JPH0747115A - インプラント及びその製造方法 - Google Patents

インプラント及びその製造方法

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JPH0747115A
JPH0747115A JP5194646A JP19464693A JPH0747115A JP H0747115 A JPH0747115 A JP H0747115A JP 5194646 A JP5194646 A JP 5194646A JP 19464693 A JP19464693 A JP 19464693A JP H0747115 A JPH0747115 A JP H0747115A
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implant
porous structure
titanium
core
calcium phosphate
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JP5194646A
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Inventor
Hitoshi Ishizawa
均 石沢
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生体内で長期にわたって安定で、しかも骨組
織との親和性に優れた多孔質構造体を有するインプラン
ト及びその製造方法を提供する。 【構成】 チタンまたはチタン合金からなるインプラン
ト芯体(1) と、その表面に形成されたCaとPを含む陽
極酸化皮膜(4) からなるインプラントにおいて、前記芯
体(1) が多孔質構造体(2) を有し、また前記陽極酸化皮
膜(4) が前記多孔質構造体(2) の表面の全面に均一また
は略均一に形成されていることを特徴とするインプラン
ト(6) 。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、人工歯根、人工骨、
人工関節、骨補填材等の歯科および整形外科等の分野で
用いられるインプラント及びその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来技術】近年の医療技術の進歩にはめざましいもの
があり、高齢化社会の進展等にともなって、その技術の
発展には大きな期待が寄せられている。このような技術
の一つとして、人工歯根、人工骨、人工関節等の骨代替
材料あるいは骨補強材料の技術があり、その利用は急速
に広まっている。これらの材料は、いわゆる「インプラ
ント」または「インプラント材料」と呼ばれているもの
であるが、その多くは、金属、セラミックス等によって
構成されている。
【0003】このうち、実用化されている生体内インプ
ラントの材料には、ステンレス鋼、Ni-Cr 合金、Co-Cr
合金、チタン、チタン合金、貴金属及びその合金などが
あり、それぞれの用途に応じて使用されている。その中
で、チタンおよびチタン合金は、耐食性、生体親和性、
機械的性質などの点で優れているので、ほとんどのイン
プラントには、これらの金属が使われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】セメントを使用しない
人工骨や人工関節等のインプラントでは、10年以上と
いう長期にわたって生体内で安定に機能させるために、
インプラントと骨の間の維持力が荷重に対して十分大き
いことが必要である。そのため、インプラント表面を粗
して表面積を増やし、骨との絡み合いによる維持力を大
きくする方法が用いられる。例えば、サンドブラスト、
酸によるエッチング、チタン粉末のプラズマ溶射などに
よって表面を粗すことができる。
【0005】また、チタンやチタン合金のビ−ズをイン
プラント表面の一部に数層焼き付けて表面積を増やす方
法が知られている。その他、維持力を大きくする方法に
は、インプラント表面に水酸化アパタイトなどの生体活
性材料をコ−ティングすることによって、骨と直接結合
させる方法もある。このための手段としては、プラズマ
溶射法が最も一般的で、その他熱分解法、スパッタリン
グ法などが知られているが、これらはまだ技術的に確立
されていない。これらの維持力を大きくする方法は、単
独では十分な維持力が得られないので、組み合わせて用
いられている。例えば、表面を粗して表面積を増やした
インプラント芯体の表面に、水酸化アパタイトなどの生
体活性材料をプラズマ溶射法によりコ−ティングしてい
る。しかしながら、プラズマ溶射法で芯体の表面に水酸
化アパタイトなどの生体活性材料をコーティングする方
法では、芯体と生体活性材料との熱膨張率の差や結晶構
造の違いなどから、付着強度の大きい皮膜の形成は基本
的に困難であるという問題点がある。また、水酸化アパ
タイトの粉末が高温のプラズマ炎を通過する時に熱分解
されてできた酸化アパタイトなどのアルカリ成分が皮膜
中に残留して皮膜が生体内で溶解しやすくなる(生体内
で不安定)という問題点がある。
【0006】そこで、電解質溶液中における芯体の陽極
酸化により、芯体表面に酸化皮膜を形成することが行わ
れている。この陽極酸化皮膜には、陽極酸化時の火花放
電によって形成された微小突起による凹凸がある。その
ため、陽極酸化皮膜を広い面積にわたって均一に形成す
ると、骨組織との間にマイクロアンカリング効果が生じ
る。すなわち、表面の凹凸と骨組織が絡み合うことによ
って、インプラントにかかる回転や引き抜き力に対する
維持力が得られる。
【0007】比較的単純な形状をした人工歯根や人工骨
等のインプラント芯体表面を陽極酸化する場合は、1μ
m以上の比較的厚い酸化皮膜を広い面積にわたって均一
に形成することは容易であり、前記の効果が得られる。
しかし、例えば、多孔質構造体を有するインプラント芯
体のように、非常に複雑な形状をしたものに、均一な酸
化皮膜を広い面積にわたって均一に形成することは、こ
れまでの陽極酸化の方法ではできなかった。すなわち、
これまでの陽極酸化では、前記の効果は得られなかっ
た。
【0008】本発明は、以上の問題点に鑑みてなされた
ものであり、従来技術の問題点を解決し、生体内で長期
にわたって安定で、しかも骨組織との親和性に優れた多
孔質構造体を有するインプラント及びその製造方法を提
供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】そのため、本発明は第一
に「チタンまたはチタン合金からなるインプラント芯体
と、その表面に形成されたCaとPを含む陽極酸化皮膜
からなるインプラントにおいて、前記芯体が多孔質構造
体を有し、また前記陽極酸化皮膜が前記多孔質構造体の
表面の全面に均一または略均一に形成されていることを
特徴とするインプラント(請求項1)」を提供する。ま
た、本発明は第二に「請求項1記載のインプラントの陽
極酸化皮膜上にリン酸カルシウム化合物を析出させてな
るインプラント(請求項2)」を提供する。
【0010】また、本発明は第三に「前記リン酸カルシ
ウム化合物が水酸化アパタイトであることを特徴とする
請求項2記載のインプラント(請求項3)」を提供す
る。また、本発明は第四に「チタンまたはチタン合金か
らなるインプラント芯体をCaイオンとPイオンもしく
はリン酸イオンとを含む電解質溶液中で陽極酸化して、
前記芯体表面にCaとPを含む陽極酸化皮膜を形成する
インプラントの製造方法において、前記芯体が多孔質構
造体を有し、前記電解質溶液がグリセロリン酸塩とカル
シウム塩を含む溶液であり、さらに前記電解質溶液を前
記多孔質構造体の内部から外側まで循環させながら陽極
酸化することにより、前記多孔質構造体の表面の全面に
陽極酸化皮膜を均一または略均一に形成することを特徴
とするインプラントの製造方法(請求項4)」を提供す
る。
【0011】また、本発明は第五に「請求項4の方法に
より製造されたインプラントを高圧水蒸気中で水熱処理
して、前記陽極酸化皮膜上にリン酸カルシウム化合物を
析出させたことを特徴とするインプラントの製造方法
(請求項5)」を提供する。また、本発明は第六に「前
記リン酸カルシウム化合物が水酸化アパタイトであるこ
とを特徴とする請求項5記載の製造方法(請求項6)」
を提供する。
【0012】
【作用】本発明にかかるインプラントは、チタンまたは
チタン合金からなるインプラント芯体が多孔質構造体を
有し、該多孔質構造体の表面の全面に陽極酸化皮膜が均
一または略均一に形成されている。
【0013】多孔質構造体には、例えば、芯体表面の一
部又は全面に、チタン粉末をプラズマ溶射したもの、チ
タン又はチタン合金のビーズを数層焼き付けたもの、メ
ッシュ状のチタンを数層焼き付けたもの、及び芯体自体
が多孔質体であるもの等がある。陽極酸化は、電解質溶
液中で陽極酸化の対象物(例えば、チタンまたはチタン
合金製のインプラント芯体)を陽極とし、ステンレス鋼
などの陰極との間に電圧を加えて電解し、陽極の対象物
表面を電気化学的に酸化して酸化皮膜を形成させる方法
である。この方法には、形成される皮膜と基材(対象
物)の密着性が良好であり、特殊な装置を必要とせず短
時間で処理できるという利点がある。
【0014】比較的単純な形状をした人工歯根や人工骨
等のインプラント芯体表面を陽極酸化する場合は、1μ
m以上の比較的厚い酸化膜を均一に形成することは容易
である。しかし、前記多孔質構造体を有するインプラン
ト芯体のように、非常に複雑な形状をしたものに、均一
な酸化膜を全面に形成することは、これまでの陽極酸化
の方法ではできなかった。
【0015】そこで、本発明者らは鋭意研究の結果、例
えば、電解質溶液を攪拌子などで十分に攪拌したり、超
音波振動させたり、電解質溶液中で対象物に気泡を吹き
付けたりして、電解質溶液を前記多孔質構造体の内部か
ら外側まで循環させながら陽極酸化することにより、前
記多孔質構造体の表面の全面に陽極酸化皮膜を均一また
は略均一に形成できることを見出した。
【0016】前述したように、陽極酸化皮膜には、陽極
酸化時の火花放電によって形成された微小突起による凹
凸がある。そのため、陽極酸化皮膜を広い面積にわたっ
て均一に形成すると、骨組織との間にマイクロアンカリ
ング効果が生じる。すなわち、表面の凹凸と骨組織が絡
み合うことによって、インプラントにかかる回転や引き
抜き力に対する維持力が得られる。
【0017】さらに、生体活性なリン酸カルシウム化合
物を陽極酸化皮膜上に、例えば、高圧水蒸気中での水熱
処理により析出させて形成すると、リン酸カルシウム化
合物が骨と直接結合するので好ましい。この場合、多孔
質構造体の表面の全面に陽極酸化皮膜が均一または略均
一に形成されていると、生体活性なリン酸カルシウム化
合物も陽極酸化皮膜上に均一または略均一に形成され
る。
【0018】多孔質構造体の表面全面に生体活性材料が
均一または略均一に形成されていれば、多孔質構造体の
表層部だけでなく深部へも新生骨の侵入が促進され、骨
と多孔質構造体の結合は、即ちインプラント芯体と骨の
結合は非常に強固なものとなるので好ましい。陽極酸化
の前に芯体は、予め酸洗等により表面を清浄にしておく
ことが好ましい。また、酸により芯体表面をエッチング
処理して、芯体表面に大気中で自然にあるいは様々な加
熱処理を経ることにより形成された酸化膜を除去し、活
性な金属表面を露出させると、その後形成される陽極酸
化皮膜の付着強度が増大するので好ましい。陽極酸化す
る必要のない部分には予めマスキング剤を塗布してお
き、全体を処理した後にそれを除去してもよい。以上の
ような前処理を行った後に陽極酸化を行なうことが好ま
しい。陽極酸化を行うときに用いる電解質溶液に含まれ
るグリセロリン酸塩としては、α- グリセロリン酸ナト
リウム、β- グリセロリン酸ナトリウム、グリセロリン
酸カルシウム等が好ましい。特に好ましくは、水に対す
る溶解度の高いβ- グリセロリン酸ナトリウムである。
【0019】また、同じく電解質溶液に含まれるカルシ
ウム塩としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭
酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳
酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシ
ウム、プロピオン酸カルシウム等が好ましい。特に好ま
しくは、水に対する溶解度が高く、しかも生体に有害な
イオンを含まない酢酸カルシウムである。
【0020】グリセロリン酸塩とカルシウム塩は同時に
溶解しても、反応して沈澱を生じることがなく、Caと
Pを高濃度で含む電解質溶液を調製することができ、し
かも高電圧まで安定して陽極酸化できる。また、電解質
溶液の溶媒は水に限定されることはなく、有機溶媒や溶
融塩を用いてもよい。このような電解質溶液に、チタン
またはチタン合金製のインプラント芯体を浸漬し、例え
ば、以下のようにして陽極酸化を行うことができる。陽
極酸化で重要な条件としては、電圧、電流密度、電解質
の濃度、電解質の温度などがあげられる。
【0021】電圧は陽極酸化皮膜の組成、表面の微細構
造、膜厚、付着強度等に影響するので、これらの条件が
最適になるように設定するとよい。好ましくは100 〜 5
00Vの範囲である。多孔質構造体の気孔径が小さかった
り、多孔質構造体が厚いために、その内部から外側へ電
解質溶液が循環しにくい場合は、電圧を高く設定するの
が困難なことが多いので、150 〜 300Vの範囲で行うの
が好ましい。
【0022】さらにこのような場合には、電解質溶液を
撹拌子などで十分に撹拌したり、超音波振動させたり、
あるいは電解質溶液中で対象物に気泡を吹きつけながら
陽極酸化すると、多孔質構造体の内部から外側への電解
質溶液の循環が良くなって、多孔質構造体の表面が全面
的に均一又は略均一に陽極酸化される。電流密度を高く
するほど電圧は速く上昇し、短時間で陽極酸化が終了す
るが、あまり急激に陽極酸化すると、皮膜の付着強度が
低下したり、皮膜の微細構造が乱れるなどの不都合が生
じる。また、電流密度が低すぎても時間がかかりすぎる
ので、芯体の表面積に応じて調整するとよい。例えば、
5 〜 200mA/cm2 の範囲が好ましいが、この範囲に
限定されるものではない。
【0023】一定電圧のもとでは、電解質濃度の設定に
より、形成する陽極酸化皮膜の組成が決まり、その結
果、水熱処理によって陽極酸化皮膜上に析出するリン酸
カルシウム化合物の組成も決まる。つまり、各電解質
(グリセロリン酸塩、カルシウム塩)の濃度を設定する
ことで、所望の組成を有する陽極酸化皮膜やリン酸カル
シウム化合物を形成できる。
【0024】例えば、理論Ca/P比を有する水酸化ア
パタイト(リン酸カルシウム化合物の一例)結晶を析出
させるには、グリセロリン酸塩濃度を一定にしてカルシ
ウム塩濃度を調整するか、あるいはその逆にすればよ
い。また、電解質濃度が高くなるほど、陽極酸化皮膜中
にCaとPが多く取り込まれるので、陽極酸化皮膜上に
析出するリン酸カルシウム化合物の量も増えて陽極酸化
皮膜上を隙間なく覆うことができる。
【0025】また、前記理由により電圧を高く設定でき
ない場合には、電圧を低くするほど陽極酸化皮膜が薄く
なる傾向があるため、皮膜に含まれるCaとPの量が不
足し、陽極酸化皮膜上をリン酸カルシウム化合物で十分
に覆うことができない。そのような場合には、電解質濃
度を比較的高くして、皮膜中のCaとPの含有量を多く
するとよい。
【0026】電解質濃度が一定の場合、電圧によっても
陽極酸化皮膜の組成は変化する。従って、理論組成比の
水酸化アパタイト結晶を析出させるには、電圧に応じて
電解質濃度を調整すればよい。電解質の温度は陽極酸化
に伴う発熱によって上昇し、あまり高くなると皮膜の付
着強度が低下してしまう。陽極酸化は電解質が凍ったり
沸騰しない範囲の温度で可能だが、陽極酸化する時の電
解質の温度が低くなるほど、水熱処理により析出するリ
ン酸カルシウム化合物の量が減少する傾向がある。従っ
て、10〜 50 ℃の範囲が好ましい。
【0027】水熱処理の温度範囲は、100 ℃より低い
と、リン酸カルシウム化合物が生成しにくくなり、500
℃より高いと、皮膜の付着強度が低下しやすくなるの
で、100〜500 °Cが好ましい。水熱処理はオ−トクレ
−ブを用いて、主に高圧水蒸気中で行うのが好ましい
が、水中あるいはCaとPを含んだ水中で行ってもよ
い。析出させるリン酸カルシウム化合物は、αまたはβ
リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、水酸化アパ
タイト、非晶質リン酸カルシウムなどが好ましい。特に
好ましくは、理論組成比あるいはそれに近い組成比をも
つ水酸化アパタイトである。生体に対する親和性が高
く、骨と直接結合したり、材料上での新生骨の形成を促
進するなど、多くの優れた利点をもつからである。
【0028】本発明では、析出する水酸化アパタイト結
晶のCa/P比を調整するには、電解質の濃度を調整す
ればよいので非常に簡単である。水酸化アパタイト結晶
は、単結晶であるか又は結晶性が非常に高いので、生体
に吸収されにくく、生体活性の効果が長期間持続する。
以上のように、本発明にかかるインプラントでは、Ca
とPを含む陽極酸化皮膜を多孔質構造体を有するチタン
またはチタン合金からなるインプラント芯体の多孔質構
造体の表面の全面に均一または略均一に設けた。この皮
膜は金属(多孔質構造体)の表面が酸化されてできたも
のであるから、両者の結晶構造の整合性は高く、付着強
度が大きい。本発明にかかるインプラントでは、皮膜に
含まれるCaとPが生体内で溶出するので、骨に対する
親和性も良好である。しかも、皮膜が保護層となり、生
体内でインプラント芯体からの金属イオンの溶出を防止
するので生体内で安定である。
【0029】また、例えば、水熱処理により析出させて
設けた陽極酸化皮膜上のリン酸カルシウム化合物の個々
の結晶と酸化皮膜の結晶構造は整合性が高いので、両者
の付着強度も大きい。そのため、芯体上に陽極酸化皮膜
及びリン酸カルシウム化合物が強固に付着したインプラ
ントが得られる。そして、生体内で経時的な付着強度の
低下が全くおこらない。
【0030】本発明にかかる製造方法は、プラズマ溶射
法のようにセラミックス材料を外部から金属表面に付着
させるコーティング方法とは基本的に異なる。すなわ
ち、プラズマ溶射装置のような特殊な装置を必要とせ
ず、簡単に再現性よく、付着強度が非常に大きい皮膜を
形成できる。しかも、皮膜表面をリン酸カルシウム化合
物で覆うと、さらに大きい生体活性の効果があり、骨と
直接結合する。本発明にかかるインプラントは表面が灰
白色であり、チタン(又はチタン合金)製芯体の金属色
と比べて患者に与える清潔感が大きい。
【0031】また、陽極酸化皮膜を全面に均一または略
均一に設けた本発明にかかる多孔質構造体並びにその皮
膜上にリン酸カルシウム化合物を設けたもの、及びその
製造方法は、液体カラムクロマトグラフィ−の吸着剤、
水溶液中の無機イオンを除去する排水処理用カラム充填
剤、触媒、電子材料に使用することも可能である。以
下、実施例を示し、さらに詳しく、この発明について説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。
【0032】
【実施例】
〔実施例1〕電解質溶液の電解質として、β−グリセロ
リン酸ナトリウム(分子量306 )と酢酸カルシウム(分
子量176 )を用い、濃度をそれぞれ0.08mol/l 、0.5mol
/lとし、電解電圧を230V、電流密度を50mA/cm2、電解質
温度を30℃として、平均径が0.6mm のチタンビ−ズ(2)
をチタンの芯体(1) 表面に2層焼き付けた多孔質構造体
を有する芯体(1) を陽極酸化した。
【0033】この時、撹拌子の回転数を毎分600 回転に
して電解質溶液を十分に撹拌し、多孔質構造体内部と外
側との間で電解質溶液の循環を良くしたところ、すべて
のビ−ズ(2) の表面と底面が均一に陽極酸化された。 〔実施例2〕実施例1と同じ条件で、チタンビ−ズ(2)
の多孔質構造体を有する芯体(1) を多孔質構造体に気泡
を吹き付けながら陽極酸化したところ、同様に多孔質構
造体内部と外側との間で電解質溶液の循環が良くなり、
2層すべてのビ−ズ(2) の表面と底面が均一に陽極酸化
された。 〔実施例3〕3層のチタンビ−ズ(2) からなる多孔質構
造体を有する芯体(1) を、実施例1および2と同じ条件
のもとで、さらに電解質溶液を超音波振動させながら、
それぞれ陽極酸化したところ、全てのビ−ズ(2) の表面
と底面が均一に陽極酸化された。 〔実施例4〕実施例1〜3で得られた、全面が均一に陽
極酸化されたチタンビ−ズ(2) 多孔質構造体を有する芯
体(1) を高圧水蒸気中300 ℃で2時間水熱処理を行っ
た。
【0034】実施例4で得られた皮膜について、X線回
折分析で結晶相の同定を行ったところ、陽極酸化皮膜
(4) 上に析出したリン酸カルシウム化合物(5) は、水酸
化アパタイトであった。得られた皮膜を電子顕微鏡で観
察し、水酸化アパタイト結晶の析出状態を調べたとこ
ろ、全てのビ−ズ(2) の表面および底面に水酸化アパタ
イト結晶が隙間なく析出していた。これらの条件で生成
した水酸化アパタイト結晶のCa/P比は、いずれもほ
ぼ理論組成比であり、個々の結晶は単結晶かもしくは結
晶性が非常に高いものであった。
【0035】図1に、実施例4によるインプラントを骨
組織に埋植して3ヶ月経過後の状態を示す。ビ−ズ(2)
間の狭い空隙や多孔質構造体の深部にも新生骨が良く侵
入し、未処理のチタンビ−ズ芯体(芯体にチタンビーズ
を焼き付けたもの)と比較して骨に対する親和性が著し
く向上していた。 〔比較例1〕3層からなるチタンビ−ズ芯体に、プラズ
マ溶射法によって水酸化アパタイトをコ−ティングし
た。水酸化アパタイトの粉末は、最表面と表面から2層
目にあるチタンビ−ズの表面のみに付着しており、最も
深くにある3層目のビ−ズには全く付着していなかっ
た。しかも、溶射方向に対して影になった部分にも全く
付着していなかった。
【0036】このインプラントを骨組織に埋植したとこ
ろ、水酸化アパタイトがコ−ティングされていないビー
ズ層の深部までは新生骨が侵入しなかった。
【0037】
【発明の効果】本発明のインプラントは、生体内で長期
間にわたって安定で、しかも骨組織との親和性が優れて
いる。また、本発明のインプラントは、表面が灰白色で
あり、チタン(又はチタン合金)製芯体の金属色と比べ
て患者に与える清潔感が大きい。
【0038】本発明の製造方法によれば、多孔質構造体
のように複雑な形状のものでも、全面に均一又は略均一
に、陽極酸化皮膜やその上のリン酸カルシウム化合物を
形成できる。そのため、前記特性を有するインプラント
を容易に製造できる。また、生体材料としての用途だけ
でなく、液体カラムクロマトグラフィ−の吸着剤、水溶
液中の無機イオンを除去する排水処理用カラム充填剤、
触媒、電子材料に使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、実施例4で製造した2層のチタンビ−ズ
(2) からなる多孔質構造体及びその近辺の状態を示す概
略断面図(a)及びチタンビ−ズ(2) の表面の一部を拡
大した図である。
【符号の説明】 1・・・芯体 2・・・チタンビ−ズ(多孔質構造体の構成物の一例) 3・・・骨組織 4・・・陽極酸化皮膜 5・・・水酸化アパタイト層(リン酸カルシウム化合物
の一例) 6・・・インプラント 以 上

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタンまたはチタン合金からなるインプ
    ラント芯体と、その表面に形成されたCaとPを含む陽
    極酸化皮膜からなるインプラントにおいて、前記芯体が
    多孔質構造体を有し、また前記陽極酸化皮膜が前記多孔
    質構造体の表面の全面に均一または略均一に形成されて
    いることを特徴とするインプラント。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のインプラントの陽極酸化
    皮膜上にリン酸カルシウム化合物を析出させてなるイン
    プラント。
  3. 【請求項3】 前記リン酸カルシウム化合物が水酸化ア
    パタイトであることを特徴とする請求項2記載のインプ
    ラント。
  4. 【請求項4】 チタンまたはチタン合金からなるインプ
    ラント芯体をCaイオンとPイオンもしくはリン酸イオ
    ンとを含む電解質溶液中で陽極酸化して、前記芯体表面
    にCaとPを含む陽極酸化皮膜を形成するインプラント
    の製造方法において、前記芯体が多孔質構造体を有し、
    前記電解質溶液がグリセロリン酸塩とカルシウム塩を含
    む溶液であり、さらに前記電解質溶液を前記多孔質構造
    体の内部から外側まで循環させながら陽極酸化すること
    により、前記多孔質構造体の表面の全面に陽極酸化皮膜
    を均一または略均一に形成することを特徴とするインプ
    ラントの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4の方法により製造されたインプ
    ラントを高圧水蒸気中で水熱処理して、前記陽極酸化皮
    膜上にリン酸カルシウム化合物を析出させたことを特徴
    とするインプラントの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記リン酸カルシウム化合物が水酸化ア
    パタイトであることを特徴とする請求項5記載の製造方
    法。
JP5194646A 1993-08-05 1993-08-05 インプラント及びその製造方法 Pending JPH0747115A (ja)

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