JP4377507B2 - リン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、疫病、災害などにより欠損した骨や歯牙などの生体硬組織を修復あるいは再建するために用いる代替材料として好適に使用できる生体活性を示すリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
人工関節、人工骨、人工歯根などに用いられる生体用インプラント材料としては、コバルト-クロム合金、チタン、チタン合金などの金属材料や、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2;以下、HApと記すことがある)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2;以下、TCPと記すことがある)、Na2O-CaO-SiO2-P2O5系ガラス(バイオガラス)などのセラミックス材料が実用に供されてきた。しかしながら、上記金属材料は機械的性質は優れているが、長期間生体内で使用すると、金属イオンが溶出し、生体組織を害する恐れがあるといった問題があった。一方、セラミックス材料のうち、アルミナやジルコニアは、化学的に安定であり耐摩耗性に優れるため、主に人工関節の摺動部材料として実用化されてきた。しかし、生体骨と化学的に直接結合しない生体不活性な材料のため、骨修復材料など生体活性が要求される部位には適用できないといった問題があった。一方、水酸アパタイトやバイオガラスは、生体内でその表面に骨の無機成分と同種のアパタイト層を形成し骨と直接結合する性質(生体活性)を示し、また、リン酸三カルシウムは生体内で徐々に崩壊して生体骨と置換することから、主に骨充填材料や歯科用セメント材料として実用化されてきた。しかし、これら生体活性を示す材料の強度、靭性は生体骨のそれには遙かに及ばず、大きな荷重のかかる大腿骨や頸骨を置き換える部位には適用できないといった問題があった。
【0003】
このような事情から、生体硬組織を修復あるいは再建する材料として、例えば、機械的特性に優れたチタン、チタン合金などの金属材料や、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス材料と、生体活性を有する水酸アパタイト等のリン酸カルシウム系材料とを複合化することにより、実用に耐え得る機械的特性と生体活性とを併せ持つ材料の開発が試みられてきた。
そのような複合化の手段の一つにコーティングがある。コーティングによる複合化では、高強度材料の表面を生体活性層で被覆するため、高強度を保持したまま、その表面に生体活性機能を付与することが可能となる。
【0004】
生体活性膜をコーティングする方法としては、プラズマ溶射法やスパッタリング法、あるいは、ディップ法、電気泳動法、塗布熱分解法やゾル−ゲル法などが挙げられる。
プラズマ溶射法は、例えば水酸アパタイト粉末をプラズマ中にスプレーして基材に融着させる方法であり、十分な膜厚(目安として50μm 以上)を有する密着性に優れた膜を形成することができる。この方法は金属およびセラミックス上に水酸アパタイト膜を形成させるのに有効な方法であり、現在、最も実用化が進んでいる。しかしながら、プラズマを使用しているため、コーティング時の温度が10,000℃に達する場合もあり、水酸アパタイトが熱分解して塩基性のCaO やリン酸三カルシウム、 リン酸四カルシウムCa4(PO4)2Oなどを生成してしまう問題点があった。また、プラズマ溶射後に水酸アパタイトの結晶性が低下して溶解しやすくなること、電極のタングステンがコンタミすることも問題点として指摘されている。
【0005】
一方、スパッタリング法では、形成される膜は均一であるが、膜厚は薄く、また真空にしなければならないため、大面積にコーティングするのは難しいといった問題点があった。
一方、ディップ法、塗布熱分解法、電気泳動法やゾル−ゲル法などは、基本的に物理的あるいは化学的手段によって水酸アパタイトやリン酸三カルシウムなどの前駆体を基材表面に塗布し、それを加熱焼結することにより、目的とする生体活性被膜を形成させる方法である。これらは、いずれも、基材表面に塗布された前駆体を加熱処理することにより、反応相を介して基材と生体活性被膜との密着性を得るものである。
【0006】
ディップ法や塗布熱分解法は、適切なガラス系粉末を接着材として用いることにより、良好な密着性を持つ比較的均一な生体活性被膜を形成することができる。また、操作も簡便であるため厚膜化や大面積化にも対応できる利点がある。しかし、ディップあるいは塗布後の加熱焼結過程でコーティング膜にひびが入りやすいなどの問題点があった。
また、電気泳動法は基板を電極とし、例えば、水酸アパタイト粒子と接着剤粒子(CaO-P2O5 系ガラス) とを電気泳動させて基材表面に析出させ、これを加熱焼結して水酸アパタイト膜を形成させる方法である。適切な析出条件と加熱焼結条件を選択することにより良好な生体活性被膜を形成することができる。しかしながら、厚膜化が困難であるといった問題点があった。
【0007】
一方、ゾル−ゲル法は、例えば、Ca(NO3)2-C6H5PCl2-CH3COCH3系の溶液を加水分解して粘調なゾルとして、これを基材にコーティングしたのち、乾燥・加熱焼結して水酸アパタイト膜などの生体活性膜を形成させる方法である。この方法は、分子レベルで均一なゾルをもとに膜形成を行うため、膜組成の化学的均一性が高いといった利点がある。しかしながら、この方法は一回の操作で形成される膜厚が1μm よりも薄く、実用上必要な50μm 以上の膜厚を得るためにはコーティング・乾燥・加熱焼結の操作を数十回繰り返さなければならないといった問題があった。
【0008】
上述した種々の方法は、高強度な基材の表面に生体活性被膜として水酸アパタイトなどのリン酸カルシウム被膜を形成させることには成功しているが、リン酸カルシウムのもつ優れた生体活性を最大限に生かすためには、得られる膜の形状、組成、厚さなどを厳密に制御する必要があり、未だ多くの検討の余地が残されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、十分な機械的特性を有し高強度かつ高靭性であるとともに、優れた生体活性機能を併せ持つリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料と、形成されるリン酸カルシウム被膜の形状、組成、厚さ等を高度に制御できるリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法を提供することにある。
本発明の課題は、十分な機械的特性を有し高強度かつ高靭性なジルコニア系セラミックス基材の表面に、生体活性機能を付与する手段として、形状、組成、厚さなどが高度に制御されたリン酸カルシウム被膜を備えたジルコニア系生体材料と、その製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、主として正方晶ジルコニア多結晶体からなるジルコニアと安定化剤としてのセリアを含む基材の表面に、細孔径100-500μmの開放気孔を有する多孔質状のリン酸カルシウムからなる生体活性被膜を備え、前記多孔質状のリン酸カルシウムは、カルシウムおよびリンを含有する金属塩を含む溶液を微細な液滴とし、この液滴を、前記基材を保持した加熱部に噴霧し、析出した塩を熱分解することにより、中空状のリン酸カルシウム凝集粒子を堆積し、堆積された前記リン酸カルシウム凝集粒子を焼成してなるものであり、かつ、前記基材と前記生体活性被膜とがCaO-P 2 O 5 -ZrO 2 -CeO 2 系の複リン酸塩を介して接合されている。
本発明にかかるリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法は、主として正方晶ジルコニア多結晶体からなるジルコニアと安定化剤としてのセリアを含む基材の表面に中空状のリン酸カルシウム凝集粒子を堆積させる堆積工程と、堆積された前記中空状リン酸カルシウム凝集粒子を焼結することにより、細孔径100-500μmの開放気孔を有する多孔質状のリン酸カルシウムからなる生体活性被膜を前記基材の表面に形成する焼結工程とを含み、前記堆積工程が、カルシウムおよびリンを含有する金属塩を含む溶液を微細な液滴とし、この液滴を、前記基材を保持した加熱部に噴霧し、析出した塩を熱分解する噴霧熱分解により行われるものであり、前記金属塩を含む溶液として、Ca/P比が0.5 でメタリン酸カルシウムCa(PO 3 ) 2 の組成に対応する接着用溶液と、Ca/P比が1.5〜6.0の生体活性被膜形成用溶液とを用いるものであり、これにより、前記基材と前記生体活性被膜との界面にCaO-P 2 O 5 -ZrO 2 -CeO 2 系の複リン酸塩が形成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に記述する。
まず、本発明のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料について説明し、その後、その製造方法について説明する。
本発明にかかるリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の基材としては、ジルコニアを含むものであれば特に限定はされないが、セリアを安定化剤として含み、かつ、基材中のジルコニアが主として正方晶ジルコニア多結晶体(以下、TZP と記す)からなるものであることが望ましい。このようなセリアを安定化剤として用いた正方晶ジルコニア多結晶体(以下、Ce-TZPと記す)は、正方晶ジルコニア多結晶体であることにより極めて高い靭性値を有するとともに、セリアの含有により、水蒸気を含む湿潤環境下においても正方晶から単斜晶に相転移しない優れた熱安定性を有しているので、生体用材料として好ましい。
【0012】
上記Ce-TZP中、全ジルコニアに対する正方晶ジルコニア多結晶体の割合は、好ましくは80容量%以上、より好ましくは90容量%以上、さらに好ましくは95容量%以上である。この割合が80容量%未満だと、応力誘起相転移に基づく高強度・高靭性が得られない傾向がある。
また、Ce-TZP中、セリアの含有量は、特に限定はされないが、たとえば、ジルコニア全量に対し、好ましくは8〜12モル%、より好ましくは10〜12モル%である。この含有量が8モル%未満だと、準安定相である正方晶化が不充分となって単斜晶が支配的に多くなり、焼結した後に割れたり、マイクロクラックが内在した試料となったりしやすく、著しい強度劣化を示す恐れがあり、12モル%を超えると、高温安定相である立方晶が出現し始め、正方晶量が80容量%未満となり、充分な強度・靭性が得られなくなる恐れがある。
【0013】
なお、上記Ce-TZPは、従来一般的に用いられているイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(以下、Y-TZP と記す)と比較すると強度や硬度が低いので、それらの欠点を補うため、第2相として高硬度なアルミナ等と複合化されたものを用いることが望ましい。このような複合材料の中でも、アルミナをナノメータサイズでジルコニア結晶粒内の一部に取り込んだセリア系ジルコニア/アルミナ・ナノ複合材料は、Y-TZP に匹敵する機械的性質を備えており(特許第2703207 号)、本発明で用いられる基材として最適である。
本発明で用いられる基材は、上記セリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Ce-TZP)に限られるものではなく、安定化剤としてセリアとイットリアを併用しても良い。また、マグネシアまたはカルシアを安定化剤として含む部分安定化ジルコニア(以下、PSZ と記す)であっても構わない。また、TZP またはPSZ からなるジルコニアにさらに、ハフニア、チタニアなど微量の不純物が含まれていても差し支えない。
【0014】
本発明のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料が基材の表面に有するリン酸カルシウムからなる生体活性被膜(以下、これを「リン酸カルシウム被膜」と記すことがある)の形状は、緻密質よりも多孔質の方が新生骨を誘導するための細孔が多く生体骨と早期に結合する上で適している点から、リン酸カルシウム被膜が細孔径100-500 μm の開放気孔を有する多孔質状であることが重要であり、さらに細孔径40-100μm の開放気孔をも有すると好ましく、さらに細孔径5-15μm の開放気孔をも有するとより好ましい。
リン酸カルシウム被膜が細孔径100-500 μm の開放気孔を有すると、石灰化骨がその開放気孔に侵入し、開放気孔内に新生骨が形成されるため、新生骨との良好な密着性が得られる。なお、開放気孔が500 μm を超えると、リン酸カルシウム被膜の強度が低下して実用に耐えられなくなり、100 μm未満だと、石灰化骨が侵入されにくくなる。
【0015】
また、リン酸カルシウム被膜がさらに細孔径40-100μm の開放気孔をも有すると、骨様物質で埋まる中間層が形成されやすくなるため、石灰化骨が形成されやすくなるので、好ましい。また、リン酸カルシウム被膜がさらに細孔径5-15μm の開放気孔をも有すると、コラーゲン繊維が形成されやすくなるため、石灰化骨がより形成されやすくなるので、より好ましい。なお、細孔径が5μm未満だと、血球が通りにくくなり、また、コラーゲン繊維も侵入されにくくなる。
また、リン酸カルシウム被膜の厚さは、特に限定はされないが、好ましくは10-200μm 、より好ましくは30-150μm 、さらに好ましくは50-100μm である。膜厚が10μm 未満だと、リン酸カルシウム被膜が体内に吸収されてしまい、被膜材料として長期間機能しなくなる傾向があり、200 μm を超えると、リン酸カルシウム被膜の剥離や脱落が起こりやすくなる傾向がある。
【0016】
上記多孔質形状を有するリン酸カルシウム被膜は、水酸アパタイトを主成分として含むことが好ましい。水酸アパタイトは、生体内でその表面に骨の無機成分と同種のアパタイト層を形成し骨と直接結合する生体活性を示す。
また、リン酸カルシウム被膜は、基材側では水酸アパタイトが主成分となり、外側(表面側)ではリン酸三カルシウムが主成分となるように組成が傾斜した複数の層から構成された組成傾斜型リン酸カルシウム被膜であることがさらに好ましい。一般的に、水酸アパタイトは生体内でほとんど吸収されずに骨と直接結合し、リン酸三カルシウムは生体内で吸収されて自家骨と置換することが知られている。したがって、上記のような組成傾斜型のリン酸カルシウム被膜を基材の表面に形成させれば、該被膜の一部が吸収されると、そこに骨が形成されるように骨吸収速度と骨形成速度を制御できる生体活性被膜を創製することが可能となる。さらに、リン酸カルシウム被膜は、基材との密着性を考慮すると、基材側に行く程緻密質になり、外側(表面側)に行く程多孔質になるような傾斜型の多孔質構造を持つことが望ましい。このような傾斜型のリン酸カルシウム被膜を有するリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の一例を図1に示す。図にみるように、このリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、ジルコニアを含む基材1の表面に、生体活性被膜として上記所定範囲の細孔径の開放気孔2を有する多孔質状のリン酸カルシウム被膜3を備える。リン酸カルシウム被膜3は、基材1側では水酸アパタイトが主成分となり、外側ではリン酸三カルシウムが主成分となるような傾斜型の組成を有するとともに、基材1側に行く程緻密質になり、外側に行く程多孔質になるような傾斜型の多孔質構造を持つ。
【0017】
本発明で用いられる基材がセリアを安定化剤として含む場合、この基材とリン酸カルシウム被膜との密着性を確保して剥離などの問題が生じないようにするためには、基材とリン酸カルシウム被膜とが、CaO-P2O5-ZrO2-CeO2系の複リン酸塩を介して接合されていることが望ましい。この複リン酸塩は、たとえば、後述の製造方法により得られるリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料を例に挙げて説明すれば、接着用溶液の噴霧熱分解により基材表面に堆積させたメタリン酸カルシウム粒子が焼結工程において、975 ℃付近でメルトし、その後の昇温過程で基材と相互拡散することにより生成した反応相であると考えられる。この反応相からは、CaZr4(PO4)6 に帰属する複リン酸塩に基づく回折線が認められる。この複リン酸塩CaZr4(PO4)6 は、いわゆるNASICON 型結晶であり、この物質のZrは基材の安定化剤として含まれるCeと置換固溶して完全固溶体を形成しやすい。したがって、この反応相は、複リン酸塩CaZr4(PO4)6 のZr4+イオンが一部Ce4+イオンと置換した固溶体CaZr4-x Cex (PO4)6である可能性も示唆される。このように、セリア含有ジルコニア基材とリン酸カルシウム被膜との中間的な組成を有する反応相を、それらの界面に介在させることにより、該基材とリン酸カルシウム被膜とを強固に結合させることができる。
【0018】
次に、本発明にかかるリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法について説明する。この製造方法により、本発明のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料を得ることができるが、このリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料を得るための方法は、下記本発明の製造方法に限定されない。
本発明にかかるリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法は、堆積工程と焼結工程とを含む。堆積工程は、ジルコニアを含む基材の表面に中空状のリン酸カルシウム凝集粒子を堆積させる工程であり、焼結工程は、上記堆積工程で基材の表面に堆積された中空状リン酸カルシウム凝集粒子を焼結することにより、生体活性被膜として開放気孔を有する多孔質状のリン酸カルシウムからなる被膜を前記基材の表面に形成する工程である。
【0019】
上記堆積工程を行う方法としては、特に限定はされないが、たとえば、カルシウム及びリンを含有する金属塩を含む溶液を二流体ノズル、超音波発振器等を用いて微細な液滴とし、この液滴を、基材を保持した加熱部(たとえば、加熱された反応管内)に噴霧し、析出した塩を熱分解する方法(以下、噴霧熱分解法という)等が挙げられる。この噴霧熱分解法は、液滴から微粒子生成までの時間が短いため、化学組成の偏析が少なく、粒子径が揃った均質な粒子が得られるなどの優れた特徴がある。なお、この噴霧熱分解法における上記加熱部の加熱温度(析出した塩を熱分解する温度)は、好ましくは400-1200℃、より好ましくは500-1000℃、さらに好ましくは600-850 ℃である。この温度が400 ℃未満だと、熱分解が不充分となって原料の残存が起こりやすくなったり、析出する水酸アパタイト(HAp) の結晶成長が起こりにくくなって結晶性が低くなったりする傾向があり、1200℃を超えると、生成するリン酸カルシウム凝集粒子の表面エネルギーが減少し、次の焼結工程で該粒子同士が結合するための焼結の駆動力を失ってしまう傾向がある。
【0020】
ここで、上記噴霧熱分解法により基材の表面に堆積されるリン酸カルシウム凝集粒子が中空になるメカニズムを説明する。高温に加熱された反応管に導入された球状の液滴は、まず表面から水分が蒸発し、液滴の成分が濃縮される。さらに、水分の蒸発が進行すると、液滴表面に粘性の高い層が生成する。この層からリン酸カルシウム微粒子が析出するが、内部にはまだ水分が残されている。最終的に、粘性の高い層が、リン酸カルシウム微粒子が凝集した殻となり、内部に残された水分が完全に蒸発することにより、中空状の球状凝集粒子が形成されるわけである。
【0021】
また、上記金属塩を含む溶液の濃度を変化させることにより液滴径を制御することができる。すなわち、溶液の濃度を増加させると溶液の表面張力が増加するため液滴径が増大し、逆に低下させると液滴径は減少する。このように、溶液の濃度を変えることにより、噴霧熱分解によって得られる中空状の球状凝集粒子のサイズを制御することができる。また、膜厚についても、溶液の噴霧時間を変化させることにより、10μm から200 μm まで容易に制御可能である。
前記金属塩を含む溶液は、たとえば、硝酸カルシウムCa(NO3)2及びリン酸水素二アンモニウム(NH4)2HPO4を出発物質として用い、Ca(NO3)2水溶液と(NH4)2HPO4水溶液を混合することにより調製される。その際、Ca(NO3)2水溶液および(NH4)2HPO4水溶液の各濃度や混合割合を適宜変更することにより、得られる金属塩含有溶液の溶質濃度及びCa/P比を適宜調整することができる。なお、Ca(NO3)2水溶液と(NH4)2HPO4水溶液を混合した際、沈殿物が生じるため、それを溶解させるために適量の硝酸HNO3を加えることが好ましい。
【0022】
上記金属塩含有溶液の噴霧熱分解により生成する微粒子の組成は、基本的に該溶液のCa/P比に一致した組成となる。例えば、 Ca/P 比が0.5 であればメタリン酸カルシウムCa(PO3)2粒子が生成し、 Ca/P 比が1.5 であればリン酸三カルシウム (TCP )となり、 Ca/P 比が1.67であれば水酸アパタイト(HAp )粒子が生成する。
前記金属塩含有溶液としては、たとえば、以下の2種類の溶液を用いることができる。そのうちの一つはリン酸カルシウム被膜(生体活性被膜)と基材とを強固に結合するために用いる接着用溶液(以下、溶液A と記す)であり、そのCa/P比は0.50でメタリン酸カルシウムCa(PO3)2の組成に対応する。メタリン酸カルシウムは975 ℃の融点を持ち、リン酸カルシウム被膜と基材とを強固に結合させる接着剤の役割を果たす。もう1つの溶液は、生体活性被膜形成用溶液(以下、溶液B と記す)として用いるものであり、そのCa/P比は1.5 から6.0 の範囲が望ましい。
【0023】
これらの溶液は、たとえば、以下のように用いられる。まず、前記接着用溶液A を噴霧熱分解し、続いて前記生体活性被膜形成用溶液B を噴霧熱分解することにより、基材の表面に中空状リン酸カルシウム凝集粒子として2種類のリン酸カルシウム粒子を堆積させたのち、それらを焼結する。これにより、基材と強固に結合した所望の組成を有するリン酸カルシウム被膜(生体活性被覆)を形成することができる。
なお、本発明の製造方法において焼結工程を行う際の条件としては、特に限定はされないが、たとえば、リン酸カルシウム被膜と基材との充分な接着と、基材表面への多孔質構造の構築を考慮すると、1000℃から1400℃の温度範囲で1-30時間保持することが望ましい。より好ましくは、1100℃から1300℃の温度範囲で5-10時間保持することである。このときの焼結雰囲気としては、水酸アパタイト(HAp) やリン酸三カルシウム(TCP) の分解を防ぐ等の点から、乾燥大気中あるいは水蒸気を含む大気中が望ましいが、水酸アパタイト膜を得るためには、水蒸気を含む大気中がより好ましい。
【0024】
本発明の製造方法により形成されるリン酸カルシウム被膜と基材との結合強度は、溶液A の溶質濃度に強く依存する。この溶液A の濃度が高くなると結合強度も高くなり、逆に溶液A の濃度が低いと結合強度も低くなる傾向を示す。これは濃度の違いにより接着性に寄与するメタリン酸カルシウムの生成量が異なるためであると考えられる。リン酸カルシウム被膜が基材から容易に剥離しない良好な結合力が得られる溶液A の溶質濃度としては、Ca2+濃度0.15 mol・dm-3以上、 PO4 3-濃度0.3 mol ・dm-3以上が好ましい。
焼結工程により形成されるリン酸カルシウム被膜は、溶液A と溶液B との反応により生成するため、溶液A の濃度や溶液B のCa/P比を変化させることにより、生成被膜の組成制御が可能となる。ここで、溶液A の溶質濃度は、Ca2+濃度0.03-0.75 mol ・dm-3、PO4 3- 濃度0.06-1.50 mol ・dm-3の範囲とし、溶液B のCa/P比は1.50-6.00 の範囲とするのが望ましい。これらの範囲であれば、二リン酸カルシウム(Ca2P2O7 ;以下、C2P と記す)、リン酸三カルシウム(TCP )あるいは水酸アパタイト(HAp )膜などの生体活性被膜が得られる。ここで、水酸アパタイト単相を得るためには、溶液A の溶質濃度は、Ca2+濃度0.03-0.15 mol ・dm-3、PO4 3- 濃度0.06-0.30 mol ・dm-3の範囲、溶液B のCa/P比は2.0-5.0 の範囲が好ましい。
【0025】
また、生成されるリン酸カルシウム被膜を、基材側では水酸アパタイト(HAp )が主成分となり、外側ではリン酸三カルシウム(TCP )が主成分となるように組成が傾斜した複数の層から構成された前述の組成傾斜型リン酸カルシウム被膜とするためには、たとえば、最初に前記接着用溶液A を噴霧熱分解し、続いて前記生体活性被膜形成用溶液B としてCa/P比を6.0 から1.5 まで徐々に低下させた複数種類の溶液を適宜取り替えながら順次噴霧熱分解することにより、前記基材の表面に、前記中空状リン酸カルシウム凝集粒子としてCa/P比が6.0 から1.5 まで徐々に低下するように組成が傾斜した複数種類のリン酸カルシウム粒子を順次堆積させた後、焼結すればよい。
【0026】
本発明の製造方法においてメタリン酸カルシウムを含む前記接着用溶液A を用いる場合、特に、前記基材はセリアを安定化剤として含むことが好ましい。このような場合、前述したように、基材とリン酸カルシウム被膜との界面に CaO-P2O5-ZrO2-CeO2 系の複リン酸塩が形成され、その結果、この複リン酸塩を介して基材とリン酸カルシウム被膜とが強固に接合されるため、それらの密着性が向上する。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
〈実施例1〜42〉
まず、硝酸カルシウムCa(NO3)2及びリン酸水素二アンモニウム(NH4)2HPO4を出発物質として用い、 Ca/P 比が0.50でメタリン酸カルシウムCa(PO3)2に対応する組成となるようにCa(NO3)2水溶液と(NH4)2HPO4水溶液を混合することにより、リン酸カルシウム被膜を形成するための下記6種類の接着用溶液A を調製した。なお、混合の際、沈殿物が生じたため、それを溶解させるために適量の硝酸HNO3を加えた。この方法に従い、まず、Ca(NO3)2の溶質濃度が0.75 mol・dm-3(Ca2+換算)、(NH4)2HPO4の溶質濃度が1.5 mol ・dm-3(PO4 3- 換算)、沈殿物を溶解させるための HNO3 の溶質濃度が1.74 mol・dm-3になるように混合することにより、溶液A1を得た。この溶液A1を基準とし、これを、溶質濃度がA1に比べて1/2 、1/5 、1/10、1/15、1/25の各倍率になるように水で希釈することにより、A1以外にさらに5種類の溶液を用意した。以下、これらをそれぞれ略号としてA2、A5、A10 、A15 、A25 溶液と記述する。得られた各溶液の溶質濃度を一覧表として表1に示す。
【0028】
次に、上記と同様の手法により、Ca/P比を1.5 、1.67、2.0 、3.0 、4.0 、5.0 、6.0 に変化させた7 種類の生体活性被膜形成用溶液B を用意した。以下、それぞれ、略号としてB1.5、B1.67 、B2.0、B3.0、B4.0、B5.0、B6.0溶液と記述する。得られた各溶液のCa/P比を一覧表として表2に示す。
上記で得られた各接着用溶液A を二流体ノズルで微細な液滴にし、これを、噴霧熱分解装置の反応管の上部に予め固定しておいたジルコニア基材の表面に、キャリアガス(空気)の下5時間噴霧熱分解し、この上にさらに、上記で得られた各生体活性被膜形成用溶液B を10時間噴霧熱分解することにより、ジルコニア基材の表面に2種類の中空状のリン酸カルシウム凝集粒子を堆積させた。なお、反応管内の温度は600 ℃、また、溶液を噴霧する際のキャリアガスの流量は10 dm3・min -1とした。
【0029】
なお、ここで用いたジルコニア基材は、全ジルコニアに対し10モル%のセリアで安定化された正方晶ジルコニア多結晶体(全ジルコニアに対する正方晶ジルコニア多結晶体の割合:95容量%)からなる第1相と、全ジルコニアに対し30容量%のアルミナ粒子からなる第2相とが分散した複合焼結体であり、ナノメータサイズのアルミナ粒子の一部が前記ジルコニア結晶粒内に取り込まれていることを特徴とするセリア系ジルコニア/アルミナ・ナノ複合材料である。
溶液A と溶液B の組み合わせを種々変えることにより、表3に示す42種類の試料を作製した。ついで、これら42種類の試料を、1200℃で5時間、水蒸気気流中で焼結することにより、ジルコニア基材の表面に多孔質状のリン酸カルシウム被膜を形成させた。
【0030】
形成されたリン酸カルシウム被膜の結晶相を薄膜X線回折(TF-XRD)により同定した結果を一覧として表4に示す。リン酸カルシウム被膜の結晶相は、溶液A および溶液B の噴霧熱分解によりジルコニア基材の表面に堆積した2種類のリン酸カルシウム粒子のトータルのCa/P比に対応する結果となった。例えば、実施例19〜24は、溶液B の組成がCa/P比3.0 で一定で、溶液A の濃度が異なる場合の膜形成例である。この系列では、実施例19から24に至るに従って、膜形成に関与するトータルのCa/P比は徐々に増加する。そのため、実施例19ではCa/P比1.00の二リン酸カルシウム(C2P )とCa/P比1.50のリン酸三カルシウム(TCP )が生成したのに対し、実施例22〜24ではCa/P比1.67の水酸アパタイト(HAp )が生成した。また、実施例4、10、16、22、28、34および40は、接着用の溶液A の濃度が一定で、生体活性被膜形成用の溶液B のCa/P比が増加している膜形成例であり、実施例4から40に至るに従って、膜形成に関与するトータルのCa/P比も確実に増加している。そのため、実施例4、10の膜形成用溶液B のCa/P比が1.67以下のときはCa/P比1.50のリン酸三カルシウム(TCP )が生成したが、溶液B のCa/P比が1.67を超えるとCa/P比1.67の水酸アパタイト(HAp )が生成し、さらにCa成分が過剰になる実施例40では、HAp とともにCaO が生成した。表4に示した実施例のなかで、水酸アパタイト(HAp )単相が生成した条件は実施例16、17、18、22、23、24、27、28、29、30、33、34、35であり、溶液A の溶質濃度としては、Ca2+濃度0.03-0.15mol・dm-3、PO4 3- 濃度0.06-0.30mol・dm-3、溶液B のCa/P比は、2.0-5.0 の範囲であった。
【0031】
実施例1〜42で形成された被膜と基材との密着性をテープテストにより評価した結果を表5に示す。このテストは、コーティング層に10×10の升目を切り、計100 個のピースがテープの引き剥しによりいくつ剥離したかをカウントすることにより、密着性を評価した。なお、表5では、○・△・×で標記しているが、○は、100 個のピースのうち20個以下しか剥離しなかったもの、△は20個超40個以下剥離したもの、×は40個超剥離したものである。表5の結果にみるように、密着性は接着用溶液A の濃度に依存し、濃度の高いもの程、より強い密着性を示した。しかしながら、高濃度の溶液A は表4からも分かるように、水酸アパタイト被膜を形成しにくかった。したがって、水酸化アパタイト単相が得られ、しかも、比較的良好な密着性が得られたのは、実施例16、22、27、28、33、34に示す被覆条件であり、特に実施例27、33は、セリア安定化正方晶ジルコニア基材の被覆に最も好適な条件であった。
【0032】
実施例33により形成された水酸アパタイト(HAp )被膜の表面と断面の微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM )により観察した。その結果、被膜の表面は、粒子同志が結合して多孔質状のネットワーク構造を形成した開放気孔から構成されているのが確認された。また、被膜の細孔径分布を、細孔径分布計測装置(島津マイクロメリティックス社製ポアサイザ9310)を用いて調べた結果、細孔径約200 μmの部分に主なピークを有し、全細孔体積の60%が細孔径100-500 μmであり、全細孔体積の10%が細孔径40-100μmであり、全細孔体積の10%が細孔径5-15μmであり、平均細孔径(メジアン径)は、110 μm であった。また、被膜の断面観察により、膜厚は約30μm であり、均一に基材を被覆していることが確認された。以上の結果より、中空状の粒子を基材の表面に堆積させた状態で焼結することにより、完全な開放気孔を有する多孔質被膜を形成できることが実証された。
【0033】
生体活性被膜と基材との界面における反応相について、実施例33により形成された膜を希硝酸に溶解して除去した後、その表面に存在する結晶相を薄膜X線回折(TF-XRD)により調べた。基材の結晶相は、もともと正方晶のジルコニアであったが、焼結後にはその一部(全ジルコニアに対し約5容量%)が単斜晶ジルコニアに相転移していた。また、反応相としては複リン酸塩CaZr4(PO4)6 に基づく回折線が認められた。この反応相は、基材と生体活性層との中間的な組成であり、膜形成時の焼結過程で相互拡散により形成されたものと想定される。この反応相の形成が、膜と基板との密着性の向上に強く寄与したものと考えられる。なお、この複リン酸塩CaZr4(PO4)6 は、 Zr4+ イオンが一部Ce4+イオンと置換固溶してCaZr4-x Cex (PO4)6からなる固溶体を形成している可能性も示唆される。したがって、基材のジルコニアの結晶相が、一部正方晶から単斜晶に相転移していたのは、固溶体CaZr4-x Cex (PO4)6を形成する際、安定化剤であるCe4+イオンがジルコニア結晶格子から一部引き抜かれたことに起因するとの解釈も成り立つものと思われる。しかしながら、単斜晶の生成に伴うジルコニア基材の強度低下は、全く認められなかった。これは、単斜晶の生成が、恐らく極表面のみで起こったものであり、しかも全ジルコニアに対し5容量%と僅かであったことから、強度には悪影響を及ぼさなかったものと推察される。
〈実施例43〜45〉
実施例33において、溶液B の噴霧時間を5、20、30時間と変化させたこと以外は実施例33と同様の操作を行った。最終的に基材の表面に形成された水酸アパタイト被膜の膜厚を、実施例33の結果と併せて以下に示す。なお、膜厚の測定は、ジルコニア基材をダイアモンドカッターで切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM )で観察することにより算出した。
【0034】
実施例43(溶液B の噴霧時間5時間):膜厚10μm
実施例33(溶液B の噴霧時間10時間):膜厚30μm
実施例44(溶液B の噴霧時間20時間):膜厚60μm
実施例45(溶液B の噴霧時間30時間):膜厚100 μm
上記結果にみるように、溶液B の噴霧時間が5時間から30時間に増加するにつれて、形成される膜厚が10μmから100 μmへと厚膜化しており、このことから、溶液B の噴霧時間により容易に膜厚の制御が可能であることが実証された。
〈実施例46〜47〉
実施例33において、噴霧熱分解後の焼結温度を以下に示すように変えたこと以外は実施例33と同様の操作を行うことにより、焼結温度がリン酸カルシウム被膜の結晶相と膜と基材との密着性に及ぼす影響を調べた。その結果を実施例33の結果と併せて以下に示す。なお、密着性評価の方法および基準は実施例1〜42と同様である。
【0035】
実施例46(焼結温度1100℃):結晶相HAp 密着性△
実施例33(焼結温度1200℃):結晶相HAp 密着性○
実施例47(焼結温度1300℃):結晶相HAp 、TCP 密着性○
上記結果にみるように、薄膜X線回折(TF-XRD)により調べた膜の結晶相は、焼結温度が1100℃の場合には1200℃と同様に水酸アパタイト(HAp )であったが、1300℃の場合にはHAp とともに一部リン酸三カルシウム(TCP )が生成していた。1300℃以上の焼結温度では、水酸アパタイトの分解が起こり、一部リン酸三カルシウムが生成したものと考えられる。
【0036】
一方、膜と基板との密着性は、上記に示すように、1100℃では△、1200℃では○、1300℃では○という結果になった。1200℃で加熱した場合よりも1300℃の方が密着性は向上していた。
〈実施例48〉
予め850 ℃に加熱した噴霧熱分解装置の反応管の上部に固定したジルコニア基材(上記実施例で用いたものと同様のもの)の表面に、接着用溶液A5を5 時間、続いて生体活性被膜形成用溶液B5.0を10時間噴霧熱分解したのに引き続き、溶液B のCa/P比を4.0 、3.0 、2.0 、1.67へと徐々に低下させた溶液B4、B3、B2、B1.67 を2時間づつ順次噴霧熱分解したのち、1200℃で5 時間、水蒸気気流中で焼結した。このようにして形成されたリン酸カルシウム被膜は、入射角度を変えたTF-XRD分析、ESCAによる深さ分析および断面のEDX 分析等の結果から、基材側では水酸アパタイト(HAp )が主成分となり、外側ではリン酸三カルシウム(TCP )が主成分となるように組成が傾斜した被膜であることが確認された。
【0037】
一般的に、水酸化アパタイト(HAp )は生体内で溶解せずに骨と直接結合し、一方、リン酸三カルシウム(TCP )は生体内で自家骨と置換するという異なる性質を有する。そのため、この実施例48で形成された組成傾斜型の生体活性被膜は、膜側からリン酸三カルシウム(TCP )が徐々に溶解するとともに、生体側からの骨形成が進行するような、材料の崩壊と骨形成の速度がほぼ等しい新規な生体硬組織代替材料であるといえる。
〈比較例1〜7〉
実施例1〜42において、接着用溶液A を使用しないこと以外は実施例1〜42と同様の方法で成膜した場合を比較例1〜7として示す。生体活性被膜形成用溶液B としては、実施例1〜42と同様に、それぞれ、Ca/P比の異なる表2に示した7種類の溶液B1.5、B1.67 、B2.0、B3.0、B4.0、B5.0、B6.0を用いた。得られた膜の密着性を実施例1〜42と同様のテープテストにより評価した結果、7種類の膜はいずれも容易に基材から剥離し、全てスコッチテープに付着した。したがって、溶液A は密着性の向上に不可欠なものであることが実証された。
〈比較例8〉
本発明では、前述したように、基材としてセリア安定化正方晶ジルコニア(Ce-TZP)を用いることが好ましい。一方、従来、ジルコニアとしては、イットリア安定化正方晶ジルコニア(Y-TZP )が広く普及している。そこで、比較例8として、3モルのイットリアを含む3Y-TZPを基材として用いて生体活性被膜の形成を試みた。成膜条件は、実施例33と同様の条件で行なった。得られたリン酸カルシウム被膜は、水酸アパタイト(HAp )を主体とする結晶相から構成されていたが、被膜と基板との反応相を調べたところ、単斜晶ジルコニア(全ジルコニアに対し50容量%)およびYPO4が顕著に認められた。このYPO4の生成は、イットリア系ジルコニアの安定化剤であるY2O3がリン酸との反応により形成されたものと考えられる。このYPO4の生成により、イットリア系ジルコニアからY2O3が引き抜かれたため、正方晶から単斜晶への相転移が起きたものと考えられる。さらに、このような多量(全ジルコニアに対し50容量%)の単斜晶ジルコニアの生成は、基材の機械的性質を著しく低下させる結果をもたらした。実際に、3点曲げ強度は、約30% 程度低下していた。
【0038】
以上の結果より、セリアを安定化として含む正方晶ジルコニア(Ce-TZP)は、成膜後も正方晶を安定に存在させることが可能であり、本発明に使用する基材として最適であることが実証された。
〈比較例9〉
上記実施例で用いたものと同様のジルコニア基材単独物(表面が生体活性層で被覆されていない)を比較例9とした。
<生体活性評価試験>
上記各種材料が生体硬組織を代替する材料として使用できるかどうかを調べるため、以下の生体活性評価試験をin vitroで行った。なお、骨芽細胞としてはMC3T3-E1を用いた。
【0039】
生体活性層で被覆した実施例1〜48のジルコニア、生体活性層で被覆していない比較例9のジルコニアおよびコントロールとして細胞培養用のシャーレのそれぞれの表面に所定数の細胞を直接播種し、その増殖性と細胞活性を細胞培養試験により調べた。その結果、生体活性層で被覆した実施例1〜48のジルコニアおよび生体活性層で被覆していない比較例9のジルコニアは、いずれもコントロールとほぼ同じ速度で細胞が増殖しているのが認められた。以上の結果より、生体活性層で被覆した実施例1〜48のジルコニアは、良好な細胞増殖性を示すことが明らかになった。
【0040】
さらに、上記各種材料上で培養した細胞を剥がし、これをホモジナイズしたのち、その上清中に含まれる細胞のDNA 量とアルカリフォスファターゼ(ALP )活性を測定した。ALP 活性値をDNA 量で割ることにより、単位DNA 当たりのALP 活性値を求めることができ、この値は細胞が骨芽細胞へ分化した度合いを示す指標となる。この単位DNA 当たりのALP 活性値は、(生体活性層で被覆した実施例1〜48のジルコニア)>(生体活性層で被覆していない比較例9のジルコニア)=(コントロール)の順となり、この結果から、ジルコニア基材の表面を被覆した生体活性層(リン酸カルシウム被膜)は骨芽細胞への分化誘導を引き起こす機能を有することが明らかになった。
【0041】
【表 1】
【0042】
【表 2】
【0043】
【表 3】
【0044】
【表 4】
【0045】
【表 5】
【0046】
【発明の効果】
請求項1から5までに記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、ジルコニアを含む基材が用いられているため、十分な機械的特性を有し高強度かつ高靭性である。さらに、この基材の表面に有するリン酸カルシウム被膜が細孔径100-500μmの開放気孔を有する多孔質状のものであるため、新生骨を誘導するための細孔が多く、早期に生体骨と結合することができるので、生体活性機能にも優れる。また、前記基材中の前記ジルコニアが主として正方晶ジルコニア多結晶体からなるため、極めて高い靭性値を有するとともに、前記基材がセリアを安定化剤として含むため、水蒸気を含む湿潤環境下においても正方晶から単斜晶に相転移しない優れた熱安定性を有する。加えて、前記基材がセリアを安定化剤として含み、この基材と前記リン酸カルシウム被膜とがCaO-P 2 O 5 -ZrO 2 -CeO 2 系の複リン酸塩を介して接合されているため、基材とリン酸カルシウム被膜との密着力が強固であり、リン酸カルシウム被膜が剥離しにくい。
請求項2に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、前記リン酸カルシウム被膜がさらに細孔径40-100μm の開放気孔をも有するため、骨様物質で埋まる中間層を形成しやすいので、石灰化骨を形成しやすい。
【0047】
請求項3に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、前記リン酸カルシウム被膜がさらに細孔径5-15μm の開放気孔をも有するため、コラーゲン繊維を形成しやすいので、石灰化骨をより形成しやすい。
【0048】
請求項4に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、前記リン酸カルシウム被膜が水酸アパタイトを主成分として含むため、生体内でその表面に骨の無機成分と同種のアパタイト層を形成して骨と直接結合する生体活性を示す。
請求項5に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、前記リン酸カルシウム被膜が、基材側では水酸アパタイトが主成分となり、外側ではリン酸三カルシウムが主成分となるように組成が傾斜した複数の層からなる組成傾斜型リン酸カルシウム被膜であるため、被膜側からリン酸三カルシウムが徐々に溶解するとともに、生体側から水酸アパタイトによる骨形成が進行するため、材料の崩壊と骨形成の速度がほぼ等しい新規な生体硬組織代替材料となる。
【0049】
従って、本発明のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料は、疫病、災害などにより欠損した骨や歯牙などの生体硬組織を修復あるいは再建するために用いられる代替材料として好適に使用できる優れた生体用無機材料である。
請求項6から11までに記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法では、前記堆積工程と前記焼結工程とを含むため、形成されるリン酸カルシウム被膜の形状(特に、細孔径100-500μmの開放気孔を有する多孔質状)、組成、厚さなどを高度に制御することができる。また、この製造方法では、中空状のリン酸カルシウム凝集粒子を基材の表面に堆積させた状態で焼結するため、リン酸カルシウム粒子同士が三次元的に結合したネットワーク構造からなる完全な開放気孔で構成された多孔質被膜を形成することができる。また、前記堆積工程が、カルシウム及びリンを含有する金属塩を含む溶液の噴霧熱分解により行われるため、液滴から微粒子生成までの時間が短いので、化学組成の偏析が少なく、粒子径が揃った均質な粒子が得られる。さらに、前記金属塩を含む溶液として、Ca/P比が0.5でメタリン酸カルシウムCa(PO 3 ) 2 の組成に対応する接着用溶液と、Ca/P比が1.5〜6.0の生体活性被膜形成用溶液とを用いるため、前記接着用溶液から形成されるメタリン酸カルシウム被膜が基材とリン酸カルシウム被膜とを強固に結合させる接着剤の役割を果たすので、基材とリン酸カルシウム被膜とを強固に結合させることができる。加えて、前記基材として、セリアを安定化剤として含むものが用いられるため、前記接着用溶液の噴霧熱分解により基材表面に堆積させたメタリン酸カルシウム粒子が焼結工程において基材と相互拡散することにより基材とリン酸カルシウム被膜との界面にCaO-P 2 O 5 -ZrO 2 -CeO 2 系の複リン酸塩が形成され、その結果、この複リン酸塩を介して基材とリン酸カルシウム被膜とが強固に接合されるので、それらの密着性が向上する。
【0050】
請求項7に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法では、形成される前記リン酸カルシウム被膜がさらに細孔径40-100μm の開放気孔をも有するため、骨様物質で埋まる中間層を形成しやすいので、石灰化骨を形成しやすい。
請求項8に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法では、形成される前記リン酸カルシウム被膜がさらに細孔径5-15μm の開放気孔をも有するため、コラーゲン繊維を形成しやすいので、石灰化骨をより形成しやすい。
【0052】
請求項9に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法では、前記堆積工程において、最初に前記接着用溶液を噴霧熱分解し、続いて前記生体活性被膜形成用溶液を噴霧熱分解することにより、前記基材の表面に、前記中空状リン酸カルシウム凝集粒子として2種類のリン酸カルシウム粒子を堆積させるため、基材と強固に結合した所望の組成を有するリン酸カルシウム被膜を形成することができる。
請求項10に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法では、前記接着用溶液として、Ca2+濃度が0.03から0.75mol・dm-3、PO4 3-濃度が0.06から1.5mol・dm-3の範囲の溶質濃度を有する溶液を用いるため、二リン酸カルシウム、リン酸三カルシウムあるいは水酸アパタイトなどのリン酸カルシウム被膜を形成することができる。
【0053】
請求項11に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法では、前記堆積工程において、最初に前記接着用溶液を噴霧熱分解し、続いて前記生体活性被膜形成用溶液としてCa/P比を6.0から1.5まで徐々に低下させた複数種類の溶液を適宜取り替えながら順次噴霧熱分解することにより、前記基材の表面に、前記中空状リン酸カルシウム凝集粒子としてCa/P比が6.0から1.5まで徐々に低下するように組成が傾斜した複数種類のリン酸カルシウム粒子を順次堆積させるため、基材側では水酸アパタイトが主成分となり、外側ではリン酸三カルシウムが主成分となるように組成が傾斜した複数の層から構成された前述の組成傾斜型リン酸カルシウム被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の一実施形態を示す概略断面図。
【符号の説明】
1 基材
2 開放気孔
3 生体活性被膜(リン酸カルシウム被膜)
Claims (11)
- 主として正方晶ジルコニア多結晶体からなるジルコニアと安定化剤としてのセリアを含む基材の表面に、細孔径100-500μmの開放気孔を有する多孔質状のリン酸カルシウムからなる生体活性被膜を備え、前記多孔質状のリン酸カルシウムは、カルシウムおよびリンを含有する金属塩を含む溶液を微細な液滴とし、この液滴を、前記基材を保持した加熱部に噴霧し、析出した塩を熱分解することにより、中空状のリン酸カルシウム凝集粒子を堆積し、堆積された前記リン酸カルシウム凝集粒子を焼成してなるものであり、かつ、前記基材と前記生体活性被膜とがCaO-P 2 O 5 -ZrO 2 -CeO 2 系の複リン酸塩を介して接合されている、リン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料。
- 前記生体活性被膜がさらに細孔径40-100μm の開放気孔をも有する、請求項1に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料。
- 前記生体活性被膜がさらに細孔径5-15μm の開放気孔をも有する、請求項2に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料。
- 前記生体活性被膜が水酸アパタイトを主成分として含む、請求項1から3までのいずれかに記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料。
- 前記生体活性被膜が、基材側では水酸アパタイトが主成分となり、外側ではリン酸三カルシウムが主成分となるように組成が傾斜した複数の層からなる組成傾斜型生体活性被膜である、請求項4に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料。
- 主として正方晶ジルコニア多結晶体からなるジルコニアと安定化剤としてのセリアを含む基材の表面に中空状のリン酸カルシウム凝集粒子を堆積させる堆積工程と、堆積された前記中空状リン酸カルシウム凝集粒子を焼結することにより、細孔径100-500μmの開放気孔を有する多孔質状のリン酸カルシウムからなる生体活性被膜を前記基材の表面に形成する焼結工程とを含み、
前記堆積工程が、カルシウムおよびリンを含有する金属塩を含む溶液を微細な液滴とし、この液滴を、前記基材を保持した加熱部に噴霧し、析出した塩を熱分解する噴霧熱分解により行われるものであり、
前記金属塩を含む溶液として、Ca/P比が0.5でメタリン酸カルシウムCa(PO 3 ) 2 の組成に対応する接着用溶液と、Ca/P比が1.5〜6.0の生体活性被膜形成用溶液とを用いるものであり、これにより、前記基材と前記生体活性被膜との界面にCaO-P 2 O 5 -ZrO 2 -CeO 2 系の複リン酸塩が形成される、
リン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法。 - 前記生体活性被膜がさらに細孔径40-100μm の開放気孔をも有する、請求項6に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法。
- 前記生体活性被膜がさらに細孔径5-15μm の開放気孔をも有する、請求項7に記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法。
- 前記堆積工程は、最初に前記接着用溶液を噴霧熱分解し、続いて前記生体活性被膜形成用溶液を噴霧熱分解することにより、前記基材の表面に、前記中空状リン酸カルシウム凝集粒子として2種類のリン酸カルシウム粒子を堆積させる工程である、請求項6から8までのいずれかに記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法。
- 前記接着用溶液として、Ca2+濃度が0.03から0.75mol・dm-3、PO4 3-濃度が0.06から1.5mol・dm-3の範囲の溶質濃度を有する溶液を用いることを特徴とする、請求項6から9までのいずれかに記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法。
- 前記堆積工程は、最初に前記接着用溶液を噴霧熱分解し、続いて前記生体活性被膜形成用溶液としてCa/P比を6.0から1.5まで徐々に低下させた複数種類の溶液を適宜取り替えながら順次噴霧熱分解することにより、前記基材の表面に、前記中空状リン酸カルシウム凝集粒子としてCa/P比が6.0から1.5まで徐々に低下するように組成が傾斜した複数種類のリン酸カルシウム粒子を順次堆積させる工程である、請求項6から10までのいずれかに記載のリン酸カルシウム被覆ジルコニア系生体材料の製造方法。
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