JP5568094B2 - 高速光ディスク用基板材料 - Google Patents

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Description

本発明は、高速回転時に光ディスクドライブを破損させることなく安全に使用でき、良好な転写率を示す、光ディスクを製造するための特別なポリカーボネートの使用を開示する。
光データ記憶に関する研究は、主に、ある世代から次の世代に向けて、ディスク1枚当りの記憶容量を増加させることに注視されている。このことは、例えば、コンパクトディスク(CD)形式の場合ディスク1枚当り0.7GByteの容量を有し、単層デジタル多用途ディスク(DVD)の場合4.7GByteの容量を有し、単層ブルーレイディスク(BD)の場合25GByteの容量を有することから例示される。DVDおよびBDの場合において判るように、これらの容量は、例えば、二重層ディスクまたは更なる層を備えるディスク、あるいは両面にアクセス可能なディスクを導入することにより増加させることができる。
更に重要な点は、ディスクの読み出しおよび/または記録を行う間のデータ転送速度である。ピットまたは記録マークは、ある世代から次の世代に向けて、より小さくなっているにもかかわらず、データが連続して読み出しおよび/または記録されることにより、記憶密度の増加をもたらしている。この結果、ディスク全体における読み出しおよび/または記録時間の増加が生じている。この転送速度の欠如は、各形式における記録および読み出しに対する基準速度1Xを、ある世代から次の世代に向けて増加させることにより補償されている。ディスクの回転速度を増加させて、ある形式内におけるデータ転送速度を増加させることにより、高速記録および読み出しが促進されている。
1Xの基準速度と比較して、52Xのデータ転送速度をもたらすことができるCD形式のドライブおよびディスクが開発された。52Xの速度の場合、0.7GByteの容量を有するディスクにおける回転速度は、1分当り約10500回転(RPM)であり、直線での基準速度は1.2m/sである。
1Xの基準速度と比較して、最大22Xのデータ転送速度をもたらすことができるDVD形式のドライブおよびディスクが開発された。22Xの速度の場合、回転速度は約12830RPMである。
1Xの基準速度と比較して、最大8Xのデータ転送速度をもたらすことができるBD形式のディスクおよびドライブが現存する。1層あたり25GByteの容量を有する場合、8X速度に対する回転速度は約6480RPMであり、基準速度1Xに対する直線速度は4.92m/sである。研究段階においては、ディスクの回転速度が9720RPMに対応する12Xの記録速度を既に実証している(日本の高松で開催されたISOM2006(光メモリ国際シンポジウム)の議事録;「最大12XのBD-R(Cu:Si)記録」、R.G.J.Aヘッセン、J.H.Gジャガーズ、A.P.G.Eジャンセン、J.リジパー、P.R.V.ソンバイル、J.J.H.B.シュライペン著、フィッリプス・リサーチラボラトリー、High Tech Campus 34、5656 Ae Eindhoven、オランダ)。
これらの場合において、該ディスクは定角速度で回転する(CAV記録)であり、実質的には、これらの最も高いデータ転送速度はディスクの最外部でのみ成立している。例えば、一定線速度(CLV記録)でディスク全体に亘って8X速度を有する、正確な8XBDデータ転送速度を実現することを所望する場合、回転速度を最大16000RPMまで増加させなければならない。
10000RPMより高い回転速度において、ドライブを破壊し得る、ポリカーボネートディスクの爆発様の破損が生じることは、何度も報告されており既知である。一般に、標準的な光ディスク等級のビスフェノールAポリカーボネートから製造される形式のディスクに対して、10000より高い回転速度をもたらすことが重要となっている。つまり、光ディスク用材料に起因する最大データ転送速度の制限が生じている。したがって、基板材料の改質またはディスク構造の改良によって、高い回転速度を付した場合でも、ディスクの破損を防ぐための解決策が提案されている。
欧州特許出願公開第1518880号A1明細書において、ブルーレイディスクを製造するための特定のコポリカーボネートが開示されている。これらの材料は調製することが困難であり、光ディスク基板へ加工することが困難である。該明細書において、ビスフェノールAポリカーボネート(上記特許文献の段落0079)は、ピットおよびグルーブ転写率に関して適当でないと判断されている。
特定のブレンド剤を有する特定のポリカーボネートブレンドが開示されている、特開2006-318525号公報にも同様のことがあてはまる。該明細書において、純粋なビスフェノールAポリカーボネートは、適当でないと判断されている。適当な材料は、ビスフェノールAポリカーボネートと比べてより高い曲げ弾性率を有する材料であると記載されている。
欧州特許出願公開第1130587号A明細書は、コア材料とシェル材料として、異なるポリマーを含有するサンドイッチ型ディスクを提案する。該ディスク構造は複雑であり、これらのサンドイッチ型のディスクを製造するために、特別な製造装置が必要である。
韓国特許第2003073242号明細書には、ディスク内部に特定の繊維強化材を備える光ディスクが開示されている。これらのディスクは、高い回転速度を持続することができるが、それらの複雑な非標準的構造に起因して製造することが困難である。
欧州特許出願公開第1518880号A1明細書 特開2006-318525号公報 欧州特許出願公開第1130587号A明細書 韓国特許第2003073242号明細書
ISOM2006の議事録;「最大12XのBD-R(Cu:Si)記録」、R.G.J.Aヘッセン、J.H.Gジャガーズ、A.P.G.Eジャンセン、J.リジパー、P.R.V.ソンバイル、J.J.H.B.シュライペン著
ディスク製造の費用効率が高く、高い回転速度を持続することができると共に、良好な転写率を示す光ディスク基板が必要とされている。一般に、標準的な光ディスク等級のビスフェノールAポリカーボネートを使用することは、より低い回転速度、例えば13000RPM以下の回転速度に制限される。常套のディスクドライブにおいて使用される速度である約13000RPMにて生じるディスクの破壊に起因して、このようなディスクを長期間使用することはできないといった問題が報告されている。したがって、この問題を解決できる材料、すなわち、高い回転速度であっても長期間の使用を可能とする材料を開発する目的が生じた。標準的な光ディスク等級のビスフェノールAポリカーボネートから製造されるブルーレイディスクを、特に13000RPMより高い回転速度で使用する場合、ディスクの破損により危険が生じる。
標準的な光ディスク等級のビスフェノールAポリカーボネートから製造されるディスクを短期間試験に付した場合、ディスクの破損に起因して破壊が生じてしまうので、少なくとも30分間、24000RPMの回転速度を持続することはできなかった。
驚くべきことに、より高い分子量を有するビスフェノールAポリカーボネートを使用することにより、上述の問題を解決することができると共に、高いピットおよびグルーブ転写率をもたらすことができる。10000RPMより高い回転速度を必要とする高速ブルーレイディスクに関する、上述の問題の解決策として特に適当なことは、ビスフェノールAポリカーボネートが、1.210〜1.285、好ましくは1.220〜1.285、より好ましくは1.230〜1.270の範囲で相対溶液粘度(分子量に相当する)を有することである。更に、前記ポリカーボネート中の離型剤の含有量は、ポリカーボネート100重量部に基づき、2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、最も好ましくは500ppm未満である。
図1はケーシングの形状および試験条件に関する。 図2はケーシングの形状および試験条件に関する。 図3は、クランプの詳細とディスク取り付け具の詳細に関する。
一般にポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート先駆物質の溶融重合または溶液重合によってもたらされる。各ポリカーボネート製のディスクが、本明細書の実施例において記載される高速回転試験の要求を満足し、および好ましくは、上述の相対溶液粘度範囲を満足する限り、任意の芳香族ジヒドロキシ化合物を使用できる。
好ましい芳香族ジヒドロキシ化合物は、以下の式(I)で表される化合物である:
Figure 0005568094
式中、Zは、以下の式(Ia)で表される基を示す:
Figure 0005568094
式中、
およびRは相互に独立して、HまたはC〜C−アルキル、好ましくはHまたはC〜C−アルキル、特に好ましくは水素またはメチルを表し、および
Xは単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデンまたはC〜C−シクロアルキリデンを表し、C〜C−アルキル、好ましくはメチルまたはエチルで置換されてもよい。ただし、Xが3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンを示す場合、RおよびRは水素を表す。
最も好ましくは、Xはイソプロピリデンを示し、RおよびRは水素を表す。
一般に、芳香族ヒドロキシ化合物は既知であり、または一般的に知られている方法に従って調製できる。ポリカーボネートの界面重合または溶融重合も一般的に知られており、例えば、国際特許出願公開第2004/063249号A1明細書、同第2001/05866号A1明細書、同第2000/105867号明細書、米国特許第5340905号明細書、同第5097002号明細書、同第5717057号明細書などの多数の明細書において開示されている。
ポリカーボネート樹脂は、上述の芳香族ジヒドロキシ化合物を単独重合させることにより得られるホモポリカーボネートであってもよく、または上述の2種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を共重合させることにより得られるコポリカーボネートであってもよい。ジフェノールモノマーとしてのビスフェノールAに基づくポリカーボネートは、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)m-ジイソプロピルベンゼン、または4,4'-ジヒドロキシ-ビフェニルまたは2-フェニル-3,3-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)フタルイミドから成る群から選択される更なるジフェノールモノマーを、ポリカーボネートを調製するために使用されるジフェノールの量に基づき、20wt%以下、好ましくは10wt%以下、より好ましくは5wt%以下の量で含有してもよい。
溶液法による反応は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンの反応であり、一般に、酸カップリング剤および有機溶媒の存在下で行われる。酸カップリング剤として、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムなど、またはアミン化合物、例えばピリジンなどが使用される。有機溶媒として、炭化水素、例えば、塩化メチレン若しくはクロロベンゼンなど、またはこれらの炭化水素の混合物が使用される。反応を促進するために、触媒、例えば、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物または第4級ホスホニウム化合物など、例えば、トリエチルアミン、N-エチル-ピペリジン、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、またはテトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどをそれぞれ使用できる。好ましくは、反応温度は、通常、0〜40℃であり、反応時間は10秒〜5時間、反応の間のpHは9以上である。該反応は、バッチ法で行ってもよく、連続法で行ってもよい。
重合反応において、相対溶液粘度を調節するために、通常、末端キャップ剤が使用される。使用されるこれらの末端キャップ剤は、単官能性フェノールであってもよい。得られるポリカーボネート樹脂は、単官能性フェノールを基剤とする基により末端キャップされ、末端キャップを施すことなく得られたポリカーボネート樹脂と比べて、優れた熱安定性を有する。単官能性フェノールは、一般に、フェノール若しくは、低級アルキル置換フェノール、例えばフェノールp-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、または長鎖アルキルフェノール、例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールである。好ましい末端キャップ剤は、フェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノールおよび3-n-ペンタデシルフェノール(CAS番号501-24-6)である。
末端キャップ剤は、適切な相対溶液粘度がもたらされる量で導入される。末端キャップ剤は単独で使用しても良く、上述のフェノール化合物と相互に混合して用いてもよい。
溶融法による反応は、通常、上述の芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルのエステル交換反応であり、加熱条件下および不活性ガスの存在下で、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルのエステルを混合させ、生成したアルコールまたはフェノールを留去することを含む方法によって行われる。反応温度は、例えば生じるアルコールまたはフェノールの沸点と異なるが、通常120〜350℃である。反応の後半で反応系の圧力を約1.33×10〜13.3Paまで減少させることにより、生成したアルコールまたはフェノールの蒸留を促進させる。反応時間は、通常、1〜6時間である。
炭酸エステルには、エステル、例えば所望により置換され得る、C〜C10アリール基またはアラルキル基またはCアルキル基などがあり、特に、ジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートがある。ジフェニルカーボネートが最も好ましい。
重合を加速させるために、重合触媒を使用してもよい。これらの重合触媒として、エステル化またはエステル交換反応に通常使用される触媒、例えばアルカリ金属化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または二価フェノールのナトリウム塩もしくはカリウム塩など、アルカリ土類金属化合物、例えば水酸化カルシウム、水酸化バリウムまたは水酸化マグネシウムなど、窒素含有塩基性化合物、例えばテトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、トリメチルアミンまたはトリエチルアミンなど、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のアルコキシド、リン含有塩基性化合物、例えばテトラフェニルホスホニウムフェノラート、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、鉛化合物、オスミウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物またはジルコニウム化合物、が使用されうる。これらの触媒は単独で使用してもよく、組合せて使用してもよい。これらの触媒は、出発原料としての二価フェノール1molに対して、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の量で使用される。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、重合における異性化反応の結果としてポリマー中に3官能性以上の芳香族化合物または分枝成分を含んでもよい。3官能性以上の芳香族化合物の例としては、好ましくは、フロログルシン、フロログルシド、トリスフェノール、例えば4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、および4−(4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)−α,α−ジメチルベンジルフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびそれらの酸塩化物が含まれる。3官能性以上の芳香族化合物が使用される場合、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
ポリカーボネートまたはコポリカーボネートは、キャピラリー型0Cのウベローデキャピラリー粘度計を用い、ジクロロメタン中で測定されるポリマー溶液について決定される相対溶液粘度により特徴づけられる。ポリマー濃度は5g/lであり、測定は25℃の温度で行われる。
離型剤として、一価アルコールまたは多価アルコールの高級脂肪酸を、本発明による熱可塑性樹脂に添加してもよい。一価アルコールまたは多価アルコールの高級脂肪酸を混合することにより、熱可塑性樹脂を成形する際、金型からの離型性が改良されると共に、ディスク基板の成形時における離型荷重を小さくできることにより、離型の失敗によるディスク基板の変形とピットの転位を防ぐことができる。また、熱可塑性樹脂の溶融流動性も改良される。
離型剤の有効量は、好ましくは樹脂重量の2000重量ppm未満、より好ましくは樹脂重量の1000重量ppm未満、特に好ましくは500ppm未満である。
好ましい高級脂肪酸エステルは、グリセロールモノステアレートおよびグリセロールモノパルミテートならびにこれらの混合物である。
リンを基剤とする熱安定剤を熱可塑性樹脂に添加してもよい。適当な、リンを基剤とする熱安定剤には、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびそれらのエステルが含まれる。特に、ホスファイト化合物、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトなど、およびホスフェート化合物、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロロフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルモノオルトキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェートおよびジイソプロピルホスフェートが挙げられる。別のリンを基剤とする熱安定剤は、例えばテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトである。これらの中でも、トリスノニルフェニルホスホナイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトが好ましい。これらの熱安定剤は単独で使用してもよく、混合物として使用してもよい。
熱安定剤を添加する場合、これらの熱安定剤の量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.0001〜0.05重量部、より好ましくは0.0005〜0.02重量部、最も好ましくは0.001〜0.01重量部である。
一般的に知られている酸化防止剤を、本発明による熱可塑性樹脂に添加して酸化を防いでもよい。酸化防止剤の例は、フェノールを基剤とする酸化防止剤である。酸化防止剤の量は、熱可塑性樹脂に基づき、好ましくは0.0001〜0.05重量%である。
各ポリカーボネート樹脂組成物から製造されるディスクが高速回転試験の要求を満足する範囲内で、本発明による光ディスク基板用の樹脂に、上述の添加剤ならびに他の添加剤、例えば光安定剤、着色剤、帯電防止剤および滑剤を添加できる。
ポリカーボネートと別の熱可塑性樹脂との混合物も、該各混合物から製造されるディスクが高速回転試験の要求を満足する限り使用できる。別の熱可塑性樹脂は、以下のものから成る群から選択できる:アクリル樹脂、好ましくはポリメチルメタクリレート、イソプレンおよびブタジエン若しくはそれらの混合物を含む群から選択されるモノマーとのコポリマー-若しくはブロックポリマー、またはホモポリマーとしてのポリスチレン樹脂、あるいはポリシクロオレフィン樹脂、好ましくはオレフィンと、ノルボルネン構造を一部に有するオレフィンの重合生成物。
本発明による樹脂組成物の調製に際し、ポリカーボネート樹脂の混合および/またはポリカーボネート樹脂と他の樹脂の混合を、溶液中または溶融状態でおこなってもよい。ポリマー溶液の段階で混合を行うために、撹拌器を備える容器が主に使用され、2番目の状態(溶融状態)の場合、以下の装置を使用できる:例えばタンブラー、二軸混合機、ナウターミキサー、バンベリーミキサー、ニーディングロールまたは押出機。いずれの場合も、あらゆる技術を使用でき、特に制限はない。
光記録媒体の基板を製造するための方法に関する詳細
上述した光記録媒体用の樹脂から該基板を製造するために、光記録媒体に関して要求される仕様と表面制度を満たすピットおよびグルーブを具有するスタンパーを備える射出成形機(射出圧縮成形機を含む)が使用され、射出成形により光ディスク基板が生成される。ディスク基板の厚さは、一般に0.3〜2.0mm、好ましくは0.6〜1.2mm、最も好ましくは1.0〜1.15mmである。この射出成形機は一般的に使用されるものであってもよいが、好ましくは、カーバイドの生成を抑制し、ディスク基板の信頼性を向上させるために、耐摩耗、耐腐食性および樹脂に対する低い接着性を示す材料製のシリンダーおよびスクリューから構成される成形機である。成形工程の環境は、本発明の目的を鑑みると、可能な限り清潔であることが好ましい。また、水を除去するために、成形に付される材料を完全に乾燥させるべきであり、溶融させた樹脂の分解を引き起す滞留を防ぐべきである。
以下において、本発明による光記録媒体の標準的な基板を製造する方法を記載する。該方法は、実施例において使用されたものであり、基板が溶液粘度の要求を満足するのであれば、本発明の対象において限定されない。120mmの直径および1.1mm〜1.2mmの厚さを有するディスク基板を、金型とスタンパーを備える射出成形機を用いて、各ペレットから射出成形する。
試験手順の詳細
相対溶液粘度の測定
ポリカーボネートまたはコポリカーボネートは、キャピラリー型0Cのウベローデキャピラリー粘度計を用い、ジクロロメタン中で測定されるポリマー溶液の相対溶液粘度により求められる。ポリマー濃度は5g/lであり、測定は25℃の温度で行われる。
転写率の測定
複製されたピット構造を有する、射出成形後の基板のピット深さdを、タッピングモードを用いる原子間力顕微鏡で測定した。スタンパーのピット深さdを同じやり方で測定した。その後、以下の式を用いて転写率tを算出する:
t=d/d×100%
半径偏差の測定
半径偏差は、基準面からのディスク表面の角度偏差を測定する。それは、基準面に対して垂直な入射光と反射光の間における、半径方向において測定した角度として定義される。ディスクの半径偏差は、バスラー社製のオフライン光ディスクスキャナー(形式:Basler Reference 100)を用いて測定した。ディスクについて測定した最大公称値を採用した。
高速回転試験
(i)モーター(LMT Lehner Motoren Technik社、形式1525/17)、(ii)電源装置(CL-Electronics社、形式DF-1730SL20A)、(iii)モーターのPRMを調整する出力部を備える、モーターRPMセッティング用のプリント基板(YGE,Young Generation Electronics,形式65HV)であって、電位差計を作動させることにより該RPMを設定できる該プリント基板および(iv)モーターRPMを測定するオシロスコープ(ヒューレット・パッカード社、形式Infinium 500MHz)によって、高速試験は行われる。モーター軸にディスク用のクランプを締結する。クランプの詳細と、ディスク取り付け具は、図3において表される。ディスク自体を、該取り付け具を用いてクランプに装着し、ケーシング内に導入する。ケーシングの形状および試験の設定は図1および図2において表される。
ディスクを30秒以内に24000RPMまで加速させる。その時点から、ディスクを、最長で30分間24000RPMで回転させる。試験は常に、同じポリカーボネート製の3枚のディスクを使用する。30分以内に、3枚のディスクのうちいずれのディスクも破壊しなければ、試験は合格である。少なくとも1枚のディスクがこの30分以内に破壊を生じる場合、試験は不合格である。表3において、不合格に該当する場合の時間を記載する。
基板材料の詳細
比較例1:Dow Calibre(登録商標)1080 DVDは、ダウ社製の光ディスク等級のビスフェノールAポリカーボネートであり、相対溶液粘度は1.197である。
比較例2:Makrolon(登録商標) OD2015は、バイエル・マテリアルサイエンスAG社製の光ディスク等級のビスフェノールAポリカーボネートであり、相対溶液粘度は1.210である。
実施例1:末端キャップ剤としてp-tert-ブチルフェノールを使用し、界面重合法によって調製され、400ppmのグリセリンモノステアレートを含有し、相対溶液粘度が1.227であるビスフェノールAポリカーボネート。
実施例2:末端キャップ剤としてフェノールを使用し、溶融重合法によって調製され、400ppmのグリセリンモノステアレートを含有し、相対溶液粘度が1.261であるビスフェノールAポリカーボネート。
実施例3:末端キャップ剤としてフェノールを使用し、界面重合法によって調製され、290ppmのグリセリンモノステアレートを含有し、相対溶液粘度が1.281であるビスフェノールAポリカーボネート。
実施例4:末端キャップ剤としてフェノールを使用し、界面重合法によって調製され、離型剤として3000ppmのペンタエリトリトールテトラステアレートを含有し、相対溶液粘度が1.280であるビスフェノールAポリカーボネート。
比較例3:末端キャップ剤としてフェノールを使用し、界面重合法によって調製され、400ppmのグリセリンモノステアレートを含有し、相対溶液粘度が1.300であるビスフェノールAポリカーボネート。
ディスクの成形法A
直径120mmおよび厚さ1.1mmのディスク基板を、金型AWM5237およびBD-ROMスタンパーを備える住友製のSD40E射出成形機を用いて、上述の材料から射出成形する。以下の成形パラメータを使用した(表1参照)。
Figure 0005568094
Cylは、溶融温度であり、TMoldは金型温度であり、左側の値は金型の鏡面の温度を示し、右側の値は金型のスタンパー面の温度を示す。
ディスクの成型法B
直径120mmおよび厚さ1.15mmのディスク基板を、金型AXX1695およびCD-オーディオ型スタンパーを備え、直径32mmのスクリューを使用する、Netstal Diskjet 600 Hybrid 射出成形機を用いて、上述の材料から射出成形する。以下の成形パラメータを使用した(表2参照)。
Figure 0005568094
Cylは、溶融温度であり、TMoldは金型温度であり、左側の値は金型の鏡面の温度を示し、右側の値は金型のスタンパー面の温度を示す。
結果
表3は、成形した基板の性質をまとめたものである
Figure 0005568094
実施例から判るように、相対溶液粘度を1.210〜1.285の範囲に備えるBPA-PC製のディスク基板は、確実な高速操作性を有し、良好なピット転写率および平坦なディスクを提供する。相対溶液粘度が1.21未満であり、本発明の要求を満たさない比較例1および2は、高速回転試験において不合格である。この結果によると、短時間で試験が終了した標準的な光ディスク等級のビスフェノールAポリカーボネート製の試験ディスクは、ディスクの破損に起因する故障を生じてしまい、24000RPMの条件下での回転に、少なくとも30分間耐えることができなかったことを意味する。比較例3は、優れた高速試験特性を有するが、高い相対溶液粘度に起因して転写率が85%以下である。さらに、より低い相対溶液粘度を有するポリカーボネートを使用したいずれの場合よりも、半径偏差はより高くなる。

Claims (6)

  1. ディスクの破損に起因する故障を伴うことなく、24000RPMの条件下での高速回転試験に少なくとも30分間耐えることができると共に、85%よりも高いピット/グルーブ構造の転写率を示す光ディスク用基板を製造するためのポリカーボネートの使用方法であって、
    該ポリカーボネートは、1.210〜1.285の相対溶液粘度を有し、2000ppm未満の離型剤を含有する、ポリカーボネートの使用方法
  2. 離型剤がグリセリンモノステアレートまたはグリセリンモノパルミテート、あるいはこれらの混合物である請求項に記載の方法。
  3. 転写率が90%より高い請求項1に記載の方法。
  4. ディスクの破損に起因する故障を伴うことなく、スピンスタンド上での24000RPMの条件に少なくとも30分間耐えることができ、1.210〜1.285の相対溶液粘度を有するポリカーボネート製の光媒体用基板であって、
    該ポリカーボネートは、2000ppm未満の離型剤を含有する、光媒体用基板
  5. ポリカーボネートがビスフェノールAに基づく請求項に記載の基板。
  6. 請求項に記載の基板から製造される光媒体。
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