JP4608672B2 - ステント付きグラフト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば血管、尿管、胆管、気管などの人体の管状器官に挿入、配置されるステント付きグラフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、血管、尿管、胆管、気管などの人体の管状器官における治療のため、カテーテルを通してステントを挿入し配置することが行われている。例えば血管の狭窄部にステントを配置して拡張したり、動脈瘤が形成された箇所にステントを配置して動脈瘤の破裂を防止する治療方法が知られている。特に動脈瘤の治療においては、ステントの外周にグラフトという織布を被覆してなるステント付きグラフトが使用されている。
【0003】
従来のステントとして、例えば特開平11−57021号公報には、所定本数の線条がサインカーブ状に撚り組まれて円筒篭状の組み紐構造に形成されており、その円筒篭状の組み紐構造の両末端は線条の折り返しまたは接合によりループ構造に形成してあり、全体として各線条が末端のない無限ループとなっていることを特徴とするステントが開示されている。
【0004】
また、特開平10−328216号公報には、編み込まれた形態に螺旋状に巻かれた複数の繊維からなる第1の部分及び第2の部分を有し、この第1の部分と第2の部分とが間隙率の大きな分岐部分で連結された構造のステントが開示されている。このステントは、上記第1の部分及び第2の部分を、脈管の分岐部を挟んで上流側及び下流側にそれぞれ固定し、上記間隙率の大きな分岐部分を、脈管の分岐部を横切るように配置させて、脈管の分岐部における血液の流通を妨げないようにすることができる。
【0005】
更に、特開2000−279529号公報には、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には外径が圧縮され、生体内留置時には外径が拡張して元の形状に復元する自己拡張型体腔内留置用ステントと、該ステントの外径を圧縮させた状態で先端部内面に保持した内側シースと、該内側シースを収納する外側シースと、前記ステントを生体内にて吐出させる吐出機構とを備える体腔内病変部治療用器具であり、前記ステントは、側面が膜により被覆されており、前記外側シースは、先端より前記内側シースの先端部を吐出可能であるとともに、少なくとも先端より若干基端側となる位置に血液流通用開口を備えていることを特徴とする体腔内病変部治療用器具が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらのステントは、カテーテルの先端部内周に装着された状態で、人体の管状器官の所定箇所まで運ばされ、そこでカテーテルから押し出されることによって、管状器官内に留置されるようになっている。
【0007】
本発明の目的は、筒状カバーがあっても縮径させて小径のカテーテル内に挿入しやすく、また、血管の動脈瘤などの治療において、動脈瘤ができた血管内に配置したとき、両端部が血管の内壁に密接して、血管内壁との隙間に血液が流れ込まないようにすることができる、人体の管状器官の内壁との密接力に優れたステント付きグラフトを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のステントは、金属線材を平織りして編んで筒状に形成してなるステントと、該ステントの少なくとも内周及び/又は外周の全てを覆う筒状カバーとを備えたステント付きグラフトにおいて、前記ステントは、その軸方向に沿って見たときに、前記金属線材が密に編まれた部分と、疎に編まれた部分とを有し、少なくとも両端部が密に編まれた部分で構成されており、前記密に編まれた部分は、同じパターンの編みを位置をずらして2回行うことによって編まれていることを特徴とするステント付きグラフトを提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、縮径させてカテーテルに挿入するとき、金属線材が疎に編まれた部分がより小さな径となるので、この部分に筒状カバーの折り重なった部分を集めて配置することにより、全体としての外径を小さくできるので、カテーテル内に挿入しやすくなる。
【0010】
また、例えば血管の動脈瘤が形成された部分の内壁に留置したとき、金属線材が密に編まれた部分における拡張力が大きいので、ステント付きグラフトの両端部が血管内壁に良好に密接し、ステント付きグラフトと血管内壁との間に血液が流れ込むことを防止できる。
【0011】
更に、全体を均一な密度で編んだステントに比べて、密に編んだ部分と疎に編んだ部分とを有するステントの方が、拡径時と縮径時とで軸長の変化が少なく、管状器官に挿入するときに位置ずれを起こしにくいという利点が得られる。
【0012】
本発明の第2は、上記第1の発明において、前記密に編まれた部分と、前記疎に編まれた部分とは、それぞれ周方向に沿って環状に形成されているステント付きグラフトを提供するものである。
【0013】
なお、筒状カバーは、縫着、接着、溶着などの公知の固定手段を用いて、本発明のステントの一部又は全部に固定することができる。特に、筒状カバーは、本発明のステントの端部又は端部付近に固定することが好ましい。
筒状カバーは、本発明のステントの外周及び/又は内周を覆うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜5には本発明によるステント付きグラフトの一実施形態が示されている。図1は同ステント付きグラフトの外周の筒状カバーを一部切り欠いて示す斜視図、図2は同ステント付きグラフトのステントを示す斜視図、図3は金属線材の編みパターンを示す展開図、図4は同ステント付きグラフトの縮径状態と拡径状態を示す側面図、図5は同ステント付きグラフトを血管の動脈瘤の内側に配置した状態を示す説明図である。
【0015】
図1に示すように、このステント付きグラフト10は、所定本数の金属線材21をメッシュ状かつ筒状に編んで形成したステント20と、このステント20の外周の全てを覆う筒状のカバー30とを有している。
【0016】
ステント20は、図2に示すように、軸方向に沿って見たとき、金属線材21が密に編まれた部分22と、疎に編まれた部分23とを有している。密に編まれた部分22は、ステント20の少なくとも両端部に形成されていることが必要である。また、この実施形態では、両端部の密に編まれた部分22で挟まれた間の部分が、疎に編まれた部分23となっているが、密に編まれた部分22と疎に編まれた部分23とが交互に複数回繰り返すようなパターンとなっていてもよい。
【0017】
図3に示すように、密に編まれた部分22と、疎に編まれた部分23とは、金属線材21の編みパターンを部分的に変えることによって形成できる。この実施形態では、ほぼ格子状に平織りするに当って、密に編まれた部分22では、同じパターンの編みを位置をずらして2回行っており、疎に編まれた部分23に比べて、金属線材21の密度が2倍、言いかえると格子の目の大きさが1/2になっている。こうして得られたステント20は、自己拡張型のステントである。
【0018】
本発明において、密に編まれた部分22と、疎に編まれた部分23との金属線材の密度の差は、密に編まれた部分の密度を1としたとき、疎に編まれた部分の密度が1.1〜3倍、好ましくは1.1〜2.5倍、より好ましくは1.1〜2倍、特に好ましくは1.2〜2倍となるように設定することが好ましい。また、密に編まれた部分22と、疎に編まれた部分23とは、それぞれ周方向に沿って環状に形成されることが好ましい。
【0019】
なお、本発明に用いるステントは、全体が編まれていることが必要であり、複数のステントを線材で連結することによって密な部分と疎な部分とを設けた構造は含まないものとする。
【0020】
また、本発明に用いるステントは、金属線材を編み込む際に密な部分と疎な部分を形成したものであり、編み込んだ後に一部の線材を切断・削除した構造を含まないものとする。
【0021】
更に、本発明に用いるステントは、線材の編み込み角度(交差角度)を変化させることなく、疎密構造を形成したものであって、線材の編み込み角度を変更することにより、軸方向に粗密構造を有するステントは含まないものとする。
【0022】
金属線材21の交差点は、固着されていない方が好ましく、それによって、線材21どうしのずれの自由度が高まり、カテーテル挿入時の縮径や、カテーテルから押出したときの拡径をしやすくすることができる。金属線材21の端部どうしが重なる部分は、例えば半田、金属ろう、接着剤等で固着してもよい。
【0023】
なお、金属線材21の材料としては、熱処理による形状記憶効果や、超弾性が付与される形状記憶合金が好ましく採用されるが、用途によってはステンレス、タンタル、チタン、白金、金、タングステンなどを用いてもよい。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などが好ましく使用される。また、形状記憶合金の表面に金、白金などをメッキ等の手段で被覆したものであってもよい。金属線材21の太さは、特に限定されないが、例えば血管用ステント等の場合には、0.08〜1mmが好ましい。
【0024】
筒状カバー30は、熱可塑性樹脂を押出し成形、ブロー成形などの成形方法で円筒状に形成したもの、円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の編織物、円筒状に形成した熱可塑性樹脂の不織布、円筒状に形成した可撓性樹脂のシートや多孔質シートなどを用いることができる。編織物としては、平織、綾織などの公知の編物や織物を用いることができる。また、筒状カバー30としては、クリンプ加工などのヒダの付いたものを使用することもできる。
【0025】
これらの中でも、筒状カバー30としては、特に円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の編織物、更には円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の平織りの織物が、強度及び有孔度、生産性が優れるため好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂などの耐久性と組織反応の少ない樹脂などを用いることができる。
【0027】
特に、化学的に安定で耐久性が大きく、組織反応の少ない、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂を好ましく用いることができる。
【0028】
上記筒状カバー30は、縫着、接着、溶着等の手段によって、ステント20に固着することができる。この場合、ステント20の縮径や拡径を妨げないように、ステント20への固着箇所を選定する必要がある。なお、筒状カバー30は、少なくとも上記ステント20の外周及び/又は内周の全てを覆う又は被せる必要がある。
【0029】
なお、本発明のステント付きグラフト10は、ステントの一部がグラフトにより覆われたものや、ステントの内面及び/又は外面のすべてが筒状カバーにより覆われても、グラフトの一部を切除又は削除してあるようなものは含まないものとする。
【0030】
筒状カバー30や、該カバーを構成する繊維、更にステント20を構成する金属線材21は、ヘパリン、コラーゲン、アセチルサリチル酸、ゼラチン等の抗血栓性材料で被覆処理されているものを用いることもできる。
【0031】
また、上記ステント付きグラフト10の適当な箇所、例えば両端部等には、X線不透過性材料が固着されていてもよい。X線不透過性材料としては、例えば金、白金、イリジウム、タンタル、タングステン、銀等や、それらを含有する合金などが好ましく使用される。X線不透過性材料は、ステント20に、半田付け、ろう付け、溶着、接着、カシメ等の手段で固着することができる。
【0032】
また、こうして得られた本発明のステント付きグラフト10は、その外径が2〜50mm、長さが1〜20cm程度であることが好ましい。
【0033】
次に、上記ステント付きグラフト10の使用方法について説明する。このステント付きグラフト30は、血管、尿管、胆管、気管支などの人体管状器官のあらゆる箇所に適用可能であるが、特に血管の動脈瘤の内側に配置して、血液が動脈瘤内に流入することを阻止し、動脈瘤の破裂を防止する治療に好適である。
【0034】
動脈瘤の治療のために血管に挿入する場合の手順の一例を説明すると、次の通りである。まず、常法によりガイドワイヤを血管内に挿入し、その先端を患部に位置させた後、ガイドワイヤ外周に沿って親カテーテルを挿入し、その先端が目的箇所に到達したら、ガイドワイヤを引き抜く。
【0035】
そして、ステント付きグラフト10を、図4(A)に示すように縮径させて、子カテーテルの先端部に挿入する。このとき、ステント付きグラフト10のステント20の疎に編まれた部分23は、密に編まれた部分22に比べて、金属線材21の数が少ないので、より小さく縮径することができる。そして、ステント付きグラフト10の筒状カバー30は、縮径させたときに周方向に弛んで折り重なった状態になるが、この折り重なった部分を、上記疎に編まれた部分23の外周に寄せて収容することにより、ステント付きグラフト10を、内径の小さな子カテーテルにも容易に挿入することができる。
【0036】
こうして子カテーテルの先端が患部に到達したら、子カテーテル内にプッシャを挿入して、図5に示すように、ステント付きグラフト10を血管Aの動脈瘤A’の内側に押出す。すると、ステント付きグラフト10は、自己拡張型であるため、それ自信の拡張力によって図4(B)に示すように拡径する。その結果、ステント付きグラフト10は、その両端部が動脈瘤A’の両端部内周に密接して配置される。
【0037】
このとき、ステント付きグラフト10を構成するステント20は、金属線材21をメッシュ状かつ筒状に編んで形成したものであるため、血管Aの屈曲した形状に自然に適合し、かつ、血管Aの内周に隙間なく密着する。また、ステント20の両端部は、金属線材21が密に編まれた部分22をなしているので、ステント付きグラフト10の特に両端部における拡張力が強くなっており、ステント付きグラフト10の両端部における血管Aの内壁に対する密接度が向上する。その結果、血管A内を流れる血液は、ステント付きグラフト10内を通り、動脈瘤A’内に流入しないので、動脈瘤A’の破裂等の危険を回避することができる。
【0038】
また、このステント付きグラフト10では、ステント20に、その軸方向に沿って見たとき、密に編まれた部分22と、疎に編まれた部分23とを設けたことにより、図4における縮径させた状態(A)と、拡径させた状態(B)とで、軸方向の長さ変化が少なくなるという利点がもたらされる。その理由は、詳細にはわからないが、縮径させたときに、密に編まれた部分22が疎に編まれた部分23の方向へ侵入するように伸びることにより、ステント20全体として見たときの軸方向への伸びを抑制して、拡径したときの軸方向長さとの差が少なくなるためと考えられる。
【0039】
なお、本発明のステント付きグラフトは、上記のような動脈瘤の治療などの用途に特に好適であるが、人体の管状器官の分岐部分に挿入、配置することが必要とされる用途には適していない。
【0040】
【実施例】
実施例1
線径300μmの形状記憶合金線材を、図3に示すようなパターンで、円筒状に編むことにより、拡径時における外径30mmφ、長さ90mmのステント20を作成した。このステント20の拡径時における密な部分22の軸方向長さは30mm、疎な部分23の軸方向長さは30mmであった。
【0041】
このステント20の外周全面に、ポリエステル製の織布からなる筒状カバー30を被せ、ステント20の両端部において、筒状カバー30をステント20に縫着して固定した。こうして、本発明のステント付きグラフト10を得た。
【0042】
このステント付きグラフト10の拡張力を外径が10mmφのときの反力として測定したところ、両端部における拡張力は330gfであり、長手方向中央部における拡張力は200gfであった。
【0043】
また、内径22mmφの筒状カバー(外周)30を被覆したステント付きグラフト10を、その外径が7mmになるように縮径させたところ、ステント付きグラフト10の軸方向長さは110mmになった。すなわち、上記縮径時には、軸長が13%伸びることがわかる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、縮径させてカテーテルに挿入するとき、金属線材が疎に編まれた部分がより小さな径となるので、この部分に筒状カバーの折り重なった部分を集めて配置することにより、全体としての外径を小さくできるので、カテーテル内に挿入しやすくなる。
【0045】
また、例えば血管の動脈瘤が形成された部分の内壁に留置したとき、金属線材が密に編まれた部分における拡張力が大きいので、ステント付きグラフトの両端部が血管内壁に良好に密接し、ステント付きグラフトと血管内壁との間に血液が流れ込むことを防止できる。
【0046】
更に、全体を均一な密度で編んだステントに比べて、拡径時と縮径時とで軸長の変化が少なく、管状器官に挿入するときに位置ずれを起こしにくいという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるステント付きグラフトの一実施形態であって、筒状カバーを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図2】同ステント付きグラフトのステントを示す斜視図である。
【図3】同ステントの金属線材の編みパターンを示す展開図である。
【図4】同ステント付きグラフトの縮径状態と拡径状態を示す側面図である。
【図5】同ステント付きグラフトを血管の動脈瘤の内側に配置した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 ステント付きグラフト
20 ステント
21 金属線材
22 密に編まれた部分
23 疎に編まれた部分
30 筒状カバー
A 血管
A’ 動脈瘤
Claims (2)
- 金属線材を平織りして編んで筒状に形成してなるステントと、該ステントの少なくとも内周及び/又は外周の全てを覆う筒状カバーとを備えたステント付きグラフトにおいて、
前記ステントは、その軸方向に沿って見たときに、前記金属線材が密に編まれた部分と、疎に編まれた部分とを有し、少なくとも両端部が密に編まれた部分で構成されており、
前記密に編まれた部分は、同じパターンの編みを位置をずらして2回行うことによって編まれていることを特徴とするステント付きグラフト。 - 前記密に編まれた部分と、前記疎に編まれた部分とは、それぞれ周方向に沿って環状に形成されている請求項1記載のステント付きグラフト。
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