JP4344636B2 - 芳香族ポリカーボネート共重合体、およびそれより形成された光ディスク基板 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート共重合体、およびそれより形成された光ディスク基板 Download PDF

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本発明は、スタンパー形状に対する精密転写性、低吸水性、低光弾性を併せ持つ芳香族ポリカーボネート共重合体およびそれから得られた光ディスク基板および光ディスクに関する。さらに詳しくは、CD(Compact Disk)やMO(光磁気ディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu−ray Disk)などの光ディスク分野において精密転写性で且つ、環境変化によるディスクの反りが少なく、さらには複屈折の低い光ディスク基板および光ディスクに関する。特に本発明は、記録容量の極めて大きな高密度光ディスク用の基板に関する。
光ディスクの記録密度は、CDの0.6GBからDVDの4.7GBと向上の一途を辿っている。例えば、再生専用のDVD−ROMをはじめ、記録再生可能なDVD−R、DVD−RW、DVD−RAMにおいても4.7GBの容量が実現されてきた。また、最近ではデジタルハイビジョン放送に対応した大容量記録媒体であるBDが25GBを実現している。しかしながら、情報技術の進展に伴い、光ディスク分野の市場発展は目覚しく発展しているため、今後はより膨大な情報を記録できる高密度光ディスクの登場が期待されている。例えば、デジタル放送などのハイビジョン映像を長時間録画できる100GBit/inch2以上の記録密度を有する光ディスクが要望されている。
光ディスクの高密度化は、グルーブもしくはピットの間隔、すなわちトラックピッチを狭めてトラック方向の記録密度を高めることで達成される。例えば、CDからDVDへの高密度化へあたっては、トラックピッチを1.6μmから、0.74μmへと狭めることにより記録密度を高める措置がとられている。
光ディスク基板は熱可塑性樹脂を射出成形(射出圧縮成形)して製造される。その際、金型に取り付けた、スタンパー上に予め刻印された記録再生信号のもとになる微細な凹凸形状が、スタンパーから基板表面に転写される。従って、基板の成形時にはスタンパーの凹凸形状をいかに精度良く転写できるか、即ち精密転写性が重要となる。特に、高密度光ディスク基板の成形においては、かかる重要性が顕著なものとなる。
高密度光ディスクにおいては、高転写率の基板よりなることに加え、従来の光ディスクに比べ、環境変化(例えば吸湿)による反り変化が小さいことが以下の理由により重要となる。高密度化に伴い、レーザーの短波長化およびピックアップレンズが高NA化される為、微小な基板の反りでもコマ収差が大きくなり、フォーカスエラーやトラッキングエラーを引き起こすからである。また、高NA化によってピックアップレンズと基板との距離が接近する為、レンズと基板の接触を回避する為にも、基板の反りおよび環境変化による反り変化は小さいことが重要となる。特に、自動車運転中は室内温度が高く、湿度も低いため、急激な変化が起こりやすく、ディスク変形により信号が読み出せない等のフォーカスエラーが起こりやすい。
また、高密度光ディスクにおいて、微細化した溝にレーザーを集光させて信号を読取る場合は、斜め入射光成分の影響が強くなるため、基板が光学的に均質であることも重要となる。通常、光ディスク基板にレーザー光線を通過させると成形過程で生じた分子配向や残留応力などが原因となり複屈折を生じる。この複屈折が高いことは、基板にレーザー光を通過させて信号を読取るタイプの光ディスクにとって致命的な欠陥ともいえる。
従来、CD(コンパクトディスク)やMO(光磁気ディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクの基板には、透明性、耐熱性、機械的特性および寸法安定性等が優れていることから、2,2−ビスー(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称;ビスフェノールA)にホスゲンやジフェニルカーボネートを反応させて得られるポリカーボネート樹脂(以後、BisP−A系樹脂と称する)が使用されてきた。しかしながら、前述したように光ディスクの高密度化に伴い、BisP−A系樹脂から形成された光ディスク基板も、精密転写性と反りの点から十分満足いくものではなくなってきている。次世代光ディスクとして将来登場する記録容量のきわめて大きな高密度光記録媒体においては溝幅や溝と溝とのピッチ間隔がさらに狭くなり、溝の勾配もさらに急峻になることは明白である。それ故に、前記BisP−A系樹脂を用いて、高転写率且つ低そり基板を得ることが極めて困難になることもまた明白であり、その改善が必要となっている。さらに、BisP−A系樹脂はベンゼン環由来の光学異方性が高いため、特に斜め入射光の複屈折が低い基板を得ることは困難であり、その改善も必要となっている。
転写性改善の要求に対しては、これまでも成形技術および材料改質の両側面から種々検討がなされてきた。前者については、例えば、基板成形時のシリンダー温度や金型温度を高く設定する方法が有効であることが確認されている。しかしながら、この方法は高温成形であるがゆえに、金型内での冷却時間を長くしなければならず、成形サイクルが伸びて生産性に劣るという問題が発生する。無理に、ハイサイクル化して成形を行うと、金型から基板を取り出す際に離型不良が生じ、ピットやグルーブが変形する為、逆に、転写精度が低下するという問題が発生する。後者については、例えば、高流動性を付与するためにポリカーボネート樹脂中に低分子量体を多く含有させる方法(例えば特許文献1、2参照)、あるいは特定の長鎖アルキルフェノールを末端停止剤として使用する方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。
しかし、この低分子量体の含有量を増加する方法、あるいは、長鎖アルキルフェノールによる末端基の改変方法は、一般に熱安定性の低下が大きく、したがって、成形時に熱分解を促進する結果、ディスク基板の機械的強度が著しく低下して、金型からの突出し力により基板の割れが発生したり、また光ディスク基板の取り扱い時にも基板の破損が起こることになる。
この様に従来の技術は、いずれも樹脂の流動性を向上させることによる転写性の改善効果を狙ったものであるが、実用に耐えうる基板を高効率で得られるものではなかった。
一方、反りの改善要求に対しても、成形技術および材料改質の両側面から種々検討がなされてきた。前者については、成形条件を詳細に調整することによって、基板の反りを小さく抑え込むことができるが、同時にスタンパー形状を精密に転写させるのは困難であった。
後者については、曲げまたは引張り弾性率が高い剛性のある材料を使用することが有効であることが知られている。この為、ポリカーボネート樹脂の剛性を改良することを目的として、ガラス繊維や充填材などの添加物を配合する手法が試みられている。しかし、上記添加物は、ポリカーボネート樹脂の剛性を向上させるが、射出成形時の流動性を低下させる傾向にあるため、転写精度が低下するという問題があった。さらに、成形品表面に浮き出ることが多く、基板の外観不良の原因になるという問題もあった。
環境変化に対する反りについては、吸水変形を抑える為に、“基板と、この基板に配置されて情報信号を記録する為の記録層とその記録層に積層される透明保護層を有し、透明保護層側から光を入射することで情報信号の記録/再生を行うディスク状の情報記録媒体であり、この基板は、樹脂製のコア層と、コア層に一体となっており、一方の面に記録層側の情報信号の凹凸が存在し、コア層に比べて流動性を有する樹脂製の表層とから構成されていることを特徴とする情報記録媒体”であって基板表層の吸水率を0.3%以下の樹脂を用いる基板が提案されており、二色成形、サンドイッチ成形による複雑な基板構成で問題を解決する方向が示されている(例えば特許文献4参照)。
複屈折低減の要求に対しては、樹脂自身の光弾性定数を低減させ得る特定構造のビスフェノールをカーボネート結合して得られる光学式ディスク基板用芳香族ポリカーボネート共重合体が一般式の表現形式で広範囲に開示されている(例えば特許文献5〜7参照)。
しかしながら、本発明者らの実験結果によると、該公報において例示された代表的な共重合体は、BisP−A系樹脂に比べて光弾性定数は低減されているものの、転写性については逆に劣っており、高密度光ディスク用基板材料としては決して満足のいくものではないことが判明した。
特開平9−208684号公報 特開平11−1551号公報 特開平11−269260号公報 特開2000−11449号公報 特開平2−99521号公報 特開平2−128336号公報 特開平2−208840号公報
本発明は、かかる状況を鑑みてなされたものであり、スタンパー形状に対する精密転写性、低吸水性、低光弾性を併せ持つポリカーボネート共重合体および該共重合体からなる高転写率で、且つ、環境変化に対して反りにくく、さらには複屈折の低い光ディスク基板および光ディスク、とりわけ高密度光ディスク用基板を提供することを目的とするものである。本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造の芳香族ポリカーボネート共重合体が基板成形プロセス中で転写が起こる時点の樹脂表面状態と考えられる転移域〜ガラス域の弾性率が従来のBisP−A系樹脂と同等またはそれ以下であり、且つ、熱拡散率が低いこと、さらには吸水率が低く、光弾性定数も低いこと、および該樹脂を成形用樹脂として用いることによって高転写率で、環境変化に対してそり難く、且つ複屈折の低い光ディスク基板が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。上記課題を解決する為に、本発明では、(A)下記式[1]
Figure 0004344636
(式中、R1〜R2はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。)
で表される二価フェノール成分と
(B)下記式[2]
Figure 0004344636
(式中、複数のR3は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。また、R4は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、R5およびR6は各々炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R4、R5およびR6の炭素数の合計は5〜7である。)
で表される二価フェノール成分から実質的に構成され、(A)成分と(B)成分のモル比が(A):(B)=10:90〜60:40である芳香族ポリカーボネート共重合体、および該共重合体からなる光ディスク基板が提供される。
本発明における「精密転写性」とは、透明熱可塑性樹脂成形材料を用いて射出成形により光ディスク基板を製造する場合に、スタンパーに刻印された微細な凹凸形状を忠実に転写することができる性質のことである。
そもそも射出成形法(射出圧縮成形法を含む)などによって光ディスク基板を製造する場合に、基板表面に形成される微細な凹凸形状は、金型キャビティ内に充填された樹脂が加圧されることで、該凹凸形状を反転したパターンが予め刻印されているスタンパーの溝に入り込み、次いで一定時間保持された後に冷却固化して形成される。このプロセス中でキャビティに充填される樹脂は金型壁面(スタンパー面)と接触した直後から熱を奪われる。その結果、基板表面には時間経過と共に発達する冷却固化層が形成される。また、基板内部においても冷却が進行して樹脂温度が低下することによる粘度上昇が起こる。
本発明者らは実験によって、1)転写精度は金型キャビティ内への樹脂充填が完了した直後に基板表面付近に形成される冷却固化層の変形性と該固化層を変形させる圧力の伝達性によって左右されること、2)上記冷却固化層の変形性は、その硬さと厚みによって決定されること、3)成形プロセス中で転写が起こる時点の樹脂表面状態と考えられる転移域〜ガラス域の弾性率が冷却固化層の硬さに相当するものであり、弾性率の低い材料を用いると高転写率の光ディスク基板が提供されること、4)冷却固化層の厚みは熱拡散率によって決定されるものであり、熱拡散率の低い材料を用いると冷却固化層の発達を遅らせ、厚みが薄い状態で成形することにより高転写率の光ディスク基板が提供されること、などを見出した。そして、(A)下記式[1]
Figure 0004344636
(式中、R1〜R2はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。)
で表される二価フェノール成分と
(B)下記式[2]
Figure 0004344636
(式中、複数のR3は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。また、R4は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、R5およびR6は各々炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R4、R5およびR6の炭素数の合計は5〜7である。)
で表される二価フェノール成分から実質的に構成され、(A)成分と(B)成分のモル比が(A):(B)=10:90〜60:40である芳香族ポリカーボネート共重合体(以後、BisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂と称する)が上記3)、4)を満足し、且つ実用に耐え得る光ディスク基板を高効率で得られる材料であることが判明した。さらに本発明によれば、BisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂における(A)成分と(B)成分のモル比が(A):(B)=10:90〜55:45である場合、さらに(A):(B)=10:90〜50:50である場合、より高い精密転写性をもつ樹脂が得られ、それを成形材料に用いることにより記録容量の極めて大きな高密度光ディスク基板が得られる。例えば、(A)成分が10モル%より少ない場合、弾性率は低下するが熱拡散率が増大するため転写性は向上せず、且つ、弾性率が低いため得られた基板は反りが大きくなる。(A)成分が60モル%を超える場合、熱拡散率は低下するが、弾性率が増大するため転写性は低下する。なお、上記式[1]において、R1〜R2がアルキル基またはアルコキシ基の場合、炭素数は1〜3が好ましく、また、アリール基の場合、炭素数6〜10が好ましい。さらに上記式[2]においてR3がアルキル基またはアルコキシ基の場合炭素数1〜3が好ましく、アリール基の場合炭素数6〜10が好ましい。
本発明によれば、BisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂は吸水率が極めて低く、該樹脂より成形された光ディスク基板は吸湿による反り変化が小さいことも判明した。
BisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂は(A)成分および(B)成分をカーボネート前駆体と溶液重合法または溶融重合法によって反応させることよって製造することができる。(A)成分としては、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、7,7’−ジメチル−6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、7,7’−tert−ブチル−6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等が挙げられ、(B)成分としては1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(2,3−ジメチルー4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン等が挙げられる。その中でも特に(A)成分が7,7'−ジメチル−6,6'−ジヒドロキシ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダンであり、(B)成分が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサンであることが好ましい。
また本発明によれば、二価フェノールとして他の二価フェノールから誘導されるカーボネート結合繰り返し単位を、本発明の目的および特性を損なわない限り、10モル%以下の割合、好ましくは5モル%以下の割合で共重合させてもよい。かかる他の二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1'−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−オルト−ジイソプロピルベンゼン、1,1'−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタ−ジイソプロピルベンゼン、1,1'−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−パラ−ジイソプロピルベンゼン、9,9―ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4'−ジヒドロキシジフェニルエステル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン等が挙げられる、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられるが、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートが好ましい。上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融重合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式[3]
Figure 0004344636
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
で表される単官能フェノール類を示すことができる。
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、基板としての物性、特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、また、基板の複屈折が低減される効果もあり好ましく使用される。なかでも、下記式[4]および[5]
Figure 0004344636
Figure 0004344636
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
前記式[4]の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
また、前記式[5]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
溶融重合法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応が代表的であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を10〜0.1Torr(1,300Pa〜13Pa)程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物;アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類;アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類;その他に亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類、マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
本発明で提供されるBisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂は、23℃の純水に浸漬した場合の飽和吸水率が0.25重量%以下であることが好ましく、0.120重量%以下であることがより好ましい。飽和吸水率が0.25重量%を超えると、吸湿および脱湿課程において光ディスクの反り変形が生じやすくなり、フォーカスエラーやトラッキングエラーなどを起こし易くなるので好ましくない。
光ディスクの吸湿および脱湿課程における反り変形に関しては以下の測定法を用いた。すなわち、ディスクを温度30℃、湿度90%RHの環境(A環境)下で飽和吸水率に達するまで暴露した後、温度23℃、湿度50%RHの環境(B環境)下に移した時に生じる中心から58mm部のチルト(tilt)変化の最大値と定常に達したときの値の差(Δtilt)を比較したものである。このときのΔtiltは0.9度以内、好ましくは0.75度以内、さらに好ましくは0.5度以内である。
光ディスクは、その使用環境下(光ディスク駆動装置内、放置環境下)において、変形しないことが必要となる。その意味から、本発明のBisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂のガラス転移温度は110℃以上であることが望ましく、125℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が110℃未満であると、過酷な使用環境下、例えば自動車内に長時間放置されていた場合において、基板が熱変形を起こしやすくなり、フォーカスエラーやトラッキングエラーなどを起こしやすくなるので好ましくない。本発明におけるガラス転移温度とは、示唆走査熱量分析装置(DSC)を使用し、速度20℃/minの昇温過程で測定し得られるものである。
BisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂の粘度平均分子量は、10,000〜30,000の範囲内に制御されることが好ましく、12,000〜20,000の範囲内にあることがより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂光学用成形材料は、光学用材料として十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。過剰に低い分子量では、成形後の基板としての強度に問題が生じ、また逆に過剰に高いと成形時の溶融流動性が悪く、基板に好ましくない光学歪みが増大する。なお、本発明における粘度平均分子量(M)とは、測定に供する樹脂(0.7g)を塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c (但し、[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4 0.83
c=0.7
本発明のBisP−SPI/BisP−IOTD系樹脂は、その使用目的が光ディスク基板の製造であることを考えると、従来公知の常法(溶液重合法、溶融重合法など)により製造した後、溶液状態において濾過処理を行い未反応成分等の不純物や異物を除去することが好ましい。さらに、射出成形(射出圧縮成形を含む)に供するためのペレット状ポリカーボネート樹脂を得る押出工程(ペレット化工程)においても、溶融状態の時に、焼結金属フィルターを通すなどして異物を除去することが望ましい。該フィルターとしては濾過精度10μmのものが好ましく使用される。いずれにしても射出成形(射出圧縮成形を含む)前の原料樹脂は異物、不純物、溶媒などの含有量を極力低くしておくことが必要である。
本発明において、前記芳香族ポリカーボネート共重合体に必要に応じて、公知のリン系熱安定剤を配合することができる。すなわち、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、これらのエステルおよびこれらの縮合体よりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。かかるリン化合物の配合量は、該芳香族ポリカーボネート共重合体に対して0.0001〜0.05重量%が好ましく、0.0005〜0.02重量%がより好ましく、0.001〜0.01重量%が特に好ましい。このリン化合物を配合することにより、かかる芳香族ポリカーボネート共重合体の熱安定性が向上し、成形時における分子量の低下や色相の悪化が防止される。
かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、これらのエステルおよびこれらの縮合体よりなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物であり、好ましくは下記一般式
Figure 0004344636
Figure 0004344636
Figure 0004344636
Figure 0004344636
[式中、R7〜R18は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜20のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチルなどの炭素数6〜15のアリール基またはベンジル、フェネチルなどの炭素数7〜18のアラルキル基を表し、また1つの化合物中に2つのアルキル基が存在する場合は、その2つのアルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。]
よりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物である。
上記[6]式で示されるリン化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
上記[7]式で示されるリン化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられ、上記[8]式で示されるリン化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどが挙げられ、また上記[9]式で示される化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられる。
これらのリン化合物のなかで、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトが好ましく使用される。
さらに本発明の芳香族ポリカーボネート共重合体には、必要に応じて公知の離型剤を加えることができる。すなわち、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを加えることもできる。
かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。また、かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられ、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
かかるアルコールと高級脂肪酸とのエステルの配合量は、該芳香族ポリカーボネート共重合体に対して0.01〜2重量%が好ましく、0.015〜0.5重量%がより好ましく、0.02〜0.2重量%がさらに好ましい。配合量がこの範囲内であれば離型性に優れ、また離型剤がマイグレートし金属表面に付着することもなく好ましい。
上記ポリカーボネート共重合体より光ディスク基板を製造する場合には射出成形機(射出圧縮成形機を含む)を用いる。この射出成形機としては一般的に使用されているものでよいが、炭化物の発生を抑制しディスク基板の信頼性を高める観点からシリンダーやスクリューとして樹脂との付着性が低く、かつ耐蝕性、耐摩耗性を示す材料を使用してなるものを用いるのが好ましい。
射出成形の条件としてはシリンダー温度300〜400℃、金型温度50〜140℃が好ましく、これらにより光学的に優れた光ディスク基板を得ることができる。
成形工程での環境は、本発明の目的から考えて、可能な限りクリーンであることが好ましい。また、成形に供する材料を十分乾燥して水分を除去することや、溶融樹脂の分解を招くような滞留を起こさないように配慮することも重要となる。
このように成形された光ディスク基板は、コンパクトディスク(CD)、や光磁気ディスク(MO)、DVD(Digital Versatile Disk)など現行の光ディスクはもちろん、ディスク基板上に被せた厚さ0.1mmの透明なカバー層を介して記録再生を行うBlu−ray Disc(BD)やDVDと同じ0.6mm基板を張り合わせたHD−DVDに代表される高密度光ディスク用基板としても好適に使用される。
本発明のポリカーボネート樹脂光学用成形材料は、高精密転写性に優れているので、グルーブ列もしくはピット列の間隔が0.1μm〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.35μmである光ディスク基板を成形によって容易に得ることが可能となる。またグルーブもしくはピットの光学的深さが、記録再生に使用されるレーザ光の波長λと基板の屈折率nに対してλ/8n〜λ/2n、好ましくはλ/6n〜λ/2n、さらに好ましくはλ/4n〜λ/2nの範囲にある光ディスク基板を得ることができる。かくして記録密度が100Gbit/inch2以上である高密度光学ディスク記録媒体の基材を容易に提供することができる。
本発明によれば、光ディスク、とりわけ高密度光ディスクの基板を射出成形法(射出圧縮成形法を含む)などにより製造する場合に、スタンパー上に予め刻印された凹凸形状が正確に転写されており(高転写率)、且つ、吸水による反り変形が小さく、さらには複屈折の低い光ディスク基板を供することが可能となり、その奏する効果は格別なものである。
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。実施例および比較例において「部」は重量部である。なお評価は下記の方法に従った。
(1)粘度平均分子量(M)
塩化メチレン100mlにポリカーボネート共重合体0.7gを溶解し、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めた。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c (但し、[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4 0.83
c=0.7
(2)ガラス転移温度
TAインスツルメント社製の熱分析システム DSC−2910を使用して、窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
(3)吸水率
ASTM D−570に従い、φ45mm成形プレートを水中浸漬し重量変化率(重量%)により求めた。
(4)光弾性定数
塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂5.0gを溶解させ、その溶液をシャーレに一晩放置し、キャストフィルムを作成した。該フィルムを60℃、2時間乾燥させた後、5cm×2cmの大きさに切り取り、日本分光社製エリプソメータM−220にて測定を行った。
(5)貯蔵弾性率
TAインスツルメント社製の動的粘弾性測定装置RDAIIIを使用して、周波数89.7rad/sec,降温速度20℃/minの条件下で、ゴム域〜ガラス域におけるずり貯蔵弾性率の温度依存性を測定した。表1に記載の値は、該温度依存性曲線からTg’−5℃における値を読み取ったものである。ここで、「Tg’−5℃」の「Tg’」はずり貯蔵弾性率(G’)と同時に測定されるずり損失弾性率(G”)の温度依存性曲線から得た力学的ガラス転移温度を示す。
(6)熱拡散率
真空理工社製のTC−7000においてレーザーフラッシュ法にて熱拡散率を測定した。照射光はルビーレーザー、真空中、温度はTg−20℃にて測定した。ここで「Tg」とは上記(2)のガラス転移温度のことを示す。
(7)転写性
名機製作所製の射出成形機 M35B−D−DM、深さ200nm、間隔0.5μm、幅0.2μmの溝が刻まれたスタンパーを用いて、直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を成形した。なお、シリンダー温度は360℃、型締め力は30トン一定とし、金型温度を表1に記載の通り各樹脂に設定した。
上記基板にスタンパーから転写した溝の深さを、原子間力顕微鏡(セイコー電子工業 SPI3800N)を用いて、半径40mmの位置にて5箇所を測定した。転写性は、次式で示される転写率として表した。この値が大きいほど転写性に優れている。
転写率(%)=100×ディスクの溝深さ/スタンパーの溝深さ
(8)初期機械特性(初期R−tilt)
名機製作所製の射出成形機 M35B−D−DMを用いて、直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を成形した。その後、射出成形により得られたディスク基板の信号面側に反射膜、誘電体層1、相変化記録膜、誘電体層2をスパッタ蒸着させ、その上にポリカーボネート製薄膜カバー層を貼りあわせ光ディスクを作成した。続いて、ディスクが互いに接触しないようスペーサーを挟み、温度23℃、湿度50%RH環境に2日間以上放置した。熱収縮および環境変化に対するtiltの変化が安定した時点でジャパン・イー・エム(株)製3次元形状測定器DLD−3000Uによりtiltの評価を行い、初期機械特性とした。
(9)反り変形量の最大値(ΔR−tiltmax)
初期機械特性を評価した基板を30℃、湿度90%RHの恒温恒湿機に72hr放置した後、このディスクを23℃、湿度50%RHの環境下に移し、その後のディスクの反り変形量の最大値(ΔR−tiltmax)をジャパン・イー・エム(株)製3次元形状測定器DLD−3000Uにより評価した。
(10)斜め入射複屈折位相差
オーク社製エリプソメータADR−200B自動複屈折測定装置を用い、入射角30度で測定した。
実施例1
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液69.1部およびイオン交換水301.7部を仕込み、これに7,7'−ジメチル−6,6'−ジヒドロキシ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン14.1部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン50.0部およびハイドロサルファイト0.13部を溶解した後、塩化メチレン231.5部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン28.0部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液17.3部およびp−tert−ブチルフェノール0.94部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン0.07部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。その後、該パウダーにトリス(2,4−di−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.05重量%添加し、均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬し、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。該ペレットの粘度平均分子量、ガラス転移温度、吸水率、光弾性定数、貯蔵弾性率、熱拡散率を表1に掲載した。該ペレットから、射出成形機(名機製作所製M35B−D−DM)、キャビティ厚0.6mmt、直径120mmの金型、深さ200nm、間隔0.5μm、幅0.2μmの溝が刻まれたスタンパーを用い、シリンダー設定温度360℃、金型温度116℃、充填時間0.2秒、冷却時間15秒、型締力30トンの条件で光ディスク基板を成形した。この時の転写性評価結果も表1に併記した。
実施例2
7,7'−ジメチル−6,6'−ジヒドロキシ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン35.2部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン31.2部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。さらに、金型温度を145℃とした以外は実施例1と同様にして光ディスク基板の成形を行い、該基板の転写性を評価した。この時の転写性評価結果も表1に併記した。
比較例1
7,7'−ジメチル−6,6'−ジヒドロキシ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン56.3部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン12.5部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。さらに、金型温度を170℃とした以外は実施例1と同様にして光ディスク基板の成形を行い、該基板の転写性を評価した。この時の転写性評価結果も表1に併記した。
比較例2
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンより得られたポリカーボネート樹脂(帝人化成製パンライトAD−5503)を用い、金型温度を125℃とした以外は実施例1と同様にして基板成形を行い、該基板の転写性を評価した。この時の転写性評価結果を樹脂物性とともに表1に記載した。
Figure 0004344636

Claims (9)

  1. (A)下記式[1]
    Figure 0004344636
    (式中、R1〜R2はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。)
    で表される二価フェノール成分と
    (B)下記式[2]
    Figure 0004344636
    (式中、複数のR3は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。また、R4は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、R5およびR6は各々炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R4、R5およびR6の炭素数の合計は5〜7である。)
    で表される二価フェノール成分から実質的に構成され、(A)成分と(B)成分のモル比が(A):(B)=10:90〜60:40である芳香族ポリカーボネート共重合体。
  2. (A)成分と(B)成分のモル比が(A):(B)=10:90〜50:50である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート共重合体。
  3. (A)成分が6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、または7,7’−ジメチル−6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンであり、(B)成分が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサンである請求項1記載の芳香族ポリカーボネート共重合体。
  4. ポリカーボネート共重合体は、20℃の塩化メチレン溶液で測定された粘度平均分子量が10,000〜30,000の範囲内にある請求項1記載の芳香族ポリカーボネート共重合体。
  5. 請求項1〜4記載のいずれかのポリカーボネート共重合体よりなる光学用成形材料。
  6. 請求項5記載の光学用成形材料を用いて成形された光ディスク基板。
  7. 請求項5記載の光学用成形材料を用いて成形されたグルーブ列もしくはピット列の間隔が0.1μm〜0.8μmである光ディスク基板。
  8. 請求項5記載の光学用成形材料を用いて成形されたグルーブもしくはピットの光学的深さが、記録再生に使われるレーザー光の波長λと基板の屈折率nに対してλ/8n〜λ/2nの範囲である光ディスク基板。
  9. 請求項6〜8記載のいずれかの光ディスク基板を用いた光学記録媒体。

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