JP4601218B2 - 硬組織修復材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、硬組織修復材料及びその製造方法に属し、疾病、災害などにより手足などの関節機能や骨機能が失われた場合に、これらを修復するために用いられる骨修復材料として、あるいは、老齢、疾病などによって失われた歯牙を再建するために用いられる人工歯根などのインプラント材料として、好適に使用される硬組織修復材料とその製造方法に属する。
【0002】
【従来の技術】
骨、歯牙などの硬組織に障害が生じた場合、人工の硬組織修復材料を生体内に入れて治療することがある。硬組織修復材料は、生体内に入れられた後、生体内の硬組織と結合しなければならない。生体内の硬組織と結合するためには、硬組織修復材料はその表面に骨類似のアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)を形成させる必要があり、そのためにはアパタイトの核形成を誘起する官能基を有していなければならない。
【0003】
従来より、金属やセラミックなどの定形の基材と、基材表面にゾル−ゲル法により形成され、ジルコニアゲルからなる被膜とを備える硬組織修復材料が知られている。この硬組織修復材料では、被膜にZr−OH基が含まれており、この官能基がアパタイトの核形成を誘起する(Biomeramics volume11 Ed. by R. Z. LeGeros and J. P. LeGeros, World Scientific, (1998) pp.77-80)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この硬組織修復材料では、アパタイトを形成させる能力が低く、従って生体内の硬組織と十分に結合することができない。
それ故、この発明の課題は、生体内の硬組織と結合する性質(生体活性)に優れた硬組織修復材料及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
その課題を達成するために、この発明の硬組織修復材料は、
定形の基材と、この基材の表面に形成され、Zr−OH基を有するジルコニア結晶相を含む被膜とを備えることを特徴とする。
【0006】
この発明の硬組織修復材料では、被膜にZr−OH基が含まれているので、アパタイトの核形成を誘起することができる。しかも、この発明の硬組織修復材料は、多くのアパタイトを形成させることができ、優れた生体活性を有する。この発明によってアパタイト形成量が多くなる理由は、この発明では被膜が結晶相からなるので、Zr−OH基がアパタイトのOH基の結晶方位と整合性を保ちながらアパタイトを成長させることが可能だからであると考えられる。
【0007】
この発明の硬組織修復材料において、基材と被膜との間に、基材を構成する少なくとも1種以上の元素と被膜を構成する少なくとも1種以上の元素とによって形成された中間層を備えるのが望ましい。この中間層を備えていると、基材と被膜との密着性を高めることができる。この中間層は、アモルファス状態であっても、また結晶相を含んでいても構わない。さらに、二つ以上の元素が複塩等の化合物をなしていても良いし、固溶体を形成していても良い。
【0008】
この発明において、結晶相については、結晶構造が正方晶や単斜晶であれば良く、さらにこれら両方を含んでいても良い。また、被膜中にカルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリン酸イオンの中から選ばれた少なくとも1種以上のイオン成分が含まれているときは、骨類似のアパタイトの形成を促進する。さらに、被膜の上にアパタイトを主成分とする第二の被膜が形成されているときは、その第二被膜中のアパタイトが核となるので、生体内でのアパタイト形成を促進する。基材としては、特に限定はないが、強度が高く且つ靭性に優れたものが望ましい。例えば、シリカガラス、ジルコニア、ジルコニア/アルミナ複合体等のセラミック、チタン等の金属、さらに高分子などの材料を使用すると良い。
【0009】
この発明の硬組織修復材料を製造する適切な方法は、
定形の基材にジルコニアゾル溶液をコーティングした後、結晶化させることを特徴とする。
【0010】
ジルコニアゾル溶液としては、例えば、ジルコニウムアルコキシド、アルコール、蒸留水及び酸触媒などを含む溶液を使用すると良い。具体的には、Zr(OC3H7)4、C2H5OH、H2O及びHNO3からなる溶液がある。ジルコニアゾル溶液を基材にコーティングするには、例えばゾル溶液に基材を浸漬すると良い。ゾル溶液を結晶化させるには、例えば、加熱する。また、ゾル溶液によるコーティング及び加熱処理を、数回繰り返しても良い。
【0011】
加熱温度については、ジルコニア結晶相を形成させることができるならば、特に限定はない。従って、加熱温度は、ジルコニアゾル溶液の組成や雰囲気などの諸条件により異なる。例えば、ゾル溶液がZr(OC3H7)4、C2H5OH、H2O及びHNO3からなり、これがコーティングされた基材を空気中で加熱する場合には、500℃以上が望ましい。但し、ゾル溶液が同じでも、熱水中など他の雰囲気中で加熱する場合には、より低温でも良い。
【0012】
上記の中間層を備えた硬組織修復材料を得るためには、基材にジルコニアゾル溶液をコーティングしてから加熱することによって、ジルコニウムの基材への拡散及び/又は基材の構成元素のうちの少なくとも一種以上の元素のジルコニアゾル溶液への拡散をさせると良い。そして、その後に再度ジルコニアゾル溶液をコーティングし、結晶化させる。
【0013】
ここで、加熱条件については、元素の拡散が可能な限り、特に限定はない。例えば、基材の材料としてシリカガラス、ジルコニア、ジルコニア/アルミナ複合体等のセラミックを用いる場合には、空気中で1000℃以上温度にて加熱する。基材の材料としてチタン等の金属を用いる場合には、酸化防止のために、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で加熱し、温度はα−β転移温度(800℃)以下にする。
【0014】
また、表面に水酸基等の親水基を有する基材を使用しても、基材と被膜との密着性に優れた硬組織修復材料を得ることができる。このような基材を使用すると、基材表面の親水基と被膜の水酸基との間で脱水縮合等の結合が起こるからである。基材の表面に親水基を形成させるには、例えば、基材をアルカリ性溶液又は酸性溶液に浸けると良い。
【0015】
ジルコニアゾル溶液に、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリン酸イオンの中から選ばれた少なくとも1種以上のイオン成分を含有させると、これらのイオン成分が被膜に含まれた硬組織修復材料を得ることができる。ジルコニアゾル溶液にこれらイオン成分を含有させるには、イオンの元になる化合物を添加すると良い。ここで、化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、カルシウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどのアルコキシド、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウムなどの硝酸塩、さらに酢酸塩、炭酸塩、塩酸塩、リン酸塩等が挙げられる。さらに、加熱して結晶化させた後に基材を、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリン酸イオンの中から選ばれた少なくとも1種以上のイオン成分を含む溶液又は溶融塩中に浸けても、この硬組織修復材料を得ることは可能である。
【0016】
また、加熱して結晶化させた後あるいは前記イオン成分を含む溶液又は溶融塩中に浸けた後に、前記基材を体液に近いイオン濃度を有する疑似体液中に浸けると、被膜の上にアパタイトを主成分とする第二の被膜が形成された硬組織修復材料を得ることができる。疑似体液としては、例えば、142.0mMのNa+、5.0mMのK+、2.5mMのCa2+、1.5mMのMg2+、147.8mMのCl-、4.2mMのHCO3 -、1.0mMのHPO4 2-、及び0.5mMのSO4 2-を含有する溶液がある。
【0017】
【実施例】
−実施例1−
Zr(OC3H7)4、C2H5OH、H2O、及びHNO3からなるジルコニアゾル溶液1を調整した。モル比については、Zr(OC3H7)4:C2H5OH:H2O:HNO3=1.0:25.0:1.0:0.1とした。次に、シリカガラス基材、ジルコニア基材及びチタン金属基材をそれぞれ複数個準備した。各基材の大きさは10×10×1mmである。続いて、各基材をゾル溶液1に浸漬して引き上げることにより、各基材の表面をゾル溶液1でコーティングした。その後、これらの基材を400℃、600℃及び800℃で10分間空気中で加熱した。さらに、ゾル溶液1によるコーティング及び加熱処理を同一条件で5回繰り返した。これにて、ジルコニアを含む被膜が形成された硬組織修復材料を得た。
【0018】
得られた各硬組織修復材料の被膜の構造を薄膜X線回析(TF−XRD)により調べた。その結果、基材の種類に拘わらず、400℃で加熱された硬組織修復材料ではアモルファス、600℃では正方晶、800℃では正方晶及び単斜晶であった。また、X線光電子分光分析(XPS)により、各硬組織修復材料のO1sスペクトルを測定し、さらにZr−O−Zr結合によるピークとZr−OH基及び吸着水によるピークとに分離した。その結果、いずれの硬組織修復材料についても、被膜中にZr−OH基が存在することが確認された。
【0019】
続いて、各硬組織修復材料を疑似体液(SBF)30ml中に浸漬した。ここで、疑似体液は、142.0mMのNa+、5.0mMのK+、2.5mMのCa2+、1.5mMのMg2+、147.8mMのCl-、4.2mMのHCO3 -、1.0mMのHPO4 2-、及び0.5mMのSO4 2-を含有しており、36.5℃でpH7.40に調整されている。浸漬を開始してから7日後及び14日後に、硬組織修復材料を取り出し、表面のアパタイト析出量を走査型電子顕微鏡(SEM)により調べた。その結果を表1〜3に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
表1〜3に見られるように、いずれの硬組織修復材料も14日後にはアパタイトの析出が認められた。しかし、どの基材についても、被膜の構造がアモルファスである硬組織修復材料に比べて、被膜の構造が正方晶若しくは正方晶及び単斜晶である硬組織修復材料では、アパタイトの析出量が多かった。
【0024】
−実施例2−
実施例1で得たジルコニアゾル溶液1に硝酸カルシウム塩及びリン酸塩を添加することによって、ジルコニアゾル溶液2を調整した。モル比については、ジルコニウム1に対してカルシウム1及びリン1とした。次に、大きさ10×10×1mmのジルコニア基材を複数個準備した。このジルコニア基材は、全ジルコニアに対して10モル%のセリアを有し、これで安定化された正方晶ジルコニア多結晶体(正方晶ジルコニア多結晶体の割合98容量%)からなる第1相と、全ジルコニアに対して30容量%のアルミナ粒子を有する第2相とが分散した複合焼結体である。
【0025】
次いで、各基材をゾル溶液2に浸漬して引き上げることにより、各基材の表面をゾル溶液2でコーティングし、その後、これらの基材を1200℃で30分間空気中で加熱した。続いて、先と同様にして基材をゾル溶液2でコーティングした後に1100℃で30分間加熱し、さらに同様にコーティング後に1000℃で30分間加熱した。そして、再び基材をゾル溶液2でコーティングし、800℃で10分間加熱した。次に、ゾル溶液1によるコーティング及び800℃での加熱処理を5回繰り返した。これにて、ジルコニアを含有する被膜が形成された硬組織修復材料を得た。
【0026】
尚、得られた硬組織修復材料の被膜部分の断面を、エネルギー分散型X線分光分析(EDAX)によって調べた結果、Ca、Zr、P、O、Ceが検出された。これより、被膜と基材との間ではセリウム及びジルコニウムが相互に拡散していて、基材を構成する元素と被膜を構成する元素とによって形成された中間層が形成されていることが確認できた。また、各加熱処理の直後に被膜表面の構造をTF−XRDによって調べた結果、1200℃、1100℃、1000℃での加熱処理直後の被膜表面には、複リン酸塩CaZr4(PO4)6に基づく回析ピークが認められた。EDAXとTF−XRDによる結果より、この複リン酸塩CaZr4(PO4)6は、Zr4+イオンが基材由来のCe4+イオンと置換固溶してCaZr4-XCeX(PO4)6からなる固溶体を形成しているものと推定される。また、硬組織修復材料完成後の被膜表面は、正方晶及び単斜晶ジルコニアからなることが判った。この表面では複リン酸塩CaZr4(PO4)6に基づく回析ピークは認められなかった。さらに、実施例1と同様にして、XPSによりO1sスペクトルを測定し調べた結果、完成後の被膜表面にZr−OH基が存在することが確認された。
【0027】
続いて、得られた硬組織修復材料を実施例1と同様の疑似体液(SBF)30ml中に浸漬した。そして、浸漬を開始してから14日後に硬組織修復材料を取り出し、被膜及びその上に形成されたアパタイトに10×10(計100ピース)の升目を切った。さらに、その升目上に粘着テープを貼った後にそれを剥がし、これにより剥離される被膜の断片を数えることによって、基材と被膜との密着性を評価した。また、実施例1で得られた3種の硬組織修復材料についても、同様の試験を行った。
【0028】
その結果、実施例1の硬組織修復材料では、いずれも5〜20ピースが剥離した。それに対して、本実施例の硬組織修復材料では、5ピース以下しか剥離しなかった。これより、被膜と基材との間で元素の拡散が起こっていると、被膜と基材との密着性が向上することが判った。
【0029】
−実施例3−
実施例1で得たジルコニアゾル溶液1に、ナトリウムエトキシド(C2H5ONa)、カリウムエトキシド、又はリン酸塩を添加することによって、3種類のジルコニアゾル溶液3〜5を調整した。モル比については、ジルコニウム1に対して、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド及びリン酸塩が0.2になるようにした。次に、シリカガラス基材、ジルコニア基材及びチタン金属基材をそれぞれ複数個準備した。各基材の大きさは10×10×1mmである。続いて、各種基材をゾル溶液3、4及び5にそれぞれ浸漬して引き上げることにより、基材表面をゾル溶液3、4又は5でコーティングした。その後、これらの基材を600℃で10分間空気中で加熱した。さらに、ゾル溶液3〜5によるコーティング及び加熱処理を同一条件で5回繰り返した。これにて、ジルコニアを含む被膜が形成された硬組織修復材料を得た。
【0030】
得られた各硬組織修復材料の被膜の構造をTF−XRDにより調べた結果、いずれも正方晶及び単斜晶であった。また、実施例1と同様にして、XPSによりO1sスペクトルを測定し調べた結果、いずれについても被膜中にZr−OH基が存在することが確認された。さらに、ゾル溶液3、4及び5から形成された被膜には、それぞれナトリウムイオン、カリウムイオン及びリン酸イオンが存在していることが確認された。
【0031】
続いて、各硬組織修復材料を実施例1と同様の疑似体液(SBF)30ml中に浸漬した。浸漬を開始してから7日後に、硬組織修復材料を取り出し、表面のアパタイト析出量をSEMにより調べた。そして、その析出量を実施例1で調べた析出量(表1〜3)と比較した。
その結果、いずれの硬組織修復材料においても、アパタイトが被膜の全面に層となって析出していた。即ち、実施例1において14日間浸漬した場合と同じぐらいの析出量であった。これより、被膜中にナトリウムイオン、カリウムイオン又はリン酸イオンが含まれていると、アパタイトの形成が促進されることが判った。
【0032】
−実施例4−
シリカガラス基材、ジルコニア基材及びチタン金属基材をそれぞれ複数個準備した。各基材の大きさは10×10×1mmである。次に、シリカガラス基材については60℃に保った10Mの水酸化カリウム水溶液5ml中に1日間、ジルコニア基材については95℃に保った5Mのリン酸水溶液5ml中に4日間、さらにチタン金属基材については60℃に保った10Mの水酸化ナトリウム水溶液5ml中に1日間浸漬した。浸漬後、各基材表面をTF−XRDにより調べたところ、いずれの基材も表面に水酸基を有することが確認された。
【0033】
次いで、実施例1で得たジルコニアゾル溶液1に各基材を浸漬して引き上げることにより、各基材の表面をゾル溶液1でコーティングし、その後、各基材を600℃で10分間空気中で加熱した。さらに、ゾル溶液1によるコーティング及び加熱処理を同一条件で5回繰り返した。これにて、ジルコニアを含む被膜が形成された硬組織修復材料を得た。
得られた各硬組織修復材料の被膜の構造をTF−XRDにより調べた結果、いずれも正方晶及び単斜晶であった。また、実施例1と同様にして、XPSによりO1sスペクトルを測定し調べた結果、いずれについても被膜中にZr−OH基が存在することが確認された。
【0034】
続いて、各硬組織修復材料を実施例1と同様の疑似体液(SBF)30ml中に浸漬した。そして、浸漬を開始してから14日後に硬組織修復材料を取り出し、実施例2と同じ方法で基材と被膜との密着性を評価した。
その結果、本実施例の硬組織修復材料では、いずれも剥離した被膜断片が5ピース以下であった。これより、基材表面に水酸基が形成されていると、基材と被膜との密着性が向上することが判った。
【0035】
−実施例5−
大きさ10×10×1mmのジルコニア基材を準備した。次に、実施例1で得たジルコニアゾル溶液1に基材を浸漬して引き上げることにより、基材の表面をゾル溶液1でコーティングした。その後、基材を800℃で10分間空気中で加熱した。さらに、ゾル溶液1によるコーティング及び加熱処理を同一条件で5回繰り返した。これにて、ジルコニアを含む被膜が形成された硬組織修復材料を得た。
【0036】
得られた硬組織修復材料を、塩化カルシウム及び塩化ナトリウムを5:5のモル比で混合して580℃で溶融させてなる塩酸溶融塩中に1時間浸漬した。さらに、硬組織修復材料を、炭酸カルシウム及び炭酸カリウムを6:4のモル比で混合して850℃で溶融させてなる炭酸溶融塩中に1時間浸漬した。その後、硬組織修復材料を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。そして、被膜をXPSで分析したところ、カルシウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンに基づくピークが認められた。得られた硬組織修復材料の被膜の構造をTF−XRDにより調べた結果、いずれも正方晶及び単斜晶であった。また、実施例1と同様にして、XPSによりO1sスペクトルを測定し調べた結果、いずれについても被膜中にZr−OH基が存在することが確認された。
【0037】
続いて、硬組織修復材料を実施例1と同様の疑似体液(SBF)30ml中に浸漬した。浸漬を開始してから7日後に、硬組織修復材料を取り出し、表面のアパタイト析出量をSEMにより調べた。そして、その析出量を、実施例1で調べたジルコニア基材の場合の析出量(表2)と比較した。
その結果、本実施例の硬組織修復材料では、アパタイトが被膜の全面に層となって析出していた。即ち、実施例1において14日間浸漬した場合と同じぐらいの析出量であった。これより、被膜中にカルシウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが含まれていると、アパタイトの形成が促進されることが判った。
【0038】
【発明の効果】
この発明の硬組織修復材料によると、被膜がジルコニア結晶相からなるため、多くのアパタイトを形成させることができる。従って、この発明の硬組織修復材料は、優れた生体活性を有する。またこの発明の製造方法によると、生体活性に優れた硬組織修復材料を得ることができる。
Claims (11)
- 定形の基材と、この基材の表面に形成され、Zr−OH基を有するジルコニア結晶相を含む被膜とを備え、前記結晶相が、正方晶及び単斜晶の中から選ばれた1種以上の結晶構造をなすことを特徴とする硬組織修復材料。
- 前記基材と前記被膜との間に、前記基材を構成する少なくとも1種以上の元素と、前記被膜を構成する少なくとも1種以上の元素とによって形成された中間層を備える請求項1に記載の硬組織修復材料。
- 前記被膜中に、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリン酸イオンの中から選ばれた少なくとも1種以上のイオン成分が含まれている請求項1又は2に記載の硬組織修復材料。
- 前記被膜の上に、更にアパタイトを主成分をする第二の被膜が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の硬組織修復材料。
- 定形の基材にジルコニアゾル溶液をコーティングした後、結晶化させることを特徴とする硬組織修復材料の製造方法。
- 前記基材に前記ジルコニアゾル溶液をコーティングしてから加熱することによって、ジルコニアゾル溶液中のジルコニウムの基材への拡散及び/又は基材の構成元素のうちの少なくとも一種以上の元素のジルコニアゾル溶液への拡散をさせた後、再度ジルコニアゾル溶液をコーティングし、結晶化させる請求項5に記載の製造方法。
- 前記基材が表面に親水基を有している請求項5又は6に記載の製造方法。
- 前記基材をアルカリ性溶液又は酸性溶液に浸けることによって、基材の表面に親水基を形成させる請求項7に記載の製造方法。
- 前記ジルコニアゾル溶液が、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリン酸イオンの中から選ばれた少なくとも1種以上のイオン成分を含む請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 結晶化させた後に前記基材を、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリン酸イオンの中から選ばれた少なくとも1種以上のイオン成分を含む溶液又は溶融塩中に浸ける請求項5〜9のいずれかに記載の製造方法。
- 結晶化させた後、あるいは前記イオン成分を含む溶液又は溶融塩中に浸けた後に、前記基材を体液に近いイオン濃度を有する疑似体液中に浸ける請求項5〜10のいずれかに記載の製造方法。
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JP2003512895A (ja) * | 1999-11-02 | 2003-04-08 | 松下電工株式会社 | 硬組織修復材及びその製造方法 |
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