JP5283883B2 - 樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、樹脂スタンパの製造方法および樹脂スタンパ - Google Patents
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しかしながら、ポリメチルメタクリレートの場合、離型性が悪く所望の膜厚に形成することが難しいためディスクの歩留まりを低下させてしまうような問題がある。また通常のポリカーボネートからなる樹脂スタンパは、厚みが1.1mm〜0.6mm程度でありこれ以上の薄肉化が難しい上、離型性を確保するためアルミニウムまたはシリコーン皮膜を形成させるか、離型剤としてシロキサン化合物やフッ素系化合物の単分子膜を形成させる必要があった。
さらに、シクロオレフィン樹脂は転写した後の剥離の容易性に優れていると言われているが高価であり、リサイクルして使用する場合、基板としては通常、ポリカーボネートが使用されているのでコンタミを起こして基板、及び樹脂スタンパが白濁する等の問題が発生する。したがって、上記のような問題を回避できるスタンパ用樹脂材料が求められている。
ところで、特定の末端基を特定量含有する芳香族ポリカーボネート樹脂と特定の脂肪酸モノグリセリドを特定量含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を多層構造DVD等の基板用樹脂として使用することが提案されている(特許文献5)が、基板とは異なる性能が要求される樹脂スタンパ用の材料として用いることは提案なされたことがない。
(1)末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を30〜100モル%含有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、炭素数14〜30の脂肪酸のモノグリセリド(B)を0.015〜0.05質量部を含む樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(2)前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000である上記(1)に記載の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(3)前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)がポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体である上記(1)または(2)に記載の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(4)前記モノグリセリド(B)がステアリン酸モノグリセリドである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を樹脂温度340〜400℃、金型温度80〜130℃の条件で射出成形することを特徴とする樹脂スタンパの製造方法、
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする樹脂スタンパ、および
(7)厚みが0.6mm以下である上記(6)6に記載の樹脂スタンパを提供するものである。
本発明においては、樹脂スタンパ用の材料として、末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を30〜100モル%含有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、炭素数14〜30の脂肪酸のモノグリセリド(B)を0.015〜0.05質量部を含む樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を使用する。
本発明の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(A)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂は末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を30〜100モル%含むことが必須であるが、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。
p−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を全末端基中30モル%以上含むことにより、転写性、光透過性、離型性等樹脂スタンパに要求される特性が確保される。
すなわち、例えば、塩化メチレン等の溶媒中において、上記二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との界面縮合反応により、または上記二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体との溶融エステル交換法によって製造することができる。
二価フェノールとしては、4,4'−ジヒドロキシジフェニル;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。これらの二価フェノールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
カーボネートエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネートやジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネートが使用される。
このようにして製造された芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は末端が水酸基となっており、本発明においてはこの末端基をp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基に転換する必要がある。
末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を形成させるための末端停止剤としては、p−クミルフェノールおよび/またはp−tert−オクチルフェノールを挙げることができる。
p−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基以外の末端基としては、p−tert−ブチルフェノキシ基及び/又はフェノキシ基が好適であり、少量の水酸基が含まれていてもよい。水酸基の割合は全末端基中10モル%以下、好ましくは7モル%以下である。より好ましくは、5モル%以下である。末端基の含有量はNMRを用いて測定することができる。
p−tert−ブチルフェノキシ基及び/又はフェノキシ基を形成させるための末端停止剤としては、p−tert−ブチルフェノールおよびフェノールを挙げることができる。
上記のようにして製造された、末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を30〜100モル%含有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A)においては、塩素やナトリウムあるいは微粒子不純物(塩化メチレン不溶成分)などは可能な限り洗浄、濾過、遠心分離などの精製・除去手段、溶融混練脱気工程などにより低減したものが好ましい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)としては、アセトン溶媒でのソックスレー抽出成分である低分子量成分が、通常10質量%以下であることが好ましい。
分岐剤(多官能性芳香族化合物)としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α',α'−ビス(4"−ヒドロキシルフェニル)エチル]ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等を使用することができる。
また、本発明に用いる(A)成分である末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を30〜100モル%含有する芳香族ポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体であってもよい。
同共重合体は、例えば、予め製造された芳香族ポリカーボネート構造単位を構成する芳香族ポリカーボネートオリゴマーと、ポリオルガノシロキサン構造単位を構成する末端にo−アリルフェノール由来の基、p−ヒドロキシスチレン由来の基、オイゲノール由来の基等の反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、二価フェノールの苛性アルカリ水溶液を加え、触媒として、第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)等を用い、p−クミルフェノール及び/又はp−tert−オクチルフェノールを30〜100モル%含むフェノール化合物からなる末端停止剤の存在下、界面重縮合反応することにより製造することができる。
ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等のポリアルキルシロキサンあるいはポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられるが、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体とすることにより、成形時、金属スタンパ(たとえば、Ni製)からの離型性が高められる。
本発明における粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これにより極限粘度(η)を求め、次式にて算出したものである。
[η]=1.23×10―5Mv0.83
上式において、[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度である。
本発明の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の含有量は以下に述べる脂肪酸モノグリセリド(B)の説明の欄で述べる。
本発明の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は脂肪酸モノグリセリドを含むことにより、成形時金属スタンパ(たとえば、Ni製)からの離型性が高められる。
(B)成分の含有量としては、(A)成分100質量部に対し0.015〜0.05質量部、好ましくは0.020〜0.04質量部の範囲である。ここで、脂肪酸モノグリセリドの含有量を0.015質量部以上とすることにより、十分な離型性が確保され、かつ、(A)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解による分子量低下を防止する。
一方、(B)成分の含有量を0.05質量部以下とすることにより、樹脂スタンパの曇りの発生など光学的特性が低下するのを防止する。特に樹脂スタンパの性能向上、成形サイクルの短縮化による生産性向上のため、一般に340℃以上の高温樹脂成形、80℃以上、特に90℃〜130℃の高温金型の成形条件の場合において、成形性と樹脂スタンパの特性を両立させるために、前記範囲の含有量とすることを要する。
これらリン系安定剤の含有量は、リン原子に換算して、0.001〜0.02質量%の範囲が適当である。ここで、含有量が0.001質量%未満では安定化効果である、樹脂安定性への寄与が少なく、また、0.02質量%を越えると、樹脂スタンパとしたときのスタンパの長期における劣化の原因となる場合がある。したがって、これらリン系安定剤の含有量は、ペレットの製造時、樹脂スタンパの成形時の熱安定性を確保するための最低限度の添加量とすることが好ましい。
本発明の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から射出成形による製造方法で製造される樹脂スタンパは、一般的に直径120mm程度であり、厚みは0.6mm以下であることが好ましい。
5質量%水酸化ナトリウム水溶液400リットルに、ビスフェノールA60kgを溶解し、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、室温に保持したこのビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を、138リットル/時間の流量で、またメチレンクロライドを69リットル/時間の流量で、内径10mm、管長10mの管型反応器にオリフィス板を通して導入し、これにホスゲンを並流させて10.7kg/時間の流量で吹き込み、3時間連続的に反応させた。ここで用いた管型反応器は二重管となっており、ジャケット部分には冷却水を通して反応液の排出温度を25℃に保った。また、反応液のpHは10〜11を示すように調整した。このようにして得られた反応液を静置することにより、水相を分離除去し、メチレンクロライド相(220リットル)を採取し、ポリカーボネートオリゴマーを得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー10.0リットルに、p−クミルフェノール168.1gを溶解させ、これに、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:75g、水:1.0リットル)とトリエチルアミン1.17ミリリットルを加え、300rpmで常温にて30分間攪拌した。次いで、メチレンクロライド8リットル及びビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液(ビスフェノールA:607g、NaOH:320g、水:5リットル)を加え、500rpmで常温にて1時間攪拌した。その後、メチレンクロライド5リットル及び水5リットルを加え、500rpmで常温にて10分間攪拌した。攪拌停止後、静置分離し、有機相を得た。この有機相を0.03モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液5リットルでアルカリ洗浄、0.2モル/リットルの塩酸5リットルで酸洗浄及び水5リットルで水洗(2回)を順次行ったのち、メチレンクロライドを留去し、フレーク状の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。
樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、前記塩化メチレンを使用する方法で測定した結果、14,300で、NMR測定により測定した結果、末端基としてp−クミルフェノキシ基を98モル%以上含有していることが確認された。
製造例1−1で得られた末端基としてp−クミルフェノキシ基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の100質量部に対して、ステアリン酸モノグリセリドを0.030質量部添加して押出機にて製造した。押出機の温度は280℃であった。
上記製造例1−2で得られたペレットを用いて、ブルーレイディスク(BD)用金属スタンパ(グルーブ深さ約60nm)成形金型を取り付けた射出成形機(住友重機械社製、型式SD40ER)にて、樹脂温度380℃、金型温度120℃で肉厚0.3mm、外径120mmの円盤状の樹脂スタンパを100枚成形した。
得られた樹脂スタンパをセイコー電子工業(株)走査型プローブ顕微鏡システムにて測定した結果、表面のグルーブが精密に転写され、金属スタンパの溝深さに対し、95%以上の転写性が得られていることを確認できた。
別途調製したポリカーボネート製BD基板上にAl膜をスパッタした。そのAl膜上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、上記の樹脂スタンパを押し付けるようにして密着させ、波長365nmの紫外線を樹脂スタンパ側から照射して硬化させた。
そして樹脂スタンパを剥離した。硬化させた樹脂と樹脂スタンパとの剥離は容易であった。紫外線硬化樹脂表面をセイコー電子工業(株)製の走査型プローブ顕微鏡システムにて評価したところ、樹脂スタンパの溝深さに対し、95%以上の転写性が確認できた。
この樹脂スタンパを用いて、BD基板上の紫外線硬化性樹脂へのパターン転写を繰り返し行った。転写を5回繰り返した後、該樹脂スタンパ表面を観察したところ、肉眼で観察できる汚染は全くなかった。5回目までに作製されたBD基板の転写部を観察したところ、転写不良は確認されなかった。
製造例1−1において、p−クミルフェノール168.1gの替りに、4−(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-tert-オクチルフェノール)163.4gを用いた以外は、製造例1−1と同様にして芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。製造例1−1と同様の方法で測定した結果、この樹脂の粘度平均分子量(Mv)は14,300で、NMRにより測定した結果、末端基としてp-tert-オクチルフェノキシ基を98モル%以上含有していることが確認された。
上記製造例2−1で得られた末端基としてp−tert−オクチルフェノキシ基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の100質量部に対して、ステアリン酸モノグリセリドの0.020質量部を添加して、押出機にて280℃でペレットを製造した。
製造例1−2で得られた樹脂組成物の替わりに製造例2−2で得られた樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に実施した。その結果、転写性及び剥離性に問題がないことを確認した。
実施例1において、製造例1−2で得られたペレットに替えて、製造例1−1において、p−クミルフェノール168.1gの替わりに、p−tert-ブチルフェノール119.0gを用いた以外は、製造例1−1と同様にして得た芳香族ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量Mv:14300)にステアリン酸モノグリセリドの0.030質量部を添加して製造例1−2と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを用いて、実施例1と同様に実施した。
使用された芳香族ポリカーボネート樹脂は末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を有していないため、厚さ0.3mmの樹脂スタンパを成形後、金型から離型する際100枚中70枚に割れが発生した。また、紫外線硬化樹脂を塗布し、硬化後、剥離する際10枚中6枚に割れが発生した。
Claims (7)
- 末端基としてp−クミルフェノキシ基及び/又はp−tert−オクチルフェノキシ基を30〜100モル%含有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、炭素数14〜30の脂肪酸のモノグリセリド(B)を0.015〜0.05質量部を含む樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000である請求項1に記載の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)がポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体である請求項1または2に記載の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記モノグリセリド(B)がステアリン酸モノグリセリドである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂スタンパ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を樹脂温度340〜400℃、金型温度80〜130℃の条件で射出成形することを特徴とする樹脂スタンパの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする樹脂スタンパ。
- 厚みが0.6mm以下である請求項6に記載の樹脂スタンパ。
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