JP2007202782A - 生体材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】マグネシウム基材の腐食溶解を抑えるとともに、生体親和性及び強度を有し、且つ毒性が低いという生体材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に酸化皮膜が形成されてなるマグネシウム基材にハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材が被覆されてなる生体材料。また、マグネシウム基材を焼鈍することにより、その表面に酸化皮膜を形成する工程と、この工程により得られたマグネシウム基材に、ゾルゲル法により、ハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材を被覆する工程を含む生体材料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、マグネシウム基材の腐食溶解を抑えるとともに、優れた生体親和性及び強度を有し、且つ毒性が低いという優れた生体材料及びその製造方法に関する。詳細には、表面に酸化皮膜が形成されてなるマグネシウム基材にハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材が被覆されてなる生体材料及びその製造方法に関する。
従来から人工インプラント等の生体材料には、ハイドロキシアパタイトが広く用いられてきた。これは、その特性が、骨組織との親和性に優れ、骨と直接的に結合するという理由からであるが、一方で、ハイドロキシアパタイトは強度が劣るために、強度補強のために、ハイドロキシアパタイトとともに種々の金属材料が組み合わせて用いられている。
例えば、特許文献1には、チタン層と、非チタン金属層と、チタン粒子表面にハイドロキシアパタイト粒子を固着させた混合層とを有するチタン-ハイドロキシアパタイト複合体及びその製造方法が開示されている。この発明によると、チタン層により十分な強度を維持できるものの、チタン中のバナジウムの毒性、発ガン性の問題、或いは、チタン自身のイオン溶出に伴う問題等が指摘されている。
そこで、生体材料に、人体にとって必須元素で有害性も少なく、その比強度もハイドロキシアパタイトの比強度を上回るマグネシウムを用いることができれば、極めて優れた生体材料となるはずである。例えば、特許文献2には、ハロゲン化物による改質によって腐蝕性が変化されたマグネシウム材料からなるヒトまたは動物および身体に使用する医療用のインプラントが開示されている。
上記従来技術に鑑みると、生体親和性に優れるハイドロキシアパタイトとマグネシウムを組み合わせるとともに、マグネシウムの腐食溶解を抑制することができれば、極めて優れた生体材料となり得るが、未だこのような発明は創出されていない。
特開2005−226140号公報 特表2005−518830号公報
本発明者らは、表面に酸化皮膜が形成されてなるマグネシウム基材にハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材を被覆して生体材料とすることにより、マグネシウムとハイドロキシアパタイトを組み合わせることが可能になり、且つマグネシウムの腐食溶解を抑制できることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明の課題は、マグネシウム基材の腐食溶解を抑えるとともに、優れた生体親和性及び強度を有し、且つ毒性が低いという優れた生体材料及びその製造方法を提供することにある。
請求項1に係る発明は、表面に酸化皮膜が形成されてなるマグネシウム基材にハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材が被覆されてなる生体材料に関する。
請求項2に係る発明は、前記複合材の膜厚が0.01〜4.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の生体材料に関する。
請求項3に係る発明は、以下の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする生体材料の製造方法に関する。
(1) マグネシウム基材を焼鈍することにより、その表面に酸化皮膜を形成する工程
(2) 工程(1)により得られたマグネシウム基材に、ゾルゲル法により、ハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材を被覆する工程
請求項4に係る発明は、前記焼鈍が、300〜650℃で10〜200時間、大気中で行われることを特徴とする請求項3に記載の生体材料の製造方法に関する。
請求項5に係る発明は、前記焼鈍が、100〜500℃で5〜200時間、酸素中で行われることを特徴とする請求項3に記載の生体材料の製造方法に関する。
請求項6に係る発明は、前記焼鈍が、大気中と酸素中で行われることを特徴とする請求項3乃至5いずれかに記載の生体材料の製造方法に関する。
請求項7に係る発明は、前記ゾルゲル法で用いられるゾル溶液が、少なくともチタンイソプロキシド、無水エタノール、ハイドロキシアパタイト及び塩酸を含むことを特徴とする請求項3乃至6いずれかに記載の生体材料の製造方法に関する。
本発明の生体材料は、表面に酸化皮膜が形成されてなるマグネシウム基材にハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材が被覆されてなるから、マグネシウム基材の腐食溶解を抑えるとともに、優れた生体親和性及び強度を有し、且つ毒性が低いという優れた効果を有する。さらに、本発明の生体材料は、生体内において、ハイドロキシアパタイトの析出を促進させることにより、マグネシウムをマグネシウムアパタイトに変換させることできるから、金属を体内に残さない優れた生体材料となる。
本発明の生体材料の製造方法によると、マグネシウム基材の腐食溶解を抑えるとともに、優れた生体親和性及び強度を有するとともに毒性が低い生体材料を製造することができる。
詳細には、工程1において、特定の温度及び時間で焼鈍を行うことにより、均質で薄い酸化膜を形成することができるから、マグネシウム基材の耐食性がさらに優れる。また、焼鈍を酸素中、或いは酸素中と大気中の組み合わせで行うことによっても同様の効果を得ることができる。
また、工程2中のゾルゲル法により生成される二酸化チタン及びハイドロキシアパタイトからなる複合材は、本発明の生体材料に優れた生態適合性をもたらす。
本発明の生体材料について、図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の生体材料の斜視図であり、(b)は、図1中のA−A線断面図である。図1(a)及び(b)中、(1)は生体材料、(2)はマグネシウム基材、(3)は酸化皮膜、(4)はハイドロキシアパタイト及び二酸化チタンの複合材である。
本発明に係るマグネシウム基材(2)は、マグネシウムを主成分とするものであるが、その組成割合は、少なくともその表面にマグネシウム酸化物を生成する程度であれば十分である。例えば、純マグネシウム材料、マグネシウム合金材料、マグネシウム基複合材料等が挙げられる。また、その形態等を問わず、素材品、鋳造品、鍛造品、加工品等種々の形態および形状をとり得る。
本発明の生体材料は、マグネシウム基材(2)の表面に酸化皮膜(3)が形成される。この酸化皮膜の膜厚は特に限定されないが、比較的薄く、且つムラなく均一であることが望ましい。この理由は、薄く、ムラのない均一な酸化皮膜の表面には、複合材が均質に被覆されている有利な効果があるからである。
本発明の生体材料は、酸化皮膜(3)上に、ハイドロキシアパタイト及びに酸化チタンの複合材(4)が被覆されてなる。
前記ハイドロキシアパタイトとは、一般組成をCa(POOH、とする化合物であり、その反応の非化学量論性によって、CaHPO 、Ca(PO、CaO(PO、Ca10(PO(OH)、CaP11、Ca(PO、Ca、Ca(HPO)・HOなどリン酸カルシウムと称される1群の化合物を含む。Ca成分の一部分は、Sr、Ba、Mg、Fe、Al、Y、La、Na、K、Zn、Mn、Hなどから選ばれる1種以上で置換されてもよい。
本発明に係る複合材(4)は、好ましくは0.01〜4.0μm、より好ましくは0.1〜2.0μm、さらに望ましくは0.5〜1.0μmの膜厚を有する。この理由は、0.01μm未満の場合は、膜自体の強度が低く、また4.0μmを超える場合は、膜の均一性が低下するため、いずれの場合も好ましくないからである。
図1(a)及び(b)は、マグネシウム基材(2)の片面のみに、酸化皮膜(3)及び複合材(4)が積層される様子を示すが、望ましくは、マグネシウム基材の全表面に酸化皮膜及び複合材が積層されてなる。
この理由は、酸化皮膜は、マグネシウム基材の腐食溶解を防ぐためだけでなく、マグネシウム基材の表面性状を整える。これにより、その表面に複合材が均質に積層され、さらに生体内において析出されるハイドロキシアパタイトもまた均等に成長していくことになる。逆に、基材の表面性状が粗く、均質に酸化皮膜が形成されてない場合は、その部分から腐食が始まる可能性がある。
本発明の生体材料が、マグネシウム基材(2)表面に、少なくとも酸化皮膜(3)及び複合材(4)が積層されてなることにより、次の効果を奏する。酸化皮膜を有するマグネシウムは、生体内においてハイドロキシアパタイトを析出する。本発明においては、ハイドロキシアパタイトを含む複合材をマグネシウム基材に被覆することにより、生体内におけるハイドロキシアパタイトの析出を促進し、マグネシウムから、マグネシウムを含むハイドロキシアパタイトへの変換を加速させることができる。
本発明の生体材料は、人工骨、人工関節、腱と骨との接合材、歯科用インプラント材、カテーテル用経皮端子、薬剤徐放性基材、骨髄誘導チャンバー、組織再建用チャンバー・基材等として使用することができる。
本発明の生体材料の製造方法について説明する。
本発明の生体材料の製造方法は、以下の工程(1)及び(2)を含む。
(1) マグネシウム基材を焼鈍することにより、その表面に酸化皮膜を形成する工程
(2) 工程(1)により得られたマグネシウム基材に、ゾルゲル法により、ハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材を被覆する工程
工程(1)において、マグネシウム基材を焼鈍する。前記焼鈍が大気中で行われる場合は、好ましくは300〜650℃で10〜200時間、より好ましくは400〜600℃で25〜150時間、さらに望ましくは450〜550℃で70〜120時間行われる。この理由は、300℃未満の場合、酸化皮膜の生成が不十分であり、650℃を越えると、マグネシウム基材が軟化するためいずれの場合も好ましくないからである。また、10時間未満の場合、酸化皮膜の生成が不十分であり、200時間を越えると、マグネシウム基材がクリープ現象により自重で変形するためいずれの場合も好ましくない。
本発明に係る「酸素中」とは、別途酸素が導入されることを意味し、例えば容量15Lのマッフル炉内で焼鈍される場合は、0.5〜10L/分、より好ましくは2〜6L/分の酸素が導入される。
焼鈍が酸素中で行われる場合は、好ましくは100〜500℃で5〜200時間、より好ましくは200〜400℃で10〜50時間、さらに望ましくは250〜350℃で、20〜30時間行われる。この理由は、100℃未満の場合、酸化皮膜の生成が不十分であり、また、500℃を越えると、マグネシウムの酸化反応が急激に生じて危険性があるためいずれの場合も好ましくないからである。
前記焼鈍の条件として、大気中と酸素中の焼鈍を組み合わせる場合、望ましくは、大気中で450〜550℃で、10〜50時間焼鈍した後、酸素中で250〜350℃で、10〜50時間焼鈍する。この条件による焼鈍は、薄く、ムラのない均一な酸化皮膜を、短時間で作製できるという優れた効果を奏する。
工程(1)により酸化皮膜を形成されたマグネシウム基材は、次に工程(2)においてゾルゲル法によりハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材が被覆される。
本発明に係るゾルゲル法とは、一般的なゾルゲル法、即ち、金属アルコキシドのアルコール溶液から出発して、その加水分解・重縮合、それに続く熱処理によって、ゾルを経てその固化体であるゲルを得る方法が用いられる。
本発明の生体材料の製造方法においては、前記ゾルゲル法で用いられるハイドロキシアパタイトゾル溶液として、好ましくは、少なくともチタンイソプロキシド、無水エタノール、ハイドロキシアパタイト及び塩酸を含む溶液を用いる。
工程(1)により得られたマグネシウム基材は、ゾル溶液中で、好ましくは0.5〜10分、より望ましくは1〜5分間浸漬した後、好ましくは0.01〜0.40mm/秒の速さ、より望ましくは0.20〜0.30mm/秒の速さで引き上げ、好ましくは2〜30分、より望ましくは7〜13分間熱処理する。その後、望ましくは20分間以上大気中で冷却する。
工程(2)のゾルゲル法において、ゲル化を遅らせるために、以下のゾル溶液を調製する方法が挙げられる。まず、エタノール(COH)、水(HO)及び塩酸を含むa液を作製し、0℃に冷却する。a液を冷却している間に、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))及びエタノール(COH)を含むc液を作製する。c液を電磁攪拌器により攪拌している状態でa液を加え、最後にチタンイソプロキシド(Ti(O‐i‐C)及びエタノール(COH)を含むb液を加える。
また、溶液が作製環境から受ける影響を少なくするためアクリル板でケースを作成し、その中でマグネシウム基材を保管することで更にゲル化までの時間を遅らせることができる。
本発明においては、工程(2)を、好ましくは2回以上、より望ましくは3回以上行う。この理由は、より均質で厚い複合材を被覆することができるからである。
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
〈焼鈍条件の検討〉
以下の条件の焼鈍により酸化皮膜を形成し、形成された各酸化皮膜を比較することにより、焼鈍の好適な条件を検討した。
マグネシウム基材として、純マグネシウムインゴット(純度99%)からファインカッターを使用して10×20×2mmの基板を切り出し、エメリーペーパー1000番により表面処理したものを準備した。
このマグネシウム基材(基材a、基材b、基材c、基材d及び基材e)を以下表1の条件で焼鈍した。
Figure 2007202782
焼鈍した基材c及び基材eの顕微鏡写真を図2(A)及び(B)に示す。大気中のみで焼鈍した基材は、表面に生成された酸化膜に少しむらが見られたが、大気中及び酸素中で焼鈍した基材は、むらがなく均一に酸化膜が生成されることがわかった。
次に、焼鈍した基材a〜eをHBSS(擬似体液)に漬け、腐食試験を行った。表2にHBSSの成分を示す。焼鈍した基材a〜eをプラスチック製ケースにHBSS(擬似体液)20gとともに漬け、100時間ごとに重量を測定した。結果を図3に示す。
Figure 2007202782
基材aは、HBSS浸漬25時間後に重量の増加を見せた。基材bとeは、1000時間で極端な重量減少を示したが、この重量減少前の段階では重量増加量が最も大きかった。基材cとdは、若干の重量増加を示したものの、1300時間の浸漬では大きな変化を見せなかった。この結果より、酸素中で焼鈍を行うと低温・短時間で薄均質な酸化膜が生成できると考えられ、75時間以上の焼鈍で、基材にある程度の耐食性を持たせることができると考えられる。浸漬1300時間後の基材cの写真を図4に示す。
図4の通り、基材c表面には白色の反応化合物が生成されており、この生成は、全ての基材にも見られた。HBSS浸漬100時間後の基材aとHBSS浸漬1300時間後の基材cのXRD(X線回折)の解析結果を図5に示す。
図5が示すとおり、いずれの基材からもハイドロキシアパタイトのピークが確認された。特定できないピーク(19°、38°、51°及び59°)は、金属Vol.71(2001)No.7「特集:マグネシウム合金の最新の動向」第658頁に記載のXRD回析結果を参照して、アパタイトであることがわかった。これにより、焼鈍により表面に酸化マグネシウムを生成した基材は、HBSS浸漬によりかなり早い段階からアパタイト(水酸基を有するハイドロキシアパタイトではない)を生成すると考えられる。
〈本発明の生体材料の製造〉
前記基材a〜eに、ハイドロキシアパタイト(HA)ゾル溶液を用いたHAゾル・ゲル法で、ハイドロキシアパタイト及びニ酸化チタンからなる複合材を被覆することにより本発明の生体材料を製造した。
(1.HAゾル・ゲル法)
表3のHAゾル溶液の成分に基づき、a液〜c液を調製した。詳細な調製方法は以下の通りである。まず、a液を作製し、0℃に冷却する。a液を冷却している間に、c液を作製する。c液を電磁攪拌器により攪拌している状態でa液を加え、最後にb液を加えた。また、作製環境から受ける影響を少なくするために、溶液の保管はアクリル板ケースを用いた。
Figure 2007202782
得られたHAゾル溶液に基材a〜eを3分間浸漬し引き上げ、10分間熱処理した後、20分間大気中で冷却した。以上を3回繰り返し、ハイドロキシアパタイトと二酸化チタンからなる複合材を被覆した。このようにして、基材a〜eから得られた生体材料を実施例1〜5とした。実施例1〜3及び5の表面の顕微鏡写真(160倍)を図6の(A)〜(D)に示す。
図6(D)が示すとおり、大気中及び酸素中で焼鈍された実施例5において、複合材が均質に被覆されていることがわかる。これは、これらの酸化皮膜が均質に生成されているからであると考えられる。
次に、ハイドロキシアパタイトが表面上に存在していることを確認するために、実施例5のXRD解析を行った。その結果を図7に示す。
XRD解析の結果では、膜が非常に薄いため、酸化マグネシウムの強いピークが確認されたものの、ハイドロキシアパタイトが結晶化していることが確認された。
〈本発明の生体材料のHBSS浸漬〉
実施例1〜3及び実施例5を、表2に基づき調製されたHBSSに浸漬して腐食試験を行った。実施例3及び4については、前述の「焼鈍条件の検討」において浸漬時間1300時間までで大きな違いが確認できなかったため、本浸漬試験は、実施例4を除外した。実験方法は、前述の「焼鈍条件の検討」におけるHBSS浸漬と同様である。
HBSS浸漬における実施例1〜3及び5の重量変化を図8に示す。
浸漬させた実施例全てで、初期段階での重量増加は確認されなかった。実施例1以外は、酸化皮膜のみの基材の浸漬と比べて重量減少までの時間が短くなっている。しかしながら、表面において浸漬前の凹凸が減少し、HBSS浸漬後に析出した生成物が成長している様子が表面観察より明らかとなった。実施例5の浸漬0時間後と400時間後の顕微鏡写真を図9の(A)と(B)に示す。
図9の(A)及び(B)が示すように、HBSS浸漬前では凹凸の著しかった表面が、HBSS浸漬400時間では均質な膜に成長している。この現象は、浸漬させた全ての実施例において見られた。膜が均等に成長している間は極端な重量変化を示さないが、基材の表面性状が粗いところから腐食が始まると、その部分から反応が加速され、重量の減少が開始されたものと思われる。
浸漬後に析出したハイドロキシアパタイトを確認するために、複合材被覆直後の実施例5と、HBSS浸漬800時間後の実施例3をXRD解析し比較した。結果を図10に示す。図10が示すように、浸漬前に存在したMgOの強いピークが非常に弱くなった。さらに、ハイドロキシアパタイトのピークが複数見られるようになった。これは膜厚が増加してX線が膜を透過しなくなったためだと考えられる。また、複合材被覆直後には確認されなかったハイドロキシアパタイトのピークが、HBSS浸漬800時間後のものに認められたことから、HBSS浸漬により新たなハイドロキシアパタイトが生成されたことがわかる。
図11には、基材cと実施例3をHBSSに浸漬させた各XRD解析の結果を示す。即ち、このXRD解析結果は、酸化皮膜のみを有する基材(浸漬1300時間後)と酸化皮膜及び複合材を有する基材(浸漬800時間後)を比較したものである。図11が示すように、酸化皮膜及び複合材を有する実施例3においてハイドロキシアパタイトのピークが増加していることが確認された。
本発明の表面に酸化皮膜が形成されてなるマグネシウム基材にハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材が被覆されてなる生体材料は、生体内において、ハイドロキシアパタイトの析出を促進させことにより、マグネシウムをマグネシウムアパタイトに変換させることできるから、金属を体内に残さない優れた生体材料となる。
(a)は本発明の生体材料の斜視図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。 (A)は基材c、(B)は基材eの顕微鏡写真である。 基材のHBSS浸漬による重量変化を示すグラフである。 HBSS浸漬1300時間後の基材cの写真である。 HBSS浸漬後の基材のXRD解析結果である。 (A)実施例1、(B)実施例2、(C)実施例3及び(D)実施例5の表面の顕微鏡写真(160倍)である。 実施例5のXRD解析結果である。 実施例のHBSS浸漬による重量変化を示すグラフである。 (A)HBSS浸漬0時間後の実施例5と(B)HBSS浸漬400時間後の実施例5の顕微鏡写真である。 HBSS浸漬0時間後の実施例5とHBSS浸漬800時間後の実施例3のXRD解析結果である。 HBSS浸漬1300時間後の酸化皮膜のみを有する基材(基材c)とHBSS浸漬800時間後の酸化皮膜及び複合材を有する基材(実施例3)のXRD解析結果である。
符号の説明
1 本発明の生体材料
2 マグネシウム基材
3 酸化皮膜
4 ハイドロキシアパタイトと二酸化チタンからなる複合材

Claims (7)

  1. 表面に酸化皮膜が形成されてなるマグネシウム基材にハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材が被覆されてなる生体材料。
  2. 前記複合材の膜厚が0.01〜4.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の生体材料。
  3. 以下の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする生体材料の製造方法。
    (1) マグネシウム基材を焼鈍することにより、その表面に酸化皮膜を形成する工程
    (2) 工程(1)により得られたマグネシウム基材に、ゾルゲル法により、ハイドロキシアパタイトとニ酸化チタンからなる複合材を被覆する工程
  4. 前記焼鈍が、300〜650℃で10〜200時間、大気中で行われることを特徴とする請求項3に記載の生体材料の製造方法。
  5. 前記焼鈍が、100〜500℃で5〜200時間、酸素中で行われることを特徴とする請求項3に記載の生体材料の製造方法。
  6. 前記焼鈍が、大気中と酸素中で行われることを特徴とする請求項3乃至5いずれかに記載の生体材料の製造方法。
  7. 前記ゾルゲル法で用いられるゾル溶液が、少なくともチタンイソプロキシド、無水エタノール、ハイドロキシアパタイト及び塩酸を含むことを特徴とする請求項3乃至6いずれかに記載の生体材料の製造方法。

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