JP4597346B2 - セレン含有排水の処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、セレン酸イオン(SeO4 2-)や亜セレン酸イオン(SeO3 2-)等の形で排水中に溶存する溶存セレンをこの排水中から効率良く分離除去するためのセレン含有排水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セレン及びセレン化合物は、ガラス製品や窯業製品、半導体材料、太陽電池や映画用フィルム、赤外線偏光子、顔料、増感剤、脱水素剤、起泡剤等、様々な工業製品の製造に多用されており、また、このようなセレン及びセレン化合物を用いる工業製品の製造工場等からは、不可避的に溶存セレンを含むセレン含有排水が排出される。
【0003】
そして、このセレン含有排水については、環境基準がセレン濃度(Seとして)0.01mg/リットル以下に設定されたことも引き金になって、排水中の溶存セレンを分離除去するための種々の方法が提案されている。例えば、米国特許第 4,405,464号明細書には、6価のセレンイオン〔例えば、セレン酸イオン(SeO4 2-)〕を含む水溶液と金属鉄とをpH6以下で接触させ、6価のセレンイオンを4価のセレンイオン〔例えば、亜セレン酸イオン(SeO3 2-)〕に還元すると共に金属鉄を酸化させて溶解せしめ、この溶解した酸化鉄を水酸化鉄の形で析出せしめ、析出した水酸化鉄を固液分離して6価及びそれ以下のセレンイオンを減少せしめた水溶液を回収する方法が記載されており、また、特開平7-2,502号公報には、セレン及び/又はセレン含有廃液をpH0〜6の範囲で金属鉄と接触させ、金属鉄の表面にセレンを析出させて廃液中のセレン濃度を低減しそして除去する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法においては、溶存セレンを排水基準として規定されているセレン濃度0.1mg/リットル以下を満たす値にまで低減せしめるために、水溶液(廃液)を金属鉄と接触させる反応帯域で、このセレン濃度の数千倍から数万倍に達する大量の鉄イオンを生ぜしめる必要があり、結果として極めて大量の水酸化鉄がスラッジとして生成し、セレン含有排水の処理において大量に発生するこのスラッジの処理が大きな負荷となっている。
【0005】
このスラッジ処理の問題は、例えば、石炭火力発電所等の設備に付設され、主として排煙中の亜硫酸ガスを除去する排煙脱硫装置から排出され、ジエチル-p-フェニレンジアミン比色法(工業排水試験方法)で定量できる硫黄酸化物等の酸化性物質を含む排煙脱硫排水について、溶存セレンと酸化性物質とを1つのプロセスで同時に処理して除去しようとした場合、その処理量の多さとも相俟って、より一層深刻な問題になっている。
【0006】
そこで、本発明者らは、このようなセレン含有排水から溶存セレンあるいは溶存セレンと酸化性物質とを効率良く分離除去できると共に、スラッジの発生量をできるだけ低減せしめることができる方法について検討し、第1工程で排水と鉄系金属とを接触させて鉄系金属により溶存セレンを還元して遊離させ、次いで第2工程で酸化して生成した3価の鉄系金属を亜硫酸イオン系還元剤で還元して再び溶存セレンの還元に寄与せしめ、この第2工程を経て生成した沈殿物を固液分離して溶存セレンを除去する方法を提案した(特開平10-151,470号公報)。
【0007】
この亜硫酸イオン系還元剤を用いる方法により、従来に比べてスラッジの発生量を大幅に抑制することが可能になった。しかしながら、この方法においても、セレン濃度の数千倍から数万倍に達する鉄イオンの発生に基づく大量のスラッジの発生は、特に排煙脱硫排水等の大量の排水を処理する必要がある場合、依然として排水処理に大きな負担となっており、更にスラッジ発生量をより低減化することが要請されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、先ず大量のスラッジが発生する原因について検討した結果、セレン含有排水と鉄系金属とが接触する反応帯域では、鉄系金属が液中の溶存酸素により酸化されて水酸化鉄として液中に溶解し、これと同時に、溶存セレン、特に6価のセレン酸イオンは鉄系金属あるいは液中に溶解した2価の鉄イオンにより還元され、水酸化鉄が析出するのに同伴されて4価又は0価のセレンとして析出するが、この際に、反応帯域を構成する反応槽の上部空間に空気等の酸素を含む気体が存在すると、この酸素が気液界面から液中に吸収され、鉄系金属の溶解が過度に促進され、これが原因で必要以上に鉄系金属が溶解し、大量のスラッジが発生する原因になっていることが判明した。
【0009】
本発明者らは、このような知見の下に、より少ない鉄系金属の消費量でセレン含有排水中の溶存セレンを効率良く還元し、これによって可及的に低減されたスラッジ発生量でセレン含有排水中から溶存セレンを除去することができ、特に排煙脱硫排水のように大量に処理する必要がある場合や、溶存セレンと共に酸化性物質の処理も同時に行う必要がある場合に、好適に適用することができるセレン含有排水の処理方法について更に検討を重ねた結果、不活性ガス導入することで排水と鉄系金属とを接触させる反応帯域を酸素貧条件に制御することにより、この反応帯域での溶存酸素の濃度や鉄系金属の溶解速度を適当な範囲に制御することができ、セレン除去率を低下せしめることなくスラッジ発生量を顕著に低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、単にセレン含有排水から溶存セレンを、あるいは、溶存セレンと酸化性物質とを効率良く分離除去できるだけでなく、スラッジの発生量を可及的に低減することができ、特に排煙脱硫排水等の大量のセレン含有排水を処理するのに好適なセレン含有排水の処理方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、溶存セレンを含有する排水と、金属鉄とをpH5〜8の範囲に制御された反応帯域にて接触させ、得られた処理排水中に3価の水酸化鉄と共に析出した沈殿物を固液分離して排水中の溶存セレンを除去するセレン含有排水の処理方法において、前記反応帯域を形成する反応装置が上部空間を有する反応槽であり、この反応槽の上部空間に不活性ガスを導入することで、当該上部空間の酸素濃度を0.1容量%以上15容量%以下にして、前記反応帯域を酸素貧条件に制御する、セレン含有排水の処理方法である。
【0012】
本発明において、処理の対象となる溶存セレンを含有する排水(いわゆる、セレン含有排水)は、セレン及びセレン化合物を用いる種々の工業製品の製造工場等から排出され、セレン酸イオン(SeO4 2-)や亜セレン酸イオン(SeO3 2-)等、種々の形で排水中に溶存する溶存セレンを含む排水を意味し、このような溶存セレンを含むものであれば、排水中に不溶のセレンやセレン化合物等が存在してもよく、特に、溶存セレンと共に酸化性物質をも含む排煙脱硫排水について好適に適用することができる。
【0013】
また、このようなセレン含有排水中の溶存セレンを除去するために用いられる金属鉄の形状については、セレン含有排水と効率良く接触でき、また、取り扱い易いものであれば、どのような形状であってもよく、例えば、球状、粒状、粉状、棒状、チップ状、リベット状、円柱状、円筒状、板片状等、種々の形状を有する金属成形材を好適に用いることができる。また、純度は高い方が好ましいが、特に限定されない。
【0014】
本発明方法においては、上記セレン含有排水と金属鉄とを接触させる反応帯域を形成する反応装置として上部空間を有する反応槽を用い、この反応槽の上部空間に不活性ガスを導入し、あるいは更に、溶存酸素を除去するための還元剤を添加し、この反応帯域を酸素貧条件、好ましくはセレン含有排水中のセレン濃度(Seとして;以下、同様である)に応じて処理後の排水中のセレン濃度が規制値以下となるようにする。具体的には、前記反応槽の上部空間の酸素濃度を0.1容量%以上15容量%以下、より好ましくは3〜10容量%の範囲に制御する。例えば、前記反応槽の上部空間に窒素ガスを導入して酸素貧条件を形成する場合、反応槽上部空間の酸素濃度を検出し、検出された酸素濃度に応じて窒素ガス又は空気を反応槽上部空間に導入し、この反応槽上部空間の酸素濃度を一定の値に維持するもので、反応槽上部空間の酸素濃度については処理後の処理排水のセレン濃度によって決定する。このように反応帯域を酸素貧条件に制御してセレン含有排水と金属鉄とを接触させることにより、必要以上に金属鉄が酸化されて排水中に溶出することがなくなり、スラッジの大量発生を抑制することができる。
【0015】
この目的で反応帯域に導入される不活性ガスについては、反応帯域の操業条件下でセレン含有排水を構成する溶存セレンや酸化性物質等の種々の成分、更には金属鉄との間で不活性であり、更に溶存セレンや酸化性物質と金属鉄との酸化還元反応に対して不活性であればよいが、後処理やコスト等の観点から、好ましくは窒素ガスである。
【0016】
上記セレン含有排水と金属鉄とを接触させるために用いられる反応装置は、少なくとも排水と金属鉄とを接触させる反応帯域を形成するものであればよく、例えば、攪拌翼付混合型反応槽、流動床反応槽、固定床反応槽、充填反応槽等を挙げることができ、反応形式はバッチ式であっても、また、連続式であってもよい。この反応装置としては、セレン含有排水中のセレン濃度に応じて制御された量の不活性ガスを導入できる上部空間を有する反応槽である。更に、当該反応装置としては、金属鉄、酸、アルカリ、還元剤等の投入口や、攪拌機、pH計等の機器を必要により選択して設けることができる反応槽であるのがよく、また、槽下部では小粒径の金属鉄が流動すると共に槽上部では清澄状態が維持される反応槽や、槽内に固定した金属鉄に対して攪拌機により流動する排水を接触させるタイプの反応槽等が好適である。
【0017】
また、セレン含有排水と金属鉄とを接触させる反応帯域については、好ましくは、セレン含有排水中のセレン濃度に応じて所望のセレン除去率となるように、そのpH値をpH5〜8の範囲に制御する。この反応帯域のpH値がpH5より低いと、スラッジ発生量が増加する傾向にあり、反対に、pH8より高くなると、セレン除去率が低下する傾向にある。
【0018】
この反応帯域のpH調整は、反応帯域のpH値を検出し、所定のpH値若しくは処理排水中のセレン濃度によって、反応帯域の液中若しくはバッキ帯域の液中に塩酸水溶液等の酸又は水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリを添加して行う。このように反応帯域のpH値を制御することにより、不活性ガスを導入して反応帯域を酸素貧条件にすることに起因する反応速度の低下をカバーし、スラッジ発生量を抑制して所望のセレン除去率を達成できるものである。
【0019】
このセレン含有排水と金属鉄とを接触させる反応帯域での反応条件、例えば反応温度、金属鉄を用いる場合の単位処理量当りの接触表面積、反応時間等については、特に制限されるものではなく、処理対象のセレン含有排水の種類や組成等、使用する金属鉄の種類、形状、大きさ等、更には使用する反応装置の種類等に応じて、適宜決定できるものである。反応温度については、温度が高いほどセレン除去率やスラッジ発生量の低減化が向上する傾向にあるので、操業の問題を考慮し、好ましくは30〜80℃がよい。
【0020】
本発明方法においては、セレン含有排水を反応帯域に導入する前に、この排水中に不活性ガスを導入してバッキ処理を行い、予め排水中の溶存酸素量を低減せしめてもよい。このバッキ処理によって、排水中に溶解している炭酸等のpH緩衝成分や酸化性物質を揮発又は分解させて除去し、pH制御を容易にできると共に、中和に要する鉄溶出量を低減することができる。
【0021】
また、このバッキ処理を行なうバッキ帯域及び/又は前記反応帯域に還元剤を添加してもよい。この還元剤の添加により、排水中の溶存酸素を除去し、あるいは、低減することができ、金属鉄の溶存酸素による過度の溶出を防止することができ、かつ、セレンの還元処理にも有効となり、スラッジ発生量を顕著に低減できる。この目的で添加される還元剤としては、例えば、亜硫酸及びその塩、ヒドラジン、チオ硫酸及びその塩、FeCl2、FeSO4、活性炭等を挙げることができ、特にスラッジを発生させない亜硫酸塩やヒドラジンが好適に用いられる。特に、バッキ帯域に還元剤を添加すると、排水中の溶存酸素を除去することができ、更に排水中に含まれるセレン以外の金属鉄と反応する酸化性物質を反応処理することができ、これによって、金属鉄をセレンと効率良く反応させることができ、スラッジ発生量の低減、セレン除去率の向上に効果がある。
【0022】
そして、セレン含有排水中のセレン濃度に応じて、上記バッキ処理や還元剤添加を適宜組み合わせて適用することにより、反応帯域での溶存セレンや金属鉄の酸化還元反応やスラッジ発生量を制御することができる。
【0023】
また、本発明においては、反応帯域から回収されて固液分離される前の処理排水のpH値を反応帯域のpH値より高いpH7以上、好ましくはpH8〜12の範囲に調整し、反応帯域で使用した金属鉄由来の沈殿物を更に析出せしめ、これによって溶存セレンを更にそれらに随伴させて析出せしめるようにしてもよい。このようにして生成した水酸化鉄は、3価の水酸化鉄〔Fe(OH)3〕よりも2価の水酸化鉄〔Fe(OH)2〕の形で沈殿物を形成し、より効率良く沈殿物を析出する。
【0024】
更に、上記処理排水のpH調整に代えて、あるいは、この処理排水のpH調整と併用して、処理排水中に空気を導入する空気バッキ処理を行ってもよく、これによって、処理排水中から更に水酸化鉄等の沈殿物の析出を促進せしめると共に、セレンの除去を促進することができる。
【0025】
また、反応帯域で用いた金属鉄については、セレン含有排水と接触せしめた後に、この金属鉄の表面に付着した付着物(沈殿物)を除去する手段、例えば、攪拌、噴出ガス導入、噴出水流、超音波等の手段を設けるのがよい。なお、噴出ガス導入の際に窒素ガス等の不活性ガスを用いれば、反応槽の上部空間を酸素貧条件とするための制御の一部としても効果的である。
【0026】
本発明方法により処理された処理排水は、この排水中に析出した沈殿物を固液分離して除去した後、セレン濃度や酸化性物質含有量に関して排水基準を満足する状態で放流される。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面の図1に示す本発明の好適な実施の形態に基づいて、具体的に説明する。
【0028】
図1において、溶存セレンを含有するセレン含有排水は、先ずバッキ槽1に入り、このバッキ槽1内に導入される窒素ガスによりバッキ処理され、次いで上部空間を有する反応槽2に導入される。
【0029】
この反応槽2には、攪拌機3が設けられていると共に、槽内に球状の金属鉄4が仕込まれており、また、反応槽2の上部空間には窒素ガス導入口5からバッキ槽1を通過した窒素ガス及び/又は空気が導入されるようになっており、更に、この反応槽2の上部空間には反応槽2内に導入された窒素ガス等を外部に排出するための排気口6が設けられている。
【0030】
また、反応槽2には、反応槽2内のpH値を測定するpH計と、反応槽2内のpH調整のために塩酸水溶液及び/又は水酸化ナトリウム水溶液を添加するpH調整装置が設けられ、また、排気口6に接続された排気ラインには排気中の酸素濃度を測定するO2計が設けられており、pH計で測定されたpH値により反応槽2内のpH値を制御し、また、O2計で測定された排気の酸素濃度により反応槽2の上部空間の酸素濃度を制御できるようになっている。
【0031】
この反応槽2で処理された処理排水は、次に、この処理排水のpH値を測定するpH計と、水酸化ナトリウム水溶液を添加するpH調整装置と、攪拌機8とを備え、処理排水のpH値を反応槽2内のpH値より高いpH7以上に調整するpH調整槽7に移送され、反応槽2で使用した金属鉄由来の沈殿物を更に析出せしめる。また、このpH調整槽7には、処理排水中に空気を導入して空気バッキ処理を行うための手段が設けられており、必要により上記処理排水のpH調整に代えて、あるいは、pH調整と併用して実施できるようになっている。
【0032】
このようにして沈殿物を可及的に析出せしめた後の処理排水は、固液分離機9に移送され、そこで固液分離されて溶存セレンが除去された処理排水と水酸化鉄を主体とするスラッジとに固液分離される。
【0033】
【実施例】
実施例1
石灰石を吸収剤として用いる湿式排煙脱硫装置により石炭焚き排ガスを処理して得られた全体のセレン濃度(Seとして)約0.2mg/リットルの排煙脱硫排水を原水とし、分析誤差を解消するために、この原水にセレン酸(H2SeO4)及び亜セレン酸(H2SeO3)を添加して4価セレン〔セレン酸イオン(SeO4 2-)〕由来のセレン濃度(Seとして)0.5mg/リットル及び6価セレン〔亜セレン酸イオン(SeO3 2-)〕由来のセレン濃度(Seとして)0.5mg/リットルの試料排水を調製した。
【0034】
次に、翼長30mm×翼幅7mmの攪拌翼を備えた攪拌機、温度計、pH測定器を備えたpH調整装置、窒素ガス導入管、及び冷却凝縮管並びに加温装置を備えた円筒型の2リットル反応容器に、純度99%及び直径2〜3mmφの鉄球500gを入れ、更にこの反応容器中に上で調製した試料排水1リットルを仕込み、窒素ガス導入管より反応容器内上部空間に窒素ガスを導入し、また、pH調整装置から1N塩酸水溶液を滴下して反応容器内の反応混合物をpH7に制御しながら、反応温度40℃、反応容器内上部空間の酸素濃度0.1容量%、及び、攪拌機の攪拌速度250rpmの条件で、反応時間を3時間、9時間、及び12時間と変化させて反応を行った。
【0035】
反応終了後、反応容器内から鉄球を除去し、この鉄球に付着した沈殿物も含めて、発生した沈殿物を濾過して回収し、得られた濾液中のセレン濃度(残留セレン濃度)を測定すると共に、回収された沈殿物を乾燥してその重量(スラッジ発生量)を測定した。
結果を表1及び図2に示す。
【0036】
比較例1
反応容器の上部空間を開放状態にし、窒素ガスの導入を行わなかった以外は、上記各実施例1と全く同様にして試料排水の処理を行った。
得られた処理排水について、上記各実施例1と全く同様に、固液分離して濾液と沈殿物とを回収し、残留セレン濃度とスラッジ発生量とを測定した。
結果を表1及び図2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
上記表1及び図2に示す実施例1及び比較例1の結果から明らかなように、残留セレン濃度が0.15mg/リットルに到達したときのスラッジ発生量をみると、実施例1の場合は470mg/リットルであるのに対し、比較例1の場合には920mg/リットルであり、実施例1の場合の方が比較例1の場合に比べてスラッジ発生量が約1/2に減少した。
【0039】
実施例2
実施例1で調製した試料排水について、反応容器に装入して反応を行う前に、0.1容積%の酸素を含む窒素ガスを用い、40℃、30分間の条件でバッキ処理を行った以外は、実施例1の反応時間3時間の場合と同様にして試料排水の処理を行い、残留セレン濃度とスラッジ発生量とを測定した。
結果は、残留セレン濃度が0.235mg/リットルであり、また、スラッジ発生量が190mg/リットルであった。
【0040】
実施例3
実施例1の反応時間9時間の条件で処理して得られた処理排水について、そのpH値をpH9.2に再調整し、次いで固液分離して処理排水とスラッジとを回収し、残留セレン濃度とスラッジ発生量とを測定した。
結果は、残留セレン濃度が0.1mg/リットルであり、また、スラッジ発生量が480mg/リットルであった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、単にセレン含有排水から溶存セレンあるいは溶存セレンと酸化性物質とを効率良く分離除去できるだけでなく、スラッジの発生量を可及的に低減することができ、これによってセレン含有排水処理においてスラッジ処理の負荷を大幅に軽減することができ、特に排煙脱硫排水等の大量のセレン含有排水を処理するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の好適なセレン含有排水の処理工程を示す説明図である。
【図2】 図2は、実施例1及び比較例1の結果を示す反応時間−残留セレン濃度及びスラッジ発生量のグラフ図である。
【符号の説明】
1…バッキ槽、2…上部空間を有する反応槽、3,8…攪拌機、4…球状の金属鉄、5…窒素ガス導入口、6…排気口、7…pH調整槽、9…固液分離機。
Claims (7)
- 溶存セレンを含有する排水と、金属鉄とをpH5〜8の範囲に制御された反応帯域にて接触させ、得られた処理排水中に3価の水酸化鉄と共に析出した沈殿物を固液分離して排水中の溶存セレンを除去するセレン含有排水の処理方法において、前記反応帯域を形成する反応装置が上部空間を有する反応槽であり、この反応槽の上部空間に不活性ガスを導入することで、当該上部空間の酸素濃度を0.1容量%以上15容量%以下にして、前記反応帯域を酸素貧条件に制御することを特徴とするセレン含有排水の処理方法。
- 溶存セレンを含有する排水を反応帯域に導入する前に、この排水中に不活性ガスを導入してバッキ処理を行う請求項1に記載のセレン含有排水の処理方法。
- バッキ処理を行うバッキ帯域及び/又は前記反応帯域に還元剤を添加する請求項2に記載のセレン含有排水の処理方法。
- 前記反応帯域から回収されて固液分離される前の処理排水のpH値を前記反応帯域のpH値より高いpH7以上に調整し、該処理排水中から更に沈殿物を析出せしめる請求項1〜3のいずれかに記載のセレン含有排水の処理方法。
- 前記反応帯域から回収されて固液分離される前の処理排水中に空気を導入して空気バッキ処理を行い、該処理排水中から更に沈殿物を析出せしめる請求項1〜3のいずれかに記載のセレン含有排水の処理方法。
- 前記反応帯域でセレン含有排水と接触する金属鉄が金属成形材であり、前記反応帯域でセレン含有排水と接触せしめた後にこの金属成形材の表面に付着した付着物を除去する請求項1〜5のいずれかに記載のセレン含有排水の処理方法。
- セレン含有排水が排煙脱硫装置から排出される排煙脱硫排水である請求項1〜6のいずれかに記載のセレン含有排水の処理方法。
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