JP4618702B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性、とりわけ滴下防止性を付与する目的で配合される繊維形成型の含フッ素ポリマーとパウダー状の熱可塑性樹脂および特定の融点を有する結合剤を特定の方法によりマスターバッチ化し、得られたマスターバッチを熱可塑性樹脂および難燃剤とともに溶融し混練してなる難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、電気、電子、機械、自動車、雑貨などの分野に広く用いられているが、とりわけ電気・電子・OA分野では高い難燃性が求められる。そこで、熱可塑性樹脂の難燃性を向上するために種々の難燃剤や燃焼時の滴下防止剤などが配合されている。
【0003】
とりわけ、滴下防止剤としてはポリテトラフルオロエチレンなどの繊維形成型含フッ素ポリマーが知られており、熱可塑性樹脂への配合も広く行われていた。
【0004】
熱可塑性樹脂に繊維形成型含フッ素ポリマーを配合する際には、ペレット状態の熱可塑性樹脂や難燃剤等と繊維形成型含フッ素ポリマーとを一旦、乾式混合(ドライブレンド)した後に、これを押出機のバレル内に投入し、熱可塑性樹脂に分散させる方法が取られていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、繊維形成型含フッ素ポリマーはせん断応力により極めて凝集しやすいという欠点を有しており、従来技術による配合方法では乾式混合の過程、定量フィーダーのスクリューを通過する過程、押出機の材料投入口を通過する過程において、せん断応力を受け容易に含フッ素ポリマーの凝集が起こるという問題点があった。
【0006】
また、この凝集が発生すると、含フッ素ポリマーが熱可塑性樹脂のマトリクス中にうまく繊維を形成することができず、これにより結果的に溶融混合された該樹脂組成物の難燃性、機械的性質さらには表面外観をも悪化させてしまうという問題点があり、改良が求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の問題点に鑑み鋭意研究した結果、繊維形成型含フッ素ポリマーを特定の方法によりマスターバッチ化し、これを熱可塑性樹脂および難燃剤とともに溶融し混練することにより、含フッ素ポリマーの凝集という問題点を克服し、難燃性、機械的性質さらには表面外観に優れる難燃性熱可塑性樹脂組成物が容易に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂(A)、難燃剤(B)および繊維形成型の含フッ素ポリマーの粉状マスターバッチ(C)を必須成分としてなる難燃性熱可塑性樹脂組成物において、繊維形成型の含フッ素ポリマーの粉状マスターバッチ(C)が、
1)(A)+(B)+(C)の合計量を基準にして、0.2〜50重量%含有し、かつ
2)粉状熱可塑性樹脂(イ)100重量部、繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)2〜20重量部およびそれらの結合剤(ハ)0.2〜1.7重量部からなり、粉状熱可塑性樹脂(イ)を結合剤(ハ)で湿潤させ、これに繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)を粘着させて得られる粉状のマスターバッチである、
ことを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。また、本発明の別の態様は、上記の熱可塑性樹脂(A)ならびに粉状熱可塑性樹脂(イ)としてポリカーボネート樹脂を用いた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される粉状熱可塑性樹脂(イ)としては、パウダー状、ビーズ状または微細フレーク状の粉状の熱可塑性樹脂であればよく、例えば粉状のポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、ABS樹脂、ポリスチレンなどがあげられる。また、熱可塑性樹脂の形態が粉状以外のものであっても、例えばそれを粉砕加工して粉状に加工したものを用いることもできる。粉状熱可塑性樹脂(イ)の嵩比重は、およそ0.2〜0.6、好ましくは0.3〜0.5の範囲である。
【0010】
前記のポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0011】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0012】
これらは、単独または2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0013】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0014】
本発明にて使用される繊維形成型含フッ素ポリマー(ロ)とは、熱可塑性樹脂組成物中で繊維構造(フィブリル状構造)を形成するものがよく、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、等)、米国特許第4379910号に示される様な部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート等が挙げられる。
【0015】
これらは、燃焼時の滴下防止剤として使用され、好適にはポリテトラフルオロエチレンが使用される。その代表的な市販品の例としては、デュポンフロロケミカル社のテフロン6CJ、ダイキン工業社のネオフロンFA500、旭ガラス社のCD076等が挙げられ、容易に入手可能である。
【0016】
マスターバッチ中の繊維形成型含フッ素ポリマー(ロ)の配合量は、熱可塑性樹脂(イ)100重量部あたり2〜20重量部である。2重量部未満では、該マスターバッチを配合して得られた難燃性熱可塑性樹脂の難燃性が低下したり、マスターバッチの希釈倍率の低下に伴う経済性の悪化という問題が発生し、好ましくない。また、20重量部を超えると、マスターバッチ製造中に分散不良が生じ、均質なマスターバッチが得られないという問題がある。より好適な配合量は、4〜10重量部の範囲である。
【0017】
本発明にて使用される結合剤(ハ)とは、熱可塑性樹脂(イ)を湿潤させ、繊維形成型含フッ素ポリマー(ロ)を粘着させる作用を有する化合物である。
【0018】
結合剤(ハ)としては、オクダデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート 、ステアリン酸、ステアリルアルコール、トリフェニールフォスフェート、グリセリンモノエステル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート,ペンタエリチチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等があげられ、これらは一種もしくは二種以上を併用して使用してもよい。なかでも、オクダデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適に使用できる。また、結合剤(ハ)の融点は、40〜100℃のものが好適に使用できる。
【0019】
結合剤(ハ)の配合量は、熱可塑性樹脂(イ)100重量部あたり0.2〜1.7重量部である。0.2重量部未満では、最終的に得られた樹脂組成物の難燃性や表面外観などが低下するので好ましくない。また、1.7重量部を超えると、熱可塑性樹脂(イ)と繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)との結合剤としての効果が飽和に達してしまうのみならず、一般的に熱可塑性樹脂(イ)よりも結合剤(ハ)の方が割高であり、コストの面でも好ましくない。
【0020】
また、この結合剤はマスターバッチ(C)の一成分として熱可塑性樹脂(A)中に最終的には配合されることになり、これは該熱可塑性樹脂(A)に対する一種の不純物として作用することもあり、極力少ない方が好ましい。例えば、結合剤(ハ)の配合量が1.7重量部を超えると、最終的に得られた難燃性熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度の顕著な低下を引き起こすので好ましくない。さらに好ましくは、0.2〜1.3重量部の範囲である。
【0021】
本発明のマスターバッチ(C)は、粉状熱可塑性樹脂(イ)を結合剤(ハ)で湿潤させ、これに繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)を粘着させて粉状のマスターバッチにすることで得られる。例えば、回転数可変機能および温調機能を有するジャケット付きミキサーを用いて、結合剤(ハ)の融点以上の温度条件にて粉状の熱可塑性樹脂(イ)と結合剤(ハ)とを混合し、さらに繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)を混合する方法、または結合剤(ハ)の融点以上の温度条件にて粉状の熱可塑性樹脂(イ)、繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)および結合剤(ハ)を一括して混合する方法などがあげられるが、前者の方法の方が容易に粉状のマスターバッチを得ることができるので好ましい。マスターバッチ(C)の嵩比重は、およそ0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.6の範囲である。
【0022】
当該マスターバッチ(C)は、加工時における含フッ素ポリマーの凝集という問題点を克服した極めてハンドリング性に優れるものであり、熱可塑性樹脂(A)および難燃剤(B)とともに溶融下混合することにより、難燃性のみならず機械特性、表面外観等の諸性能に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
さらに、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のマスターバッチ(C)を製造する際、各種の添加剤、例えば、各種のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、炭化促進剤としての有機金属塩、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、衝撃強度改良用エラストマー等の添加剤を配合しても良い。
【0024】
本発明のマスターバッチ(C)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)、難燃剤(B)およびマスターバッチ(C)の合計量を基準にして、0.2〜50重量%である。配合量が0.2重量%未満の場合は、最終的に得られる難燃性熱可塑性樹脂組成物の燃焼時における滴下防止に劣り、また50重量%を超えると経済的に不利であるばかりか表面外観や機械的性質の悪化をもたらすので好ましくない。好ましくは、0.5〜30重量%、より好ましくは2〜10重量%の範囲である。
【0025】
本発明のマスターバッチ(C)中の繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)の濃度は、目的とする最終的に得られる難燃性熱可塑性樹脂組成物の性能やコストによって適宜、最適なものが選択される。また、所望によっては難燃剤、難燃助剤、添加剤などを当該マスターバッチと同時または別々に配合してもよい。
【0026】
本発明にて使用される熱可塑性樹脂(A)としては、特に制限はないが、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、ABS樹脂、ポリスチレン、およびポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアリレートなどがあげられ、これらの2種もしくはそれ以上の混合物(ポリマーアロイ)であってもよい。さらに、これらにエラストマーなどの改質剤を配合したものであってもよい。熱可塑性樹脂(A)は、マスターバッチ(C)の一成分である粉状熱可塑性樹脂(イ)と同一である方が好ましいが、本発明の効果を損なわない限り異なっていてもよい。
【0027】
本発明にて使用される難燃剤(B)としては、公知の難燃剤、炭化促進剤が用いられ、例えばハロゲン系難燃剤(例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマーなどの臭素系難燃剤)、シリコーン系難燃剤、リン系難燃剤(例えば、非ハロゲン系縮合型ポリ燐酸エステル、非ハロゲン系モノ燐酸エステル、フォスファーゼン型リン系難燃剤、赤燐など)などの難燃剤、有機金属塩などの炭化促進剤があげられる。これらは、単独もしくは併用して使用してもよい。
【0028】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を製造するにあたり、マスターバッチ(C)および難燃剤(B)以外に、熱安定剤、離型剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを同時にもしくは別個に配合してもよい。配合にあたっては特に制限はなく、公知の混合機、例えばタンブラー、リボン・ブレンダー、混合槽に攪拌羽を装備した高速ミキサー等により材料を混合し、押出機により溶融混練する方法が挙げられる。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に制限されるものではない。尚、「部」、「%」は断りの無い限り、重量基準に基づく。
【0030】
(マスターバッチの製造)
粉状熱可塑性樹脂(イ)としてポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製カリバー200−15、融点:230℃、分子量:20500のパウダー(嵩比重:0.3)、繊維形成型の含フッ素ポリマー(ロ)としてポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業社製ネオフロンFA500)および結合剤(ハ)としてオクダデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(住友化学工業社製スミライザーBP−76、融点:52 ℃)を、それぞれ表1に示す配合比率にて配合しマスターバッチ(マスターバッチ試料番号:MB−1〜MB−7)を作成した。
【0031】
マスターバッチの配合方法としては、ジャケット付きスーパーミキサー(容量20リッター)に80℃の温水を通し、まず粉状のポリカーボネート樹脂2Kgを仕込み、600rpmで混合する。内温が40℃に達してからオクダデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを表1に示す配合比率に基づき仕込み、600rpmで混合する。内温が60℃に達したら、ポリテトラフルオロエチレンを表1に示す配合比率に基づき加え、400rpmで3分間混合して粉状のマスターバッチを得た。
【0032】
また、マスターバッチのブロッキング性を評価し、結果を表1に示した。ブロッキング性の評価方法は、以下のとおり。
ブロッキング性:マスターバッチ200gを透明のポリ袋に入れ、この上に重量1Kgの鉄板を置き、46℃の恒温槽中で連続72時間保持した後、目視にてブロッキングの発生の有無を観察する。
【0033】
【表1】
表1 マスターバッチの配合処方と評価結果
*: ○:ブロッキング発生せず
×:ブロッキング発生
【0034】
マスターバッチMB−1〜MB−4は、含フッ素ポリマーおよび結合剤の配合量において本発明の要件を満足するものであり、マスターバッチ製造中にブロッキングが発生することもなく良好なものが得られた。また、マスターバッチMB−5は、含フッ素ポリマーの配合量が規定量(20部)を超えており、ブロッキングが発生した。マスターバッチMB−6は、結合剤の配合量が規定量(0.2部)より少なかったが、ブロッキングは発生しなかった。マスターバッチMB−7は、結合剤の配合量が規定量(1.7部)を超えているが、ブロッキングは発生しなかった。
【0035】
(実施例1〜4および比較例1〜3)
ブロッキングが発生したもの(試料番号:MB−5)を除き、得られたマスターバッチ・サンプルを用いて、実際に難燃性熱可塑性樹脂組成物を作成し、燃焼性、機械的性質、成形品の外観を評価した。また、マスターバッチに代えて、マスターバッチ化しないポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業社製ネオフロンFA500)を用いて表2に示す配合成分、配合比率にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0036】
尚、難燃性熱可塑性樹脂組成物の作成方法、評価方法は、それぞれ以下のとおりである。
(難燃性熱可塑性樹脂組成物の作成)
得られたマスターバッチのサンプルをそれぞれ用いて、表2に示す配合比率にて熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂、難燃剤とともにタンブラーを用いて乾式混合し、二軸押出機(神戸製鋼製KTX37)を用いて、溶融温度280℃にて溶融混練し、難燃性熱可塑性樹脂組成物のペレットを作成した。また、比較例1ではマスターバッチ化しないポリテトラフルオロエチレンを用いて同様の操作を行い、難燃性熱可塑性樹脂組成物のペレットを作成した。
【0037】
使用した材料の詳細は、以下のとおりである。
▲1▼ ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ社製カリバー200−20パウダー
(粘度平均分子量:18700、カサ比重:0.4)
▲2▼ 臭素系難燃剤:
テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー
(グレートレークス社製BC−52)
▲3▼ 炭化促進剤:
4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩(以下、KPTSMと略す)
▲4▼ ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略す):
(ダイキン工業社製ネオフロンFA500)
【0038】
(試験片の作成)
得られた難燃性熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(日本製鋼社製J100E−C5)を用いて溶融温度300℃にて1.5mm厚のUL94燃焼試験片、ASTM D256に準拠する機械的性質の評価用試験片(アイゾット衝撃試験用試験片) を作成した。
【0039】
(評価方法)
得られた各試験片を用いて種々の評価を行った。試験方法および合否の判定基準は、以下のとおりである。
−UL94燃焼性験
該試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間放置し、アンダーイターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、以下のクラスに分けられる。
上に示す残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片が有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
評価の基準は、ここではV−0を合格とした。
【0040】
−ノッチ付アイゾット衝撃強度
23℃における、1/8インチ厚のノッチ付アイゾット衝撃強度をASTMD256に準拠して測定した。
−引張破断強度、引張破断伸び
ASTM D638に準拠して測定を行なった。
−外観判定
1号ダンベル試験片の表面を目視で観察し、シルバーストリークの有無を判定し、シルバーストリークが発生しなかったものを合格とした。
【0041】
【表2】
表2 難燃性熱可塑性樹脂組成物の配合処方と評価結果
*1 : ○:シルバーストリーク発生せず。
×:シルバーストリーク発生
【0042】
実施例1〜4は、本発明の要件を満足するマスターバッチを使用して難燃性熱可塑性樹脂組成物を作成した場合であるが、いずれもの場合も燃焼性、機械物性、外観に優れており、何ら問題は認められなかった。一方、PTFEのマスターバッチを使用せずPTFEそのものを配合した場合(比較例1)および結合剤の配合量が少なく本発明の要件を満足しないマスターバッチ(MB−6)を配合した場合(比較例2)には、機械物性のみならず燃焼性や外観等全ての面において性能が劣っていた。また、結合剤の配合量が多く本発明の要件を満足しないマスターバッチ(MB−7)を配合した場合(比較例3)には、難燃性、外観は低下しないものの機械的性質が劣っていた。
【0043】
【発明の効果】
本発明の繊維形成型の含フッ素ポリマーのマスターバッチを使用することにより、繊維形成型含フッ素ポリマーの熱可塑性樹脂マトリクス中での凝集を防止することができる。また、熱可塑性樹脂および難燃剤とともにこれを配合することにより難燃性、機械的性質さらには表面外観に優れる難燃性熱可塑性樹脂を容易に得ることができる。
Claims (3)
- ポリカーボネート樹脂、難燃剤(B)およびポリテトラフルオロエチレンの粉状マスターバッチを必須成分としてなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物において、ポリテトラフルオロエチレンの粉状マスターバッチが、
1)ポリカーボネート樹脂、難燃剤(B)およびポリテトラフルオロエチレンの粉状マスターバッチの合計量を基準にして、0.2〜50重量%含有し、かつ
2)粉状のポリカーボネート樹脂100重量部、ポリテトラフルオロエチレン2〜20重量部およびそれらの結合剤(ハ)0.2〜1.7重量部からなり、粉状のポリカーボネート樹脂を結合剤(ハ)で湿潤させ、これにポリテトラフルオロエチレンを粘着させて得られる粉状のマスターバッチであること、ならびに
前記2)に記載の結合剤の融点が40〜100℃であること、
を特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 - 結合剤(ハ)が、オクダデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 結合剤(ハ)の配合量が、0.2〜1.3重量部である請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
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