JP4617086B2 - 難燃性フィルム及びそれを用いた住宅用内装材、電気製品又は印刷用フィルム - Google Patents
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Description
難燃性フィルムは、基材フィルムが持つ機械的強度などの物性の低下や透明性、外観を著しく損ねることなく、難燃性が付与され、かつ、上記環境上の問題の少ない特性が求められている。
また、基材フィルムの一方の面へ無機膜を設けて難燃性とした壁紙や印刷物用シートが知られている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、無機膜としては酸化物、弗化物、金属などの単体の無機酸化物膜、及び金属酸化物ゾル(所謂、ゾルゲル法)が開示されるのみで、外面からの着火、延焼遅延、延焼防止について、さらに、斯かるシートをその気体透過性に着目し、難燃性向上へ応用することについては、記載も示唆もされていない。
請求項1の発明に係わる難燃性フィルムは、直接又は他の層を介して、基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機物層を有する難燃性フィルムにおいて、前記無機物層がバリア性を有する酸化窒化炭化アルミニウム層、又は酸化窒化炭化チタン層のいずれかであり、前記酸化窒化炭化アルミニウム層を構成する酸化窒化炭化アルミニウムが、一般式AlOxNyCzにおいて、x=0.1〜1.4、y=0.1〜0.9、z=0.1〜2.0の範囲の組成であり、前記酸化窒化炭化チタン層を構成する酸化窒化炭化チタンが、一般式TiOxNyCzにおいて、x=1.0〜1.8、y=0.5〜1.0、z=0.3〜1.5の範囲の組成であるように、したものである。
請求項2の発明に係わる難燃性フィルムは、上記無機物層の厚さが5〜500nmであるように、したものである。
請求項3の発明に係わる難燃性フィルムは、請求項1〜2のいずれかに記載の難燃性フィルムにおいて、JIS−K7129に準拠する透湿度が10g/m2day以下、及び/又はJIS−K7126に準拠する酸素透過度10cm3/m2day以下であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる難燃性フィルムは、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性フィルムにおいて、UL94規格VTM−0の難燃性を有するように、したものである。
請求項5の発明に係わる難燃性の住宅用内装材、電気製品又は印刷用フィルムは、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性フィルムを用いたように、したものである。
(1)窒化炭化珪素層、窒化炭化アルミニウム層、窒化炭化チタン層、酸化窒化炭化アルミニウム層、又は酸化窒化炭化チタン層が外部からの熱及び酸素の侵入を遮蔽する障壁(バリア)となって、その発生時間を遅らせる、
(2)侵入酸素による基材フィルムの分解を抑制させる、さらに、優れた難燃性のために、必要に応じて積層されている他の層へ難燃剤を含有させる場合でも、その含有量を減ずることができる。基材フィルムの基本性能を維持したまま、環境への負荷の少なく環境適性に優れ、任意のフィルムに難燃性を付与できる難燃性を有している難燃性フィルムが得られる。また、本発明で用いた無機物膜は薬品処理により、膜剥離させることができ、特に、本発明で用いた炭素を含有する無機物は、熱アルカリ(例えば、60℃の1Nの水酸化ナトリウム水溶液)にて剥離が可能であり、焼却処理ではなく、基材フィルムのリサイクル及びリユースも可能となる。
(3)発生した可燃ガスが窒化炭化珪素層、窒化炭化アルミニウム層、窒化炭化チタン層、酸化窒化炭化アルミニウム層、又は酸化窒化炭化チタン層で遮蔽され外部へ揮散しにくく、発火及び分解による可燃ガスの発生を抑制する作用を見出し、本発明に至った。
このため、発火、着火、燃焼及び延焼を著しく遅延させ、仮に発火して焼け焦げ状態となっても、窒化炭化珪素層、窒化炭化アルミニウム層、窒化炭化チタン層、酸化窒化炭化アルミニウム層、又は酸化窒化炭化チタン層は部分的でも外部との接触を遮断し、酸素の供給を減じ、延焼を防止する。さらに、優れた難燃性のために、必要に応じて積層されている他の層へ難燃剤を含有させる場合でも、その含有量を減ずることができる。基材フィルムの基本性能を維持したまま、環境への負荷の少なく環境適性に優れ、任意のフィルムに難燃性を付与できる難燃性を有している難燃性フィルムが得られる。
請求項2の本発明によれば、難燃性に優れる難燃性フィルムが提供される。
請求項3の本発明によれば、連続生産で生産性が高く、低コストで、かつ透湿度及び/又は酸素透過度が低く、可燃ガスの発生を抑制する難燃性に優れる難燃性フィルムが提供される。
請求項4の本発明によれば、UL規格の「薄肉材料の垂直燃焼試験」に準拠する難燃性評価がVTM−0に相当し、信頼性に優れる難燃性フィルムが提供される。
請求項5の本発明によれば、廃棄焼却時にも塩素、ダイオキシンなどの有害物質を排出しない、難燃性の住宅用内装材、電気製品又は印刷用フィルムが提供される。
図1は、本発明の1実施例を示す難燃性フィルムの断面図である。
図2は、本発明で好適に使用できるCVD装置の説明図である。
まず。基材フィルム11としては、機械的強度に優れ、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、屈曲性、電気絶縁性等があれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セロファン、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、ニトロセルロースなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネート、環状ポリオレフィンなどの非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリビニールアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルフォン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリ樹脂、などが適用できる。
(表面処理)該表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層、その他等を形成して設けることができる。また、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
上記の前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
即ち、無機物としては、無機酸化物(MOx)、無機窒化物(MNy)、無機酸化炭化物(MOxCz)、無機窒化炭化物(MNyCz)、無機酸化窒化物(MOxNy)、無機酸化窒化炭化物(MOxNyCz)で、好ましいMは、Si、Al、Tiである。
真空成膜法によれば、緻密で隙間の少ない可撓性に富む連続層とすることができるので、透湿度及び/又は酸素透過度が低く、可燃ガスの発生を抑制する難燃性に優れ、また、連続生産で生産性が高く、低コストとできる。
本発明での無機物層25は、単独あるいは複数を併用して、無機物層25の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成してもよい。また、無機物層25を両面に設ける場合には、一方の面へ形成した後に、他方の面に同様に形成すればよい。
また、上記の炭素を含有しない無機物に関しては、イオンプレーティング法にて作製が可能である。この製法で作製した非炭素含有無機物もCVD法と同等に、十分な可撓性及び密着性を持つことができ、好適に用いることが出来る。
低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができ、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
該低温プラズマ化学気相成長法(プラズマCVDという)による無機物25膜の形成法について、好適に使用できるその一例を説明する。プラズマCVD装置200としては、真空容器210、ガス供給部、真空ポンプ、電源、及び図示しない制御装置からなり、真空容器210は、給紙部211、成膜部213、及び巻取部215からなっている。成膜部213は、成膜する無機酸化物に応じて、例えばa室221、b室223、c室225などの複数の部屋からなる。真空容器210内の給紙部211に配置された巻き出しロールから基材フィルム11を繰り出し、ガイドロールを介して所定の速度で冷却、電極ドラム231周面上に搬送する。ガス供給部は、ガス供給装置及び原料揮発供給装置等から、酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等のモノマーガス、その他等を供給し、それらの単独又は混合ガス組成物を調整しなから真空容器210内へ導入する。
また、無機酸化物、無機窒化物又は無機酸化窒化物膜としては、無機酸化物、無機窒化物又は無機酸化窒化物膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよい。
酸化珪素などの無機酸化物膜の膜厚は、無機酸化物膜の堆積速度を大きくすること、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や基材の走行速度を遅くする方法等によって行うことができ、適宜選択すればよい。その膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いてファンダメンタルパラメーター法、JOBIN YVON社製のエリプソメーターUVISELTM(商品名)などで測定することができる。
次に、酸化炭化珪素等の炭素を含む無機物膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメトキシシランなどを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシランなどの公知のものを、1種又は2種以上を原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に、好ましい原料である。また、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
x値がこの範囲未満ではTi−O結合が減少して膜応力が大きくなり、基材フィルムからの剥離や薄膜に欠けが生じて、バリア性が低下し、この範囲を超えると薄膜の酸化が進行して官能基が多く形成されるために、耐熱性や耐湿性に欠ける薄膜となって、難燃性が劣化する。
y値がこの範囲未満では膜密度が小さく緻密な膜ができないので、バリア性が低下し、この範囲を超えるとTi−N結合が増加して薄膜が硬質化するので、可とう性に欠けて外力によってバリア性が低下しやすく、難燃性が劣化する。
z値がこの範囲未満では基材フィルムとの界面での炭素含有成分が減少して、基材フィルムとの密着性が低下し、この範囲を超えると炭素含有成分が増加して、膜吸収により着色が発生する。
更に、基材と無機薄膜層を薬品処理で剥離することができ、例えば、SiOxCzは熱アルカリ液(例えば、1NのNaOH水溶液)、AlOxは無機酸(例えば、1Nの塩酸)にて容易に剥離できる。層を構成する材料を分離することにより、基材のリサイクル及びリユースが可能とできる。
さらに、又は印刷用フィルムとしては、車内広告、ポスター、カレンダー類などがある。
また、廃棄焼却時にも塩素、ダイオキシンなどの有害物質を排出しないので、環境への負荷の少なく環境適性に優れる。
さらに、特に、本発明で用いた炭素を含有する無機物は、熱アルカリ(例えば、60℃の1Nの水酸化ナトリウム水溶液)にて剥離が可能であり、焼却処理ではなく、基材フィルムのリサイクル及びリユースも可能となる。
本発明の難燃性フィルムは、直接又は他の層を介して、基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機物層を設けるが、他の層を印刷層として、基材/印刷層/無機酸化物層、無機窒化物層又は無機酸化窒化物層の構成としてもよい。無機酸化物層、無機窒化物層、無機酸化窒化物層、無機酸化炭化物層、無機窒化炭化物層又は無機酸化窒化炭化物層は透明性が高く、溶剤を用いないため、印刷層上に設けることが容易で、印刷効果も高い。また、印刷層は任意に設けてもよく、印刷層/基材/無機酸化物層、無機窒化物層、無機酸化窒化物層、無機酸化炭化物層、無機窒化炭化物層又は無機酸化窒化炭化物層、基材/無機酸化物層、無機窒化物層、無機酸化窒化物層、無機酸化炭化物層、無機窒化炭化物層又は無機酸化窒化炭化物層/印刷層、などの構成がとれる。
[参考例1]
[参考例2]
[参考例3]
[参考例4]
[参考例5]
[参考例6]
[参考例7]
[参考例8]
[参考例9]
[参考例10]
[参考例11]
[参考例12]
[参考例13]
[参考例14]
[参考例15]
[参考例16]
[参考例17]
[参考例18]
[参考例19]
[実施例1]
[実施例2]
基材として厚さが25μmの東洋紡エステルE5000(東洋紡績社製、PETフィル
ム商品名)を用いて、膜厚15nmのTiOxNyCz膜を、表に記載の条件によるプラ
ズマCVD法で形成して、難燃性フィルムを得た。
基材として厚さが25μmの東洋紡エステルE5000(東洋紡績社製、PETフィルム商品名)をもちいて、金属酸化物層を設けない未蒸着フィルムを比較例1の難燃性フィルムとした。
11:基材フィルム
25:金属酸化物層
200:CVD装置
210:真空容器
211:給紙部
213:成膜部
215:巻取部
221:a室
223:b室
225:c室
231:電極ドラム
241、243、245:電極
251.253、255:ガス供給ノズル
Claims (5)
- 直接又は他の層を介して、基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機物層を有する難燃性フィルムにおいて、前記無機物層がバリア性を有する酸化窒化炭化アルミニウム層、又は酸化窒化炭化チタン層のいずれかであり、
前記酸化窒化炭化アルミニウム層を構成する酸化窒化炭化アルミニウムが、一般式AlOxNyCzにおいて、x=0.1〜1.4、y=0.1〜0.9、z=0.1〜2.0の範囲の組成であり、
前記酸化窒化炭化チタン層を構成する酸化窒化炭化チタンが、一般式TiOxNyCzにおいて、x=1.0〜1.8、y=0.5〜1.0、z=0.3〜1.5の範囲の組成であることを特徴とする難燃性フィルム。 - 上記無機物層の厚さが5〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性フィルム。
- 請求項1〜2のいずれかに記載の難燃性フィルムにおいて、JIS−K7129に準拠する透湿度が10g/m2day以下、及び/又はJIS−K7126に準拠する酸素透過度10cm3/m2day以下であることを特徴とする難燃性フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性フィルムにおいて、UL94規格VTM−0の難燃性を有することを特徴とする難燃性フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性フィルムを用いたことを特徴とする難燃性の住宅用内装材、電気製品又は印刷用フィルム。
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