JP3129041B2 - インプラント及びその製造方法 - Google Patents

インプラント及びその製造方法

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JP3129041B2 JP05194648A JP19464893A JP3129041B2 JP 3129041 B2 JP3129041 B2 JP 3129041B2 JP 05194648 A JP05194648 A JP 05194648A JP 19464893 A JP19464893 A JP 19464893A JP 3129041 B2 JP3129041 B2 JP 3129041B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、人工歯根、人工骨、
人工関節、骨補填材、ボ−ンスクリュ−、ボ−ンプレ−
ト、ボ−ンフレ−ム等の歯科および整形外科等の分野で
用いられるインプラント及びその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来技術】近年の医療技術の進歩にはめざましいもの
があり、高齢化社会の進展等にともなって、その技術の
発展には大きな期待が寄せられている。このような技術
の一つとして、人工歯根、人工骨、人工関節等の骨代替
材料あるいは骨補強材料の技術があり、その利用は急速
に広まっている。これらの材料は、いわゆる「インプラ
ント」または「インプラント材料」と呼ばれているもの
であるが、その多くは、金属、セラミックス等によって
構成されている。
【0003】このうち、実用化されている生体内インプ
ラントの材料には、ステンレス鋼、Ni-Cr 合金、Co-Cr
合金、チタン、チタン合金、貴金属及びその合金などが
あり、それぞれ用途に応じて使用されている。その中
で、チタンおよびチタン合金は、耐食性、生体適合性、
機械的性質などの点で優れているので、ほとんどのイン
プラントには、これらの金属が使われている。
【0004】しかしながら、生体適合性の高い金属を用
いるだけでは、インプラントを長期間生体内で安定に機
能させるには不十分である。そこで、水酸化アパタイト
などの生体活性材料をインプラント表面にコ−ティング
して、骨と直接結合させる方法が用いられている。水酸
化アパタイトは、骨組織に対する親和性が非常に高い材
料で、骨と化学的に直接結合する性質がある。しかし、
その焼結体は強度が低いので、主に金属の表面にコ−テ
ィングして用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、付着強度が大
きく、しかも生体内で長期間安定なコ−ティング膜(水
酸化アパタイトなどの生体活性材料の膜)を得る方法が
試みられている。現在、プラズマ溶射法によるコ−ティ
ングが最も一般的に行われており、その他、熱分解法、
スパッタリング法などが試みられているが、これらはま
だ技術的に確立されていない。
【0006】インプラント芯体(以下、芯体と略す場合
もある)表面に水酸化アパタイトをコ−ティングして皮
膜とする場合、その皮膜に求められる条件の中で最も重
要な点は、皮膜の芯体との付着強度及び生体内での安定
性である。つまり、水酸化アパタイトからなる皮膜と骨
は非常に強固に結合するので、その結合強度を上回る芯
体との付着強度が長期間保たれないと、皮膜が芯体から
剥離してインプラントを安定に機能させることができな
い。
【0007】プラズマ溶射法でチタン(インプラント芯
体)の表面に水酸化アパタイトをコーティングする場合
には、両者の熱膨張率の差や結晶構造の違いなどから、
付着強度の大きい皮膜の形成は基本的に困難であるとい
う問題点がある。また、水酸化アパタイトの粉末が高温
のプラズマ炎を通過する時に熱分解されてできた酸化ア
パタイトなどのアルカリ成分が皮膜中に残留して皮膜が
生体内で溶解しやすくなる(生体内で不安定)という問
題点がある。
【0008】本発明は、以上の問題点に鑑みてなされた
ものであり、従来技術の問題点を解決し、生体内で長期
にわたって安定で、しかも骨組織との親和性に優れたイ
ンプラント及びその製造方法を提供することを目的とし
ている。
【0009】
【課題を解決するための手段】そのため、本発明は第一
に「芯体の全部あるいは表面だけがチタンまたはチタン
合金からなるインプラント芯体と、その表面に形成され
たCaとPを含む陽極酸化皮膜からなるインプラントに
おいて、前記Ca及びPについて、前記陽極酸化皮膜の
厚さ方向に濃度勾配をつけたことを特徴とするインプラ
ント(請求項1)」を提供する。
【0010】また、本発明は第二に「請求項1記載のイ
ンプラントの陽極酸化皮膜上にリン酸カルシウム化合物
を析出させてなるインプラント(請求項2)」を提供す
る。また、本発明は第三に「前記リン酸カルシウム化合
物が水酸化アパタイトであることを特徴とする請求項2
記載のインプラント(請求項3)」を提供する。また、
本発明は第四に「芯体の全部あるいは表面だけがチタン
またはチタン合金からなるインプラント芯体を、Caイ
オンとPイオンもしくはリン酸イオンとを含む電解質溶
液中で陽極酸化して、前記芯体表面にCaとPを含む陽
極酸化皮膜を形成するインプラントの製造方法におい
て、前記電解質溶液がグリセロリン酸塩とカルシウム塩
を含む溶液であり、また前記Ca及びPについて、前記
陽極酸化皮膜の厚さ方向に濃度勾配をつけたことを特徴
とするインプラントの製造方法(請求項4)」を提供す
る。
【0011】また、本発明は第五に「請求項4の方法に
より製造されたインプラントを高圧水蒸気中で水熱処理
して、前記陽極酸化皮膜上にリン酸カルシウム化合物を
析出させたことを特徴とするインプラントの製造方法
(請求項5)」を提供する。また、本発明は第六に「前
記リン酸カルシウム化合物が水酸化アパタイトであるこ
とを特徴とする請求項5記載の製造方法(請求項6)」
を提供する。
【0012】
【作用】陽極酸化は、電解質溶液中で対象物(陽極酸化
を行うもの)を陽極として、ステンレス鋼などの陰極と
の間に電圧を加えて電解し、陽極の対象物表面を電気化
学的に酸化して酸化皮膜を形成させる方法である。この
方法によれば、対象物の表面に酸化皮膜を均一に形成さ
せることができ、皮膜と対象物の密着性は良好である。
しかも、特殊な装置を必要とせず短時間で処理すること
ができるという利点もある。
【0013】例えば、本発明(請求項4)では、芯体の
全部あるいは表面だけがチタンまたはチタン合金からな
るインプラントを陽極として、グリセロリン酸塩とカル
シウム塩を含む電解質中で陽極酸化して、表面にCaと
Pを含む陽極酸化膜を形成している。本発明にかかる陽
極酸化皮膜は、Ca及びPについて、陽極酸化皮膜の厚
さ方向に濃度勾配をつけた。例えば、濃度の異なる2種
類以上の電解質溶液中で芯体を順次陽極酸化すると、皮
膜中に段階的にCa及びPの濃度勾配をつけることがで
きる。また、陽極酸化の途中で濃度の異なる電解質溶液
を加えると、皮膜中に連続的にCaとPの濃度勾配をつ
けることができる。
【0014】また、インプラント芯体上に形成した陽極
酸化皮膜には、陽極酸化時の火花放電によって形成され
た微小突起による凹凸があり、骨組織との間にマイクロ
アンカリング効果が生じる。すなわち、表面の凹凸と骨
組織が絡み合うことによって、インプラントにかかる回
転や引き抜き力に対する維持力が得られる。更に、生体
活性なリン酸カルシウム化合物を陽極酸化皮膜上に、例
えば、高圧水蒸気中での水熱処理により析出させて形成
すると、リン酸カルシウム化合物が骨と直接結合して、
インプラントはいっそう強固に骨と結合するので好まし
い。
【0015】本発明においては、芯体としての基材に、
チタンあるいはチタン合金を使用する。その形状はいか
なるものでもよく、棒状、板状はもちろん、それらに穴
があけられていてもネジ切りされていてもよい。また、
芯体全部がチタンあるいはチタン合金でなくてもよく、
芯体表面だけがプラズマ溶射等により、チタンあるいは
チタン合金でコ−ティングされていてもよい。
【0016】芯体上に形成する陽極酸化皮膜の付着強度
を増大するために、予め芯体の表面をサンドブラスト、
チタン粉末のプラズマ溶射、酸エッチングなどの方法で
粗して、芯体の表面積を増大させておくことが好まし
い。陽極酸化に際し、芯体は予め、通常の研磨法で研磨
し、アルコ−ル洗浄、水洗などで表面を清浄にしておく
ことが好ましい。研磨できないものは、酸洗等により表
面を清浄にすることが好ましい。また、酸により芯体表
面をエッチング処理して、芯体表面に大気中で自然にあ
るいは様々な加熱処理を経ることにより形成された酸化
膜を除去し、活性な金属表面を露出させると、その後形
成される陽極酸化皮膜の付着強度が増大するので好まし
い。陽極酸化する必要のない芯体の表面部分には、予め
マスキング剤を塗布しておき、全体を処理した後にそれ
を除去してもよい。以上のような前処理を行った後に陽
極酸化を行うことが好ましい。陽極酸化を行うときに用
いる電解質溶液に含まれるグリセロリン酸塩としては、
α- グリセロリン酸ナトリウム、β- グリセロリン酸ナ
トリウム、グリセロリン酸カルシウム等が好ましい。特
に好ましくは、水に対する溶解度の高いβ- グリセロリ
ン酸ナトリウムである。
【0017】また、同じく電解質溶液に含まれるカルシ
ウム塩としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭
酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳
酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシ
ウム、プロピオン酸カルシウム等が好ましい。特に好ま
しくは、水に対する溶解度が高く、しかも生体に有害な
イオンを含まない酢酸カルシウムである。
【0018】グリセロリン酸塩とカルシウム塩は同時に
溶解しても、反応して沈澱を生じることがなく、Caと
Pを高濃度で含む電解質溶液を調製することができ、し
かも高電圧まで安定して陽極酸化できる。また、電解質
溶液の溶媒は水に限定されることはなく、有機溶媒や熔
融塩を用いてもよい。このような電解質溶液に、チタン
またはチタン合金製のインプラント芯体を浸漬し、例え
ば、以下のようにして陽極酸化を行うことができる。陽
極酸化で重要な条件としては、電圧、電流密度、電解質
の濃度、電解質の温度などがあげられる。
【0019】電圧は陽極酸化皮膜の組成、表面の微細構
造、膜厚、付着強度等に影響するので、これらの条件が
最適になるように設定するとよい。好ましくは100 〜 5
00Vの範囲、特に好ましくは200 〜 400Vの範囲である
が、この範囲に限定されるものではない。電流密度を高
くするほど電圧は速く上昇し、短時間で陽極酸化が終了
するが、あまり急激に陽極酸化すると、皮膜の付着強度
が低下したり、皮膜の微細構造が乱れるなどの不都合が
生じる。また、電流密度が低すぎても時間がかかりすぎ
るので、芯体の表面積に応じて調整するとよい。例え
ば、5 〜 200mA/cm2 の範囲が好ましいが、この範
囲に限定されるものではない。
【0020】一定電圧のもとでは、電解質濃度の設定に
より、形成する陽極酸化皮膜の組成が決まり、電解質濃
度を高くするほど、陽極酸化皮膜中のCaとPの含有量
が多くなり、生体親和性も高くなる。皮膜中に非常に多
くのCaとPを含むようになると、水酸化アパタイトな
どの生体活性材料と同様に、骨と直接結合するようにな
る。しかし、逆にマトリックスである酸化チタンの構造
が維持されなくなり、皮膜の耐久性が低下するなどの不
都合が生じる。
【0021】そこで、まず耐久性の高い、CaとPをわ
ずかに含む陽極酸化皮膜を形成し、次いで最表面だけC
aとPに富む陽極酸化皮膜を形成すれば、耐久性と生体
親和性を兼ね備えた皮膜を得ることができる。陽極酸化
皮膜を水熱処理することによって、陽極酸化皮膜上にリ
ン酸カルシウム化合物を析出させる場合、その組成は陽
極酸化皮膜に含まれているCaとPの濃度によって決ま
る。つまり、各電解質(グリセロリン酸塩、カルシウム
塩)の濃度を設定することで、所望の組成を有する陽極
酸化皮膜やリン酸カルシウム化合物を形成できる。
【0022】例えば、理論Ca/P比を有する水酸化ア
パタイト(リン酸カルシウム化合物の一例)結晶を析出
させるには、グリセロリン酸塩濃度を一定にしてカルシ
ウム塩濃度を調整するか、あるいはその逆にすればよ
い。また、電解質濃度が高くなるほど、陽極酸化皮膜中
にCaとPが多く取り込まれるので、陽極酸化皮膜上に
析出するリン酸カルシウム化合物の量も増えて陽極酸化
皮膜上を隙間なく覆うこともできる。
【0023】しかし、このように多量のリン酸カルシウ
ム化合物が析出するときには、多量のCaとPが陽極酸
化皮膜に含まれているので、水熱処理後に、この酸化皮
膜と芯体との界面における結晶構造の整合性が、Caと
Pを少ししか含まない場合に比べて低下する。そのた
め、この界面における付着強度が低下する。あるいは、
水熱処理によって多量のCaとPが表面に向けて拡散
し、後に残った陽極酸化皮膜の強度が低下する。
【0024】このように、電解質濃度を高くしたり、水
熱温度を高くして、陽極酸化皮膜上にリン酸カルシウム
化合物を多く析出させるほど、皮膜の付着強度は低下す
る傾向がある。従って、皮膜の付着強度を大きくするに
は、電解質の濃度を低くしてリン酸カルシウム化合物の
析出量を少なくすればよい。しかし、この様にすると、
逆に生体活性の効果が減少してしまうので、陽極酸化皮
膜中のCaとPの濃度が、皮膜の表面にいくほど増加す
るように皮膜を形成するとよい。これを水熱処理すれ
ば、皮膜の付着強度を高くでき、しかもリン酸カルシウ
ム化合物結晶の析出量も多くできる。
【0025】陽極酸化皮膜中のCaとPの濃度が、皮膜
の表面にいくほど増加するように皮膜を形成するには、
例えば、段階的に濃度を高くした電解質を数種類用意し
ておき、この中で順次陽極酸化を行うとよい。これによ
り、CaとPの濃度が段階的に増加した陽極酸化皮膜が
形成される。この場合は、最初の電解質溶液に、非常に
薄い電解質溶液を用いると、皮膜の付着強度が高くなる
ので好ましい。
【0026】また、同じように非常に薄い電解質溶液中
で陽極酸化を始めて、途中でより濃度の高い電解質溶液
を加えることによって、連続的にCaとPの濃度が増加
した陽極酸化膜を形成することもできる。なお、最初の
電解質溶液の電解質には、グリセロリン酸塩だけを用
い、カルシウム塩を加えなくてもよい。電解質濃度が一
定の場合、電圧によっても陽極酸化皮膜の組成は変化す
る。従って、理論組成比の水酸化アパタイト結晶を析出
させるには、電圧に応じて電解質濃度を調整すればよ
い。
【0027】電解質の温度は陽極酸化に伴う発熱によっ
て上昇するが、電解質濃度によっては、皮膜の付着強度
が温度に影響される場合もあるので、正確にコントロ−
ルすることが好ましい。水熱処理の温度範囲は、100 ℃
より低いと、リン酸カルシウム化合物が生成しにくくな
り、500 ℃より高いと、皮膜の付着強度が低下しやすく
なるので、100〜 500℃が好ましい。水熱処理はオ−ト
クレ−ブを用いて、主に高圧水蒸気中で行うのが好まし
いが、水中あるいはCaとPを含んだ水中で行ってもよ
い。
【0028】析出させるリン酸カルシウム化合物は、α
またはβリン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、水
酸化アパタイト、非晶質リン酸カルシウムなどが好まし
い。特に好ましくは、理論組成比あるいはそれに近い組
成比をもつ水酸化アパタイトである。生体に対する親和
性が高く、骨と直接結合したり、材料上での新生骨の形
成を促進するなど、多くの優れた利点をもつからであ
る。本発明では、析出する水酸化アパタイト結晶のCa
/P比を調整するには、電解質の濃度を調整すればよい
ので非常に簡単である。水酸化アパタイト結晶は、単結
晶であるか又は非常に高い結晶性を有するので、生体に
吸収されにくく、生体活性の効果が長期間持続する。
【0029】以上のように本発明にかかるインプラント
では、CaとPの濃度が皮膜の表面にいくほど増加して
いる陽極酸化皮膜をチタンまたはチタン合金(芯体)の
表面に設けた。この皮膜は金属の表面が酸化されてでき
たものであるから、両者の結晶構造の整合性は高く、付
着強度が大きい。本発明にかかるインプラントでは、陽
極酸化皮膜に含まれるCaとPが生体内で溶出するの
で、骨に対する親和性が良好である。また、皮膜が保護
層となり、生体内でインプラント芯体からの金属イオン
の溶出を防止するので、生体内で安定である。
【0030】また、例えば、水熱処理により析出させて
設けた陽極酸化皮膜上のリン酸カルシウム化合物の個々
の結晶と酸化皮膜の結晶構造は整合性が高いので、両者
の付着強度も大きい。そのため、芯体上に陽極酸化皮膜
及びリン酸カルシウム化合物が強固に付着したインプラ
ントが得られる。そして、生体内で経時的な付着強度の
低下は全く起こらない。
【0031】本発明にかかる製造方法は、プラズマ溶射
法のようにセラミックス材料を外部から金属表面に付着
させるコ−ティング方法とは基本的に異なり(プラズマ
溶射装置のような特殊な装置を必要とせず、簡単に再現
性よく皮膜を形成できる)、皮膜の付着強度を非常に大
きくできる。しかも、皮膜表面をリン酸カルシウム化合
物で覆うと、さらに大きい生体活性の効果があり、骨と
直接結合する。本発明にかかるインプラントは表面が灰
白色であり、チタン(又はチタン合金)製芯体の金属色
と比べて患者に与える清潔感が大きい。
【0032】以下、実施例を示し、更に詳しく、この発
明について説明するが、本発明は実施例に限定されるも
のではない。
【0033】
【実施例】
〔実施例1〕β−グリセロリン酸ナトリウム(分子量30
6 )の濃度を0.04mol/l 、酢酸カルシウム(分子量176
)の濃度を0.25mol/l とした電解質溶液中で、純チタ
ンを350Vの電圧まで陽極酸化し、引き続き同じく濃度を
それぞれ0.12mol/l と0.4mol/lとした電解質中で、380V
まで陽極酸化した。 〔実施例2〕β−グリセロリン酸ナトリウムの濃度を0.
01mol/l 、酢酸カルシウムの濃度を0.15mol/l とした電
解質溶液中で、純チタンを250Vの電圧まで陽極酸化し、
引き続き同じく濃度をそれぞれ0.03mol/l と0.25mol/l
とした電解質中で、350Vまで陽極酸化した。 〔実施例3〕β−グリセロリン酸ナトリウムの濃度を0.
01mol/l 、酢酸カルシウムの濃度を0.15mol/l とした電
解質溶液中で、純チタンを300Vの電圧まで陽極酸化し、
引き続き同じく濃度をそれぞれ0.03mol/l と0.25mol/l
とした電解質中で、350Vまで陽極酸化した。 〔実施例4〕β−グリセロリン酸ナトリウムの濃度を0.
01mol/l 、酢酸カルシウムの濃度を0.15mol/l とした電
解質溶液中で、純チタンを300Vの電圧まで陽極酸化し、
その後ビュレットから同じく濃度をそれぞれ0.05mol/l
と0.35mol/l とした同じ体積の電解質溶液を最初の電解
質溶液に一定の速度で加えながら、350Vまで連続して陽
極酸化した。 〔比較例1〕β−グリセロリン酸ナトリウムの濃度を0.
03mol/l 、酢酸カルシウムの濃度を0.25mol/l とした電
解質溶液中で、純チタンを350Vの電圧まで陽極酸化し
た。 〔比較例2〕β−グリセロリン酸ナトリウムの濃度を0.
01mol/l 、酢酸カルシウムの濃度を0.15mol/l とした電
解質中で、純チタンを350Vの電圧まで陽極酸化した。
【0034】いずれの例の場合も、電流密度は50mA/c
m2、電解質溶液の温度は10℃とした。実施例2〜4と比
較例1と2で得られた陽極酸化皮膜を、高圧水蒸気中30
0 ℃で2時間水熱処理した。得られた皮膜について引っ
張り試験を行い、平均付着強度を測定した。X線回折分
析により、水熱処理によって陽極酸化皮膜上に析出した
結晶は、いずれも水酸化アパタイトであることを確認し
た。水酸化アパタイト結晶の析出状態は、電子顕微鏡で
観察した。兎の大腿骨に埋植して、組織学的な骨組織に
対する親和性を調べた。以上の結果を表1にまとめた。
実施例1における付着強度は、インプラントとして使用
するには十分に大きく、しかも骨に対する親和性も非常
に良好であり、骨と直接結合していた。実施例2〜4に
おける付着強度は、いずれも比較例1よりは大きかった
が、比較例2よりは小さかった。しかし、水酸化アパタ
イト結晶の析出量と骨に対する親和性では、実施例2〜
4は、いずれも比較例2よりも極めて良好であった。即
ち、実施例1〜4は、大きい皮膜の付着強度と極めて良
好な骨親和性を併せ持つ皮膜であった。析出した水酸化
アパタイト結晶のCa/P比は、いずれも理論組成比に
近いものであった。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】本発明のインプラントは、生体内で長期
間にわたって安定で、しかも骨組織との親和性が優れて
いる。また、本発明のインプラントは、表面が灰白色で
あり、チタン(またはチタン合金)製芯体の金属色と比
べて患者に与える清潔感が大きい。
【0037】さらに、本発明の製造方法によれば、前記
特性を有するインプラントを容易に製造できる。 以 上

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芯体の全部あるいは表面だけがチタンま
    たはチタン合金からなるインプラント芯体と、その表面
    に形成されたCaとPを含む陽極酸化皮膜からなるイン
    プラントにおいて、前記Ca及びPについて、前記陽極
    酸化皮膜の厚さ方向に濃度勾配をつけたことを特徴とす
    るインプラント。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のインプラントの陽極酸化
    皮膜上にリン酸カルシウム化合物を析出させてなるイン
    プラント。
  3. 【請求項3】 前記リン酸カルシウム化合物が水酸化ア
    パタイトであることを特徴とする請求項2記載のインプ
    ラント。
  4. 【請求項4】 芯体の全部あるいは表面だけがチタンま
    たはチタン合金からなるインプラント芯体を、Caイオ
    ンとPイオンもしくはリン酸イオンとを含む電解質溶液
    中で陽極酸化して、前記芯体表面にCaとPを含む陽極
    酸化皮膜を形成するインプラントの製造方法において、
    前記電解質溶液がグリセロリン酸塩とカルシウム塩を含
    む溶液であり、また前記Ca及びPについて、前記陽極
    酸化皮膜の厚さ方向に濃度勾配をつけたことを特徴とす
    るインプラントの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4の方法により製造されたインプ
    ラントを高圧水蒸気中で水熱処理して、前記陽極酸化皮
    膜上にリン酸カルシウム化合物を析出させたことを特徴
    とするインプラントの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記リン酸カルシウム化合物が水酸化ア
    パタイトであることを特徴とする請求項5記載の製造方
    法。
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