JP4602603B2 - ヨークの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータのヨークの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、モータは、図12(a),(b)に示すように、ヨーク91と、一対のマグネット92と、回転軸93と、アーマチャ(電機子)94とを備えている。
【0003】
ヨーク91は、扁平型の有底筒形状に形成されている。即ち、ヨーク91は、その軸直交方向断面(図12(b)に示す断面)において平行な2つの平坦部91aと、両平坦部91aを繋ぐ湾曲した湾曲部91bとを備える。一対のマグネット92は、ヨーク91の湾曲部91bの内側に固着されている。回転軸93は、ヨーク91の内側に回転可能に保持されている。そして、アーマチャ94は、一対のマグネット92と対向するように回転軸93に固定されている。
【0004】
そして、上記ヨーク91の製造方法としては、図13〜図16に示すように、金属板から多段階の絞り加工を施すことによって製造する方法がある。
詳述すると、まず図13(a),(b)に示すように、図示しない金属板から初期段階の絞り加工にて、楕円型で有底筒形状の初絞り品95を製造する。そして、図14(a),(b)に示すように、初絞り品95から中期段階の絞り加工にて、初絞り品95より底が深く、初絞り品95より楕円型の外周が小さい再絞り品96を製造する。
【0005】
次に、図15(a),(b)に示すように、再絞り品96から後期段階の絞り加工にて、再絞り品96より更に底が深く(若しくは再絞り品96と深さが同等)、再絞り品96より楕円型の外周が更に小さい第2再絞り品97を製造する。そして、図16(a),(b)に示すように、第2再絞り品97から最終段階の絞り加工にて、第2再絞り品97の楕円型の曲率の小さい円弧部分97aが前記平坦部91aとなるように、且つ曲率の大きい円弧部分97bが前記湾曲部91bとなるように形成し、前記ヨーク91を製造する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したように徐々にヨーク91の形状に変形させていく製造方法では、各段階において、楕円型の曲率の小さい円弧部分95a〜97aの板厚T95a〜T97aが曲率の大きい円弧部分95b〜97bの板厚T95b〜T97bより薄くなる。よって、ヨーク91の平坦部91aの板厚T91aが湾曲部91bの板厚T91bより薄くなる。
【0007】
すると、マグネット92が固着される湾曲部91bは磁気回路として影響が小さいにもかかわらず、必要以上にその板厚T91bが厚くなるため、材料ロスが生じるという問題がある。又、平坦部91aは磁気回路として最も影響の大きい部分であるにもかかわらず、その板厚T91aが薄くなるため、磁気抵抗が大きくなりモータ出力(トルク)が低下するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、多段階の絞り加工を施すことよってヨークを製造するヨークの製造方法において、材料ロスを低減することができるとともに、モータの高トルク化に寄与できるヨークの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、板状素材を多段階の絞り加工を施すことで、軸直交方向断面において平行な平坦部とその両平坦部を繋ぐ湾曲部とを有した有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、初期段階の絞り加工にて、楕円型の有底筒形状に形成し、中期段階の絞り加工にて、略真円型の有底筒形状に形成し、後期段階の絞り加工にて、初期段階の楕円型の長径と短径との関係が逆となる楕円型の有底筒形状に形成し、最終段階の絞り加工にて、後期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が前記平坦部となるように、且つ曲率の大きい円弧部分が前記湾曲部となるように形成する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のヨークの製造方法において、中期段階の絞り加工時、初期段階の楕円型の長径が大幅に短くなるように、且つ初期段階の楕円型の短径が同一、若しくは若干短くなるように加工して略真円型に形成する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のヨークの製造方法において、後期段階の絞り加工時、初期段階の楕円型の長径が大幅に短くなるように、且つ初期段階の楕円型の短径が同一、若しくは若干短くなるように加工して楕円型に形成する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、板状素材を多段階の絞り加工を施すことで、有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、初期段階の絞り加工にて、少なくとも一方に対向する方向に突出した突起部を有する押さえ板及びダイスにより板状素材を挟み込み、該板状素材をパンチで前記突起部と対応した部分が短径となる楕円型の有底筒形状に形成し、最終段階の絞り加工にて、内周が略真円で外周が略楕円の有底筒形状に形成する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、板状素材を多段階の絞り加工を施すことで、軸直交方向断面において平行な平坦部とその両平坦部を繋ぐ湾曲部とを有した有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、初期段階の絞り加工にて、少なくとも一方に対向する方向に突出した突起部を有する押さえ板及びダイスにより板状素材を挟み込み、該板状素材をパンチで前記突出部と対応した部分が短径となる楕円型の有底筒形状に形成し、中期段階の絞り加工にて、略真円型の有底筒形状に形成し、後期段階の絞り加工にて、初期段階の楕円型の長径と短径との関係が逆となる楕円型の有底筒形状に形成し、最終段階の絞り加工にて、後期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が前記平坦部となるように、且つ曲率の大きい円弧部分が前記湾曲部となるように形成する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のヨークの製造方法において、前記突起部を、前記板状素材の中心に対して点対称に設けた。
請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6のいずれか1項に記載のヨークの製造方法において、前記多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、ダイスの前記突起部と対応する部分の内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、同ダイスの前記突起部と対応しない部分の内周端部である第2曲面部の曲率を小さく設定し、該ダイス及び押さえ板により板状素材又は中間品を挟み込み、該板状素材又は中間品をパンチで絞り加工する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、板状素材を多段階の絞り加工を施すことで、有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、初期段階の絞り加工にて、楕円型の有底筒形状に形成し、最終段階の絞り加工にて、内周が略真円で外周が略楕円の有底筒形状に形成し、前記多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、初期段階の楕円型の短径と対応した位置におけるダイスの内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、初期段階の楕円型の長径と対応した位置における同ダイスの内周端部である第2曲面部の曲率を小さく設定し、該ダイス及び押さえ板により板状素材又は中間品を挟み込み、該板状素材又は中間品をパンチで絞り加工する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、板状素材を多段階の絞り加工を施すことで、軸直交方向断面において平行な平坦部とその両平坦部を繋ぐ湾曲部とを有した有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、初期段階の絞り加工にて、楕円型の有底筒形状に形成し、中期段階の絞り加工にて、略真円型の有底筒形状に形成し、後期段階の絞り加工にて、初期段階の楕円型の長径と短径との関係が逆となる楕円型の有底筒形状に形成し、最終段階の絞り加工にて、後期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が前記平坦部となるように、且つ曲率の大きい円弧部分が前記湾曲部となるように形成し、前記多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、初期段階の楕円型の短径と対応した位置におけるダイスの内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、初期段階の楕円型の長径と対応した位置における同ダイスの内周端部である第2曲面部の曲率を小さく設定し、該ダイス及び押さえ板により板状素材又は中間品を挟み込み、該板状素材又は中間品をパンチで絞り加工する。
【0017】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、板状素材から初期段階の絞り加工にて、楕円型の有底筒形状に形成され、中期段階の絞り加工にて、略真円型の有底筒形状に形成される。そして、後期段階の絞り加工にて、初期段階の楕円型の長径と短径の関係が逆となる楕円型の有底筒形状に形成される。そして、最終段階の絞り加工にて、後期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が前記平坦部となるように、且つ曲率の大きい円弧部分が前記湾曲部となるように形成される。
【0018】
このようにすると、まず初期段階で楕円型の有底筒形状に形成されるとき、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚が、円周方向の収縮が小さいことから、曲率の大きい円弧部分の板厚より薄くなる。そして、最終的に、初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が湾曲部となり、初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分が平坦部となるため、平坦部の板厚を湾曲部の板厚より厚くすることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、初期段階の楕円型の長径が大幅に短くなるように、且つ初期段階の楕円型の短径を長くせずに略真円型とするため、初期段階の曲率の大きい円弧部分の板厚を維持、若しくは厚くすることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、初期段階の楕円型の長径が大幅に短くなるように、且つ初期段階の楕円型の短径を長くせずに初期段階の楕円型の長径と短径の関係が逆となる楕円型とするため、初期段階の曲率の大きい円弧部分の板厚を維持、若しくは厚くすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、まず初期段階で楕円型の有底筒形状に形成されるとき、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚が、円周方向の収縮が小さいことから、曲率の大きい円弧部分の板厚より薄くなる。言い換えると、初期段階において、曲率の大きい円弧部分の板厚は、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚より厚くなる。
【0022】
しかも、少なくとも一方に対向する方向に突出した突起部を有する押さえ板及びダイスにより板状素材を挟み込み、該板状素材をパンチで前記突出部と対応した部分が短径となるように形成される。このようにすると、突出部と対応した部分である短径の部分(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分)で絞り抵抗が大きく、長径の部分(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分)で絞り抵抗が小さくなるため、突出部が形成されていない部分と対応した方向に内部応力が作用し、楕円型の曲率の大きい円弧部分の板厚は、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚より更に厚くなる。よって、ヨークの板厚の差を大きくすることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、まず初期段階で楕円型の有底筒形状に形成されるとき、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚が、円周方向の収縮が小さいことから、曲率の大きい円弧部分の板厚より薄くなる。そして、最終的に、初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が湾曲部となり、初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分が平坦部となるため、平坦部の板厚を湾曲部の板厚より厚くすることができる。
【0024】
しかも、少なくとも一方に対向する方向に突出した突起部を有する押さえ板及びダイスにより板状素材を挟み込み、該板状素材をパンチで前記突出部と対応した部分が短径となるように形成される。このようにすると、突出部と対応した部分である短径の部分(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分)で絞り抵抗が大きく、長径の部分(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分)で絞り抵抗が小さくなる。よって、突出部が形成されていない部分と対応した方向に内部応力が作用し、初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分の板厚は、初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚より更に厚くなる。よって、ヨークの板厚の差、詳しくは湾曲部と平坦部の板厚の差を大きくすることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、突起部は、前記板状素材の中心に対して点対称に設けられるため、簡単な構成で、ヨークの板厚を180度間隔で略同じとすることができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、ダイスの前記突起部と対応する部分の内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、同ダイスの前記突起部と対応しない部分の内周端部である第2曲面部の曲率が小さく設定され、該ダイス及び押さえ板により板状素材又は中間品が挟み込まれ、該板状素材又は中間品がパンチで絞り加工される。このようにすると、第1曲面部と対応した部分(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分)で絞り抵抗が大きく、第2曲面部と対応した部分(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分)で絞り抵抗が小さくなる。よって、第2曲面部と対応した方向に内部応力が作用し、第2曲面部と対応した部分の板厚(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分の板厚)は、第1曲面部と対応した部分の板厚(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚)より更に厚くなる。よって、請求項4乃至6のいずれかの効果に加えて、ヨークの板厚の差を更に大きくすることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、まず初期段階で楕円型の有底筒形状に形成されるとき、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚が、円周方向の収縮が小さいことから、曲率の大きい円弧部分の板厚より薄くなる。言い換えると、初期段階において、曲率の大きい円弧部分の板厚は、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚より厚くなる。
【0028】
しかも、多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、初期段階の楕円型の短径と対応した位置におけるダイスの内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、初期段階の楕円型の長径と対応した位置における同ダイスの内周端部である第2曲面部の曲率が小さく設定され、該ダイス及び押さえ板により板状素材又は中間品が挟み込まれ、該板状素材又は中間品がパンチで絞り加工される。このようにすると、第1曲面部と対応した部分(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分)で絞り抵抗が大きく、第2曲面部と対応した部分(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分)で絞り抵抗が小さくなる。よって、第2曲面部と対応した方向に内部応力が作用し、第2曲面部と対応した部分の板厚(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分の板厚)は、第1曲面部と対応した部分の板厚(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚)より更に厚くなる。よって、ヨークの板厚の差を更に大きくすることができる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、まず初期段階で楕円型の有底筒形状に形成されるとき、楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚が、円周方向の収縮が小さいことから、曲率の大きい円弧部分の板厚より薄くなる。そして、最終的に、初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が湾曲部となり、初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分が平坦部となるため、平坦部の板厚を湾曲部の板厚より厚くすることができる。
【0030】
しかも、多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、初期段階の楕円型の短径と対応した位置におけるダイスの内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、初期段階の楕円型の長径と対応した位置における同ダイスの内周端部である第2曲面部の曲率が小さく設定され、該ダイス及び押さえ板により板状素材又は中間品が挟み込まれ、該板状素材又は中間品がパンチで絞り加工される。このようにすると、第1曲面部と対応した部分(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分)で絞り抵抗が大きく、第2曲面部と対応した部分(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分)で絞り抵抗が小さくなる。よって、第2曲面部と対応した方向に内部応力が作用し、第2曲面部と対応した部分の板厚(初期段階の楕円型の曲率の大きい円弧部分の板厚)は、第1曲面部と対応した部分の板厚(初期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分の板厚)より更に厚くなる。よって、ヨークの板厚の差、詳しくは湾曲部と平坦部の板厚の差を更に大きくすることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態について図1〜図5を参照して説明する。図1(a),(b)に示すように、扁平型のモータは、ヨーク1と、一対のマグネット2と、回転軸3と、アーマチャ(電機子)4とを備えている。
【0032】
ヨーク1は、扁平型の有底筒形状に形成されている。即ち、ヨーク1は、その軸直交方向断面(図1(b)に示す断面)において平行な2つの平坦部1aと、両平坦部1aをそれぞれ繋ぐ湾曲した湾曲部1bとを備える。この平坦部1aの板厚T1aは、湾曲部1bの板厚T1bより厚く形成されている。
【0033】
一対のマグネット2は、ヨーク1の湾曲部1bの内側に固着されている。回転軸3は、ヨーク1の内側に回転可能に保持されている。そして、アーマチャ4は、一対のマグネット2と対向するように回転軸3に固定されている。
【0034】
次に、上記ヨーク1の製造方法を、図2〜図5に従って説明する。ヨーク1は、金属板から多段階の絞り加工を施すことによって製造される。
詳述すると、まず図2(a),(b)に示すように、板状素材としての図示しない金属板から初期段階の絞り加工にて、楕円型で有底筒形状の初絞り品11を製造する。すると、楕円型の曲率の小さい円弧部分(以下、小曲率円弧部分という)11aの板厚T11aは、円周方向の収縮が小さいため、曲率の大きい円弧部分(以下、大曲率円弧部分という)11bの板厚T11bより薄くなる。
【0035】
次に、図3(a),(b)に示すように、初絞り品11から中期段階の絞り加工にて、初絞り品11より底が深く、略真円型で有底筒形状の再絞り品12を製造する。すると、略真円型の前記大曲率円弧部分11bと対応した円弧部分12bの板厚T12bが前記小曲率円弧部分11aと対応した円弧部分12aの板厚T12aより厚くなる。本実施の形態では、初絞り品11の長径D1が大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行う。すると、本実施の形態では、略真円型の前記大曲率円弧部分11bと対応した円弧部分12bの板厚T12bが前記板厚T11bと略同じ厚さのまま維持された。
【0036】
次に、図4(a),(b)に示すように、再絞り品12から後期段階の絞り加工にて、再絞り品12より底が深く(若しくは再絞り品12と深さが同等)、初絞り品11の小曲率円弧部分11aと大曲率円弧部分11bとの関係が逆(長径と短径との関係が逆)となる楕円型で有底筒形状の第2再絞り品13を製造する。即ち、再絞り品12の前記小曲率円弧部分11aと対応した円弧部分12aが大曲率円弧部分13aとなるように、且つ再絞り品12の前記大曲率円弧部分11bと対応した円弧部分12bが小曲率円弧部分13bとなるように絞り加工を行う。すると、楕円型の小曲率円弧部分13bの板厚T13bが、大曲率円弧部分13aの板厚T13aより厚くなる。本実施の形態では、その短径D3が再絞り品12の前記長径D1方向の径D2より大幅に短くなるように、且つその長径d3が再絞り品12の前記短径d1方向の径d2より若干短くなるように絞り加工を行う。即ち、初絞り品11の長径D1が更に大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行う。すると、本実施の形態では、小曲率円弧部分13bの板厚T13bが前記板厚T11b,T12b及び絞り加工前の金属板の板厚より若干厚くなった。
【0037】
次に、図5(a),(b)に示すように、第2再絞り品13から最終段階の絞り加工にて、第2再絞り品13の小曲率円弧部分13bが前記平坦部1aとなるように、且つ大曲率円弧部分13aが前記湾曲部1bとなるように形成し、前記ヨーク1を製造する。すると、ヨーク1の平坦部1aの板厚T1aが湾曲部1bの板厚T1bより厚くなる。尚、本実施の形態では、平坦部1aの板厚T1aが絞り加工前の金属板の板厚より若干厚くなった。
【0038】
尚、本実施の形態では、初期、中期、後期、最終段階の4段階で記載したが、各段階毎に何回かの絞り加工を行い、少しずつ変形させている。
次に、上記第1の実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
【0039】
(1)初期段階で楕円型の有底筒形状の初絞り品11が形成されるとき、小曲率円弧部分11aの板厚T11aは、円周方向の収縮が小さいため、大曲率円弧部分11bの板厚T11bより薄くなる。そして、最終的に、初絞り品11の小曲率円弧部分11aが湾曲部1bとなり、初絞り品11の大曲率円弧部分11bが平坦部1aとなるため、平坦部1aの板厚T1aが湾曲部1bの板厚T1bより厚くなる。
【0040】
このように、磁気回路として影響の大きい平坦部1aの板厚T1aが比較的厚くなるため、その磁気抵抗が小さくなる。よって、モータの高トルク化に寄与できる。しかも、磁気回路として影響が小さく比較的薄くてよい(磁気抵抗が大きくてもよい)湾曲部1bの板厚T1bが比較的薄くなるため、その材料ロスが低減される。よって、ヨーク1の低コスト化、及び軽量化を図ることができる。これらのことから、モータの低コスト化、軽量化、及び高トルク化を図ることができる。
【0041】
(2)中期段階の絞り加工では、初絞り品11の長径D1が大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行い、初絞り品11の短径d1を長くせずに略真円型とするため、再絞り品12において初絞り品11の板厚T11bを維持、若しくは厚くすることができる。そして、本実施の形態では、前記大曲率円弧部分11bと対応した円弧部分12bの板厚T12bが前記板厚T11bと略同じ厚さのまま維持された。
【0042】
(3)後期段階の絞り加工では、初絞り品11の長径D1が更に大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行い、初絞り品11の短径d1を長くせずに初絞り品11の長径と短径との関係が逆となる楕円型とするため、第2再絞り品13において初絞り品11の板厚T11bを維持、若しくは厚くすることができる。そして、本実施の形態では、小曲率円弧部分13bの板厚T13bが前記板厚T11b,T12b及び絞り加工前の金属板の板厚より若干厚くなった。
【0043】
(第2の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施の形態について図6〜図10を参照して説明する。図6(a),(b)に示すように、扁平型のモータは、ヨーク21と、一対のマグネット22と、回転軸23と、アーマチャ(電機子)24とを備えている。
【0044】
ヨーク21は、扁平型の有底筒形状に形成されている。即ち、ヨーク21は、その軸直交方向断面(図6(b)に示す断面)において平行な2つの平坦部21aと、両平坦部21aをそれぞれ繋ぐ湾曲した湾曲部21bとを備える。この平坦部21aの板厚T21aは、湾曲部21bの板厚T21bより厚く形成されている。尚、本実施の形態の平坦部21aと湾曲部21bの板厚の差は、上記第1の実施の形態の平坦部1aと湾曲部1bの板厚の差より大きい。
【0045】
一対のマグネット22は、ヨーク21の湾曲部21bの内側に固着されている。回転軸23は、ヨーク21の内側に回転可能に保持されている。そして、アーマチャ24は、一対のマグネット22と対向するように回転軸23に固定されている。
【0046】
次に、上記ヨーク21の製造装置を、図7及び図10に従って説明する。ヨーク21の製造装置は、第1及び第2の絞り装置30,40を含む複数の絞り装置を備えている。
【0047】
図7(a),(b)に示すように、第1の絞り装置30は、パッキングプレート31、パンチホルダ32、パンチ33、押さえ板34、及びダイス35を備えている。
【0048】
パッキングプレート31は、略円盤形状に形成されている。パッキングプレート31の上面には、パンチホルダ32が固定されている。パンチホルダ32の中央には、楕円型の中央孔32aが形成されている。尚、図7(a)は、パンチホルダ32の中央孔32aの短径方向の断面を示し、図7(b)は、パンチホルダ32の中央孔32aの長径方向の断面を示したものである。そして、パンチ33は、楕円型の中央孔32aに対応した楕円型の棒状に形成され、その下端部がパッキングプレート31の上面に当接するまでパンチホルダ32の中央孔32aに嵌入されている。
【0049】
押さえ板34は、前記パンチホルダ32の上方に配置される。押さえ板34の中央には、前記パンチホルダ32の中央孔32aより僅かに大きい楕円型の中央孔34aが形成されている。又、押さえ板34の上面には、上方に突出する突起部34bが形成されている。突起部34bは、図7(c)に示すように、押さえ板34の中心に対して点対称に設けられ、中央孔34aの短径方向にそれぞれ形成されている。又、本実施の形態の突起部34bは、略扇形状に形成されている。
【0050】
ダイス35は、前記押さえ板34の上方に配置される。ダイス35は、略円筒形状に形成され、その中央孔35aは、前記パンチホルダ32の中央孔32aより所定量大きい、即ちパンチ33を所定量の隙間を有して挿通可能とする楕円型に形成されている。又、ダイス35の中央孔35aの下端部(ダイス35の下側の内周端部)には、下端に向かうほど径が大きくなる曲面部35bが形成されている。
【0051】
そして、パッキングプレート31、パンチホルダ32、及びパンチ33よりなる部材と、ダイス35は、押さえ板34に対してそれぞれ上下方向に相対移動可能に設けられ、図示しない駆動装置に連結されている。
【0052】
図10(a),(b)に示すように、第2の絞り装置40は、パッキングプレート41、パンチホルダ42、パンチ43、押さえ板44、及びダイス45を備えている。
【0053】
パッキングプレート41は、略円盤形状に形成されている。パッキングプレート41の上面には、パンチホルダ42が固定されている。パンチホルダ42の中央には、楕円型の中央孔42aが形成されている。パンチホルダ42の中央孔42aは、前記パンチホルダ32の中央孔32aより短径が若干短く、同中央孔32aより長径が大幅に短く形成されている。即ち、中央孔42aは、前記中央孔32aより真円に近い楕円型に形成されている。尚、図10(a)は、パンチホルダ42の中央孔42aの短径方向の断面を示し、図10(b)は、パンチホルダ42の中央孔42aの長径方向の断面を示したものである。そして、パンチ43は、楕円型の中央孔42aに対応した楕円型の棒状に形成され、その下端部がパッキングプレート41の上面に当接するまでパンチホルダ42の中央孔42aに嵌入されている。又、このパンチ43は、前記パンチ33より長く形成されている。
【0054】
押さえ板44は、前記パンチホルダ42の上方に配置される。押さえ板44の中央には、前記パンチホルダ42の中央孔42aより僅かに大きい楕円型の中央孔44aが形成されている。
【0055】
ダイス45は、前記押さえ板44の上方に配置される。ダイス45は、略円筒形状に形成され、その中央孔45aは、前記パンチホルダ42の中央孔42aより所定量大きい、即ちパンチ43を所定量の隙間を有して挿通可能とする楕円型に形成されている。又、ダイス45の中央孔45aの下端部(ダイス45の下側の内周端部)には、下端に向かうほど径が大きくなる第1及び第2の曲面部45b,45cが形成されている。この中央孔45aの長径方向と対応した第2の曲面部45c(図10(b)参照)の曲率は、中央孔45aの短径方向と対応した第1の曲面部45b(図10(a)参照)の曲率に比べて、小さく設定されている。
【0056】
そして、パッキングプレート41、パンチホルダ42、及びパンチ43よりなる部材と、ダイス45は、押さえ板44に対してそれぞれ上下方向に相対移動可能に設けられ、図示しない駆動装置に連結されている。
【0057】
次に、上記ヨーク21の製造方法を、図7〜図10に従って説明する。ヨーク21は、板状素材としての円盤状の金属板51から多段階の絞り加工を施すことによって製造される。
【0058】
詳述すると、まず図7(a),(b)に示すように、初期段階の絞り加工において、金属板51の外周部を、第1の絞り装置30の押さえ板34、詳しくは突起部34bとダイス35との間に挟み込む。尚、このとき、図7(b)に示すように、突起部34bが形成されていない個所において、金属板51の外周部は、押さえ板34から浮いた状態となっている。
【0059】
そして、図8(a),(b)に示すように、パンチ33をダイス35内に押し込み楕円型で有底筒形状の初絞り品52を製造する。
このとき、上記第1の実施の形態の場合と同様に、楕円型の曲率の小さい円弧部分(以下、小曲率円弧部分という)52aの板厚T52a(図8(a)参照)は、円周方向の収縮が小さいため、曲率の大きい円弧部分(以下、大曲率円弧部分という)52b(図8(b)参照)の板厚T52bより薄くなる。
【0060】
しかも、小曲率円弧部分52aと対応した位置に形成される突起部34bとダイス35との間に金属板51を挟み込み、絞り加工を行うため、小曲率円弧部分52a側で絞り抵抗が大きく、大曲率円弧部分52b側で絞り抵抗が小さくなる。これにより、図9に示すように、小曲率円弧部分52a側から大曲率円弧部分52b方向に内部応力Pが発生する。よって、小曲率円弧部分52aの板厚T52aは、大曲率円弧部分52bの板厚T52bより大幅に薄くなる。これにより、この初絞り品52(小曲率円弧部分52aと大曲率円弧部分52b)の板厚T52a,T52bの差は大きくなる。
【0061】
次に、図10(a),(b)に示すように、次段階の絞り加工において、中間品としての初絞り品52を、第2の絞り装置40にて絞り加工し、再絞り品53を製造する。
【0062】
ここで、ダイス45の中央孔45aの楕円型が第1の絞り装置30のダイス35の中央孔35aの楕円型より真円に近い形状であることや、パンチ43の長さが第1の絞り装置30のパンチ33の長さより長い形状であることから、初絞り品52の楕円型より真円に近く、底が深い再絞り品53が製造される。
【0063】
このとき、ダイス45の中央孔45aの長径方向と対応した第2の曲面部45c(図10(b)参照)の曲率は、中央孔45aの短径方向と対応した第1の曲面部45b(図10(a)参照)の曲率に比べて、小さく設定されているため、小曲率円弧部分53a側で絞り抵抗が大きく、大曲率円弧部分53b側で(ダイス45との間に隙間Sが生じるといった理由により)絞り抵抗が小さくなる。これにより、初期段階と同様の内部応力が発生する。よって、小曲率円弧部分53aの板厚T53aは、大曲率円弧部分53bの板厚T53bより更に薄くなる。これにより、この再絞り品53(小曲率円弧部分53aと大曲率円弧部分53b)の板厚T53a,T53bの差は大きくなる。
【0064】
次に、再絞り品53から中期段階の絞り加工にて、再絞り品53より底が深く、略真円型で有底筒形状の図示しない第2再絞り品を製造する。このとき、第2の絞り装置40と同様に、ダイスの曲面部の曲率を異ならせることで、第2再絞り品の板厚の差を大きくするように(差を保つように)、絞り加工する。
【0065】
次に、第2再絞り品から後期段階の絞り加工にて、第2再絞り品より底が深く(若しくは同等)、初絞り品52の小曲率円弧部分52aと大曲率円弧部分52bとの関係が逆(長径と短径との関係が逆)となる楕円型で有底筒形状の第3再絞り品を製造する。このとき、第2の絞り装置40と同様に、ダイスの曲面部の曲率を異ならせることで、第2再絞り品の板厚の差を大きくするように(差を保つように)、絞り加工する。
【0066】
次に、第3再絞り品から最終段階の絞り加工にて、第3再絞り品の小曲率円弧部分(初絞り品52の大曲率円弧部分52bと対応した部分)が前記平坦部21aとなるように、且つ大曲率円弧部分(初絞り品52の小曲率円弧部分52aと対応した部分)が前記湾曲部21bとなるように形成し、前記ヨーク21を製造する。すると、ヨーク21の平坦部21aの板厚T21aが湾曲部21bの板厚T21bより厚くなる。尚、本実施の形態では、平坦部21aの板厚T21aが絞り加工前の金属板51の板厚より厚くなった。
【0067】
尚、本実施の形態では、初期段階、次段階、中期段階、後期段階、最終段階の5段階で記載したが、各段階毎に何回かの絞り加工を行い、少しずつ変形させている。
【0068】
次に、上記第2の実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)初期段階で楕円型の有底筒形状の初絞り品52が形成されるとき、小曲率円弧部分52aの板厚T52aは、円周方向の収縮が小さいため、大曲率円弧部分52bの板厚T52bより薄くなる。そして、最終的に、初絞り品52の小曲率円弧部分52aが湾曲部21bとなり、初絞り品52の大曲率円弧部分52bが平坦部21aとなるため、平坦部21aの板厚T21aが湾曲部21bの板厚T21bより厚くなる。
【0069】
(2)しかも、初期段階の絞り加工において、小曲率円弧部分52aと対応した位置に形成される突起部34bとダイス35との間に金属板51を挟み込み、絞り加工を行うため、小曲率円弧部分52a側で絞り抵抗が大きく、大曲率円弧部分52b側で絞り抵抗が小さくなる。これにより、図9に示すように、小曲率円弧部分52a側から大曲率円弧部分52b方向に内部応力Pが発生する。よって、小曲率円弧部分52aの板厚T52aは、大曲率円弧部分52bの板厚T52bより大幅に薄くなる。これにより、この初絞り品52(小曲率円弧部分52aと大曲率円弧部分52b)の板厚T52a,T52bの差は大きくなる。よって、最終的に、ヨーク21の板厚の差、詳しくは湾曲部21bと平坦部21aの板厚T21a,T21bの差が大きくなる。
【0070】
(3)しかも、次段階の絞り加工において、ダイス45の中央孔45aの長径方向と対応した第2の曲面部45c(図10(b)参照)の曲率は、中央孔45aの短径方向と対応した第1の曲面部45b(図10(a)参照)の曲率に比べて、小さく設定されているため、小曲率円弧部分53a側で絞り抵抗が大きく、大曲率円弧部分53b側で(ダイス45との間に隙間Sが生じるといった理由により)絞り抵抗が小さくなる。これにより、初期段階と同様の内部応力が発生する。よって、小曲率円弧部分53aの板厚T53aは、大曲率円弧部分53bの板厚T53bより更に薄くなる。これにより、この再絞り品53(小曲率円弧部分53aと大曲率円弧部分53b)の板厚T53a,T53bの差は大きくなる。よって、最終的に、ヨーク21の板厚の差、詳しくは湾曲部21bと平坦部21aの板厚T21a,T21bの差が大きくなる。
【0071】
(4)磁気回路として影響の大きい平坦部21aの板厚T21aが、(第1の実施の形態の同板厚T1aより)比較的厚くなるため、その磁気抵抗が更に小さくなる。よって、モータの高トルク化に寄与できる。しかも、磁気回路として影響が小さく比較的薄くてよい(磁気抵抗が大きくてもよい)湾曲部21bの板厚T21bが(第1の実施の形態の同板厚T1bより)比較的薄くなるため、その材料ロスが低減される。よって、ヨーク21の低コスト化、及び軽量化を図ることができる。これらのことから、モータのさらなる低コスト化、軽量化、及び高トルク化を図ることができる。
【0072】
(5)突起部34bを、図7(c)に示すように、押さえ板34の中心に対して点対称に設けたため、簡単な構成で、初絞り品52の板厚を180度間隔で略同じとすることができ、最終的に、ヨーク21の板厚を180度間隔で略同じとすることができる。よって、モータの回転特性が良好となる。
【0073】
上記各実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第1の実施の形態の中期段階の絞り加工では、初絞り品11の長径D1が大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行ったが、初絞り品11の長径D1が大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が同一となるように絞り加工を行ってもよい。このようにしても、上記第1の実施の形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
・上記第1の実施の形態の中期段階の絞り加工では、初絞り品11の長径D1が大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行ったが、初絞り品11の長径D1が短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が長くなるように絞り加工を行ってもよい。このようにしても、上記第1の実施の形態の効果(1)と同様の効果を得ることができる。
【0075】
・上記第1の実施の形態の後期段階の絞り加工では、初絞り品11の長径D1が更に大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行ったが、初絞り品11の長径D1が更に大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が同一となるように絞り加工を行ってもよい。このようにしても、上記第1の実施の形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0076】
・上記第1の実施の形態の後期段階の絞り加工では、初絞り品11の長径D1が更に大幅に短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が若干短くなるように絞り加工を行ったが、初絞り品11の長径D1が短くなるように、且つ初絞り品11の短径d1が長くなるように絞り加工を行ってもよい。このようにしても、上記第1の実施の形態の効果(1)と同様の効果を得ることができる。
【0077】
・上記第2の実施の形態では、扁平型の有底筒形状のヨーク21(図6(b)参照)を製造するとしたが、図11に示すように、上記第2の実施の形態の中期段階の絞り加工と略同様の絞り加工を最終段階の絞り加工として、内周が略真円で外周が略楕円のヨーク61を製造するようにしてもよい。このようにしても、第2の実施の形態の効果(1)〜(3)と同様の理由で、マグネット62が固着されるマグネット固着部62aの板厚T62aを薄く、マグネット62が固着されないマグネット非固着部62bの板厚T62bを厚くすることができる。よって、第2の実施の形態の効果(4)と同様の効果を得ることができる。
【0078】
・上記第2の実施の形態では、次段階の絞り加工において、ダイス45の中央孔45aの長径方向と対応した第2の曲面部45c(図10(b)参照)の曲率は、中央孔45aの短径方向と対応した第1の曲面部45b(図10(a)参照)の曲率に比べて、小さく設定されているとしたが、第1及び第2の曲面部の曲率を同じに設定してもよい。このようにしても、上記第2の実施の形態の効果(1)、(2)、(4)、(5)と同様の効果を得ることができる。又、多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時に、初期段階の楕円型の短径と対応した位置におけるダイスの内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、初期段階の楕円型の長径と対応した位置における同ダイスの内周端部である第2曲面部の曲率を小さく設定するようにしてもよい。このようにすると、ダイスの曲率を異ならせた工程で、絞り品の板厚の差を大きくするように(差を保つように)、絞り加工がなされる。
【0079】
・上記第2の実施の形態では、初期段階の絞り加工において、小曲率円弧部分52aと対応した位置に形成される押さえ板34の突起部34bとダイス35との間に金属板51を挟み込み、絞り加工を行うとしたが、突起部34bが形成されていない押さえ板とダイス35との間に金属板51を挟み込み、絞り加工を行うようにしてもよい。このようにしても、上記第2の実施の形態の効果(1)、(3)、(4)と同様の効果を得ることができる。又、上記別例(図11(b)参照)においても、初期段階の絞り加工において、突起部34bが形成されていない押さえ板とダイス35との間に金属板51を挟み込み、絞り加工を行うようにしてもよい。
【0080】
・上記第2の実施の形態では、押さえ板34に突起部34bを形成したが、小曲率円弧部分52a側で絞り抵抗を大きく、大曲率円弧部分52b側で絞り抵抗を小さくすることができれば、押さえ板34及びダイス35の少なくとも一方に対向する方向に突出する他の突起部を設けて実施してもよい。このようにしても、上記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
・上記第2の実施の形態では、突起部34bを略扇形状に形成したが、小曲率円弧部分52a側で絞り抵抗を大きく、大曲率円弧部分52b側で絞り抵抗を小さくすることができれば、他の形状に変更して実施してもよい。このようにしても、上記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
上記実施の形態から把握できる請求項記載以外の技術的思想について、以下に記載する。
(イ) 請求項1乃至3、5、及び9のいずれか1項に記載のヨークの製造方法において、前記湾曲部は、マグネットが固定されるマグネット固定部であるヨークの製造方法。このようにすると、湾曲部にマグネットが固定され、磁気回路として影響の大きい平坦部の板厚を厚くできることから、その磁気抵抗が小さくなる。よって、材料ロスを低減することができるとともに、モータの高トルク化に寄与できる。
【0083】
(ロ) 請求項1乃至3、5、9、及び上記(イ)のいずれかに記載のヨークの製造方法において、平坦部の板厚を湾曲部の板厚より厚くすることを特徴としたヨークの製造方法。このようにすると、磁気回路として影響の大きい平坦部の板厚が厚くなることから、その磁気抵抗が小さくなる。よって、材料ロスを低減することができるとともに、モータの高トルク化に寄与できる。
【0084】
(ハ)請求項1乃至9及び上記(イ)、(ロ)のいずれかに記載のヨークの製造方法により製造したヨーク。このようにすると、ヨークの材料ロスを低減でき、モータの高トルク化に寄与できる。
【0085】
尚、上記記載の楕円型とは、単に長細い円を含む。又、上記記載の長径とは、長細い円の中心を通る直線から該円が切り取る線分の最も長いものを含み、短径とは、長細い円の中心を通る直線から該円が切り取る線分の最も短いものを含む。
【0086】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、多段階の絞り加工を施すことよってヨークを製造するヨークの製造方法において、材料ロスを低減することができるとともに、モータの高トルク化に寄与できるヨークの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)第1の実施の形態のモータの側面図。(b)(a)のA−A断面図。
【図2】(a)第1の実施の形態の初絞り品の平面図。(b)同初絞り品の断面図。
【図3】(a)第1の本実施の形態の再絞り品の平面図。(b)同再絞り品の断面図。
【図4】(a)第1の実施の形態の第2再絞り品の平面図。(b)同第2再絞り品の断面図。
【図5】(a)第1の本実施の形態のヨークの平面図。(b)同ヨークの断面図。
【図6】(a)第2の実施の形態のモータの側面図。(b)(a)のB−B断面図。
【図7】(a)第2の実施の形態の第1の絞り装置の短径方向の断面図。(b)同第1の絞り装置の長径方向の断面図。(c)押さえ板の平面図。
【図8】(a)(b)第2の実施の形態の製造方法を説明するための説明図。
【図9】突起部による内部応力を説明するための説明図。
【図10】(a)(b)第2の実施の形態の製造方法を説明するための説明図。
【図11】別例のヨークの断面図。
【図12】(a)従来のモータの側面図。(b)(a)のC−C断面図。
【図13】(a)従来の初絞り品の平面図。(b)同初絞り品の断面図。
【図14】(a)従来の再絞り品の平面図。(b)同再絞り品の断面図。
【図15】(a)従来の第2再絞り品の平面図。(b)同第2再絞り品の断面図。
【図16】(a)従来のヨークの平面図。(b)同ヨークの断面図。
【符号の説明】
1,21,61…ヨーク、11…初絞り品、12…再絞り品、13…第2再絞り品、33,43…パンチ、34,44…押さえ板、35,45…ダイス、51…金属板(板状素材)、52…初絞り品(中間品)、1a,21a…平坦部、1b,21b…湾曲部、13a…第2再絞り品の大曲率円弧部分、13b…第2再絞り品の小曲率円弧部分、34b…突起部、45b…第1の曲面部、45c…第2の曲面部、D1…初絞り品の長径、d1…初絞り品の短径。

Claims (9)

  1. 板状素材(51)を多段階の絞り加工を施すことで、軸直交方向断面において平行な平坦部(1a,21a)とその両平坦部(1a,21a)を繋ぐ湾曲部(1b,21b)とを有した有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、
    初期段階の絞り加工にて、楕円型の有底筒形状(11,52)に形成し、
    中期段階の絞り加工にて、略真円型の有底筒形状(12)に形成し、
    後期段階の絞り加工にて、初期段階の楕円型の長径(D1)と短径(d1)との関係が逆となる楕円型の有底筒形状(13)に形成し、
    最終段階の絞り加工にて、後期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分(13b)が前記平坦部(1a,21a)となるように、且つ曲率の大きい円弧部分(13a)が前記湾曲部(1b,21b)となるように形成することを特徴としたヨークの製造方法。
  2. 請求項1に記載のヨークの製造方法において、
    中期段階の絞り加工時、初期段階の楕円型の長径(D1)が大幅に短くなるように、且つ初期段階の楕円型の短径(d1)が同一、若しくは若干短くなるように加工して略真円型に形成することを特徴としたヨークの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のヨークの製造方法において、
    後期段階の絞り加工時、初期段階の楕円型の長径(D1)が大幅に短くなるように、且つ初期段階の楕円型の短径(d1)が同一、若しくは若干短くなるように加工して楕円型に形成することを特徴としたヨークの製造方法。
  4. 板状素材を多段階の絞り加工を施すことで、有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、
    初期段階の絞り加工にて、少なくとも一方に対向する方向に突出した突起部を有する押さえ板及びダイスにより板状素材を挟み込み、該板状素材をパンチで前記突起部と対応した部分が短径となる楕円型の有底筒形状に形成し、
    最終段階の絞り加工にて、内周が略真円で外周が略楕円の有底筒形状(61)に形成することを特徴としたヨークの製造方法。
  5. 板状素材(51)を多段階の絞り加工を施すことで、軸直交方向断面において平行な平坦部(21a)とその両平坦部(21a)を繋ぐ湾曲部(21b)とを有した有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、
    初期段階の絞り加工にて、少なくとも一方に対向する方向に突出した突起部(34b)を有する押さえ板(34)及びダイス(35)により板状素材(51)を挟み込み、該板状素材(51)をパンチ(33)で前記突出部(34b)と対応した部分が短径となる楕円型の有底筒形状(52)に形成し、
    中期段階の絞り加工にて、略真円型の有底筒形状に形成し、
    後期段階の絞り加工にて、初期段階の楕円型の長径と短径との関係が逆となる楕円型の有底筒形状に形成し、
    最終段階の絞り加工にて、後期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が前記平坦部(21a)となるように、且つ曲率の大きい円弧部分が前記湾曲部(21b)となるように形成することを特徴としたヨークの製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載のヨークの製造方法において、
    前記突起部(34b)を、前記板状素材(51)の中心に対して点対称に設けたことを特徴とするヨークの製造方法。
  7. 請求項4乃至6のいずれか1項に記載のヨークの製造方法において、
    前記多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、ダイス(45)の前記突起部(34b)と対応する部分の内周端部である第1曲面部(45b)の曲率に比べて、同ダイス(45)の前記突起部(34b)と対応しない部分の内周端部である第2曲面部(45c)の曲率を小さく設定し、該ダイス(45)及び押さえ板(44)により板状素材又は中間品(52)を挟み込み、該板状素材又は中間品(52)をパンチ(43)で絞り加工することを特徴とするヨークの製造方法。
  8. 板状素材を多段階の絞り加工を施すことで、有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、
    初期段階の絞り加工にて、楕円型の有底筒形状に形成し、
    最終段階の絞り加工にて、内周が略真円で外周が略楕円の有底筒形状(61)に形成し、
    前記多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、初期段階の楕円型の短径と対応した位置におけるダイスの内周端部である第1曲面部の曲率に比べて、初期段階の楕円型の長径と対応した位置における同ダイスの内周端部である第2曲面部の曲率を小さく設定し、該ダイス及び押さえ板により板状素材又は中間品を挟み込み、該板状素材又は中間品をパンチで絞り加工することを特徴としたヨークの製造方法。
  9. 板状素材(51)を多段階の絞り加工を施すことで、軸直交方向断面において平行な平坦部(21a)とその両平坦部(21a)を繋ぐ湾曲部(21b)とを有した有底筒形状に形成するヨークの製造方法において、
    初期段階の絞り加工にて、楕円型の有底筒形状(52)に形成し、
    中期段階の絞り加工にて、略真円型の有底筒形状に形成し、
    後期段階の絞り加工にて、初期段階の楕円型の長径と短径との関係が逆となる楕円型の有底筒形状に形成し、
    最終段階の絞り加工にて、後期段階の楕円型の曲率の小さい円弧部分が前記平坦部(21a)となるように、且つ曲率の大きい円弧部分が前記湾曲部(21b)となるように形成し、
    前記多段階の絞り加工の少なくとも1つの絞り加工時、初期段階の楕円型の短径と対応した位置におけるダイス(45)の内周端部である第1曲面部(45b)の曲率に比べて、初期段階の楕円型の長径と対応した位置における同ダイス(45)の内周端部である第2曲面部(45c)の曲率を小さく設定し、該ダイス(45)及び押さえ板(44)により板状素材又は中間品(52)を挟み込み、該板状素材又は中間品(52)をパンチで絞り加工することを特徴としたヨークの製造方法。
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