JP3722355B2 - ワークの加工方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明はワークの薄肉化方法、特にワークの所定部分の肉厚をそれ以外の残り部分の肉厚よりも薄くして、一部に薄肉部を持つワークと同形状の加工品を形成するワークの薄肉化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワークの所定部分の肉厚をそれ以外の残り部分の肉厚よりも薄くして、一部に薄肉部を持つ、ワークと同形状の加工品を形成したい場合がある。例えば、図4(a)に示す円板形状のワーク90から同(b)に示す円板形状の半加工品92を経て、同(c)に示す円板形状の加工品95を形成する場合である。このようなワーク90の薄肉化には、従来、例えば図3(a)に示す第1ダイス100及び第1ポンチ103と、同(b)に示す第2ダイス107及び第2ポンチ110とが使用されていた。
【0003】
即ち、図3(a)に示した第1ダイス100は上面の中心部に円形の突出部101が形成され、円形のダイス面102aと環状のダイス面102bとを有する。第1ポンチ103は下面に突出部104が形成され、円形のポンチ面105aと環状のポンチ面105bとを有する。
【0004】
第1ダイス100の上にワーク90をセットして第1ポンチ103を下降させると、図4(a)において、ワーク90は中心部91aの下面及び上面が環状のダイス面102a及び環状のポンチ面105aにより両側から圧縮力を加えられる。その結果、ワーク90の中心部91aの材料が半径方向外向きに移動し、その肉厚が次第に薄くなる。これに伴い、外周部91bの外径が増大する。こうして、図4(b)に示すような、中心部に円状の薄肉部93aが形成され、外周部に環状の厚肉部93bが形成された円板形状の半加工品92が得られる。
【0005】
この半加工品92を、図3(b)に示した第2ダイス107及び第2ポンチ110によりさらに薄肉化する。第2ダイス107は上面の中心部に円形の突出部108が形成され、円形のダイス面109aと環状のダイス面109bとを有する。第2ポンチ110は下面に円形の突出部111が形成され、円形のポンチ面112aと環状のポンチ面112bとを有する。突出部108及び111の外径は上記突出部101及び104の外径よりも大きく、その突出量はこれらの突出量とほぼ等しくされている。
【0006】
第2ポンチ110の下降につれて、半加工品92の厚肉部93bのうち内周縁の材料が環状のダイス面109a及び環状のポンチ面112aにより半径外向きに移動されて薄肉部93aと同じ厚さまで薄肉化され、薄肉部93aの大きさ(外径)が増加する。これに伴い、肉厚部93bの半径方向中間部及び外周部は半径方向外無機に変位して外径が増加する。こうして、図4(c)に示すように、中心部に所定厚さで所定直径の円形の薄肉部96aを持ち、外周部に所定厚さで所定の内径及び外径を持つ環状の厚肉部96bを持つ円板形状の加工品95が形成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のワーク90の薄肉化方法には以下の問題点があった。即ち、この薄肉化方法は、ワーク90の中心部91aを環状のダイス面102a及び環状のポンチ面105aより圧縮力を加えて潰し、半加工品92の薄肉部93aの内周縁を環状ダイス面109a及び環状ポンチ面112aより圧縮力を加えて潰すものである。この場合、ワーク90の中心部91aと環状のダイス面102a及び環状のポンチ面105aとの当接面積は広く、また半加工品92の薄肉部93aの内周縁と環状ダイス面109a及び環状ポンチ面112aとの当接面積も広い。
【0008】
従って、ワーク90から半加工品92を形成する際及び半加工品92から加工品95を形成する際、プレス側においては、ワーク90の中心部91a及び薄肉部93aを潰すためには第1ポンチ103及び第2ポンチ110に大きな駆動力を加えることが必要である。その結果、第1ポンチ103及び第2ポンチ110を駆動するための駆動源が大きくなり、プレスが大型化する。また、第1ポンチ103の突出部104及び第2ポンチ110の突出部111(特にその縁部)が上記大きな圧縮力により欠損、破損することがある。この突出部104、111の欠損等が短期間の間に生ずると、ワーク90から半加工品92を経て加工品95を形成するためのコストが上昇する。
【0009】
一方、ワーク90側においては、ワーク90及び半加工品92は、第1ポンチ103及び第2ポンチ110により圧縮力が加えられると加工硬化を生じ、その性質が脆くなって、靱性が低下する。これでは、特に大きな靱性が必要とされる加工品95を形成することはできない。
【0010】
本発明は上記事情を背景にして、ワークの所定部分をその以外の残り部分よりも薄肉化してワークと同形状の加工品を形成する際、ワークの薄肉化時にプレスのポンチ等からワークに従来のような大きな圧縮力が加わらないワークの薄肉化方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、ワークの所定部分をそれ以外の残り部分よりも薄肉化してワークと同形状の加工品を形成する際、該所定部分に引張力を加えることを思い付いて本発明を完成した。即ち、本発明は、ワークの所定部分を薄肉化することにより、一部に薄肉部を持つ該ワークと同形状の加工品を形成するワークの加工方法であって、ワークの所定部分に引張力を加えて残り部分よりも薄肉の膨出部を形成する薄肉化工程と、該膨出部を平坦にする平坦化工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるワークの加工方法は以下の実施の形態をとることができる。
<ワーク>
ワークの形状は特に限定されず、棒状でも板状でも良い。例えば、板状のワークは、矩形状や円形状とすることができる。ワークの肉厚は特に限定されず、全体(所定部分及びそれ以外の残り部分)が均一厚さでも良いし、所定部分と残り部分とで肉厚が異なっても良い。
【0013】
ワークの所定部分のワーク上における位置は特に限定されず、ワークの長さ方向、径方向において中間部に位置しても良いし、端部に位置していても良い。ワークの所定部分の形状は特に限定されないが、線対称又は点対称であることが望ましい。線対称の所定部分の例としては、矩形状のワークの幅方向中央に中心線に対して左右対称に位置し長さ方向に延びる一対の帯状部分が挙げられる。点対称の所定部分の例としては、円形又は多角形状のワークの中心部に形成した円形部分又は多角形部分や、ワークの中心部の周りに形成された環状部分や枠状部分が挙げられる。
<薄肉化工程>
薄肉化工程は、ワークの所定部分に引張力を加えて、残り部分よりも薄肉の膨出部を形成する。引張力を加える方向は特に限定されないが、例えば、ワークの所定部分の表面と所定角度をなす方向とすることができる。具体的には、ワークの所定部分の形状や位置に関連して引張方向を決めることができ、例えば球面状のポンチ面を持ちワークの厚さ方向に移動する円柱状のポンチ、又は断面円弧面状で環状のポンチ面を持ち、ワークの厚さ方向に移動する円筒状のポンチにより、ポンチ面の接線方向に加えることができる。
【0014】
膨出部の形状や膨出方向は特に限定されないが、実際はポンチの持つポンチ面の形状や、ポンチの移動量などにより決まる。尚、ワークの所定部分を薄肉化する際、残り部分をダイスやしわ押さえ部材等の挟持部材により挟持することが望ましい。
<平坦化工程>
平坦化工程は上記膨出部を平坦にする。膨出部を平坦化するためには、例えばダイス等の押圧部材により該膨出部にその厚さ方向に圧縮力を加えることができる。平坦化工程は、膨出部の厚さを規制しつつ平坦化することができ、これにより薄肉化した膨出部の厚さが平坦化時に変動するのを防止することができる。ワークの膨出部は平坦化によりその長さや径が変化し、残り部分の位置が変化する。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面を基にして説明する。
<第1実施例>
図1(a)(b)(c)及び(d)に本発明の第1実施例を示す。これは、上記図4に示したのと同様に、円板形状のワーク10から第1ダイス15及び第1ポンチ20より円板形状の半加工品35を形成し(図1(a)及び(b)参照)、更に第2ダイス25及び第2ポンチ30により円板形状の加工品40を形成する(図1(c)及び(d)参照)ものである。
▲1▼薄肉化工程
図1(a)にその左半分を示すように、所定の直径を持つ円板形状のワーク10の全体は均一厚さとされている。薄肉化工程で使用する第1ダイス15の左半分及び第1ポンチ20の左半分をそれぞれ図1(a)に示す。第1ダイス15は所定の内径及び外径を持つ円筒形状で、その上面に環状の第1ダイス面16を有している。
【0016】
第1ダイスの上方には環状のしわ押さえ部材18が配置されている。しわ押さえ部材18は上記第1ダイス15とほぼ等しい内径及び外径を持ち、その下面には第1ダイス面16と対向する環状のしわ押さえ面19が形成されている。しわ押さえ部材18は、背後(上方)から圧縮ばね17により下方に付勢されている。
【0017】
第1ダイス15に対して上下方向に接近・離間な第1ポンチ20は円柱形状を有し、その外径はしわ押さえ部材18の内径とほぼ等しくされている。第1ポンチ20の下面には球面の一部から成る球面状の第1ポンチ面21が形成されている。
【0018】
ワーク10の薄肉化時は、図1(a)に示すように、第1ダイス15の第1ダイス面16にワーク10を載置し、第1ダイス15としわ押さえ部材18とによりその外周部11bを上下から挟持する。その後第1ポンチ20を下降させると、下降につれて、第1ポンチ面16の頂部によりワーク10の中心部11aの中央部に接線方向に引張力が加えられ、頂部から離れた部分により中心部11aの中央部から離れた部分に接線方向に引張力が加えられる。尚、第1ポンチ20の下降時には、圧縮する圧縮ばね17がしわ押さえ部材18に大きな押圧力を加え、ワーク10の外周部11bは第1ダイス面16としわ押さえ面19とにより強く挟持される。
【0019】
第1ポンチ面21によるワーク10の中心部11aへの引張力は、第1ポンチ面21の接線方向、即ち第1ダイス面16に対して所定角度を成す斜め下方に加えられる。その結果、図1(b)にその右半分を示すように、ワーク10の中心部11aは第1ポンチ面21の表面形状に倣ってドーム形状の膨出部36a(図1(c)参照)に変形するとともに、その肉厚が薄くなる。このとき、ワーク10の外周部11bの外径、肉厚は殆ど変化しない。
【0020】
この薄肉化工程では、第1ポンチ20の球面状の第1ポンチ面21とワーク10の平坦な中心部11aとが当接する当接部の面積は狭く、面圧が高い。従って、第1ポンチ20に前記従来のポンチ103,110のような大きな駆動力を加える必要がなく、駆動源を小さくすることができる。また、球面状の第1ポンチ面21は角部がないので、上記駆動源の小型化と相俟って、欠損、破損する心配がない。更に、中心部11aに第1ポンチ面21によって引張力を加えられるワーク10は、図4に示した従来のワーク103,110のように圧縮力を加えられることがないので、薄肉化時に加工硬化が殆んど生じない。これは、特に靱性が要求される加工品40を製造する上で有意義である。
【0021】
尚、この薄肉化工程は、ワークに一部に引張力を加えて薄肉化する点で、プレス加工の一種である(深)絞りと共通する。しかし、この実施例は、薄肉化時にワーク10の外周部11bの材料が中心部11aに流入しない点で(深)絞りとは異なる。
▲2▼平坦化工程
平坦化工程で使用する第2ダイス25の左半分及び第2ポンチ30の左半分を図1(c)に示す。第2ダイス25の上面の中心部にはわずかに上方に突出した円形の突出部26が形成され、これにより円形の第2ダイス面27aと、環状の第3ダイス面27bとが形成されている。第2ポンチ30の上面の中心部には上記突出部26と同程度だけ下方に突出した円形の突出部31が形成され、これにより円形の第2ポンチ面32aと、環状の第3ポンチ面32bとが形成されている。双方の突出部26及び31の外径は等しく、従って第2ダイス面27aと第2ポンチ面32aとは直径が等しい。
【0022】
平坦化工程では、図1(c)に示すように、上記薄肉化工程で膨出部36aが形成された半加工品35を第2ダイス25の第2ダイス面27a上に載置し、第2ポンチ30を下降させる。すると、下降につれて、膨出部36aには第2ダイス面27aにより、外周部36bには第3ポンチ面32bによりそれぞれ軸方向の圧縮力が加えられ、膨出部36aが外周部36bに近づくように変形される(へこまされる)。それに伴い、膨出部36aは次第に平坦化されて半径方向寸法が増大する。
【0023】
そして、図1(d)にその右半分を示すように、第2ポンチ30が最終位置まで下降すると、膨出部は完全に平坦化され外周部36bと同一平面上に位置する。その際、膨出部36aは第2ダイス面27a及び第2ポンチ面32aにより両側から圧縮されてその厚さ及び外径が規制され、外周部36bは第3ダイス面27b及び第3ポンチ面32baにより両側から圧縮されてその厚さ、内径及び外径が規制される。膨出部36aの平坦化により外周部36bは半径方向外方に変位しその外径が増大する。
【0024】
こうして、半加工品35全体が完全に平坦化され、中心に円形で所定の外径及び厚さを持つ薄肉部41aが、外周に所定の外径及び厚さを持つ環状の厚肉部41bがそれそれ形成された円板形状の加工品40が完成する。
【0025】
尚、この平坦化工程は、ワーク10の所定部分11aに圧縮力を加える点で、図3及び図4に示した従来例におけるワーク90の中心部91a及び半加工品92の薄肉部93aの圧縮(潰し)と共通する。しかし、本実施例は、ワーク10の所定部分11aの潰し量が薄肉部93aの潰し量に比べて極めて小さい点で従来例とは異なる。
<第2実施例>
図2(a)(b)及び(c)に本発明の第2実施例を示す。第2実施例は、円板形状のワーク(不図示)から、半加工品75(図2(a)参照)を経て、半径方向中間部に環状の薄肉部92が形成され、中心部及び外周部に厚肉部91及び93がそれぞれ形成された加工品90(図2(c)参照)を形成するものである。
▲1▼薄肉化工程
ワークから半加工品75への薄肉化は、図2(a)の左半分に示す第1ダイス55、第1ポンチ70及びしわ押さえ部材61,65等を含むプレスにより行う。第1ダイス55は中心部に位置する円柱状の第1ダイス部56と、その周辺に位置する円筒状の第2ダイス部58とから成る。第1ダイス部56の上面には中心側の円形の平坦面57aと、周辺側の外側に向かって低くなる環状の湾曲面57bとから成る第1ダイス面57が形成されている。第2ダイス部58の上面には外周寄りの環状の平坦面59aと、内周寄りの内側に向かって低くなる環状の湾曲面59bとから成る第2ダイス面59が形成されている。
【0026】
しわ押さえ部材61,65は、上記第1ダイス部56の上方に配置された円柱状の第1しわ押さえ部61と、第2ダイス58部の上方に配置された環状の第2しわ押さえ部65とを含む。第1しわ押さえ部61及び第2しわ押さえ部65は上記第1ダイス部56及び第2ダイス部58とほぼ等しい内径及び外径を持つ。第1しわ押さえ部61及び第2しわ押さえ部65はそれぞれその下面にしわ押さえ面62及び66を有するとともに、その背後からそれぞれ圧縮ばね63及び67によって下方に付勢されている。
【0027】
第1ポンチ70は円筒形状を有し、その内径は第1しわ押さえ部61の外径にほぼ等しく、その外径は第2しわ押さえ部65の内径にほぼ等しい。第1ポンチ70にはその下面に断面半円形状で環状の第1ポンチ面71が形成されている。
【0028】
ワークの薄肉化時は、第1ダイス部56の第1ダイス面57及び第2ダイス部58の第2ダイス面59にワークを載置し、第1ダイス面57及び第2ダイス面59としわ押さえ面62及びしわ押さえ面66とが協同してその内周部及び外周部を上下から挟持する。その後第1ポンチ70を下降させると、第1ポンチ面71の頂部によりワークの半径方向中間部の中央部に引張力が加えられ、頂部から離れた部分により中央部から離れた部分に引張力が加えられる。尚、第1ポンチ70の下降時には、圧縮ばね63及び67が圧縮されて第1しわ押さえ部61及び第2しわ押さえ部65に大きな押圧力を加え、ワークの中心部及び外周部の挟持力が増大する。
【0029】
第1ポンチ面71による半径方向中間部への引張力は、第1ポンチ面71の接線方向即ち第1ダイス部56の第1ダイス面57及び第2ダイス部58の第2ダイス面59に対して所定角度を成す斜め方向に加えられる。その結果、図2(a)に示すように、ワークの半径方向中間部は第1ポンチ面71の表面形状に倣って断面半円形状で環状の膨出部76bに変形するとともに肉厚が薄くなる。このとき、中央部76a及び外周部76cの厚さ、内径及び外径は殆ど変化しない。こうして円板形状のワークから円板形状の半加工品75が形成される。
【0030】
この薄肉化工程では、第1ポンチ70の断面半円形状の第1ポンチ面71とワークの半径方向中間部とは面積の狭い当接部で当接し、当接部の面圧が高い。従って、第1ポンチ70に加える駆動力は小さくて済み、駆動源を小さくすることができる。また、第1ポンチ面71は角部がないので、欠損、破損する心配がない。更に、その半径方向中間部に第1ポンチ面71に沿って引張力を加えられ圧縮力を加えられないワークには、薄肉化時に加工硬化が殆んど生じない。
【0031】
尚、この薄肉化工程は、ワークに一部に引張力を加えて薄肉化する点で、プレス加工の一種である(深)絞りと共通する。しかし、この実施例は、薄肉化時にワークの中心部及び外周部の材料が半径方向中間部に流入しない点で(深)絞りとは異なる。
▲2▼平坦化工程
半加工品75を平坦化して加工品90にする工程で使用する第2ダイス80の左半分及び第2ポンチ85の左半分を図2(b)に示す。第2ダイス80の上面の半径方向中間部にはわずかに上方に突出した環状の突出部81が形成され、これにより中心部の円形の第3ダイス面82aと、半径方向中間部の環状の第4ダイス面82bと、外周部の環状の第5ダイス面82cとが形成されている。第2ポンチ85の下面の半径方向中間部には下方に突出した環状の突出部86が形成され、これにより中心部の円形の第2ポンチ面87aと、半径方向中間部の環状の第3ポンチ面87bと、外周部の環状の第4ポンチ面87cとが形成されている。双方の突出部81及び86の内外径は等しく、従って第4ダイス面82bと第3ポンチ面87bとは半径方向寸法(幅)が等しい。
【0032】
図2(b)に示すように、上記環状の膨出部76bが形成された半加工品75を第2ダイス80の第4ダイス面82b上に載置し、第2ポンチ85を下降させる。すると、下降につれて、膨出部82bには第4ダイス面82bにより、中心部76a及び外周部76cは第2ポンチ面87a及び第4ポンチ面87cによりそれぞれ軸方向の圧縮力が加えられ、膨出部76bが中心部76a及び外周部76cに近づくように変形する。それに伴い、膨出部76bが次第に平坦化されてその半径方向寸法が増加する。
【0033】
そして、第2ポンチ85が最終位置まで下降すると、膨出部76bが完全に平坦化され中心部76a及び外周部76cと同一平面上に位置する。膨出部76bは第4ダイス面82b及び第3ポンチ面87bにより両側から圧縮されて肉厚、内径及び外径を規制される。中心部76aは第3ダイス面82a及び第2ポンチ面87aにより両側から圧縮されて肉厚及び外径を規制され、外周部76cは第5ダイス面82c及び第4ポンチ面87cにより両側から圧縮されて肉厚、内径及び外径を規制される。膨出部76bの平坦化により、外周部76cは半径方向外側に変位し、外径が増加する。
【0034】
こうして、半加工品75全体が完全に平坦化され、図2(c)に示すように、中心に円形で所定の外径及び厚さを持つ厚肉部91が、半径方向中間部に所定の内径及び外径と所定の厚さとを持つ薄肉部92が、外周に所定の内径及び外径と厚さとを持つ環状の厚肉部93が、それそれ形成された円板形状の加工品90が完成する。
【0035】
尚、この平坦化工程は、半加工品75の膨出部76bに圧縮力を加える点で、図3及び図4に示した従来例におけるワーク90の中心部91a及び半加工品92の薄肉部93aの圧縮(潰し)と共通する。しかし、本実施例は、半加工品75の膨出部76bの潰し量が薄肉部93aの潰し量に比べて極めて小さい点で従来例とは異なる。
【0036】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明のワーク加工方法では、薄肉化工程においてプレスのポンチ等からワークに大きな圧縮力が加わらず引張力が加わるのみである。従って、ポンチ等の駆動源を小型化することができるのみならず、ポンチ等の欠損、破損が生じ難い。また、ワークの膨出部を平坦化して成る薄肉部を持つ加工品は脆さが小さく靱性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示し、(a)はワークの加工前の状態、(b)はワークの加工後の状態、(c)は半加工品の加工前の状態、そして(d)は半加工品の加工後の状態をそれぞれ示す正面断面図(左半分又は右半分は図示省略)である。
【図2】 本発明の第2実施例を示し、(a)はワークの加工後の状態、(b)は半加工品の加工後の状態をそれぞれ示す正面断面図(左半分又は右半分は図示省略)、(c)は加工品の正面断面図である。
【図3】 従来例の一つを示し、(a)はワークの加工後の状態、(b)は半加工品の加工後の状態をそれぞれ示す正面断面図(左半分又は右半分は図示省略)である。
【図4】 (a)は上記従来例におけるワークを、(b)は半加工品を、そして(c)は加工品をそれぞれ示す斜視図である。
【符号の説明】
10:ワーク 35;75:半加工品 40;90:加工品
15;55:薄肉化用ダイス
16;57,59;ダイス面
20;70:薄肉化用ポンチ
21;71:ポンチ面
25;80:平坦化用ダイス
26a、26b;82a、82b、82c:ダイス面
30;85:平坦化用ポンチ
32a,32b;87a,87b,87c:ポンチ面
Claims (5)
- ワークの所定部分を薄肉化することにより、一部に薄肉部を持つ該ワークと同形状の加工品を形成するワークの加工方法であって、
前記ワークの所定部分に引張力を加えて、残り部分よりも薄肉の膨出部を形成する薄肉化工程と、
前記膨出部を平坦にする平坦化工程と、
を含むことを特徴とするワークの加工方法。 - 前記薄肉化工程は、前記ワークの所定部分にその表面と所定角度をなす方向に前記引張力を加える請求項1記載のワークの加工方法。
- 前記薄肉化工程は、前記ワークの中央部に円形又は多角形状でその厚さ方向に突出した前記膨出部を形成する請求項1記載のワークの加工方法。
- 前記薄肉化工程は、前記ワークに環状又は枠状でその厚さ方向に突出した前記膨出部を形成する請求項1記載のワークの加工方法。
- 前記平坦化工程は、前記膨出部にその厚さ方向に圧縮力を加える請求項1記載のワークの加工方法。
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