JP4605854B2 - 光学情報媒体用基板製造用ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学情報媒体用基板製造用ポリカーボネート樹脂に関する。更に詳細には、本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応に付すことにより製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂であって、複数の芳香族ポリカーボネート主鎖を包含し、該複数のポリカーボネート主鎖は全体として、特定の異種結合単位(A)及び(B)を該ポリカーボネート主鎖上に特定量有する、重量平均分子量が13,000〜18,000のポリカーボネート樹脂に関するものである。
【0002】
本発明のポリカーボネート樹脂は、射出成形時に高い溶融流動性を発揮するため、本発明のポリカーボネート樹脂を光学情報媒体用基板の製造に用いると、低複屈折等の優れた光学的特性を有し且つ転写性が高い(即ち、スタンパー(基板に溝やピットを形成するための型)の情報が正確に転写されている)ためにDVD等の記録密度の高い光学情報媒体用基板として有利に用いることができる基板を得ることができる。更に本発明は、上記のポリカーボネート樹脂と酸性化合物とを含んでなるポリカーボネート樹脂組成物、並びに上記のポリカーボネート樹脂又は上記のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる光学情報媒体用基板に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、透明性などに優れたエンジニアリングプラスチックスとして、多くの分野において幅広く用いられている。特に近年の情報化の進展に伴い、音楽や映像用記録媒体及びパソコン等のデジタル情報記録媒体に用いるためのポリカーボネートの需要が拡大しており、ポリカーボネートはCD、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−R、MO、MD等の光ディスクや光カードなどを製造するためになくてはならない樹脂となった。
【0004】
光ディスク等の光学情報媒体用の基板の製造においては、微細なグルーブやピットを正確に成形することが必要であることから、このような用途に用いられるポリカーボネートには、高い転写性及び低複屈折等の優れた光学的特性が要求される。従って、光学情報媒体用基板の製造には、重量平均分子量が15,500程度の、高い流動性を有する低分子量ポリカーボネートが現在使用されている。しかしながら、近年、記録媒体が従来のCDから記録密度の増大したDVDへの移行が始まっている。そのような記録密度の増大した光学情報媒体用基板には非常に微細なグルーブやピットを形成することが必要である。
【0005】
従って、光学情報媒体用基板製造用の樹脂として、今まで以上に高度な転写性を発揮するポリカーボネートが要求されるようになってきた。更に、CD用基板は厚さが1.2mmであるのに対し、DVD用基板は厚さが0.6mmであることから、薄い基板を成形するためにより高い溶融流動性を有するポリカーボネートの需要が高まっている。CD用基板の製造に従来用いられているポリカーボネートを用いて、従来CD用基板の成形に用いられている温度(約300〜320℃程度)でDVD用基板を成形すると、ポリカーボネートの溶融流動性が不足して充分な転写性が得られない。
【0006】
そこで、従来のポリカーボネート成形技術においては考えられない380〜390℃という高温(一般のポリカーボネートの成形温度は270〜300℃、CD用基板の成形温度は約320℃)にすることでポリカーボネートの溶融粘度を低下させてDVD用基板を成形している。しかし、高温成形においては、ポリカーボネートの熱劣化、成形サイクルが長くなる、成形品の反りが大きくなる等の問題点がある。また、光学記録媒体の中でも特に長期保存用記録媒体に対する需要が増大しており、長期保存を可能とするためには高温高湿条件下における安定性が要求される。
【0007】
これまで光学情報媒体用基板用途には、ホスゲン法で製造されたポリカーボネートが使用されてきた。しかしながら、ホスゲン法で製造したポリカーボネートは、(1)製造時に取扱いの難しいホスゲンを使用すること、(2)溶媒として塩化メチレンを使用することによって、ポリカーボネート中に不純物として塩素イオンや塩化メチレンが残存し、不純物による成形時の熱安定性の低下や金型腐食がおきること、(3)更に光学情報媒体用基板の品質が低下することなどの問題があった。
【0008】
その為、特開昭63−316313号公報(米国特許4,880,896号明細書に対応)、特開平4−146922号公報、特開昭63−97627号公報(米国特許4,798,767号明細書に対応)をはじめとする種々の文献に、上記の不純物を低減した組成物や、ポリカーボネートの不純物を低減するための方法が数多く提案されている。しかし、上記のような高温成形においては、高温成形時にポリカーボネート中に微量に残留している塩化メチレンの塩酸への転化率が増加することから、従来の不純物の低減方法よりも完全な不純物の除去が望まれている。
【0009】
一方、ポリカーボネートからこれら不純物を完全に除去するには多大な労力が必要となるため、近年ではホスゲンや塩化メチレンを使用しないエステル交換法ポリカーボネートが注目されている。
しかし、エステル交換法で得られたポリカーボネートは、ホスゲン法で得られたポリカーボネートに比べて多くの水酸基末端を有しており(高分子分析ハンドブック、朝倉書店発行345頁、1985年を参照)、高温成形の際には熱劣化が大きく、光学情報媒体用基板の製造には用いることができない。
現状では、光学情報媒体用基板、特に高温での成形が必要とされる、DVD等の高記録密度媒体用の基板の製造に用いることができる優れたエステル交換法ポリカーボネートが存在せず、その開発が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応に付すことにより製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂であって、複数の芳香族ポリカーボネート主鎖を包含し、該複数のポリカーボネート主鎖は全体として、特定の異種結合単位(A)及び(B)を該ポリカーボネート主鎖上に特定量有する、重量平均分子量が13,000〜18,000のポリカーボネート樹脂は、射出成形時に高い溶融流動性を発揮するため、光学情報媒体用基板の製造に用いると、低複屈折等の優れた光学的特性を有し且つ転写性が高い(即ち、スタンパー(基板に溝やピットを形成するための型)の情報が正確に転写されている)ためにDVD等の記録密度の高い光学情報媒体用基板として有利に用いることができる基板を得ることができることを見い出した。
【0011】
更に本発明者らは、上記のポリカーボネート樹脂に酸性化合物を添加して得られる樹脂組成物を成形すると、高温高湿条件下においても微小な光学的欠陥(光を散乱させたり、光を遮断する、直径約200μm未満のクレーズ状の欠陥)の発生が非常に少ない成形体を得ることができることを見い出した。これらの知見に基づき本発明は完成されるに至った。
従って本発明の1つの目的は、射出成形時に高い溶融流動性を発揮するため、光学情報媒体用基板の製造に用いると、低複屈折等の優れた光学的特性を有し且つ転写性が高い(即ち、スタンパー(基板に溝やピットを形成するための型)の情報が正確に転写されている)ためにDVD等の記録密度の高い光学情報媒体用基板として有利に用いることができる基板を得ることができるポリカーボネート樹脂を提供することにある。
【0012】
本発明の他の1つの目的は上記ポリカーボネート樹脂と酸性化合物とからなるポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
更に本発明の他の1つの目的は上記ポリカーボネート樹脂又は上記のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる光学情報媒体用基板を提供することにある。
本発明の上記及び他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、次の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの態様によれば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応に付すことにより製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂であって、複数の芳香族ポリカーボネート主鎖を包含してなり、各芳香族ポリカーボネート主鎖は下記式(1)でそれぞれ独立に表わされる複数の繰り返し単位を含み、
【化6】
(式中、Arは2価のC5 〜C200 芳香族基を表わす。)
【0014】
且つ該複数のポリカーボネート主鎖は全体として少なくとも1つの異種結合単位(A)と少なくとも1つの異種結合単位(B)を該ポリカーボネート主鎖上に有し、該異種結合単位(A)は下記の式(2)で表わされ、
【化7】
(式中、Ar' は3価のC5 〜C200 芳香族基を表わし、Xは、それぞれ式、
【0015】
【化8】
(式中、Arは上記の通り)で表わされる繰り返し単位を含む、分子量214〜6,000のポリカーボネート鎖を表わす。)
【0016】
但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(A)を有する場合、複数の異種結合単位(A)は同じであっても異なっていてもよく、
該異種結合単位(B)は下記の式(3)で表わされ、
【化9】
(式中、Ar' は上記の通りである。)
【0017】
但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(B)を有する場合、複数の異種結合単位(B)は同じであっても異なっていてもよく、
上記式(2)におけるXは異種結合単位(A)及び(B)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの異種結合単位を含んでいてもよく、
異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰り返し単位(1)の合計モル量に対して0.03〜0.3モル%の範囲にあり、
異種結合単位(A)の量が、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計モル量に対して50モル%以上であり、
重量平均分子量が13,000〜18,000の範囲にあり、
粒径が5μm以上であり、且つ赤外線吸収分光法によって測定される、吸収波数1740cm −1 における該ポリカーボネート樹脂中の非カーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A 1 と吸収波数1780cm −1 における該ポリカーボネート樹脂中のカーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A 2 との比A 1 /A 2 で表される熱劣化度が0.2以上である熱劣化物粒子を、該ポリカーボネート樹脂100gに対して20個以下含むことを特徴とする、光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂が提供される。
【0018】
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応に付すことにより製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂であって、複数の芳香族ポリカーボネート主鎖を包含してなり、各芳香族ポリカーボネート主鎖は下記式(1)でそれぞれ独立に表わされる複数の繰り返し単位を含み、
【化10】
(式中、Arは2価のC5 〜C200 芳香族基を表わす。)
【0019】
且つ該複数のポリカーボネート主鎖は全体として少なくとも1つの異種結合単位(A)と少なくとも1つの異種結合単位(B)を該ポリカーボネート主鎖上に有し、該異種結合単位(A)は下記の式(2)で表わされ、
【化11】
(式中、Ar' は3価のC5 〜C200 芳香族基を表わし、Xは、それぞれ式
【0020】
【化12】
(式中、Arは上記の通り)で表わされる繰り返し単位を含む、分子量214〜6,000のポリカーボネート鎖を表わす。)
【0021】
但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(A)を有する場合、複数の異種結合単位(A)は同じであっても異なっていてもよく、該異種結合単位(B)は下記の式(3)で表わされ、
【化13】
(式中、Ar' は上記の通りである。)
【0022】
但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(B)を有する場合、複数の異種結合単位(B)は同じであっても異なっていてもよく、上記式(2)におけるXは異種結合単位(A)及び(B)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの異種結合単位を含んでいてもよく、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰り返し単位(1)の合計モル量に対して0.03〜0.3モル%の範囲にあり、異種結合単位(A)の量が、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計モル量に対して50モル%以上であり、重量平均分子量が13,000〜18,000の範囲にあり、粒径が5μm以上であり、且つ赤外線吸収分光法によって測定される、吸収波数1740cm −1 における該ポリカーボネート樹脂中の非カーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A 1 と吸収波数1780cm −1 における該ポリカーボネート樹脂中のカーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A 2 との比A 1 /A 2 で表される熱劣化度が0.2以上である熱劣化物粒子を、該ポリカーボネート樹脂100gに対して20個以下含むことを特徴とする光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。
【0023】
2.該異種結合単位(A)の量が、該異種結合単位(A)と異該種結合単位(B)の合計モル量に対して50〜95モル%であることを特徴とする前項1に記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。
【0024】
3.該ポリカーボネート樹脂の有する末端水酸基の量が、該ポリカーボネート樹脂の末端基の合計モル量に対して5〜50モル%であることを特徴とする前項1又は2に記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。
【0025】
4.該繰返し単位(1)の85%以上が下記式(1’)で表されることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。
【化14】
5.芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの溶融混合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルと反応させることを包含するプロセスによって得られる溶融プレポリマーとからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合原料を、複数の反応域において段階的エステル交換反応に付して、前項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、該重合原料の段階的エステル交換反応を下記式(4)を満足する反応条件で行うことを特徴とする光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【数2】
i :反応系の複数の反応域に任意の順序で付された反応域番号
Ti :i番目の反応域における重合原料の平均温度(℃)
Hi :i番目の反応域における重合原料の平均滞留時間(hr)
ki :下記式で示される係数
ki=1/aTi −b
但し、Tiは上記の通りであり、aとbはTiに依存し、
Ti<240℃の時
a=1.60046×10 5
b=0.472
であり、240℃≦Ti<260℃の時
a=4×10 49
b=19.107
であり、そして、260℃≦Tiの時
a=1×10 122
b=49.082
6.前項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂を成形して得られるDVD用基板。
【0026】
7.(I)前項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂100重量部と、(II)酸性化合物0.1×10−4〜100×10−4重量部、とを含んでなる光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂組成物。
8.前項7に記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるDVD用基板。
9.ディスク性能評価機を用いて、ディスク基板の半径方向で測定した屈折率の最大値と最小値との差を示す複屈折が20nm以下である前項6又は8に記載のDVD用基板。
10.ディスク性能評価機を用いて、ディスク中心から50mmの位置の平均グルーブ深さ(D 1 )とスタンパーのグルーブ深さ(D 2 )とから、(D 1 /D 2 )×100の式を用いて計算した転写性(%)が95%以上である前項6、8、9のいずれかに記載のDVD用基板。
11.前項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂、又は前項7の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂組成物を成形温度300〜370℃、金型温度50〜130℃、成形サイクル3〜10秒の条件下で厚さ0.6mmに射出成形することを特徴とする前項6、8〜10のいずれかに記載のDVD用基板の製造方法。
【0027】
本発明のポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応に付すことにより製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂である。また、本発明のポリカーボネート樹脂は複数の芳香族ポリカーボネート主鎖を包含してなるポリカーボネート樹脂であって、各芳香族ポリカーボネート主鎖は上記式(1)でそれぞれ独立に表わされる複数の繰り返し単位を含み、且つ該複数のポリカーボネート主鎖は全体として少なくとも1つの異種結合単位(A)と少なくとも1つの異種結合単位(B)を該ポリカーボネート主鎖上に有している。
【0028】
該異種結合単位(A)は上記式(2)で表わされ、但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(A)を有する場合、複数の異種結合単位(A)は同じであっても異なっていてもよく、該異種結合単位(B)は上記式(3)で表わされ、但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(B)を有する場合、複数の異種結合単位(B)は同じであっても異なっていてもよい。
上式(1)、式(2)及び式(3)において、Arは2価のC5 〜C200 芳香族残基を示し、Ar’は、該Arの水素原子1つが置換された3価のC5 〜C200 芳香族残基である。二価の芳香族残基であるArは、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレンや、―Ar1 ―Q―Ar2 ―(Ar1 及びAr2 は、各々独立にそれぞれ炭素数5〜70を有する2価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表し、Qは炭素数1〜30を有する2価のアルカン基を表す)で表される2価の芳香族基である。
【0029】
2価の芳香族基Ar1 、Ar2 においては、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっても良い。
複素環式芳香族基の好ましい具体例としては、1ないし複数の環形成窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する芳香族基を挙げる事ができる。
2価の芳香族基Ar1 、Ar2 は、例えば、置換又は非置換のフェニレン、置換又は非置換のビフェニレン、置換または非置換のピリジレンなどの基を表す。ここでの置換基は前述のとおりである。
【0030】
2価のアルカン基Qは、例えば、下記式で示される有機基である。
【化15】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 は、各々独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基、環構成炭素数5〜10の炭素環式芳香族基、炭素数6〜10の炭素環式アラルキル基を表す。kは3〜11の整数を表し、R5 およびR6 は、各Zについて個々に選択され、お互いに独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Zは炭素を表す。また、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 において、一つ以上の水素原子が反応に悪影響を及ぼさない範囲で他の置換基、例えばハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等によって置換されたものであっても良い。)
【0031】
このような2価の芳香族残基Arの具体例としては、下記式で示されるものが挙げられる。
【化16】
(式中、R7 、R8 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基またはフェニル基であって、mおよびnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R7 はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合には各R8 はそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。)
【0032】
さらに、2価の芳香族残基Arは、次式で示されるものであっても良い。
―Ar1 ―Z’―Ar2 ―
(式中、Ar1 、Ar2 は前述の通りで、Z’は単結合又は―O―、―CO―、―S―、―SO2 ―、―SO―、―COO―、―CON(R1 )―などの2価の基を表す。ただし、R1 は前述のとおりである。)
【0033】
このような2価の芳香族残基Arの具体例としては、下記式で示されるものが挙げられる。
【化17】
(式中、R7 、R8 、mおよびnは、前述のとおりである。)
【0034】
本発明で用いられる芳香族残基Arは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明における繰返し単位の好ましい例としては、上記の式(1’)で示される、ビスフェノールA由来の構造単位が挙げられる。特に、繰返し単位(1)の85%以上が式(1’)で表わされる単位であることが好ましい。
【0035】
また、異種結合単位(A)は、下記の式(2’)で表わされるビスフェノールA由来の構造単位であることが好ましい。
【化18】
(但し式中、Xは、上記式(2)において定義した通りである。)
【0036】
また、異種結合単位(B)は、下記の式(3’)で表わされるビスフェノールA由来の構造単位であることが好ましい。
【化19】
【0037】
本発明においては、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰り返し単位(1)の合計モル量に対して0.03〜0.3モル%の範囲にあり、好ましくは0.04〜0.25モル%の範囲にあり、特に好ましくは、0.05〜0.20モル%の範囲にある。また、異種結合単位(A)の量が、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計モル量に対して50モル%以上であり、好ましくは50〜99モル%、より好ましくは70〜97モル%、特に好ましくは80〜95モル%がである。
【0038】
異種結合単位(A)の量が上記範囲より少ない場合には、溶融流動性の改善効果が小さい。そのため、十分な溶融流動性を得るためにはより高い成形温度を用いることが必要になるが、上述したように、成形温度が高すぎるとポリカーボネートの熱劣化、成形サイクルが長くなる、成形品の反りが大きくなる等の問題が生じる。また、上記範囲よりも多い場合には、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性は改善されるものの、成形した基板の機械的強度の低下や高温高湿条件下における光学的欠陥が発生する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記の異種結合単位(A)と(B)の他に、下記に示す異種結合単位を任意に含んでいてもよい。
【0039】
【化20】
(但し、式中、Ar、Ar' 及びXは、上記式(1)及び(2)において定義した通りであり、Ar”は4価のC5 〜C200 芳香族基を表わし、Yは、それぞれ式
【0040】
【化21】
(式中、Arは上記の通り)
で表わされる繰り返し単位を含む、分子量214〜6,000のポリカーボネート鎖を表わす。)
芳香族ヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用いた場合には、上記の任意の異種結合単位は下記に示す構造単位であることが好ましい。
【0041】
【化22】
(但し、式中、X及びYは上記の通りである。)
【0042】
本発明においては、ポリカーボネート樹脂中の繰返し単位(1)及び異種結合単位(A)と(B)の定量は、ポリカーボネート樹脂を完全加水分解して、後述の実施例に記載の条件で逆相液体クロマトグラフィーを用いて行なう。ポリカーボネート樹脂の加水分解はPolymer Degradation and Stability 45(1994),127〜137 に記載されているような常温での加水分解法が、操作が容易で分解過程での副反応もなく、完全にポリカーボネート樹脂を加水分解できるので好ましい。また、本発明のポリカーボネート樹脂が上記の任意の異種結合単位を含む場合、任意の異種結合単位の定量は上記と同様の方法で行うことができる。
【0043】
本発明のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は13,000〜18,000の範囲にあり、好ましくは、13,000〜17,000の範囲にあり、より好ましくは13,500〜16,000の範囲にある。上記範囲より重量平均分子量が大きい場合には、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性が悪くDVD等の高密度光学情報媒体の基板の成形に用いることはできない。また、重量平均分子量が上記範囲より小さい場合には、成形して得られた情報媒体用基板の機械的強度が不十分になる。本発明においては、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の測定はGPCを用いて行う。測定条件は、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求める。
MPC=0.3591MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネートの分子量であり、MPSはポリスチレンの分子量である。)
【0044】
本発明のポリカーボネート樹脂においては、粒径が5μm以上であり、且つ赤外線吸収分光法によって測定される、吸収波数1740cm-1における該ポリカーボネート樹脂中の非カーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A1 と吸収波数1780cm-1における該ポリカーボネート樹脂中のカーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A2 との比A1 /A2 で表される熱劣化度が0.2以上である熱劣化物粒子の量が、該ポリカーボネート樹脂100gに対して20個以下であることが好ましい。上記の非カーボネート型エステル結合はポリカーボネート樹脂の熱分解によって生じる。
【0045】
上記熱劣化物の粒径は、熱劣化物粒子の最大径である。上記熱劣化物粒子はポリカーボネート樹脂が製造時の熱により分解して生じるものと考えられる。上記範囲より多量の熱劣化物粒子がポリカーボネート樹脂中に存在すると、情報媒体基板を成形した際に、基板強度が低下するので好ましくない。しかし、吸収強度比A1 /A2 が0.2より小さいものは、基板強度への影響が小さいと考えられる。赤外線吸収分光法において伸縮振動波長の位置は若干の変動や誤差があるので、吸収強度A1 としては、非カーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動数である1740±15cm-1の範囲に現れるピークトップの吸収強度を用い、吸収強度A2 としては、カーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動数である1780±15cm-1の範囲に現れるピークトップの吸収強度を用いる。
【0046】
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、末端水酸基の量が、該ポリカーボネート樹脂の末端基の合計モル量に対して5〜50モル%であることが好ましい。末端水酸基の量は、10〜40モル%の範囲であることが更に好ましく、15〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。末端水酸基の量が上記範囲より少ない場合には、均一な品質の情報媒体用基板が得られにくく、また、上記範囲より多い場合には、高温成形時の安定性が低下する傾向がある。末端水酸基比率の測定方法は、一般的にNMRを用いて直接測定する方法、チタン法、UVもしくはIR法で求めた末端水酸基量と全末端量とから算出して求めることができるが、本発明においては、以下の方法を用いて末端水酸基比率を求めている。具体的には、酢酸酸性塩化メチレンにポリカーボネート樹脂を溶解し、四塩化チタンを加え、生成した赤色錯体を546nmで測光定量すること(即ち、チタン法)によって末端水酸基量を求め、全末端量はGPCで測定した数平均分子量から求めた。
【0047】
以下に、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法に関して説明する。
上記したように、本発明のポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応法に付すことにより製造される。
本発明において芳香族ヒドロキシ化合物とは、式HO―Ar―OH(式中、Arは前記の通り)で表わされる化合物である。本発明のポリカーボネート樹脂を製造するための芳香族ジヒドロキシ化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせても良い。
【0048】
また、これら芳香族ジヒドロキシ化合物は、塩素原子とアルカリまたはアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、出来れば実質的に含有していないことが好ましい。具体的には塩素原子の含有量は0.5ppm以下であることが好ましく、アルカリまたはアルカリ土類金属の含有量は0.1ppmであることが好ましい。塩素原子の含有量の測定はイオンクロマト法で行うことができ、アルカリまたはアルカリ土類金属の含有量の測定は、原子吸光分析法で行うことができる。
【0049】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造に用いられる炭酸ジエステルは、下記式で表される。
【化23】
(式中、Ar3 とAr4 はそれぞれ1価のC5 〜C200 芳香族基を表わし、同じであっても異なっていてもよい。)
【0050】
Ar3 及びAr4 は、1価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表すが、このAr3 、Ar4 において、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっても良い。
1価の芳香族基Ar3 及びAr4 の代表例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ピリジル基を挙げる事ができる。これらは、上述の1種以上の置換基で置換されたものでも良い。
【0051】
好ましいAr3 及びAr4 としては、それぞれ例えば、下記式で表わされるものなどが挙げられる。
【化24】
【0052】
炭酸ジエステルの代表的な例としては、下記式で示される置換または非置換のジフェニルカーボネート類を挙げる事ができる。
【化25】
(式中、R9 及びR10は、各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を示し、p及びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合には、各R9 はそれぞれ異なるものであっても良いし、qが2以上の場合には、各R10は、それぞれ異なるものであっても良い。)
【0053】
このジフェニルカーボネート類の中でも、非置換のジフェニルカーボネート及び、ジトリルカーボネートやジ−t−ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーボネートが好ましいが、特に最も簡単な構造のジアリールカーボネートであるジフェニルカーボネートが好適である。
これらの炭酸ジエステル類は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、これら炭酸ジエステルは、塩素原子とアルカリまたはアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、出来れば実質的に含有していないことが好ましい。具体的には塩素原子の含有量は0.5ppm以下であることが好ましく、アルカリまたはアルカリ土類金属の含有量は0.1ppmであることが好ましい。塩素原子の含有量の測定はイオンクロマト法で行うことができ、アルカリまたはアルカリ土類金属の含有量の測定は、原子吸光分析法で行うことができる。
【0054】
本発明のポリカーボネート樹脂を製造する際に用いる芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの使用割合(仕込比率)は、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの種類や、重合温度その他の重合条件及び得ようとするポリカーボネートの分子量や末端比率によって異なり、特に限定はない。炭酸ジエステルは芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常0.9〜2.5モル、好ましくは0.95〜2.0モル、より好ましくは0.98〜1.5モルの割合で用いられる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂を製造する際には、末端変換や分子量調節のために芳香族モノヒドロキシ化合物や脂肪族アルコールを併用してもよい。
【0055】
本発明において、エステル交換法とは、上記化合物を触媒の存在下もしくは非存在下で、減圧下及び/又は不活性ガスフロー下で加熱しながら溶融状態又は固体状態でエステル交換反応にて重縮合する方法を意味する。エステル交換反応による重合方式、用いる装置等には制限はない。例えば、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー接触流下式重合器等を用い、これらを単独もしくは組み合わせることで容易に製造できる。また、溶融状態でエステル交換反応を行いプレポリマーを製造した後、固相状態で減圧下及び/又は不活性ガスフロー下で重合度を高める固相重合法でも製造できる。また、これらの反応器の材質に特に制限はないが、反応器の少なくとも内壁面を構成する材質は、通常ステンレススチールやニッケル、ガラス等から選ばれる。
【0056】
特定の異種結合単位(A)及び(B)をポリカーボネート主鎖上に特定量有する本発明のポリカーボネート樹脂を製造する具体的方法としては、ポリカーボネート樹脂をエステル交換法で製造する際に、式(2)及び式(3)で表される異種結合単位を形成する特定のジヒドロキシ化合物や3官能化合物や多官能化合物を添加して異種結合単位を導入する方法;このような化合物を添加することなく、重合温度、触媒、滞留時間等の製造条件を選択することで、重合過程で異種結合単位を発生させてポリカーボネート主鎖中に導入する方法;及び両者を併用する方法等が挙げられる。
【0057】
本発明においては、高温高湿条件下における光学的欠陥の発生が少なく、機械的特性と低温成形性のバランスに優れたポリカーボネート樹脂が容易に得られることから、製造条件を制御することで重合過程で異種構造を発生させ、それをポリカーボネート樹脂中に導入させる方法が好ましく用いられる。一般的にエステル交換法でポリカーボネート樹脂を製造する際に、芳香族ジヒドロキシ化合物がアルカリの作用をうけてKolbe-Schmitt 反応に類似した反応によって、下記式(α)で表される異種結合単位が生成することが知られている。
【0058】
【化26】
【0059】
しかし、反応条件を制御することで、式(α)の異種結合単位をほとんど生成することなく、式(2)で表される異種結合単位(A)及び式(3)で表される異種結合単位(B)をコントロールして導入することができる。
反応条件を制御して本発明のポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、国際公開出願特許WO97−32916号公報に記載の製造方法を用いることが好ましい。ポリカーボネート主鎖中に異種結合単位(A)及び(B)を導入する方法は、上記公報に記載されているように、ポリカーボネート樹脂製造時の温度と時間との関係を制御することによって行う。
【0060】
ポリカーボネート樹脂に導入される異種結合単位(A)及び(B)の量は、重合反応を行う際に重合原料(芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの溶融混合物及び/又は芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルと反応させることを包含するプロセスによって得られる溶融プレポリマー)を高温で長時間滞留するほど多くなり、特に異種結合単位(B)の導入量が温度が高くなるほど増加する傾向にある。従って、重合原料の温度と滞留時間との関係を制御することで、所望の量の異種結合単位をポリカーボネート樹脂に導入することができる。本発明においては、上記公報に記載の技術において、更に厳密にポリカーボネート樹脂製造時の温度と時間との関係を制御することによって、異種結合単位(A)及び(B)を上記の特定量有するポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0061】
具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの溶融混合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルと反応させることを包含するプロセスによって得られる溶融プレポリマーとからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合原料を、複数の反応域において段階的エステル交換反応に付すことを包含するポリカーボネート樹脂の製造方法において、該重合原料の段階的エステル交換反応を、下記式(4)を満足する反応条件で行う方法を用いることが好ましい。
【数3】
【0062】
i : 反応系の複数の反応域に任意の順序で付された反応域番号
Ti :i番目の反応域における重合原料の平均温度(℃)
Hi :i番目の反応域における重合原料の平均滞留時間(hr)
ki :下記式で示される係数
ki =1/aTi -b (5)
但し、Tiは上記の通りであり、aとbはTiに依存し、
Ti <240℃の時
a=1.60046×105
b=0.472
であり、240℃≦Ti <260℃の時
a=4×1049
b=19.107
であり、そして、260℃≦Ti の時
a=1×10122
b=49.082
である。
【0063】
【数4】
の値は好ましくは、0.3〜1.1の範囲にあり、特に好ましくは0.4〜1.0の範囲にある。
【0064】
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の連続製造においては、複数の反応域において重合原料の段階的エステル交換反応を行ない、温度や滞留時間及び反応圧力を段階的に変えるのが一般的である。
(4)式は、反応域のk×T×Hの総和を示しており、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの溶解混合槽、攪拌槽型反応器、遠心式薄膜蒸発反応器及び表面更新型二軸混練反応器を連結して連続重合した場合の
【数5】
は、(溶解混合槽でのk×T×H)+(溶解混合槽から攪拌槽型反応器までの配管でのk×T×H)+(攪拌槽型反応器でのk×T×H)+(攪拌槽型反応器から遠心式薄膜蒸発反応器までの配管のk×T×H)+(遠心式薄膜蒸発反応器でのk×T×H)+(遠心式薄膜蒸発反応器から表面更新型二軸混練反応器までの配管のk×T×H)+(表面更新型二軸混練反応器でのk×T×H)+(表面更新型二軸混練反応器から抜き出しノズルまでの配管のk×T×H)となり、配管までを含めた全ての反応域での総和を示している。
【0065】
この場合、i番目の反応域とは、各混合槽や反応器及びそれを連結する配管の各段階や各工程をいう。反応器と反応器を結ぶ配管の途中に加熱器がある場合は、反応器と加熱器までの配管、加熱器、加熱器と反応器までの配管をそれぞれi番目の反応域とする。ポリカーボネート樹脂の平均温度は、i番目の反応域内での温度の平均値をいい、温度が明らかに数段階に分かれていれば、その各段階に分割して、それぞれi番目の反応域として、該段階での平均温度を用いてもよい。平均温度の測定については、反応器や配管に設置した1つ以上の温度計の温度を平均してもよいし、温度計を設置していない場合には、ジャケットの熱媒の温度を用いてもよい。また、ジャケットの出入り口温度の平均値を用いてもよい。ヒーターや熱媒の設定温度を用いてもよい。平均滞留時間は各i番目の反応域でのポリカーボネートの保有量/1時間当たりの通過量もしくは抜き出し量で計算される。
【0066】
また、本発明のポリカーボネート樹脂を製造する際に用いる反応圧力は常圧から1mmHg以上低い圧力の範囲から選択されることが好ましく、反応域により異なる。また、重合反応に用いるシステムにおいて、最終段階の反応を行う重合器における反応圧力は5mmHg以下が好ましく、特に3mmHg以下が好ましく用いられる。
【0067】
また、エステル交換法による重合は、触媒を加えずに実施する事ができるが、重合速度を高めるため、所望ならば触媒の存在下で行われる。重合触媒としては、この分野で用いられているものであれば特に制限はないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化合物類;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar−OLi、NaO−Ar−ONa(Arはアリーレン基)などのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、(R1 R2 R3 R4 )NB(R1 R2 R3 R4 )または(R1 R2 R3 R4 )PB(R1 R2 R3 R4 )で表されるアンモニウムボレート類またはホスホニウムボレート類(R1 、R2 、R3 、R4 は前記の説明通り)などのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ素、ジフェニル−エチル−エトキシケイ素などのケイ素の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムフェノキシドなどのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレート、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシドなどのアルコキシ基またはアリーロキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛及び有機鉛のアルコキシドまたはアリーロキシドなどの鉛の化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシドまたはアリーロキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド又はアリーロキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウムの化合物類などの触媒を挙げる事ができる。
【0068】
触媒を用いる場合、これらの触媒は1種だけで用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、これらの触媒の使用量は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常10-8〜1重量%、好ましくは10-7〜10-1重量%、特に好ましくは10-6〜10-2重量%の範囲で選ばれる。
本発明のポリカーボネート樹脂は実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂である。具体的には、▲1▼硝酸銀溶液を用いた電位差滴定法もしくはイオンクロマト法による塩素イオンの測定方法で、塩素イオンの量が0.5ppm以下であり、同時に▲2▼燃焼法による塩素原子の測定方法で、塩素原子の量が検出限界の10ppm以下である。好ましくは、▲1▼の方法で得られる塩素イオンの量が、上記測定法の検出限界以下の0.1ppm以下であり、同時に、▲2▼の方法で得られる塩素原子の量が10ppm以下である。エステル交換法においては、実質的に塩素原子を含有していない芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとからポリカーボネート樹脂を製造した場合には、他の塩素を含有する化合物を添加しない限り、得られたポリカーボネート樹脂は実質的に塩素原子を含有しない。
【0069】
本発明の他の1つの態様においては、
(I)本発明のポリカーボネート樹脂100重量部と、
(II)酸性化合物0.1×10-4〜100×10-4重量部、
とを含んでなる光学情報基板用ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
一般的に、ポリカーボネート樹脂に酸性化合物を添加すると、ポリカーボネート樹脂の加水分解が加速されて、白濁を増加させる傾向があることが知られている。白濁とは光が散乱することで白く見える現象であり、光学的欠陥の1つである。本発明者等の検討においても、一般的に射出成形に用いられている重量平均分子量が23,000〜26,000程度のポリカーボネート樹脂に酸性化合物を添加して得られたポリカーボネート組成物を成形して得た肉厚が3mm程度の成形品を120℃で耐スチーム試験したところ、この成形品は、ポリカーボネート樹脂のみからなる成形品(即ち、酸性化合物無添加)と比べて白濁が激しかった。従って、本発明のポリカーボネート樹脂に酸性化合物を加えることによって、高温高湿条件下におけるポリカーボネート樹脂組成物の光学的欠陥が大幅に低下したことは、非常に驚くべき知見である。
【0070】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれる酸性化合物に特に限定はないが、ポリカーボネート樹脂の製造工程で副生するフェノール類は含まれない。酸性化合物としてはpKa5以下(溶媒:水、又は水及びメタノールの混合溶媒等)の化合物が好ましく、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ホウ酸等の無機酸類、アジピン酸、クエン酸、酢酸等の有機酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、ベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル等のスルホン酸エステル類等が挙げられ、特に、リン酸、クエン酸、スルホン酸エステル類が好ましく使用される。
【0071】
本発明の樹脂組成物が含有する酸性化合物の量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.1×10-4重量部〜100×10-4重量部の範囲であり、好ましくは0.4×10-4〜50×10-4重量部の範囲であり、特に好ましくは、0.8×10-4〜20×10-4重量部の範囲である。樹脂組成物の含有する酸性化合物の量が上記範囲外であると、そのような樹脂組成物を成形して得た光学情報媒体用基板を高温高湿条件下においた際に微小光学的欠陥が発生するため好ましくない。本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、製造直後の溶融状態にあるポリカーボネート樹脂に酸性化合物を添加しても良いし、ペレット化されたポリカーボネート樹脂に添加して溶融混練ししてもよい。また、酸性化合物の含有量は、NMR、原子吸光、液体クロマトグラフィー等の通常の分析手段で定量することができる。
【0072】
更に本発明の樹脂組成物は、必要に応じて耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤等の従来技術で用いられる添加剤を従来技術で用いる量含有しても良い。このような添加剤は、製造直後の溶融状態にあるポリカーボネート樹脂に添加してもよいし、ペレット化されたポリカーボネート樹脂に添加して溶融混練ししてもよい。
本発明の更に他の1つの態様においては、本発明のポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる光情報媒体用基板が提供される。
【0073】
本発明において光学情報媒体用基板とは、基板に形成された微細なビットやグルーブによって光学的に情報の書き込みや読み取りができる光学情報媒体に用いる基板を意味する。光学情報媒体の具体例としては、CD、MD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、MD、MOなどが挙げられる。本発明の光学情報媒体用基板を成形する方法に特に限定はない。例えば、下記の工程(1)〜(3)を包含する方法で製造することができる。
(1)上述した本発明のポリカーボネート樹脂、又は上述した本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造し、
(2)得られたポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を光ディスク製造用射出成形機に導入し、
(3)ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を成形温度300〜370℃、金型温度50〜130℃、成形サイクル3〜10秒の条件下で射出成形に付す。
【0074】
光ディスク製造用射出成形機としては従来使用されているものを用いることができる。本発明の光学情報媒体用基板は、高い転写性(即ち、スタンパー(基板に溝やピットを形成するための型)の情報が正確に転写されている)と低い複屈折を有する。また、情報の読み取りや書き込みの欠陥となる光学的欠陥が少なく、機械的強度や耐湿熱性に優れていることから、長期使用に適している。
【0075】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例及び比較例においては種々の特性を、以下の方法で測定した。
▲1▼ 重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を以下の測定条件で行った。
テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレンゲルを使用してGPCを行い、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から、下記式の換算分子量較正曲線に基づいてポリカーボネート樹脂の分子量を求めた。
MPC=0.3591MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネート樹脂の分子量であり、MPSはポリスチレンの分子量である。)
【0076】
▲2▼ 繰り返し単位(1)及び異種結合単位(A)と(B)の定量
ポリカーボネート樹脂55mgをテトラヒドロフラン2mlに溶解した後、5規定の水酸化カリウムメタノール溶液を0.5ml添加し、室温で2時間攪拌して完全に加水分解した。その後、濃塩酸0.3mlを加え、逆相液体クロマトグラフィーで各結合単位を測定した。
逆相液体クロマトグラフィーは、UV検出器として、991L型機(米国、ウォーターズ社製)、Inertsil ODS−3カラム(登録商標:ジーエルサイエンス社製)、溶離液としてメタノールと0.1%リン酸水溶液からなる混合溶離液を用い、カラム温度25℃、メタノール/0.1%リン酸水溶液比率を20/80からスタートし100/0までグラジエントする条件下で測定し、検出は波長300nmで行い、標準物質の吸光係数から定量した。[標準物質としては、上記式(1’)〜(3’)の結合単位を加水分解した構造に相当するヒドロキシ化合物及びそのカルボキシル基がメチル化されたヒドロキシ化合物を用いた。]
【0077】
▲3▼ 熱劣化物粒子の定量
ポリカーボネート樹脂100gを塩化メチレン2リットルに溶解し、1μmのテフロン製フィルターで吸引ろ過した。その後、1リットルの塩化メチレンでフィルターに付着したポリカーボネート樹脂を洗い流した。フィルター上に残った熱劣化物粒子の粒径を測定し、粒径が5μm以上の粒子をマイクロマニピュレーター(Micro Manipulator System:島津製作所製)で取出し、得られた粒径5μm以上の熱劣化物粒子それぞれにつき、以下の方法で、吸収波数1740cm-1におけるポリカーボネート樹脂中の非カーボネート型エステル結合(ポリカーボネート樹脂が熱分解することにより生じる)に含まれるカルボニル基の伸縮振動による吸収強度A1 と、吸収波数1780cm-1におけるポリカーボネート樹脂中のカーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動による吸収強度A2 との比A1 /A2 を求めた。
熱劣化物粒子をKBr(臭化カリウム)赤外結晶板の上で厚さ2μm以下に押しつぶし、顕微IR(Fourier-Transform Infrared Micro−Spectrometer)(FTS 575C/UMA500 System :日本国、Nippon BIO−RAD Labotatories社製)を用いて透過法にて測定した。得られたスペクトルに基づきA1 /A2 を求めた。
A1 /A2 の値を熱劣化度とし、熱劣化度が0.2以上である熱劣化物粒子の個数を求めた。
【0078】
▲4▼ 末端水酸基の量
ポリカーボネート樹脂0.4gを塩化メチレン50mlに溶解して溶液を得た。得られた溶液10mlを容量50mlのサンプル瓶に分取し、塩化メチレン12mlを加えて良く混合した後、四塩化チタン2mlと酢酸1mlを加え、サンプル瓶を振って攪拌し、測定用サンプルとした。分光光度計(スペクトロフォトメーターMPS−2000;日本国、島津社製)を用いて、測定用サンプルの546nmの吸収強度を測定することによって末端水酸基量を測定した。吸収強度の測定は、吸湿を避けるために全て窒素下で行った。ポリカーボネート樹脂の末端基の合計モル量に対する末端水酸基の量は、GPCで測定した数平均分子量を用いて計算した。
【0079】
▲5▼ ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物の成形性評価
日本製鋼所製の光ディスク用射出成形機(J35EL II−DK)を用い、成形温度370℃又は390℃、金型温度120℃の条件で、ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物から厚さ0.6mmのDVD用ディスク基板を成形した。基板の複屈折及び転写性の評価は、ディスク性能評価機(PROmeteus :ドイツ国、Dr. Schenk社製)を用いて行った。複屈折(nm)は、ディスク基板の半径方向で測定した屈折率の最大値と最小値との差を示す。DVD用基板としては、複屈折20nm以下であることが望ましい。転写性は、ディスク中心から50mmの位置の平均グルーブ深さ(D1 )とスタンパーのグルーブ深さ(D2 )とから、下記式を用いて計算した:
転写性(%)=(D1 /D2 )×100
DVD用基板としては、95%以上の転写性を示すことが望ましい。
【0080】
▲6▼ 耐湿熱性
ポリカーボネート樹脂を上記の成形性の評価における成形方法と同様の方法で370℃で成形して得たDVD用ディスク基板3枚を90℃、相対湿度90%の条件下に150時間放置し、ディスク基板に発生する長さ200μm以上のクレーズ状の光学的欠陥の有無を拡大レンズを用いて目視で評価した。上記の光学的欠陥が全くない場合を○、発生した場合を×とした。
また、ポリカーボネート樹脂組成物を上記の成形性の評価における成形方法と同様の方法で370℃で成形して得たDVD用ディスク基板3枚を110℃、相対湿度90%の条件下に150時間放置し、ディスク基板に発生するクレーズ状の光学的欠陥を評価した。具体的には、拡大レンズを用いて目視で200μm以上の光学的欠陥の数と200μm未満の微小光学的欠陥の数をそれぞれ計測した。
【0081】
▲7▼ 基板強度
ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物を上記の成形性の評価における成形方法と同様の方法で370℃で成形して得たDVD用ディスク基板10枚を用いて、支点間距離40mm、速度2mm/秒で曲げ試験を行った。曲げ強さが降伏点に到達するまでに5枚以上のDVDディスクが割れた場合を×、1〜4枚のDVDディスクが割れた場合を△、1枚も割れなかった場合を○として評価した。
【0082】
【実施例1】
攪拌槽型第1重合器(A)及び(B)、攪拌槽型第2重合器、攪拌槽型第3重合器、長さ8m、直径1.2mmのワイヤー45本を有するワイヤー接触流下式第1重合器、及び長さ8m、直径1.2mmのワイヤー45本を有するワイヤー接触流下式第2重合器を配管で接続してなるシステムを用いて、溶融エステル交換法によってポリカーボネート樹脂を製造した。
芳香族ジヒドロキシ化合物としてのビスフェノールAと炭酸ジエステルとしてのジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.10)及びビスフェノールAのジナトリウム塩(対ビスフェノールAモル比8×10-8)とからなる重合原料を、容積が100リットルの攪拌槽型第1重合器(A)及び(B)を交互に用いて180℃、常圧で溶融重合することにより第1攪拌重合工程を行い、プレポリマー1を得た。
【0083】
得られたプレプリマー1を容積が50リットルの攪拌槽型第2重合器に8kg/hrの速度で供給し、230℃、100mmHgの条件下において第2攪拌重合工程を行い、プレポリマー2を得た。得られたプレポリマー2を容積が50リットルの攪拌槽型第3重合器に連続的に供給した。攪拌槽型第3重合器においては240℃、20mmHgの条件下で第3攪拌重合工程を行い、プレポリマー3を得た。得られたプレポリマー3を、長さ8m、直径1.2mmのワイヤー45本を有するワイヤー接触流下式第1重合器に連続的に供給した。ワイヤー接触流下式第1重合器においては、265℃、3mmHgの条件下で第1 ワイヤー接触流下式重合工程を行い、プレポリマー4を得た。
【0084】
得られたプレポリマー4を、長さ8m、直径1.2mmのワイヤー45本を有するワイヤー接触流下式第2重合器に連続的に供給した。ワイヤー接触流下式第2重合器においては、265℃、0.5mmHgの条件下で第2ワイヤー接触流下式重合工程を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を重合用システムに直列に連結された二軸押出機(PCM30:日本国、池貝鉄工社製)(温度:250℃)に供給し、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。
【0085】
各攪拌型重合器、各ワイヤー接触流下式重合器、各配管における温度、滞留時間及び(ki×Ti×Hi)の値を表1に示す。また
【式4】
の値も表1に示す。
【0086】
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。結果を表8に示す。
表8から明らかなように、ポリカーボネート樹脂は、370℃でも良好な成形性を有していた。具体的には、このポリカーボネート樹脂を成形して得たDVD用基板は、表10に示すように、100%の転写性を示すと共に、複屈折も良好であった。更に、上記のDVD用基板は耐湿熱性及び基板強度にも優れていた。
【0087】
【参考実施例2】
ビスフェノールAとジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.15)とからなる重合原料を、攪拌槽型第2重合器に4.8kg/hrの速度で供給する以外は、実施例1と同様に重合工程を連続的に行い、ポリカーボネート樹脂を得た。但し、ワイヤー接触流下式第1重合器とワイヤー接触流下式第2重合器の間の1つのフランジが290℃まで加熱されていた。反応条件を表2示す。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
【0088】
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表8に示す。
表8から明らかなように、ポリカーボネート樹脂は、370℃でも良好な成形性を有していた。具体的には、このポリカーボネート樹脂を成形して得たDVD用基板は、基板強度の測定中に10枚の基板のうち1 枚に割れが発生したものの、表8に示すように、100%の転写性及び良好な複屈折を有しており、更に、耐湿熱性にも優れていた。
【0089】
【比較例1】
プレポリマー1を攪拌槽型第2重合器に10.0kg/hrの速度で供給し、第1ワイヤー接触流下式重合工程を250℃、6.3mmHgの圧力下で行い、第2ワイヤー接触流下式重合工程を280℃で行い、攪拌槽型第2及び第3重合器、及びワイヤー接触流下式第1及び第2重合器におけるプレポリマー又はポリマーの保有量をそれぞれ実施例1における保有量の1/2にした以外は、実施例1と同様に重合工程を連続的に行い、ポリカーボネート樹脂を得た。反応条件を表3に示す。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
【0090】
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表8に示す。
表8から明らかなように、異種結合単位(A)の量が、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計モル量に対して50モル%未満である比較例1のポリカーボネート樹脂を用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、充分な転写性を有するDVD用基板を得ることができなかった。充分な転写性を得るため、390℃の高温でDVD用基板を成形したところ、偏光板を通して検出することができるスジ状の不良現象がディスク上に見られた。この不良現象は、ポリカーボネート樹脂の分子量が熱劣化のために低下して、射出成形機のノズルから漏れ出たために発生したと考えられる。また、90℃において耐湿熱性を試験したところ、多くの光学的欠陥が発生した。
【0091】
【比較例2】
ビスフェノールAとジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.06)とからなる重合原料を、攪拌槽型第2重合器に12kg/hrの速度で供給し、第3攪拌重合工程を240℃、20mmHgの条件下で行い、第1ワイヤー接触流下式重合工程を250℃、0.5mmHgの条件下で行い、第2ワイヤー接触流下式重合工程を250℃、0.2mmHgの条件下で行い、攪拌槽型第2及び第3重合器、及びワイヤー接触流下式第1及び第2重合器におけるプレポリマー又はポリマーの保有量をそれぞれ実施例1における保有量の1/2にした以外は実施例1と同様に重合工程を連続的に行い、ポリカーボネート樹脂を得た。反応条件を表4に示す。
【0092】
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表8に示す。
異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰返し単位(1)の合計モル量に対して0.03モル%未満である比較例2のポリカーボネート樹脂を用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、充分な転写性を得ることができなかった。その為、390℃でDVD用基板を成形したところ、偏光板を通して検出することができるスジ状の不良現象がディスク上に見られた。
【0093】
【比較例3】
実施例1と同じ重合原料を攪拌槽型第2重合器に2.1kg/hrの速度で供給した以外は、実施例1と同様に重合工程を連続的に行い、ポリカーボネート樹脂を得た。反応条件を表5に示す。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いてDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表8に示す。
【0094】
表8から明らかなように、ポリカーボネート樹脂に含まれる異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰返し単位(1)の合計モル量に対して0.30モル%を超える比較例3のポリカーボネート樹脂を用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、基板の成形は問題なく実施することができた。しかし、得られたDVD用基板は良好な転写性を示したものの、耐湿熱性試験において光学的欠陥が発生した。更に基板強度も低く、曲げ試験で基板に割れが発生した。
【0095】
【比較例4】
ビスフェノールAとジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.12)とからなる重合原料を用い、第2ワイヤー接触流下式重合工程を0.3mmHgの圧力下で行う以外は実施例1と同様に重合工程を連続的に行い(即ち、反応温度及び滞留時間などに関しては、表1と同様)、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
【0096】
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表8に示す。
表8から明らかなように、重量平均分子量が18, 000を超える比較例4のポリカーボネート樹脂を用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、充分な転写性を有するDVD用基板を得ることができなかった。充分な転写性を得るため、390℃の高温でDVD用基板を成形したところ、偏光板を通して検出することができるスジ状の不良現象がディスク上に見られた。
【0097】
【比較例5】
ビスフェノールAとジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.12)とからなる重合原料を用い、第2ワイヤー接触流下式重合工程を0.8mmHgの圧力下で行う以外は実施例1と同様に重合工程を連続的に行い(即ち、反応温度及び滞留時間等に関しては、表1と同様)、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
【0098】
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表8に示す。
表8から明らかなように、重量平均分子量が13, 000未満である比較例5のポリカーボネート樹脂を用いて370℃でDVD用基板の成形を行ったところ、成形時にスプルーが金型から抜けなくなるというトラブルが時折発生し、良好なディスク基板を得ることができなかった。また、トラブルが発生せずに作製できたディスク基板は、曲げ試験において割れが発生した。
【0099】
【比較例6】
芳香族ジヒドロキシ化合物としてのビスフェノールA及び2−(3−カルボキシ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(対ビスフェノールAモル比0.002)と炭酸ジエステルとしてのジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.05)とからなる重合原料を用い、プレポリマー1を12kg/hrの速度で第2攪拌重合器に供給し、第3攪拌重合工程を230℃、10mmHgの条件下で行い、第1ワイヤー接触流下式重合工程を240℃、0.3mmHgの条件下で行い、第2ワイヤー接触流下式重合工程を240℃、0.1mmHgの条件下で行う以外は、実施例1と同様に重合工程を連続的に行い、ポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を300℃のニ軸押出機に供給し、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。反応条件を表6に示す。
【0100】
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表7に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。結果を表8に示す。
表8から明らかなように、異種結合単位(B)が含まれない比較例6のポリカーボネート樹脂を用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、複屈折と転写性は良好であったものの、耐湿熱性が低く、耐湿熱性試験において光学的欠陥が発生した。更に基板強度も低く、曲げ試験で基板に割れが発生した。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
【実施例3】
実施例1と同様に重合反応を行ってポリカーボネート樹脂を合成し、実施例1と同様にポリカーボネート樹脂を二軸押出機に供給する際に、酸性化合物として1.0×10-4重量部のp−トルエンスルホン酸ブチルを押出機に供給することで、ポリカーボネート樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表9に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂組成物を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表10に示す。
表10から明らかなように、ポリカーボネート樹脂組成物は、370℃でも良好な成形性を有していた。具体的には、このポリカーボネート樹脂組成物を成形して得たDVD用基板は、表10に示すように100%の転写性を示すと共に、複屈折も良好であった。更に、耐湿熱性及び基板強度にも優れていた。
【0110】
【参考実施例4】
参考実施例2と同様に重合したポリカーボネート樹脂を用いる以外は実施例3と同様に酸性化合物を含有するポリカーボネート樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表9に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂組成物を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表10に示す。
表10から明らかなように、ポリカーボネート樹脂組成物は、370℃でも良好な成形性を有していた。具体的には、このポリカーボネート樹脂を成形して得たDVD用基板は、基板強度の測定中に10枚の基板のうち1枚に割れが発生したものの、表10に示すように、100%の転写性及び良好な複屈折を有しており、更に耐湿熱性にも優れていた。
【0111】
【比較例7〜11】
比較例1〜5と同様に重合したポリカーボネート樹脂をそれぞれ用いる以外は実施例3と同様に酸性化合物を含有するポリカーボネート樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネート樹脂組成物の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表9に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂組成物を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表10に示す。
【0112】
表10から明らかなように、ポリカーボネート樹脂に含まれる異種結合単位(A)の量が、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計モル量に対して50モル%未満である比較例7のポリカーボネート樹脂組成物;ポリカーボネート樹脂に含まれる異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰返し単位(1)の合計モル量に対して0.03モル%未満である比較例8のポリカーボネート樹脂組成物;及び重量平均分子量が18, 000を超える比較例10のポリカーボネート樹脂組成物をそれぞれ用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、充分な転写性を有するDVD用基板を得ることができなかった。その為、390℃でDVD用基板を成形したところ、偏光板を通して検出することができるスジ状の不良現象がディスク上に見られた。この不良現象は、ポリカーボネート樹脂の分子量が熱劣化のために低下して、射出成形機のノズルから漏れ出たために発生したと考えられる。
【0113】
ポリカーボネート樹脂に含まれる異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰返し単位(1)の合計モル量に対して0.30モル%を超える比較例9のポリカーボネート樹脂組成物を用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、基板の成形は問題なく実施することができた。しかし、得られたDVD用基板は良好な転写性を示したものの、耐湿熱性試験において光学的欠陥が発生した。更に基板強度も低く、曲げ試験で基板に割れが発生した。
又、重量平均分子量が13, 000未満の比較例11のポリカーボネート樹脂組成物を用いて370℃でDVD用基板の成形を行ったところ、成形時にスプルーが金型から抜けなくなるというトラブルが時折発生し、良好なディスク基板を得ることができなかった。また、トラブルが発生せずに作製できたディスク基板は、曲げ試験において割れが発生した。
【0114】
【比較例12、13】
実施例1と同様に重合したポリカーボネート樹脂を用い、表9に記載した量の酸性化合物を用いて、実施例3と同様に酸性化合物を含有するポリカーボネート樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表9に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂組成物を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表10に示す。
表10から明らかなように、酸性化合物の含有量が0.1×10-4重量部より少ない比較例12のポリカーボネート樹脂組成物及び100×10-4重量部よりも多い比較例13のポリカーボネート樹脂組成物のそれぞれを成形して得たDVD用基板には、いずれも110℃における耐湿熱性試験において多数の光学的欠陥が発生した。
【0115】
【比較例14】
比較例6と同様に重合したポリカーボネート樹脂を用いる以外は実施例3と同様に酸性化合物を含有するポリカーボネート樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の各種特性を、上記の方法に従って評価した。評価結果を表9に示す。
更に、得られたポリカーボネート樹脂組成物を用いて上記の方法でDVD用基板を成形し、その基板特性を評価した。評価結果を表10に示す。
表10から明らかなように、ポリカーボネート樹脂に異種結合単位(B)が含まれない比較例14のポリカーボネート樹脂組成物を用いて370℃でDVD用基板を成形したところ、DVD用基板には110℃における耐湿熱性試験において光学的欠陥が発生した。更に基板強度も低く、曲げ試験で基板に割れが発生した。
【0116】
【表9】
【0117】
【表10】
【0118】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂の熱劣化が起きない程度の高温(約320℃〜約370℃)で十分に高い溶融流動性を発揮するため、本発明のポリカーボネート樹脂を光学情報媒体用基板の製造に用いると、低複屈折等の優れた光学特性を有し且つ転写性が高い(即ち、スタンパー(基板に溝を形成するための型)の情報が正確に転写されている)基板を得ることができる。従って、本発明のポリカーボネート樹脂は、CD、MD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、MD、MO等の光学情報媒体用の基板の製造に有利に用いることが出来る。
Claims (11)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応に付すことにより製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂であって、複数の芳香族ポリカーボネート主鎖を包含してなり、各芳香族ポリカーボネート主鎖は下記式(1)でそれぞれ独立に表わされる複数の繰り返し単位を含み、
且つ該複数のポリカーボネート主鎖は全体として少なくとも1つの異種結合単位(A)と少なくとも1つの異種結合単位(B)を該ポリカーボネート主鎖上に有し、
該異種結合単位(A)は下記の式(2)で表わされ、
但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(A)を有する場合、複数の異種結合単位(A)は同じであっても異なっていてもよく、
該異種結合単位(B)は下記の式(3)で表わされ、
但し該ポリカーボネート主鎖が複数の異種結合単位(B)を有する場合、複数の異種結合単位(B)は同じであっても異なっていてもよく、
上記式(2)におけるXは異種結合単位(A)及び(B)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの異種結合単位を含んでいてもよく、
異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計量が、繰り返し単位(1)の合計モル量に対して0.03〜0.3モル%の範囲にあり、
異種結合単位(A)の量が、異種結合単位(A)と異種結合単位(B)の合計モル量に対して50モル%以上であり、
重量平均分子量が13,000〜18,000の範囲にあり、
粒径が5μm以上であり、且つ赤外線吸収分光法によって測定される、吸収波数1740cm −1 における該ポリカーボネート樹脂中の非カーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A 1 と吸収波数1780cm −1 における該ポリカーボネート樹脂中のカーボネート型エステル結合に含まれるカルボニル基の伸縮振動の吸収強度A 2 との比A 1 /A 2 で表される熱劣化度が0.2以上である熱劣化物粒子を、該ポリカーボネート樹脂100gに対して20個以下含むことを特徴とする光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。 - 該異種結合単位(A)の量が、該異種結合単位(A)と異該種結合単位(B)の合計モル量に対して50〜95モル%であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。
- 該ポリカーボネート樹脂の有する末端水酸基の量が、該ポリカーボネート樹脂の末端基の合計モル量に対して5〜50モル%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。
- 該繰返し単位(1)の85%以上が下記式(1’)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの溶融混合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルと反応させることを包含するプロセスによって得られる溶融プレポリマーとからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合原料を、複数の反応域において段階的エステル交換反応に付して、請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
該重合原料の段階的エステル交換反応を下記式(4)を満足する反応条件で行うことを特徴とする光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂の製造方法。
Ti :i番目の反応域における重合原料の平均温度(℃)
Hi :i番目の反応域における重合原料の平均滞留時間(hr)
ki :下記式で示される係数
ki=1/aTi −b
但し、Tiは上記の通りであり、aとbはTiに依存し、
Ti<240℃の時
a=1.60046×10 5
b=0.472
であり、240℃≦Ti<260℃の時
a=4×10 49
b=19.107
であり、そして、260℃≦Tiの時
a=1×10 122
b=49.082 - 請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂を成形して得られるDVD用基板。
- (I)請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂100重量部と、(II)酸性化合物0.1×10−4〜100×10−4重量部、とを含んでなる光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項7に記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるDVD用基板。
- ディスク性能評価機を用いて、ディスク基板の半径方向で測定した屈折率の最大値と最小値との差を示す複屈折が20nm以下である請求項6又は8に記載のDVD用基板。
- ディスク性能評価機を用いて、ディスク中心から50mmの位置の平均グルーブ深さ(D 1 )とスタンパーのグルーブ深さ(D 2 )とから、(D 1 /D 2 )×100の式を用いて計算した転写性(%)が95%以上である請求項6、8、9のいずれかに記載のDVD用基板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂、又は請求項7の光ディスク用基板製造用ポリカーボネート樹脂組成物を成形温度300〜370℃、金型温度50〜130℃、成形サイクル3〜10秒の条件下で厚さ0.6mmに射出成形することを特徴とする請求項6、8〜10のいずれかに記載のDVD用基板の製造方法。
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