JP4271778B2 - 透明熱可塑性樹脂ペレットの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色物質及びゲル物質の発生が少なく、異物量の極めて少ない透明熱可塑性樹脂ペレットを安定且つ効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の熱可塑性樹脂が開発され、透明性に優れたポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、非晶性環状ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂は光学分野の成形材料に好ましく使用されている。これらの用途においては樹脂中の異物の大きさや異物量が収率や製品の品質の良し悪しに大きく影響を及ぼし、特に光学ディスク基板の製造においては、基板中の異物(塵埃や炭化物など)が情報の記録や再生の信頼性に対して極めて大きな影響を与える。したがって、基板を構成する透明熱可塑性樹脂に対しては異物の量が極めて少ないことが要求されている。
【0003】
このため従来は、樹脂ペレット中の異物を精製過程や造粒過程等において異物の低減化を図っており、例えば特公平7−21007号公報には、熱可塑性樹脂溶液と水とを遠心分離して、樹脂溶液相を分離し回収することにより異物量を低減した熱可塑性樹脂を得る方法が開示されている。また、特開平5−239334号公報には、溶融状態のポリカーボネート樹脂をポリマーフィルターで濾過することにより異物量を低減する方法が開示されている。また、特開平9−254151号公報には、溶融押出ししたポリカーボネート樹脂を冷却する際、電気伝導度が小さく、異物量が少ない冷却水を用いて、異物量の少ないポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法が提案されている。
【0004】
一方、熱可塑性樹脂ペレットの製造に用いる溶融押出機は、一台で溶融粘度の異なる同種の樹脂や異種の熱可塑性樹脂に対応することができるように、単軸または二軸溶融押出機のスクリューを数分割から数十分割のエレメントに分割し、それぞれの樹脂の特性に合ったスクリュー形状に変更できるように、かかるエレメントを組み合わせて対応する方法がとられることが多い。しかしながら、エレメントを組み合わせたスクリュー用いると着色物質及びゲル物質等の異物が発生することが少なくない。この着色物質やゲル物質は異物サイズが大きく、上述したように特に光学ディスク基板の信頼性に対して極めて大きな影響を与える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法においては、透明熱可塑性樹脂ペレット中の異物の量はある程度低減されるものの十分とは云えなかった。本発明者は、2個以上のエレメントで構成されたスクリューを敷設した溶融押出機で溶融押出しして透明熱可塑性樹脂ペレットを得る際に、着色物質及びゲル物質等の異物が発生し、異物量が増大することに着目し、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、隣接するエレメント同士の接合部端面の表面粗さと最大高さを一定の範囲以下とすることによって異物量が極めて少ない透明熱可塑性樹脂ペレットを安定して且つ効率よく得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、溶融押出機を用いて透明熱可塑性樹脂を溶融押出し、押出された溶融物を冷却した後、切断機で切断してペレットを製造する方法において、該溶融押出機のスクリューが2個以上のエレメントで構成されており、かかるエレメントの接合部端面の表面粗さが、JISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)1.6a以下、最大高さ(Rmax)6.3S以下であることを特徴とする透明熱可塑性樹脂ペレットの製造方法が提供される。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「異物」とは原料から透明熱可塑性樹脂を製造し、ペレットを得るまでのあらゆる工程において種々の経由から混入する汚染物質のことであり、例えば使用原料(モノマー、溶剤など)に含まれる不純物やダスト、製造設備に付着しているダストまたは成形過程で発生する炭化物、着色物質、ゲル化物など塩化メチレンに不溶な全ての成分を示す。
【0008】
本発明に用いる溶融押出機のスクリューは、2個以上のエレメントで構成されており、或るエレメントとそれに隣接する他のエレメントとの接合部端面の表面粗さが、それぞれJISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)1.6a以下であり、0.8a以下が好ましく、0.4a以下がより好ましく、且つ最大高さ(Rmax)6.3S以下であり、3.2S以下が好ましく、1.6S以下がより好ましい。中心線平均粗さ(Ra)が1.6aを超えるか、または、最大高さ(Rmax)が6.3Sを超えると、得られる透明熱可塑性樹脂ペレット中に着色物質やゲル化物等の異物が発生し、異物量も増大するので好ましくない。溶融押出機内には、樹脂の未溶融ゾーンと溶融ゾーンが存在するが、特に樹脂の溶融ゾーンに在るエレメント同士の接合部端面の表面粗さが上記範囲を満たすことが必須である。ここで、着色物質とは、押出機内の滞留によるヤケに起因する着色した物質であり、ゲル化物とは、高温状態で発生する溶媒に溶解しない茶色の物質を意味する。
【0009】
また、溶融押出機に使用される上記エレメントを、スクリューの直径に対し好ましくは0.1kgf・m/mm以上、より好ましくは0.1〜3kgf・m/mm、さらに好ましくは0.15〜2.5kgf・m/mm、特に好ましくは0.2〜2kgf・m/mmの力で締め付けることが望ましい。エレメントの締め付け力が、0.15kgf・m/mm以上になると、樹脂の滞留等が起こり難くなり着色物質やゲル化物等の異物が発生し難くなり好ましい。
【0010】
本発明においては、溶融押出機のダイから切断機の入り口迄の空域、好ましくは切断機の出口迄の空域がJIS規格B 9920−1989に定義された清浄度クラスで7以下であることが望ましい。さらに設備の容易さと経済的な面から清浄度クラスで2〜7がより好ましく、2〜6が特に好ましい。清浄度クラスが7以下の場合は、得られる透明熱可塑性樹脂ペレット中の異物量が少なくなり好ましい。
【0011】
上記溶融押出機のダイから切断機の入り口迄の空域を清浄度クラス7以下とする方法としては、少なくとも溶融押出機のダイから切断機の入り口迄を、ガラス製、木製、プラスチック製、金属製、モルタル等の材質で仕切られ、ダーティーな環境から隔離された、清浄度クラス7以下の空間または部屋に設置する方法が好ましく採用される。かかる空間または部屋の大きさは、溶融押出機の操作等が十分できる大きさが好ましく、例えば、機械から縦横0.5〜3m程度の広さで、高さが床面から1.5〜4m程度の範囲が好ましく使用される。
【0012】
本発明において、溶融押出機で溶融押出された溶融物の形状は、ストランド状、シート状等があるが、好ましい形状はストランド状である。また、かかるストランドを切断機で切断する間に、溶融押出しされたストランドを冷却する方法として、冷却バスに張った水にかかるストランドを浸漬して冷却する方法が好ましく採用され、この際使用する水は濾過精度5μm以下のフィルターで濾過した水が好ましく、濾過効率およびペレット中の異物量の低減の面から濾過精度0.2〜5μmのフィルターがより好ましく、濾過精度0.2〜3μmのフィルターがさらに好ましい。ストランドの冷却に使用する水はイオン交換水や蒸留水が好ましく、イオン交換水が特に好ましく用いられる。冷却バス内の水温は、25〜80℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。かかる範囲の水温で冷却されたストランドは、ストランド中に気泡が入り難く、また、切断機で切断する際、カット屑が多量に発生したりすることが少なくなり好ましい。
【0013】
また、本発明においては、透明熱可塑性樹脂を溶融押出機を用いて溶融押出しするが、かかる溶融押出機としては単軸押出機または二軸押出機のいずれも使用でき、ベント付で、スクリューとダイの間に濾過精度0.5〜5μmのフィルターを付設した押出機が好ましく用いられる。スクリューとダイの間に付設するフィルターはディスク状、キャンドル状、またはリーフディスク状の金属フィルターが好ましく用いられる。
【0014】
本発明の対象とする透明熱可塑性樹脂は、赤外光または可視光を透過しうる樹脂であり、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、非晶性環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、その中でもポリカーボネート樹脂が最も好ましい。これらの樹脂はペレットを製造する工程が共通する。以下、ポリカーボネート樹脂を例に挙げて説明する。
【0015】
ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面縮重合法または溶融法で反応させて得られるものである。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4′−ジヒドロキシジフェニルエステル等があげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0016】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0017】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0018】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0019】
界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0020】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0021】
【化1】
【0022】
[式中、Aは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。]
【0023】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0024】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、殊に光学ディスク基板としての物性、特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、また、基板の複屈折が低減される効果もあり好ましく使用される。なかでも、下記一般式(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
[式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。]
【0028】
かかる式(2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0029】
また、式(3)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシル及びヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0030】
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少くとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
溶融法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を10〜0.1Torr程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0032】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m―クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0033】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-9〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-8〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0034】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜100,000が好ましく、11,000〜45,000がより好ましく、12,000〜30,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。かかる粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0035】
本発明の製造方法で得られる透明熱可塑性樹脂ペレットには、熱安定剤(リン酸エステル、亜リン酸エステル等)、離型剤(脂肪酸エステル等)、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。
【0036】
本発明の製造方法で得られる透明熱可塑性樹脂ペレットは、異物量が低減されており、その異物量としては、透明熱可塑性樹脂ペレット中の0.5μm以上の異物量が好ましくは40000個/g以下、より好ましくは30000個/g以下、さらに好ましくは10000個/g以下、特に好ましくは5000個/g以下である。また、ゲル化物の量は、好ましくは50個/kg以下、より好ましくは20個/kg以下、さらに好ましくは10個/kg以下、特に好ましくは5個/kg以下である。また、着色物質は、500時間程度連続して溶融押出を行った際に、実質的に発生しないことが好ましい。
【0037】
また、本発明の製造方法で得られる異物量が低減された透明熱可塑性樹脂ペレットは、例えば光磁気ディスク、各種追記型ディスク、デジタルオーディオディスク(いわゆるコンパクトディスク)、光学式ビデオディスク(いわゆるレーザディスク)、デジタル・バーサイル・ディスク(DVD)等の光学ディスク基板用の材料として、あるいはシリコンウエハー等の精密機材収納容器の材料として好適に使用でき、殊に光学ディスク基板用の材料として好適に採用される。
【0038】
【実施例】
以下、実施例にしたがって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、評価は次に示す方法で行った。
【0039】
(1)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量
ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解し、20℃で測定した比粘度より求めた。
【0040】
(2)ポリカーボネート樹脂中の異物量
溶融押出し開始後30時間目にサンプリングしたポリカーボネート樹脂ペレット100gを塩化メチレン1000mlに溶解した溶液を用いて、ハイアックロイコ社製の異物測定器で0.5μm以上の異物量を測定した。
【0041】
(3)着色物質発生の有無
溶融押出し開始後1時間毎にペレットをサンプリングし、着色物質の有無を目視で評価し、着色物質の発生し始めた時間を示した。
【0042】
(4)ゲル化物
溶融押出し開始後30時間目にサンプリングしたペレット200gを塩化メチレン2000gに溶解し、孔寸20μm、直径10mmのフィルターで自然濾過してフィルター上に残留する茶色の物質をゲル化物とし、その個数を顕微鏡で測定した。
【0043】
[実施例1]
(A)温度計、撹拌機及び還流冷却器付き反応器にイオン交換水219.4部、48%水酸化ナトリウム水溶液40.2部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン57.5部(0.252モル)およびハイドロサルファイト0.12部を溶解した後、塩化メチレン181部を加え、撹拌下15〜25℃で上記ホスゲン28.3部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液7.2部およびp−tert−ブチルフェノール2.42部を加え、撹拌を始め、乳化後トリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けたニーダーの水液温75℃にて、塩化メチレンを蒸発してポリカーボネート樹脂パウダーを得、このパウダーを145℃、6時間乾燥して粘度平均分子量15,100、0.5μm以上の異物量1500個/gの乾燥パウダーを得た。このパウダーにトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.01重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.10量%加え、30分間混合し溶融押出しに供するパウダーを得た。
【0044】
(B)次に、21個のエレメントからなり、それぞれの隣接するエレメント同士の接合部端面の表面粗さがJISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)0.2a、最大高さ(Rmax)0.8Sであり、且つエレメントをスクリューの直径に対し0.30kgf・m/mmで締付けたスクリューを用い、スクリュー先端とダイの間に濾過精度1μmのSUS304製のフィルターを付設したベント式二軸溶融押出機[神戸製鋼(株)製KTX−46]と、二軸溶融押出機の後にストランドを冷却するための濾過精度0.5μmSUS304製のフィルターで濾過したイオン交換水を張り、その水温が50℃にコントロールされた冷却バスと、冷却バスの後にストランドを切断してペレットにするための切断機を備えた装置を使用して、上記パウダーをベント式二軸溶融押出機のシリンダー温度240℃、ベントガス吸引度−5mmHgで脱気しながら溶融混練押出しし、二軸溶融押出機のダイから切断機の出口迄の空域がJIS規格B 9920−1989に定義された清浄度クラス5の条件下でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
実施例1の(A)において、p−tert−ブチルフェノールの添加量を1.55部に変更した以外は実施例1と同様の方法で行い、粘度平均分子量23,500、0.5μm以上の異物量1900個/gの乾燥パウダーを得た。このパウダーを用いて実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
実施例1の(B)ペレットを製造する方法において、それぞれの隣接するエレメント同士の接合部端面の表面粗さがJISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)0.4a、最大高さ(Rmax)1.6Sのスクリューで、エレメントをスクリューの直径に対し0.30kgf・m/mmで締付けたスクリューを用い、二軸溶融押出機のダイから切断機の出口迄の空域がJIS規格B 9920−1989に定義された清浄度クラス8の条件下とする以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その結果を表1に示す。
【0047】
[実施例4]
実施例1の(B)ペレットを製造する方法において、それぞれの隣接するエレメント同士の接合部端面の表面粗さがJISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)0.4a、最大高さ(Rmax)1.6Sのスクリューで、エレメントをスクリューの直径に対し0.30kgf・m/mmで締付けたスクリューを用い、ストランドの冷却水として濾過精度3.0μmSUS304製のフィルターで濾過したイオン交換水を用い、二軸溶融押出機のダイから切断機の出口迄の空域がJIS規格B 9920−1989に定義された清浄度クラス8の条件下とする以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その結果を表1に示す。
【0048】
[実施例5]
実施例1の(B)ペレットを製造する方法において、それぞれの隣接するエレメント同士の接合部端面の表面粗さがJISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)1.6a、最大高さ(Rmax)6.3Sのスクリューで、エレメントをスクリューの直径に対し0.60kgf・m/mmで締付けたスクリューを用い、二軸溶融押出機のダイから切断機の出口迄の空域がJIS規格B 9920−1989に定義された清浄度クラス8の条件下とする以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
実施例1の(B)ペレットを製造する方法において、それぞれの隣接するエレメント同士の接合部端面の表面粗さがJISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)6.3a、最大高さ(Rmax)12.5Sのスクリューで、エレメントをスクリューの直径に対し0.60kgf・m/mmで締付けたスクリューを用いる以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その結果を表1に示す。
【0050】
[比較例2]
実施例1の(B)ペレットを製造する方法において、それぞれの隣接するエレメント同士の接合部端面の表面粗さがJISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)6.3a、最大高さ(Rmax)12.5Sのスクリューで、エレメントをスクリューの直径に対し0.30kgf・m/mmで締付けたスクリューを用いる以外は実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、着色物質及びゲル化物等の異物の極めて少ない透明熱可塑性樹脂ペレットが安定且つ効率よく製造することができ、かかる透明熱可塑性樹脂ペレットは、異物に対する悪影響を極めて受け易い光学ディスク基板用の材料として好適に使用され、その奏する工業的効果は格別である。
Claims (5)
- 溶融押出機を用いて透明熱可塑性樹脂を溶融押出し、押出された溶融物を冷却した後、切断機で切断してペレットを製造する方法において、該溶融押出機のスクリューが2個以上のエレメントで構成されており、かかるエレメントの接合部端面の表面粗さが、JISB0601に定義された中心線平均粗さ(Ra)1.6a以下、最大高さ(Rmax)6.3S以下であることを特徴とする透明熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
- スクリューが、スクリューの直径に対し0.1kgf・m/mm以上の力でエレメントを締付けたスクリューである請求項1記載の透明熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
- 溶融押出機のダイから切断機の入り口迄の空域が、JIS規格B 9920−1989に定義された清浄度クラス7以下である請求項1記載の透明熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
- 溶融押出機で溶融押出された溶融物の形状がストランドであり、このストランドを冷却バスに張った水に浸漬して冷却するに当たり、該水が濾過精度5μm以下のフィルターで濾過した水を用いる請求項1記載の透明熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
- 透明熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂である請求項1記載の透明熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
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