JP2007238959A - 光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粘度平均分子量(Mv)が10,000〜20,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドを0.015〜0.05質量部添加するとともに、25℃で測定した電気伝導率が1μS/cm以下の水を添加して、該樹脂組成物の含水量を0.1〜0.3質量%に調節しながら、押出成形し、冷却、切断してペレット化してなる、脂肪酸モノグリセリドの変性体を含まない光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
【選択図】なし
Description
更に、光ディスク基板の耐衝撃性等の強度、更には透明性、耐熱性、低吸水性等の点から芳香族ポリカーボネート樹脂が用いられている。
バリの発生を抑制し、円滑な離型を実現するため、離型剤を芳香族ポリカーボネート樹脂に配合することは公知である。
例えば、特許文献1には、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドを0.06〜0.1質量%含有する光ディスク基板用芳香族ポリカーボネートが開示されている。
しかしながら、光ディスクは記録媒体として長期間、データを保存し続ける必要がある。
本発明者らの、90℃、湿度90%の恒温恒湿条件下における光ディスクを加速劣化させてその信頼性を確認したデータでは、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドの添加量が0.05質量部を越えると、芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解による偏光白濁欠陥が促進される傾向はないが、樹脂の分子量が低下する傾向が認められており、情報記録の信頼性の低下につながることが判明した。
従って、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドの添加量は極力減らし、必要以上に添加すべきではない。
一方、離型剤が少なすぎると、光ディスク基板表面に霧がかかった様な離型斑(クラウド)が発生し、極端な場合は信号そのものにノイズとして悪影響を与えたり、金型よりの離型不良によるバリが発生し、バリが光ディスク基板表面に付着したり基板内部に混入したりして光学欠陥を増加させる。
従って、円滑な光ディスク基板の離型性と光ディスクの信頼性(例えば、信号の読み取りエラー等)確保の両立を考慮すると、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドの添加量には一定の許容範囲があることが判明した。
しかしながら、添加する水質によっては、押出し成形されたペレットを用いて得た光ディスク基板を90℃、湿度90%の恒温恒湿条件下における加速劣化させてその信頼性を確認したデータでは、芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解による偏光白濁欠陥の発生が促進されることも判明した。
(1)粘度平均分子量(Mv)が10,000〜20,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドを0.015〜0.05質量部添加するとともに、25℃で測定した電気伝導率が1μS/cm以下の水を添加して、該樹脂組成物の含水量を0.1〜0.3質量%に調節しながら、押出し成形し、冷却、切断してペレット化してなる、脂肪酸モノグリセリドの変性体を含まない光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(2)溶融押出しされた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の冷却を、25℃で測定した電気伝導率が1μS/cm以下の水を用いて行なう上記(1)に記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(3)芳香族ポリカーボネート樹脂の末端基の30モル%以上がp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基である上記(1)に記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(4)粘度平均分子量(Mv)が、11,000〜18,000の芳香族ポリカーボネート樹脂である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(5)粘度平均分子量(Mv)が、12,000〜16,000の芳香族ポリカーボネート樹脂である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(6)脂肪酸モノグリセリドの添加量が0.02〜0.04質量部である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(7)脂肪酸モノグリセリドがステアリン酸モノグリセリドである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(8)芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の含水量が0.1〜0.2質量%である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
に関するものである。
更に、溶融押出し成形条件幅が拡大するため、成形サイクルが向上し、成形における歩留り改善による生産効率も向上し、コスト低減を図ることができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、末端基の30モル%以上がp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基であリ、粘度平均分子量(Mv)が10,000〜20,000、好ましくは11,000〜18,000、更に好ましくは12,000〜16,000のものを用いることが好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の基本構造としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。
通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
即ち、2価フェノールとホスゲン等のカーボネート前駆体とを溶液法により反応させ、又は2価フエノールとジフェニルカーボネート等とをエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
この他の2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等が挙げられる。
これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
又、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメート、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等が挙げられる。
又、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、又はそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端基の調整方法としては、通常、ポリカーボネート樹脂の製造時に、末端停止剤として各種フェノール類を用いて行うことができる。
ここで、フェノール類としては、フェノール、ジメチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール及びp−クミルフェノール等が用いることができる。
従って、芳香族ポリカーボネート樹脂としては、末端停止剤が反応した末端基、2価フェノールとしてのビスフェノールA末端を有することになる。
本発明では、これら全末端基の30モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上が、p−クミルフェノール及び/又はp−tert−オクチルフェノールが反応したp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オオクチルフェノキシ基であることが好ましい。
で表される構造を有するとともに、一般式(II)
で表される末端基又は水酸基を有し、且つその末端基の少なくとも30モル%が、式(III)及び/又は式(IV)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記一般式(I)において、R1又はR2は、それぞれハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。
ここで、ハロゲン原子としては、塩素,臭素,フッ素,ヨウ素原子が挙げられ、炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状,分岐状,環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,tert−ブチル基,アミル基,イソアミル基,ヘキシル基,イソヘキシル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
このR1又はR2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
又、R1又はR2がそれぞれ複数ある場合は、複数のR1又はR2は同一でも異なっていてもよい。p及びqは、それぞれ0〜4の整数である。
ここで、炭素数1〜20のアルキレン基若しくはアルキリデン基としては、例えばメチレン基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基,ペンチレン基,ヘキシレン基,エチリデン基及びイソプロピリデン基等が挙げられる。
又、炭素数4〜20のシクロアルキレン基若しくはシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチレン基,シクロヘキシレン基及びシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
nは、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000〜20,000の範囲にあるような数である。
ハロゲン原子としては、塩素,臭素,フッ素及びヨウ素原子が挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状,分岐状,環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
一方、炭素数6〜20のアリール基としては、芳香環上に置換基を有しないものでもよく、低級アルキル基等の適当な置換基を有するものであってもよい。
例えば、フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基及びメチルナフチル基等が挙げられる。
rは0 〜5の整数を示し、R3が複数ある場合は、複数のR3 は同一でも異なっていてもよい。
又、この一般式(II)で表わされる末端基は一種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
又、他の末端基としては、p−tert−ブチルフェノキシ基及び/又はフェノキシ基が好ましく、少量の水酸基が含まれていてもよい。
ここで粘度平均分子量(Mv)が、10,000未満であると、強度、特に耐衝撃性が不十分となり、0.6mmと薄い基板の成形が困難となるとともに、基板自体の強度も実用上不十分となることがある。
又、20,000を越えると耐衝撃強度は十分となるが、薄い基板の成形、微小凹凸であるスタンパーの転写性が低下するとともに、基板の複屈折等の光学的性質が低下し、光ディスク基板としての性能を満足することが困難となることがある。
(ηsp)/C=[η]+0.45×[η]2 C
[η]=1.23×10-5M0.83
(但し、[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度である。)
従って、耐衝撃性等の基板特性が満足される範囲で、粘度平均分子量(Mv)の低い芳香族ポリカーボネート樹脂の選択が好ましい。
ここにおいて、本発明で用いることができる特定末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般的に用いられるフェノキシ基又はp−tert−ブチルフェノキシ基のポリカーボネートに比較して、粘度平均分子量即ち溶融粘度と実用物性としての落錘衝撃強度の関係において、かなり低い粘度平均分子量においても十分な落錘衝撃強度を保持するものである。
又、後記の離型剤及びその添加量と相まって、光学特性に優れた光ディスク基板を高サイクルで成形することを可能にするものである。
又、芳香族ポリカーボネート樹脂中の塩素やナトリウム又は微粒子不純物(塩化メチレン不溶成分)等は可能な限り洗浄、濾過、遠心分離等の精製・除去手段、溶融混練脱気工程等により低減したものが好ましい。
又、芳香族ポリカーボネート樹脂としては、アセトン溶媒でのソックスレー抽出成分である低分子量成分が、通常10質量%以下であることが好ましい。
ここで、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドとしては、炭素数が14〜30の脂肪酸とグリセリンのモノエステル化合物であり、例えば、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、アラキン酸モノグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド及びモンタン酸モノグリセリド等が挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
脂肪酸モノグリセリドとしては、離型性効果の点より、ステアリン酸モノグリセリド及びベヘン酸モノグリセリドが好ましく、特に、ステアリン酸モノグリセリドが好ましい。
例えば、ナトリウム含有量が、質量として30ppm以下、特に20ppm以下であることが好ましい。
ここで、脂肪酸モノグリセリドの添加量が0.015質量部未満であると、光ディスク基板の離型性が劣り、光ディスク基板表面に離型斑が発生し易い。
又、0.05質量部を越えると、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量が低下する傾向があり、情報記録の信頼性の低下につながる。
水の品質としては、25℃で測定した電気伝導率が1μS/cm以下の水である。
電気伝導率が1μS/cmを超えると、芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解による偏光白濁欠陥の発生が促進され、光ディスクの情報記録の信頼性低下につながる。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に対する電気伝導率が1μS/cm以下の水の添加量としては、0.1〜0.3質量%、好ましくは、0.1〜0.2質量%である。
添加量が0.1質量%未満では、離型剤として用いる炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドが変性し、脂肪酸モノグリセリドのカーボネート、脂肪酸ジグリセリド及び脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸モノグリセリドの変性体が生成し、光ディスク基板の成形時の離型性が低下し易い。
添加量が0.3質量%を超えると、ポリカーボネート樹脂が加水分解を起したり、成形性の悪化(押出し樹脂量の低下)につながる場合がある。
更に、溶融押出しされた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の冷却を、25℃で測定した電気伝導率1μS/cm以下の水を用いると、光ディスク基板にクレーズ等の発生がなく、品質が更に向上する。
安定剤としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系安定剤が好ましく用いられる。
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスアァイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスフォナイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル及びモノエステル等が挙げられる。
中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及びジステアリルペンタエリスリトールジホスファト等が好ましい。
これらリン系安定剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、含有量が0.001質量%未満では安定化効果である樹脂安定性への寄与が少なく、又、0.02質量%を越えると、光ディスク基板の長期における劣化の原因となる場合がある。
従って、これらリン系安定剤の含有量は、ペレットの製造時、光ディスク基板の成形時の熱安定性を確保するための最低限度の添加量とすることが好ましい。
ついで、これを成形原料として、溶融押出し成形により、光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂を成形するものである。この場合、金型に超音波を作用させることもできる。
これらの温度条件で、直径120mm、厚み0.6mmの金型キャビティにスタンパーを有する成形金型に溶融樹脂を射出することにより成形される。
成形サイクルは、通常3〜10秒、好ましくは3〜9秒である。
PC−A:5質量%水酸化ナトリウム水溶液400リットルに、ビスフェノールA60kgを溶解し、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
この室温のビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を、138リットル/時間の流量で、又、塩化メチレンを69リットル/時間の流量で、径10mm、長さ10mの管型反応器にオリフィス板を通して導入し、これにホスゲンを並流して10.7kg/時間の流量で吹き込み、3時間連続的に反応させた。
尚、反応液の排出温度を25℃、排出液のpHは10〜11になるように調整した。得られた反応液を静置し、水相を分離除去し、塩化メチレン相(220リットル)を採取し、ポリカーボネートオリゴマーを得た。
ついで、塩化メチレン8リットル及びビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液(ビスフェノールA:607g,NaOH:320g,水:5リットル)を加え、500rpmで常温にて1時間攪拌した。
その後、塩化メチレン5リツトル及び水5リットルを加え、500rpmで室温にて10分間攪拌した。攪拌停止後、静置分離し有機相を得た。
この有機相を0.03規定の水酸化ナトリウム水溶液5リットルでアルカリ洗浄、0.2規定の塩酸5リットルで酸洗浄及び水5リットルで水洗(二回)を順次行った。塩化メチレンを留去し、乾燥してフレーク状の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を得た。
尚、NMR測定により末端基の略100モル%が、p−クミルフェノキシ基であった。
末端基の略100モル%がp−tert−オクチルフェノキシ基であった。
末端基の略100モル%が、p−tert−ブチルフェノキシ基であった。
以下、本発明を実施例及び比較例により、詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
芳香族ポリカーボネート樹脂PC−Aに、0.028質量部のステアリン酸モノグリセリド(SMと略称することがある。)、0.004質量%のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及び25℃で測定した電気伝導率が0.9μS/cmの水を所定量加えブレンドし、255℃で二軸押出成形機にて溶融混練し、光ディスク基板を成形するための芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。
このペレットを用いて、成形金型〔直径:120mm、厚み:0.6mm、ピット深さ:140nmのDVD−ROM用スタンパー〕を用い、樹脂温度:370℃、金型温度:100℃、成形サイクル:5.3秒の条件で光ディスク基板を成形した。実験条件を表1−1に示す、
1.芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット中のステアリン酸モノグリセリド(SM)の残存量
水を添加しないと、ステアリン酸モノグリセリドからステアロイルオキシエチレンカーボネート、ステアリン酸ジグリセリド及びステアリン酸トリグリセリド等の変性体が生成することが確認された。
2.離型性:成形状況を目視観察した。
〇:全く問題なく離型。△:やや問題がある。×:問題あり
尚、ここでやや問題があるとは、光ディスク基板又はスプルーの離型不良によりロボットが金型から光ディスク基板の取り出しに失敗し成形機が停止することを指す。
3.耐湿熱性
光ディスク基板を温度:90℃、湿度:90%の恒温恒湿条件下で、1,000時間加速劣化試験した後の、粘度平均分子量を測定して評価した。
第1−2表より、25℃で測定した電気伝導率が0.9μS/cmの水の添加量が特定範囲において、離型剤であるステアリン酸モノグリセリドが変性せず、離型性が優れている。
又、耐湿熱性にも優れ、芳香族ポリカーボネート樹脂が加水分解しないため、情報記録の信頼性にも優れていることが明らかである。
芳香族ポリカーボネート樹脂PC−Aの代わりに、芳香族ポリカーボネート樹脂PC−Bを用いた以外は、実施例1と同様にして芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得、このペレットを用いて、光ディスク基板を成形した。
実験条件を表1−1、評価した結果を表1−2に示す。
芳香族ポリカーボネート樹脂PC−Aの代わりに、芳香族ポリカーボネート樹脂PC−Cを用いた以外は、実施例1と同様にして芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得、このペレットを用いて、光ディスク基板を成形した。
実験条件を表1−1、評価した結果を表1−2に示す。
芳香族ポリカーボネート樹脂として、PC−Aを用い、ステアリン酸モノグリセリドは添加しないで光ディスク基板を成形する樹脂ペレットを実施例1に準じて得た。
このペレット100gに対し、25℃での電気伝導率を変えた水を1ミリリットル添加し、プレス成形(プレス温度230℃、プレス圧力最大100kg/cm2)し、得られた光ディスク基板(約100mmφ、0.5mm厚)を、TABAI−ESPEC社製恒温恒湿槽を用い、90℃、90%RHなる条件下にて100時間加速劣化試験を行なった。
試験終了後、光ディスク基板を光学偏光顕微鏡を用いて、芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解による偏光白濁欠陥の発生個数を観察した。
その評価結果を表2に示す。
表2より、25℃で測定した電気伝導率が1μS/cm以下の水を用いる必要があることが分かる。
Claims (8)
- 粘度平均分子量(Mv)が10,000〜20,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、炭素数14〜30の脂肪酸モノグリセリドを0.015〜0.05質量部添加するとともに、25℃で測定した電気伝導率が1μS/cm以下の水を添加して、該樹脂組成物の含水量を0.1〜0.3質量%に調節しながら、押出し成形し、冷却、切断してペレット化してなる、脂肪酸モノグリセリドの変性体を含まない光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 溶融押出しされた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の冷却を、25℃で測定した電気伝導率が1μS/cm以下の水を用いて行なう請求項1に記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂の末端基の30モル%以上がp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基である請求項1に記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 粘度平均分子量(Mv)が、11,000〜18,000の芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 粘度平均分子量(Mv)が、12,000〜16,000の芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 脂肪酸モノグリセリドの添加量が0.02〜0.04質量部である請求項1〜5のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 脂肪酸モノグリセリドがステアリン酸モノグリセリドである請求項1〜6のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の含水量が0.1〜0.2質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の光ディスク基板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
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