JP4614502B2 - 凹穴型ドットマークの形成方法と同ドットマークを有する半導体ウェハ - Google Patents
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Description
【産業上の技術分野】
本発明は半導体ウェハの表面又は裏面に凹穴型のドットマークを形成する方法と、一部に隆起部を有するドットマークと前記形成方法により形成された凹穴型のドットマークとを有する半導体ウェハに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程にあっては、各工程ごとに多様で且つ厳密な製造条件を設定する必要があり、これらを管理するために、半導体ウェハの一部表面に数字、文字或いはバーコードなどからなるマーキングがドット表示される。しかして、半導体の製造工程数は100工程以上にもおよび、しかも各工程において多数の素子形成処理や平坦化処理がなされる。これらの処理を大別すると、キャパシタ形成工程、トランジスタ形成工程及び配線工程の3工程に分かれる。その基本操作は、予め設定された高温で且つ清浄な雰囲気中で、単結晶シリコンのウェハ表面に酸化やCVD法などによって酸化膜や窒化膜などの絶縁膜を形成し、レジストを塗布したのち露光して前記絶縁膜の表面に所望のパターンを形成し、次いでイオン注入や熱処理を行い、エッチングにより表面に残った絶縁膜を除去する。
【0003】
その後、洗浄によりシリコン表面上の自然酸化膜や汚染を除去して所望のキャパシタやトランジスタを形成し、これを繰り返し行って多層化する。キャパシタやトランジスタを形成後に所要の金属配線がなされる。また、更に配線などにより発生するギャップの埋め込みのために酸化膜などの各種の成膜がなされたのちCMPなどによる表面の平坦化処理がなされる。
【0004】
一方、上記ドットによるマーキングは、通常、連続パルスレーザビームを光学系を介して半導体ウェハの一部表面に照射することによりなされる。しかしながら、半導体ウェハにおけるマーキングは極めて狭い領域に限られているため、マーキングされるドットの大きさ及び数にも限界があり、そのマーキング領域、ドットの大きさ、ドット数がSEMI規格などにより規定されている。
【0005】
ドットマーキングがなされた半導体ウェハは、例えば特開平2−299216号公報に開示されている如く、He−Neレーザのレーザ光の照射による反射率の変化、或いは通常のレーザ光の熱波の振動の変化として読み取られ、その読み取られた情報に基づき、以降の製造工程における各種の製造条件が設定される。
一般には、1回の大エネルギーのレーザビーム照射により半導体ウェハの一部をスポット状に溶融除去して凹穴型のドットマークを形成しているが、この場合に溶融除去された溶融物がドット周辺に高く堆積し、或いは飛散してその飛散物がドットの周辺部に付着し、素子形成を不可能にして品質に大きな影響を与える。更には、YAGレーザによるドットマーキングの場合には、YAGレーザの特殊性により、或いはそのQスイッチ操作のためレーザ出力に変動が生じやすく、ドットの深さや大きさにバラツキが生じる。
【0006】
かかる不具合を解消すべく、例えば特開昭59−84515号公報、特開平2−205281号公報によると、比較的小さいエネルギーのパルスレーザ光を同一ポイントに重複して照射するものがある。前者にあっては、1個のドットを形成するにあたり各パルスごとに順次ドット径を小さくして、同一ポイントに複数回重複して照射し、ドットの孔径を順次小さくしながら深いドットを形成しており、後者にあっては、1回目のレーザパルス照射を1KHZ 以下の周波数とし、続いて照射されるレーザパルスの周波数を2〜5KHZ の高繰り返し周波数として、0.5〜1.0μm或いは1.0〜1.5μmの深さのドットを形成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、上記ドットに対する読み取りの不鮮明さ(以下、視認性という。)の原因の一つとしては上述の深さにあることも確かではあるが、ドットの深さが深くされていても、その開口部の径が大きい場合には、例えば所要の深さを得るに十分なレーザ光を照射する場合に、そのエネルギー密度は一般にガウシアン分布であるため、全体としては滑らかな曲面となってしまい、上述の如き読み取り手段では周辺との差を判断しがたい場合が生じる。
【0008】
一方、上記特開平2−205281号公報にはドット深さについて上述の如く0.5〜1.0μm或いは1.0〜1.5μmである旨が具体的に記載されているが、その径については何ら記載がなく、またそのドット形状についてもガウシアン形状であると紹介されているに過ぎない。
【0009】
また、上記特開昭59−84515号公報の開示によれば、第1回目のドットの開口径が100〜200μmに対して深さが1μm以下とあり、具体的には4回のレーザ光照射がなされることが記載されていることから、この場合のドット深さはせいぜい3〜4μmである。また同公報の図面から、1回に形成されるドット形状もガウシアン形状に近似している。
【0010】
従って、これらの公報に開示されたマーキング方法によれば、所要のドット深さ及びある程度の均整な大きさのドットが形成されると考えられるが、形成されたドット形状は従来の形状に近く、従って、上記視認性の点では相変わらず確実性に欠けているといわざるを得ない。また、形成されるドットの大きさ(径)についてみても、これを微小にするという点について格別の開示がなされていないことから、従来の寸法を変更するものではなく、従って現時点における、例えばSEMI規格で規定された数値を踏襲しているに過ぎず、ドット数及びドット形成領域についても実質的には大幅な増加が期待できない。
【0011】
一方、前述のごときマーキング法によると塵芥の発生を阻止し得ないとし、視認性に優れ、且つ塵芥の発生の少ない新たなレーザマーキング方法が、例えば特開平10−4040号公報により提案されている。この公報の開示によれば、パルスレーザビームを照射して液晶マスクパターンを半導体材料表面に投影し、ドットマークを刻印するレーザマーキング方法にあって、エネルギー密度を18〜40J/cm2 とすると共に、パルス幅を0.05〜0.40msに選定して、パルスレーザビームを半導体材料表面に照射し、半導体材料表面が溶融、再結晶化する過程でレーザ照射領域に多数の微小突起部を発生させている。
【0012】
このマーキング方法によれば、1画素単位を通過するレーザビームの照射により、被マーキング物品の表面には高さが略1μm以下で、直径が0.5〜1.0μm、相互の間隔が略1.5〜2.5μm、密度が1.6〜4.5×107 個/cm2 の多数の微小突起を形成して、その刻印時の塵芥の発生を抑えると共に、多数の微小突起群を光の乱反射で単一のマークとして捉えて視認性を確保するというものである。
【0013】
しかるに、かかる微小突起の一群を読み取ろうとすると、隣接するドットマークを構成する微小突起群との区別が難しく、単一のドットマークを特定するには複雑な画像処理技術を駆使する必要がある。
【0014】
本発明は、従来のこの種マークの視認性あるいはその形態や寸法から発生する課題を解決すべくなされたものであり、具体的な目的は微小であるにも関わらず視認性に優れると共に、マーキング領域を大幅に拡大することができ、しかもコンタミ等の発生を極力押さえることができるドットマークの形成方法と同ドットマークを有する半導体ウェハを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
本発明者等が先に提案したドットマークは、レーザビームをエネルギー源として被マーキング物品の表面にマーキングされるドットマークであって、個々のドットマークの中央部が被マーキング物品の表面から下方に陥没する凹穴部、又は上方に隆起する隆起部を有しており、そのマーキング表面に沿った長さは、従来の1/100と微小であるにも関わらず、その凹穴状のドットマークのアスペクト比は0.5〜0.67と従来の0.02〜0.03と比べると極めて大きく、また隆起状ドットマークにあっても、その特異な形態から光学的に極めて視認性に優れたものとなる。
【0016】
しかして、本発明者等は多様な実験を重ねるなかで、偶然に微小で且つ深く、その内面が平滑な視認性に優れた凹穴型のドットマークが形成されることを見出した。すなわち、例えば先に提案済みのマーキング方法により形成された隆起状の微小ドットマークとそのマーク形成領域に、図6(b)に示すように酸化膜や窒化膜などの絶縁膜を形成したのち、同図(c)に示すごとく偶然に隆起状ドットマークを被覆する絶縁膜の頂点部分が機械的に削り取られ、そこにピンホール状の孔があき、内部のシリコン面が外部に露呈したシリコンウェハの表面にウェトエッチング液を付与したところ、同図(d)に示すような前記孔の内部がウェハ面よりも下方に陥没した凹穴形状となっていることを発見した。
【0017】
そこで、複数の新たなシリコン基板面に上記操作を行ったところ、いずれにおいても前記微小な孔が形成されていることが確認された。しかも、その出来上がった孔は絶縁膜で実質的に被覆されており、内面形状は極めて平滑であることも確認された。この形態の変換現象は、上記隆起状ドットマークの露呈シリコン面にウェットエッチング液が浸入し、膜下のシリコン基板をエッチングした結果生じたものである。
【0018】
請求項1に係る発明は、前記現象を踏まえて完成されたものであり、その構成は半導体ウェハの表面又は裏面にウェハ面から一部が隆起する隆起部を有する所要数のドットマークを形成すること、前記半導体ウェハに絶縁膜を形成すること、前記ドットマークの隆起部表面に形成された絶縁膜の一部を除去して、前記隆起部の一部表面を外部に露呈させること、及びウェットエッチング液により前記隆起部の一部露呈部からエッチングし、隆起部を有する前記ドットマークを凹穴型ドットマークに変換することを含んでいることを特徴とする微小な凹穴型ドットマークの形成方法にある。
【0019】
半導体ウェハの表面又は裏面に最初に形成される一部に隆起部を有するドットマークは、そのマーク形成面に沿った最大長さが1〜15μmと極めて微小であり、例えばレーザビームの照射によって前記ドットマークを形成しても、そのエネルギー密度が従来と比較して極めて小さいため、コンタミなどの発生が効果的に抑制される。また、この隆起部を有するドットマークの形成は、レーザビームに止まらず、他の例えば化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition)を利用して形成することもできる。
【0020】
ここで、本発明にあって隆起状のドットマークを半導体ウェハの表面又は裏面に始めに形成しておく理由は、次のとおりである。
その理由の1は、以降の絶縁膜形成工程及びエッチング工程を経て形成される本発明の凹穴型ドットマークは、その形態と凹穴型に変換されたのちにも絶縁膜で被覆されていることから、半導体素子の製造工程において各種の加工液などにより侵されず、また機械的な接触からも保護され、しかもその形成領域によっては配線工程において不透明な膜も形成されず、形態が微小ではあっても幅と深さが比例するものとしてアスペクト比(深さ/幅)は1/6〜2/3と、従来の凹穴型ドットマークと比較しても極めて大きいため十分な視認性が確保できることにある。因みに、上記特開昭59−84515号公報の開示に開示された凹穴型のドットマークは、幅が100μmで、深さの最大が4μmであることから、そのアスペクト比はせいぜい0.04である。
【0021】
理由の2は、前記隆起状のドットマーク自体は、半導体の多様な製造工程を経てもその形態が維持される領域が存在することと、その特異な形態のため、例えアスペクト比が小さくても極めて視認性に優れていることにある。
【0022】
従って、形成領域によっては半導体製造の各工程前に形成された上述の形態と構造をもつ凹穴型と隆起状のドットマークの少なくとも一方が、全工程の終了後も視認性を失うことなく残存することになるため、凹穴型と隆起状の形態及び構造をもつドットマークを複数の領域に形成しておけば、半導体の全製造工程の終了後であっても加工履歴が把握できるようになる。
【0023】
本発明者等の過去の実験によっても、仮に微小な凹穴型のドットマークであったとしてもアスペクト比が大きければ十分な視認性を確保できることが判明している。
具体的には、本発明の対象となる微小寸法である凹穴型のドットマークであれば、アスペクト比が大きいため、明視野であれば、例えばLEDのような弱照明であっても、ドット部分は暗く周辺が明るく、その明暗差が大きいことから確実に視認できる。
【0024】
また、暗視野の場合には白色光のような強い照明下では、ドット部分が十分に明るく周辺が暗くなり十分な明暗差が得られるため、同じく優れた視認性が確保できるが、LEDのような弱照明の場合にはドットマークと周辺との明暗差が小さくなり、視認性に劣る。
【0025】
一方、隆起部を有するドットマークにあっては、上述のとおりアスペクト比が小さくても、暗視野であれば照明の強弱に関わらず十分な視認性が得られるが、明視野ではドットマークと周辺との明暗差が小さくなり、視認性に劣ったものとなる。
【0026】
従って、暗視野で照明強度を強くすれば、CCDカメラの受光感度の上限に達するため、視認性に関して隆起部を有するドットマークと凹穴型のドットマークとの優位性に差は生じないが、ウェハへの影響を考慮すると白色光源のような発熱体を光源として使用することは好ましくなく、可能であればLEDのような弱照明下での読取りができる機器構成を採用することが望ましい。
【0027】
請求項2に係る発明は、ウェハ面の一部に、ウェハ面から陥没する凹穴部と同凹穴部の周辺から同凹穴部の上方に隆起し、頂点部分にピンホール状の穴が空いた絶縁膜からなる隆起部とを有する凹穴型のドットマークが形成されてなることを特徴とする半導体ウェハを構成としている。上述のごとき微小ではあっても、アスペスト比が大きく且つ酸化膜や窒化膜等の絶縁膜で被覆された凹穴型のドットマークであれば、その形態変化が少なく視認性も確保できることから、かかる形態と構造をもつドットマークが形成された半導体ウェハであれば、半導体の全製造工程における加工履歴とその特性等を十分に把握することが可能である。
【0028】
請求項3に係る発明は、前記凹穴部は幅と深さのアスペクト比(深さ/幅)が1/6〜2/3であることを特徴としている。かかる構成を備えることにより、上述のとおりその形態変化が少なく視認性も確保できることから、半導体の全製造工程における加工履歴とその特性等を十分に把握することが可能となる。
【0029】
請求項4に係る発明は、前記凹穴型のドットマークがウェハの外周ベベル面及び/又はノッチベベル面に形成されていることを規定するものである。
半導体の製造工程にあって、キャパシタやトランジスタの製造工程ではウェハ表面には透明な酸化膜や窒化膜等の絶縁膜が形成され、配線の形成工程では導電膜が形成される。そして、絶縁膜はウェハ周面やノッチ内面の各ベベル部にも形成されるが、配線時のウェハ表面に形成される導電膜はせいぜいウェハ周面やノッチ内面の各表面側のベベル部に僅かに形成されるに過ぎず、その裏面側には形成されない。
【0030】
また、仮に凹穴型のドットマークに絶縁膜が堆積しても、膜自体が透明であるため視認性に影響がないが、凹穴型のドットマークに導電膜が形成されると照明光の反射が大きすぎて、周辺との明暗差が生じないため視認性は極端に低下する。一方、隆起状のドットマークにあっては、その表面に各種の成膜がなされても、その成膜処理によって隆起状が崩れることがないため視認性が低下するようなことはない。
【0031】
しかしながら、配線工程にあっては回路が多層に形成されるたびに各層間に絶縁膜が形成され、このときの表面には配線による段差が生じることから、イオン注入時に形成される膜厚と比べる絶縁膜の膜厚が格段に厚く形成され、しかもその絶縁膜の形成後には前記段差をなくすためウェハ表面に化学的機械研磨(CMP)による平滑化処理がなされる。その結果、前記隆起状の微小なドットマークは消失してしまう。
【0032】
それに引換え、上記ウェハ周面やノッチ内面の各ベベル部に形成される各種の膜は、後の上記平滑化処理の影響を受けることがなく、膜が残された状態でも隆起状の形態は残り、凹穴型では例え絶縁膜によって被覆されても、絶縁膜が透明であるため、その視認性は確保される。従って、この極めて狭小なベベル面領域にドットマークを形成することができるのであれば、例え配線工程後であってもドットマークを読み取ることができる。その点、本発明による凹穴型及び隆起状のドットマークともに、その最大幅が1〜15μmであることから極めて狭小なノッチのベベル面領域であっても十分な情報量をもつドットマークを形成することができる。
【0033】
しかも、形成されたドットマークは、隆起状のドットマークは言うに及ばす、例え微小な凹穴型のドットマークであってもそのアスペクト比が大きいため、既述したとおり十分な視認性が確保される。更に、一旦形成された凹穴型のドットマークに絶縁膜が堆積したとしても、絶縁膜は透明であるため視認性が低下せず、複数の工程を経ても確実に読み取ることができるため、半導体製造の全工程における加工履歴とその物性が半導体の実装後も的確に把握でき、各種電子製品のメンテナンスにも的確に対応できる。
【0034】
【発明の実施形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら具体的に説明する。
先ず、本発明の凹穴型のドットマークを形成する前に半導体ウェハの一部に形成されるドット状の隆起マーク形態を形成するために使用されるマーカの好適な例を、本発明者等により先に提案した上記先願に開示されたレーザマーカに基づいて簡単に説明する。
【0035】
図1において、レーザマーカ1は、レーザ発振器2と、前記レーザ発振器2から照射されるレーザビームのエネルギー分布を平滑化するビームホモジナイザ3と、パターンの表示に合わせて前記レーザビームを透過/非透過駆動される液晶マスク4と、前記液晶マスク4の1画素に対応レーザビームのエネルギー密度分布を所要の分布形状に成形変換するビームプロファイル変換手段5と、前記液晶マスク4の透過ビームをドット単位で半導体ウェハ表面に結像させるレンズユニット6とを備えている。
【0036】
上記レーザマーカ1にあって、レーザ発振器2から出射されるガウシアン形状のエネルギー密度分布を有するレーザビームを、まずビームホモジナイザ3を通して、尖頭値がほぼ均一なトップハット型のエネルギー密度分布形状に成形する。こうしてエネルギー密度分布が均一に成形されたレーザビームは、次いで液晶マスク4の表面に照射される。このとき、液晶マスク4は広く知られているように所要のマーキングパターンをマスク上に駆動表示することが可能であり、前記レーザビームは同パターン表示領域内の光透過可能な状態にある画素部分を透過する。この各画素ごとに分割されて透過したのちの各透過光のエネルギー密度分布も、前記ビームホモジナイザ3により成形された形状と同一であって均一に分布されている。
【0037】
上記ビームホモジナイザ3は、例えばガウシアン形状のエネルギー密度分布をもつレーザ光を、平滑化されたエネルギー密度分布の形状に成形するための光学部品を総称する。この光学部品としては、例えばフライアイレンズやバイナリーオプティクス、シリンドリカルレンズを使用して、そのマスク面上に一括照射するか或いはポリゴンミラーやミラースキャナなどのアクチュエータによるミラー駆動によってマスク面上を走査させる方式がある。
【0038】
本実施形態にあって、前記液晶マスク4にレーザビームをもって一括照射するが、液晶マスク4のドット数では必要とする全てのドットマーク数を満足し得ないことが多いため、マークパターンを数区画に分割して順次液晶マスクに表示させ、これを切り換えながら組み合わせて全体のマークパターンをウェハ表面に形成するようにすることもできる。この場合、ウェハ表面に結像させるときはウェハ又は照射位置を当然に制御移動させる必要がある。かかる制御手法としては従来から公知とされている様々な手法が採用できる。
【0039】
上記液晶マスク4を通過したドット単位のレーザビームを、続いてビームプロファイル変換器5に照射する。このビームプロファイル変換器5は前記液晶マスク4のマトリックス状に配された個々の液晶に対応して同じくマトリックス状に配列されている。従って、液晶マスク4を透過したレーザビームは、1対1に対応してドットごとに前記ビームプロファイル変換器5を通過して、ビームホモジナイザ3によりそれぞれに平滑化されたエネルギー密度分布へと変換される。本実施形態では前述のごとく液晶マスク4を通過した後のレーザビームを、ビームプロファイル変換器5を通過させて、そのエネルギー密度分布形状を変換しているが、ビームプロファイル変換器5によるエネルギー密度分布のプロファイルを変換させることなく、次のレンズユニット6に直接導入することもある。
【0040】
ミクロン単位のマーキングを複数のウェハ表面に均一に形成しようとする場合には、そのマーキング面と集光レンズとの間の距離や光軸合わせをミクロン単位で調節する必要がある。本実施形態によれば、焦点検出はレーザ顕微鏡などで一般に使用されている共焦点方式で高さ計測を行い、この値からレンズの縦方向の微小位置決め機構にフィードバックさせて、自動的に焦点の位置決めがなされる。また、光軸合わせや光学構成部品の位置決め及び調整は、一般的に知られた方法が採用され、例えばHe−Neレーザなどのガイド光を通じて、予め設定されている基準スポットに適合させるべくネジ調整機構などによって調整する。この調整は組立時に一回だけ行えばよい。
【0041】
図2及び図3は、上記レーザマーカにより半導体ウェハWの表面に当初形成されるドットマークM′の典型的な形状例と配列状況とを示している。なお、図2はAFMにより観察した立体図であり、図3は断面図である。本実施形態によれば、半導体ウエハWの表面に結像される各光像の大きさは3.6μmの方形であり、各ドット間隔は4.5μmとした。これらの図からも理解できるように、半導体ウエハWの表面には液晶マスク4の各画素に対応して分割されたレーザビームごとの略円錐状のドットマークM′が形成され、しかも、そのドットマークM′は11個×10個に整然と並んでおり、それぞれの高さもほぼ揃っている。これは、液晶マスク4に照射されるレーザビームのエネルギー分布をビームホモジナイザ3により均一に平滑化されたがためである。
【0042】
図4及び図5は、本実施形態により採用された上記レーザマーカ1により形成される特有のドットマーク形態を示している。これらの図に示されたドットマークM′は、一辺が4μm及び9μmの方形状の光像により得られ、周辺に浅いリング状の凹部が形成され、その中央部が上方に高く隆起した略円錐状の隆起部を備えている。このドット形態にあっては、その隆起部に極めて輝度の高い部分が生じて周辺との輝度差は大きくなり、充分な視認性が確保される。本実施形態における絶縁膜IFが形成される前のドットマーク形態及びドットマーキング方法は、半導体ウェハ表面の各ドット単位ごとの領域に正確に且つ整然と従来の3/20〜1/100の大きさの均一な形態をもつ単一の微小なドットマークM′を形成することができる上に、そのドット状のマーク形態が従来にない中央部が隆起した特異な形態を有している。
【0043】
また、本実施形態によるドットマークM′が前述のごとく従来のドットマークの大きさよりも大幅に微小化され、しかも隣接するドットマークM′との境界が判然と区別できるため、同一領域に多くのドットマークM′が形成でき、そのマーキング領域が大幅に増大するばかりでなく、同時にマーキング領域の選定にも自由度が増える。
【0044】
本実施形態にあっては、以上のようにして得られるドットマークM′を、図7に示すごとく半導体ウェハのノッチNの近傍外周面及びノッチNの表裏側のそれぞれ4か所に形成したのち、同マークM′を含むウェハ面に酸化膜を形成する。次いで、前記ドットマークM′が形成された領域に機械部品の一部を軽く接触させたのちに、ウェットエンチング液をもってエッチング処理を行った。その結果、図8(a)及び(b)に示す本発明による凹穴型の形態をもつドットマークMが形成された。
【0045】
本発明にあって、前記凹穴型のドットマークMは通常の半導体製造工程を利用しても形成することができる。既述したとおり、一般に半導体製造工程はキャパシタ形成工程、トランジスタ形成工程及び配線工程に分けられる。従来にあっては、この種のドットマークは半導体ウェハWのオリフラ近傍の表面に形成されるが、前記工程にあって少なくとも配線工程を経ると、導電膜の形成により凹穴型ドットマークが被覆されてしまい、読み取りのために光を照射しても全体が強く光ってしまい、全く読み取れなくなることが知られている。
【0046】
そこで、半導体の製造工程に入る前に、前記導電膜による影響が少ないか、全く影響がない上記4か所のベベル面領域に上記隆起状ドットマークM′を予め形成し、全ての半導体装置の各製造工程終了後に抜き取って読み取りを行ったところ、ウェハ裏面側の周面ベベル面とノッチNの内面ベベル面に上述のごとき本発明の凹穴型のドットマークが形成されていることが判明した。これは、絶縁膜IFで被覆された隆起状ドットマークM′の頂点部に形成された絶縁膜IFが途中で機械的な干渉を受けてピンホール状に切除され、その後のエッチング工程により隆起状から凹穴型に変換したものと推定できる。一方、ウェハ表面側の周面ベベル面とノッチNの内面ベベル面には絶縁膜IFにより被覆された隆起状のドットマークM′がその形態を維持したまま残されていた。
【0047】
こうして得られた凹穴型及び隆起状の微小なドットマークM,M′を読み取るには、ウェハへの影響を考慮したとき、白色光源のような発熱体を光源として使用することは好ましくなく、可能であればLEDのような弱照明下での読取りができる機器構成を採用することが望ましい。既述したとおり、暗視野では強力な光源を使って照明すれば凹穴型であっても隆起状であってもドットマークの視認性は確保されるが、白色光のような加熱体による照明ではウェハの電気的特性に影響を与えやすく、且つ周辺温度の制御が難しいことから回避すべきである。
【0048】
一方、上記隆起状のドットマークM′の場合には、その形態から暗視野でLEDなどの弱い照明によっても視認性は十分に確保できることが判明している。また、凹穴型のドットマークMにあっても、明視野では同じくLEDなどの弱い照明によっても視認性は十分に確保できる。そこで、本発明による凹穴型及び隆起状の微小なドットマークM,M′を読み取るには、ウェハ裏面側のベベル面に形成された凹穴型のドットマークMに対して明視野で読み取り、表面側のベベル面に形成される隆起状ドットマークM′に対しては暗視野で読み取ることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の特異な形態をもつドットマークM′を形成するレーザマーカの一例を模式的に示す説明図である。
【図2】前記マーカにより形成された典型的な隆起状のドットマークM′の形態とその配列状態を示すAFMにより観察した立体図である。
【図3】同断面図である。
【図4】本発明の実施形態による隆起状のドットマークM′の一例を示すAFMによる観察斜視図である。
【図5】他の実施形態による隆起状のドットマークM′の一例を示すAFMによる観察斜視図である。
【図6】前記隆起状ドットマークM′から凹穴型のドットマークMに変換する変換機構の説明図である。
【図7】本発明の実施形態によるドットマークの形成領域例を示す半導体ウェハの部分斜視図である。
【図8】本発明による凹穴型のドットマークMの形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 レーザマーカ
2 レーザ発振器
3 ビームホモジナイザ
4 液晶マスク
5 ビームプロファイル変換器
6 縮小レンズユニット
W 半導体ウェハ
M′ 隆起状ドットマーク
M 凹穴型のドットマーク
IF 絶縁膜
Claims (4)
- 半導体ウェハの表面又は裏面にウェハ面から一部が隆起する隆起部を有するドットマークを所要数形成すること、
前記半導体ウェハに絶縁膜を形成すること、
前記ドットマークの隆起部表面に形成された絶縁膜の一部を除去して、前記隆起部の一部表面を外部に露呈させること、及び
ウェットエッチング液により前記隆起部の一部露呈部からエッチングして、隆起部を有する前記ドットマークを凹穴型ドットマークに変換させること、
を含んでなることを特徴とする微小な凹穴型ドットマークの形成方法。 - ウェハ面の一部に、ウェハ面から陥没する凹穴部と同凹穴部の周辺から同凹穴部の上方に隆起し、頂点部分にピンホール状の穴が空いた絶縁膜からなる隆起部とを有する凹穴型のドットマークが形成されてなることを特徴とする半導体ウェハ。
- 前記凹穴部は幅と深さのアスペクト比(深さ/幅)が1/6〜2〜3であることを特徴とする請求項2記載の半導体ウェハ。
- 前記凹穴型のドットマークがウェハの外周ベベル面及び/又はノッチベベル面に形成されてなる請求項2又は3記載の半導体ウェハ。
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