’……第1の弾性連結部 5、5’……第2の弾性連結部 61……開口部 8……絶縁部 9……下基板 6’……ガラス基板 8’……SiO層 9’……第2のSi層 40……第1のSi層 50……SOI基板 60……上基板 20……コイル 30……永久磁石 100……アクチュエータ 200……スペーサ 300……可動電極板 300a……両端固定部 300b……トーションバー 300c……可動電極部 400……固定電極 500……電源 600……スイッチ 1000……ガラス基板 12、13……端部 41……回動中心軸 71……固定電極 511、711……電子指 51……可動電極 73、74、75、76……基部 112……空隙部 L1、L2、L3、L4……距離

Claims (11)

  1. 2自由度振動系のアクチュエータであって、
    第1の質量部と、
    第2の質量部と、
    支持部と、
    前記第1の質量部と前記支持部とを、前記第1の質量部が前記支持部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第1の弾性連結部と、
    前記第1の質量部と前記第2の質量部とを、前記第2の質量部が前記第1の質量部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第2の弾性連結部とを有し、
    交流電圧を印加することによって、前記第1の質量部が駆動し、それに伴い前記第2の質量部が回動するものであり、
    一方が他方に対して相対的に可動可能に設けられた1対の櫛歯状電極を少なくとも1組有し、対応する櫛歯状電極間に生じる静電気力により前記第1の質量部を駆動する駆動手段を備え、
    前記駆動手段は、1対の櫛歯状電極を少なくとも2組有し、前記1対の第1の弾性連結部に対応して設けられた1対の基部を有し、前記2組のうちの一方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記一方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられており、前記2組のうちの他方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記他方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 前記第1の質量部の慣性モーメントをJ、前記第2の質量部の慣性モーメントをJとしたとき、JとJとがJ≦Jの関係を満足する請求項1に記載のアクチュエータ。
  3. 前記交流電圧の周波数が、前記第1の質量部と前記第2の質量部とが共振する2自由度振動系の共振周波数のうち低いものと略等しくなるように設定された請求項1または2に記載のアクチュエータ。
  4. 前記第1の質量部および第2の質量部に対応する位置に開口部が設けられている基板を有する請求項1ないしのいずれかに記載のアクチュエータ。
  5. 2自由度振動系のアクチュエータであって、
    1対の第1の質量部と、
    第2の質量部と、
    支持部と、
    前記各第1の質量部と前記支持部とを、前記各第1の質量部が前記支持部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第1の弾性連結部と、
    前記各第1の質量部と前記第2の質量部とを、前記第2の質量部が前記各第1の質量部に対して回動可能となるように連結する、少なくとも1対の第2の弾性連結部とを有し、
    前記1対の第1の質量部の一方は、前記第2の質量部を介して、前記第2の質量部の一端側に設けられ、他方は、前記第2の質量部の他端側に設けられ、
    交流電圧を印加することによって、前記各第1の質量部が駆動し、それに伴い前記第2の質量部が回動するものであり、
    少なくとも2対の櫛歯状電極を少なくとも2組有し、対応する櫛歯状電極間に生じる静電気力により前記第1の質量部を駆動する駆動手段を備え、
    前記駆動手段は、前記1対の第1の弾性連結部に対応して設けられた1対の基部を有し、前記2組の櫛歯状電極のうちの前記一方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記一方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられており、前記2組の櫛歯状電極のうちの前記他方の1対の櫛歯状電極の一方は、前記1対の基部の一方に設けられ、前記他方の1対の櫛歯状電極の他方は、前記1対の第1の弾性連結部の一方に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
  6. 前記1対の第1の質量部の慣性モーメントをJ、前記第2の質量部の慣性モーメントをJとしたとき、JとJとがJ≦Jの関係を満足する請求項に記載のアクチュエータ。
  7. 前記交流電圧の周波数が、前記1対の第1の質量部と前記第2の質量部とが共振する2自由度振動系の共振周波数のうち低いものと略等しくなるように設定された請求項5または6に記載のアクチュエータ。
  8. 前記1対の第1の質量部および第2の質量部に対応する位置に開口部が設けられている基板を有する請求項ないしのいずれかに記載のアクチュエータ。
  9. 前記第2の質量部は、光反射部を有する請求項1ないしのいずれかに記載のアクチュエータ。
  10. 前記第1の弾性連結部のばね定数をk、前記第2の弾性連結部のばね定数をkとしたとき、kとkとが、k>kの関係を満足する請求項1ないしのいずれかに記載のアクチュエータ。
  11. 前記1対の第1の弾性連結部および前記1対の第2の弾性連結部のうち少なくとも1つが、その内部にピエゾ抵抗素子を備えている請求項1ないし10のいずれかに記載のアクチュエータ。
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